(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037102
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】食品造形システム、及び、食品造形方法
(51)【国際特許分類】
A21C 11/16 20060101AFI20240311BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240311BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240311BHJP
A23P 30/20 20160101ALI20240311BHJP
【FI】
A21C11/16 B
B33Y50/02
B33Y30/00
A23P30/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141768
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(72)【発明者】
【氏名】池田 明
(72)【発明者】
【氏名】関 和友
【テーマコード(参考)】
4B031
4B048
【Fターム(参考)】
4B031CA20
4B031CB10
4B031CG30
4B031CM10
4B048PE20
4B048PM20
(57)【要約】
【課題】食品造形物を精度良く造形する。
【解決手段】吐出ヘッド40は、食品造形物を造形するための造形材料であって吐出時に流動性を有する造形材料を断続的に吐出する。データ生成部11は、食品造形物を造形するためのスライスデータを生成する。吐出制御部13は、データ生成部11が生成したスライスデータに基づいて、吐出ヘッド40による造形材料の吐出を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形材料を積層することにより食品造形物を造形する食品造形システムであって、
前記食品造形物を造形するための造形材料であって吐出時に流動性を有する造形材料を断続的に吐出する吐出ヘッドと、
前記食品造形物を造形するためのスライスデータを生成するデータ生成部と、
前記データ生成部が生成した前記スライスデータに基づいて、前記吐出ヘッドによる前記造形材料の吐出を制御する吐出制御部と、を備える、
食品造形システム。
【請求項2】
複数の造形材料をそれぞれ吐出する複数の吐出ヘッドを備え、
前記データ生成部は、前記複数の造形材料のそれぞれに対する、ラスターデータとベクターデータとのうち少なくとも一方のデータを含むスライスデータを生成し、
前記吐出制御部は、前記複数の吐出ヘッドによる前記複数の造形材料のそれぞれの吐出を、対応する前記少なくとも一方のデータに基づいて制御する、
請求項1に記載の食品造形システム。
【請求項3】
前記複数の吐出ヘッドは、第1造形材料を吐出する第1吐出ヘッドと、第2造形材料を吐出する第2吐出ヘッドと、を含み、
前記データ生成部は、前記第1造形材料に対するベクターデータである第1ベクターデータと前記第2造形材料に対するラスターデータである第1ラスターデータとを含むスライスデータを生成し、
前記吐出制御部は、前記第1ベクターデータに基づいて前記第1吐出ヘッドによる前記第1造形材料の吐出を制御し、前記第1ラスターデータに基づいて前記第2吐出ヘッドによる前記第2造形材料の吐出を制御する、
請求項2に記載の食品造形システム。
【請求項4】
前記吐出制御部は、前記第1ベクターデータに基づいて、前記食品造形物の外縁に相当する領域である第1領域に前記第1造形材料を吐出するように前記第1吐出ヘッドを制御し、前記第1ラスターデータに基づいて、前記第1領域に囲まれる領域である第2領域に前記第2造形材料を吐出するように前記第2吐出ヘッドを制御する、
請求項3に記載の食品造形システム。
【請求項5】
前記第1造形材料の粘度は、前記第2造形材料の粘度よりも高く、
前記吐出制御部は、前記第1ベクターデータに基づいて、前記第1領域に前記第1造形材料を吐出するように前記第1吐出ヘッドを制御した後に、前記第1ラスターデータに基づいて、前記第2領域に前記第2造形材料を吐出するように前記第2吐出ヘッドを制御する、
請求項4に記載の食品造形システム。
【請求項6】
前記データ生成部は、前記第1ベクターデータと前記第1ラスターデータと前記第1造形材料に対するラスターデータである第2ラスターデータとを含むスライスデータを生成し、
前記吐出制御部は、前記第1ベクターデータに基づいて、前記第1領域に前記第1造形材料を吐出するように前記第1吐出ヘッドを制御した後に、前記第1ラスターデータに基づいて、前記第2領域に前記第2造形材料を吐出するように前記第2吐出ヘッドを制御する処理と、前記第2ラスターデータに基づいて、前記第1領域に囲まれる領域であり前記第2領域とは異なる領域である第3領域に前記第1造形材料を吐出するように前記第1吐出ヘッドを制御する処理とを実行する、
請求項5に記載の食品造形システム。
【請求項7】
前記複数の吐出ヘッドは、第1粘度を有する第1造形材料を吐出する第1吐出ヘッドと、前記第1粘度よりも低い第2粘度を有する第2造形材料を吐出する第2吐出ヘッドと、を含み、
前記吐出制御部は、前記第1造形材料を吐出するように前記第1吐出ヘッドを制御した後に、前記第2造形材料を吐出するように前記第2吐出ヘッドを制御する、
請求項2に記載の食品造形システム。
【請求項8】
前記データ生成部は、前記複数の造形材料のそれぞれに対するラスターデータを含むスライスデータを生成し、
前記吐出制御部は、前記複数の吐出ヘッドによる前記複数の造形材料のそれぞれの吐出を、対応するラスターデータに基づいて制御する、
請求項2に記載の食品造形システム。
【請求項9】
前記複数の吐出ヘッドは、主走査方向に並んで配置されている、
請求項8に記載の食品造形システム。
【請求項10】
造形材料を積層することにより食品造形物を造形する食品造形方法であって、
前記食品造形物を造形するための造形材料であって吐出時に流動性を有する造形材料を断続的に吐出し、
前記食品造形物を造形するためのスライスデータを生成し、
前記スライスデータに基づいて、前記造形材料の吐出を制御する、
