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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037180
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】転倒ます型雨量計
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/14 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
G01W1/14 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144032
(22)【出願日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2022141767
(32)【優先日】2022-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】595145496
【氏名又は名称】株式会社第一科学
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】三ツ橋 良太
(72)【発明者】
【氏名】小松 亮介
(72)【発明者】
【氏名】内山 真司
(57)【要約】
【課題】熟練を要せず容易に組み立てることができる転倒ます型雨量計を提供する。
【解決手段】転倒ます型雨量計10は、転倒軸26と、転倒軸26を中心に対称に設けられた一対のます27a、27bとを有する転倒ます22と、転倒ます22を支持している支持部23と、転倒軸26と支持部23との間に設けられたベアリング部28とを備える。転倒ます型雨量計10は、転倒軸26にベアリング部28が設けられており、ベアリング部28を支持部23に設置するだけで、転倒軸26を支持部23に対し回転自在に取り付けることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転倒軸と、前記転倒軸を中心に対称に設けられた一対のますとを有する転倒ますと、
前記転倒ますを支持している支持部と、
前記転倒軸と前記支持部との間に設けられたベアリング部とを備える転倒ます型雨量計。
【請求項2】
前記転倒ますが転倒する毎に揺動する揺動腕を備え、
前記揺動腕は、前記転倒軸と嵌合する嵌合部を有し、
前記嵌合部に前記転倒軸が嵌合されることで、前記転倒軸を中心とした前記揺動腕の回転が制限されている請求項1に記載の転倒ます型雨量計。
【請求項3】
前記転倒軸は、軸方向の一端と他端との間に、前記一対のますが取り付けられる取付部を有し、
前記ベアリング部は、前記転倒軸の前記一端に設けられた第1のベアリングと、前記転倒軸の前記他端と前記取付部との間に設けられた第2のベアリングとを有し、
前記支持部は、前記第1のベアリングが設置される第1の設置部と、前記第2のベアリングが設置される第2の設置部とを有する請求項1に記載の転倒ます型雨量計。
【請求項4】
前記第1の設置部は、前記転倒軸の前記軸方向と直交する第1の方向に開口した切欠部を有し、
前記第2の設置部は、前記軸方向と平行な第2の方向に沿って窪んだ段差部と、前記段差部の一部を貫通し前記第1の方向に沿って延びた長円形状の貫通孔とを有し、
前記貫通孔に前記転倒軸の前記他端が挿入され、前記切欠部に前記第1のベアリングが嵌合され、前記段差部に前記第2のベアリングが嵌合される請求項3に記載の転倒ます型雨量計。
【請求項5】
前記第1の設置部は、前記切欠部を閉塞するように設けられたL字状の押え部材を有し、
前記切欠部に嵌合された前記第1のベアリングは、前記押え部材により押えられている請求項4に記載の転倒ます型雨量計。
【請求項6】
前記第1の設置部は、前記転倒軸の前記軸方向と直交する第1の方向に開口した第1の切欠部と、前記第1の切欠部を閉塞可能に設けられた押え部材とを有し、
前記第2の設置部は、前記第1の方向に開口した第2の切欠部と、前記第2の切欠部と接続され、前記軸方向と平行な第2の方向に沿って窪んだ段差部とを有し、
前記第1の切欠部に前記第1のベアリングが嵌合され、前記第2の切欠部に前記転倒軸の前記他端が挿入され、前記段差部に前記第2のベアリングが嵌合される請求項3に記載の転倒ます型雨量計。
【請求項7】
前記押え部材は、前記第1の切欠部を閉塞する閉塞位置と、前記第1の切欠部を開放する開放位置との間で、変位可能に構成されている請求項6に記載の転倒ます型雨量計。
【請求項8】
前記押え部材は、締結部材で構成されている請求項7に記載の転倒ます型雨量計。
【請求項9】
前記押え部材は、ローレットネジで構成されている請求項8に記載の転倒ます型雨量計。
【請求項10】
前記第1の切欠部は、前記第1の方向及び前記第2の方向と直交する第3の方向に弾性変形可能に構成されている請求項6に記載の転倒ます型雨量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転倒ます型雨量計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、線状降水帯による大雨等の大雨災害が深刻化しており、降水量を計測するための雨量計の重要性が高まっている。雨量計から得られたデータは、大雨災害に対する避難勧告や避難指示を決定するための判断材料として用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された転倒ます型雨量計は、雨水を受ける受水器と、受水器の下方に設けられた濾水器と、濾水器の下方に設けられた転倒ますと、転倒ますの下方に設けられた排水器とを備えている。転倒軸を受けるための軸受けには、サファイア等の高価な材料が用いられている。濾水器は、受水器から滴下した雨水に含まれる砂等の塵を取り除く。転倒ますは、濾水器から滴下した雨水を溜める一対のますが転倒軸を中心として対称に設けられた構成を有している。転倒ますは、一方のますに一定量の雨水が溜まる毎に、雨水の重さで転倒軸を中心に転倒し、一方のますに溜められた雨水を放水するとともに、他方のますに雨水を溜める。転倒ますから排水された雨水は、排水器を通過して、転倒ます型雨量計の外部へ排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-249774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された転倒ます型雨量計は、組み立て作業の際に転倒軸を受ける軸受けの締め付けを高精度に調整することが難しく、熟練の技術を要していた。
