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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037190
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】滅菌システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/04 20060101AFI20240312BHJP
   A23L 3/18 20060101ALI20240312BHJP
   A23L 2/42 20060101ALI20240312BHJP
   A23L 2/46 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61L2/04
A23L3/18
A23L2/00 N
A23L2/46
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134530
(22)【出願日】2022-08-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000157946
【氏名又は名称】岩井機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 充博
【テーマコード(参考)】
4B021
4B117
4C058
【Fターム(参考)】
4B021LA42
4B021LP03
4B021LT01
4B021LW06
4B021LW10
4B021MC01
4B117LC15
4B117LP14
4B117LT05
4C058AA21
4C058BB02
4C058DD02
4C058DD04
4C058DD05
4C058DD11
4C058EE26
(57)【要約】
【課題】熱交換器等の各種機器を滅菌した後に、より速やかに液状製品を滅菌することができる滅菌システムを提供する。
【解決手段】液状製品を加熱滅菌する第1加熱部11と、第1加熱部11で加熱滅菌された液状製品を冷却する第2冷却部21と、第1加熱部11に液状製品と熱交換させる温水を供給する第1温水装置31と、熱媒を循環させる第1循環流路C1と、第1循環流路C1に水を供給する給水部40と、を備え、第1温水装置31は、温水を第1加熱部11を滅菌するための温度にして第1循環流路C1に供給し、第1加熱部11で液状製品を加熱滅菌させる前に、給水部40から第1循環流路C1に水を供給させて温水に混合させ、当該温水によって第1加熱部11の温度を液状製品の加熱滅菌に必要な温度に低下させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状製品を加熱滅菌する第1加熱部と、
前記第1加熱部で加熱滅菌された液状製品を冷却する第2冷却部と、
前記第1加熱部に液状製品と熱交換させる熱媒を供給する第1熱媒供給部と、
前記熱媒を前記第1熱媒供給部、前記第1加熱部、前記第2冷却部、前記第1熱媒供給部の順に循環させる第1循環流路と、
前記第1循環流路に水を供給する給水部と、を備え、
前記第1熱媒供給部は、熱媒を前記第1加熱部を滅菌するための温度にして前記第1循環流路に供給し、
前記第1加熱部で液状製品を加熱滅菌させる前に、前記給水部から前記第1循環流路に水を供給させて熱媒に混合させ、当該熱媒によって前記第1加熱部の温度を液状製品の加熱滅菌に必要な温度に低下させる
ことを特徴とする滅菌システム。
【請求項2】
請求項1に記載する滅菌システムであって、
前記給水部は、前記第1循環流路のうち前記第1加熱部と前記第2冷却部の間に水を供給する
ことを特徴とする滅菌システム。
【請求項3】
請求項1に記載する滅菌システムであって、
前記第1加熱部で加熱滅菌された液状製品を加熱滅菌する第2加熱部と、
前記第2加熱部で加熱滅菌された液状製品を冷却し、前記第2冷却部へ供給する第1冷却部と、
前記第2加熱部に液状製品と熱交換させる熱媒を供給する第2熱媒供給部と、
前記熱媒を前記第2熱媒供給部、前記第1加熱部、前記第2冷却部、前記第2熱媒供給部の順に循環させる第2循環流路と、
を備えることを特徴とする滅菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状製品を滅菌する滅菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料など液状製品を製造する工場等には、液状製品を加熱して滅菌する滅菌システムが備わっている。例えば、特許文献1の滅菌システムは、液状製品を滅菌する製品滅菌工程に先立ち、熱交換器等の各種機器を滅菌温度以上に加熱し、各種機器の滅菌を行う機器滅菌工程を実施している。
