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特開2024-37097把持部材、それを有する分離膜モジュール及び分離膜モジュールの組付方法
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  • 特開-把持部材、それを有する分離膜モジュール及び分離膜モジュールの組付方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037097
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】把持部材、それを有する分離膜モジュール及び分離膜モジュールの組付方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/00 20060101AFI20240311BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20240311BHJP
   B01D 63/06 20060101ALI20240311BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20240311BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B01D63/00 500
F16J15/10 D
F16J15/10 U
F16J15/10 C
B01D63/06
B01D53/22
C01B3/56 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141750
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 純一
(72)【発明者】
【氏名】上林 裕之
【テーマコード(参考)】
3J040
4D006
4G140
【Fターム(参考)】
3J040AA02
3J040AA11
3J040AA17
3J040BA02
3J040BA03
3J040EA02
3J040FA07
3J040HA03
3J040HA15
4D006GA41
4D006HA28
4D006JA23C
4D006JA24A
4D006JA24C
4D006JB01
4D006MA02
4D006MC02
4D006MC03
4D006PA01
4D006PB66
4G140FA06
4G140FC01
4G140FE01
(57)【要約】
【課題】水素ガス分離装置のフランジの貫通孔と筒状ガス分離体の間の隙間をシールして分離されるガスや原料の侵入を防ぎ、高温下でも機能を発揮し、筒状ガス分離体に大きな外力を加えずに動かないように固定できるようにする。
【解決手段】分離膜モジュール1は、装置本体から露出する開放端2bを有し、かつガス分離膜を有する複数の筒状ガス分離体2と、複数のフランジ貫通孔3aを有するフランジ3と、筒状ガス分離体2のそれぞれの開放端2bとフランジ貫通孔3aの内側壁との間の隙間を封止するシール構造10とを有し、このシール構造10は、フランジ貫通孔3aの開放端2b側内周縁に形成されたOリング用溝部3bに嵌め込まれるOリング4と、フランジ貫通孔3aの開放端2bと反対側内周縁に形成された断面台形状の把持部材用溝部3cに嵌められる、筒状ガス分離体2を把持する、Oリング4よりも剛性の高い略台形断面の樹脂製把持部材5とを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離膜モジュールと、混合ガスが滞留する内部空間を有しかつ前記内部空間が露呈する窓部が設けられた装置本体とを有し、前記分離膜モジュールが、前記装置本体から露出する開放端を有し、かつガス分離膜を有する複数の筒状ガス分離体と、複数のフランジ貫通孔を有するフランジとを有する水素ガス分離装置に用いられ、
前記筒状ガス分離体のそれぞれの前記開放端側が前記フランジ貫通孔に挿通され、前記開放端と前記フランジ貫通孔の内側壁との間に配置されて前記筒状ガス分離体を把持する把持部材であって、
前記フランジ貫通孔の内周縁に凹陥された断面台形状の把持部材用溝部に嵌められる略台形断面の把持部材本体と、
前記把持部材本体から前記筒状ガス分離体の外周に向かって拡がるように延びる湾曲した断面を有する突出接触面とを有する
ことを特徴とする把持部材。
【請求項2】
前記把持部材本体が、樹脂成形品で作られた環状部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の把持部材。
