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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037068
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】レーザー発色記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/26 20060101AFI20240311BHJP
   B32B 3/24 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B41M5/26
B32B3/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141713
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000186566
【氏名又は名称】小林クリエイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】西澤 文子
(72)【発明者】
【氏名】小川 純生
(72)【発明者】
【氏名】垣ヶ原 円美
【テーマコード(参考)】
2H111
4F100
【Fターム(参考)】
2H111HA14
2H111HA23
2H111HA35
4F100AA20
4F100AA20C
4F100AK01
4F100AK01C
4F100AK21
4F100AK21C
4F100AK42
4F100AK42B
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA13A
4F100DJ00
4F100DJ00C
4F100EH46
4F100EJ52
4F100HB31
4F100HB31A
4F100JN01
(57)【要約】
【課題】厚みの薄いレーザー記録層に、輪郭が明瞭で、かつ、印字濃度の濃い文字等を印字するのに適するレーザー発色記録媒体を提供する。
【解決手段】所定波長のレーザー光で発色可能なレーザー記録層の表側に保護層が設けられたレーザー発色記録媒体にあって、レーザー記録層の裏側に、多孔質層を直接接合する。かかる構成では、レーザー光を多量に照射して、レーザー記録層の印字濃度を濃くした場合でも、レーザー記録層で発生する有色の粉塵を含むガスが、専ら裏側の多孔質層に流入して、多孔質層内の細孔に吸着されるため、印字部位の周囲への粉塵の飛散が低減し、従来構成に比べて、印字した文字等の輪郭が明瞭となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定波長のレーザー光で発色可能なレーザー記録層と、
前記レーザー記録層の表側に設けられた保護層とを備え、
前記レーザー記録層の裏側に、多孔質層が直接接合されていることを特徴とするレーザー発色記録媒体。
【請求項2】
前記多孔質層は、シリカとバインダー樹脂とを含有することを特徴とする請求項1に記載のレーザー発色記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を照射して情報を記録するレーザー発色記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光の照射によってレーザー記録層を炭化させて発色させることにより情報を記録するレーザー発色記録媒体が知られている。かかるレーザー発色記録媒体の中には、薄膜状のレーザー記録層の表面を透明な保護層で覆ったものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-313876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のように、レーザー記録層の厚みが薄い構成では、炭化度合いが同程度でも、厚みが薄い分だけ、比較的肉厚なレーザー記録層よりも印字濃度が薄くなりがちである。レーザー光を多量に照射すれば、レーザー記録層の炭化度合いが高くなって、印字濃度を濃くできる。しかしながら、レーザー記録層は、炭化度合いが高くなると、脆くなって、レーザー光の照射時に発生するガスとともに、炭素微粒子等の有色の粉塵が多量に飛散してしまう。レーザー記録層が保護層で覆われた構成では、粉塵が記録媒体の外に飛散しないものの、粉塵がレーザー記録層の界面に沿ってレーザー光照射部位の周囲に拡散することで、印字した文字等の輪郭がぼやけて不明瞭となってしまう。
【0005】
