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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037178
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20240311BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
H01L21/308 F
H01L21/306 F
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143972
(22)【出願日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2022141483
(32)【優先日】2022-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 裕太
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 翔太
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA26
5F043BB18
5F043DD12
(57)【要約】
【課題】一態様において、生成した水不溶物を溶解できる、エッチング後の基板処理方法を提供する。
【解決手段】本開示は、一態様において、エッチング後の基板を処理する方法であって、被処理基板を、塩基性化合物及び水を含有するpH10以上の塩基性洗浄剤組成物を用いて洗浄する洗浄工程を含み、前記被処理基板は、リン酸、硝酸、水及び有機アミンを含有するエッチング液を用いてエッチングされた、第6族元素金属を含む金属層を有する基板である、基板処理方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング後の基板を処理する方法であって、
被処理基板を、塩基性化合物及び水を含有するpH10以上の塩基性洗浄剤組成物を用いて洗浄する洗浄工程を含み、
前記被処理基板は、リン酸、硝酸、水及び有機アミンを含有するエッチング液を用いてエッチングされた、第6族元素金属を含む金属層を有する基板である、基板処理方法。
【請求項2】
前記エッチング液に含まれる酸は、リン酸及び硝酸を含む酸である、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記洗浄工程の前に、被処理基板を水洗浄する工程を含む、請求項1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記塩基性洗浄剤組成物のpHは11以上である、請求項1から3のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記塩基性洗浄剤組成物中の前記塩基性化合物は、アンモニア、アルカリ金属水酸化物、及び、有機アミン又はその塩から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1から4のいずれかに記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エッチング後の基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造過程において、例えば、タングステン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、ニオブ、ルテニウム、オスミウム、レニウム、ロジウム、銅、ニッケル、コバルト、チタン、窒化チタン、アルミナ、アルミニウム及びイリジウム等の少なくとも1種の金属を含む被エッチング層をエッチングして所定のパターン形状に加工する工程が行われている。
近年の半導体分野においては高集積化が進んでおり、配線の複雑化や微細化が求められており、パターンの加工技術やエッチング液に対する要求も高まりつつあり、様々なエッチング方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、リン酸、硝酸、1分子中に3個以上のアミノ基を含有するポリアルキレンポリアミン、及び、水を含むエッチング液組成物を用いて、モリブデン又はモリブデン合金の金属薄膜の少なくとも1層を有する金属膜をエッチングする方法が提案されている。
