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特開2024-37089エレベーターシステム及びエレベータードア制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037089
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】エレベーターシステム及びエレベータードア制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/14 20060101AFI20240311BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20240311BHJP
   B66B 1/06 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B66B13/14 M
B66B3/00 P
B66B1/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141739
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西迫 竜一
(72)【発明者】
【氏名】田中 悠一朗
【テーマコード(参考)】
3F303
3F307
3F502
【Fターム(参考)】
3F303CB28
3F303CB31
3F307DA01
3F307EA18
3F307EA27
3F307EA28
3F502HB10
3F502JA19
3F502JA24
3F502JA54
3F502KA13
3F502KA19
(57)【要約】
【課題】乗りかごに積載された人や物の種類に応じた適切な運転状況の制御が行えるようにする。
【解決手段】乗りかごのドア及び乗場のドアの開閉を制御するエレベーターシステムであり、乗りかごに積載される積載物を検知し、検知結果に基づいて乗りかごに積載される積載物の種別を判定する積載物検知判定部104と、乗りかごの停止階への着床時に、乗りかごのドア及び乗場のドアの開閉を制御するドア制御部106を備える。ドア制御部106は、積載物検知判定部104の積載物の種別の判定結果に応じて、乗りかごのドア及び乗場のドアの開から閉までの時間であるドアタイムを変更する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごのドア及び乗場のドアの開閉を制御するエレベーターシステムであり、
前記乗りかごに積載される積載物を検知し、検知結果に基づいて前記乗りかごに積載される積載物の種別を判定する積載物検知判定部と、
前記乗りかごの停止階への着床時に、前記乗りかごのドア及び乗場のドアの開閉を制御するドア制御部と、を備え、
前記ドア制御部は、前記積載物検知判定部の積載物の種別の判定結果に応じて、前記乗りかごのドア及び乗場のドアの開から閉までの時間であるドアタイムを変更する
エレベーターシステム。
【請求項2】
前記乗りかごの停止階ごとの標準のドアタイムを記憶するエレベーターメモリを備え、
前記ドア制御部は、前記乗りかごの停止階に応じたドアタイムを前記エレベーターメモリから読み出すと共に、読み出したドアタイムを前記積載物検知判定部の積載物の種別の判定結果に応じて修正する
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項3】
前記ドア制御部は、前記積載物検知判定部が積載物を判定した停止階でのドアタイムを変更すると共に、その停止階で行先階が登録されたとき、該当する行先階に停止した際のドアタイムを変更する
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項4】
前記積載物検知判定部は、前記乗りかごに積載される積載物の種別及び積載物の数の判定結果に応じてドアタイムを修正する
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項5】
前記積載物検知判定部は、前記積載物に取り付けられた無線通信タグからの信号を受信して、積載物の種別を判定する
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項6】
前記積載物検知判定部が、前記積載物の前記乗りかご内での移動が停止したことを判定するまで、前記ドア制御部は、前記乗りかごのドア及び乗場のドアの開を維持させる
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項7】
前記積載物検知判定部が判定した積載物についての情報を記憶した積載物判定データベースを備え、
前記ドア制御部は、前記積載物判定データベースの情報に基づいて、ドアタイムを修正する
