(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037113
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】コレットブッシュ及び工具駆動装置
(51)【国際特許分類】
B23B 45/14 20060101AFI20240311BHJP
B23B 49/02 20060101ALI20240311BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240311BHJP
B23B 47/34 20060101ALI20240311BHJP
B25D 17/08 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B23B45/14
B23B49/02 A
B23Q11/00 M
B23B47/34 Z
B25D17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141790
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100136504
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】小野 遼平
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 政雄
(72)【発明者】
【氏名】菅原 弘行
(72)【発明者】
【氏名】中本 零
(72)【発明者】
【氏名】中畑 達雄
【テーマコード(参考)】
2D058
3C011
3C036
【Fターム(参考)】
2D058AA14
2D058BB11
2D058CA05
2D058DA23
3C011BB02
3C036BB12
3C036EE13
3C036HH09
3C036HH15
(57)【要約】
【課題】切粉の吸塵機能を有する手持ち式の工具駆動装置のワークに対する位置決めをコンセントリックコレットで行う場合において、工具の振れ防止と切粉の吸塵力の確保を両立できるようにすることである。
【解決手段】コレットブッシュは、工具を保持して回転と送りを行う手持ち式かつ切粉の吸塵機能付きの工具駆動装置をワークに位置決めするために前記工具駆動装置に取付けられるコンセントリックコレットに挿入されるコレットブッシュであって、前記コンセントリックコレットを広げるためのテーパする円筒状の外面と、前記工具を滑合させるための貫通孔を形成する円筒状の内面と、前記コレットブッシュの内部に吸塵用のエアを取り込むための流路とを有するものである。また、工具駆動装置は、上述したコレットブッシュと、前記コンセントリックコレットとを有するものである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を保持して回転と送りを行う手持ち式かつ切粉の吸塵機能付きの工具駆動装置をワークに位置決めするために前記工具駆動装置に取付けられるコンセントリックコレットに挿入されるコレットブッシュであって、
前記コンセントリックコレットを広げるためのテーパする円筒状の外面と、
前記工具を滑合させるための貫通孔を形成する円筒状の内面と、
前記コレットブッシュの内部に吸塵用のエアを取り込むための流路と、
を有するコレットブッシュ。
【請求項2】
前記流路として前記外面と前記内面の間に前記エアの貫通孔を形成した請求項1記載のコレットブッシュ。
【請求項3】
前記コレットブッシュの先端側における前記エアの貫通孔の端部に面取りを形成することによって前記エアの流路を広げた請求項2記載のコレットブッシュ。
【請求項4】
前記コレットブッシュの先端側における環状の端面に前記コレットブッシュの中心軸方向の凹凸を有する緩衝材を設け、前記凹凸の凹みを前記流路とした請求項1記載のコレットブッシュ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコレットブッシュと、
前記コンセントリックコレットと、
を有する工具駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、コレットブッシュ及び工具駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手持ち式の工具駆動装置を用いて穿孔対象となるワークを穿孔する場合には、ワークへの工具駆動装置の位置決めが必要となる。そのためのツールの1つとしてコンセントリックコレットが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