【0003】
通常、液状製品を滅菌するための温度は、機器滅菌工程で各種機器に与える温度よりも低い。したがって、機器滅菌工程の後、かつ製品滅菌工程の前に、各種機器を液状製品の滅菌温度にまで低下させる温度安定化工程を実施する。
【0004】
温度安定化工程は、次の製品滅菌工程を実施するために早期に完了させることが望まれている。しかしながら、特許文献1の滅菌システムは、温度安定化工程を短縮することについて特に言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58-49149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、熱交換器等の各種機器を滅菌した後に、より速やかに液状製品を滅菌することができる滅菌システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、液状製品を加熱滅菌する第1加熱部と、前記第1加熱部で加熱滅菌された液状製品を冷却する第1冷却部と、前記第1加熱部に液状製品と熱交換させる熱媒を供給する第1熱媒供給部と、前記熱媒を前記第1熱媒供給部、前記第1加熱部、前記第2冷却部、前記第1熱媒供給部の順に循環させる第1循環流路と、前記第1循環流路に水を供給する給水部と、を備え、前記第1熱媒供給部は、熱媒を前記第1加熱部を滅菌するための第1温度にして前記第1循環流路に供給し、前記第1加熱部で液状製品を加熱滅菌させる前に、前記給水部から前記第1循環流路に水を供給させて熱媒に混合させ、当該熱媒によって前記第1加熱部の温度を液状製品の加熱滅菌に必要な温度に低下させることを特徴とする滅菌システムにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱交換器等の各種機器を滅菌した後に、より速やかに液状製品を滅菌することができる滅菌システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】滅菌システムの概略構成を示す図である。
図2】滅菌システムの機器滅菌工程を示す図である。
図3】滅菌システムの温度安定化工程を示す図である。
図4】滅菌システムの製品滅菌工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の滅菌システムの一実施形態について説明する。なお、実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る滅菌システムの概略構成を示す図である。滅菌システム1は、被処理液として飲料などの液状製品を製造する工場の一部を構成している。一例としては、滅菌システム1の上流側には、液状製品を調製する装置群(図示せず)が設置されており、下流側には滅菌システム1で滅菌された液状製品を容器詰めする装置群(図示せず)が設置されている。もちろん、滅菌システム1の上流及び下流の装置群はそれらに限定されない。
【0012】
滅菌システム1は、第1加熱部11、第2加熱部12、第2冷却部21、第1冷却部22、第3冷却部23、第1温水装置31、第2温水装置32、給水部40を備えている。第1加熱部11、第2加熱部12、第1冷却部22、第2冷却部21、第3冷却部23は、この順序で液状製品が流通するように直列的に接続されている。
【0013】
第1加熱部11、及び第2加熱部12は、液状製品を加熱により滅菌する装置であり、具体的には間接的に熱媒(例えば温水)と液状製品を熱交換させるシェル&チューブ型やプレート型などの熱交換器からなる。第1加熱部11、及び第2加熱部12は、一台の熱交換器から構成されていてもよいし、複数の滅菌器を連結した構成であってもよい。液状製品は、最初に第1加熱部11により加熱され、次に、第2加熱部12によりさらに加熱される。液状製品は、第2加熱部12で加熱された後は、第1冷却部22へ供給される。なお、特に図示していないが、第2加熱部12の後に温度保持管を設けてもよい。
【0014】
第1加熱部11には温水が第1温水装置31から供給され、第2加熱部12には温水が第2温水装置32から供給される。同図には、第1加熱部11及び第2加熱部12ともに、液状製品の下流側に温水が供給される構成を例示してあるが、温水が供給される位置については特に限定はない。
【0015】
