IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ Joyson Safety Systems Japan株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-リトラクタ及びシートベルト装置 図1
  • 特開-リトラクタ及びシートベルト装置 図2
  • 特開-リトラクタ及びシートベルト装置 図3
  • 特開-リトラクタ及びシートベルト装置 図4
  • 特開-リトラクタ及びシートベルト装置 図5
  • 特開-リトラクタ及びシートベルト装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037090
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】リトラクタ及びシートベルト装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/40 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
B60R22/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141741
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 宏一
(72)【発明者】
【氏名】西 喜継
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018HA01
3D018HB06
3D018HE01
(57)【要約】
【課題】振動音の発生を低減することができる、リトラクタ及びシートベルト装置を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るリトラクタ1は、スプール2の回転を規制するロック機構4を備え、ロック機構4は、スプール2に対して相対回転可能に同軸上に配置されたロックギア41と、ロックギア41に配置されスプール2とロックギア41との相対回転によりパウル42を移動させるフライホイール43と、を備えている。フライホイール43は、相対回転方向Rの先端に配置された突起43fを有している。ロックギア41は、フライホイール43の非作動時に突起43fと接触してフライホイール43の姿勢を傾かせ、フライホイール43の作動時に突起43fとの接触が解除されるように構成されたストッパ41iを有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員を拘束するウェビングを巻き取るスプールと、該スプールを回転可能に収容するベースフレームと、前記スプールの回転を規制するロック機構と、を備えたリトラクタにおいて、
前記ロック機構は、前記スプールに対して相対回転可能に同軸上に配置されたロックギアと、前記ベースフレームと係合可能に配置されたパウルと、前記ロックギアに配置され前記スプールと前記ロックギアとの相対回転により前記パウルを移動させるフライホイールと、前記フライホイールを作動時の相対回転方向と反対方向に向かって付勢するフックスプリングと、を備え、
前記フライホイールは、前記相対回転方向の先端に配置された突起を有し、
前記ロックギアは、非作動時に前記突起と接触して前記フライホイールの姿勢を傾かせ、作動時に前記突起との接触が解除されるように構成されたストッパを有する、
ことを特徴とするリトラクタ。
【請求項2】
前記ストッパは、前記突起と接触する部分にテーパ面を有している、請求項1に記載のリトラクタ。
【請求項3】
前記ストッパは、前記ロックギアから立設された支持部と、前記突起の上部に接触可能に形成された突出部と、を有している、請求項1に記載のリトラクタ。
【請求項4】
前記突起は、前記ストッパと接触する部分に湾曲面を有している、請求項1に記載のリトラクタ。
【請求項5】
前記フライホイールは、非作動時に前記ロックギアにより三点支持されるように構成されている、請求項1に記載のリトラクタ。
【請求項6】
前記ロックギアは、前記フライホイールを旋回可能に支持する旋回軸と、該旋回軸の外周に配置された複数の係合爪と、前記旋回軸の根元部分の外周に沿って形成された案内部と、を備え、前記フライホイールは、前記旋回軸に挿通される挿通孔と、前記係合爪を係合させる係合孔と、を備え、前記フライホイールは、非作動時に、前記ストッパ、前記係合爪及び前記案内部により支持されるように構成されている、請求項1に記載のリトラクタ。