食品造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食品造形システム、及び、食品造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、3D(Dimensional)プリンタの技術を応用して食用の造形物である食品造形物を造形する3Dフードプリンタが知られている。3Dフードプリンタは、例えば、食用の造形材料を積層することにより食品造形物を造形する。
【0003】
例えば、特許文献1には、FDM(Fused Deposition Modeling)を応用した押し出し方式を用いて、食品造形物を造形する技術が記載されている。特許文献1に記載された技術では、食品造形物を構成する各層を形成する際、粘度が調整された食品組成物がノズルから押し出されて下層に堆積する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された押し出し方式では、食品組成物は、基本的に、一筆書きのように連続してノズルから排出される。従って、特許文献1に記載された押し出し方式を用いて造形材料を積層すると、食品造形物を精度良く造形することが困難である。このため、食品造形物を精度良く造形する技術が望まれている。
【0006】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、食品造形物を精度良く造形する食品造形システム、及び、食品造形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の観点に係る食品造形システムは、
造形材料を積層することにより食品造形物を造形する食品造形システムであって、
前記食品造形物を造形するための造形材料であって吐出時に流動性を有する造形材料を断続的に吐出する吐出ヘッドと、
前記食品造形物を造形するためのスライスデータを生成するデータ生成部と、
前記データ生成部が生成した前記スライスデータに基づいて、前記吐出ヘッドによる前記造形材料の吐出を制御する吐出制御部と、を備える。
【0008】
複数の造形材料をそれぞれ吐出する複数の吐出ヘッドを備え、
前記データ生成部は、前記複数の造形材料のそれぞれに対する、ラスターデータとベクターデータとのうち少なくとも一方のデータを含むスライスデータを生成し、
前記吐出制御部は、前記複数の吐出ヘッドによる前記複数の造形材料のそれぞれの吐出を、対応する前記少なくとも一方のデータに基づいて制御してもよい。
【0009】
前記複数の吐出ヘッドは、第1造形材料を吐出する第1吐出ヘッドと、第2造形材料を吐出する第2吐出ヘッドと、を含み、
前記データ生成部は、前記第1造形材料に対するベクターデータである第1ベクターデータと前記第2造形材料に対するラスターデータである第1ラスターデータとを含むスライスデータを生成し、
前記吐出制御部は、前記第1ベクターデータに基づいて前記第1吐出ヘッドによる前記第1造形材料の吐出を制御し、前記第1ラスターデータに基づいて前記第2吐出ヘッドによる前記第2造形材料の吐出を制御してもよい。
【0010】
前記吐出制御部は、前記第1ベクターデータに基づいて、前記食品造形物の外縁に相当する領域である第1領域に前記第1造形材料を吐出するように前記第1吐出ヘッドを制御し、前記第1ラスターデータに基づいて、前記第1領域に囲まれる領域である第2領域に前記第2造形材料を吐出するように前記第2吐出ヘッドを制御してもよい。
【0011】
前記第1造形材料の粘度は、前記第2造形材料の粘度よりも高く、
前記吐出制御部は、前記第1ベクターデータに基づいて、前記第1領域に前記第1造形材料を吐出するように前記第1吐出ヘッドを制御した後に、前記第1ラスターデータに基づいて、前記第2領域に前記第2造形材料を吐出するように前記第2吐出ヘッドを制御してもよい。
【0012】
前記データ生成部は、前記第1ベクターデータと前記第1ラスターデータと前記第1造形材料に対するラスターデータである第2ラスターデータとを含むスライスデータを生成し、
前記吐出制御部は、前記第1ベクターデータに基づいて、前記第1領域に前記第1造形材料を吐出するように前記第1吐出ヘッドを制御した後に、前記第1ラスターデータに基づいて、前記第2領域に前記第2造形材料を吐出するように前記第2吐出ヘッドを制御する処理と、前記第2ラスターデータに基づいて、前記第1領域に囲まれる領域であり前記第2領域とは異なる領域である第3領域に前記第1造形材料を吐出するように前記第1吐出ヘッドを制御する処理とを実行してもよい。
【0013】
前記複数の吐出ヘッドは、第1粘度を有する第1造形材料を吐出する第1吐出ヘッドと、前記第1粘度よりも低い第2粘度を有する第2造形材料を吐出する第2吐出ヘッドと、を含み、
前記吐出制御部は、前記第1造形材料を吐出するように前記第1吐出ヘッドを制御した後に、前記第2造形材料を吐出するように前記第2吐出ヘッドを制御してもよい。
【0014】
前記データ生成部は、前記複数の造形材料のそれぞれに対するラスターデータを含むスライスデータを生成し、
前記吐出制御部は、前記複数の吐出ヘッドによる前記複数の造形材料のそれぞれの吐出を、対応するラスターデータに基づいて制御してもよい。
【0015】
前記複数の吐出ヘッドは、主走査方向に並んで配置されている。
【0016】
上記目的を達成するために、本開示の第2の観点に係る食品造形方法は、
造形材料を積層することにより食品造形物を造形する食品造形方法であって、
前記食品造形物を造形するための造形材料であって吐出時に流動性を有する造形材料を断続的に吐出し、
前記食品造形物を造形するためのスライスデータを生成し、
前記スライスデータに基づいて、前記造形材料の吐出を制御する。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、食品造形物を精度良く造形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の実施の形態に係る食品造形システムの構成図
【
図2】本開示の実施の形態に係る食品造形システムが備える移動機構の斜視図
【
図5】大豆ペーストに対するベクターデータに基づく吐出制御の説明図
【
図6】大豆ペーストに対するラスターデータに基づく吐出制御の説明図
【
図7】油脂ペーストに対するラスターデータに基づく吐出制御の説明図
【
