(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003713
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】天秤台
(51)【国際特許分類】
G01G 23/00 20060101AFI20240105BHJP
B01L 9/00 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
G01G23/00 A
B01L9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103058
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】512284033
【氏名又は名称】株式会社ダルトン
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】杉山 慎太郎
【テーマコード(参考)】
4G057
【Fターム(参考)】
4G057AE05
4G057AE21
(57)【要約】
【課題】設置作業を容易に行うことができる天秤台を提供する。
【解決手段】天秤台は、上枠を有する架台と、前記架台の周囲を囲むカバー組立体と、前記架台の前記上枠に載置され、その上面が天秤を載置するための載置面となっているウエイト組立体と、を備え、前記ウエイト組立体は、前記架台の前記上枠の上に載置され、上側が開放されたウエイト収納部と、前記ウエイト収納部内に上下方向に積層された状態で収容される複数のウエイトと、前記複数のウエイトを上方から覆うウエイトカバーと、を有し、前記カバー組立体は天板を有し、前記天板に、前記天板を上下に貫通する貫通穴が設けられ、前記貫通穴の内部に前記架台により支持されたウエイト組立体が配置され、前記天板の上面と前記ウエイトカバーの上面がほぼ同じ高さ位置にあり、前記ウエイトカバーの上面が天秤を載置するために用いられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠を有する架台と、
前記架台の周囲を囲むカバー組立体と、
前記架台の前記上枠に載置され、その上面が天秤を載置するための載置面となっているウエイト組立体と、
を備え、
前記ウエイト組立体は、
前記架台の前記上枠の上に載置され、上側が開放されたウエイト収納部と、
前記ウエイト収納部内に上下方向に積層された状態で収容される複数のウエイトと、
前記複数のウエイトを上方から覆うウエイトカバーと、
を有し、
前記カバー組立体は天板を有し、前記天板に、前記天板を上下に貫通する貫通穴が設けられ、前記貫通穴の内部に前記架台により支持されたウエイト組立体が配置され、前記天板の上面と前記ウエイトカバーの上面がほぼ同じ高さ位置にあり、前記ウエイトカバーの上面が天秤を載置するために用いられる、天秤台。
【請求項2】
前記ウエイト収納部は、ゴム板等の制震部材を介して前記架台の前記上枠の上に載置されている、請求項1記載の天秤台。
【請求項3】
前記ウエイト収納部は、積層された前記複数のウエイトが載置される底板と、前記ウエイトを前記ウエイト収納部に対して水平方向に関して位置決めする位置決め部材と、を有している、請求項1記載の天秤台。
【請求項4】
前記ウエイト収納部は、前記長方形の3辺に該当する前記底板の縁のところから立ち上がる3つの側板を有し、残りの1辺から立ち上がる側板を有しない、平面視で長方形の構造物であり、前記3つの側板のうちの少なくとも1つが前記位置決め部材として用いられる、請求項3記載の天秤台。
【請求項5】
前記ウエイト収納部は、積層された前記複数のウエイトが載置される底板と、前記底板の周縁から上方に延びる複数の側板とを有する、平面視で長方形の構造物であり、
前記ウエイトカバーは、前記複数のウエイトの最も上のウエイトと面接触する天板と、前記天板の周縁から下方に延びる4つの側板とを有する、平面視で長方形の構造物であり、
前記ウエイトカバーの前記天板および前記4つの側板が、前記ウエイト収納部およびそこに載置された前記複数のウエイトを覆っており、前記ウエイト収納部およびそこに載置された前記複数のウエイトが、平面視において前記ウエイトカバーにより完全に隠されている、請求項1記載の天秤台。
【請求項6】
平面視で、前記ウエイトカバーの各側板と、前記天板の前記貫通穴の縁との間に隙間が存在し、この隙間の真下には、前記架台の前記上枠を構成する部材以外には、天秤台を構成する如何なる部材も存在しない、請求項5記載の天秤台。
【請求項7】