【請求項7】
前記フックスプリングは、非作動時に前記突起が前記ストッパに接触する方向に付勢するように配置されている、請求項1に記載のリトラクタ。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載のリトラクタを備える、ことを特徴とするシートベルト装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リトラクタ及びシートベルト装置に関し、特に、振動音の発生を低減することができるリトラクタ及びシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、一般に、乗員が着座する腰掛部と乗員の背面に位置する背もたれ部とを備えたシートに乗員を拘束するシートベルト装置が設けられている。かかるシートベルト装置は、乗員を拘束するウェビングと、ウェビングの巻き取りを行うリトラクタと、シートの側面に配置されたバックルと、ウェビングに配置されたトングとを含み、トングをバックルに嵌着させることによってウェビングにより乗員をシートに拘束している。
【0003】
かかるリトラクタは、ウェビングを巻き取るスプールと、該スプールを回転可能に収容するベースフレームと、前記スプールに巻き取り力を付与するスプリングユニットと、車両の急減速を検知するビークルセンサと、該ビークルセンサによって作動し前記スプールを前記ベースフレームに係合させるロック機構と、車両衝突時等の緊急時に前記ウェビングの弛みを除去するプリテンショナと、を備えていることが多い。
【0004】
例えば、特許文献1には、ロック機構として制御ディスクを備えたブロック装置の一部が開示されている。制御ディスクには旋回軸を中心に旋回可能に慣性質量体が配置されている。特許文献1に記載された発明では、慣性質量体による騒音(振動音)を低減するために、慣性質量体の外縁に形成された当接面に当接するL字形状の突起を配置している。なお、制御ディスクはロックギアと称し、慣性質量体はフライホイールと称することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5545910号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたように突起と慣性質量体(フライホイール)とを当接した状態にしておくと慣性質量体(フライホイール)の旋回運動を阻害する要因となるため、少なからず隙間を設定しておく必要がある。したがって、この隙間は振動音を発生させる要因となる。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、振動音の発生を低減することができる、リトラクタ及びシートベルト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、乗員を拘束するウェビングを巻き取るスプールと、該スプールを回転可能に収容するベースフレームと、前記スプールの回転を規制するロック機構と、を備えたリトラクタにおいて、前記ロック機構は、前記スプールに対して相対回転可能に同軸上に配置されたロックギアと、前記ベースフレームと係合可能に配置されたパウルと、前記ロックギアに配置され前記スプールと前記ロックギアとの相対回転により前記パウルを移動させるフライホイールと、前記フライホイールを作動時の相対回転方向と反対方向に向かって付勢するフックスプリングと、を備え、前記フライホイールは、前記相対回転方向の先端に配置された突起を有し、前記ロックギアは、非作動時に前記突起と接触して前記フライホイールの姿勢を傾かせ、作動時に前記突起との接触が解除されるように構成されたストッパを有する、ことを特徴とするリトラクタが提供される。
【0009】
前記ストッパは、前記突起と接触する部分にテーパ面を有していてもよい。
【0010】
前記ストッパは、前記ロックギアに形成された支持部と、前記突起の上部に接触可能に形成された突出部と、を有していてもよい。
【0011】
前記突起は、前記ストッパと接触する部分に湾曲面を有していてもよい。
【0012】
前記フライホイールは、非作動時に前記ロックギアにより三点支持されるように構成されていてもよい。
【0013】
前記ロックギアは、前記フライホイールを旋回可能に支持する旋回軸と、該旋回軸の外周に配置された複数の係合爪と、前記旋回軸の根元部分の外周に沿って形成された案内部と、を備え、前記フライホイールは、前記旋回軸に挿通される挿通孔と、前記係合爪を係合させる係合孔と、を備え、前記フライホイールは、非作動時に、前記ストッパ、前記係合爪及び前記案内部により支持されるように構成されていてもよい。