このように、レーザー記録層の薄いレーザー発色記録媒体では、印字濃度が薄くなりがちであり、一方で、印字濃度を高くするためにレーザー光の照射量を増大させると、有色の粉塵の飛散によって、印字した文字等の輪郭が不明瞭になり易いという問題がある。かかる問題に対して、レーザー光の照射量が比較的少量でも色濃く発色可能な材料や、比較的多量のレーザー光を照射しても粉塵の発生量が少ない材料が開発されているが、コストと性能の点で、満足できるものは得られていない。
【0006】
本発明はかかる現状に鑑みてなされたものであり、レーザー記録層の厚みの薄いレーザー発色記録媒体にあって、濃い印字濃度で、輪郭が明瞭な文字等を印字するのに適した構成の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所定波長のレーザー光で発色可能なレーザー記録層と、前記レーザー記録層の表側に設けられた保護層とを備え、前記レーザー記録層の裏側に、多孔質層が直接接合されていることを特徴とするレーザー発色記録媒体である。
【0008】
ここで、レーザー記録層の「表側」は、レーザー光が照射される側を指す。また、「直接接合されている」とは、粘着剤や接着剤を介さずに2つの層が接合されていることを指す。
発明者の研究によれば、本発明のレーザー発色記録媒体は、レーザー光を多量に照射して、レーザー記録層の印字濃度を濃くした場合でも、従来構成に比べて、印字した文字等の輪郭が不明瞭となり難い。これは、かかる構成では、レーザー記録層で発生する有色の粉塵が、ガスとともに隣接する多孔質層の空隙に流入することで、有色の粉塵がレーザー記録層の界面に沿って飛散し難くなり、また、多孔質層に流入した粉塵が多孔質層内の細孔に吸着されることで、多孔質層内でも粉塵の拡散が抑えられるためと考えられる。
このように、本発明によれば、レーザー光を多量に照射して、レーザー記録層の印字濃度を濃くした場合でも、印字した文字等の輪郭が不明瞭となり難く、また、多孔質層は高価な材料を使用することなく、低廉に実現可能であるため、本発明は、レーザー記録層の厚みの薄いレーザー発色記録媒体にあって、濃い印字濃度で、輪郭が明瞭な文字等を印字するのに適する。
【0009】
本発明にあって、前記多孔質層は、シリカとバインダー樹脂とを含有することが提案される。
【0010】
発明者の研究によれば、かかる構成とした場合に、レーザー記録層に印字した文字等の輪郭が特に明瞭となる。これは、シリカの含有によって、粉塵を吸着するのに好適なサイズの細孔が、多孔質層内に均一に確保されることで、粉塵の拡散防止効果が増大するためと考えられる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明のレーザー発色記録媒体は、従来構成に比べて、厚みの薄いレーザー記録層に、輪郭が明瞭で、かつ、印字濃度の濃い文字等を印字するのに適する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るレーザー発色記録媒体の層構造を示す説明図である。
図2】実施例1のレーザー発色記録媒体1の層構造を示す説明図である。
図3】実施例1のレーザー発色記録媒体1の(A)印字前と(B)印字後の表面図である。
図4】評価試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のレーザー発色記録媒体は、所定波長のレーザー光を表側から照射することにより情報を記録可能なものである。レーザー発色記録媒体の用途は特に限定されないが、ラベル用紙や、タグ用紙、カード用紙、券片用紙、証明書用紙、パッケージ等に好適に用い得る。
【0014】
図1に示すように、本発明のレーザー発色記録媒体は、レーザー記録層と、レーザー記録層の表側に配設される保護層と、レーザー記録層の裏側に配設される多孔質層とを備えてなる。また、多くの場合、多孔質層の裏側に基材層が配設される。多孔質層が十分な強度を有している場合には、基材層は省略可能である。ここで、多孔質層とレーザー記録層は、粘着剤等を介さずに直接接合される。多孔質層とレーザー記録層以外の層間は、粘着剤を介して接合したり、印刷層などを配設することが可能である。また、保護層の表側に印刷層を配設したり、基材層の裏側に印刷層や粘着剤層を配設したりすることも可能である。なお、本発明に係るレーザー発色記録媒体は、かかる層構造を全体が具備している必要はなく、少なくとも、レーザー光で情報を記録する部位が、かかる層構造を具備していれば足りる。
【0015】
