(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037203
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】燃料電池ユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04746 20160101AFI20240312BHJP
H01M 8/0444 20160101ALI20240312BHJP
H01M 8/04029 20160101ALI20240312BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20240312BHJP
H01M 8/04694 20160101ALI20240312BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/0444
H01M8/04029
H01M8/04014
H01M8/04694
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141838
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】垣見 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】明本 斉
(72)【発明者】
【氏名】富本 尚也
(72)【発明者】
【氏名】立川 克之
(72)【発明者】
【氏名】中村 健
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AB27
5H127AB29
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA39
5H127BA58
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB25
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
5H127DB24
5H127DB44
5H127DC22
5H127DC76
5H127DC99
5H127FF09
(57)【要約】
【課題】燃料電池スタックに供給される空気の酸素濃度が低下し易い環境下において、燃料電池スタックの発電を安定させる。
【解決手段】燃料電池ユニットFCU内の空気を燃料電池スタックFCSに供給するエアコンプレッサACPと、ファンFと、燃料電池ユニットFCUの吸入空気の酸素濃度を検出する酸素濃度検出部OCDと、制御部CNTとを備えて燃料電池ユニットFCUを構成し、制御部CNTは、酸素濃度検出部OCDにより検出される酸素濃度を標準酸素濃度で除算した値と、エアストイキとを乗算した酸素ストイキが目標酸素ストイキより小さい場合に、エアコンプレッサACPの動作を制御することにより燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量を増加させる処理、または、ファンFの動作を制御することにより燃料電池ユニットFCU内を換気させる処理のうち少なくとも1つの処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池ユニットにおいて、
燃料電池スタックと、
前記燃料電池ユニット内の空気を前記燃料電池スタックに供給するエアコンプレッサと、
前記燃料電池ユニット内を換気する換気部と、
前記燃料電池ユニットの吸入空気の酸素濃度を検出する酸素濃度検出部と、
前記エアコンプレッサ及び前記換気部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記燃料電池スタックのエアストイキと、前記酸素濃度検出部により検出される酸素濃度を標準酸素濃度で除算した値とを乗算した値である酸素ストイキが目標酸素ストイキより小さい場合に、前記エアコンプレッサの動作を制御することにより前記燃料電池スタックに供給される空気の流量を増加させる処理、または、前記換気部の動作を制御することにより前記燃料電池ユニット内を換気させる処理のうち少なくとも1つの処理を実行する
ことを特徴とする燃料電池ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池ユニットにおいて、
前記制御部は、前記酸素ストイキが前記目標酸素ストイキより小さい場合で、かつ、前記酸素ストイキを前記目標酸素ストイキまで増加させるために必要である、前記燃料電池スタックに供給される空気の流量が、前記燃料電池スタックに供給される空気の流量の許容範囲の上限値以下である場合に、前記空気の流量を増加させる処理を実行する