【0014】
前記フックスプリングは、非作動時に前記突起が前記ストッパに接触する方向に付勢するように配置されていてもよい。
【0015】
また、本発明によれば、上述した何れかの構成を有するリトラクタを備える、ことを特徴とするシートベルト装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明に係るリトラクタ及びシートベルト装置によれば、フライホイールの非作動時に、フライホイールに形成された突起とロックギアに形成されたストッパとを接触させてフライホイールの姿勢を傾かせるようにしたことにより、フライホイールの作動時に必要なフライホイールの隙間を潰すことができ、非作動時におけるリトラクタ及びシートベルト装置の振動音の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るリトラクタを示す部品展開図である。
図2図1に示したロックギアにフライホイールを組み付けた状態を示す平面図である。
図3図2に示した部品の断面図であり、(A)はA-A矢視断面図、(B)はB-B矢視断面図、である。
図4図2に示した部品の断面図であり、(A)はC-C矢視断面図、(B)はD-D矢視断面図、である。
図5】作動時におけるフライホイールの挙動を示す平面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るシートベルト装置を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図1図6を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の一実施形態に係るリトラクタを示す部品展開図である。図2は、図1に示したロックギアにフライホイールを組み付けた状態を示す平面図である。なお、図1において、説明の便宜上、ウェビングの図を省略してある。
【0019】
本発明の一実施形態に係るリトラクタ1は、図1及び図2に示したように、乗員を拘束するウェビングを巻き取るスプール2と、スプール2を回転可能に収容するベースフレーム3と、スプール2の回転を規制するロック機構4と、を備え、ロック機構4は、スプール2に対して相対回転可能に同軸上に配置されたロックギア41と、ベースフレーム3と係合可能に配置されたパウル42と、ロックギア41に配置されスプール2とロックギア41との相対回転によりパウル42を移動させるフライホイール43と、フライホイール43を作動時の相対回転方向と反対方向に向かって付勢するフックスプリング44と、スプール2とロックギア41との間に配置されたロッキングベース45と、を備えている。
【0020】
スプール2は、ウェビングを巻き取る巻胴であり、例えば、一端はスプリングユニット5に回転可能に支持されており、他端はロッキングベース45に接続されている。ロッキングベース45は、キャップ46(軸受)を介してリテーナカバー6に回転可能に支持されている。
【0021】
スプリングユニット5は、スプール2を巻き取り方向に付勢する部品であり、ゼンマイバネを内蔵している。リテーナカバー6は、ロック機構4やビークルセンサ47を収容する部品である。なお、スプリングユニット5及びリテーナカバー6は、直接的又は間接的にベースフレーム3に固定される。
【0022】
また、リトラクタ1は、車両衝突時等の緊急時にウェビングの弛みを除去するプリテンショナ7を有していてもよい。例えば、プリテンショナ7は、質量体を放出可能なパイプ71と、パイプ71の後端に配置されたガス発生器72と、ガス発生器72の作動によりパイプ71から放出された質量体により回転されるリングギア73と、を備えている。
【0023】
プリテンショナ7は、例えば、ロッキングベース45に隣接するベースフレーム3の内側に配置される。なお、プリテンショナは、ロッキングベース45に隣接するベースフレーム3の外側に配置されていてもよいし、スプリングユニット5の内側に配置されていてもよい。
【0024】
ベースフレーム3は、例えば、略角型U字形状の断面を有するフレーム構造体であり、背面を構成する壁部材の両端に側面を構成する一対の壁部材が形成されている。この側面を構成する一対の壁部材にスプール2の端部(ロッキングベース45を含む)を挿通する開口部が形成されており、内周面には係合歯31が形成されている。また、側面を構成する一対の壁部材の先端には、正面を構成するタイプレートが接続されていてもよい。