図8】本開示の実施の形態に係る食品造形システムが実行する食品造形処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施の形態)
まず、
図1を参照して、本開示の実施の形態に係る食品造形システム100の構成について説明する。食品造形システム100は、3D(Dimensional)プリンタの技術を応用して食用の造形物である食品造形物を造形するシステムである。食品造形システム100は、食用の造形材料を積層することにより食品造形物を造形する。
図1に示すように、食品造形システム100は、制御部10と、記憶部21と、表示部22と、操作受付部23と、通信部24と、粘度調整機構30と、吐出ヘッド40と、ヘッド移動機構51と、テーブル移動機構52とを備える。食品造形システム100は、1つの装置により実現されてもよいし、複数の装置が協働することにより実現されてもよい。
【0020】
制御部10は、食品造形システム100全体の動作を制御する。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、RTC(Real Time Clock)等を備える。CPUは、中央処理装置、中央演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)等とも呼び、食品造形システム100の制御に係る処理及び演算を実行する中央演算処理部として機能する。制御部10において、CPUは、ROMに格納されているプログラム及びデータを読み出し、RAMをワークエリアとして用いて、食品造形システム100を統括制御する。RTCは、例えば、計時機能を有する集積回路である。なお、CPUは、RTCから読み出される時刻情報から現在日時を特定可能である。
【0021】
記憶部21は、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の不揮発性の半導体メモリを備えており、いわゆる二次記憶装置又は補助記憶装置としての役割を担う。記憶部21は、制御部10が各種処理を実行するために使用するプログラム及びデータを記憶する。また、記憶部21は、制御部10が各種処理を実行することにより生成又は取得するデータを記憶する。
【0022】
表示部22は、制御部10による制御に従って、各種の画像を表示する。表示部22は、タッチスクリーン、液晶ディスプレイ等を備える。操作受付部23は、ユーザから各種の操作を受け付け、受け付けた操作の内容を示す情報を制御部10に供給する。操作受付部23は、タッチスクリーン、ボタン、レバー等を備える。
【0023】
通信部24は、制御部10による制御に従って、各種の装置と通信する。通信部24は、各種の無線通信規格又は各種の有線通信規格に則って、各種の装置と通信する。各種の無線通信規格としては、Wi-Fi(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)等がある。各種の有線通信規格としては、USB(Universal Serial Bus、登録商標)、Thunderbolt(登録商標)等がある。通信部24は、各種の通信規格に準拠した通信インターフェースを備える。
【0024】
粘度調整機構30は、制御部10による制御に従って、吐出される造形材料の粘度を調整するための機構である。造形材料は、食品造形物を造形するための造形材料であって、吐出時に流動性を有する造形材料である。流動性を有することは、固定されずに流れ動くことを意味する。この造形材料は、吐出時において、ゲル状又はペースト状であり、高い粘度を有することが好適である。
【0025】
造形材料は、食品造形物の造形が可能な材料であればどのような材料でもよい。例えば、造形材料として、大豆ペースト、油脂ペースト、ライスジュレ、及び、豆腐ペーストが考えられる。本実施の形態では、食品造形物は、人工肉200であり、造形材料は、赤身部分を形成するための大豆ペーストと、脂身部分を形成するための油脂ペーストとの2種類である。
【0026】
造形材料の粘度は、造形材料の温度に応じて変化する。従って、粘度調整機構30は、吐出される造形材料の温度を調整することにより、吐出される造形材料の粘度を調整する。粘度調整機構30は、造形材料が流れる材料流路(図示せず)と、制御部10による制御に従って材料流路を加熱するヒータ(図示せず)と、制御部10による制御に従って材料流路を冷却するクーラ(図示せず)と、造形材料又は材料流路の温度を測定する温度センサ(図示せず)とを備える。
【0027】
粘度調整機構30は、吐出ヘッド40に供給される造形材料を加熱し、造形材料の粘度を低下させる。又は、粘度調整機構30は、吐出ヘッド40に供給される造形材料を冷却し、造形材料の粘度を上昇させる。粘度調整機構30は、造形材料の粘度が既定粘度になるように、造形材料の温度を既定温度にする。なお、制御部10は、例えば、記憶部21に記憶されている材料情報を参照して、造形材料の既定粘度及び既定温度を特定することができる。材料情報は、例えば、造形材料毎に既定粘度と既定温度とを示す情報である。
【0028】
本実施の形態では、造形材料の吐出時における粘度が高く、造形材料は吐出後に速やかに乾燥して硬化する。従って、本実施の形態では、吐出後の造形材料を乾燥させるためのヒータは設けられていない。なお、大豆ペーストの粘度は70万cps程度であり、油脂ペーストの粘度は7~10万cps程度であることが好適である。また、本実施の形態において、造形材料の吐出時における粘度を、適宜、単に、造形材料の粘度という。
【0029】
吐出ヘッド40は、制御部10による制御に従って、造形材料を断続的に吐出する。断続的に吐出とは、途切れ途切れに吐出を繰り返すことである。つまり、吐出ヘッド40は、粒子状の造形材料を絶え間なく吐出する。吐出ヘッド40は、例えば、スクリューが1回転する毎に造形材料を出力するマイクロディスペンサ方式、又は、ピエゾ方式、サーマルヘッド方式等のインクジェット方式により造形材料を吐出する。なお、造形材料は、材料タンク(図示せず)、粘度調整機構30、吐出ヘッド40という経路を辿って流れる。
【0030】