【0006】
本発明は、熟練を要せず容易に組み立てることができる転倒ます型雨量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る転倒ます型雨量計は、転倒軸と、前記転倒軸を中心に対称に設けられた一対のますとを有する転倒ますと、前記転倒ますを支持している支持部と、前記転倒軸と前記支持部との間に設けられたベアリング部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る転倒ます型雨量計は、転倒軸と支持部との間にベアリング部を備えていることにより、熟練を要せず容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る転倒ます型雨量計の内部の構成を示す正面図である。
図2】転倒軸の斜視図である。
図3】転倒軸の他端の断面図である。
図4】転倒ます型雨量計の要部を正面側の上方から見た斜視図である。
図5図4に示した転倒ます型雨量計の要部から一対のますと押え部材を取り外した状態を示す斜視図である。
図6図5に示した転倒ます型雨量計の要部から転倒軸を取り外した状態を示す斜視図である。
図7】転倒ます型雨量計の要部を背面側の上方から見た斜視図である。
図8】揺動腕の構成を説明するための説明図である。
図9】転倒ます型雨量計の組み立て作業の一部を説明するための説明図である。
図10A】第2実施形態に係る転倒ます型雨量計を正面側の上方から見た斜視図である。
図10B】第2実施形態に係る転倒ます型雨量計を背面側の上方から見た斜視図である。
図10C】第2実施形態に係る転倒ます型雨量計をXZ平面で切断した断面図である。
図11】第1の設置部の正面図である。
図12A】押え部材が閉塞位置にある状態を説明するための説明図である。
図12B】押え部材が開放位置にある状態を説明するための説明図である。
図13】第2の設置部の正面図である。
図14】転倒軸を支持部に取り付ける手順を説明するための説明図である。
図15】転倒軸を支持部に取り付ける手順を説明するための説明図である。
図16】転倒軸を支持部に取り付ける手順を説明するための説明図である。
図17】転倒軸を支持部に取り付ける手順を説明するための説明図である。
図18A】第3実施形態に係る転倒ます型雨量計を正面側の上方から見た斜視図である。
図18B】第3実施形態に係る転倒ます型雨量計を背面側の上方から見た斜視図である。
図19】第1の設置部の正面図である。
図20】第1の設置部の背面図である。
図21】転倒軸を支持部に取り付ける手順を説明するための説明図である。
図22】転倒軸を支持部に取り付ける手順を説明するための説明図である。
図23】転倒軸を支持部に取り付ける手順を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.第1実施形態
図1において、転倒ます型雨量計10は、基台11と、外筒12と、受水器13と、計量部14とを備える。転倒ます型雨量計10は、基台11の上に、計量部14、受水器13が順に設けられており、基台11と受水器13と計量部14とが外筒12に覆われた構成を有している。図1では、X軸方向が奥行方向であり、X軸方向と直交するY軸方向が左右方向であり、X軸方向及びY軸方向と直交するZ軸方向が上下方向である。
【0011】
基台11は、金属や樹脂等で構成された円盤状の部材である。基台11には一対の排水口16a、16bが設けられている。一対の排水口16a、16bは、後述する一対の排水器24a、24bと接続している。基台11の下面には複数の脚17が設けられている。脚17は、L字状に形成されており、ボルト(図示省略)を用いて台座(図示省略)に固定される。
【0012】
外筒12は、円筒状に形成されており、基台11の外周を囲むように配置されている。外筒12の下端部はボルト(図示省略)を用いて基台11に固定されている。外筒12の上端部には開口12aが設けられている。
【0013】
受水器13は、円錐形状の漏斗状に形成されており、外筒12の開口12aから少し下方に設けられている。受水器13は、外筒12の開口12aに入った雨水を受水する受水口13aと、受水口13aから受水した雨水を計量部14へ流出させる流出口13bとを有する。受水口13aの下部、及び流出口13bの上部には、塵除けのための金網(図示省略)が設けられている。
【0014】
計量部14は、受水器13で受水された雨水を計量するためのものである。計量部14は、濾水器21と、転倒ます22と、支持部23と、一対の排水器24a、24bとを備える。
【0015】
濾水器21は、受水器13と転倒ます22との間に設けられている。濾水器21は、支持部23の上部に固定される濾水器取付板21aと、受水器13の流出口13bから流出した雨水に含まれた砂等の塵を取り除く漏斗21bと、漏斗21bで塵が取り除かれた雨水を転倒ます22へ流出させるパイプ21cとを有する。
【0016】
転倒ます22は、転倒軸26と、転倒軸26を中心に対称に設けられた一対のます27a、27bとを有する。転倒軸26は、転倒ます22の中心軸線上で、一対のます27a、27bの下部に設けられている。転倒軸26の軸方向はX軸方向と平行である。転倒ます22の中心軸線はZ軸方向と平行である。転倒軸26は、転倒軸26と支持部23との間に設けられたベアリング部28を介して、支持部23に回転自在に支持されている。転倒軸26には、図示しない定量調整用の重りが取り付けられている。
【0017】
一対のます27a、27bは、濾水器21から流入した雨水を交互に溜めるものである。図1では、一方のます27aと他方のます27bとの境界を点線で示している。一対のます27a、27bの下部には一対の受石29a、29bが設けられている。一対の受石29a、29bは、本実施形態ではフッ素樹脂で構成されているが、メノウやサファイア等で構成しても良い。
【0018】