特許文献2には、水と、リン酸や硝酸等の酸化剤と、フッ素含有エッチング化合物、酢酸等の有機溶媒、キレート剤、ポリエチレンイミン等の腐食防止剤及び界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の成分と、を含むエッチング液組成物を用いて、タングステン含有及びTiN含有材料をエッチングする方法が提案されている。
特許文献3には、組成物の総重量に対して、50~80wt%のリン酸と、0.5~10wt%の硝酸と、5~30wt%の酢酸と、0.01~5wt%のイミダゾールとを含むエッチング液組成物を用いて、Cu/Mo積層金属膜等の多重膜をエッチングする方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-237873号公報
【特許文献2】特開2019-165225号公報
【特許文献3】特開2012-49535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エッチングの後は、基板上のエッチング残渣物等を除去するために、通常、水洗浄が行われている。特許文献1~3のような有機アミンを含むエッチング液を用いてエッチングした後に水洗浄を行うと、水不溶物が生成され、水不溶物が基板表面に付着したり、洗浄剤を循環使用する場合のフィルタの目詰まりの原因となる。
【0006】
そこで、本開示は、一態様において、生成した水不溶物を溶解できる、エッチング後の基板処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一態様において、エッチング後の基板を処理する方法であって、被処理基板を、塩基性化合物及び水を含有するpH10以上の塩基性洗浄剤組成物を用いて洗浄する洗浄工程を含み、前記被処理基板は、リン酸、硝酸、水及び有機アミンを含有するエッチング液を用いてエッチングされた、第6族元素金属を含む金属層を有する基板である、基板処理方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、一態様において、生成した水不溶物を溶解できる、エッチング後の基板処理方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、一態様において、有機アミンを含むエッチング液組成物を用いたエッチング後の基板の洗浄に、特定の塩基性洗浄剤を用いることで、生成した水不溶物を溶解できるという知見に基づく。
【0010】
本開示は、一態様において、エッチング後の基板を処理する方法であって、被処理基板を、塩基性化合物及び水を含有するpH10以上の塩基性洗浄剤組成物を用いて洗浄する洗浄工程を含み、前記被処理基板は、リン酸、硝酸、水及び有機アミンを含有するエッチング液を用いてエッチングされた、第6族元素金属を含む金属層を有する基板である、基板処理方法(以下、「本開示の基板処理方法」ともいう)に関する。
【0011】
本開示の効果発現のメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように推察される。
エッチング処理後のエッチング剤において、溶解した第6族元素金属とリン酸によるヘテロポリ酸が生成される。生成物であるヘテロポリ酸とエッチング液の含有成分である有機アミンとの錯塩は水に難溶であるため、被処理基板を水で洗浄すると水不溶物が形成される。本開示では、塩基性化合物及び水を含有するpH10以上の塩基性洗浄剤組成物を用いて洗浄することで、ヘテロポリ酸と有機アミンの解離(塩交換)及びヘテロポリ酸の分解(加水分解)が促進され、結果的に水不溶物の除去(溶解)が可能であると考えられる。
但し、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0012】
[洗浄工程]
本開示の基板処理方法は、被処理基板を、塩基性化合物及び水を含有するpH10以上の塩基性洗浄剤組成物(以下、「本開示の塩基性洗浄剤組成物」ともいう)を用いて洗浄する洗浄工程(以下、単に「洗浄工程」ともいう)を含む。
本開示において、基板処理方法とは、一又は複数の実施形態において、基板の洗浄方法である。すなわち、本開示の基板処理方法は、一又は複数の実施形態において、被処理基板を本開示の塩基性洗浄剤組成物を用いて洗浄する洗浄工程を含む、基板の洗浄方法である。
本開示の塩基性洗浄剤組成物を用いて洗浄する洗浄工程は、一又は複数の実施形態において、アルカリ洗浄工程ともいう。
【0013】
前記洗浄工程における洗浄方式としては、例えば、浸漬洗浄、超音波洗浄、揺動洗浄、スプレー洗浄、スピンナー等の回転を利用した洗浄等が挙げられる。上述した洗浄方式は、単独で実施してもよいし、複数組み合わせて実施してもよい。
【0014】
前記洗浄工程において、洗浄剤組成物の温度は、例えば、0℃以上100℃以下が挙げられる。