【請求項3】
前記把持部材本体の外周には、凹条が間隔を開けて複数凹陥されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の把持部材。
【請求項4】
混合ガスが滞留する内部空間を有しかつ前記内部空間が露呈する窓部が設けられた装置本体に取り付けられる分離膜モジュールであって、
前記装置本体から露出する開放端を有し、かつガス分離膜を有する複数の筒状ガス分離体と、
複数のフランジ貫通孔を有するフランジと、
前記筒状ガス分離体のそれぞれの前記開放端と前記フランジ貫通孔の内側壁との間の隙間を封止するシール構造とを有し、
前記シール構造は、
前記フランジ貫通孔の前記開放端と反対側内周縁に形成されたOリング用溝部に嵌め込まれるOリングと、
前記フランジ貫通孔の開放端側内周縁に形成された断面台形状の把持部材用溝部に嵌められる、前記筒状ガス分離体を把持する、前記Oリングよりも剛性の高い略台形断面の把持部材とを含む
ことを特徴とする分離膜モジュール。
【請求項5】
前記フランジ貫通孔に対応するガス分離体挿通孔を有し、前記フランジを上下から挟み込む上プレート及び下プレートとを有し、
前記下プレートが全ての前記Oリングを対応する前記Oリング用溝部にそれぞれ押さえ付け、
前記上プレートが全ての前記把持部材を対応する前記把持部材用溝部にそれぞれ押さえ付けるように構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の分離膜モジュール。
【請求項6】
前記把持部材は、
前記把持部材用溝部に嵌められる略台形断面の把持部材本体と、
前記把持部材本体から前記筒状ガス分離体の外周に向かって拡がるように延びる湾曲した断面を有する突出接触面とを有する
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の分離膜モジュール。
【請求項7】
分離膜モジュールと、混合ガスが滞留する内部空間を有しかつ前記内部空間が露呈する窓部が設けられた装置本体とを有し、
前記分離膜モジュールが、
前記装置本体から露出する開放端を有し、かつガス分離膜を有する複数の筒状ガス分離体と、
複数のフランジ貫通孔を有するフランジと、
前記フランジ貫通孔に対応するボルト挿通孔を有し、前記フランジを上下から挟み込む上プレート及び下プレートとを有する水素ガス分離装置における、前記分離膜モジュールの組付方法であって、
全ての筒状ガス分離体を下プレートのガス分離体挿通孔にそれぞれ挿通し、
前記筒状ガス分離体の挿通した端部側からOリングを挿通して装着し、
前記下プレートを前記筒状ガス分離体が前記フランジ貫通孔に挿入されるように前記フランジに当接させた状態で固定してOリングを前記フランジ貫通孔内周縁のOリング用溝部に密着させ、
全ての前記筒状ガス分離体の挿通した端部側から把持部材を挿通して装着し、
前記上プレートを前記筒状ガス分離体が前記上プレートの前記ガス分離体挿通孔に挿入されるように前記フランジに当接させた状態で固定して前記Oリングよりも剛性の高い把持部材を前記フランジ貫通孔内周縁の把持部材用溝部に密着させる
ことを特徴とする分離膜モジュールの組付方法。
【請求項8】
前記下プレートを前記フランジに当接させた状態で前記下プレートを前記フランジに締結することにより、全てのOリングを一度に前記フランジ貫通孔内周縁のOリング用溝部に密着させ、及び/又は、
前記上プレートを前記フランジに当接させた状態で前記上プレートを前記フランジに締結することにより、全ての把持部材を一度に前記フランジ貫通孔内周縁の把持部材用溝部に密着させる
ことを特徴とする請求項7に記載の分離膜モジュールの組付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持部材、それを有する分離膜モジュール及び分離膜モジュールの組付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図7に概略図で示すように、水素ガス分離装置110もしくは膜反応器は、筒状の容器130内に原料の触媒反応が進行する内部空間があり、筒状中空の多孔質基材と多孔質基材に担持されたガス分離膜とで構成されたガス分離体123が容器130内に配置され、ガス分離体123の片端123aは容器130内に、もう片端123bは容器130外に配置され、触媒反応により原料から分離した水素ガスがガス分離膜を通過してガス分離体123の内部に入り、容器130外にある