【0025】
ロック機構4は、車両衝突時等の緊急時にウェビングの引き出しを規制する機構である。ロック機構4は、例えば、ロックギア41、パウル42、フライホイール43、ロッキングベース45、キャップ46、ビークルセンサ47等の部品により構成される。なお、ロック機構4は、図示した構成に限定されるものではない。
【0026】
ロッキングベース45は、スプール2の端部に接続される略円盤形状の部品である。ロッキングベース45は、ベースフレーム3の開口部に挿通され、外周部が係合歯31と対峙するように配置される。ロッキングベース45は、パウル42を収容可能な厚さを有し、外周の一部にパウル42を収容可能な空間をする収容部45aが形成されている。また、ロッキングベース45は、スプール2の回転軸を構成する軸部45bを有している。
【0027】
ビークルセンサ47は、例えば、球形の質量体47aと、質量体47aの移動によって揺動されるセンサレバー47bと、質量体47a及びセンサレバー47bを収容するセンサカバー47cと、を備えている。かかるビークルセンサ47は、車体に所定値以上の減速や傾きが生じると、質量体47aの釣り合いが崩れてセンサレバー47bが上方に押し上げられ、センサレバー47bの先端がロックギア41に係合し、ロックギア41の回転が規制される。
【0028】
パウル42は、ロックギア41がスプール2(ロッキングベース45)に対して相対回転すると案内溝41dに沿ってピン42aが移動し、先端部がロッキングベース45の側面から径方向に押し出され、先端部に形成された係合爪がベースフレーム3の係合歯31に係合する。この係合によりスプール2の回転がロックされウェビングの引き出しが規制される。なお、パウル42は、先端部(係合爪)がロッキングベース45の側面から径方向外方に飛び出さないように、パウルスプリング(図示省略)により径方向内方に付勢されている。
【0029】
ロックギア41は、例えば、ロッキングベース45に対面するように配置される平面を構成する円盤部41aと、円盤部41aの外縁に沿って外側に向かって立設された外周壁41bと、ロッキングベース45の軸部45bに挿通される中心部41cと、を備えている。外周壁41bの外周面には、ビークルセンサ47のセンサレバー47bと係合可能な係合歯41gが形成されている。
【0030】
円盤部41aには、パウル42のピン42aを案内する案内溝41d、フライホイール43を旋回可能に支持する旋回軸41e、旋回軸41eの外周に配置された複数の係合爪41f、旋回軸41eの根元部分の外周に沿って形成された案内部41h(図3参照)等が形成されている。円盤部41aと外周壁41bとにより形成された空間にはフライホイール43が配置される。なお、円盤部41aの表面にはフライホイール43を収容する空間を特定するための複数の突起が形成されていてもよい。
【0031】
フライホイール43は、例えば、ロックギア41の円盤部41a、外周壁41b及び中心部41cに囲まれた空間に挿入可能な形状に湾曲又は屈曲した形状を有し、相対回転方向Rの上流側に位置する第一端部43aと、相対回転方向Rの下流側に位置する第二端部43bとを有している。
【0032】
また、フライホイール43は、例えば、第一端部43aと第二端部43bとの中間部に形成されロックギア41の旋回軸41eに挿通される挿通孔43cと、挿通孔43cの外周に沿って配置されロックギア41の係合爪41fを係合させる複数の係合孔43dと、ロックギア41の案内部41hに沿って配置される環状の凸部43eと、を備えている。
【0033】
係合孔43dは、係合爪41fと係合したときに、係合爪41fの軸方向の移動を規制し、係合爪41fの旋回方向の移動を許容するように構成されている。また、係合孔43dの周方向の長さによりフライホイール43の相対回転量が規制される。また、凸部43eを案内部41hに案内させることにより、フライホイール43の相対回転を安定させることができる。
【0034】
また、フライホイール43は、相対回転方向Rの先端に配置された突起43fを有している。突起43fは、例えば、第一端部43aの延伸方向に沿って形成される。突起43fは、フライホイール43の相対回転方向Rと反対側の面又はロックギア41の外周壁41bに近い側の面に湾曲面43gを有している。
【0035】
ロックギア41は、フライホイール43の非作動時に突起43fと接触してフライホイール43の姿勢を傾かせ、フライホイール43の作動時に突起43fとの接触が解除されるように構成されたストッパ41iを有している。
【0036】