前記架台および前記カバー組立体は、前記架台の前記上枠のうちの前記隙間の真下にある部分に作業者の手を入れることができるように形成されている、請求項6記載の天秤台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば化学実験等で用いる薬剤、試料等を秤量する精密測定天秤を載置するために好適に用いることができる天秤台に関する。
【背景技術】
【0002】
化学実験等のために精密な秤量を行うための精密天秤は、十分な重量を有する堅固な天秤台の上に置かれる(例えば特許文献1を参照)。特許文献1の天秤台は、中央部に穴部を有する天板を備えた机と、机の下方に設けられた天秤支持構造物とを備えている。天秤支持構造物は、連結棒で連結された一対の脚ブロックと、脚ブロックの上に緩衝材を介して載置された支持台と、支持台にネジ止めされた天秤置部とを有している。天秤置部は、机の天板の穴部より僅かに小さく、天板には接触していない。また、机と天秤支持構造物とは結合されていない。このため、机に振動を与えてもその振動は天秤支持構造物に伝わらないようになっている。
【0003】
天秤支持構造物の構成要素はいずれもかなり重く、設置は容易ではない。天秤支持構造物を一旦設置場所に設置した後では、総重量が例えば200kgを超える支持構造物の位置の微調整も容易ではない。勿論、設置場所を変更しようとしてもその作業には多大な労力が必要である。また、従来の天秤台は、設置作業手順を柔軟に変更することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、設置作業を容易に行うことができる天秤台を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、上枠を有する架台と、前記架台の周囲を囲むカバー組立体と、前記架台の前記上枠に載置され、その上面が天秤を載置するための載置面となっているウエイト組立体と、を備え、前記ウエイト組立体は、前記架台の前記上枠の上に載置され、上側が開放されたウエイト収納部と、前記ウエイト収納部内に上下方向に積層された状態で収容される複数のウエイトと、前記複数のウエイトを上方から覆うウエイトカバーと、を有し、前記カバー組立体は天板を有し、前記天板に、前記天板を上下に貫通する貫通穴が設けられ、前記貫通穴の内部に前記架台により支持されたウエイト組立体が配置され、前記天板の上面と前記ウエイトカバーの上面がほぼ同じ高さ位置にあり、前記ウエイトカバーの上面が天秤を載置するために用いられる、天秤台が提供される。
【発明の効果】
【0007】
上記の本発明の一実施形態によれば、天秤台の設置作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る天秤台を示した斜視図である。
【
図2】
図1の天秤台の構成要素である枠体を示した斜視図である。
【
図3】
図2の枠体にゴム板を取り付けた状態を示した斜視図である。
【
図4】
図3の枠体にウエイト支持部およびウエイトを取り付ける様子を示した斜視図である。
【
図5】
図4に示したウエイト支持部にウエイトカバーを取り付ける様子を示した斜視図である。
【
図6】ウエイト組立体の構成要素を示した斜視図である。
【
図7】カバー組立体のパネル脚および上梁を示した斜視図である。
【
図8】カバー組立体のサイドカバーおよび背面パネルを示した斜視図である。
【
図9】一対のパネル脚を上梁を介して結合する工程について説明する斜視図である。
【
図10】
図9の状態となったパネル脚にさらに背面パネルを結合する工程について説明する斜視図である。
【
図11】
図10の状態となったパネル脚、上梁および背面パネルに更に天板を結合する工程について説明する斜視図である。
【
図12】架台/ウエイト組立体にカバー組立体を被せた状態を示す斜視図である。
【
図13】天秤台を真上から見た状態を示す平面図である。
【
図14】天板が除去された天秤台を真上から見た状態を示す平面図である。
【
図15】天板および背面パネルを除去した状態で天秤台を後方斜め上から見た状態を示す斜視図である。
【
図16】天秤台の設置方法の第1変形実施形態について説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して本発明の好適な一実施形態について説明する。
図1に示すように、天秤台1は、(その構成要素を大まかに分類すると)架台10と、ウエイト組立体20と、カバー組立体30とから構成されている。天秤台1は、現場組立式のものである。以下、本明細書においては、設置現場での設置手順と平行して、天秤台1の構成を説明してゆくこととする。