片端123bから水素ガスのみを水素ガス取出し部140へ排出される構造となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8に拡大して示すように、ガス分離体123の片端123bは容器130のフランジ134に空いた貫通孔134aを貫通しており、その隙間をシールする構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-142160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記水素ガス分離装置110において、シールに要求される要件は次の通りとなっている。
【0006】
1)反応容器130内の原料や水素ガス等が水素ガス取出し部140へ侵入しないシール性能を有すること
2)容器130内は触媒反応を促すためにヒータ150で加熱され、シール部135は最大で200℃程度の温度がかかるため、その温度下でシール性能を維持すること
3)反応容器130内で圧力がかかり、ガス分離体は外部へ押し出される力が生じるため、シール部はガス分離体123が動かないように固定すること
4)ガス分離体123表面のガス分離膜は脆いため、大きな外力が加わると亀裂が生じ、亀裂に沿って水素ガスや原料の液が漏れる可能性があるため、ガス分離体123に対して大きな外力を加えないようにすること
5)反応容器130内で発生する水素ガスを効率的に回収するために、反応容器130内におけるガス分離体123の表面積が占める割合をなるべく高くすることが求められる。そのため複数のガス分離体123同士の間隔を極力近づけて配置することが可能であること
【0007】
従来は、シール部135に無機系接着剤(ガラスシール)を使用していた。無機系接着剤は耐熱性があり、ガス分離体123の固定が可能で、ガス分離膜に対して外力を加えない。
【0008】
しかしながら、フランジ134とガス分離体123の隙間に接着剤を均一に塗布することは困難であり、接着剤の硬化のために別の場所において高温で加熱する必要があるため作業性が悪く、接着層が均一に形成されていないことから十分なシール性が得られないという問題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水素ガス分離装置のフランジの貫通孔と筒状ガス分離体の間の隙間をシールして分離されるガスや原料の侵入を防ぎ、高温下でも機能を発揮し、筒状ガス分離体に大きな外力を加えずに動かないように固定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、この発明では、筒状ガス分離体の把持構造に工夫を加えた。
【0011】
具体的には、第1の発明では、分離膜モジュールと、混合ガスが滞留する内部空間を有しかつ前記内部空間が露呈する窓部が設けられた装置本体とを有し、前記分離膜モジュールが、前記装置本体から露出する開放端を有し、かつガス分離膜を有する複数の筒状ガス分離体と、複数のフランジ貫通孔を有するフランジとを有する水素ガス分離装置に用いられ、
前記筒状ガス分離体のそれぞれの前記開放端側が前記フランジ貫通孔に挿通され、前記開放端と前記フランジ貫通孔の内側壁との間に配置されて前記筒状ガス分離体を把持する把持部材であって、
前記フランジ貫通孔の内周縁に凹陥された断面台形状の把持部材用溝部に嵌められる略台形断面の把持部材本体と、
前記把持部材本体から前記筒状ガス分離体の外周に向かって拡がるように延びる湾曲した断面を有する突出接触面とを有する構成とする。
【0012】
上記の構成によると、筒状ガス分離体は、前記装置本体から露出する開放端と反対側がフリーの状態でフランジ貫通孔に挿通されて把持部材に固定されるが、把持部材の突出接触面が筒状ガス分離体の外周に密着状態で当接するので、筒状ガス分離体が安定して保持される。また、把持部材の断面が略台形であり、把持部材用溝部に嵌められた状態で突出接触面を筒状ガス分離体側へ押し付ける効果が得られる。このため、内部空間の圧力が高くなっても筒状ガス分離体が動かない。なお、把持部材を耐熱性の高いPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの樹脂成形品などで成形することにより、耐熱性は容易に確保できる。
【0013】
第2の発明では、第1の発明において、
前記把持部材本体は、樹脂成形品で作られた環状部材である。
【0014】