本発明のレーザー発色記録媒体は、レーザー記録層の厚みが比較的薄い場合でも、従来構成に比べて、レーザー記録層に、濃い印字濃度で、輪郭が明瞭な文字等を印字可能となる。これは、表側からレーザー光を照射した時に、レーザー記録層で発生する有色粉塵を含むガスが、通気性を有する裏側の多孔質層に流入することで、レーザー記録層の表裏の界面に沿って有色粉塵が飛散するのが抑制され、また、多孔質層に流入した有色粉塵は、多孔質層内の細孔に吸着されて、周囲への飛散が抑制されるためと考えられる。特に、多孔質層は、レーザー記録層の裏側に接合しているため、有色粉塵が多孔質層内で多少拡散しても、レーザー発色記録媒体の表側から視認され難く、文字等の明瞭度が低下し難いと考えられる。
【0016】
基材層は、レーザー発色記録媒体の用途に応じた強度を有するものであればよく、材料や厚みは自由に設定可能である。また、基材層は、一枚のシートであってもよいし、複数枚のシートの貼り合わせであってもよい。基材層の具体的な材料としては、紙や樹脂シート、又はこれらの組合せが挙げられる。
【0017】
多孔質層は、細孔を有する通気性材料によって構成され得るものである。多孔質層の材料は特に限定されないが、多孔質粒子をバインダー樹脂で層状に固めたものや、紙や不織布などが挙げられる。多孔質層は、とりわけ、多孔質粒子とバインダー樹脂からなるものが望ましい。紙や不織布で構成した場合に比べて、レーザー光で印字する文字等の輪郭がより明瞭となるためである。これは、紙や不織布からなる多孔質層に比べて、細孔のサイズが均一となって、多孔質層内で粉塵を吸着し易くなるためと考えられる。一方、多孔質層を、適度な強度を有する紙や不織布で構成する場合は、基材層を省略できる。
【0018】
多孔質層を、多孔質粒子とバインダー樹脂で構成する場合、好適な多孔質粒子としては、シリカや酸化アルミニウムなどが挙げられる。発明者の研究によれば、これらの多孔質粒子の中でも、シリカを用いた場合に、レーザー光で印字した文字等が不明瞭となり難くなる。これは、シリカの細孔が、粉塵を吸着するのに適しているためと考えられる。また、バインダー樹脂としては、ポリビニルアルコールやアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル共重合体樹脂、スチレンブタジエン共重合体樹脂などが挙げられる。
【0019】
多孔質層を、多孔質粒子とバインダー樹脂で構成する場合、多孔質粒子の含有量は多いほど、レーザー光で印字する文字等の輪郭が不明瞭となり難い。多孔質粒子の含有量が多くなるほど、多孔質層の空隙率が向上して、レーザー記録層で発生する粉塵が多孔質層に流入し易くなり、また、多孔質層内の細孔が増大して、多孔質内で粉塵を吸着し易くなるためと考えられる。
【0020】
多孔質層の厚みは、特に限定されないが、5μm以上であることが望ましい。5μm未満であると、レーザー記録層で生じる粉塵を十分に受け入れられず、レーザー光で印字する文字等の輪郭が不明瞭となるおそれがあるためである。
【0021】
多孔質層の形成方法は特に限定されないが、多孔質粒子をバインダー樹脂で固めたものであれば、基材層側又はレーザー記録層側に塗工することが挙げられる。また、多孔質層を紙や不織布で構成する場合は、上述のように基材層を省略可能であるが、多孔質層を構成する紙や不織布を、粘着剤等を介して基材層側に接合してもよい。また、上述のように、基材と多孔質層の間には、他の層を介在させてもよい。具体的には、基材層の表面に、地紋や固定情報を印刷して、基材層と多孔質層の間に印刷層を介在させることが提案される。
【0022】
レーザー記録層の材料は特に限定されないが、樹脂を含有し、レーザー光の照射時に樹脂の炭化により発色するものが好適に用いられ得る。レーザー記録層は、所定波長のレーザー光を吸収して発色する樹脂層である。レーザー記録層の色は特に限定されないが、白色又は透明で、所定波長のレーザー光の照射部位が、樹脂の炭化等により黒く発色するものが好適に用いられ得る。レーザー記録層の印字に用いるレーザー光の種類は、レーザー記録層の組成に応じて決定される。具体的なレーザー光としては、YAGレーザー光や、CO2レーザー光、YVO4レーザー光、ファイバレーザー光などが挙げられる。レーザー記録層の具体的組成としては、発色剤及び/又は光熱変換剤を含む樹脂組成物が挙げられる。発色剤は、所定波長のレーザー光を吸収して化学反応により発色するものであり、光熱変換剤は、所定波長のレーザー光を吸収して発熱し、周囲の樹脂を炭化させるものである。レーザー記録層の組成は、既存のレーザー発色記録媒体のレーザー記録層の組成を広く採用できるため、詳細な説明は省略する。
【0023】
レーザー記録層の厚みは特に限定されないが、本発明のレーザー発色記録媒体は、厚みの薄いレーザー記録層であっても、レーザー光で文字等を明瞭に印字できるため、レーザー記録層の厚みを薄くすることが望ましい。具体的には、本発明に係るレーザー記録層の厚みは1μm~25μmの範囲にすることが望ましい。
【0024】