ことを特徴とする燃料電池ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池ユニットにおいて、
前記換気部は、前記燃料電池スタックの発熱により温められた冷媒を空気と熱交換させるラジエタの放熱量を上昇させるファンである
ことを特徴とする燃料電池ユニット。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料電池ユニットにおいて、
通知部を備え、
前記制御部は、前記燃料電池ユニット内を換気させる処理を実行した後に、前記酸素濃度検出部により検出される酸素濃度が所定濃度よりも低い場合、前記燃料電池ユニットの外の空気の酸素濃度が低下している旨を前記通知部により前記燃料電池ユニットの外に通知させる
ことを特徴とする燃料電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックを備える燃料電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池ユニットとして、車両や発電機に備えられているものがある。
【0003】
ところで、給気口が車両の前面に設けられていない場合や車両の速度が比較的遅い場合または燃料電池ユニットが定置式発電機に備えられている場合では、走行風が車両や発電機に入らないため、燃料電池ユニット内に外気を積極的に取り込むことができず、燃料電池ユニット内の空気の酸素濃度が低下し、燃料電池スタックの電圧が低下するおそれがある。
【0004】
また、発電によって酸素濃度が低下した空気が燃料電池スタックから燃料電池ユニットの外に排出されず燃料電池ユニット内に排出される場合では、その空気が再びエアコンプレッサから燃料電池スタックに供給され、燃料電池スタックの電圧が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、例えば、燃料電池スタックに供給される空気の流量が、燃料電池ユニット内の空気の酸素濃度を用いて算出される目標流量と一致するように、燃料電池スタックに空気を供給することが考えられる。関連する技術として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一側面に係る目的は、燃料電池スタックに供給される空気の酸素濃度が低下し易い環境下において、燃料電池スタックの発電を安定させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一つの形態である燃料電池ユニットは、燃料電池スタックと、前記燃料電池ユニット内の空気を前記燃料電池スタックに供給するエアコンプレッサと、前記燃料電池ユニット内を換気する換気部と、前記燃料電池ユニットの吸入空気の酸素濃度を検出する酸素濃度検出部と、前記エアコンプレッサ及び前記換気部の動作を制御する制御部とを備える。
【0009】
前記制御部は、前記燃料電池スタックのエアストイキと、前記酸素濃度検出部により検出される酸素濃度を標準酸素濃度で除算した値とを乗算した値である酸素ストイキが目標酸素ストイキより小さい場合に、前記エアコンプレッサの動作を制御することにより前記燃料電池スタックに供給される空気の流量を増加させる処理、または、前記換気部の動作を制御することにより前記燃料電池ユニット内を換気させる処理のうち少なくとも1つの処理を実行する。
【0010】
これにより、酸素ストイキが目標酸素ストイキより小さい場合、燃料電池スタックに供給される空気の流量を増加させる処理、及び、燃料電池ユニット内を換気させる処理の少なくとも1つの処理を実行することができるため、燃料電池スタックに供給される空気の酸素濃度を上昇させることができ、燃料電池スタックの電圧が低下することを抑制することができる。
【0011】
また、前記制御部は、前記酸素ストイキが前記目標酸素ストイキより小さい場合で、かつ、前記酸素ストイキを前記目標酸素ストイキまで増加させるために必要である、前記燃料電池スタックに供給される空気の流量が、前記燃料電池スタックに供給される空気の流量の許容範囲の上限値以下である場合に、前記空気の流量を増加させる処理を実行するように構成してもよい。
【0012】
これにより、酸素ストイキが目標酸素ストイキより小さい場合で、かつ、酸素ストイキを目標酸素ストイキまで増加させるために必要である、燃料電池スタックに供給される空気の流量が、上限値より大きい場合、燃料電池スタックに供給される空気の流量を増加させないようにすることができるため、エアコンプレッサにかかる負荷を低減させることができるとともに、燃料電池スタック内の乾燥を抑制することができる。
【0013】
また、前記換気部は、前記燃料電池スタックの発熱により温められた冷媒を空気と熱交換させるラジエタの放熱量を上昇させるファンとしてもよい。