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項8】
乗りかごのドア及び乗場のドアの開閉を制御するエレベータードア制御方法において、
前記乗りかごに積載される積載物を検知し、検知結果に基づいて前記乗りかごに積載される積載物の種別を判定する積載物検知判定処理と、
前記乗りかごの停止階への着床時に、前記乗りかごのドア及び乗場のドアの開閉を制御すると共に、前記積載物検知判定処理による積載物の種別の判定結果に応じて、前記乗りかごのドア及び乗場のドアの開から閉までの時間であるドアタイムを変更するドア制御処理と、を含む
エレベータードア制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターシステム及びエレベータードア制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの乗りかごに乗降する際、ドアは、乗客による開操作や、光電装置による乗込み検出、予め設定されたドアタイムによって、ドア開状態を継続している。建物の用途や使われ方により適切なドアタイムは異なるため、一般的に、ドア制御部はドアタイムを任意に変更することができる。また、ドア開閉時の速度においても、同様に変更が可能である。
【0003】
特許文献1には、乗客分布装置より出力される値から乗客のかご室内における片寄り度や、乗りかご内の荷重検出装置により検出した積載量に応じてドアの開閉速度を変更する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-1575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、人の乗込み状態を荷重センサや乗客分布感知センサによって検知し、ドア開閉速度の変更を行っている。
しかしながら、近年のバリアフリー化の進展や、各種移動サービス機器の普及により、エレベーターの利用者は、人のみではなく、車いすや荷物、ストレッチャ、ロボットなど多岐に渡るようになっている。これらの車いすや荷物、ストレッチャ、ロボットは、それぞれ移動速度も様々である。
【0006】
したがって、特許文献1に記載されるように、人の荷重や分布を検知するだけでは、乗りかごの乗降を円滑に制御することは困難になっている。また、人以外の移動体を考慮した場合、乗りかごの乗降を円滑に制御するためには、ドア開閉速度だけでなく、ドアが開いている時間(ドアタイム)を制御することも必要となるが、従来、そのようなことを考慮した制御は行われていなかった。
【0007】
本発明の目的は、乗りかごに乗降する人や積載された物の種類に応じて、適切に運転状況の制御を行うことが可能なエレベーターシステム及びエレベータードア制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、乗りかごのドア及び乗場のドアの開閉を制御するエレベーターシステムであり、乗りかごに積載される積載物を検知し、検知結果に基づいて乗りかごに積載される積載物の種別を判定する積載物検知判定部と、乗りかごの停止階への着床時に、乗りかごのドア及び乗場のドアの開閉を制御するドア制御部と、を備える。
ここで、ドア制御部は、積載物検知判定部の積載物の種別の判定結果に応じて、乗りかごのドア及び乗場のドアの開から閉までの時間であるドアタイムを変更するようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、積載物の種類や数によって、ドアタイムを自動で変更することができるので、エレベーター利用時に、挟まれるリスクを低減し、エレベーターの利便性の向上を図ることができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態例によるエレベーターシステムの構成図である。
図2】本発明の一実施の形態例によるエレベーターシステムの制御系のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施の形態例によるエレベーターシステムのドア制御の全体処理の例を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施の形態例によるエレベーターシステムの積載物判定処理の例を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施の形態例によるエレベーターシステムのドア閉時の処理の例を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施の形態例によるエレベーターシステムの積載物不明時の処理の例を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施の形態例の変形例によるエレベーターシステムのRFID対応時の処理の例を示すフローチャートである。
