(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037072
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】パッティング練習用のゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 69/36 20060101AFI20240311BHJP
A63B 39/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
A63B69/36 504Z
A63B39/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141720
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】520133112
【氏名又は名称】株式会社KSP
(74)【代理人】
【識別番号】110003018
【氏名又は名称】弁理士法人プロテクトスタンス
(72)【発明者】
【氏名】崔 鍾植
(57)【要約】
【課題】 床面に直接ゴルフボールを置いてパッティングしても音が出ず、ゴルフ場のグリーンのグリーンスピードと同じゴルフボールを提供することを目的とする。
【解決手段】 パッティング練習用のゴルフボールは、ゴルフボール本体(10)と、ゴルフボール本体(10)の表面(10a)に塗布された接着層(2)と、接着層(25)に植毛された繊維(22)と、を備える。そして繊維(22)の材料がポリアミド樹脂であり、長さが0.8mm-1.2mm、太さが2.0-5.0テックスである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフボール本体と、
前記ゴルフボール本体の表面に塗布された接着層と、
前記接着層に植毛された繊維と、を備え、
前記繊維の材料がポリアミド樹脂であり、長さが0.8mm-1.2mm、太さが2.0-5.0テックス(tex)であるパッティング練習用のゴルフボール。
【請求項2】
前記繊維が透明もしくは半透明である、請求項1に記載のパッティング練習用のゴルフボール。
【請求項3】
前記繊維が0.8mmのときにグリーンスピードが16フィートであり、1.0mmのときにグリーンスピードが11フィートであり、1.2mmのときにグリーンスピードが14フィートである、請求項1又は請求項2に記載のパッティング練習用のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝生(人工芝も含む)の無い場所で、フローリング等の床面でパッテング練習をする際に使用するゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフのパッティング練習は、ゴルフ練習場などの芝生の上でパッティングしたり又は人工芝生マットを床面に置いてカップに向けてパツテインクしたりする。ゴルファーが手軽に練習する場合には、室内で人工芝生マットを床面に敷くことが多い。しかし、室内でマットを敷くことは面倒であるにもかかわらず、人工芝生マットの長さ及び幅が限定されており思い通りのパッティング練習が十分にできない場合がある。一方、人工芝生マットを敷くことなくゴルフボールを直接、フローリング等の床面においてパッティング練習すると、大きな音が発生してしまい、家族や階下の隣人等から騒音で苦情を受けることがある。特許文献1は、ゴルフボールの表面に可撓性パイル材を直立して配置したゴルフボールを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴルファーにとって、フローリング等の床面においてパッティングしても音が出ないゴルフボールが要望されている。また熟練したゴルファーは実際のゴルフ場のグリーンのグリーンスピードと同じようなゴルフボールの転がりを求めている。そこで、発明者はこれらの要望を満たすパッティング練習用のゴルフボールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態のパッティング練習用のゴルフボールは、ゴルフボール本体と、ゴルフボール本体の表面に塗布された接着層と、接着層に植毛された繊維と、を備える。そして繊維の材料がポリアミド樹脂であり、長さが0.8mm-1.2mm、太さが2.0-5.0テックス(tex)である。
【0006】
パッティング練習用のゴルフボールは、その繊維が透明もしくは半透明であることが好ましい。またその繊維が0.8mmのときにグリーンスピードが16フィートであり、1.0mmのときにグリーンスピードが11フィートであり、1.2mmのときにグリーンスピードが14フィートであること好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、フローリング等の床面においてパッティングしても音が小さく、またゴルフ場のグリーンスピードに合ったパッティング練習用のゴルフボールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(A)は一般に販売されているゴルフボールであり、(B)は、繊維を植毛したパッティング練習用のゴルフボールであり、(C)はBの一部断面概略図である。
【
図2】スティンプメーターでパッティング練習用のゴルフボールを転がす状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態に係るパッティング練習用のゴルフボールについて説明する。なお、説明に用いる図は発明を理解できる程度に概略的に示してあり、大きさ等が誇張されている。