上記の構成によると、樹脂成形品であるため、複雑な形状も成形でき、また、硬度が高すぎず、筒状ガス分離体を傷つけにくいが、適度な剛性を有するので、筒状ガス分離体をしっかり保持できる。さらに、耐熱性の高いPPSなどを選択することにより、耐熱性は容易に確保できる。
【0015】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
前記把持部材本体の外周には、凹条が間隔を開けて複数凹陥されている。
【0016】
上記の構成によると、把持部材本体が適度に変形するため、筒状ガス分離体を傷つけにくい。
【0017】
第4の発明では、
混合ガスが滞留する内部空間を有しかつ前記内部空間が露呈する窓部が設けられた装置本体に取り付けられる分離膜モジュールを対象とし、
前記分離膜モジュールは、
前記装置本体から露出する開放端を有し、かつガス分離膜を有する複数の筒状ガス分離体と、
複数のフランジ貫通孔を有するフランジと、
前記筒状ガス分離体のそれぞれの前記開放端と前記フランジ貫通孔の内側壁との間の隙間を封止するシール構造とを有し、
前記シール構造は、
前記フランジ貫通孔の前記開放端と反対側内周縁に形成されたOリング用溝部に嵌め込まれるOリングと、
前記フランジ貫通孔の前記開放端側内周縁に形成された断面台形状の把持部材用溝部に嵌められる、前記筒状ガス分離体を把持する、前記Oリングよりも剛性の高い略台形断面の把持部材とを含む構成とする。
【0018】
上記の構成によると、Oリング側で内部空間内の混合ガスの通過を阻止することができると共に、Oリングよりも剛性の高い把持部材によって、不安定になりやすい筒状ガス分離体を確実に保持できる。なお、Oリングを耐熱性の高いフッ素系ゴムとしたり、把持部材を耐熱性の高いPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの樹脂成形品などで成形したりすることにより、要求される耐熱性を容易に確保できる。
【0019】
第5の発明では、第4の発明において、
前記フランジ貫通孔に対応するガス分離体挿通孔を有し、前記フランジを上下から挟み込む上プレート及び下プレートとを有し、
前記下プレートが全ての前記Oリングを対応する前記Oリング用溝部にそれぞれ押さえ付け、
前記上プレートが全ての前記把持部材を対応する前記把持部材用溝部にそれぞれ押さえ付けるように構成されている。
【0020】
上記の構成によると、上プレート及び/又は下プレートを締め付けることにより、容易にOリング及び/又は把持部材でフランジ貫通孔をシールできるので、作業性がよい。また、上プレート及び/又は下プレートを締め付けるために少ないボルト等の締付具ですむので、それらの配置スペースを狭くすることができ、結果として複数のガス分離体同士の間隔を極力近づけて配置することが可能である。
【0021】
第6の発明では、第4又は第5の発明において、
前記把持部材は、
前記把持部材用溝部に嵌められる略台形断面の把持部材本体と、
前記把持部材本体から前記筒状ガス分離体の外周に向かって拡がるように延びる湾曲した断面を有する突出接触面とを有する構成とする。
【0022】
上記の構成によると、筒状ガス分離体は、前記装置本体から露出する開放端と反対側がフリーの状態でフランジ貫通孔に挿通されて把持部材に固定されるが、把持部材の突出接触面が筒状ガス分離体の外周に密着した状態で当接するので、筒状ガス分離体が安定して保持される。また、把持部材の断面が略台形であり、把持部材用溝部に嵌められた状態で突出接触面を筒状ガス分離体側へ押し付ける効果が得られる。このため、内部空間の圧力が高くなっても筒状ガス分離体が動かない。
【0023】
第7の発明では、
分離膜モジュールと、混合ガスが滞留する内部空間を有しかつ前記内部空間が露呈する窓部が設けられた装置本体とを有し、
前記分離膜モジュールが、
前記装置本体から露出する開放端を有し、かつガス分離膜を有する複数の筒状ガス分離体と、
複数のフランジ貫通孔を有するフランジと、
前記フランジ貫通孔に対応するボルト挿通孔を有し、前記フランジを上下から挟み込む上プレート及び下プレートとを有する水素ガス分離装置における、前記分離膜モジュールの組付方法であって、
全ての筒状ガス分離体を下プレートのガス分離体挿通孔にそれぞれ挿通し、
前記筒状ガス分離体の挿通した端部側からOリングを挿通して装着し、
前記下プレートを前記筒状ガス分離体が前記フランジ貫通孔に挿入されるように前記フランジに当接させた状態で固定してOリングを前記フランジ貫通孔内周縁のOリング用溝部に密着させ、
全ての前記筒状ガス分離体の挿通した端部側から把持部材を挿通して装着し、