図8】本発明の一実施の形態例の変形例によるエレベーターシステムの走行速度不明のロボット乗込時の処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)によるエレベーターシステム及びエレベータードア制御方法を、添付図面を参照して説明する。
【0012】
[システム全体の構成及び動作]
図1を用いて、本例のエレベーターシステム100の構成と動作について説明する。図1では、エレベーターシステム内の乗りかごのドア及び乗場のドアの制御を行う構成とその動作を中心に説明し、乗りかごの走行(昇降)などを行う構成と動作の説明は省略する。
【0013】
エレベーターシステム100は、乗りかごのドア105を制御するドア制御部106と、積載物検知判定部104とを備える。積載物検知判定部104は、検知部102と積載物判定部103とを有する。
乗りかごのドア105は、ドア制御部106による制御で、乗りかごが各階に停止した状態で開閉する。また、乗りかごのドア105の開閉に連動して、停止した階の乗場ドア(不図示)も開閉する。以下の説明では、乗りかごのドア105の開閉のみを説明するが、乗りかごのドア105の開閉時には、ドア制御部106の制御により停止階の乗場ドアも乗りかごのドア105に連動して開閉する。
【0014】
積載物検知判定部104は、乗りかごの積載物検知判定処理を行う。すなわち、積載物検知判定部104の検知部102は、例えば乗りかご内に設置されたステレオカメラで構成され、乗りかご内を撮像した画像を取得する。但し、検知部102としてステレオカメラを使用するのは一例であり、単眼のカメラや、カメラ以外のセンサを用いてもよい。
積載物検知判定部104の積載物判定部103は、検知部102で取得した画像などから、乗りかご内の積載物や乗客の種類を判定する。すなわち、積載物判定部103は、各階に停止した乗りかごに乗り込んだ物(者)が、乗客か、乗客以外の積載物かを判定する。さらに、乗客以外の積載物と判定した場合には、積載物判定部103は、その積載物の種類を判定する。積載物判定部103が積載物の種類を判定する際には、積載物判定データベース107に記憶されている情報が利用される。
【0015】
例えば、積載物判定データベース107には、ストレッチャ、ロボットなどの自律移動機器、車いす等の形状などの情報が記憶されており、積載物判定部103は、その記憶情報に基づいて、検知部102で取得した画像に含まれる積載物の種類を判定する。
また、積載物判定データベース107には、図1に示すように、それぞれの種類の積載物のドアタイムも記憶されている。この積載物のドアタイムは、該当する積載物1個ごとのドアタイムである。
なお、積載物判定部103は、乗りかご内の積載物や乗客を判定する際に、乗り込んだ積載物の数や乗客の人数についても判定する。
積載物判定部103は、乗りかごの積載物を判定したとき、その積載物の種類に対応したドアタイムの情報を積載物判定データベース107から読み出し、ドア制御部106に供給する。
【0016】
ドア制御部106は、乗りかごが各階に停止した際のかごドア105の開閉を制御する。ドア制御部106がかごドア105の開閉を制御する際には、ドア制御部106は、エレベーターメモリ108に記憶されている各階のドアタイムの情報を読み出して、乗りかごに乗降する人と積載物に該当するドアタイムを設定する。
すなわち、本例のエレベーターシステム100では、乗りかごが停止可能な全ての階についてのドアタイムの情報が、エレベーターメモリ108に記憶され、ドア制御部106は、乗りかごが停止した階のドアタイムをエレベーターメモリ108から読み出して、ドアタイムを設定する。例えば、ビルの出入口が設置された1階では、ドアタイムを比較的長くした10秒とし、その他の階では、ドアタイムは、1階よりも短い5秒とする。
【0017】
なお、本例のエレベーターシステム100におけるドアタイムは、ドア開になってから、ドア閉になる時間であり、「秒」で示される。このドア開になってからドア閉になるまでのドアタイムは、例えば、かごドア105が完全に開になってから、かごドア105が閉動作を開始するまでの時間とする。但し、ドアタイムの計測時間は、かごドア105が開動作を開始してから、かごドア105が完全に閉になるまでの時間など、その他の時間でもよい。
また、ここでのドアタイムは、乗りかご内の操作盤上でのドア閉やドア開などの操作がない場合の時間であり、操作盤で操作があった場合には、ドアタイムが操作に対応して変化することは言うまでもない。
【0018】
エレベーターメモリ108の記憶データは、例えばエレベーターシステム100の動作を監視する監視センタ等に設置された端末110により、変更が可能である。例えば、ビル内の特定階で何らかのイベントが開催される等の理由で、その特定階のドアタイムを通常よりも長い時間に変更することができる。
【0019】