また、複数の係合爪41fは、例えば、旋回軸41eを挟んで、フライホイール43の第一端部43a側に配置された第一係合爪41jと、フライホイール43の第二端部43b側に配置された第二係合爪41kと、を備えている。なお、係合爪41fは、第一係合爪41j及び第二係合爪41k以外の係合爪を含んでいてもよい。
【0037】
フライホイール43は、例えば、第一端部43aと第二端部43bとが略直交する方向に形成されており、その略中心に挿通孔43cが形成される。第一係合爪41j及び第二係合爪41kは、例えば、挿通孔43cから第二端部43bに向かう方向の延長線上に対峙するように配置される。
【0038】
フックスプリング44は、例えば、フライホイール43と中心部41cとの間に形成された支持軸44a(図3参照)に挿通される。支持軸44aは、ロックギア41側に形成されていてもよいし、フライホイール43側に形成されていてもよい。また、フックスプリング44は、非作動時に突起43fがストッパ41iに接触する方向に付勢するように配置されている。
【0039】
フライホイール43の突起43f及びロックギア41のストッパ41iの構成について、図3(A)~図4(B)を参照しつつ説明する。ここで、図3は、図2に示した部品の断面図であり、(A)はA-A矢視断面図、(B)はB-B矢視断面図、である。図4は、図2に示した部品の断面図であり、(A)はC-C矢視断面図、(B)はD-D矢視断面図、である。
【0040】
図3(A)に示したように、ストッパ41iは、ロックギア41から立設された支持部41mと、突起43fの上部に接触可能に形成された突出部41nと、を有するフック形状に形成されている。突出部41nの下面は、突起43fと接触する面を構成し、突起43fと接触する部分にテーパ面41pを有している。
【0041】
また、突起43fは、ストッパ41iのテーパ面41pと接触する部分に湾曲面43gを有していてもよい。図3(A)に示した突起43fは、上側に傾斜面を有しているが、突起43fは、少なくとも、先端(相対回転方向Rと反対方向側の端部)に丸みを帯びた湾曲面43gを有していればよい。湾曲面43gは、テーパ面41pに沿って円滑に移動できる構成であれば、図示した形状に限定されるものではない。
【0042】
図3(B)に示したように、フライホイール43の非作動時、すなわち、突起43fがストッパ41iのテーパ面41pに押し付けられた状態では、突起43fがロックギア41の円盤部41aに接近するように沈み込み、フライホイール43の姿勢は角度αだけ傾斜した状態となる。このとき、フライホイール43の凸部43eの一部(突起43fが形成された側の部分)が、ロックギア41の案内部41hに押し付けられ、フライホイール43が傾斜する支点を構成する。
【0043】
フライホイール43は、図2に示したように、非作動時における凸部43eと案内部41hとの接点を通る直線Lを挟んで、ロックギア41の円盤部41aに接近するDown側(図の右側)と、ロックギア41の円盤部41aから離隔するUp側(図の左側)とに区別することができる。第一係合爪41j及び第二係合爪41kは、直線Lに沿って対峙するように配置されていてもよい。
【0044】
図4(A)に示した図2のC-C矢視断面図は、第一係合爪41jを通る断面を図示したものである。また、図4(B)に示した図2のD-D矢視断面図は、第二係合爪41kを通る断面を図示したものである。図4(A)及び図4(B)に示したように、フライホイール43の非作動時、すなわち、突起43fがストッパ41iのテーパ面41pに押し付けられた状態では、フライホイール43の表面が第一係合爪41j及び第二係合爪41kに押し付けられる。
【0045】
したがって、フライホイール43は、非作動時に、ストッパ41i、係合爪41f(第一係合爪41j及び第二係合爪41k)及び案内部41hにより支持される。つまり、フライホイール43は、図2に示した直線L上におけるフライホイール43の背面(凸部43eと案内部41hとの接点)を支点として、直線LのDown側の表面の一点(突起43fとストッパ41iとの接点)及び直線LのUp側の表面の二点(第一係合爪41j及び第二係合爪41kとフライホイール43との接点)によってロックギア41により三点支持される。
【0046】
ここで、図5は、作動時におけるフライホイールの挙動を示す平面図である。フライホイール43は、ウェビングが通常の引き出し速度よりも早い場合に相対回転方向Rに相対回転して、第二端部43bがリテーナカバー6に形成された内歯に係合するように構成されている。
【0047】