転倒ます22は、濾水器21のパイプ21cから流出した雨水を、一対のます27a、27bのうちのいずれか一方のますで受水する。一方のますに一定量の雨水が溜まると、転倒軸26を支点として転倒し、一方のますに溜まった水を放水するとともに、濾水器21のパイプ21cから流出した雨水を他方のますで受水する。他方のますに一定量の雨水が溜まると、転倒軸26を支点として転倒し、他方のますに溜まった水を放水するとともに、濾水器21のパイプ21cから流出した雨水を一方のますで再び受水する。転倒ます型雨量計10は、降水が続いている間、転倒ます22が転倒軸26を支点として交互に転倒を繰り返す。
【0019】
支持部23は、転倒ます22を支持している。支持部23は、基台11に設けられている。支持部23には、一対の取付部材31a、31bを介して、転倒ます22の転倒を規制する一対のストッパー32a、32bが設けられている。一対の取付部材31a、31bは、一対のます27a、27bの下方で、転倒ます22の中心軸線を挟んで対称位置に、支持部23に固定されている。一対のストッパー32a、32bは、上下方向(Z軸方向)の位置が調整可能に、取付部材31a、31bに取り付けられている。本実施形態では、各々の取付部材31a、31bに雌ねじが形成されており、各々のストッパー32a、32bに雄ねじが形成されており、雌ねじと雄ねじとの螺合により各々のストッパー32a、32bの位置が上下方向に調整可能とされている。一対のストッパー32a、32bは、転倒ます22が転倒したときに一対の受石29a、29bと接触する。
【0020】
一対の排水器24a、24bは、一対のます27a、27bの下方で、転倒ます22の中心軸線を挟んで対称位置に、基台11に設けられている。一対の排水器24a、24bは、筒状に形成されている。一対の排水器24a、24bは、一対のます27a、27bから放水された雨水を、一対の排水口16a、16bから転倒ます型雨量計10の外部へ排出させる。一対の排水器24a、24bの内部には、蜘蛛等の虫が一対の排水口16a、16bから転倒ます型雨量計10の内部へ侵入することを防止するための金網(図示なし)が設けられている。
【0021】
図2は、転倒軸26の斜視図である。転倒軸26は、軸方向の一方に設けられた一端26aと、軸方向の他方に設けられた他端26bと、一端26aと他端26bとの間に設けられ、一対のます27a、27b(図1参照)が取り付けられる取付部26cとを有する。
【0022】
転倒軸26の一端26aは、円柱状に形成されている。転倒軸26の他端26bは、軸方向と直交する平面(YZ平面)で切断した断面形状が、長円形、楕円形、及び多角形のうちのいずれかの形状となるように形成されている。本実施形態では、他端26bの断面形状は、図3に示すように長円形である。転倒軸26の他端26bは、上下方向(Z軸方向)の対称位置に、一対の位置決め平面42を有する。位置決め平面42の数は、2つである場合に限られず、1つ以上であれば良い。
【0023】
取付部26cは、一対のます27a、27bを取り付けるための一対のねじ孔43a、43bと、定量調整用の重りを取り付けるためのねじ孔43cとを有する(図2参照)。
【0024】
ベアリング部28は、転倒軸26の一端26aに設けられた第1のベアリング28aと、転倒軸26の他端26bと取付部26cとの間に設けられた第2のベアリング28bとを有する。ベアリング部28は、本実施形態では第1のベアリング28aと第2のベアリング28bとを有しているが、第1のベアリング28aと第2のベアリング28bとのいずれか一方のみを有するものでも良い。例えば、第1のベアリング28aを用い、第2のベアリング28bを用いない場合は、第2のベアリング28bの代わりに転倒軸26の他端26bを受けるための軸受けが用いられる。軸受けは、ベアリングよりも高価なサファイア等の材料で構成される。第1のベアリング28aと第2のベアリング28bとの少なくともいずれかを用いることで、2つの軸受けを用いて転倒軸の両端を受ける場合と比べて、製造コストが抑えられる。
【0025】
図4は、転倒ます型雨量計10の要部(転倒ます22及び支持部23)を正面側の上方から見た斜視図である。支持部23は、基台11に取り付けられた席板部35と、席板部35に取り付けられた折釘部36とを有する。
【0026】
席板部35は、L字状の部材である。席板部35は、基台11(図1参照)の上面に設けられた固定板35aと、基台11から上方へ向けて垂直に立てられた垂直板35bとを有する。固定板35aは、ボルト(図示なし)を用いて基台11に固定されている。垂直板35bは、その下部が固定板35aと一体に形成されている。垂直板35bの正面には、一対の取付部材31a、31bがボルトを用いて固定されている。垂直板35bの上部には、濾水器取付板21a(図1参照)が固定されている。
【0027】
折釘部36は、L字状の部材である。折釘部36は、基台11(図示なし)と水平に配置された水平板36aと、水平板36aに対し上方へ向けて垂直に立てられた垂直板36bと、垂直板36bの上部に設けられた押え部材36cとを有する。水平板36aは、基台11の上面から所定の高さに配置され、ボルト(図示なし)を用いて席板部35の垂直板35bの正面に固定されている。垂直板36bは、その下部がボルトを用いて水平板36aに固定されている。押え部材36cは、L字状の部材であり、垂直板36bの上部にボルトを用いて固定されている。
【0028】
図4において、定量調整用の重り37は、ボルト(図示なし)を用いて転倒軸26に対し着脱自在に取り付けられている。重り37は、複数の金属ワッシャで構成されており、金属ワッシャの数を変更することで重さが調整可能とされている。
【0029】
図5は、図4に示した転倒ます型雨量計10の要部から一対のます27a、27bと押え部材36cを取り外した状態を示す斜視図である。図5に示すように、第1のベアリング28aは折釘部36に設置され、第2のベアリング28bは席板部35に設置される。折釘部36は、第1のベアリング28aが設置される第1の設置部である。席板部35は、第2のベアリング28bが設置される第2の設置部である。
【0030】
第1の設置部としての折釘部36は、垂直板36bの先端(上部)に、転倒軸26の軸方向と直交する第1の方向(Z軸方向)に開口した切欠部36dを有する。切欠部36dは、U字状に形成されている。
【0031】
図6は、図5に示した転倒ます型雨量計10の要部から転倒軸26を取り外した状態を示す斜視図である。図6に示すように、第2の設置部としての席板部35は、転倒軸26の軸方向と平行な第2の方向(X軸方向)に沿って窪んだ段差部35cと、段差部35cの一部を貫通し第1の方向(Z軸方向)に沿って延びた長円形状の貫通孔35dとを有する。