【0010】
方向および位置の説明の簡略化のため、天秤台1の設置が完了した状態で、天秤台1に向かって座った作業者から見て手前側を「前」、奥側を「後」、左手側を「左」、右手側を「右」と必要に応じて呼ぶこととする。なお、図示された天秤台1は、実質的に左右鏡面対称の構成を有しているため、図中で例えば左側が見えない場合でも、右側を見ることにより、見えない左側の構成を理解することができることに留意されたい。
【0011】
本明細書において、用語「架台」は、一般的な意味での架台、すなわち、複数の梁および柱を結合することにより形成された重量物を支持する構造体を意味している。
図2に示すように、架台10は、6つの梁(水平方向に延びる構造要素)および4つの柱(鉛直方向に延びる構造要素)を有している。架台10は、鉄鋼製の角パイプを溶接することにより作製されている。
【0012】
架台10は、その上端部に、4つの梁(2つの長梁12および2つの短梁13)から構成された全体として略長方形の上枠11を有している。上枠11の各長梁12には、3つのゴム板取付穴14が形成されている。
【0013】
架台10を構成する2つの下梁15の前端部および後端部の下面には、架台10の水平調整のために、ねじ込み式のアジャスタ16が着脱可能に取り付けられている。勿論このアジャスタ16は、設置作業現場で架台10に組み付けてもよい。
【0014】
まず、架台10を天秤台1の設置目標位置に相当する床上の位置に置く。
【0015】
次いで、
図3に示すように、架台10の上枠11に、制震部材としてのゴム板17が取り付けられる。ゴム板17の底面に設けられた円柱状突起(図示せず)をゴム板取付穴14にはめ込むことにより、ゴム板17を上枠11に取りつけることができる。ゴム板17の代わりに、制振性(振動減衰性)を有する適当な構造物またはエラストマーを用いてもよい。
【0016】
次いで、
図4~
図5に示すように、ウエイト組立体20が架台10に搭載される。
図6にも示されるように、ウエイト組立体20は、ウエイト収納部21、複数のウエイト22、ウエイトカバー23から構成されている。ウエイト収納部21およびウエイトカバー23は、全体として、蓋付きの箱のような形態を有する。なお、
図6においては、各部材21,22,23の構造を把握しやすくするために、ウエイト収納部21、ウエイト22、ウエイトカバー23の全ては別の視点から見た状態で描かれている。
【0017】
ウエイト組立体20の架台10への搭載にあたっては、まず、
図4に示すように、ウエイト収納部21(蓋付き箱の下部に相当)が架台10に取りつけたゴム板17の上に載置される。このとき、ウエイト収納部21の底板211の下面から突出する位置決め突起214(6つあるが2つだけ見える)が、ゴム板17の上面に設けられた凹部にはめ込まれる。
【0018】
ウエイト収納部21は、長方形の前述した底板211と、長方形の3辺に該当する縁のところから上方に延びる3つの側板212とを有している。長方形の残りの1辺に該当する縁(前縁)のところには側板(212)が設けられていない。この構成により、ウエイト収納部21に対するウエイト22の収納および除去を容易に行うことができる。
【0019】
なお、本明細書において「長方形」という用語は、長辺と短辺の長さが異なる(あるいはこれに類する)必然性についての積極的な記載が無い限り、「正方形」も包含する用語として用いられている。
【0020】
次に、ウエイト収納部21の底板211の上に、ウエイト22を1枚ずつ積み重ねるように置いてゆく。ウエイト22は、成人の作業者が無理なく扱える程度の重量、例えば1枚当たり20~25kg程度の重量を有する長方形の鉄板である。ウエイト組立体20の総重量は例えば110~140kg程度の範囲内である。ウエイト22の数は例えば4~5個の範囲で設定することができる。ウエイト22の数および1つ当たりの重量は、積み重ねが煩雑に感じるほど多くない数であってかつ作業が困難なほど重くなない範囲で適当に選択することができ、上記のものに限定はされない。
【0021】
ウエイト収納部21にウエイト22を置いてゆくときに、ウエイト収納部21の後部の側板212を、ウエイト22の位置決め部材として用いることができる。つまり、ウエイト22の縁をウエイト収納部21の後部の側板212に軽く衝突させることにより、ウエイト22の位置を揃えることが容易になる。
【0022】