このとき、図5に示したように、フライホイール43の相対回転により突起43fはストッパ41iから離れる方向に移動し、突起43fはストッパ41iのテーパ面41pに沿って移動し、最終的に突起43fとストッパ41iとの接触が解除される。
【0048】
このフライホイール43(突起43f)の相対回転に伴ってフライホイール43の傾斜角度αは徐々に小さくなり、突起43fとストッパ41iとの接触が解除されることにより0°となる。すなわち、フライホイール43は、作動時に旋回軸41eに対して垂直な姿勢に速やかに移行し、フライホイール43を円滑に相対回転させることができる。
【0049】
上述した本実施絵形態に係るリトラクタ1によれば、フライホイール43の非作動時に、フライホイール43に形成された突起43fとロックギア41に形成されたストッパ41iとを接触させてフライホイール43の姿勢を傾かせるようにしたことにより、フライホイール43の作動時に必要なフライホイール43の隙間を潰すことができ、非作動時におけるリトラクタ1の振動音の発生を低減することができる。
【0050】
次に、本発明の一実施形態に係るシートベルト装置について、図6を参照しつつ説明する。ここで、図6は、本発明の一実施形態に係るシートベルト装置を示す全体構成図である。なお、図6において、説明の便宜上、シートベルト装置以外の部品については、一点鎖線で図示している。
【0051】
図6に示した本実施形態に係るシートベルト装置100は、乗員を拘束するウェビングWと、ウェビングWの巻き取りを行うリトラクタ1と、車体側に設けられウェビングWを案内するガイドアンカー101と、ウェビングWを車体側に固定するベルトアンカー102と、乗員が着座するシートSの側面に配置されたバックル103と、ウェビングWに配置されたトング104と、を備え、リトラクタ1は、例えば、図1に示した構成を有している。
【0052】
以下、リトラクタ1以外の構成部品について簡単に説明する。シートSは、例えば、乗員が着座する腰掛部S1と、乗員の背面に位置する背もたれ部S2と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト部S3と、を備えている。リトラクタ1は、例えば、車体のBピラーPに内蔵される。
【0053】
また、一般に、バックル103は腰掛部S1の側面に配置されることが多く、ベルトアンカー102は腰掛部S1の下面に配置されることが多い。また、ガイドアンカー101は、BピラーPに配置されることが多い。そして、ウェビングWは、一端がベルトアンカー102に接続され、他端がガイドアンカー101を介してリトラクタ1に接続されている。
【0054】
したがって、トング104をバックル103に嵌着させる場合、ウェビングWはガイドアンカー101の挿通孔を摺動しながらリトラクタ1から引き出されることとなる。また、乗員がシートベルトを装着した場合や降車時にシートベルトを解除した場合には、リトラクタ1のスプリングユニット5の作用により、ウェビングWは一定の負荷がかかるまで巻き取られる。
【0055】
上述したシートベルト装置100は、車両の前部座席に配置されたシートSに適用した場合について説明しているが、シートベルト装置100は後部座席に配置されたシートSに適用するようにしてもよい。また、シートベルト装置100は、車両以外の乗物に使用されるシートベルト装置に適用してもよい。
【0056】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
1 リトラクタ
2 スプール
3 ベースフレーム
4 ロック機構
5 スプリングユニット
6 リテーナカバー
7 プリテンショナ
31 係合歯
41 ロックギア
41a 円盤部
41b 外周壁
41c 中心部
41d 案内溝
41e 旋回軸
41f 係合爪
41g 係合歯
41h 案内部
41i ストッパ
41j 第一係合爪
41k 第二係合爪
41m 支持部
41n 突出部
41p テーパ面
42 パウル
42a ピン
43 フライホイール
43a 第一端部
43b 第二端部
43c 挿通孔
43d 係合孔
43e 凸部
43f 突起
43g 湾曲面
44 フックスプリング
44a 支持軸
45 ロッキングベース
45a 収容部
45b 軸部
46 キャップ
47 ビークルセンサ
47a 質量体
47b センサレバー
47c センサカバー
71 パイプ
72 ガス発生器
73 リングギア
100 シートベルト装置
101 ガイドアンカー
102 ベルトアンカー
103 バックル
104 トング

図1
図2
図3
図4
図5
図6