レーザー記録層は、一枚又は複数枚のフィルムによって構成され得る。また、レーザー記録層は、多孔質層の表側、又は、保護層の裏側に塗工された塗膜によっても構成され得る。上述のように、多孔質層とレーザー記録層は、粘着剤等を介さずに直接接合される。多孔質層及びレーザー記録層が、シートやフィルムである場合には、多孔質層とレーザー記録層を、加圧圧着や溶着等により直接接合することが提案される。多孔質層とレーザー記録層の少なくとも一方が塗膜である場合は、多孔質層とレーザー記録層の一方に、多孔質層とレーザー記録層の他方を塗工すれば、多孔質層とレーザー記録層を直接接合できる。また、多孔質層とレーザー記録層は、層間の空隙を極力減らすように接合することが望ましい。多孔質層とレーザー記録層の間に多くの空隙が存在すると、レーザー記録層で発生するガスや粉塵が、多孔質層とレーザー記録層の界面に沿ってレーザー光照射部位の周囲に飛散して、印字する文字等の輪郭が不明瞭となるおそれがある。
【0025】
保護層は、レーザー記録層の破損や劣化、印字情報の改ざんを防止するために、水や空気を透過しない材料によって好適に構成され得る。また、保護層は、表側からレーザー記録層への印字を可能とするために、印字に使用するレーザー光を透過可能な材料で構成され、また、レーザー記録層に印字した情報を表側から視認可能とするために略透明な材料で構成される。
【0026】
保護層の厚みは特に限定されないが、10μm~100μm程度が好ましい。保護層は、一枚又は複数枚のフィルムによって構成され得る。保護層を構成する望ましいフィルムの材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)やグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)などが挙げられる。保護層がフィルムである場合には、レーザー記録層と保護層を、加圧圧着や溶着、粘着剤による貼着等により接合することが提案される。また、保護層を構成するフィルムの裏側に、レーザー記録層を塗工することによって、レーザー記録層と保護層を一体的に接合してもよい。また、保護層は、レーザー記録層の表面に形成された塗膜によっても構成され得る。具体的な塗膜としては、透明ニスが挙げられる。レーザー記録層と保護層は、層間の空隙を極力減らすように接合することが望ましい。レーザー記録層と保護層の間に多くの空隙が存在すると、レーザー記録層で発生するガスや粉塵が、レーザー記録層と保護層の界面に沿ってレーザー光照射部位の周囲に飛散して、印字する文字等の輪郭が不明瞭となるおそれがある。
【0027】
本発明のレーザー発色記録媒体を、以下の実施例と比較例によって、より具体的に説明する。
【0028】
<実施例1>
本実施例のレーザー発色記録媒体1は、図2に示すように、裏側から、剥離紙8、粘着剤層7、基材層2、多孔質層3、レーザー記録層4、粘着剤層5、保護層6の順番に積層された層構造を有している。かかるレーザー発色記録媒体1は、パッケージ等に貼付するラベルを作成するためのラベル用紙である。図3(A)に示すように、レーザー発色記録媒体1の表側は全体が白無地となっており、表側からレーザー光を照射することによって、図3(B)に示すように、表側に、文字Pや二次元コードQなどの任意の情報を印字可能となっている。すなわち、本実施例のレーザー発色記録媒体1は、レーザー光で所要の情報を印字した後に、剥離紙8を剥離して、対象物に貼付されることにより、ラベルとして使用される。
【0029】
基材層2は、ガス透過性の低い透明PETフィルムで構成した。基材層2の厚みは100μm、保護層6の厚みは40μmとした。
【0030】
多孔質層3は、メソポーラスシリカとバインダー樹脂(ポリビニルアルコール)により構成した。具体的には、メソポーラスシリカのスラリーと、ポリビニルアルコールの水溶液を混合したものを塗工液として、アプリケーターを用いて基材層2の表側全面に塗工し、乾燥塗膜を多孔質層3とした。塗工液は、多孔質層3(乾燥塗膜)のメソポーラスシリカの含有率が20重量%となるよう調整し、塗工液は、多孔質層3(乾燥塗膜)の厚みが20μmとなるように塗工した。
【0031】
レーザー記録層4は、アンチモンドープ酸化スズからなる発色剤を含有する樹脂組成物により構成した。具体的には、アンチモンドープ酸化スズを添加した紫外線硬化インキを、オフセット印刷により多孔質層3の表側全面に塗工し、硬化させた塗膜をレーザー記録層4とした。レーザー記録層4の厚みは3μm~5μmとした。かかるレーザー記録層4は白色であり、YAGレーザー光等を照射すると、照射部位の樹脂が炭化するとともに、発色剤が変色することによって黒色に発色する。
【0032】