コンセントリックコレットは、複数のスリットを有する円筒状の構造を有しており、内側のテーパする貫通孔にテーパ付きのブッシュを挿入すると直径が広がるようになっている。このため、ワークに固定した穿孔板等の穿孔治具に設けられた位置決め孔にコンセントリックコレットを挿入した状態で、工具駆動装置にノーズピースとして設けられたテーパ付きのブッシュをコンセントリックコレットの内側に挿入するとコンセントリックコレットが拡径し、工具駆動装置を穿孔治具に位置決め及び固定することができる。
【0004】
手持ち式の工具駆動装置を用いてワークを穿孔する場合には、切粉を回収できるようにすることが望ましい。そこで、切粉の吸塵機能を有し、かつコンセントリックコレットを使用できるようにした工具駆動装置も知られている(例えば特許文献2及び非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5628592号明細書
【特許文献2】米国特許第10994344号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】DESOUTTER Industrial Tools,Catalog,[online]、[2022年7月20日検索]、インターネット<URL:https://us.desouttertools.com/uploads/documents/5dd3f490cb9aa_Desoutter%20Aerospace%20Catalog_ENG.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、コンセントリックコレットを使用して吸塵を行う場合には、コレットブッシュとドリルとの間における隙間が吸塵用のエアの流路となる。このため、ドリルに振れが生じないようにドリルのシャンクと滑合させたコレットブッシュをコンセントリックコレットに挿入すると、エアの流路が狭くなり吸塵力が不十分になる場合があるという問題がある。
【0008】
逆に、吸塵力を確保するために、ドリルのシャンクとコレットブッシュとの間における隙間を広くすると、ドリルのシャンクがコレットブッシュと滑合しなくなるので、ドリルの振れを防止できなくなるという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、切粉の吸塵機能を有する手持ち式の工具駆動装置のワークに対する位置決めをコンセントリックコレットで行う場合において、工具の振れ防止と切粉の吸塵力の確保を両立できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に係るコレットブッシュは、工具を保持して回転と送りを行う手持ち式かつ切粉の吸塵機能付きの工具駆動装置をワークに位置決めするために前記工具駆動装置に取付けられるコンセントリックコレットに挿入されるコレットブッシュであって、前記コンセントリックコレットを広げるためのテーパする円筒状の外面と、前記工具を滑合させるための貫通孔を形成する円筒状の内面と、前記コレットブッシュの内部に吸塵用のエアを取り込むための流路とを有するものである。
【0011】
また、本発明の実施形態に係る工具駆動装置は、上述したコレットブッシュと、前記コンセントリックコレットとを有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るコレットブッシュを有する工具駆動装置の構成を示す正面図。
【
図2】
図1に示すコレットブッシュ及びコンセントリックコレットの構造例を示す分解斜視図。
【
図3】
図1に示すコンセントリックコレットで工具駆動装置の筐体をワークに位置決めした例を示す図。
【
図4】
図1に示すコレットブッシュの詳細構造を示す縦断面図。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係るコレットブッシュの構造例を示す縦断面図。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係るコレットブッシュの構造例を示す拡大部分縦断面図。
【
図12】本発明の第4の実施形態に係るコレットブッシュの構成例を示す正面図。
【
図14】本発明の第5の実施形態に係るコレットブッシュの構成例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係るコレットブッシュ及び工具駆動装置について添付図面を参照して説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
(構成及び機能)
図1は本発明の第1の実施形態に係るコレットブッシュを有する工具駆動装置の構成を示す正面図である。
【0015】
工具駆動装置1は、ドリルやリーマ等の孔加工用の工具Tを保持して回転と送りを行う手持ち式かつ切粉の吸塵機能付きの装置である。このため、工具Tを保持するホルダ2、ホルダ2を回転させるモータ3、モータ3の回転トルクをホルダ2と工具Tに伝達するスピンドル4、工具Tを送り出す送り機構5及びモータ3を収納する筐体6に加えて吸塵ポート7を有する。吸塵ポート7にはホース等で集塵装置を連結し、吸引することによって切粉の吸塵用のエアを流すことができる。