【0014】
これにより、ラジエタの放熱量を上昇させるファンが予め燃料電池ユニットに備えられている場合、そのファンを換気部として流用することができるため、燃料電池ユニットの製造コストの増大を抑制することができる。
【0015】
また、前記燃料電池ユニットは、通知部を備え、前記制御部は、前記燃料電池ユニット内を換気させる処理を実行した後に、前記酸素濃度検出部により検出される酸素濃度が所定濃度よりも低い場合、前記燃料電池ユニットの外の空気の酸素濃度が低下している旨を前記通知部により前記燃料電池ユニットの外に通知させるように構成してもよい。
【0016】
これにより、燃料電池ユニットの周囲の空気の酸素濃度が低下しているときにその旨を燃料電池ユニットの外に通知することができるため、燃料電池ユニットを備える車両や定置式発電機の近くにいるユーザに燃料電池ユニットの周囲の空気の酸素濃度が低下している旨を知らせることができる。
【0017】
また、燃料電池ユニット内を換気させる処理を実行した後に酸素濃度が所定濃度より小さいか否かを判断する構成であるため、酸素濃度検出部により検出される酸素濃度に含まれるノイズの影響により酸素濃度が所定濃度より小さいと誤って判断されることを抑制することができ、燃料電池ユニットの外に誤った通知が行われることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、燃料電池スタックに供給される空気の酸素濃度が比較的低い環境下において、燃料電池スタックの発電を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の燃料電池ユニットの適用例を示す図である。
【
図2】実施形態の燃料電池ユニットの他の適用例を示す図である。
【
図3】実施例1における制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】実施例2における制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0021】
図1は、実施形態の燃料電池ユニットの適用例を示す図である。
【0022】
図1に示す燃料電池ユニットの適用例では、燃料電池ユニットFCUが車両Veに備えられている。例えば、車両Veは、フォークリフトなどの産業車両とする。また、車両Veには、走行用モータを駆動するインバータなどの負荷Loが搭載され、燃料電池ユニットFCUから負荷Loに電力が供給されるものとする。また、車両Veは、給気口(不図示)が車両Veの前面に設けられていないため、または、給気口が車両Veの前面に設けられていたとしても車両Veの走行速度が比較的遅いため、走行風によって燃料電池ユニットFCU内の換気を行うことが難しいものとする。
【0023】
また、
図2は、実施形態の燃料電池ユニットの他の適用例を示す図である。なお、
図2に示す燃料電池ユニットFCUは、
図1に示す燃料電池ユニットFCUと同様とする。
【0024】
図2に示す燃料電池ユニットFCUの適用例では、燃料電池ユニットFCUが定置式発電機Sgに備えられている。例えば、燃料電池ユニットFCUは、商用電源や太陽光発電機などと協働して定置式発電機Sgの外に設けられる負荷Loに電力を供給する。また、定置式発電機Sgは、一定の場所に設置され、その場所から移動しない構成であるため、走行風によって燃料電池ユニットFCU内の換気を行うことが難しいものとする。また、さらに、窓が少ない建物や換気システムを備えていない部屋の中に定置式発電機Sgが設置されている場合では、燃料電池ユニットFCU内の換気を行うことがさらに難しいものとする。
【0025】
すなわち、
図1または
図2に示す燃料電池ユニットFCUは、燃料電池スタックFCSに供給される空気の酸素濃度が比較的低い環境下にあるものとする。
【0026】
また、
図1または
図2に示す燃料電池ユニットFCUは、燃料電池スタックFCSと、燃料タンクTkと、主止弁SVと、インジェクタINJと、気液分離機GLSと、水素循環ポンプHPと、排気排水弁EDVと、希釈器DILと、エアコンプレッサACPと、エア調圧弁ARVと、エアシャット弁ASVとを備える。
【0027】
また、
図1または
図2に示す燃料電池ユニットFCUは、ラジエタRと、ファンF(換気部)と、ウォータポンプWPと、インタークーラICと、DCDCコンバータCNVと、蓄電装置Bと、電圧センサSvbと、電流センサSibと、電圧センサSvfと、電流センサSifと、酸素濃度検出部OCDと、記憶部STRと、制御部CNTとを備える。
【0028】
