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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037196
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】プローブピン用合金材料
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/067 20060101AFI20240312BHJP
   C22C 5/04 20060101ALI20240312BHJP
   C22C 30/02 20060101ALI20240312BHJP
   C22C 19/03 20060101ALI20240312BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01R1/067 Z
C22C5/04
C22C30/02
C22C19/03 M
C22C9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141820
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000198709
【氏名又は名称】石福金属興業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100166039
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 款
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】江川 恭徳
(72)【発明者】
【氏名】松澤 篤央
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢一
【テーマコード(参考)】
2G011
【Fターム(参考)】
2G011AC21
(57)【要約】
【課題】プローブ検査時に検査対象の回路接続部のはんだとプローブ材の成分が拡散することを抑制することができるプローブピン用合金材料を提供する。
【解決手段】
Pt 40~95mass%、Cu 0.5~50mass%、Ni 3~50mass%からなることを特徴とするプローブピン用合金材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pt 40~95mass%、Cu 0.5~50mass%、Ni 3~50mass%からなることを特徴とするプローブピン用合金材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ上の集積回路や液晶表示装置等の電気的特性を検査するためのプローブピン用合金材料(以下、「プローブ材」と略称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ上に形成された集積回路や液晶表示装置等の電気的特性の検査には、複数のプローブが組み込まれたソケットやプローブカードが用いられている。この検査は、ソケットやプローブカードに組み込まれたプローブピンを、集積回路や液晶表示装置等の電極や端子、導電部に接触させることにより行われている。
【0003】
このようなプローブピンは、低い接触抵抗と繰り返し接触に耐える硬さが必要となる。プローブ材としては、ベリリウム銅合金やタングステン、タングステン合金、白金合金、パラジウム合金等が使用されている。
【0004】
特許文献1には、16%以上50%以下の銅、約35%から約59%のパラジウム、および4%以上の銀で構成されたパラジウム合金(以下、AgPdCu 合金)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第1935897号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、塑性加工性に優れ、析出硬化するAgPdCu 合金は、その硬さに由来する形状安定性と低い比抵抗特性からプローブ材として使用されてきた。しかし、はんだ(例えば、Sn-Bi系はんだ)が使用されている回路接続部に関して使用される場合に、以下の課題が存在していた。すなわち、検査時にプローブピンとはんだが繰り返し接触し、通電することで、そのジュール熱等によって、Snなどのはんだ成分とプローブ材の成分が相互に拡散し、プローブピン先端の消耗が速くなる傾向にあった。そのような場合、突発的又は経時的に接触抵抗が変動し、検査不良が発生するため、接触する先端部のクリーニングや交換が必要になり、検査工程の稼働率を低下させてしまうことが問題であった。
【0007】
そこで、はんだ成分の拡散を抑制する耐はんだ性を有するプローブ材の開発が強く求められている。
【0008】
本発明の目的は、プローブ検査時に検査対象の回路接続部のはんだとプローブ材の成分の拡散を抑制することができるプローブ材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
Pt 40~95mass%、Cu 0.5~50mass%、Ni 3~50mass%からなることを特徴とするプローブ