【0016】
吸塵ポート7は、筐体6の一部として形成しても良いし、筐体6に連結しても良い。また、筐体6にはユーザが握るためのグリップ8と、ユーザがモータ3を手動で制御するためのスイッチ9が設けられる。
【0017】
モータ3は、空気圧式、電動式及び油圧式のいずれであっても良く、モータ3とスピンドル4との間にギアを連結して回転数を変化させても良い。モータ3にギアを連結する場合には、モータ3の出力軸と、スピンドル4の回転軸を平行又は非平行にすることもできる。
【0018】
送り機構5は、ホルダ2とスピンドル4を工具軸AX方向に往復移動する装置である。送り機構5は、シリンダ、ボールねじ或いはラックアンドピニオン等のギアなど、ホルダ2及びスピンドル4を直線的に移動させる所望の機械要素で構成することができる。送り機構5の動力源としても、空気圧式、電動式又は油圧式のモータを用いることができる。或いは、送り機構5の動力源を、ホルダ2を回転させるモータ3としても良い。すなわち、工具Tの回転動作と送り動作を別々のモータで行っても良いし、共通のモータで行っても良い。
【0019】
筐体6の先端には、工具駆動装置1の筐体6を孔加工の対象となるワークWに位置決めするためのコレットブッシュ10及びコンセントリックコレット11を着脱可能に取付けることができる。筐体6の先端に設けられる部品はノーズピースとも呼ばれ、ノーズピースの一部として設けられる位置決め用のブッシュはブッシングチップとも呼ばれる。従って、コレットブッシュ10は、ブッシングチップと言うこともできる。一方、コンセントリックコレット11は、心出し機能を有する汎用のコレットである。
【0020】
図2は
図1に示すコレットブッシュ10及びコンセントリックコレット11の構造例を示す分解斜視図であり、
図3は
図1に示すコンセントリックコレット11で工具駆動装置1の筐体6をワークWに位置決めした例を示す図である。
【0021】
図示されるように、コンセントリックコレット11は、コンセントリックコレット11の中心軸方向を長さ方向とし、かつ先端側の端面及び後端側の端面のいずれかまで達しない複数のスリットを有する円筒状の構造を有しており、内側の貫通孔は、先端に向かって内径が徐々に小さくなるようにテーパしている。他方、コレットブッシュ10は、外径が先端に向かって徐々に小さくなるようにテーパしている。
【0022】
このため、ワークWに固定した穿孔板J1等の穿孔治具Jに設けられた位置決め孔J2にコンセントリックコレット11を挿入した状態で、工具駆動装置1にノーズピースとして設けられたテーパ付きのコレットブッシュ10をコンセントリックコレット11の内側に挿入するとコンセントリックコレット11が拡径し、工具駆動装置1を穿孔治具Jに位置決め及び固定することができる。すなわち、コレットブッシュ10に被せたコンセントリックコレット11を後端側に引き込むとコンセントリックコレット11の直径が広がるため、コンセントリックコレット11を穿孔板J1等の穿孔治具Jにロックすることができる。
【0023】
図示された例では、ワークWにシムJ3を挟んで穿孔板J1がセットされており、ワークWの基準孔と穿孔板J1の基準孔に位置決めピンJ4を挿入することによって、穿孔板J1の位置決め孔J2が孔加工位置となるように位置決めされている。尚、孔加工は、ドリルによる穿孔の他、リーマによる孔の仕上げ加工としても良い。
【0024】
コレットブッシュ10及びコンセントリックコレット11の後端側には鍔状部が設けられる。このため、筐体6の先端に形成した貫通孔からコレットブッシュ10及びコンセントリックコレット11の先端を突出させる一方、コレットブッシュ10及びコンセントリックコレット11の鍔状部を筐体6の内部に配置することにより、コレットブッシュ10及びコンセントリックコレット11を筐体6に連結することができる。
【0025】
筐体6の先端と、コレットブッシュ10及びコンセントリックコレット11の後端側に形成される鍔状部等には、コレットブッシュ10及びコンセントリックコレット11を筐体6に固定できるようにネジ等の連結構造を設けることができる。図示された例では、筐体6の先端に着脱可能なキャップ12が設けられており、キャップ12の内側にコレットブッシュ10及びコンセントリックコレット11の鍔状部を配置する一方、キャップ12の貫通孔からコレットブッシュ10及びコンセントリックコレット11の先端を突出できるようになっている。このため、キャップ12を取外せば、コレットブッシュ10及びコンセントリックコレット11の筐体6への着脱に加えて、工具Tをホルダ2に着脱することができる。
【0026】