保護層6は、基材層2と同じ、透明PETフィルムで構成した。保護層6の厚みは40μmとした。保護層6は、予めフィルムの裏側全体に粘着剤層5が塗工ものを用意して、粘着剤層5を介してレーザー記録層4の表側全面を覆うように貼着した。
【0033】
<実施例2>
本実施例は、上記実施例1から、基材層2及び多孔質層3を、厚さ150μmの上質紙に替えたものである。すなわち、本実施例では、多孔性の上質紙が多孔質層を構成し、基材層は省略される。レーザー記録層は、実施例1と同じ厚みで、同じ組成のものが、オフセット印刷によって、上質紙の表側全体に形成した。保護層についても、実施例1と同じ透明PETフィルムを、粘着剤層を介してレーザー記録層4の表側全面を覆うように貼着した。
【0034】
<比較例1>
上記実施例1から多孔質層3を欠落させたものを比較例1とした。すなわち、本比較例では、実施例1と同じ基材層の表側全面に、実施例1と同じ厚みで、同じ組成のレーザー記録層を、オフセット印刷により形成した。保護層についても、実施例1と同じ透明PETフィルムを、粘着剤層を介してレーザー記録層4の表側全面を覆うように貼着した。
【0035】
<比較例2>
比較例1から、基材層2を構成する透明PETフィルムをコート紙に替えたものを比較例2とした。コート紙は、上質紙の表面を、通気性のない非多孔質のコーティング層でコーティングしてなるものである。レーザー記録層は、実施例1と同じ厚みで、同じ組成のものが、オフセット印刷によって、コート紙の表側全体に形成した。保護層についても、実施例1と同じ透明PETフィルムを、粘着剤層を介してレーザー記録層4の表側全面を覆うように貼着した。
【0036】
<評価試験>
実施例1,2及び比較例1,2の夫々に、レーザー光の照射により文字と二次元コードを印字して、印字濃度と、印字した文字等の輪郭の明瞭度を評価した。
【0037】
レーザー光の照射は下記の条件で行った。
レーザー光の種類:ファイバーレーザ(波長1064nm)
照射条件:周波数:20kHz,出力:2.2W,スピード:500m/sec
印字内容:文字、二次元コード
【0038】
印字した文字等の印字濃度は、目視にて下記の三段階で評価した。
○:濃い黒色
△:やや薄い黒色
×:薄い黒色
印字した文字等の輪郭の明瞭度は、目視にて下記の三段階で評価した。
○:はっきりしている
△:ややぼけている
×:ぼけている
結果を図4に示す。
【0039】
図4に示すように、文字等の印字濃度に関しては、実施例1,2及び比較例1,2の全てで高評価であった。具体的には、各実施例及び各比較例において、文字(線の中心部)が濃い黒色で印字され、背景(非印字部分)の白色と高いコントラストを有していた。一方、印字した文字等の輪郭は明瞭度に関しては、実施例1,2の方が、比較例1,2よりも高評価であった。具体的には、比較例1,2では、印字した文字の輪郭がぼやけて、レーザー光を照射した線幅よりも文字が太く視認された。この結果は、比較的厚みの薄いレーザー記録層を有するレーザー発色記録媒体であっても、レーザー記録層の裏側に多孔質層が接合された構成では、輪郭が比較的明瞭で、かつ、印字濃度の濃い文字等を印字できることを示している。
【0040】
また、実施例1と実施例2を比較した場合、文字等の印字濃度は同じ程度であったが、実施例2は、実施例1に比べると文字等の輪郭がややぼけており、文字等の輪郭の明瞭度は、実施例1の方が高評価であった。この結果は、多孔質層にメソポーラスシリカとバインダー樹脂を含有することにより、印字する文字等の輪郭がより明瞭となることを示している。
【0041】
評価試験で文字等を印字した実施例1及び比較例1を、文字等の印字部分で切断して、切断面を顕微鏡で観察した。その結果、比較例1では、レーザー記録層4の界面に沿って、レーザー光の照射部位の周囲に黒色の着色が拡がっていた。これは、レーザー光の照射時に発生した黒色の粉塵が、同時に発生したガスとともに、レーザー記録層4の界面に沿って飛散した痕跡と考えられる。一方、実施例1では、レーザー記録層4の界面に沿った黒色の着色の拡がりは認められなかった。その替わりに、実施例1では、レーザー光の照射部位において、多孔質層の表側(レーザー記録層と接する側)の断面に黒い着色が認められた。これは、実施例1では、レーザー光の照射時に発生した黒色の粉塵が、同時に発生したガスとともに、裏側の多孔質層に流入した痕跡と考えられる。すなわち、この結果は、実施例1では、黒色の粉塵が裏側の多孔質層に流入することにより、レーザー記録層4の界面に沿った黒い粉塵の飛散が抑制されて、印字部分の輪郭が明瞭に保たれることを示唆している。
【符号の説明】
【0042】
1 レーザー発色記録媒体
2 基材層
3 多孔質層
4 レーザー記録層
5 粘着剤層
6 保護層
7 粘着剤層
8 剥離紙
P 文字
Q 二次元コード
図1
図2
図3
図4