ウエイト収納部21にウエイト22を収納したときに、ウエイト22の縁とウエイト収納部21の側板212(例えば作業者からみて右側の側板212)との間に、指を挿入することができる程度の隙間が形成されていてもよい。そうすることにより、ウエイト収納部21に対するウエイト22の収納および除去を、さらに容易に行うことができる。
【0023】
所定数のウエイト22を積み重ねたら、
図5に示すように、ウエイトカバー23をウエイト22およびウエイト収納部21の上に被せる。ウエイトカバー23は、平面視でウエイト22よりもやや大きな長方形の天板231と、長方形の4辺(全ての辺)に該当する天板231の縁のところから下方に延びる4つの側板232とを有している。
【0024】
ウエイト収納部21内に所定数のウエイト22が搭載された状態でウエイトカバー23を被せると、最上段のウエイト22の上面と、ウエイトカバー23の天板231の下面とが互いに面接触し、ウエイト収納部21の側板212の上縁とウエイトカバー23の天板231の下面とが接触しないようになっている。言い換えると、ウエイト収納部21の各側板212の上縁の高さ位置は、最上段のウエイト22の上面の高さ位置よりも低い。このことにより、ウエイトカバー23の天板231に撓み振動が生じることを防止することができる。このために、ウエイト収納部21の底板221の少なくとも上面(好ましくは下面も)、各ウエイト22の上下面、ウエイトカバー23の天板231の上下面は、接触面間にガタが生じない程度の十分に高い平坦度を有していることが望ましい。
【0025】
図5に示すように、ウエイトカバー23の左右の側板232には、それぞれ下方延長部232eが設けられ、各下方延長部232eにネジ挿入用の穴233が設けられている(
図5では左側のものしか見えない)。
図4に示すように、ウエイト収納部21の左右の側板212にも、穴233に対応する位置に、ネジ挿入用の穴213が設けられている。これらの穴213、233にタッピングスクリュー50をねじ込むことにより、ウエイトカバー23をウエイト収納部21に固定することができる。これにより、ウエイト組立体20が完成する。この状態で、ウエイト組立体20を真上から見ると、ウエイト収納部21およびウエイト22は、ウエイトカバー23に完全に隠れて見えない。
【0026】
以上の手順で、アジャスタ16付きの架台10、ゴム板17およびウエイト組立体20からなる第1の組立体である架台/ウエイト組立体(10+20)が形成される。
【0027】
次に、第2の組立体であるカバー組立体30を組み立てる。カバー組立体30は、左右一対のパネル脚31、上梁32、背面パネル33、天板34および左右一対のサイドカバー35を備えている。カバー組立体30の手順について以下に説明する。
【0028】
カバー組立体30の組立手順について説明する前に、パネル脚31および上梁32に形成されている穴(タッピングスクリューを通してゆく穴)について
図7および
図8を参照して先に説明しておく。
図7に示されているパネル脚31は左側のパネル脚であり、
図8に示されているサイドカバー35は右側のサイドカバーである。穴にはHおよびHに続く2桁の数字の参照符号が付けられている。2桁の数字は結合先の部材の参照符号である。例えば、パネル脚31に設けられた参照符号H33で示す穴は、パネル脚31を背面パネル33と結合するために用いる穴という意味である。
【0029】
なお、本実施形態において、全てのタッピングスクリューの挿入方向はタッピングスクリューを通してゆく穴が形成されている板状体の板厚方向である。カバー組立体30の組み立てについて説明する図面においてタッピングスクリューの図示は省略する。
【0030】
図7において参照符号BH34で示す穴は、穴H34に挿入されるタッピングスクリューを回すためのドライバービットを通すための穴である。また、
図8においてサイドカバー35に形成された参照符号H31’で示す穴は、ダルマ穴である。このダルマ穴H31’は、パネル脚31の穴H35’に完全に締め込まれずに浮いた状態となっているタッピングスクリューの頭部を引っかけるために用いられる。ダルマ穴H31’の大径部分にタッピングスクリューの頭部を挿入した後に、サイドカバー35を引き上げることにより、パネル脚31に対してサイドカバー35の位置決めを行うことができる。
【0031】
左右一対のパネル脚31の底部には、天板34の水平調整および高さ調整のためのねじ込み式のアジャスタ36(例えば
図9を参照)が着脱可能に取り付けられる。勿論このアジャスタ36は、設置作業現場でパネル脚31に組み付けてもよい。カバー組立体30は比較的軽量であるため、アジャスタ36の取付はカバー組立体30の組立途中の任意のタイミングで行うことができる。