コレットブッシュ10の内側は、工具Tを通すために使用される他、切粉の吸引を行う際には、エアの流路としても利用される。すなわち、吸塵ポート7にホース等で連結した集塵装置を作動させると、コレットブッシュ10の内部から筐体6の内部を通って吸塵ポート7に向かう吸塵用のエアの流れが形成される。但し、コレットブッシュ10の内側には、工具Tを滑合させるための貫通孔とは別に、吸塵用のエアの流路が形成される。
【0027】
次にコレットブッシュ10の詳細構造例について説明する。
【0028】
図4は
図1に示すコレットブッシュ10の詳細構造を示す縦断面図、
図5は
図4に示すコレットブッシュ10の左側面図、
図6は
図4に示すコレットブッシュ10の右側面図である。
【0029】
図4乃至
図6に示すようにコレットブッシュ10は、筐体6から突出させてコンセントリックコレット11に挿入するための円筒状の挿入部20と、筐体6の内部に配置して筐体6に固定するための円筒状の鍔状部21とを有する。また、挿入部20は、コンセントリックコレット11を広げるためのテーパする円筒状の外面22と、工具Tを滑合させるための貫通孔23を形成する円筒状の内面26とを有する。
【0030】
挿入部20の外面22の直径は、先端に向かって徐々に小さくなるため、挿入部20の外面22は円錐台の側面と同様な曲面となる。一方、工具Tを滑合させるための挿入部20の内面26は工具Tと滑合するように、直径が一定となっている。このため、工具Tを滑合させるための挿入部20の内面26は円筒状、すなわち円柱の側面と同様な曲面となる。
【0031】
また、鍔状部21の直径は、挿入部20の外面22の最大径よりも大きくなっている。このため、鍔状部21のみを筐体6の内部に留めることができる。尚、上述したように鍔状部21の内面又は外面等には、コレットブッシュ10を筐体6のキャップ12等に固定できるように、筐体6側の連結構造に合わせて雌ねじ又は雄ねじ等の連結構造を形成することができる。
【0032】
更に、コレットブッシュ10の内部には、吸塵用のエアをコレットブッシュ10の内部に取り込むための流路として、挿入部20の外面22と内面26の間にエアの貫通孔25が形成される。エアの貫通孔25は原理的には単一であっても良いが、複数の貫通孔25を形成することが吸塵力を確保する観点から合理的である。
【0033】
図示された例では、工具Tと滑合する内面26は、コレットブッシュ10の長さ方向における先端側の一部のみに形成されており、工具Tと滑合する第1の内面26の後端側における第2の内面26の直径は、工具Tと滑合する第1の内面26の直径よりも大きくなっている。すなわち、コレットブッシュ10の挿入部20の内部には、段付きの貫通孔が形成されている。このようにすると、挿入部20の第1の内面26に工具Tを滑合させながら工具Tを送り出す場合において、工具Tの工具径よりも直径が大きいシャンクとコレットブッシュ10との間における干渉を低減することができる。
【0034】
このため、エアの貫通孔25は、工具Tと滑合する挿入部20の第1の内面26と、挿入部20の外面22との間に形成される。すなわち、各貫通孔25の一端は、コレットブッシュ10の先端側における端面で開口しており、各貫通孔25の他端は、直径が小さい第1の内面26と、直径が大きい第2の内面26の間に形成される環状の段差面で開口している。その結果、エアの流路を形成する各貫通孔25の中心軸は、工具Tと滑合する貫通孔23の中心軸に平行となる。
【0035】
尚、コレットブッシュ10の先端側における端面にも段差を形成し、各貫通孔25を挿入部20の内部において開口させても良いが、図示されるようにコレットブッシュ10の先端側における端面で開口させれば、コレットブッシュ10の強度を確保するために必要となる板厚を確保しつつ各貫通孔25の直径をできるだけ大きくすることができる。このため、吸塵効果を向上させることができる。
【0036】
特に、コレットブッシュ10の挿入部20の長さは、従来の典型的なコレットブッシュと同様に、コンセントリックコレット11の長さよりも長くなっている。従って、コレットブッシュ10の挿入部20をコンセントリックコレット11に挿入すると、挿入部20の先端がコンセントリックコレット11から突出する。このため、
図3に例示されるように、ワークWの損傷を回避する観点からコレットブッシュ10の先端側における端面をワークWと接触させない場合には、コレットブッシュ10の先端側における端面で開口する各貫通孔25から十分な流量の吸塵用のエアを取り込むことができる。
【0037】
以上のようなコレットブッシュ10は、工具Tと滑合させるための貫通孔23とは別に、吸塵用のエアの流路として専用の貫通孔25を内部に形成したものである。また、工具駆動装置1は、そのようなコレットブッシュ10とコンセントリックコレット11を備えたものである。
【0038】
(効果)