【0032】
貫通孔35dに転倒軸26の他端26bが挿入され、切欠部36dに第1のベアリング28aが嵌合され、段差部35cに第2のベアリング28bが嵌合される(図5参照)。切欠部36dを閉塞するように押え部材36cが設けられることで、切欠部36dに嵌合された第1のベアリング28aが押え部材36cにより押えられる(図4参照)。これにより、転倒軸26は支持部23に回転自在に支持される。
【0033】
図7は、転倒ます型雨量計10の要部を背面側の上方から見た斜視図である。図7に示すように、席板部35の垂直板35bの背面側では、貫通孔35dから出た転倒軸26の他端26bに揺動腕38が設けられている。揺動腕38は、その基端が転倒軸26の他端26bに固定されており、転倒ます22が転倒する毎に転倒軸26を中心として左右に揺動する。揺動腕38の先端には磁性体39が設けられている。磁性体39は、マグネット等で構成されている。
【0034】
席板部35の垂直板35bの背面にはリードスイッチ41が設けられている。リードスイッチ41は、転倒軸26の他端26bの下方に配置されており、揺動腕38の先端に固定された磁性体39に感応する。転倒ます22が1回転倒することにより揺動腕38が揺動し、リードスイッチ41が、揺動腕38の先端に設けられた磁性体39に感応して1回オンオフされる。このため、転倒ます22が転倒する回数に応じて、リードスイッチ41からパルスが発生する。リードスイッチ41から発生したパルスを計数することにより、降水量を計測することができる。
【0035】
図8に示すように、揺動腕38は、転倒軸26の他端26b(図示なし)に固定された固定ブロック44と、転倒軸26の他端26bと嵌合する嵌合部45を有する。嵌合部45は、本実施形態では、固定ブロック44を貫通している孔であり、転倒軸26の他端26bが挿入される。嵌合部45の内周面には、互いに対向する一対の位置決め突起46が設けられている。一対の位置決め突起46は、転倒軸26の他端26bに設けられた一対の位置決め平面42と接触する。転倒軸26の他端26bに取り付けられた揺動腕38は、嵌合部45に転倒軸26の他端26bが嵌合されることで、一対の位置決め突起46と一対の位置決め平面42とが接触し、転倒軸26を中心とした回転が制限される。
【0036】
転倒ます型雨量計10には図示しないヒータが設けられている。ヒータの熱は、後述する転倒ます22及び一対の排水器24a、24bに伝えられる。例えば転倒ます型雨量計10の内部の空気の温度をヒータにより上昇させることで、転倒ます22及び一対の排水器24a、24bの凍結を防止することができる。
【0037】
転倒ます型雨量計10の動作及び作用を説明する。転倒ます型雨量計10は、受水器13の受水口13aから雨水を受水する。受水口13aから受水した雨水は濾水器21に集められる。濾水器21に集められた雨水に砂等の塵が含まれている場合は、漏斗21bの底に塵が沈殿し、雨水がパイプ21cを通り、転倒ます22を構成する一対のます27a、27bのうちの一方のますに導かれる。一方のますに一定量の雨水が溜まると、転倒ます22が転倒軸26を支点として転倒し、一対の排水器24a、24bのうちの一方の排水器を通過して排水される。このとき、揺動腕38が転倒軸26を中心として揺動し、揺動腕38の先端に設けられている磁性体39にリードスイッチ41が感応し、リードスイッチ41からパルスが発生する。降水が続いている間、転倒ます22が転倒軸26を支点として交互に転倒を繰り返し、転倒した回数に応じて、リードスイッチ41がパルスを発生する。
【0038】
以上のように、転倒ます型雨量計10は、転倒軸26にベアリング部28が設けられており、ベアリング部28を支持部23に設置するだけで、転倒軸26を支持部23に対し回転自在に取り付けることができる。従来の転倒ます型雨量計では、転倒軸のがたつきを抑えるために、転倒軸を受ける軸受けの締め付けを高精度に調整する必要があり、組み立て作業に熟練の技術を要していた。これに対し、転倒ます型雨量計10では、転倒軸26と支持部23との間にベアリング部28を備えているので、熟練を要せず容易に組み立てることができる。また、転倒ます型雨量計10では、サファイア等の高価な材料で構成される軸受けの代わりにベアリング部28が用いられているので、製造コストが抑えられる。
【0039】
揺動腕38は、転倒軸26の他端26bと嵌合する嵌合部45を有している。嵌合部45に転倒軸26の他端26bが嵌合されることで、転倒軸26を中心とした揺動腕38の回転が制限される。転倒ます型雨量計10の組み立て作業の際は、揺動腕38の嵌合部45に転倒軸26の他端26bを嵌合させるだけで、転倒軸26の他端26bに対する揺動腕38の位置決めを容易に行うことができる。
【0040】
ベアリング部28は、転倒軸26の一端26aに設けられた第1のベアリング28aと、転倒軸26の他端26bと取付部26cとの間に設けられた第2のベアリング28bとを有している。支持部23は、第1のベアリング28aが設置される第1の設置部としての折釘部36と、第2のベアリング28bが設置される第2の設置部としての席板部35とを有している。転倒ます型雨量計10では、転倒軸26を受けるための軸受けが用いられておらず、第1のベアリング28aと第2のベアリング28bとで転倒軸26を支持部23に支持するように構成されているので、組み立て作業が容易であり、かつ製造コストがより抑えられる。
【0041】
第1の設置部としての折釘部36に切欠部36dが設けられ、第2の設置部としての席板部35に長円形状の貫通孔35dが設けられている(図6参照)。切欠部36dは、転倒軸26の軸方向と直交する第1の方向(Z軸方向)に開口している。貫通孔35dは、切欠部36dの開口と同じ方向、すなわち第1の方向(Z軸方向)に沿って延びた長円形状である。図9に示すように、転倒ます型雨量計10の組み立て作業時には、転倒軸26の一端26a側を上げて傾けながら、転倒軸26の他端26bを貫通孔35dへ挿入することができる。転倒軸26の他端26bを貫通孔35dへ挿入した後は、転倒軸26の一端26a側を下げるだけで、容易に転倒軸26を支持部23に設置することができる。
【0042】
転倒ます型雨量計10の組み立て作業では、切欠部36dに第1のベアリング28aを嵌合させた後、切欠部36dを閉塞するようにL字状の押え部材36cを取り付けるだけで、第1のベアリング28aの位置決めを容易に行うことができる。
【0043】