前記洗浄工程において、洗浄時間は、例えば、10秒以上120分以下が挙げられる。
前記洗浄工程において、洗浄剤組成物と被処理基板との接触時に超音波を照射することもできる。前記超音波の照射条件としては、例えば、20~5000kHzが挙げられる。
【0015】
前記洗浄工程を行うための装置としては、例えば、浸漬洗浄機、超音波洗浄機、揺動洗浄機、スプレー洗浄機、スピンナー等の回転を利用した洗浄機等が挙げられる。
【0016】
本開示の基板処理方法は、一又は複数の実施形態において、前記洗浄工程の後、被処理基板を水でリンスし、乾燥する工程を含むことができる。
本開示の基板処理方法は、一又は複数の実施形態において、前記洗浄工程の後、被処理基板を水ですすぐ工程を含むことができる。
【0017】
本開示の基板処理方法は、一又は複数の実施形態において、リン酸、硝酸、水及び有機アミンを含有するエッチング液を用いて、第6族元素金属を含む金属層を有する基板(被処理基板)をエッチングするエッチング工程(以下、単に「エッチング工程」ともいう)を含むことができる。
前記エッチング工程におけるエッチング処理方法としては、例えば、浸漬式エッチング、枚葉式エッチング等が挙げられる。
前記エッチング工程におけるエッチング液組成物の温度(エッチング温度)は、例えば、0℃以上100℃以下が挙げられる。
前記エッチング工程におけるエッチング時間は、例えば、1分以上180分以下に設定できる。
前記エッチング工程で用いるエッチング液としては、リン酸、硝酸、水及び有機アミンを含有するものであれば特に限定されない。
前記エッチング液に含まれる酸は、一又は複数の実施形態において、リン酸、硝酸を含む酸であってもよい。すなわち、前記エッチング液は、一又は複数の実施形態において、リン酸及び硝酸以外の酸をさらに含むものであってもよい。リン酸及び硝酸以外の酸としては、例えば、硫酸、塩酸等の無機酸;クエン酸、ギ酸、酒石酸、シュウ酸、スルファミン酸、酢酸、マロン酸等の有機酸;等が挙げられる。
前記エッチング液に含まれる有機アミン化合物としては、例えば、ポリアルキレンイミン、ジアリルアミン由来の構成単位を有するポリマー、ポリアルキレンポリアミン、アルキルアミン、アルカノールアミン、脂環式アミン、芳香族アミン、及びアミノ酸から選ばれる少なくとも1種の有機アミン化合物が挙げられる。
【0018】
<被処理基板>
被処理基板は、一又は複数の実施形態において、リン酸、硝酸、水及び有機アミンを含有するエッチング液を用いてエッチングされた、第6族元素金属を含む金属層を有する基板である。
上記エッチング液組成物を用いてエッチングされる金属層は、一又は複数の実施形態において、第6族元素金属を含む金属層である。第6族元素金属としては、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、及びシーボーギウム(Sg)から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。金属層は、第6族元素金属のみからなる金属層であってもよいし、第6族元素金属を含む合金である金属層であってもよい。金属層としては、例えば、タングステン膜、モリブデン膜が挙げられる。金属層の厚みとしては、例えば、1nm~1mmが挙げられる。
被処理基板としては、タングステン膜を有する基板、モリブデン膜を有する基板が挙げられる。基板としては、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、及び太陽電池用基板から選ばれる少なくとも1種の基板が挙げられる。
【0019】
<塩基性洗浄剤組成物>
本開示の塩基性洗浄剤組成物は、塩基性化合物及び水を含有するpH10以上の水系洗浄剤組成物である。
【0020】
(塩基性化合物)
本開示の塩基性洗浄剤組成物に含まれる塩基性化合物としては、無機アルカリ及び有機アルカリの少なくとも一方が挙げられる。無機アルカリとしては、例えば、アンモニア;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。有機アルカリとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等の有機アミン又はその塩が挙げられる。これらの中でも、塩基性化合物は、その塩基性の強さの観点から、アンモニア、アルカリ金属水酸化物、及び、有機アミン又はその塩から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。塩基性化合物は、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0021】