【0010】
<パッティング練習用のゴルフボール>
図1(A)は、ゴルフ場で公式に使用されるゴルフボール本体10を示した図である。公式のゴルフボール本体10の表面10aは、一般に300■400個のディンプル12が設けられている。
【0011】
図1(B)は、本実施形態のパッティング練習用のゴルフボール20を示した図である。公式のゴルフボール本体10の表面10aに繊維22が植毛されている。ディンプル12の領域にもディンプル以外の領域にも繊維22が植毛されている。
【0012】
図1(C)は、パッティング練習用のゴルフボール20の一部断面図である。ゴルフボール本体10の表面10aは、ディンプル12の領域も含めて、接着層25が設けられている。接着層25は、スプレー又は液浸方式でゴルフボール10の表面10aに均一に形成される。接着層25に使用される接着剤は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが使用される。接着層25に繊維22がほぼ放射方向に直立して植毛される。繊維22の材料は、特にポリアミド樹脂であるが好ましく、繊維22の長さが0.8mm-1.2mmで、太さが2.0-5.0テックス(tex)であることが好ましい。またポリアミド樹脂の繊維22は、公式のゴルフボール本体10のブランド名や模様が透けて見えるように、透明もしくは半透明が好ましい。
【0013】
繊維22を直立して植毛させるため、接着層25が形成されたゴルフボール10が電極板にセットされた後、高電圧を印加して電界を形成させる。電極板上に載せた繊維22は、約20~60kVの高電圧電源により荷電された後、電界中で静電気力を受け、飛翔し始める。繊維22は電気力線に沿うような姿勢に向きを変化させながら飛翔してゴルフボール10へと向かい、接着剤層25に直立して接着され、
図1(C)に示されるように、接着剤層25に繊維22が規則正しく整列することになる。その後、ゴルフボール20が乾燥され、温風やヒータにより接着層25が加熱硬化処理される。加熱後、接着層に植毛されずにゴルフボール20の表面に付着していた余剰繊維を加振やブラシ掛けにより除去されて、
図1(B)に示されるパッティング練習用のゴルフボール20が完成する。
【0014】
図2は、スティンプメーターSMでゴルフボール20を転がす試験を示した図である。ティンプメーターSMは、一般に金属レールの棒(長さ3フィート、約91cm)に、溝(不図示)が付けられたものである。まず、溝にゴルフボール20を置きスティンプメーターをゆっくり持ち上げると、約22度の角度でゴルフボール20が自然と動き始める。ゴルフボール20の転がった距離LEを計測し2~4回の計測距離の平均値を割り出す。
【0015】
本実施形態では、床面FLとして、平らなコンクリート面、大理石板(30cm×30cm)を貼り付けた大理石面、タイルカーペット(40cm×40cm:ポリエステル)を貼り付けたカーペット面で試験した。また、繊維22の太さが3.3テックスで繊維22の長さが0.8mm、1.0mm、1.2mmの3種のゴルフボール20を用意した。
【0016】
スティンプメーターSMでゴルフボール20の転がり距離LEを測定した結果、以下のようになった。床面FLがコンクリート面、大理石面及びカーペット面であっても、ほぼ同じ計測距離LEであった。
繊維長さ;0.8mm: LE=16フィート(約488cm)
繊維長さ;1.0mm: LE=11フィート(約335cm)
繊維長さ;1.2mm: LE=14フィート(約427cm)
【0017】
繊維22の長さが短いと、ゴルフボール20の転がり距離LEが長くなることは繊維22の摩擦等を想像すれば理解できる。このため繊維長さが0.8mmから1.0mmになると約5フィート距離が短くなっている。しかし、繊維長さが1.0mmから1.2mmになると約3フィート距離が長くなっている。理由は定かではないが、3.3テックスと細い繊維22であるため、繊維が長くなるとゴルフボール10繊維が倒れて床面FLの接触面が繊維22の先端22tでなく繊維の側面22s(
図1(C)参照)になり、摩擦が軽減されていると想像できる。
【0018】
一般に、ゴルフ場ではグリーンコンディションとしてグリーンスピードが何フィートであるかが示されている。一般にアマチュアゴルファー向けの場合、グリーンスピードが8-10フィートであり、プロゴルファーの試合の場合、グリーンスピードが10-13フィートと言われている。アマチュアゴルファであっても、室内でのパッティング練習では、難しいことが好ましいので、繊維22の長さが1.0mmであることが好ましい。本実施形態のパッティング練習用のゴルフボール20は、床面FLに直接置いてパッティングしても、ゴルフ場の芝生のグリーンと同等の練習ができる。
【0019】
パッティング練習用のゴルフボール20を使用すれば、ゴルファーはわざわざ人工芝生マットを敷く必要はなく、また人工芝生マットの保管も不要となる。また繊維22は細くて短いため、ゴルフボール20のパッティングの打感が、ゴルフボール本体10の打感と大差ない。このためゴルファーは、ゴルフボール20を使ってパッティング技術等を向上させることができる。
【符号の説明】
【0020】
10 … ゴルフボール本体、 20 … パッティング練習用のゴルフボール
22 … 繊維 、 25 … 接着層
SM … スティンプメーター
FL … 床面