前記上プレートを前記筒状ガス分離体が前記上プレートの前記ガス分離体挿通孔に挿入されるように前記フランジに当接させた状態で固定して前記Oリングよりも剛性の高い把持部材を前記フランジ貫通孔内周縁の把持部材用溝部に密着させる構成とする。
【0024】
上記の構成によると、Oリング側で内部空間内の混合ガスの通過を阻止することができると共に、Oリングよりも剛性の高い把持部材によって、不安定になりやすい筒状ガス分離体を確実に保持できる。なお、Oリングを耐熱性の高いフッ素系ゴムとしたり、把持部材を耐熱性の高いPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの樹脂成形品などで成形したりすることにより、要求される耐熱性を容易に確保できる。
【0025】
第8の発明では、第7の発明において、
前記下プレートを前記フランジに当接させた状態で前記下プレートを前記フランジに締結することにより、全てのOリングを一度に前記フランジ貫通孔内周縁のOリング用溝部に密着させ、及び/又は、
前記上プレートを前記フランジに当接させた状態で前記上プレートを前記フランジに締結することにより、全ての把持部材を一度に前記フランジ貫通孔内周縁の把持部材用溝部に密着させる構成とする。
【0026】
上記の構成によると、上プレート及び/又は下プレートを締め付けることにより、容易にOリング及び/又は把持部材でフランジ貫通孔をシールできるので、作業性がよい。また、上プレート及び/又は下プレートを締め付けるために少ないボルト等の締付具ですむので、それらの配置スペースを狭くすることができ、結果として複数のガス分離体同士の間隔を極力近づけて配置することが可能である。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、水素ガス分離装置のフランジの貫通孔と筒状ガス分離体の間の隙間をシールして分離されるガスや原料の侵入を防ぎ、高温下でも機能を発揮し、筒状ガス分離体に大きな外力を加えずに動かないように固定する機能を有するようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】分離膜モジュールを上から見た斜視図である。
図2】分離膜モジュールを下から見た斜視図である。
図3】分離モジュールの拡大断面図である。
図4】分離モジュールの分解斜視図である。
図5】把持部材を示し、(a)が(d)のVa-Va線の拡大断面図であり、(b)が平面図で、(c)が正面図で、(d)が底面図である。
図6】実施例と比較例1及び2を比較した結果を示す表である。
図7】従来の水素ガス分離装置の概略を示す断面図である。
図8】従来の水素ガス分離装置のシール部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
本実施形態では、図7で示したような、公知の水素ガス分離装置110における混合ガスが滞留する内部空間を有しかつ内部空間が露呈する窓部が設けられた装置本体に取り付けられる分離膜モジュール1を対象とする。このため、水素ガス分離装置110そのものの説明は省略する。
【0031】
図1図3に示すように、分離膜モジュール1は、内部空間内に配置される下端2aと、上端側に突出する開放端2bを有し、かつ外表面にガス分離膜(図示せず)を有する複数の筒状ガス分離体2を備えている。本実施形態では、6本の筒状ガス分離体2が設けられているが、この本数は特に限定されない。筒状ガス分離体2は、円筒状の多孔質基材を有し、多孔質基材の材質は、特に限定されないが、例えば、α-アルミナなどのセラミックス材料よりなる。ガス分離膜は、例えばシリカ膜、ゼオライト膜、パラジウム膜などよりなる。筒状ガス分離体2自体は、鋼などの金属に比べると、それほど剛性や強度が高いものではない。
【0032】
分離膜モジュール1は、複数のフランジ貫通孔を有する円板状のフランジ3を備えている。これは、水素ガス分離装置110の容器130上端を塞ぐものであり、例えば、チタンやチタン合金などよりなる。本実施形態では、6つのフランジ貫通孔3aが周方向に60°の間隔を開けて開口されている。フランジ貫通孔3aの数や配置は、筒状ガス分離体2の本数により決定されるが、できるだけ密集させて配置するのが望ましい。フランジ貫通孔3aの上下面には、内周面を拡径するようにして後述するOリング用溝部3b及び把持部材用溝部3cがそれぞれ形成されている。
【0033】
図3に示すように、筒状ガス分離体2のそれぞれの開放端2bとフランジ貫通孔3aの内側壁との間の隙間を封止するシール構造10が設けられている。
【0034】