本開示の塩基性洗浄剤組成物中の塩基性化合物の含有量は、水不溶物の溶解性向上の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、そして、水不溶物の溶解性向上の観点から、100質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、98質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示の塩基性洗浄剤組成物中の塩基性化合物の含有量は、0.01質量%以上100質量%以下が好ましく、0.05質量%以上99質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上98質量%以下が更に好ましい。塩基性化合物が2種以上の組合せである場合、塩基性化合物の含有量はそれらの合計含有量である。
【0022】
(水)
本開示の塩基性洗浄剤組成物に含まれる水としては、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等が挙げられる。
本開示の塩基性洗浄剤組成物中の水の含有量は、水不溶物の溶解性向上の観点から、0質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましく、そして、水不溶物の溶解性向上の観点から、99.99質量%以下が好ましく、99.95質量%以下がより好ましく、99.90質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示の塩基性洗浄剤組成物中の水の含有量は、0質量%以上99.99質量%以下が好ましく、1質量%以上99.95質量%以下がより好ましく、2質量%以上99.90質量%以下が更に好ましい。
【0023】
(その他の成分)
本開示の塩基性洗浄剤組成物は、洗浄性向上の観点から、前記塩基性化合物及び水以外に、必要に応じてその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、界面活性剤、キレート剤、消泡剤、アルコール類、防腐剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0024】
本開示の塩基性洗浄剤組成物のpHは、水不溶物の溶解性向上の観点から、10以上であって、11以上が好ましく、そして、14以下が好ましい。本開示において、塩基性洗浄剤組成物のpHは、25℃における値であって、pHメータを用いて測定でき、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
【0025】
本開示の塩基性洗浄剤組成物は、例えば、塩基性化合物、水及び必要に応じてその他の成分を公知の方法で配合することにより製造できる。本開示において「配合する」とは、塩基性化合物、水及び必要に応じてその他の成分を同時に又は任意の順に混合することを含む。本開示の塩基性洗浄剤組成物の製造方法において、各成分の配合量は、上述した本開示の塩基性洗浄剤組成物の各成分の含有量と同じとすることができる。
【0026】
本開示において「洗浄剤組成物中の各成分の含有量」とは、一又は複数の実施形態において、洗浄工程に使用される、すなわち、洗浄への使用を開始する時点(使用時)での洗浄剤組成物の各成分の含有量をいう。
【0027】
本開示の塩基性洗浄剤組成物は、保管安定性を損なわない範囲で水の量を減らした濃縮物として調製してもよい。本開示の塩基性洗浄剤組成物の濃縮物は、輸送及び貯蔵の観点、保存安定性の観点から、希釈倍率10倍以上100倍以下の濃縮物とすることが好ましい。本開示の塩基性洗浄剤組成物の濃縮物は、使用時に各成分が上述した含有量(すなわち、洗浄時の含有量)になるよう水で希釈して使用できる。本開示において塩基性洗浄剤組成物の濃縮物の「使用時」又は「洗浄時」とは、塩基性洗浄剤組成物の濃縮物が希釈された状態をいう。本開示の塩基性洗浄剤組成物が濃縮物である場合、本開示の基板処理方法は、本開示の塩基性洗浄剤組成物の濃縮物を希釈する希釈工程をさらに含むことができる。
【0028】
本開示の基板処理方法は、前記洗浄工程(アルカリ洗浄工程)の前に、被処理基板を水洗浄(水リンス)する工程(以下、「水洗浄工程」ともいう)を含むことができる。
前記水洗浄工程は、一又は複数の実施形態において、水リンス工程である。
前記水洗浄工程において用いられる水性組成物としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等の水が挙げられる。この水性組成物は、水以外にエタノール、イソプロパノール等の低沸点の有機溶媒等を含んでもよい。