なお、図1の構成では、エレベーターメモリ108や積載物判定データベース107は、ビル内のエレベーターシステム100が備える構成とした。これに対して、これらのエレベーターメモリ108,積載物判定データベース107のいずれか一方又は双方とも、外部のサーバなどに用意されて、通信回線を介してドア制御部106や積載物判定部103が必要な情報を取得するようにしてもよい。
【0020】
[制御系のハードウェア構成例]
図2は、本例のエレベーターシステム100のドア制御部106や積載物判定部103を構成するコンピュータのハードウェア構成例を示す。
図1に示すドア制御部106や積載物判定部103は、例えば情報処理装置であるコンピュータにより構成することができる。
すなわち、エレベーターシステム100が備えるコンピュータは、プロセッサであるCPU(中央処理ユニット:Central Processing Unit)100a、ROM(Read Only Memory)100b、RAM(Random Access Memory)100c、及び不揮発性ストレージ100dを備える。
不揮発性ストレージ100dとしては、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、あるいは半導体メモリなどが使用される。
また、コンピュータは、他の機器とデータの送受信を行うためのネットワークインターフェース100eと、各種情報が入力される入力装置100fと、制御情報などを出力する出力装置100gとを備える。
【0021】
CPU100aは、ROM100bまたは不揮発性ストレージ100dに記憶されたプログラムをRAM100c上で実行する。これにより、図1に示すドア制御部106や積載物判定部103などの各処理部が構成される。
不揮発性ストレージ100dには、エレベーターシステム100としての制御処理を行うプログラムが記憶される他に、積載物判定データベース107やエレベーターメモリ108としての情報も記憶される。
【0022】
ネットワークインターフェース100eは、外部の端末110やエレベーター監視センタなどとの通信機能を有する。
入力装置100fは、乗りかごの制御盤からの情報や、検知部102が検知した画像データの入力処理を行う。
出力装置100gは、乗りかごのドア105を制御する情報の出力処理を行う。
【0023】
[ドアタイム設定処理]
次に、本例のエレベーターシステム100のドア制御部106によるドア制御処理について説明する。
図3は、ドア制御部106によるドア制御処理の全体を示すフローチャートである。
まず、利用者が特定の階(ここではn階)の乗場にてエレベーターの呼びを作成した場合、乗りかごは乗場呼びに応答し、n階に到着して停止し、乗込みのためにドアを開く(ステップS11)。
ここで、ドア制御部106は、n階のドアタイムをエレベーターメモリ108から読み出す(ステップS12)。そして、ドア制御部106は、読み出したドアタイムの情報に基づいてドアタイムを設定する(ステップS13)。このドアタイムの設定時には、ドア制御部106は、積載物判定部103が判定した積載物に応じてドアタイムを修正して設定する。
【0024】
ステップS13において、ドアタイムが設定された後は、ドア制御部106は、設定されたドアタイムがドア開閉時間より大きいか否かを判定する(ステップS14)。そして、ステップS14で、ドアタイムがドア開閉時間より小さいと判定された場合(ステップS14のYes)には、ドア制御部106は、エレベーターの乗り場ドアと乗りかごのドアを閉める(ステップ)。一方、ステップS14で、ドアタイムがドア開閉時間より大きいと判定された場合(ステップS14のNo)には、ドア制御部106は、エレベーターと乗りかごのドア開を継続し(ステップS15)、ステップS14に戻る。
そして、ステップS14で、ドア開時間がドアタイムと等しくなったとき(ステップS14のYes)、ドア制御部106は、かごドア105を閉じる指令を乗りかごに送り、かごドア105を閉じさせる(ステップS16)。
【0025】
ステップS13におけるドアタイムの設定処理の詳細は、図3の右側に示すとおりである。
まず、積載物判定部103は、検知部102で取得された画像から積載物を判定し、判定した積載物のドアタイムを積載物判定データベース107から読み出す(ステップS21)。このステップS21で読み出す積載物のドアタイムは、積載物1個ごとのドアタイムであり、積載物が複数個である場合には、図4のフローチャートで後述するように、積載物判定処理で得た積載物の個数に対応した加算値となる。
そして、積載物判定部103は、読み出した積載物のドアタイムを、ドア制御部106に供給する。
【0026】
ドア制御部106は、ステップS12でエレベーターメモリ108から読み出したn階のドアタイムと、ステップS21で得た積載物のドアタイムとを比較し、積載物のドアタイムの方が大きいか否かを判断する(ステップS22)。