2.第2実施形態
上記第1実施形態では、支持部23が、第1の設置部としての折釘部36と、第2の設置部としての席板部35とを有しており、席板部35の貫通孔35dに転倒軸26の他端26bが挿入され、折釘部36の切欠部36dに第1のベアリング28aが嵌合されるとともに席板部35の段差部35cに第2のベアリング28bが嵌合され、第1のベアリング28aが押え部材36cにより押えられることで、転倒軸26がベアリング部28を介して支持部23に回転自在に支持されるように構成されている。第2実施形態では、支持部の構成が第1実施形態と異なる。上記第1実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略する。
【0044】
図10Aは、第2実施形態に係る転倒ます型雨量計50を正面側の上方から見た斜視図である。図10Bは、転倒ます型雨量計50を背面側の上方から見た斜視図である。図10Cは、転倒ます型雨量計50をXZ平面で切断した断面図である。図10A、10B、10Cにおいて、転倒ます型雨量計50は、基台11と、外筒12(図示なし)と、受水器13(図示なし)と、計量部54とを備える。計量部54は、濾水器21(図示なし)と、転倒ます22(図示なし)と、支持部63と、一対の排水器24a、24bと、水準器70とを備える。
【0045】
支持部63は、転倒ます22を支持している。支持部63は、基台11に設けられている。支持部63は、基台11に取り付けられた背板部64と、背板部64に取り付けられ、互いに間隔を設けて配置された一対の板状部材65、66と、一対の板状部材65、66を連結する連結部材67とを有する。
【0046】
背板部64は、基台11の上面に固定された固定板64aと、基台11から上方へ向けて垂直に立てられた垂直板64bとを有する。ここで、「垂直」とは、完全な垂直のみに限定されるものではなく、実質的に垂直とみなすことができる略垂直を含む。固定板64aは、Z軸方向の上方から見た平面視で凹状に形成されており、ボルトやビスなどの締結部材を用いて基台11に固定されている。
【0047】
垂直板64bは、固定板64aと一体に形成されており、固定板64aの凹状の縁部から上方へ延びている。垂直板64bの上部には濾水器取付板21aが設けられている。濾水器取付板21aは、図10AではX方向の正面側から見た正面視で下方に開口した凹状に形成されている。垂直板64bは、正面視で上方に開口した凹状に形成されている。垂直板64bと濾水器取付板21aとは、互いに開口を向かい合わせるようにして接続されている。本実施形態では、垂直板64bと濾水器取付板21aとが一体に形成されている。
【0048】
背板部64の垂直板64bの正面には、一対の取付部材31a、31bを介して一対のストッパー32a、32bが設けられている(図10A参照)。背板部64の垂直板64bの背面には、リードスイッチ41が設けられている(図10B参照)。
【0049】
一対の板状部材65、66は、一対のストッパー32a、32bの間に配置されている。板状部材65は、締結部材を用いて背板部64の垂直板64bの正面に固定されている。板状部材65の正面は、板状部材66の背面と対向している。板状部材66は、その下端に位置決めピン(図示なし)が設けられており、当該位置決めピンが基台11の上面に設けられた位置決め孔(図示なし)に挿入されることで、基台11に対し位置決めされる。なお、板状部材66の下端に位置決め孔を設け、基台11の上面に位置決めピンを設け、板状部材66の位置決め孔に基台11の位置決めピンを挿入させることで、基台11に対する板状部材66の位置決めを行っても良い。
【0050】
連結部材67は、柱状の部材で構成されている。図10A~10Cでは、連結部材67は、X軸方向に沿って延びた三角柱状に形成されている。本実施形態では、連結部材67は、一端が締結部材を用いて板状部材66に固定され、他端が板状部材65と一体に形成されている。
【0051】
水準器70は、転倒ます22の転倒軸26が水平状態にあるか否かを測定する。ここで、「水平」とは、完全な水平のみに限定されるものではなく、実質的に水平とみなすことができる略水平を含む。本実施形態では、板状部材66の正面に水準器設置台71が設けられており、水準器設置台71に水準器70が設置されている。なお、水準器70は、公知の水準器であって良く、アナログ式の水準器又はデジタル式の水準器のいずれであっても良い。
【0052】
第2実施形態では、転倒軸26がベアリング部28を介して支持部63に回転自在に支持されるように構成されている。ベアリング部28は、上記第1実施形態と同様に第1のベアリング28aと第2のベアリング28bとを有する。第1のベアリング28a及び第2のベアリング28bは、例えば、環状の内輪と、内輪に対して相対回転可能な環状の外輪とで構成されている。第1のベアリング28aが板状部材66に設置され、第2のベアリング28bが板状部材65に設置される。板状部材66は、第1のベアリング28aが設置される第1の設置部である。板状部材65は、第2のベアリング28bが設置される第2の設置部である。
【0053】
図11は、第1の設置部(板状部材66)の正面図である。図11に示すように、第1の設置部としての板状部材66は、転倒軸26の軸方向と直交する第1の方向(Z軸方向)に開口した第1の切欠部66aと、第1の切欠部66aを閉塞可能に設けられた押え部材66bとを有する。第1の切欠部66aに第1のベアリング28aが設置される。
【0054】
第1の切欠部66aは、板状部材66の先端(上部)に設けられている。第1の切欠部66aは、正面視でC字状に形成されている。第1の切欠部66aの第1の方向(Z軸方向)の開口の幅は、第1のベアリング28aが挿入不可能であり、かつ、後述する転倒軸26の中間部26d(図14参照)が挿入可能な寸法に設定されている。具体的には、第1の切欠部66aの開口の幅は、第1のベアリング28aの外輪の外径よりも小さく、かつ、転倒軸26の中間部26dの直径よりも大きい。第1の切欠部66aの開口の幅は、第1の方向(Z軸方向)及び第2の方向(X軸方向)と直交する第3の方向(Y軸方向)の長さである。
【0055】
第1の切欠部66aに第1のベアリング28aが嵌合された際は、第1の切欠部66aの内周面は、第1のベアリング28aの外輪の外周面と当接する。第1の切欠部66aは、第1のベアリング28aの上下方向への移動、及び左右方向への移動を制限する。