前記水洗浄工程における水性組成物の温度は拘らないが、好ましくは5℃以上80℃以下であり、より好ましくは10℃以上60℃以下である。水洗浄工程における洗浄方法としては、吹き付け方法、浸漬方法、スプレーなどによる塗布が挙げられる。
【0029】
本開示の基板処理方法の実施形態としては、リン酸、硝酸、水及び有機アミンを含有するエッチング液を用いてエッチングされた被処理基板を、塩基性化合物及び水を含有するpH10以上の塩基性洗浄剤組成物を用いて洗浄する洗浄工程を含む、基板処理方法が挙げられる。
【0030】
本開示の基板処理方法は、一又は複数の実施形態において、電子デバイス、特に液晶用表示装置等の半導体装置に用いられる電極配線や3D-NAND型フラッシュメモリを含む不揮発性メモリ等の半導体メモリの製造工程で用いることができる。
本開示の基板処理方法は、一又は複数の実施形態において、単層金属配線の形成や積層金属配線の作製に好適に用いることができる。これにより配線側面においてその横断面形状に良好な順テーパー形状を与えることができる。
【実施例0031】
以下に、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0032】
1.洗浄剤組成物の調製
(実施例1~7、比較例1~3の塩基性洗浄剤組成物)
表1に示す塩基性化合物及び水を表1に示すpHとなるように配合して実施例1~7及び比較例1~3の塩基性洗浄剤組成物を得た。各塩基性洗浄剤組成物のpHは表1に記載の通りである。
(比較例4~5の洗浄剤組成物)
比較例4~5の洗浄剤組成物には、水を用いた。
【0033】
洗浄剤組成物の調製には、下記成分を用いた。
(塩基性化合物)
アンモニア[関東化学社製]
KOH:水酸化カリウム[富士フィルム和光純薬製]
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド[富士フィルム和光純薬製]
(水)
水[栗田工業株式会社製の連続純水製造装置(ピュアコンティ PC-2000VRL型)とサブシステム(マクエース KC-05H型)を用いて製造した超純水]
【0034】
2.各パラメータの測定方法
[洗浄剤組成物のpH]
洗浄剤組成物の25℃におけるpH値は、pHメータ(東亜ディーケーケー社製)を用いて測定した値であり、pHメータの電極をエッチング液へ浸漬して1分後の数値である。
【0035】
3.評価
[水不溶物の溶解能(溶解性)の評価]
水不溶物の溶解能(溶解性)の評価は、下記実験手順に基づき評価した。
(実施例1~7、比較例1~5)
実施例1~7、比較例1~5では、エッチング後の基板を水リンス(水洗浄)してからアルカリ洗浄を行った場合を想定した実験手順に従って、水不溶物の溶解能(溶解性)の評価を行った。結果を表1に示した。
<実験手順>
1)30mLガラス瓶に、リン酸 62質量%、硝酸5質量%、水12質量%、有機アミン2質量%、酢酸19質量%を含むエッチング液 10mLと表1に示す被エッチング成分である金属粉末 50mgを入れ、金属粉末が完全に溶解し、液が透明になるまで加熱処理(45℃、 ウォーターバス)を行う。前記有機アミンとしては、ポリエチレンイミン[数平均分子量:600、株式会社日本触媒社製のエポミンSP-006]を用いた。
2) 100mLビーカーに上記1)の処理済エッチング液0.2gと純水10mLをいれ、よく混合する。
3) 上記2)で得られる混合液を遠心分離(10000ppm, 10分)し、上澄み液を除去することで沈殿物を回収する。
4) 沈殿物 数十mgに対して実施例1~7及び比較例1~5の洗浄剤組成物10mLを添加し、目視にて溶解性を確認する。具体的には、赤色レーザー照射によるチンダル現象の有無で判断し、液中に赤い線が観測されなければ、溶解能あり(生成した水不溶物を溶解できた)と評価し、表1にAと表記した。液中に赤い線が観測された場合は溶解能なしと評価し、表1にBと表記した。
【0036】
[フィルタ通液性の評価]
(実施例1~7、比較例1~5)
実施例1~7、比較例1~5では、エッチング後の基板を水リンス(水洗浄)してからアルカリ洗浄を行った場合を想定した実験手順に従って、フィルタ通液性の評価を行った。結果を表1に示した。
<実験手順>
1)30mLガラス瓶に、リン酸62質量%、硝酸5質量%、水12質量%、有機アミン2質量%、酢酸19質量%を含むエッチング液 10mLと表1に示す被エッチング成分である金属粉末 50mgを入れ、金属粉末が完全に溶解し、液が透明になるまで加熱処理(45℃、ウォーターバス)を行う。前記有機アミンとしては、ポリエチレンイミン[数平均分子量:600、株式会社日本触媒社製のエポミンSP-006]を用いた。