このため、コレットブッシュ10及び工具駆動装置1によれば、ワークWに対する位置決めをコンセントリックコレット11で行いつつ、工具Tの振れ防止と切粉の吸塵力の確保を両立することができる。すなわち、コレットブッシュ10の挿入部20における第1の内面26と工具Tを滑合させることによって工具Tの振れを防止しつつ、貫通孔25を利用して十分な流量のエアを流すことによって吸塵効果を維持することができる。その結果、孔加工の精度を確保しつつ、切粉詰まりを回避することができる。加えて、吸塵用のエアの流量を確保できることから、工具Tの空冷を行うこともできる。
【0039】
特にガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)等の繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)やFRPとアルミニウム等の金属の重ね合せ材の孔加工を行う場合には、孔加工精度の確保と切粉詰まりの回避が重要となる。このため、これらの孔加工において上述したコレットブッシュ10及び工具駆動装置1を用いれば、容易に要求を満たすことができる。
【0040】
(第2の実施形態)
図7は本発明の第2の実施形態に係るコレットブッシュの構造例を示す縦断面図、
図8は
図7に示すコレットブッシュの左側面図、
図9は
図7に示すコレットブッシュの上面図である。
【0041】
図7乃至
図9に示された第2の実施形態におけるコレットブッシュ10Aは、先端側の端部にコレットブッシュ10Aの半径方向を中心軸とする貫通孔30を形成した点が第1の実施形態におけるコレットブッシュ10と相違する。第2の実施形態におけるコレットブッシュ10Aの他の構成及び作用については第1の実施形態におけるコレットブッシュ10と実質的に異ならないため同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
【0042】
図7乃至
図9に示すように、コレットブッシュ10Aの長さ方向を中心軸とする貫通孔25と交差するように、コレットブッシュ10Aの半径方向を中心軸とする貫通孔30を吸塵用のエアの流路として形成することができる。この場合、
図7及び
図8に例示されるように、コレットブッシュ10Aの長さ方向に延びる貫通孔25の中心軸と、コレットブッシュ10Aの半径方向に延びる貫通孔30の中心軸を交差させることが合理的である。
【0043】
第2の実施形態のようにコレットブッシュ10Aの半径方向に延びる貫通孔30を吸塵用のエアの流路として追加すると、コレットブッシュ10Aの先端側における端面をワークWと接触又は近接させて孔加工を行う場合において、十分な流量のエアを取り込むことが可能となる。このため、吸塵効果を維持することができる。
【0044】
(第3の実施形態)
図10は本発明の第3の実施形態に係るコレットブッシュの構造例を示す拡大部分縦断面図であり、
図11は
図10に示すコレットブッシュの部分左側面図である。
【0045】
図10及び
図11に示された第3の実施形態におけるコレットブッシュ10Bは、コレットブッシュ10Bの長さ方向に延びる貫通孔25の端部に面取り40を形成した点が第1の実施形態におけるコレットブッシュ10と相違する。第3の実施形態におけるコレットブッシュ10Bの他の構成及び作用については第1の実施形態におけるコレットブッシュ10と実質的に異ならないため、貫通孔25の端部のみ図示し、同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
【0046】
図10及び
図11に例示されるように、コレットブッシュ10Bの先端側における端面で開口する貫通孔25に、C面取りやR面取り等の面取り40を形成しても良い。貫通孔25の端部に面取り40を形成すると、コレットブッシュ10Bの先端側における板厚を確保しつつ、吸塵用のエアの流路の入口を広げることができる。具体的には、エアの入口となる貫通孔25の開口端が円錐台形状の空間となる。
【0047】
このため、第3の実施形態によれば、コレットブッシュ10Bの先端側における端面をワークWと近接させて孔加工を行う場合において、貫通孔25内に向かう吸塵用のエアの流れを形成することができる。
【0048】
(第4の実施形態)
図12は本発明の第4の実施形態に係るコレットブッシュの構成例を示す正面図であり、
図13は
図12に示すコレットブッシュの左側面図である。
【0049】
図12及び
図13に示された第4の実施形態におけるコレットブッシュ10Cは、先端の形状をギザギザ形状50にした点が第1の実施形態におけるコレットブッシュ10と相違する。第4の実施形態におけるコレットブッシュ10Cの他の構成及び作用については第1の実施形態におけるコレットブッシュ10と実質的に異ならないため、同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
【0050】
図12及び