【0032】
まず、
図9に示すように、タッピングスクリューを用いて上梁32の左右端を、既にアジャスタ36が取りつけられている左右のパネル脚31にそれぞれ結合する。このとき、上梁32の穴H31およびパネル脚31のH32が用いられる。
【0033】
次に、
図10に示すように、タッピングスクリューを用いて両パネル脚31に背面パネル33を固定する。このとき、背面パネル33の穴H31およびパネル脚31の穴H33が用いられる。背面パネル33は、全体として長方形であり、4辺の縁の部分が前方(天秤台1が完成した状態における手前側)に折り曲げられており、左右の折り曲げ部331に前述した穴H31が設けられている(
図8も参照)。また、上の折り曲げ部332には穴H34が設けられている。
【0034】
次に、
図11に示すように、タッピングスクリューを用いて天板34を、左右一対のパネル脚31、上梁32、背面パネル33に対して結合する。このとき、パネル脚31、上梁32および背面パネル33の穴H34(
図7および
図8も参照)が設けられる。天板34の4辺の縁部分の下面には、穴H34に対応する位置に、タッピングスクリューを挿入するための穴(図示せず)が形成されている。
【0035】
図10において背面パネル33の折り曲げ部331が見えていることからわかるように、折り曲げ部331は、パネル脚31の表面(側面)に重ねられている。また同様に、
図10において背面パネル33の折り曲げ部332が見えていることからわかるように、折り曲げ部332は、天板34の表面(下面)に重ねられている。このことから明らかなように、タッピングスクリューを用いた両パネル脚31に対する背面パネル33の結合、および背面パネル33に対する天板34の結合は、第2の組立体の背面パネル33以外の部品を全て組み付けた後に、作業者が天板34の下に潜り込んで行うことが可能である。
【0036】
天板34は長方形の板状体からなる。天板34は、一般的な実験台の天板に用いられる材料、例えばメラミン化粧板等から形成されている。天板34の中央部には、平面視で、ウエイト組立体20と概ね同形であってかつウエイト組立体20より僅かに大きな長方形の貫通穴341が形成されている。
【0037】
以上の手順により、カバー組立体30(サイドカバー35を除く)を作製することができる。カバー組立体30は比較的軽量であり、成人1~2名で、容易に持ち上げて搬送することができる。カバー組立体30を架台/ウエイト組立体(10+20)の所まで移動して架台/ウエイト組立体(10+20)の真上に持ち上げた後に、天板34の貫通穴341にウエイト組立体20が嵌まり込むように、カバー組立体30を床上に降ろす。これにより
図12の状態となる。
【0038】
次に、両パネル脚31の前端部にタッピングスクリューを用いてサイドカバー35を取り付ける。このとき、パネル脚31に形成された穴H35,H35’と、サイドカバー35に形成された穴H31,H31’が用いられる。まず、サイドカバー35の穴H31’に挿入したタッピングスクリューの頭部に、サイドカバー35の穴(ダルマ穴)H35’を通して(穴H31’およびH35’の使い方は前述した通りである)、サイドカバー35をパネル脚31に対して位置決めし、次いで穴H31、H35に挿入されたタッピングスクリューにより、パネル脚31とサイドカバー35とをしっかりと結合する。なお、サイドカバー35には、上梁32が挿入される切り欠きが設けられている。
【0039】
最後に、パネル脚31のアジャスタ36を調節して、天板34の上面とウエイト組立体20の上面(つまりウエイトカバー23の天板231の上面)とが面一になるようにする。以上により、天秤台1の設置作業が終了する。この状態が
図1に示されている。ウエイト組立体20の上(ウエイトカバー23の天板231の上)に適当な精密天秤等を載置して使用することができる。
【0040】
完成した天秤台1を真上から見ると、
図13に示すように、天板34の貫通穴341の4辺の縁と、ウエイト組立体20の4辺の縁との間に5mm程度の隙間Gがある。隙間Gを視認しやすくするため、天秤台1の全ての構成要素は塗り潰されている。この隙間Gは、天秤が載置される架台10およびウエイト組立体20をカバー組立体30から分離して、振動を絶縁(遮断)するために設けられている。つまり、誤ってカバー組立体30の天板34を叩いたり、サイドカバー35に衝突したりしても、それに起因する振動はウエイト組立体20には伝達されないようになっている。つまり、隙間Gをゼロにすることはできない。なお、勿論のこと、如何なる部位においても、架台10およびウエイト組立体20とカバー組立体30とは接触していない。