第2冷却部21、第1冷却部22、及び第3冷却部23は、液状製品を冷却する装置であり、具体的には間接的に熱媒と液状製品を熱交換させるシェル&チューブ型やプレート型などの熱交換器からなる。第2冷却部21、第1冷却部22、及び第3冷却部23は、一台の熱交換器から構成されていてもよいし、複数の熱交換器を連結した構成であってもよい。液状製品は、最初に第1冷却部22により冷却され、第2冷却部21によりさらに冷却され、第3冷却部23によりさらに冷却される。液状製品は、第3冷却部23で冷却された後は、滅菌システム1の下流の装置群へ供給される。
【0016】
第1冷却部22には第2加熱部12から温水が供給され、第2冷却部21には第1加熱部11から温水が供給される。同図には、第2冷却部21及び第1冷却部22ともに、液状製品の下流側に温水が供給される構成を例示してあるが、温水が供給される位置については特に限定はない。また、第1冷却部22で熱交換を終えた温水は第2温水装置32へ戻り、第2冷却部21で熱交換を終えた温水は第1温水装置31へ戻る。第3冷却部23は、図示しない水が供給されており、その水を冷媒又は媒体として液状製品を冷却する。
【0017】
第1温水装置31は、温水を製造する温水製造部や、温水を供給するためのポンプなどから構成されており、温水を第1加熱部11、第2冷却部21に循環させる装置であり、請求項に記載の第1熱媒供給部の一例である。具体的には、第1温水装置31は温水を製造し、第1加熱部11に供給する。その温水は、第1加熱部11で液状製品を加熱するために用いられる。第1加熱部11で熱交換を終えた温水は、第2冷却部21に供給され、液状製品を冷却するために用いられる。第2冷却部21で熱交換を終えた温水(水)は第1温水装置31に回収される。第1温水装置31では、回収された水または別途供給された水を加熱することで温水を製造する。このように、温水が第1温水装置31、第1加熱部11、第2冷却部21、第1温水装置31の順に循環するようにそれらの装置が環状に接続されている。第1温水装置31、第1加熱部11、第2冷却部21を循環する温水の流路を第1循環流路C1と称する。
【0018】
第2温水装置32は、温水を製造する温水製造部や、温水を供給するためのポンプなどから構成されており、温水を第2加熱部12、第1冷却部22に循環させる装置であり、請求項に記載の第2熱媒供給部の一例である。具体的には、第2温水装置32は温水を製造し、第2加熱部12に供給する。その温水は、第2加熱部12で液状製品を加熱するために用いられる。第2加熱部12で熱交換を終えた温水は、第1冷却部22に供給され、液状製品を冷却するために用いられる。第1冷却部22で熱交換を終えた温水(水)は第2温水装置32に回収される。第2温水装置32では、回収された水または別途供給された水を加熱することで温水を製造する。このように、温水が第2温水装置32、第2加熱部12、第1冷却部22、第2温水装置32の順に循環するようにそれらの装置が環状に接続されている。第2温水装置32、第2加熱部12、第1冷却部22を循環する温水の流路を第2循環流路C2と称する。
【0019】
なお、第1温水装置31、第2温水装置32の温水製造部は、例えば、水に蒸気を混合させることで温水を製造する装置を採用することができるが、このような装置に限定されない。任意の熱源により水を加熱するような装置を温水製造部としてもよい。また、第1温水装置31、第2温水装置32が供給する熱媒は温水に限定されず蒸気であってもよい。
【0020】
給水部40は、第1温水装置31により循環する温水の流路のうち、第1加熱部11と第2冷却部21との間(以後、給水ポイントP)に水(以下、冷却水)を供給する装置である。給水部40は、後述する温度安定化工程において冷却水を給水ポイントPに供給する。冷却水の温度は、少なくとも、後述する製品滅菌工程において各機器に設定される温度(以下、目標水温)以下とする。給水部40は、タンク等の容器に冷却水を貯留し、目標温度に維持する構成とする。目標温度が常温程度であれば単に水を貯留する構成とすればよいし、目標温度が常温以外であるならばそのような目標温度となるようにタンク内の冷却水の温度を調整する機構を設ければ良い。そのような温度調整機構は公知であるので詳細な説明は省略する。
【0021】
滅菌システム1は、制御装置(図示せず)を備えている。制御装置はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)、又はシーケンサーとも呼ばれる装置である。制御装置は、滅菌システム1を構成する上記の各種装置を制御することで液状製品の滅菌を行う。具体的には、制御装置は、機器滅菌工程、温度安定化工程、製品滅菌工程を実行する。
【0022】