ステップS22で、積載物のドアタイムの方が大きい場合(ステップS22のYes)、ドア制御部106は、ステップS21で得たドアタイムを、現在の停止階のドアタイムに設定する(ステップS23)。また、ステップS22で、積載物のドアタイムよりもn階のドアタイムの方が大きいか等しい場合(ステップS22のNo)、ドア制御部106は、ステップS12でエレベーターメモリ108から読み出したn階のドアタイムを修正しない。
【0027】
また、ドア制御部106は、乗りかごの停止中、あるいはn階から走行を開始した直後に、乗りかご内の操作盤で行先階が登録されたとき(ステップS31)、登録された行先階のドアタイムの設定処理を行う。すなわち、ステップS31で乗りかご内の操作盤で行先階が登録されると、ドア制御部106は、登録された行先階のドアタイムをエレベーターメモリ108から読み出す(ステップS32)。
そして、ステップS32でエレベーターメモリ108から読み出した行先階のドアタイムと、ステップS21で得た積載物のドアタイムとを比較し、積載物のドアタイムの方が大きいか否かを判断する(ステップS33)。
【0028】
ステップS33で、積載物のドアタイムの方が大きい場合(ステップS33のYes)、ドア制御部106は、ステップS21で得たドアタイムを、行先階に停止した際のドアタイムに設定して登録する(ステップS34)。
また、ステップS33で、積載物のドアタイムよりも行先階のドアタイムの方が大きいか等しい場合には(ステップS33のNo)、ドア制御部106は、ステップS32でエレベーターメモリ108から読み出した行先階のドアタイムを修正しない。
なお、ステップS34で登録されたドアタイムは、ドア制御部106の制御により乗りかごが行先階に停止した際のドアタイムとして設定される。
【0029】
図4は、本例のエレベーターシステム100の積載物判定部103による乗りかごの積載物の判定処理と、その判定処理によるドアタイム設定処理を示すフローチャートである。
まず、積載物判定部103は、乗りかごが停止した際に、検知部102で検出された積載物の情報を取得し、判定のための特徴量を抽出する(ステップS41)。このステップS41では、例えば、積載物判定部103は、乗込みがない状態で撮影された初期画像と、乗込み時の画像を比較して、その差分を抽出する。
そして、積載物判定部103は、抽出した差分の画像で示される積載物の特徴量を、積載物判定データベース107の情報と比較する(ステップS42)。
【0030】
積載物判定部103は、ステップS42の比較の結果から、現在の停止階で人だけが乗り込んだか否かを判断する(ステップS43)。ステップS43で人だけが乗り込んだと判断したとき(ステップS43のYes)、ドア制御部106は、現在の停止階のドアタイムを、エレベーターメモリ108から読み出した該当階のドアタイムを標準値とし(ステップS44)、この標準値をドア閉までの時間を決めるドアタイムに設定する(ステップS45)。
なお、ドア制御部106は、このステップS45で設定したドアタイムにより、図3のフローチャートで説明した、ステップS13におけるドアタイム設定処理を行う。
【0031】
また、ステップS43で人以外もエレベーターに乗り込んだと判断したとき(ステップS43のNo)、積載物判定部103は、ステップS41で抽出した積載物の特徴量が、積載物判定データベース107のいずれかの積載物の情報と一致するか否かを判断する(ステップS46)。ステップS46で積載物判定データベース107の情報と一致したものがある場合(ステップS46のYes)、積載物判定部103は、積載物判定データベース107の情報と一致したものを積載物として特定する(ステップS47)。ここでの特定処理は、例えば乗り込んだ積載物が複数であるとき、1つ1つの積載物に対して個別に行われる。
【0032】
そして、積載物判定部103は、特定した積載物のドアタイムを積載物判定データベース107から読み出し、該当するドアタイムの加算処理を行う(ステップS48)。ステップS47で積載物が1つだけである場合には、積載物判定データベース107から読み出したドアタイムがそのまま加算値になる。
なお、ステップS47で積載物が複数である場合の2つ目以降のドアタイムの加算値は、積載物が連なって一緒に乗り込むことも考えられるので、単独の乗込み時間を単純加算するのではなく、単純加算値よりも短く設定されることがある。例えば、2台のストレッチャの乗り込みが検出されたとき、1台のドアタイムが15秒であるとすると、加算値は15秒+10秒のように、単純加算の30秒よりも短くしてもよい。
【0033】
次に、積載物判定部103は、乗り込んだ積載物が他にあるか否かを判断する(ステップS49)。ステップS49で、乗り込んだ積載物が他にある場合(ステップS49のYes)、積載物判定部103は、ステップS46の判断に戻る。