【0041】
この隙間Gに、天秤による秤量対象物(例えば微粉末あるいは微粒子)が入り込むことがある。この秤量対象物が例えば有害なもの(例えば毒性物質、架台10を腐食させるような物質等)であった場合、除去しなければならない。
【0042】
図14には、天秤台1から天板34のみを取り除いて真上から見た状態を示している。
図13および
図14より明らかなように、隙間Gの真下に存在する天秤台1の構成要素は、架台10の上枠11の長梁12のごく一部である(4箇所)。つまり、長梁12の上面に落下した場合を除き、隙間Gに入り込んだ物質は、そのまま床面に向けて落下する。
【0043】
また、隙間Gの真下にある長梁12の上面へのアクセスも容易である。
図15は、天秤台1から天板34および背面パネル33を取り除き、天秤台1をその後方斜め上方から見た斜視図である。この
図15に示すように、天板34の下面(つまりパネル脚31の上面)と、長梁12の上面との間には、Δhの高低差がある。Δhは例えば4cm程度である。また、
図14に示すように、ウエイト組立体20の側面と架台10の上枠11の短梁13との間にも隙間Wがある。Wは例えば5.5cm程度である。背面パネル33と長梁12との間に隙間DRがある。DRは例えば7.5cm程度である。上梁32と長梁12との間に隙間DFがある。DFは例えば7.5cm程度である。各種寸法Δh、W、DR、DFを適切に設定することにより、隙間Gの真下にある長梁12の上面に落ちた物体を手で持ったウエス等により拭き取ることができる。手を入れる侵入経路が
図14に太矢印で示されている。なお、寸法Δh、W、DR、DFの全てを大きくする必要はなく、隙間Gの真下にある長梁12の上面の各部位(4箇所ある)に手で持ったウエス等でアクセスすることができるようになっていればよい。例えばDR、DFは比較的小さく手も構わない。2つの長梁12同士の間の距離DCは例えば35cm程度であり、2つの長梁12同士の間の隙間から手を入れることが可能だからである。なお、
図14に示す構造の場合、例えば、Δhが少なくとも3cm、Wが少なくとも10cmあれば、隙間Gを介して長梁12の上面に落下した物質を手で保持したウエス等により除去できるものと考えられる。
【0044】
次に、天秤台1の設置方法の第1変形実施形態について説明する。なお、変形実施形態と区別することのみを目的として、これまでに説明した設置方法の実施形態を「主実施形態」とも呼ぶ。
【0045】
この第1変形実施形態においては、架台/ウエイト組立体(10+20)は主実施形態と同様の手順で組み立てるが、カバー組立体30の組立手順は異なる。
【0046】
カバー組立体30の構成部品のうち、左右一対のパネル脚31(アジャスタ36が装着されたもの)、上梁32およびサイドカバー35だけをタッピングスクリューにより結合した予備組立体(31+32+35)を作る。次に、
図16に示すように、この予備組立体を架台/ウエイト組立体(10+20)の正面の床上に置き、そのまま架台組立体に向けてずらしてゆく。つまり、左右一対のパネル脚31の間に、架台/ウエイト組立体が相対的に挿入されてゆく格好となる。このとき予備組立体(31+32+35)は床面に擦らない程度に持ち上げればよい。床面に適切な養生を行えば、予備組立体(31+32+35)を持ち上げずに引き摺っても構わない。
【0047】
架台/ウエイト組立体(10+20)と予備組立体(31+32+35)との位置関係が天秤台1の完成状態と同じ位置関係になったら、タッピングスクリューにより、予備組立体に対して背面パネル33および天板34を取り付ける。以上により天秤台1の設置が完了する。主実施形態で説明した天秤台1の構造より、タッピングスクリューの締め付けは、ウエイト組立体20の下方に潜り込んだ作業者により行うことができることは明らかである。この設置方法の第1変形実施形態は、場合によっては成人1名の作業者により実行することも可能である。
【0048】
次に、天秤台1の設置方法の第2変形実施形態について説明する。架台/ウエイト組立体(10+20)については、ウエイト22およびウエイトカバー23以外の部品を全て組み立てておく。次に、主実施形態に基づく方法によってカバー組立体30を組み立てる。サイドカバー35は、ここまでの間にカバー組立体30に組み込んでおいてもよいし、最後に取りつけてもよいが、最後に取りつけた方が作業は容易である。
【0049】
次に、主実施形態と同様にして、カバー組立体30を持ち上げて、架台/ウエイト組立体(10+20)のウエイト収納部21と天板34の貫通穴341との位置が合うようにカバー組立体30を床に降ろす。