材を見出し、本発明を完了するに至った。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従うと、プローブ材に求められる硬さ、比抵抗を併せ持つとともに、検査時に検査対象の回路接続部のはんだとプローブ材の成分が拡散することを抑制したプローブ材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、Pt 40~95mass%、Cu 0.5~50mass%、Ni 3~50mass%からなることを特徴とするプローブ材である。
【0012】
Ptは 耐食性が優れているが、40mass%未満の場合、耐食性が不十分となる。
一方、95mass%を超えた場合、強加工による加工硬化でも硬さが300HVに届かず、プローブに要求されている硬さには届いていない。
【0013】
別の態様として、Pt含有量は45~90mass%であることができる。また、別の態様として、Ptの含有量は50~83mass%であることができる。
【0014】
Cuは、Ptに対し、加工性が良好なまま硬さを上げることができる。ただし、Cu量が、0.5mass%未満の場合、硬さが不十分となる。一方、50mass%超の場合、耐食性が低下する。
別の態様として、Cu含有量は9mass%以上であることができる。
【0015】
Niは、耐はんだ性を低下させず、硬さを向上させることができる。
ただしNiが3mass%未満では、加工時の硬さ向上への効果が不十分で、Niが50mass%を超えると冷間での圧延や伸線といった塑性加工が困難となる。
【0016】
別の態様として、Niの含有量は5~40mass%であることができる。また、別の態様として、Niの含有量は10mass%~35mass%であることができる。
【0017】
本発明の合金は、はんだとプローブ材の成分の拡散により、プローブピン先端が消耗する現象を抑えることが重要であり、硬さは既存のAgPdCu合金ほど必要とはされないが、検査回数の増加に伴い、接触面が機械的に潰れることがあるので硬いことが望ましい。200HV以上で使用は可能だが、250HV以上の硬さが要求されており、さらに300HV以上の硬さが望まれている。
硬さは、加工硬化で向上させても良い。
また硬さ以外の特性として、検査時に流す電流によるジュール熱の発生は望まれないため、比抵抗の抑制が求められている。基本的に90μΩ・cm以下で使用可能だが、より低い方が望ましい。
【0018】
本発明の合金において、はんだとプローブ材の成分の拡散が抑制されるのは以下の理由によると推定する。すなわち、プローブ材に添加されたNiが、はんだとプローブピンの接触した界面にSn-Ni等の薄く緻密な金属間化合物層を形成することで、はんだとプローブ材の成分の拡散を抑制する効果を発揮し、プローブピン先端を容易に消耗させることを抑制すると考えられる。
【実施例0019】
本発明の実施例について説明する。
【0020】
先ず、Pt、Cu、Niを表1の組成となるように配合した後、アルゴン雰囲気中でアーク溶解法にて溶解し、各合金インゴットを作製した。実施例及び比較例の合金の組成とそれぞれの特性を表1に示す。
【0021】
上記の各合金インゴットを、圧延、熱処理を繰り返し、圧延率[=((圧延前の厚さ-圧延後の厚さ)/圧延前の厚さ)×100]が80%の板材を作製し、硬さ及び耐はんだ性を評価するための試験片とした。
【0022】
その際、加工性調査として80%の板材が作製できたものを○、作製できなかったものを×と評価した。板材が作製できず加工性が×となった合金組成に対しては、以後の試験を実施していない。
【0023】
作製した各合金の試験片に関して、下記の評価を行い、その結果を表2に示す。
【0024】
硬さは、試験片の断面の中心をマイクロビッカース硬さ試験機で、荷重200gf、保持時間10秒の条件で測定した。そのときの硬さを「加工材硬さ」という。
【0025】
耐はんだ性は以下の通り評価した。Sn-Bi系はんだを試験片(10mm×10mm×厚さ0.5mm)の上に乗せ、N2雰囲気中、250℃、1hの条件で熱処理し、試験片上ではんだを溶融させた。熱処理後、試験片を樹脂に埋め込んで断面を出し、EPMAにてはんだと試験片の界面を垂直方向に線分析を行った。はんだの成分であるSnと、合金の主成分である元素(実施例はPt、比較例1はPd)の線分析結果から、Snおよび主元素が共に存在する層を拡散層とし、その厚さを測定した。
【0026】
測定した拡散層の厚さが薄いほど、耐はんだ性が高いと判断し、拡散層の厚さが100μm未満の合金を◎、100~200μmの合金を〇、200μm以上の合金を×と評価した。評価の結果を表2に示す。
【0027】
比抵抗は、圧延率[=((圧延前の厚さ-圧延後の厚さ)/圧延前の厚さ)×100]が90%まで加工した板材を試験片とした。比抵抗は、室温で各試料の電気抵抗を測定し、式1に従い算出した。
式1:比抵抗=(電気抵抗×断面積)/測定長
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
以上の結果から、実施例1~14は、高い耐はんだ性を有しつつ、80%圧延加工により、300HV以上の硬さ、比抵抗も90μΩ・cm未満となっている。
本発明により作製した合金は、高い耐はんだ性を有しつつ、プローブ材に求められる硬さ、比抵抗を併せ持つことが分かる。よって、本発明によって、耐はんだ性を有するプローブ材として好適な材料を提供することが可能となる。