また、ステップS49で、乗り込んだ積載物が他にない場合(ステップS49のNo)、積載物判定部103は、現在のステップS48で得たドアタイムの加算値をドア制御部106に送り、ドア制御部106は、ステップS45で、そのドアタイムの加算値に基づいたドアタイム設定処理を行う。
【0034】
また、ステップS46で積載物判定データベース107の情報と一致しない場合(ステップS46のNo)、積載物判定部103は、ドアタイムを標準値に設定し(ステップS50)、このとき画像から検出した特徴量を積載物判定データベース107に新規に登録する(ステップS51)。そして、ドア制御部106は、ステップS45で、ステップS50で設定したドアタイム標準値の情報に基づいてドアタイム設定処理を行う。
なお、この新規登録した積載物のドアタイム標準値は、後述する図6のフローチャートの処理で更新される。
【0035】
図5は、ドア制御部106による乗りかごのドア105の制御処理の詳細を示すフローチャートである。
まず、ドア制御部106は、各階に停止してかごドア105を開としたとき、図4のフローチャートのステップS45で設定されたドアタイムを読み込む(ステップS61)。そして、ドア制御部106は、現在のドア開からの時間と、ステップS61で得たドアタイムとを比較し、ドア開時間がドアタイム未満か否かを判断する(ステップS62)。
【0036】
ステップS62で、ドア開時間がドアタイム未満のとき(ステップS62のNo)、ドア制御部106は、現在のドア開を継続し(ステップS63)、ステップS62の判断を繰り返す。
そして、ステップS62で、ドア開時間がドアタイムと等しくなったとき(ステップS62のYes)、ドア制御部106は、かごドア105を閉じる指令を乗りかごに送り、かごドア105を閉じさせる(ステップS64)。かごドア105が閉になることで、乗りかごは行先階への出発準備を行う。
【0037】
なお、ステップS63のドア開が継続している状態において、積載物の乗込みが早く行われ、乗りかご内の操作盤のドア閉釦が押下された場合には、ドア制御部106は、その操作に伴う制御を優先してかごドア105を閉じる処理を行う。また、ステップS64のドア閉の動作を行っている最中に、乗りかご内の操作盤のドア開釦が押下された場合には、ドア制御部106は、操作に伴う制御を優先してかごドア105を開く処理を行う。
【0038】
図6は、積載物判定部103で判定した積載物が、既に登録された積載物と一致せず、積載物を新規登録した場合のドア制御処理を示すフローチャートである。
不明な積載物が新規登録されると、ドア制御部106は、初期値として停止した階の標準のドアタイムをエレベーターメモリ108から読み出す(ステップS71)。
そして、ドア制御部106は、ドア開時間が標準のドアタイムと等しくなったか否かを判断する(ステップS72)。ステップS72で、ドア開時間が標準のドアタイムに到達していない場合(ステップS72のNo)、ドア制御部106は、乗りかご内の操作盤のドア閉釦でドア閉操作が行われたか否かを判断する(ステップS73)。ステップS73で、ドア閉釦が操作されていない場合(ステップS73のNo)、ドア制御部106は、ステップS72の判断に戻る。
【0039】
ステップS72でドア開時間が標準のドアタイムに到達した場合(ステップS72のYes)、並びにステップS73でドア閉釦が操作された場合(ステップS73のYes)、ドア制御部106は、かごドア105を閉じる指令を乗りかごに送り、かごドア105の閉動作を開始する(ステップS74)。
その後、ドア制御部106は、閉動作中にドア開釦の操作でドア閉が取り消されてドア開が継続するか否かを判断する(ステップS75)。ステップS75でドア開釦が操作されていない場合(ステップS75のNo)、積載物判定部103は、新規登録した積載物のドアタイムを標準ドアタイムに設定し、積載物判定データベース107にこの設定値を記憶する(ステップS76)。ここでの標準ドアタイムは、積載物判定データベース107に記憶されるドアタイムの最も短い時間(例えば5秒)である。
【0040】
また、ステップS75でドア開釦が操作された場合(ステップS75のYes)、その後、ドア制御部106は、ドア閉釦が操作されたか否かを判断する(ステップS77)。ステップS77でドア閉釦が操作されていない場合(ステップS77のNo)、ドア制御部106は、ステップS75の判断に戻る。
また、ステップS77でドア閉釦が操作された場合(ステップS77のYes)、ドア制御部106は、このときの停止階でのドア開からドア閉動作を開始するまでの時間を判断する(ステップS78)。
そして、積載物判定部103は、新規登録した積載物のドアタイムを、ステップS78で判断した時間に設定し、積載物判定データベース107にこの設定値を記憶する(ステップS79)。
【0041】
[本実施の形態例による効果]
以上説明したように、本例のエレベーターシステム100によると、乗りかごの積載物の種類や数によって、ドアタイムを自動で変更する処理が行われ、挟まれリスクの低減と利便性の向上を図ることができる。