燃料電池スタックFCSは、複数の燃料電池セルを積層させて構成される燃料電池であり、水素ガスに含まれる水素と空気に含まれる酸素との電気化学反応により電気を発生させる。一般に、燃料電池セルの電圧は、論理上の起電力から抵抗過電圧、活性化過電圧、及び濃度過電圧の3種類の過電圧を差し引いた電圧になる。そのため、抵抗過電圧、活性化過電圧、及び濃度過電圧のうちの少なくとも1つの過電圧が増加すると、燃料電池スタックFCSの電圧が低下してしまう。なお、抵抗過電圧とは、燃料電池セル内の電子やプラトンの移動し難さに由来する電圧である。活性化過電圧とは、燃料電池セルのアノードでの水素酸化反応や燃料電池セルのカソードでの酸素還元反応のし難さに由来する電圧である。濃度過電圧とは、燃料電池セル内における水素ガスや空気の拡散のし難さに由来する電圧である。
【0029】
燃料タンクTkは、水素ガスの貯蔵容器である。燃料タンクTkに貯蔵された水素ガスは主止弁SV及びインジェクタINJを介して燃料電池スタックFCSに供給される。
【0030】
主止弁SVは、電磁弁などにより構成され、水素ガスをインジェクタINJに供給する。また、主止弁SVは、制御部CNTの動作制御によりインジェクタINJへの水素ガスの供給を遮断する。
【0031】
インジェクタINJは、燃料電池スタックFCSに供給される水素ガスの圧力が一定になるように水素ガスの流量を調整する。なお、燃料電池ユニットFCUが車両Veに備えられている場合、燃料タンクTk、主止弁SV、及びインジェクタINJは車両Veの内部に備えられる。燃料電池ユニットFCUが定置式発電機Sgに備えられている場合、燃料タンクTk、主止弁SV、及びインジェクタINJは定置式発電機Sgの外部に備えられる。
【0032】
気液分離機GLSは、燃料電池スタックFCSから排出される水素ガスと液水とを分離する。
【0033】
水素循環ポンプHPは、気液分離機GLSにより分離された水素ガスを燃料電池スタックFCSに再度供給する。
【0034】
排気排水弁EDVは、気液分離機GLSにより分離された液水を希釈器DILに送る。希釈器DILに送られた液水は、希釈器DIL内の不図示のタンクに溜まる。また、燃料電池スタックFCSからエア調圧弁ARVを介して排出された空気は、排気排水弁EDVから排出された水素ガスと希釈器DILで合流し、その空気は希釈器DILから燃料電池ユニットFCU内に排出される。このように、希釈器DILから排出される空気は、燃料電池スタックFCSの発電により酸素が消費されているため、燃料電池ユニットFCU(車両Veや定置式発電機Sg)の外の空気に比べて、酸素濃度が低下しているものとする。
【0035】
エアコンプレッサACPは、燃料電池ユニットFCU内の空気を圧縮し、その圧縮した空気をインタークーラIC及びエアシャット弁ASVを介して燃料電池スタックFCSに供給する。なお、エアコンプレッサACPの負荷(モータの回転数)が増加するほど、エアコンプレッサACPから燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量が増加するものとする。
【0036】
インタークーラICは、エアコンプレッサACPの圧縮により高温になった空気をインタークーラICに流れる冷却水などの冷媒と熱交換させる。
【0037】
エアシャット弁ASVは、制御部CNTの動作制御により燃料電池スタックFCSへの空気の供給を遮断する。
【0038】
エア調圧弁ARVは、制御部CNTの動作制御により燃料電池スタックFCSに供給される空気の圧力を調整する。
【0039】
ラジエタRは、燃料電池スタックFCSが発する熱により温められた冷媒を燃料電池ユニットFCU内の空気と熱交換させる。
【0040】
ファンFは、ラジエタRの放熱量を上昇させる。すなわち、ファンFが駆動することによって生じる風がラジエタRに当たることでラジエタRの温度を下げる。また、ファンFは、燃料電池ユニットFCUの外の空気を燃料電池ユニットFCU内に取り込むとともに燃料電池ユニットFCU内の空気を燃料電池ユニットFCUの外に排出する換気部、すなわち、燃料電池ユニットFCU内を換気する換気部として機能する。なお、換気部は、蓄電装置Bなどの補機を冷却するためのファン(不図示)などを採用してもよく、ファンFに限定されない。換気部としてファンFを採用する場合では、燃料電池ユニットFCUに換気部を新たに備える必要がなく、ファンFを換気部として流用することができるため、燃料電池ユニットFCUの製造コストの増大を抑制することができる。
【0041】
ウォータポンプWPは、ラジエタRにより冷却された冷媒をインタークーラICを介して燃料電池スタックFCSに供給する。
【0042】
DCDCコンバータCNVは、燃料電池スタックFCSの後段に接続され、燃料電池スタックFCSから出力される電圧を所定の電圧に変換する。また、DCDCコンバータCNVから出力される電力は、負荷Loや水素循環ポンプHP、エアコンプレッサACP、及びウォータポンプWPなどの補機に供給される。