吐出ヘッド40の個数は、造形材料の種類の数、食品造形物中における各造形材料の割合等に応じて調整することが好適である。本実施の形態では、食品造形システム100は、大豆ペーストを吐出する吐出ヘッド40と油脂ペーストを吐出する吐出ヘッド40との2つの吐出ヘッド40を備える。吐出ヘッド40として、どのようなものを採用するのかは、適宜、調整することができる。例えば、吐出ヘッド40として、VERMES Microdispensing GmbH社製のVTK-VS-BA-048eを採用することができる。
【0031】
ヘッド移動機構51は、制御部10による制御に従って、吐出ヘッド40を移動させる機構である。テーブル移動機構52は、制御部10による制御に従って、
図2に示すテーブル60を移動させる機構である。テーブル60は、造形材料が吐出される台であり、食品造形物が載置される台である。以下、
図2を参照して、食品造形システム100が備える移動機構50について説明する。移動機構50は、吐出ヘッド40とテーブル60との相対的な位置関係を変化させる機構である。
【0032】
図2において、Z軸は鉛直方向に延びる軸であり、X軸はZ軸と直交する軸であり、Y軸はX軸とZ軸とに直交する軸である。本実施の形態では、X軸方向が主走査方向であり、Y軸方向が副走査方向である。主走査方向は、ラスター制御において造形材料をライン毎に吐出する場合、1つのラインに沿って吐出ヘッド40が移動する方向である。副走査方向は、ラスター制御においてラインを切り替えるときに、吐出ヘッド40が移動する方向である。X軸の矢印が伸びる方向がX軸の正の方向、X軸の矢印が伸びる方向の反対方向がX軸の負の方向である。Y軸の矢印が伸びる方向がY軸の正の方向、Y軸の矢印が伸びる方向の反対方向がY軸の負の方向である。Z軸の矢印が伸びる方向がZ軸の正の方向、Z軸の矢印が伸びる方向の反対方向がZ軸の負の方向である。
【0033】
移動機構50は、ヘッド移動機構51Aと、ヘッド移動機構51Bと、テーブル移動機構52とを備える。ヘッド移動機構51Aは、制御部10による制御に従って、吐出ヘッド40をX軸方向に沿って移動させる機構である。ヘッド移動機構51Bは、制御部10による制御に従って、吐出ヘッド40をZ軸方向に沿って移動させる機構である。テーブル移動機構52は、制御部10による制御に従って、テーブル60をY軸方向に沿って移動させる機構である。
【0034】
なお、上述のヘッド移動機構51は、ヘッド移動機構51Aとヘッド移動機構51Bとを備える。また、上述の吐出ヘッド40は、吐出ヘッド40Aと吐出ヘッド40Bとの総称である。吐出ヘッド40Aは、大豆ペーストを吐出する。吐出ヘッド40Bは、油脂ペーストを吐出する。吐出ヘッド40Aと吐出ヘッド40Bとは、主走査方向に沿って配置される。
【0035】
制御部10は、ヘッド移動機構51Aを制御して、吐出ヘッド40とテーブル60とのX軸方向における相対的な位置を調整する。制御部10は、テーブル移動機構52を制御して、吐出ヘッド40とテーブル60とのY軸方向における相対的な位置を調整する。制御部10は、ヘッド移動機構51Bを制御して、吐出ヘッド40とテーブル60とのZ軸方向における相対的な位置を調整する。
【0036】
ヘッド移動機構51Aとヘッド移動機構51Bとテーブル移動機構52とのそれぞれは、例えば、キャリッジ(図示せず)と、ガイドレール(図示せず)と、駆動ベルト(図示せず)と、駆動プーリ(図示せず)と、従動プーリ(図示せず)と、駆動モータ(図示せず)とを備える。キャリッジには、吐出ヘッド40、テーブル60等の移動対象物が搭載される。ガイドレールは、キャリッジの既定方向への移動を案内する。駆動ベルトは、キャリッジに固定される。駆動プーリと従動プーリとには駆動ベルトが掛け回される。駆動モータは、駆動プーリを介して駆動ベルトを回転させ、キャリッジを既定方向に移動させる。なお、ヘッド移動機構51Aにおける既定方向はX軸方向であり、テーブル移動機構52における既定方向はY軸方向であり、ヘッド移動機構51Bにおける既定方向はZ軸方向である。
【0037】
次に、制御部10の主な機能について詳細に説明する。制御部10は、機能的には、データ生成部11と、吐出制御部13と、粘度制御部12と、位置制御部14とを備える。これらの各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、ROM又は記憶部21に格納される。そして、CPUが、ROM又は記憶部21に記憶されたプログラムを実行することによって、これらの各機能を実現する。
【0038】
データ生成部11は、食品造形物を造形するためのスライスデータを生成する。スライスデータは、完成品である食品造形物の3Dモデルを層毎に分割したデータである。データ生成部11は、例えば、記憶部21に記憶された食品造形物の3Dモデルをスライスし、各層における造形材料を吐出すべき箇所を規定するスライスデータを生成する。スライスデータをどのようなデータにするのかは、適宜、調整することができる。例えば、スライスデータは、複数の造形材料のそれぞれに対する、ラスターデータとベクターデータとのうち少なくとも一方のデータを含んでいてもよい。つまり、スライスデータは、複数の造形材料のそれぞれに対して、ラスターデータのみを含んでいてもよいし、ベクターデータのみを含んでいてもよいし、ラスターデータとベクターデータとを含んでいてもよい。
【0039】
ラスターデータは、行と列の格子状に並んだセルで構成されるデータである。つまり、ラスターデータは、ビットマップデータのように、セル毎に値が割り当てられたデータである。ラスターデータを用いた吐出制御であるラスター制御では、セル毎に造形材料の吐出が可能である。従って、ラスター制御によれば、精度のよい吐出が可能である。ラスター制御は、座標を用いてドット単位で点を描くイメージの制御であり、食品造形物の内側部分をきめ細かく形成することに適した制御である。ラスターデータは、層毎及び造形材料毎に用意される。
【0040】
ベクターデータは、点の座標、又は、点を結ぶ線を数値データで表現したデータである。ベクターデータは、例えば、吐出ヘッド40により造形材料が吐出される軌道を表すデータである。ベクターデータを用いた吐出制御であるベクター制御では、造形材料の連続した吐出が可能である。従って、ベクター制御によれば、造形速度の高速化が期待できる。ベクター制御は、線を描くイメージの制御であり、食品造形物の外周部分の壁を速やかに形成することに適した制御である。ベクターデータは、層毎及び造形材料毎に用意される。
【0041】