本実施形態におけるシール構造10は、各フランジ貫通孔3aの上下2箇所に設けられている。具体的には、フランジ貫通孔3aの下端2a側内周縁に形成されたOリング用溝部3bに嵌め込まれるOリング4と、フランジ貫通孔3aの開放端2b側(上端側)内周縁に形成された断面台形状の把持部材用溝部3cに嵌められる、Oリング4よりも剛性の高い略台形断面の樹脂製把持部材5とを含む構成とする。Oリング4は、主に容器130内の原料と水素ガスのシール機能を発揮する。筒状ガス分離体2の固定には、Oリング4だけでは不足する可能性があるため、Oリング4とは別に樹脂製把持部材5を使用する。
【0035】
フランジ3は、水素ガス分離装置110のヒータ150で加熱するため、200℃程度まで加熱されることがある。このため、シール構造10は、耐熱性の高いもので構成する必要がある。
【0036】
Oリング4の形状は、例えば、通常の断面円形状のOリング4であり、Oリング4を耐熱性の高いフッ素系ゴム、例えば、フッ素ゴム(FKM)、パーフルオロエラストマ(FFKM)、シリコンゴム等とすることにより、要求される耐熱性を容易に確保できる。なお、耐熱性だけでなく、水素ガスを通さないという点では、フッ素ゴム(FKM)が適している。Oリング用溝部3bは、例えば、45℃の傾斜面を有する、断面三角形状のものである。
【0037】
樹脂製把持部材5は、Oリング4よりも剛性の高い樹脂成形品で作られた環状部材であり、筒状ガス分離体2のそれぞれの開放端2b側がフランジ貫通孔3aに挿通され、開放端2bとフランジ貫通孔3aの内側壁との間に配置されて筒状ガス分離体2を把持するものである。例えば、樹脂製把持部材5は、耐熱性の高いPPS(ポリフェニレンサルファイド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの樹脂成形品である。樹脂製把持部材5は、樹脂成形品であるため、複雑な形状も成形でき、また、硬度が高すぎず、筒状ガス分離体2を傷つけにくい。上述したような耐熱性の高い樹脂成形品で構成することにより、要求される耐熱性を容易に確保できる。
【0038】
樹脂製把持部材5は、図5に示すように、フランジ貫通孔3aの内周縁に凹陥された断面台形状の把持部材用溝部3cに嵌められる略台形断面の樹脂製把持部材本体5aを有する。
【0039】
図3に示すように、把持部材用溝部3cは、拡大した断面で見ると、フランジ3の上面に開放される上辺と、それに平行で上辺よりも短い下辺と、それらをつなぐ上辺から下辺に向かって内径が小さくなる側辺とを有することが分かる。例えば、樹脂製把持部材5の高さは、把持部材用溝部3cの深さよりも若干短い。
【0040】
一方、樹脂製把持部材5は、樹脂製把持部材本体5aから筒状ガス分離体2の外周に向かって(半径方向内側に向かって)拡がるように延びる湾曲した断面を有する突出接触面5bを有する。すなわち、図5(a)に拡大して示すように、突出接触面5bは、樹脂製把持部材5の中心側に中心が配置される断面円弧状であり、その上端及び下端が、まず最初に筒状ガス分離体2の外周面に当接するようになっている。この突出接触面5bにより、筒状ガス分離体2の外周面を傷つけることなく、吸着するように密着することで、シール性能も確保できるようになっている。
【0041】
図5(b)~(d)に示すように、樹脂製把持部材5は、例えば、上面及び下面にそれぞれ円形溝5cを有し、この円形溝5cに交わるように、径方向に延びる、5本の径方向溝5dが例えば、周方向に72°の間隔を開けて等間隔に設けられている。上面及び下面で径方向溝5dがずれた位置に設けられ、それらは、外周のテーパ面にまで延びているので、図5(c)に示すように、外周面では、周方向に36°の間隔で上下から延びる、凹条としての径方向溝5dが配置されているように見える。上面及び下面の径方向溝5dの他端は、突出接触面5b側にまで延びている。これらの円形溝5c及び径方向溝5dは、樹脂製把持部材本体5a及び突出接触面5bを変形しやすくして適度な柔軟性をもたせるためのものである。
【0042】
樹脂製把持部材5の形状及び材質は、上述したものに限定されないが、要は、適度な柔軟性と強度を有し、耐熱性の高いものであればよい。
【0043】
そして、図1図4に示すように、分離膜モジュール1は、フランジ貫通孔3aに対応するガス分離体挿通孔6a,7aをそれぞれ有し、フランジ3を上下から挟み込む上プレート6及び下プレート7を備える。
【0044】
上プレート6及び下プレート7は、例えば、円板状のチタン又はチタン合金よりなり、筒状ガス分離体2の開放端2bが挿通されるガス分離体挿通孔6a,7aが6本周方向に等間隔に配置されている。