図2は滅菌システムの機器滅菌工程を示す図である。実線は、第1温水装置31及び第2温水装置32から温水が供給されていることを示している。点線は、上流から液状製品が供給されず、給水部40から水が供給されていないことを示している。
【0023】
機器滅菌工程では、液状製品を滅菌し、その後に冷却するための装置群を滅菌する工程である。具体的には、制御装置は、第1温水装置31に、温水を130℃とし、その温水を第1加熱部11及び第2冷却部21に循環供給させる。第2温水装置32についても同様である。すなわち、制御装置は、第2温水装置32に、温水を130℃とし、その温水を第2加熱部12及び第1冷却部22に循環供給させる。
【0024】
温水の温度は130℃に限らず、各加熱部・冷却部を滅菌するために必要な温度であればよい。また、温水を循環供給させる時間についても、各加熱部・冷却部を滅菌するために必要な時間を適宜設定すればよい。このような機器滅菌工程では、液状製品を流通させないので各加熱部・冷却部は温水と同等に加熱され、滅菌される。
【0025】
図3は滅菌システムの温度安定化工程を示す図である。実線は、第1温水装置31及び第2温水装置32から温水が供給され、給水部40から水が供給されていることを示す。点線は上流から液状製品が供給されていないことを示している。
【0026】
図2の機器滅菌工程では第1加熱部11の温度は130℃であったが、この温度は液状製品の滅菌に必要な温度とは乖離している。例えば、第1加熱部11は製品滅菌工程では100℃にする必要があるとする。温度安定化工程では第1加熱部11を130℃から100℃に温度調整する。
【0027】
具体的には、制御装置は、給水部40に水を給水ポイントPに供給させる。水の温度は目標の100℃より低い温度であればよく、水量も適宜設定すればよい。給水部40から供給された水は、第1循環流路C1を循環する。なお、第1循環流路C1には、給水部40の水のみならず、第1温水装置31が供給していた温水が混合していてもよい。温度安定化工程においては第1加熱部11を温度低下させるので、第1循環流路C1は給水部40から水を供給するのみでよく、第1温水装置31において蒸気等の熱源を用いて水を加熱する必要はない。
【0028】
第1循環流路C1に給水部40から水が供給されて循環することにより、第1加熱部11は冷却され目標の100℃になる。また、第2冷却部21についても同様に100℃となる。
【0029】
第2循環流路C2についても温度調整を行う。図2の機器滅菌工程では第2加熱部12の温度は130℃であったが、この温度は液状製品の滅菌に必要な温度とは乖離している。例えば、第2加熱部12は製品滅菌工程では140℃にする必要があるとする。温度安定化工程では第2加熱部12を130℃から140℃に温度調整する。
【0030】
具体的には、制御装置は、第2温水装置32に140℃以上の温水を第2循環流路C2に循環供給させる。水の温度は目標の140℃以上であればよく、水量も適宜設定すればよい。
【0031】
第2循環流路C2に温水を循環供給することにより、第2加熱部12は加熱され目標の140℃になる。また、第1冷却部22についても同様に140℃となる。
【0032】
第1加熱部11、第2加熱部12、第1冷却部22、第2冷却部21、及び第3冷却部23が目標温度に達したら、制御装置は温度安定化工程を終了する。すなわち、制御装置は、製造滅菌工程の運転条件で水を循環待機させる。
【0033】
図4は滅菌システムの製品滅菌工程を示す図である。実線は、上流から液状製品が供給され、第1温水装置31及び第2温水装置32から温水が供給されていることを示している。点線は、給水部40から水が供給されていないことを示している。下線を付した温度は液状製品の温度を示し、下線を付していない温度は温水の温度を示している。
【0034】
製品滅菌工程では、第1温水装置31及び第2温水装置32が循環供給する温水により第1加熱部11及び第2加熱部12において液状製品を加熱滅菌し、その温水の熱を第2冷却部21及び第1冷却部22において液状製品に回収させる(冷却させる)。
【0035】
具体的には、制御装置は、第1温水装置31に温水を第1循環流路C1に循環供給させる。温水の温度は第1加熱部11の入口温度が100℃とする。同様に、制御装置は、第2温水装置32に温水を第2循環流路C2に循環供給させる。温水の温度は第2加熱部12の入口温度が140℃とする。このように温水を循環供給させることで、液状製品は2段階で加熱滅菌され(80℃、110℃)、3段階で冷却され(80℃、50℃、20℃)、下流の工程に供給される。
【0036】