粘度制御部12は、粘度調整機構30による造形材料の粘度の調整を実行する。具体的には、粘度制御部12は、粘度調整機構30から吐出ヘッド40に供給される造形材料の粘度が既定粘度になるように、粘度調整機構30が備えるヒータ又はクーラを用いて粘度調整機構30が備える材料流路を加熱又は冷却する。
【0042】
吐出制御部13は、データ生成部11が生成したスライスデータに基づいて、吐出ヘッド40による造形材料の吐出を制御する。吐出制御部13は、スライスデータにより指定された、造形材料を吐出すべき領域上に吐出ヘッド40が配置されたときに、吐出ヘッド40から造形材料を吐出させる。例えば、スライスデータがラスターデータを含む場合、吐出制御部13は、ラスターデータにより指定された、造形材料を吐出すべきセル上に吐出ヘッド40が配置されたときに、吐出ヘッド40から造形材料を吐出させる。また、例えば、スライスデータがベクターデータを含む場合、吐出制御部13は、ベクターデータにより指定された、造形材料を吐出すべき軌道に沿って吐出ヘッド40が移動するときに、吐出ヘッド40から造形材料を吐出させる。
【0043】
吐出制御部13は、複数の吐出ヘッド40による複数の造形材料のそれぞれの吐出を、対応するラスターデータ又はベクターデータに基づいて制御する。例えば、吐出制御部13は、吐出ヘッド40Aによる大豆ペーストの吐出を、大豆ペーストに対応するラスターデータまたはベクターデータに基づいて制御する。また、吐出制御部13は、吐出ヘッド40Bによる油脂ペーストの吐出を、油脂ペーストに対応するラスターデータまたはベクターデータに基づいて制御する。
【0044】
ここで、
図3を参照して、造形材料の吐出方法について説明する。吐出ヘッド40は、断続的に造形材料を吐出する。つまり、吐出ヘッド40は、粒子状の造形材料である粒子41を連続して吐出する。吐出された粒子41は、堆積物42としてテーブル60又は下層に堆積する。例えば、吐出ヘッド40Aは、粒子状の大豆ペーストである大豆粒子41Aを連続して吐出する。吐出された大豆粒子41Aは、堆積物42Aとしてテーブル60又は下層に堆積する。また、吐出ヘッド40Bは、粒子状の油脂ペーストである油脂粒子41Bを連続して吐出する。吐出された油脂粒子41Bは、堆積物42Bとしてテーブル60又は下層に堆積する。粒子41の大きさは、例えば、粘度に応じて、適宜、調整される。例えば、粒子41の直径は、30マイクロメートル程度であることが好適である。
【0045】
また、食品造形システム100は、層毎に造形材料の吐出を制御して、層毎に食品造形物を生成する。
図3には、堆積層201の上に堆積された堆積層202の上に、堆積層203が形成されている途中の状態を示している。堆積層201は、最初に形成される層であり、テーブル60が備える配置面61上に形成される層である。堆積層202には、2番目に形成される層であり、堆積層201上に形成される層である。堆積層203は、3番目に形成される層であり、堆積層202上に形成される層である。各層においては、吐出材料と領域とのうち少なくとも一方に応じた順序で、造形材料が吐出される。
【0046】
位置制御部14は、ヘッド移動機構51Aとヘッド移動機構51Bとテーブル移動機構52とを制御して、吐出ヘッド40とテーブル60との相対的な位置を変化させる。例えば、位置制御部14は、ヘッド移動機構51Aを制御して、テーブル60に対して吐出ヘッド40をX軸方向に移動させる。また、位置制御部14は、ヘッド移動機構51Bを制御して、テーブル60に対して吐出ヘッド40をZ軸方向に移動させる。また、位置制御部14は、テーブル移動機構52を制御して、吐出ヘッド40に対してテーブル60をY軸方向に移動させる。
【0047】
具体的には、例えば、制御部10は、最下層である堆積層201を造形する場合、制御部10が備える位置制御部14が、ヘッド移動機構51Bを制御して、吐出ヘッド40の高さを堆積層201の造形に適した高さに調整する。ここで、制御部10がベクター制御を実行する場合、位置制御部14が、ベクターデータに従って、ヘッド移動機構51Aとテーブル移動機構52とを制御して、吐出ヘッド40をZ軸と直交するXY平面内において移動させる。一方、制御部10が備える吐出制御部13が、ベクターデータに従って、吐出ヘッド40を制御して、吐出ヘッド40から造形材料を吐出させる。
【0048】
また、制御部10がラスター制御を実行する場合、位置制御部14が、ヘッド移動機構51Aを制御して、主走査方向であるX軸方向に沿って吐出ヘッド40を少しずつ移動させる。一方、吐出制御部13が、ラスターデータに従って、吐出ヘッド40を制御して、吐出ヘッド40から造形材料を吐出させる。位置制御部14は、1ライン分の走査を完了すると、ヘッド移動機構51Bを制御して、副走査方向であるY軸方向に沿ってテーブル60を次のラインに相当する位置に移動させる。次のラインについても同様に、位置制御部14が、主走査方向に沿って吐出ヘッド40を少しずつ移動させ、吐出制御部13が、ラスターデータに従って、吐出ヘッド40から造形材料を吐出させる。
【0049】
以下、吐出ヘッド40が最終ラインに対応する位置に至り、堆積層201が完成するまで、制御部10が上述した処理を繰り返す。制御部10が下から2番目の層である堆積層202を造形する場合、位置制御部14は、ヘッド移動機構51Bを制御して、吐出ヘッド40の高さを堆積層202の造形に適した高さに調整する。制御部10は、堆積層201を造形する場合と同様に、上述した処理を繰り返し、堆積層202を造形する。制御部10は、一番上の層の造形が完了するまで、1つの層を造形する処理を繰り返す。
【0050】
次に、
図4と
図5と
図6と
図7とを参照して、制御部10が各層を造形する方法について詳細に説明する。本実施の形態では、制御部10は、人工肉200における外縁に相当する領域に高い粘度を有する大豆ペーストを吐出した後、人工肉200における内側に相当する領域に大豆ペースト及び低い粘度を有する油脂ペーストを吐出して1つの層を造形する。以下、具体的に説明する。
【0051】
まず、本実施の形態では、食品造形システム100は、大豆ペーストを吐出する吐出ヘッド40Aと、油脂ペーストを吐出する吐出ヘッド40Bとを含む複数の吐出ヘッド40を備える。大豆ペーストの粘度は、油脂ペーストの粘度よりも高い。大豆ペーストは、第1造形材料の一例である。油脂ペーストは、第2造形材料の一例である。吐出ヘッド40Aは、第1吐出ヘッドの一例である。吐出ヘッド40Bは、第2吐出ヘッドの一例である。