【0056】
押え部材66bは、板状部材66の正面に設けられている。押え部材66bは、第1の切欠部66aの正面側の少なくとも一部を閉塞する。第1の切欠部66aに第1のベアリング28aが嵌合された際は、押え部材66bの背面側の端面は、第1の切欠部66aに嵌合された第1のベアリング28aの外輪の正面側の端面と当接する。押え部材66bは、第1の切欠部66aに嵌合された第1のベアリング28aの正面側(図11における紙面手前側)への移動を制限する。このようにして、第1の切欠部66aに嵌合された第1のベアリング28aは、押え部材66bにより押えられる。
【0057】
押え部材66bは、ボルトやビスなどの締結部材で構成されている。締結部材としての押え部材66bは、外周面に雄ねじが形成されたねじ部と、ねじ部の一端に設けられた頭部とで構成されている。板状部材66は、内周面に雌ねじが形成されたねじ孔(図示なし)を有する。ねじ孔にねじ部が螺合することにより、押え部材66bを締め付けたり緩めたりすることが可能となる。押え部材66bの頭部は、図11では円柱状に形成されている。頭部の直径は、押え部材66bを締め付けたときに第1の切欠部66aの正面側の少なくとも一部を頭部で閉塞可能な寸法に設定されている。なお、押え部材66bの頭部は、円柱状に形成されている場合に限定されず、多角柱状に形成しても良い。頭部が多角柱状に形成されている場合、頭部の直径は、頭部の外接円の直径とする。
【0058】
押え部材66bは、図11では頭部の頭頂面にプラスドライバーの先端が係合可能な十字状のスリットが形成されたビスで構成されているが、これに限定されず、例えば頭部の外周面に複数の溝が形成されたローレットネジで構成しても良い。押え部材66bとしてローレットネジを用いる場合は、例えばメンテナンス等で転倒ます型雨量計50の組み立て作業や分解作業を行う際に、ドライバーなどの工具を使用せずに、作業者の手で押え部材66bを締め付けたり緩めたりすることができる。
【0059】
図12A、12Bに示すように、押え部材66bは、第1の切欠部66aを閉塞する閉塞位置と、第1の切欠部66aを開放する開放位置との間で、変位可能に構成されている。図12Aは、押え部材66bが閉塞位置にある状態を説明するための説明図である。締結部材で構成された押え部材66bを締め付けることにより閉塞位置とすることができる。閉塞位置にある押え部材66bは、背面側(紙面右側)の端面が板状部材66の正面と当接する。図12Bは、押え部材66bが開放位置にある状態を説明するための説明図である。締結部材で構成された押え部材66bを緩めることにより開放位置とすることができる。開放位置にある押え部材66bは、背面側(紙面右側)の端面が板状部材66の正面から離間している。
【0060】
図13は、第2の設置部(板状部材65)の正面図である。図13に示すように、第2の設置部としての板状部材65は、転倒軸26の軸方向と直交する第1の方向(Z軸方向)に開口した第2の切欠部65aと、第2の切欠部65aと接続され、転倒軸26の軸方向と平行な第2の方向(X軸方向)に沿って窪んだ段差部65bとを有する。段差部65bに第2のベアリング28bが設置される。
【0061】
第2の切欠部65aは、板状部材65の先端(上部)に設けられている。第2の切欠部65aは、正面視でU字状に形成されている。第2の切欠部65aの第1の方向(Z軸方向)の開口の幅は、第2のベアリング28bが挿入不可能であり、かつ、転倒軸26の他端26bが挿入可能な寸法に設定されている。具体的には、第2の切欠部65aの開口の幅は、第2のベアリング28bの外輪の外径よりも小さく、かつ、転倒軸26の他端26bの長径よりも大きい。第2の切欠部65aの開口の幅は、第1の方向(Z軸方向)及び第2の方向(X軸方向)と直交する第3の方向(Y軸方向)の長さである。
【0062】
段差部65bは、板状部材65の先端(上部)において、第2の切欠部65aよりも正面側に設けられている。段差部65bは、正面視でC字状に形成されている。段差部65bの直径は、第2のベアリング28bが挿入可能な寸法に設定されている。段差部65bの直径は、第2のベアリング28bの外輪の外径と同程度であることが好ましい。ここでいう段差部65bの直径とは、C字状の円弧を円周の一部とする仮想円の直径を意味する。
【0063】
段差部65bに第2のベアリング28bが嵌合された際は、段差部65bの内周面は、第2のベアリング28bの外輪の外周面と当接し、かつ、段差部65bの端面(図13における紙面奥側の面)は、第2のベアリング28bの外輪の背面側の端面と当接する。段差部65bは、当該段差部65bに嵌合された第2のベアリング28bの上下方向への移動、左右方向への移動、及び背面側(図13における紙面奥側)への移動を制限する。
【0064】
転倒ます型雨量計50の組み立て作業において、転倒軸26を支持部63に取り付ける手順を説明する。まず、図14に示すように、押え部材66bを緩めて開放位置とし、転倒軸26の中間部26dを第1の切欠部66aの開口の上方に配置するとともに、転倒軸26の他端26bを第2の切欠部65aの開口の上方に配置する。転倒軸26の中間部26dは、転倒軸26の一端26aと取付部26cとの間の部位であり、本実施形態では円柱状に形成されている。中間部26dの直径は、一端26aの直径及び第1のベアリング28aの内輪の内径よりも大きく、第1のベアリング28aの外輪の内径未満に設定されている。中間部26dは、一端26aに第1のベアリング28aが挿入された際に、第1のベアリング28aの内輪の背面側の端面と当接し、第1のベアリング28aの外輪の背面側の端面と当接しないように構成されている。なお、転倒軸26には一対のます27a、27bが取り付けられている。図14では、一対のます27a、27bのうち、ます27bが現れており、ます27aが紙面奥側に隠れている。
【0065】
次に、図15に示すように、転倒軸26を下方へ移動させる。転倒軸26の中間部26dが第1の切欠部66aに挿入され、他端26bが第2の切欠部65aに挿入される。
【0066】
次に、図16に示すように、転倒軸26を転倒ます型雨量計50の奥側(紙面右側)へ移動させ、第2のベアリング28bの外輪の背面側の端面を、段差部65bの正面側の端面に当接させる。第1の切欠部66aに第1のベアリング28aが嵌合されるとともに、段差部65bに第2のベアリング28bが嵌合される。
【0067】