図13に例示されるように、コレットブッシュ10Cの環状となる先端の形状をギザギザ形状50にすると、コレットブッシュ10Cの先端をワークWと接触又は近接させた場合において、コレットブッシュ10CとワークWとの間に隙間が生じる。すなわち、コレットブッシュ10Cの先端には、コレットブッシュ10Cの中心軸方向を法線方向とする端面が形成されない。そして、コレットブッシュ10Cの先端をワークWに接触させると、接触の態様は面接触では無くコレットブッシュ10Cの周方向に断続的な線接触となる。
【0051】
従って、コレットブッシュ10Cの先端をワークWに近接させる場合はもちろん、コレットブッシュ10Cの先端をワークWに接触させる場合においても、コレットブッシュ10CとワークWとの間に生じる隙間から十分な流量のエアを取り込むことが可能となる。このため、
図12及び
図13に例示されるように、コレットブッシュ10Cの長さ方向に延びる各貫通孔25がギザギザ形状50の谷で開口するようにギザギザ形状50の山と谷の間隔を決定することができる。そうすると、コレットブッシュ10Cの先端をワークWと接触又は近接させた場合において、コレットブッシュ10CとワークWとの間に生じる隙間から貫通孔25に十分な流量の吸塵用のエアを流入させることができる。
【0052】
以上の第4の実施形態によれば、コレットブッシュ10Cの先端に形成したギザギザ形状50の谷の部分における凹みを吸塵用のエアの流路とすることができる。このため、コレットブッシュ10Cの先端をワークWと接触又は近接させた場合であっても、吸塵効果を維持することができる。
【0053】
(第5の実施形態)
図14は本発明の第5の実施形態に係るコレットブッシュの構成例を示す正面図であり、
図15は
図14に示すコレットブッシュの左側面図である。
【0054】
図14及び
図15に示された第5の実施形態におけるコレットブッシュ10Dは、先端側における環状の端面に凹凸を有する緩衝材60を取付けた点が第1の実施形態におけるコレットブッシュ10と相違する。第5の実施形態におけるコレットブッシュ10Dの他の構成及び作用については第1の実施形態におけるコレットブッシュ10と実質的に異ならないため、同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
【0055】
図14及び
図15に例示されるようにコレットブッシュ10Dの先端側における環状の端面にコレットブッシュ10Dの長さ方向及び中心軸方向の凹凸を有する緩衝材60を接着剤等で接着することができる。そうすると、緩衝材60の凹凸の凹みを吸塵用のエアの流路とすることができる。
【0056】
このため、
図14及び
図15に例示されるように、コレットブッシュ10Dの長さ方向に延びる各貫通孔25が緩衝材60の凹凸の凹みの近傍で開口するように凹凸の間隔を決定することができる。そうすると、コレットブッシュ10Dの先端をワークWと接触又は近接させた場合において、緩衝材60とワークWとの間に生じる隙間から貫通孔25に十分な流量の吸塵用のエアを流入させることができる。
【0057】
緩衝材60の材質としては、例えば、ポリアセタールコポリマー等の樹脂、ポーラスアルミ材或いはゴム等の弾性体が挙げられる。また、緩衝材60の凹凸は
図14及び
図15に例示されるようなジグザグ形状に限らず、
図12及び
図13に示すような先端が鋭利なギザギザ形状にしたり、ギザギザ形状の山にR面取りを施した形状や滑らかな波形の形状にしたりしても良い。
【0058】
以上の第5の実施形態によれば、コレットブッシュ10Dの先端をワークWと接触又は近接させた場合において吸塵効果を維持できるのみならず、先端に緩衝材60を設けたのでコレットブッシュ10Dの先端をワークWと接触させた場合においてワークWの損傷を防止することができる。
【0059】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【0060】
例えば、各実施形態を組合わせても良い。具体例として、第2の実施形態と第3の実施形態を組合わせる場合であれば、第2の実施形態におけるコレットブッシュ10Aの長さ方向に延びる貫通孔25の端部に面取り40を形成することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 工具駆動装置
2 ホルダ
3 モータ
4 スピンドル
5 送り機構
6 筐体
7 吸塵ポート
8 グリップ
9 スイッチ
10、10A、10B、10C、10D コレットブッシュ
11 コンセントリックコレット
12 キャップ
20 挿入部
21 鍔状部
22 外面
23 貫通孔
24 内面
25 貫通孔
26 内面
30 貫通孔
40 面取り
50 ギザギザ形状
60 緩衝材
AX 工具軸
J 穿孔治具
J1 穿孔板
J2 位置決め孔
J3 シム
J4 位置決めピン
T 工具
W ワーク