【0052】
ここで、データ生成部11は、大豆ペーストに対するベクターデータと、油脂ペーストに対するラスターデータと、大豆ペーストに対するラスターデータとを含むスライスデータを生成する。大豆ペーストに対するベクターデータは、第1ベクターデータの一例である。油脂ペーストに対するラスターデータは、第1ラスターデータの一例である。大豆ペーストに対するラスターデータは、第2ラスターデータの一例である。
【0053】
吐出制御部13は、大豆ペーストに対するベクターデータに基づいて吐出ヘッド40Aによる大豆ペーストの吐出を制御する。吐出制御部13は、油脂ペーストに対するラスターデータに基づいて吐出ヘッド40Bによる油脂ペーストの吐出を制御する。吐出制御部13は、大豆ペーストに対するラスターデータに基づいて吐出ヘッド40Aによる大豆ペーストの吐出を制御する。
【0054】
具体的には、まず、吐出制御部13は、大豆ペーストに対するベクターデータに基づいて、人工肉200の外縁に相当する領域である第1領域に大豆ペーストを吐出するように吐出ヘッド40Aを制御する。
図4において、領域301が第1領域の一例である。
図5に、大豆ペーストに対するベクターデータに基づいて、第1領域に大豆ペーストを吐出したイメージを示す。
【0055】
ベクターデータは、例えば、造形材料を吐出すべき領域を、吐出ヘッド40が造形材料の吐出時に通過するべき経路により示すデータである。
図5には、大豆ペーストに対するベクターデータが、吐出ヘッド40が第1領域に大豆ペーストの吐出時に通過するべき経路を4つの線により示すことが例示されている。つまり、
図5には、座標(x2,y2)と座標(x9,y2)とを結ぶ線上と、座標(x9,y2)と座標(x9,y7)とを結ぶ線上と、座標(x9,y7)と座標(x2,y7)とを結ぶ線上と、座標(x2,y7)と座標(x2,y2)とを結ぶ線上とに、大豆ペーストを吐出すべきことを示している。
【0056】
なお、
図5に示すベクターデータは、1層分のベクターデータである。本実施の形態では、経路を示す線が2つの点を結ぶ直線である例について説明するが、経路を示す線が2つの点を結ぶ曲線であってもよい。また、本実施の形態では、理解を容易にするため、X軸における10個の座標とY軸における10個の座標とにより特定される10×10=100の領域で1層分の領域を示す。
【0057】
吐出制御部13は、大豆ペーストに対するベクターデータに基づいて、第1領域に大豆ペーストを吐出するように吐出ヘッド40Aを制御した後に、第2領域と第3領域とに造形材料を吐出するように吐出ヘッド40を制御する。具体的には、吐出制御部13は、第1領域に対する吐出制御の後、第2領域に油脂ペーストを吐出するように吐出ヘッド40Bを制御する処理を実行する。また、吐出制御部13は、第1領域に対する吐出制御の後、第3領域に大豆ペーストを吐出するように吐出ヘッド40Aを制御する処理を実行する。
【0058】
第2領域は、第1領域に囲まれる領域である。
図4において、領域302Aと領域302Bとが第2領域の一例である。なお、領域302Aと領域302Bとを総称して、適宜、領域302という。第3領域は、第1領域に囲まれる領域であり、第2領域とは異なる領域である。
図4において、領域303が第3領域の一例である。なお、第2領域に対する吐出制御と第3領域に対する吐出制御とを実行する順序は、適宜、調整することができる。本実施の形態では、第1領域に対する吐出制御の後、第3領域に対する吐出制御が実行され、その後、第2領域に対する吐出制御が実行される。
【0059】
図6に、大豆ペーストに対するラスターデータに基づいて、第3領域に大豆ペーストを吐出したイメージを示す。大豆ペーストに対するラスターデータは、例えば、大豆ペーストを吐出すべき領域を座標で示すデータである。
図6には、大豆ペーストに対するラスターデータが、大豆ペーストを吐出すべき座標を1で示し、大豆ペーストを吐出しない座標を0で示すことが例示されている。
図6に示すラスターデータは、1層分のラスターデータである。
【0060】
図7に、油脂ペーストに対するラスターデータに基づいて、第2領域に油脂ペーストを吐出したイメージを示す。油脂ペーストに対するラスターデータは、例えば、油脂ペーストを吐出すべき領域を座標で示すデータである。
図7には、油脂ペーストに対するラスターデータが、油脂ペーストを吐出すべき座標を1で示し、油脂ペーストを吐出しない座標を0で示すことが例示されている。
図7に示すラスターデータは、1層分のラスターデータである。
【0061】
次に、
図8に示すフローチャートを参照して、食品造形システム100が実行する食品造形処理について説明する。なお、食品造形処理は、例えば、ユーザにより材料タンクに造形材料が充填された後、ユーザから食品造形処理の開始を指示する操作を受けつけたことに応答して実行される。
【0062】
まず、食品造形システム100が備える制御部10は、食品造形物の指定を受けつける(ステップS101)。例えば、制御部10は、表示部22に食品造形物の種類の選択を受けつける画面を表示する。そして、制御部10は、操作受付部23がユーザから受けつけた操作に基づいて、ユーザが指定した食品造形物の種類を特定する。本実施の形態では、食品造形物は人工肉200である。
【0063】
制御部10は、ステップS101の処理を完了すると、3Dモデルを生成する(ステップS102)。例えば、制御部10は、記憶部21に記憶されている造形物情報に基づいて、ユーザにより指定された種類の食品造形物の3Dモデルを生成する。造形物情報は、例えば、食品造形物の種類毎に、食品造形物の形状、食品造形物の大きさ、食品造形物の各部を構成する造形材料の種類等を示す情報である。
【0064】
制御部10は、ステップS102の処理を完了すると、スライスデータを生成する(ステップS103)。例えば、制御部10は、生成した3Dモデルを水平方向に延びる面で分割し、食品造形物を構成する各層を生成するためのスライスデータを生成する。このスライスデータは、層毎に各造形材料の吐出領域を示すデータであり、ベクターデータとラスターデータとを含む。
【0065】