次に、図17に示すように、押え部材66bを締め付けて閉塞位置とする。第1の設置部としての板状部材66では、第1の切欠部66aの内周面が第1のベアリング28aの外輪の外周面と当接し、押え部材66bの背面側(紙面右側)の端面が第1のベアリング28aの外輪の正面側の端面と当接する。第2の設置部としての板状部材65では、段差部65bの内周面が第2のベアリング28bの外輪の外周面と当接し、段差部65bの端面が第2のベアリング28bの外輪の背面側の端面と当接する。このようにして、転倒軸26を支持部63に対し回転自在に取り付けることができる。
【0068】
転倒ます型雨量計50の分解作業において、転倒軸26を支持部63から取り外す手順を説明する。まず、押え部材66bを緩めて開放位置とする。次に、転倒軸26を転倒ます型雨量計50の手前側へ移動させ、転倒軸26の中間部26dを第1の切欠部66aの開口の下方に配置するとともに、転倒軸26の他端26bを第2の切欠部65aの開口の下方に配置する。転倒軸26を上方へ移動させることにより、中間部26dを第1の切欠部66aから抜去し、他端26bを第2の切欠部65aから抜去する。このようにして、転倒軸26を支持部63から取り外すことができる。
【0069】
第2実施形態に係る転倒ます型雨量計50は、第1実施形態に係る転倒ます型雨量計10の支持部23の代わりに支持部63を備えるものである。支持部63は、第1の設置部としての板状部材66と、第2の設置部としての板状部材65とを有している。板状部材66は、転倒軸26の軸方向と直交する第1の方向(Z軸方向)に開口した第1の切欠部66aと、第1の切欠部66aを閉塞するように設けられた押え部材66bとを有する。板状部材65は、転倒軸26の軸方向と直交する第1の方向に開口した第2の切欠部65aと、転倒軸26の軸方向と平行な第2の方向(X軸方向)に沿って窪んだ段差部65bとを有する。押え部材66bは、第1の切欠部66aを開放する開放位置と、第1の切欠部66aを閉塞する閉塞位置との間で、変位可能に構成されている。押え部材66bを開放位置とすることで、第1のベアリング28aが第1の切欠部66aに設置可能とされ、第2のベアリング28bが段差部65bに設置可能とされる。押え部材66bを閉塞位置とすることで、第1のベアリング28aを第1の切欠部66aに回転自在に取り付けることができ、第2のベアリング28bを段差部65bに回転自在に取り付けることができる。このように、転倒ます型雨量計50は、ベアリング部28を支持部63に設置するだけで、転倒軸26を支持部63に対し回転自在に取り付けることができるので、熟練を要せず容易に組み立てることができる。また、転倒ます型雨量計50では、サファイア等の高価な材料で構成される軸受けの代わりにベアリング部28が用いられているので、製造コストが抑えられる。
【0070】
転倒ます型雨量計50は、押え部材66bが締結部材で構成されていることにより、押え部材66bを締め付けたり緩めたりするだけで、転倒軸26を支持部63に対し簡単に着脱することができる。押え部材66bがローレットネジで構成されている場合は、工具なしで、転倒軸26を支持部63に対し簡単に着脱することができる。
【0071】
押え部材66bは、締結部材で構成される場合に限定されず、転倒軸26の軸方向と平行な第2の方向に弾性変形可能な板ばね状の部材で構成しても良い。押え部材66bを板ばね状の部材で構成する場合は、押え部材66bを第2の方向の一方向に弾性変形させることで開放位置とし、押え部材66bを第2の方向の他方向に弾性変形させることで閉塞位置とすることができる。第2の方向の一方向は、押え部材66bの先端が第1の切欠部66aから離れる方向とする。第2の方向の他方向は、押え部材66bの先端が第1の切欠部66aに近づく方向とする。押え部材66bが閉塞位置にある状態を初期状態としたとき、初期状態の押え部材66bの先端を作業者が手の指で把持し、押え部材66bを第2の方向の一方向に弾性変形させることで開放位置とすることができる。開放位置にある押え部材66bを第2の方向の他方向に弾性変形させることで閉塞位置(すなわち初期状態)に戻すことができる。
【0072】
第2の設置部は、第2実施形態では板状部材65が用いられているが、上記第1実施形態の席板部35を用いても良い。第2の設置部としての席板部35を備える転倒ます型雨量計50では、組み立て作業時には、まず、押え部材66bを緩めて開放位置とし、転倒軸26の一端26a側を上げて傾けながら、転倒軸26の他端26bを席板部35の貫通孔35dへ挿入する。次に、転倒軸26の一端26a側を下げて、転倒軸26の中間部26dを第1の切欠部66aに挿入する。次に、転倒軸26を転倒ます型雨量計50の奥側へ移動し、第2のベアリング28bの外輪の背面側の端面を、席板部35の段差部35cの正面側の端面に当接させる。この結果、第1の切欠部66aに第1のベアリング28aが嵌合されるとともに、段差部35cに第2のベアリング28bが嵌合される。そして、押え部材66bを締め付けて閉塞位置とする。なお、分解作業は、組み立て作業と逆の手順を行えば良い。
【0073】
3.第3実施形態
上記第2実施形態では、押え部材66bを開放位置と閉塞位置との間で変位させることにより、第1のベアリング28aが第1の切欠部66aに回転自在に取り付けられる。第3実施形態では、第1の切欠部を弾性変形させることにより、第1のベアリングが第1の切欠部に回転自在に取り付けられる。上記各実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略する。
【0074】
図18Aは、第3実施形態に係る転倒ます型雨量計100を正面側の上方から見た斜視図である。図18Bは、第3実施形態に係る転倒ます型雨量計100を背面側の上方から見た斜視図である。図18A、18Bにおいて、転倒ます型雨量計100は、基台11と、外筒12(図示なし)と、受水器13(図示なし)と、計量部104とを備える。計量部104は、濾水器21(図示なし)と、転倒ます22(図示なし)と、支持部113と、一対の排水器24a、24bと、水準器70とを備える。
【0075】
支持部113は、転倒ます22を支持している。支持部113は、基台11に設けられている。支持部113は、基台11に取り付けられた背板部64と、背板部64に取り付けられ、互いに間隔を設けて配置された一対の板状部材65、116と、一対の板状部材65、116を連結する連結部材67とを有する。
【0076】