以上に説明したように、滅菌システム1は、機器滅菌工程の実施後、製品滅菌工程の前に温度安定化工程を実施する。温度安定化工程において給水部40から水を供給することで第1循環流路C1を循環する温水の温度を低下させる。これにより、温度低下した温水により第1循環流路C1に接続された第1加熱部11及び第2冷却部21を所定温度(製品滅菌工程において必要とされる第1加熱部11の温度)に速やかに冷却することができる。この結果、機器滅菌工程の実施後から製品滅菌工程を行うまでの時間を短縮することができ、生産性を向上することができる。
【0037】
なお、従来では給水部40による水の供給を行っていなかったので、機器滅菌工程の実施後は、例えば自然放熱、及び、第3冷却部23で冷やされた水を第1加熱部11~第3冷却部23に循環させることで第1加熱部11、第2加熱部12、第1冷却部22、第2冷却部21の各所を間接的に冷却し、製品滅菌工程で必要な温度にしていた。このような第3冷却部23による間接的な冷却や自然放熱は相当の時間を要するため、機器滅菌工程の実施後から製品滅菌工程を行うまでの時間が長くなり、生産性の向上を阻害する要因となっていた。
【0038】
また、温度安定化工程において第1加熱部11や第2冷却部21の液状製品側から第1循環流路C1の温水が冷却されることになる。仮に、給水ポイントPに水を供給しないとすると、温水の温度低下に伴って圧力が低下し、第1循環流路C1が負圧になる。負圧下では第1循環流路C1に備わるポンプなどの装置が破損する虞がある。負圧を回避するために第1循環流路C1に蒸気を供給して圧力が負圧にならないようにすることも考えられる。しかしながら、蒸気を供給してしまうと、第1加熱部11の温度が下がらず、製品滅菌工程を開始するまでの時間が延びてしまう。
【0039】
一方、本発明の滅菌システム1は、温度安定化工程において給水部40により水を第1循環流路C1に供給する。これにより、上述した温水の温度低下に伴う圧力の低下が水の供給により補われることになるので、第1循環流路C1が負圧になることを回避、又は負圧になったとしてもその大きさを小さく抑えることができる。
【0040】
このように給水によって、第1循環流路C1に備わるポンプなどの装置が負圧によって破損することを回避することができ、蒸気を供給する場合と比較して温度安定化工程に要する時間を短縮し、製品滅菌工程を速やかに開始することができる。また、負圧になることを抑制すべく水を供給するので、蒸気を供給する場合と比べて省エネルギーである。
【0041】
また、本発明の滅菌システム1は、第1循環流路C1に水を供給する給水ポイントPが第1加熱部11よりも下流であり、第2冷却部21よりも上流側となっている。この給水ポイントPは、第1循環流路C1において第1加熱部11の入口から上流側に向かって(図1-4に示す例では時計回りに向かって)、最も遠い位置となっている。給水ポイントPをそのような配置とすることで給水によって第1加熱部11が急激に温度低下することを回避できる。第1加熱部11が急激に温度低下することを回避できるので、製品滅菌工程において第1加熱部11及び第2加熱部12の滅菌温度が低下してしまうリスクを低減することができる。
【0042】
第2循環流路C2に含まれる第2加熱部12は、液状製品からみて加熱滅菌の最終段階に位置する。液状製品の加熱滅菌を担保すべく、第2加熱部12が滅菌に必要な温度を下回ることは極力避けることが好ましい。このような観点から、本発明の滅菌システム1は、第2循環流路C2については給水部40が設けられていない。つまり、温度安定化工程では第2循環流路C2には水は供給されない。
【0043】
図2図4に示したように、第2加熱部12は、機器滅菌工程の温度よりも製品滅菌工程の温度が高い必要があるため、そもそも第2循環流路C2に給水は不要ではある。しかしながら、仮に機器滅菌工程の温度よりも製品滅菌工程の温度が低い必要があっても、給水を行わない構成とする。このように、温度安定化工程で第2循環流路C2に水を供給しない構成とすることで、第2加熱部12後の液状製品の加熱滅菌をより確実に担保することができる。
【0044】
なお、第2循環流路C2に水を供給しないことで温度安定化工程に時間を要するとも考えられる。しかしながら、少なくとも、第1循環流路C1及び第2循環流路C2の双方に水を供給しない場合との比較において、温度安定化工程に要する時間を短縮することができる。
【0045】
本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0046】