制御部10は、ステップS103の処理を完了すると、最下層を選択する(ステップS104)。つまり、制御部10は、一番下の層である堆積層201を生成することができるように、吐出ヘッド40のZ軸方向における位置を調整する。
【0066】
制御部10は、ステップS104の処理を完了すると、ベクター制御により外縁領域に第1造形材料を吐出する(ステップS105)。例えば、制御部10は、大豆ペーストに対するベクターデータに基づいて吐出ヘッド40Aの位置及び吐出を制御して、人工肉200の外縁領域に対応する領域301に大豆ペーストを吐出する。
【0067】
制御部10は、ステップS105の処理を完了すると、ラスター制御により内側領域に第1造形材料を吐出する(ステップS106)。例えば、制御部10は、大豆ペーストに対するラスターデータに基づいて吐出ヘッド40Aの位置及び吐出を制御して、人工肉200の内側領域に対応する領域303に大豆ペーストを吐出する。
【0068】
制御部10は、ステップS106の処理を完了すると、ラスター制御により内側領域に第2造形材料を吐出する(ステップS107)。例えば、制御部10は、油脂ペーストに対するラスターデータに基づいて吐出ヘッド40Bの位置及び吐出を制御して、人工肉200の内側領域に対応する領域302に油脂ペーストを吐出する。
【0069】
制御部10は、ステップS107の処理を完了すると、未造形の層があるか否かを判別する(ステップS108)。つまり、制御部10は、選択中の層、つまり、直前に造形した層が、食品造形物の一番上の層であるか否かを判別する。
【0070】
制御部10は、未造形の層があると判別すると(ステップS108:YES)、次の層を選択する(ステップS109)。つまり、制御部10は、直前に造形した層の1つ上の層を生成することができるように、吐出ヘッド40のZ軸方向における位置を1層分上昇させる。制御部10は、ステップS109の処理を完了すると、ステップS105に処理を戻す。制御部10は、未造形の層がないと判別すると(ステップS108:NO)、食品造形処理を完了する。
【0071】
本実施の形態では、吐出ヘッド40は、吐出時に流動性を有する造形材料を断続的に吐出する。従って、本実施の形態によれば、食品造形物を精度良く造形することができる。また、本実施の形態では、複数の吐出ヘッド40による複数の造形材料のそれぞれの吐出が、対応するラスターデータ又はベクターデータに基づいて制御される。従って、本実施の形態によれば、食品造形物を複数の造形材料により精度良く造形することができる。
【0072】
また、本実施の形態では、ベクターデータとラスターデータとに基づいて造形材料の吐出が制御される。従って、本実施の形態によれば、食品造形物を精度良く速やかに造形することができる。特に、本実施の形態では、ベクターデータに基づいて食品造形物の外縁に相当する第1領域に第1造形材料が吐出され、ラスターデータに基づいて第1領域に囲まれる第2領域に第2造形材料が吐出される。従って、本実施の形態によれば、食品造形物の外縁部分の速やかに造形し、食品造形物の内側部分を精度良く造形することができる。
【0073】
また、本実施の形態では、第1領域に高い粘度を有する第1造形材料が吐出された後、第2領域に低い粘度を有する第2造形材料が吐出される。従って、本実施の形態によれば、高い粘度を有する第1造形材料により低い粘度を有する第2造形材料の吐出後の変形が抑制され、食品造形物を精度良く造形することができる。
【0074】
また、本実施の形態では、第1ベクターデータに基づいて第1領域に第1造形材料が吐出された後、第1ラスターデータに基づいて第2領域に第2造形材料が吐出される処理と、第2ラスターデータに基づいて第1領域に囲まれる第3領域に第1造形材料が吐出される処理とが実行される。従って、本実施の形態によれば、食品造形物の外縁部分の速やかに造形し、食品造形物の内側部分を複数の造形材料を用いて精度良く造形することができる。
【0075】
また、本実施の形態では、複数の吐出ヘッド40による複数の造形材料のそれぞれの吐出が、対応するラスターデータに基づいて制御される。従って、本実施の形態によれば、食品造形物を複数の造形材料を用いて精度良く造形することができる。また、本実施の形態では、複数の吐出ヘッド40が主走査方向に並んで配置されている。従って、本実施の形態によれば、ラスターデータに基づいて複数の造形材料を効率的に吐出することができる。
【0076】
以上、実施の形態を説明したが、種々の形態による変形及び応用が可能である。上記実施の形態において説明した構成、機能、動作のどの部分を採用するのかは任意である。また、上述した構成、機能、動作のほか、更なる構成、機能、動作が採用されてもよい。また、上記実施の形態において説明した構成、機能、動作は、自由に組み合わせることができる。
【0077】
(変形例)
実施の形態では、2種類の造形材料を用いて、食品造形物を造形する例について説明した。1種類の造形材料を用いて食品造形物を造形してもよいし、3種類以上の造形材料を用いて食品造形物を造形してもよい。例えば、食品造形物が完成したときの味覚又は触覚が異なる多数の造形材料を用いて、所望の味覚または触覚を有する食品造形物を造形することが好適である。
【0078】
また、粘度が異なる同じ種類の造形材料が用いられてもよい。例えば、高い粘度を有する大豆ペーストと、低い粘度を有する大豆ペーストと、低い粘度を有する油脂ペーストとが用いられてもよい。この場合、例えば、高い粘度を有する大豆ペーストがベクターデータを用いて外縁部分に吐出された後、低い粘度を有する大豆ペーストと低い粘度を有する油脂ペーストとがラスターデータを用いて内側部分に吐出されてもよい。
【0079】
実施の形態では、大豆ペーストに対してベクターデータとラスターデータとが生成され、油脂ペーストに対してラスターデータが生成される例について説明した。各造形材料に対して生成されるデータは、適宜、調整することができる。つまり、1つの造形材料に対して、ベクターデータとラスターデータとのうち少なくとも一方のデータが生成されればよい。例えば、大豆ペーストに対してベクターデータのみが生成されてもよいし、大豆ペーストに対してラスターデータのみが生成されてもよい。また、油脂ペーストに対してベクターデータのみが生成されてもよいし、油脂ペーストに対してベクターデータとラスターデータとが生成されてもよい。
【0080】