第3実施形態では、転倒軸26がベアリング部28を介して支持部113に回転自在に支持されるように構成されている。ベアリング部28は、上記第1実施形態と同様に第1のベアリング28aと第2のベアリング28bとを有し、第1のベアリング28aが板状部材116に設置され、第2のベアリング28bが板状部材65に設置される。板状部材116は、第1のベアリング28aが設置される第1の設置部である。板状部材65は、第2のベアリング28bが設置される第2の設置部である。
【0077】
図19は、第1の設置部(板状部材116)の正面図である。図20は、第1の設置部(板状部材116)の背面図である。図19及び図20に示すように、第1の設置部としての板状部材116は、転倒軸26の軸方向と直交する第1の方向(Z軸方向)に開口した第1の切欠部116aと、第1の切欠部116aを閉塞可能に設けられた押え部材116bとを有する。第1の切欠部116aに第1のベアリング28aが設置される。
【0078】
第1の切欠部116aは、板状部材116の先端(上部)に設けられている。第1の切欠部116aは、X方向の背面側から見た背面視でC字状に形成されている。第1の切欠部116aの第1の方向(Z軸方向)の開口の幅は、第1のベアリング28aの外輪の外径よりも若干小さい寸法に設定されている。
【0079】
第1の切欠部116aは、樹脂又は金属等の弾性材料で形成されている。第1の切欠部116aは、転倒軸26の軸方向と直交する第1の方向(Z軸方向)及び転倒軸26の軸方向と平行な第2の方向(X軸方向)と直交する第3の方向(Y軸方向)に弾性変形可能に構成されている。
【0080】
転倒ます型雨量計100の組み立て作業において、転倒軸26を支持部113に取り付ける手順を説明する。まず、図21に示すように、第1の切欠部116aの第1の方向の開口の上方に第1のベアリング28aを配置する。次に、図22に示すように、第1のベアリング28aを下方へ移動させて第1の切欠部116aの開口の端縁に当接させる。第1のベアリング28aを更に下方へ移動させて第1の切欠部116aの開口に押し込む。第1のベアリング28aが下方へ移動するにつれて、第1の切欠部116aは、その開口の端縁が第1のベアリング28aの外周面に擦れながら、第3の方向(Y軸方向)に弾性変形する。第1のベアリング28aを更に下方へ移動させて、第1のベアリング28aの最外径部分が第1の切欠部116aの開口の端縁を通過すると、弾性変形した第1の切欠部116aは、その開口の端縁が第1のベアリング28aの外周面に擦れながら弾性復元力によって元の形状に戻る。これにより、図23に示すように、第1の切欠部116aに第1のベアリング28aが挿入(嵌合)される。第1の切欠部116aは、その内部に第1のベアリング28aを保持する弾性力を発揮する。
【0081】
転倒ます型雨量計100の分解作業において、転倒軸26を支持部113から取り外す手順を説明する。まず、第1の切欠部116aに挿入(嵌合)されている第1のベアリング28aを上方へ移動させる。第1のベアリング28aが上方へ移動するにつれて、第1の切欠部116aは、その開口の端縁が第1のベアリング28aの外周面に擦れながら、第3の方向(Y軸方向)に弾性変形する。第1のベアリング28aを更に上方へ移動させて、第1のベアリング28aの最外径部分が第1の切欠部116aの開口の端縁を通過すると、弾性変形した第1の切欠部116aは、その開口の端縁が第1のベアリング28aの外周面に擦れながら弾性復元力によって元の形状に戻る。これにより、第1の切欠部116aから第1のベアリング28aが抜去される。
【0082】
第3実施形態に係る転倒ます型雨量計100は、第1の切欠部116aが弾性変形可能に構成されていることにより、第1のベアリング28aを第1の切欠部116aの開口に押し込んだり、第1のベアリング28aを第1の切欠部116aの開口から引き出したりするだけで、第1のベアリング28aを第1の切欠部116aに対し簡単に挿抜することができ、転倒軸26を支持部63に対し簡単に着脱することができる。
【0083】
第2の設置部は、第3実施形態では板状部材65が用いられているが、上記第1実施形態の席板部35を用いても良い。第2の設置部としての席板部35を備える転倒ます型雨量計100では、組み立て作業時には、まず、転倒軸26の一端26a側を上げて傾けながら、転倒軸26の他端26bを席板部35の貫通孔35dへ挿入する。次に、第1のベアリング28aを下方へ移動させて第1の切欠部116aの開口の端縁に当接させる。第1のベアリング28aを更に下方へ移動させて第1の切欠部116aの開口に押し込む。この結果、第1の切欠部116aに第1のベアリング28aが挿入(嵌合)されるとともに、席板部35の段差部35cに第2のベアリング28bが嵌合される。なお、分解作業は、組み立て作業と逆の手順を行えば良い。
【0084】
本発明は、上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0085】
転倒ます型雨量計10、50、100を構成する各部材は、位置決めピンと位置決め孔との嵌合により高精度に位置決めされている。例えば、一対の取付部材31a、31bに1つ以上の位置決めピンが設けられており、垂直板35bに1つ以上の位置決め孔が設けられている。転倒ます型雨量計10、50、100の組み立て作業時には、一対の取付部材31a、31bの位置決めピンを垂直板35bの位置決め孔に嵌合させることで、一対の取付部材31a、31bの位置決めを容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0086】
10、50、100 転倒ます型雨量計
22 転倒ます
23、63、113 支持部
26 転倒軸
26a 一端
26b 他端
26c 取付部
27a、27b 一対のます
28 ベアリング部
28a 第1のベアリング
28b 第2のベアリング
35 席板部(第2の設置部)
35c 段差部
35d 貫通孔
36 折釘部(第1の設置部)
36c 押え部材
36d 切欠部
38 揺動腕
45 嵌合部
65 板状部材(第2の設置部)
65a 第2の切欠部
65b 段差部
66 板状部材(第1の設置部)
66a 第1の切欠部
66b 押え部材
116 板状部材(第1の設置部)
116a 第1の切欠部
116b 押え部材
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