上述した実施形態は、給水部40から第2循環流路C2に水を供給する構成ではなかったが、これに限らず、第2循環流路C2に水を供給してもよい。例えば酸性製品の場合、第2加熱部12の出口における酸性製品の滅菌温度が95℃程度であるから、機器滅菌の温度(例えば130℃)から下げる必要がある。したがって、第2加熱部12の機器滅菌の温度よりも製品滅菌工程の温度が低い場合には、第2循環流路C2に水を給水させてもよい。これにより温度安定化工程に要する時間を短縮することができる。
【0047】
さらに、第2循環流路C2に水を供給する場合、第1循環流路C1と同様の給水ポイントPとすることが好ましい。これにより、第1循環流路C1と同様に、第2加熱部12が急激に温度低下することを回避することができる。第2加熱部12の急激な温度低下を回避することで、製品滅菌工程において第2加熱部12の滅菌温度の低下リスクを小さくできる。
【0048】
上記滅菌システム1は、第1循環流路C1及び第2循環流路C2を備えているが、このような構成に限定されない。例えば、第1加熱部11、第2冷却部21、第1温水装置31及び第1循環流路C1を備え、第2加熱部12、第1冷却部22、第2温水装置32及び第2循環流路C2を含まない構成としてもよい。
【0049】
上記滅菌システム1は、第1加熱部11の下流であり第2冷却部21の上流に給水ポイントPを配置したが、これに限定されない。例えば第1循環流路C1において第1加熱部11と第1温水装置31の間や、第1温水装置31と第2冷却部21との間に給水ポイントを設けてもよい。上述したように給水によって第1加熱部11の温度低下が懸念されるが、下流側に第2加熱部12が配置されていれば加熱滅菌が担保される。また、給水ポイントPは一箇所に限定されず、複数箇所で行ってもよい。
【0050】
第1加熱部11及び第2加熱部12に供給される温水は、液状製品に対して並流であってもよいし向流であってもよい。また、温水や液状製品の温度は例示であり、適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0051】
C1…第1循環流路、C2…第2循環流路、P…給水ポイント、1…滅菌システム、11…第1加熱部、12…第2加熱部、21…第2冷却部、22…第1冷却部、23…第3冷却部、31…第1温水装置(第1熱媒供給部)、32…第2温水装置(第2熱媒供給部)、40…給水部
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状製品を加熱滅菌する第1加熱部と、
前記第1加熱部で加熱滅菌された液状製品を冷却する第2冷却部と、
前記第1加熱部に液状製品と熱交換させる熱媒を供給する第1熱媒供給部と、
前記熱媒を前記第1熱媒供給部、前記第1加熱部、前記第2冷却部、前記第1熱媒供給部の順に循環させる第1循環流路と、
前記第1循環流路に水を供給する給水部と、を備え、
前記第1熱媒供給部は、熱媒を前記第1加熱部を滅菌するための温度にして前記第1循環流路に供給し、
前記第1加熱部で液状製品を加熱滅菌させる前に、前記給水部から前記第1循環流路に水を供給させて熱媒に混合させ、当該熱媒によって前記第1加熱部の温度を液状製品の加熱滅菌に必要な温度に低下させ
前記給水部は、前記第1循環流路のうち前記第1加熱部と前記第2冷却部の間に水を供給する
ことを特徴とする滅菌システム。
【請求項2】
請求項1に記載する滅菌システムであって、
前記第1加熱部で加熱滅菌された液状製品を加熱滅菌する第2加熱部と、
前記第2加熱部で加熱滅菌された液状製品を冷却し、前記第2冷却部へ供給する第1冷却部と、
前記第2加熱部に液状製品と熱交換させる熱媒を供給する第2熱媒供給部と、
前記熱媒を前記第2熱媒供給部、前記第加熱部、前記第冷却部、前記第2熱媒供給部の順に循環させる第2循環流路と、
を備えることを特徴とする滅菌システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、液状製品を加熱滅菌する第1加熱部と、前記第1加熱部で加熱滅菌された液状製品を冷却する第2冷却部と、前記第1加熱部に液状製品と熱交換させる熱媒を供給する第1熱媒供給部と、前記熱媒を前記第1熱媒供給部、前記第1加熱部、前記第2冷却部、前記第1熱媒供給部の順に循環させる第1循環流路と、前記第1循環流路に水を供給する給水部と、を備え、前記第1熱媒供給部は、熱媒を前記第1加熱部を滅菌するための温度にして前記第1循環流路に供給し、前記第1加熱部で液状製品を加熱滅菌させる前に、前記給水部から前記第1循環流路に水を供給させて熱媒に混合させ、当該熱媒によって前記第1加熱部の温度を液状製品の加熱滅菌に必要な温度に低下させ、前記給水部は、前記第1循環流路のうち前記第1加熱部と前記第2冷却部の間に水を供給することを特徴とする滅菌システムにある。