【0045】
上プレート6には、上プレート6をフランジ3の上面に締結ボルト8で締結するためのボルト挿通孔6b(図4にのみ示す)が、ガス分離体挿通孔6aがない部分に密集して配置されている。この締結ボルト8を締結して上プレート6をフランジ3の上面に密着させることで、上プレート6が全ての樹脂製把持部材5を対応する、断面台形状の把持部材用溝部3cにそれぞれ押さえ付け、樹脂製把持部材本体5aが内径方向に縮んで突出接触面5bが筒状ガス分離体2の外周面に密着するように構成されている。筒状ガス分離体2と接する突出接触面5bが湾曲しており、筒状ガス分離体2の直径のバラツキによって接触状態が影響を受けにくい構造となっている。締結ボルト8は、できるだけ密着して配置できるように、六角穴付ボルトで構成しているが、これに限定されず、六角ボルトなどでもよい。
【0046】
下プレート7は、中心側の肉厚が外周側よりも厚くなっており、中心にネジ穴7b(図3にのみ示す)が設けられている。このネジ穴7bにフランジ3のボルト挿通孔3dに上面から挿通した締結ボルト8が締結されるようになっている。なお、このネジ穴7bの下面側にもOリング4と同様のOリング4’を設けることで、シール性能を確保するようにしてもよい。また、下プレート7の例えば6つのボルト挿通孔7cそれぞれボルト8を挿通してフランジ3のネジ穴3eに締め付けることができるようになっている。これら締結ボルト8を締結して下プレート7をフランジ3の下面に密着させることで、下プレート7が全てのOリング4を対応する断面三角形状のOリング用溝部3bにそれぞれ押さえ付け、加圧状態で密着させてシール性能を発揮させるようになっている。
【0047】
-分離膜モジュールの組付方法-
次に、本実施形態に係る分離膜モジュールの組付方法について説明する。
【0048】
詳細には図示しないが、まず、分離膜モジュール1を含む水素ガス分離装置の各部品を準備する。
【0049】
図4に示すように、まず、6本全ての筒状ガス分離体2を下プレート7のガス分離体挿通孔7aにそれぞれ挿通する。
【0050】
次いで、筒状ガス分離体2におけるガス分離体挿通孔7aを通過した端部(開放端2b)側からOリング4を挿通して装着する。
【0051】
次に、下プレート7を筒状ガス分離体2がフランジ貫通孔3aに挿入されるようにフランジ3に当接させた状態で固定してOリング4をフランジ貫通孔3a内周縁のOリング用溝部3bに密着させる。具体的には、フランジ3の中央のボルト挿通孔3dに上面から締結ボルト8を挿入し、その先端からOリング4’を挿通してネジ穴7bに締結する。その上で、下プレート7のボルト挿通孔7cにボルト8を挿通してフランジ3のネジ穴3eに締め付ける。これらの締結ボルト8が螺進するにつれて下プレート7が全てのOリング4を押さえ付け、対応する断面三角形状のOリング用溝部3bの傾斜面にそれぞれ押さえ付けるので、Oリング4が傾斜面に加圧状態で密着させる。これにより、シール性能を発揮し、Oリング4側で内部空間内の混合ガスの通過を確実に阻止することができる。
【0052】
次いで、全ての筒状ガス分離体2の挿通した端部(開放端2b)側から樹脂製把持部材5を挿通して装着する。
【0053】
次に、上プレート6を筒状ガス分離体2が上プレート6のガス分離体挿通孔6aに挿入されるようにフランジ3に当接させた状態で固定して樹脂製把持部材5をフランジ貫通孔3a内周縁の把持部材用溝部3cに密着させる。具体的には、図3に示すように、上プレート6のボルト挿通孔6bに締結ボルト8を上プレート6の上面側から順に挿通してフランジ3のネジ穴(図示せず)に締結して上プレート6をフランジ3の上面に密着させることで、上プレート6が全ての樹脂製把持部材5を断面台形状の把持部材用溝部3cにそれぞれ押さえ付ける。すると、樹脂製把持部材本体5aが内径方向に縮んで突出接触面5bが筒状ガス分離体2の外周面に密着する。これにより、樹脂製把持部材5によって、不安定になりやすい筒状ガス分離体2を確実に保持できる。また、樹脂製で柔軟性のある樹脂製把持部材5による締め付けであるため筒状ガス分離体2に大きな力がかからないことからガス分離膜に亀裂が生じにくい。
【0054】