実施の形態では、高い粘度を有する造形材料で外縁部分が造形される例について説明した。低い粘度を有する造形材料で外縁部分が造形されてもよい。なお、食品造形物の形を崩れ難くするためには、高い粘度を有する造形材料で第1部分を造形した後に、低い粘度を有する造形材料で第1部分に囲まれた第2部分を造形することが好適である。
【0081】
実施の形態では、第2ラスターデータを用いた大豆ペーストの吐出の実行後に、第1ラスターデータを用いた油脂ペーストの吐出が実行される例について説明した。第1ラスターデータを用いた油脂ペーストの吐出の実行後に、第2ラスターデータを用いた大豆ペーストの吐出が実行されてもよい。又は、第2ラスターデータを用いた大豆ペーストの吐出と第1ラスターデータを用いた油脂ペーストの吐出とが同時に実行されてもよい。
【0082】
実施の形態では、造形材料が速やかに自然乾燥する例について説明した。造形材料が速やかに自然乾燥しない場合、例えば、テーブルの下にヒータを持たせ、ヒータの加熱により吐出された造形材料の乾燥を促してもよい。また、レーザーの照射により造形材料が速やかに固定される場合、吐出された造形材料にレーザーを照射してもよい。また、各種の液体材料と混合することにより造形材料が速やかに固定される場合、吐出された造形材料に液体材料を混合させてもよい。
【0083】
また、実施の形態では、移動機構50が、吐出ヘッド40をX軸方向に移動させるヘッド移動機構51Aと、テーブル60をY軸方向に移動させるテーブル移動機構52と、吐出ヘッド40をZ軸方向に移動させるヘッド移動機構51Bとを備える例について説明した。移動機構50は、吐出ヘッド40とテーブル60との相対的な位置関係を変化させる機構であればよい。つまり、移動機構50は、吐出ヘッド40とテーブル60との少なくとも一方をX軸方向に移動させる機構と、吐出ヘッド40とテーブル60との少なくとも一方をY軸方向に移動させる機構と、吐出ヘッド40とテーブル60との少なくとも一方をZ軸方向に移動させる機構とを備えていてもよい。
【0084】
実施の形態では、大豆ペーストにより形成される赤身部分と、油脂ペーストにより形成される脂身部分とがおおまかに分けられている例について説明した。例えば、霜降り肉を模した人工肉200を造形する場合、大豆ペーストにより形成される赤身部分と油脂ペーストにより形成される脂身部分とが入り組んでいてもよい。なお、大豆ペーストの粘度の方が油脂ペーストの粘度よりも高い場合、型崩れを抑制するため、大豆ペーストの方が油脂ペーストよりも先に吐出されることが好適である。
【0085】
実施の形態では、食品造形物を構成する層毎に、外縁部分の形成と内側部分の形成とが繰り返される例について説明した。複数の層毎に、外縁部分の形成と内側部分の形成とが繰り返されてもよい。例えば、ベクターデータを用いて2層分の外周部分を大豆ペーストで形成する処理と、ラスターデータを用いて2層分の内側部分を大豆ペースト及び油脂ペーストで形成する処理とを繰り返してもよい。具体的には、例えば、第1層の外周部分を大豆ペーストで形成し、第2層の外周部分を大豆ペーストで形成し、第1層の内側部分を大豆ペースト及び油脂ペーストで形成し、第2層の内側部分を大豆ペースト及び油脂ペーストで形成するという処理を、全ての層が形成されるまで繰り返してもよい。
【0086】
実施の形態では、制御部10において、CPUがROM又は記憶部21に記憶されたプログラムを実行することによって、
図1に示した各部として機能した。しかしながら、本開示において、制御部10は、専用のハードウェアであってもよい。専用のハードウェアとは、例えば単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらの組み合わせ等である。制御部10が専用のハードウェアである場合、各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現してもよいし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現してもよい。また、各部の機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現してもよい。このように、制御部10は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又は、これらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0087】
本開示に係る食品造形システム100の動作を規定する動作プログラムを既存のパーソナルコンピュータ又は情報端末装置等のコンピュータに適用することで、当該コンピュータを、本開示に係る食品造形システム100として機能させることも可能である。また、このようなプログラムの配布方法は任意であり、例えば、CD-ROM(Compact Disk ROM)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical Disk)、又は、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよいし、インターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよい。
【0088】
本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。すなわち、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、本開示の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0089】
10 制御部
11 データ生成部
12 粘度制御部
13 吐出制御部
14 位置制御部
21 記憶部
22 表示部
23 操作受付部
24 通信部
30 粘度調整機構
40,40A,40B 吐出ヘッド
41 粒子
41A 大豆粒子
41B 油脂粒子
42,42A,42B 堆積物
50 移動機構
51,51A,51B ヘッド移動機構
52 テーブル移動機構
60 テーブル
61 配置面
100 食品造形システム
200 人工肉
201,202,203 堆積層
301,302,302A,302B,303 領域