2)100mLビーカーに純水 50g と上記1)の処理済エッチング剤 2.5g をいれ、よく混合する。
3)上記2)で得られる懸濁液全量をシリンジ(容量60mL、直径3cm)に充填し、孔径0.2μm、ろ過面積4cm2フィルタ[アドバンテック社製、親水性PTFE0.2μm(孔径)フィルタ、型式:25HP020AN]を取り付ける。そのシリンジをエアーシリンダに固定し、エアー圧力(ろ過圧力)0.2MPaの一定圧力でシリンジのプランジャを押し込み、懸濁液 50mLを完全に通液する。
4)上記3)の通液後のシリンジからフィルタを取り外し、シリンジに表1の洗浄剤組成物 50mL を充填する。そのシリンジに先ほど外したフィルタを取り付け、エアー圧力(ろ過圧力)0.2MPaの一定圧力でシリンジのプランジャを押し込み、再度完全に通液する。
5)上記4)の通液後のシリンジからフィルタを取り外し、シリンジに純水 50mL を充填する。そのシリンジに先ほど外したフィルタを再度取り付け、エアー圧力(ろ過圧力)0.2MPaの一定圧力でシリンジのプランジャを押し込む。純水 50mL を通液しきるまでの時間を計測し、通液速度(g/分・cm2)を算出する。結果を表1に示した。通液速度の数値は高いほどフィルタ通液性が良好(生成した水不溶物を溶解できた)と評価できる。
【0037】
[基板の洗浄性評価]
(実施例1~7、比較例1~5)
以下の実験手順に従って、基板の洗浄性の評価を行った。結果を表1に示した。
<実験手順>
1)30mLガラス瓶に、リン酸 62質量%、硝酸5質量%、水12質量%、有機アミン2質量%、酢酸19質量%を含むエッチング液 10mLと表1に示す被エッチング成分である金属粉末 50mgを入れ、金属粉末が完全に溶解し、液が透明になるまで加熱処理(45℃、 ウォーターバス)を行う。前記有機アミンとしては、ポリエチレンイミン[数平均分子量:600、株式会社日本触媒社製のエポミンSP-006]を用いた。
2)100mLビーカーに表に記載の基板と、上記1)の処理済エッチング液1.0gとを入れ、そこに純水50mLを添加する。その際に析出物が発生し前記基板に残渣が付着する。
3)100mlビーカーに上記2)で得られた析出物が付着した基板を入れ、そこに実施例1~7及び比較例1~5の洗浄剤組成物50mLを添加し、基板上の残渣の溶解性を目視にて確認する。
結果、洗浄液に浸漬後、基板上の残渣が3分以内で確認できなくなるものはA、基板上の残渣が3分超30分未満で確認できなくなるものはB、基板上の残渣が30分後でも確認できるものはCとした。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示されるように、水リンス工程後に特定の塩基性洗浄剤を用いた実施例1~7はいずれも、溶解能が良好で、生成した水不溶物が溶解されていることがわかった。また、実施例1~7はいずれも、フィルタ通液性が良好で、水不溶物を溶解できていることがわかった。さらに、実施例1~7は、基板の洗浄性に優れており、生成した水不溶物を溶解できていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本開示は、生成した水不溶物を溶解できる、エッチング後の基板処理方法を提供でき、大容量の半導体メモリの製造方法において有用である。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング後の基板を処理する方法であって、
被処理基板を、塩基性化合物及び水を含有するpH10以上の塩基性洗浄剤組成物を用いて洗浄する洗浄工程を含み、
前記被処理基板は、リン酸、硝酸、水及び有機アミンを含有するエッチング液を用いてエッチングされた、第6族元素金属を含む金属層を有する基板である、基板処理方法。
【請求項2】
前記エッチング液に含まれる酸は、リン酸及び硝酸を含む酸である、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記洗浄工程の前に、被処理基板を水洗浄する工程を含む、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記塩基性洗浄剤組成物のpHは11以上である、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記塩基性洗浄剤組成物中の前記塩基性化合物は、アンモニア、アルカリ金属水酸化物、及び、有機アミン又はその塩から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1から4のいずれかに記載の基板処理方法。