この場合、乗りかごの停止階ごとに、個別にドアタイムが設定されて、各階のドアタイムと積載物の種類及び数に応じたドアタイムとが比較される。そして、積載物の種類及び数に応じたドアタイムの方が長い場合には、それに対応させてドアタイムを延長するようにしたので、各停止階で適切に積載物の種類及び数に応じたドアタイムが設定されるようになる。
【0042】
また、検知した積載物が乗り込んだ階で行先階が登録された場合に、行先階に到着した際に積載物を降ろす場合のドアタイムに関しても、積載物が乗り込んだ際と同様に設定されるので、積載物を乗りかごから降ろす際のドアタイムも、自動的に適切に設定されるようになる。
【0043】
また、新規に積載物が登録された場合には、その新規に登録された積載物が乗り込んだ際の実際の乗り込み階でのドア開となった時間に基づいて、新規登録された積載物のドアタイムが登録されるので、新規登録された積載物のドアタイムを自動的に適切に登録できるようになる。
【0044】
[変形例]
なお、ここまで説明した実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上述した実施の形態例で説明した構成や処理は、各種変形や変更が可能である。
【0045】
例えば、上述した実施の形態例では、検知部102はカメラとして、画像から積載物や乗客を検知するようにした。これに対して、例えば検知部102として、RFID(Radio Frequency Identification)等と称される無線通信タグからの信号を受信する受信部としてもよい。この場合、検知部102が、積載物に取り付けられた無線通信タグからの信号を受信して、乗りかごの積載物を判断する。例えば、ストレッチャやロボットなどの頻繁にエレベーターを利用する積載物に、RFIDを貼り付けておく。
【0046】
図7は、この無線通信タグ(RFID)を使用した場合の、ドア制御部106及び積載物判定部103における積載物判定処理を示すフローチャートである。
まず、積載物判定部103は、検知部102でRFIDからの信号を受信したか否かを判断する(ステップS81)。ステップS81で、検知部102でRFIDからの信号を受信しない場合(ステップS81のNo)、ドア制御部106は、ドアタイムとして停止した階のドアタイムをエレベーターメモリ108から読み出し、そのドアタイムを設定する(ステップS82)。
【0047】
また、ステップS81で、検知部102でRFIDからの信号を受信した場合(ステップS81のYes)、積載物判定部103は、RFIDからの信号を識別して、識別した情報と予め登録されたRFIDの情報とを照合して、積載物の種類と数量を判定する(ステップS83)。そして、積載物判定部103は、判定した積載物の種類と数量に対応したドアタイムを、積載物判定データベース107から読み出す(ステップS84)。読み出したドアタイムは、積載物判定部103からドア制御部106に供給され、ドア制御部106は、積載物判定部103から供給されたドアタイムに基づいてドアタイムの設定を行い、(ステップS85)、乗りかごのドア開閉を制御する。
【0048】
このようにして、RFIDなどの無線通信タグを使用して、エレベーターの積載物を判定することで、積載物に応じたドアタイムの設定を、簡単な検知で行うことが可能になる。
例えば、ストレッチャにRFIDに貼り付けるようにすることで、積載物の種類であるストレッチャと、そのストレッチャの台数を確実に検出してドアタイムを適切に設定することができる。
【0049】
具体的には、積載物としてのストレッチャが2台連なって1つの乗りかごに乗り込みする場合、ストレッチャの1台あたり乗込み必要時間を5秒とすると、ドア制御部106は、2台分の10秒をドアタイムに設定する。したがって、ドア制御部106は、ストレッチャ乗り込み時に、その階に設定されたドアタイムがいずれであっても、少なくとも10秒間、かごドア105を開状態とする処理を行うことができる。これにより、ストレッチャは、時間に余裕をもって円滑に乗りかごに乗込むことができる。さらに、行先階での降車時も、同様の制御が行われ、時間に余裕をもって円滑に降りることができる。
【0050】
また、上述した実施の形態例では、積載物の種類や数で、ドアタイムを設定するようにしたが、積載物判定部103は、積載物が自律移動型のロボットの場合に、データベースに予め登録された該当ロボットの移動速度に応じてドアタイムを設定するようにしてもよい。例えば、速度が0.1m/sのロボットの場合、乗込み完了までに時間を要するため、ドアタイムは15秒に設定する。また、速度が0.5m/sのロボットの場合、比較的短時間での乗込みが可能なため、ドアタイムは7秒に設定する。
【0051】
図8は、移動速度が不明なロボットの場合のドアタイムを設定する制御処理を説明するためのフローチャートである。