【0050】
この状態で、天板34の貫通穴341を介して、ウエイト収納部21にウエイト22を一枚ずつ載置してゆく。その後、ウエイト22上にウエイトカバー23を被せ、タッピングスクリュー50(
図5を参照)を用いてウエイト収納部21にウエイトカバー23を固定する。以上により天秤台1の設置が完了する。この固定作業を可能とするため、ウエイトカバー23の側板232の下方延長部232eに設けた穴233は、天板34の下面と架台10の長梁12の上面との間の高さ位置にあり、両者の高低差は例えば4cm程度である。前述した隙間W(
図14を参照)が例えば前述した55cm程度(あるいはそれ以上)あれば、天板34を取り外すことなく、短軸のドライバーで、穴233に挿入したタッピングスクリューを回すことができる。
【0051】
この第2変形実施形態によれば、天秤台1の設置完了直前まで重いウエイト22を載置しないため、天秤台1の設置位置の微調整を、ウエイト22が載置される任意の時点で容易に行うことができる。この第2変形実施形態においても、第1変形実施形態と同様の予備組立体を作製し、予備組立体を架台組立体(ウエイト22未装着)に対して位置決めした後に、予備組立体に背面パネル33および天板34を取りつけてもよい。そして天板34の取り付け後に、ウエイト22およびウエイトカバー23の取り付けを行ってもよい。
【0052】
この第2変形実施形態のさらなる変形として、ウエイト22およびウエイトカバー23の取り付けを行った後に、天板34を最後に取りつけてもよい。こうすると、ウエイト22の載置作業およびウエイトカバー23の固定作業を容易に行うことができる。但し、天板34の取りつけ作業をやや狭い作業スペース(ウエイト22の下方空間)で行う必要がある。
【0053】
図6に示したウエイト収納部21およびウエイトカバー23の形状が目下のところ最も好適なものと考えられるが、これに限定されるものではない。ウエイト収納部21に側板212を設ける代わりに、例えば底板211から立ち上がる1つ以上の突起をウエイト22の位置決め部材として設けてもよい。突起はプレス加工により設けることができる。あるいは、突起を、柱状の小さなブロックを底板211に溶接することにより設けることもできる。なお、左右の側板212は、ウエイト収納部21とウエイトカバー23との結合のためにも用いられていたものであるため、側板212を廃止する場合には、ウエイト収納部21の底板211に対してウエイトカバー23を結合することとする。例えば、ウエイトカバー23の左右の側板232の下端部を互いに対向するように水平方向に折り返して、この折り返し部分とウエイト収納部21の底板211とが面接触する領域において、ウエイト収納部21とウエイトカバー23とをタッピングスクリューにより結合してもよい。
【0054】
また、
図6に示したウエイト収納部21およびウエイトカバー23において、ウエイト収納部21はそのままの形状に維持し、ウエイトカバー23の左右の側板232の下端部を互いに対向するように水平方向に折り返して、この折り返し部分とウエイト収納部21の底板211とが面接触する領域において、ウエイト収納部21とウエイトカバー23とをタッピングスクリューにより結合してもよい。この場合、ウエイトカバー23の少なくとも左右の側板232は、ウエイト収納部21の左右の側板212とウエイト22の外縁との間の隙間に通され、前記下端部の折り返し部がウエイト収納部21の底板211とが面接触することになる。そして、この面接触する領域において、ウエイト収納部21とウエイトカバー23とがタッピングスクリューにより結合される。この構成によれば、ウエイト収納部21とウエイトカバー23とを結合するタッピングスクリューを、ウエイト収納部21の底板211の下方からねじ込むことができるので、組立工程の最後の方でウエイトカバー23を取りつける場合おいて、ねじ締結の作業を容易に行うことができる。
【0055】
これまで説明してきた様々な実施形態によれば、ウエイトが複数に分割されているため、架台へのウエイトの搭載を容易に行うことができ、また、架台へのウエイトの搭載のタイミングの自由度を高めることもできる。
【0056】
また、上記の実施形態によれば、天秤台の設置作業手順を柔軟に変更することができることが明らかである。
【符号の説明】
【0057】
10 架台
11 上枠
17 制震部材(ゴム板)
20 ウエイト組立体
21 ウエイト収納部
22 ウエイト
23 ウエイトカバー
30 カバー組立体
34 天板