このように、上プレート6及び下プレート7を締め付けることにより、容易にOリング4及び樹脂製把持部材5でフランジ貫通孔3aをシールできるので、作業性がよい。また、上プレート6及び下プレート7を締め付けるために少ない締結ボルト8等の締付具ですむので、それらの配置スペースを狭くすることができ、結果として複数の筒状ガス分離体2同士の間隔を極力近づけて配置することが可能である。なお、締めすぎることによる弊害を防止するため、Oリング4及び樹脂製把持部材5の両方ともある一定以上には締まらない構造とするのがよい。例えば、締結ボルト8を段付きボルトとしたり、上プレート6がフランジ3の上面に面当たりしたり、下プレート7がフランジ3の下面に面当たりしたりするようにするとよい。
【0055】
このような締付構造により、締結ボルト8や部品の点数を減らすことが可能になり、複数の筒状ガス分離体2間の距離を短くして配置することが可能となることから、作業性もよく水素ガス分離効率の高い水素ガス分離装置を得ることができる。
【0056】
また、本実施形態では、筒状ガス分離体2は、開放端2bと反対側の下端2aがフリーの状態でフランジ貫通孔3aに挿通されて樹脂製把持部材5に固定されるが、Oリング4よりも剛性の高い樹脂製把持部材5の突出接触面5bが筒状ガス分離体2の外周に密着した状態で当接するので、筒状ガス分離体2が安定して保持されながら開放端2bとフランジ貫通孔3aの内側壁との間の隙間のシール性能が保持される。また、ガラス接着剤のように液だれすることなく確実に取り付けでき、別の場所で接着のために加熱する必要もない。
【0057】
また、樹脂製把持部材5の断面が略台形であり、把持部材用溝部3cに嵌められた状態で突出接触面5bを筒状ガス分離体2側へ押し付ける効果が得られる。このため、内部空間の圧力が高くなっても筒状ガス分離体2が動かない。
【0058】
本実施形態では、Oリング4を耐熱性の高いフッ素系ゴムとしたり、樹脂製把持部材5を耐熱性の高いPPSなどの樹脂成形品などで成形したりすることにより、要求される耐熱性を容易に確保できる。
【0059】
-実施例-
図6は実施例と比較例1及び2を比較した結果を示す表である。比較例1は、特許文献1のような無機接着剤による筒状ガス分離体2のシール構造であり、比較例2は、Oリング4のみによるシール構造で、実施例が上述したOリング4及び樹脂製把持部材5によるシール構造10である。
【0060】
上述したように、比較例1の無機接着剤では、フランジ3と筒状ガス分離体2の隙間に均一に塗布することは困難であり、無機接着剤の硬化のために、別の場所で、高温で加熱する必要があるため作業性が悪く、接着層が均一に形成されていないことから十分なシール性が得られない。また、固定が不十分であるため、組立のために運搬する際にもシール部135が痛んだり、筒状ガス分離体2が痛んだりするという問題がある。
【0061】
一方で、比較例2のように、Oリング4とカシメのみのシール構造では、十分な固定効果が得られず、また、筒状ガス分離体2ごとの1本ずつのカシメであると、作業性が悪く、また、それぞれ間隔を開けて設ける必要があり、省スペース効果が得られないという問題がある。
【0062】
上述したように、上記実施形態の分離膜モジュール1では、筒状ガス分離体6におけるシール性が高く、フランジ3に確実に固定され、耐熱性も確保され、外圧にも耐え、筒状ガス分離体2間の距離も短くなるという極めて優れた効果が得られた。
【0063】
したがって、本実施形態に係るシール構造10によると、水素ガス分離装置のフランジ3のフランジ貫通孔3aと筒状ガス分離体2との間の隙間をシールして分離される水素ガスや原料の侵入を防ぎ、最大で200℃程度の高温下でも機能を発揮し、筒状ガス分離体2に大きな外力を加えずに動かないように固定する機能を有するようにすることができる。
【0064】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0065】
1 分離膜モジュール
2 筒状ガス分離体
2a 下端
2b 開放端
3 フランジ
3a フランジ貫通孔
3b Oリング用溝部
3c 把持部材用溝部
3d ボルト挿通孔
3e ネジ穴
4 Oリング
4’ Oリング
5 樹脂製把持部材
5a 樹脂製把持部材本体
5b 突出接触面
5c 円形溝
5d 径方向溝(凹条)
6 上プレート
6a ガス分離体挿通孔
6b ボルト挿通孔
7 下プレート
7a ガス分離体挿通孔
7b ネジ穴
7c ボルト挿通孔
8 締結ボルト
10 シール構造
110 水素ガス分離装置
123 ガス分離体
123a 片端
123b 片端
130 容器
134 フランジ
134a 貫通孔
135 シール部
135 接着部
140 水素ガス取出し部
150 ヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8