すなわち、図8のフローチャートに示すように、積載物判定部103は、検知した積載物(ここでは自律移動型のロボット)の種類や数を検出して、その検出したロボットの種類及び数に応じた標準的なドアタイムを設定する(ステップS91)。
【0052】
すると、ドア制御部106は、ドア開時間がステップS91で設定したドアタイムになったか否かを判断する(ステップS92)。ステップS92で、ステップS91で設定したドアタイムになっていないと判断した場合(ステップS92のNo)、ドア制御部106はステップS92の判断を繰り返す。
そして、ステップS92で、ステップS91で設定したドアタイムになったと判断した場合(ステップS92のYes)、積載物判定部103は、積載物であるロボットの乗りかご内の位置を検知する(ステップS93)。積載物判定部103は、このステップS93で検知した乗りかご内の位置が、完全に乗りかご内に乗り込んだ状態か否かを判断する(ステップS94)。
【0053】
ステップS94でロボットが完全には乗りかご内に乗り込んでいない場合(ステップS94のNo)、ドア制御部106はドア開を継続させ(ステップS95)、ステップS93のロボット位置の検知処理に戻る。
また、ステップS94でロボットが完全に乗りかご内に乗り込んでいる場合(ステップS94のYes)、積載物判定部103は、ロボットが乗りかご内で停止して1秒以上経過したか否かを判断する(ステップS96)。
【0054】
ステップS96でロボットが乗りかご内で停止していない場合、あるいは停止しても1秒経過していない場合(ステップS96のNo)、ステップS95の処理に移り、ドア制御部106がドア開を継続させ、ステップS93のロボット位置の検知処理に戻る。
また、ステップS96でロボットが乗りかご内で停止して1秒以上経過した場合(ステップS96のYes)、ドア制御部106はドア閉とする制御を行う(ステップS97)。
【0055】
このようにして、自律移動型のロボットの移動速度に応じてドアタイムを設定することで、より適切なドアタイムを設定することができる。また、移動速度が不明なロボットの場合には、ロボットが乗りかご内で停止した状態を検知してからドア閉とすることで、移動速度が不明なロボットであっても、適切なドアタイムの設定を行うことが可能になる。
なお、図8のフローチャートに示す処理は、移動速度が不明な自律移動型のロボットの例としたが、ストレッチャやその他の積載物などの場合でも、乗りかご内での移動が停止したことを検知して、ドア閉としてもよい。
【0056】
また、上述した実施の形態例では、各停止階で基本となるドアタイムを個別に設定するようにしたが、全ての停止階で基本となるドアタイムは同じとしてもよい。
また、ドアタイムを変更する処理として、各フローチャートで説明した処理は一例であり、他の処理を行って、ドアタイムを変更(修正)してもよい。例えば、各停止階で基本となるドアタイムに、各積載物に対応したドアタイムを単純に加算するようにして、ドアタイムを変更してもよい。
【0057】
また、図1に示す構成では、エレベーターシステム100が、ドア制御部106及び積載物検知判定部104を備えて、ドアタイムを自動で変更する処理を行うようにしたが、既存のエレベーターシステムの制御部に実装されたプログラムを修正して、同様の処理を行うようにしてもよい。
この場合のプログラムについては、図2に示したコンピュータ内の不揮発性ストレージやメモリに用意する他に、外部のメモリ、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に置いて、転送してもよい。
さらに、ドア制御部106及び積載物検知判定部104が行う機能の一部又は全部を、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアによって実現してもよい。
【0058】
また、図1に示す構成図では、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものだけを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。また、図3図8に示すフローチャートについても、処理結果が同じであれば、処理順序を変更したり、複数の処理を同時に実行してもよい。
【符号の説明】
【0059】
100…エレベーターシステム、100a…CPU、100b…ROM、100c…RAM、100d…不揮発性ストレージ、100e…ネットワークインターフェース、
100f…入力装置、100g…出力装置、102…検知部、103…積載物判定部、104…積載物検知判定部、105…ドア、106…ドア制御部、107…積載物判定データデータベース、108…エレベーターメモリ、110…端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8