【0043】
蓄電装置Bは、リチウムイオンキャパシタなどにより構成され、DCDCコンバータCNVと負荷Loとの間に接続されている。
【0044】
DCDCコンバータCNVから出力される電力と、補機に供給される電力の合計値との差に相当する供給電力が、負荷Loから要求される要求電力より大きい場合、その供給電力のうちの要求電力に相当する電力が負荷Loに供給されるとともに残りの電力が蓄電装置Bに供給される。DCDCコンバータCNVから蓄電装置Bに電力が供給されると、蓄電装置Bが充電され蓄電装置Bの充電量Chが増加する。また、DCDCコンバータCNVから出力される電力と、補機に供給される電力の合計値との差に相当する供給電力が、負荷Loから要求される要求電力より小さい場合、その供給電力が負荷Loに供給されるとともに足りない分の電力が蓄電装置Bから負荷Loに供給される。蓄電装置Bから負荷Loに電力が供給されると、蓄電装置Bが放電され蓄電装置Bの充電量Chが減少する。なお、充電量Chとは、蓄電装置Bの充電率[%](蓄電装置Bの満充電容量に対する残容量の割合)、または、蓄電装置Bに電流が流れていないときの蓄電装置Bの電圧Vb[V]、または、蓄電装置Bに電流が流れているときの蓄電装置Bの電圧Vb[V]、または、蓄電装置Bに流れる電流Ibの積算値[Ah]などとする。
【0045】
電圧センサSvbは、複数の分圧抵抗などにより構成され、蓄電装置Bの電圧Vbを検出し、その検出した電圧Vbを制御部CNTに送る。
【0046】
電流センサSibは、シャント抵抗やホール素子などにより構成され、蓄電装置Bに流れる電流Ibを検出し、その検出した電流Ibを制御部CNTに送る。
【0047】
電圧センサSvfは、複数の分圧抵抗などにより構成され、燃料電池スタックFCS全体の電圧Vfを検出し、その検出した電圧Vfを制御部CNTに送る。
【0048】
電流センサSifは、シャント抵抗やホール素子などにより構成され、燃料電池スタックFCSからDCDCコンバータCNVに流れる電流Ifを検出し、その検出した電流Ifを制御部CNTに送る。
【0049】
酸素濃度検出部OCDは、例えば、酸素濃度計であり、燃料電池ユニットFCUの吸入空気の酸素濃度OCを検出し、その検出した酸素濃度OCを制御部CNTに送る。
【0050】
記憶部STRは、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などにより構成される。なお、記憶部STRは、後述する目標酸素ストイキや上限値などを記憶している。
【0051】
制御部CNTは、マイクロコンピュータなどにより構成され、燃料電池スタックFCSの発電制御時、蓄電装置Bの充電量Chに応じて目標発電電力Ptを段階的に変化させる。
【0052】
また、制御部CNTは、燃料電池スタックFCSの発電制御時、燃料電池スタックFCSの発電電力P(電流Ifと電圧Vfの乗算値)が目標発電電力Ptに追従するように、補機の動作を制御する。例えば、制御部CNTは、燃料電池スタックFCSを発電させているとき、PI(Proportional-Integral)制御により、燃料電池スタックFCSの発電電力Pと目標発電電力Ptとの差がゼロになるように、補機の動作を制御する。
【0053】
また、制御部CNTは、酸素ストイキ低下回避処理を一定周期毎に実行する。例えば、制御部CNTは、酸素ストイキ低下回避処理の実行時、酸素ストイキが目標酸素ストイキより小さい場合に、エアコンプレッサACPの動作を制御することにより燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量を増加させる処理、または、ファンFの動作を制御することにより燃料電池ユニットFCU内を換気させる処理のうち少なくとも1つの処理を実行する。燃料電池ユニットFCU内の空気の酸素濃度OCが標準酸素濃度OCsと等しいまたは略等しい場合において、燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量を増加させると、燃料電池スタックFCSに供給される空気の酸素濃度が上昇し、酸素ストイキが上昇するものとする。また、燃料電池ユニットFCU(車両Veや定置式発電機Sg)の外の空気の酸素濃度が標準酸素濃度OCsと等しいまたは略等しい場合において、燃料電池ユニットFCU内を換気させると、燃料電池スタックFCSに供給される空気の酸素濃度が上昇し、酸素ストイキが上昇するものとする。なお、目標酸素ストイキは、燃料電池セルの特性の違いに応じて異なる値であり、例えば、1.0~1.3とする。また、目標酸素ストイキは、燃料電池スタックFCSの発電電力Pが目標発電電力Ptと等しくなるときに酸素濃度検出部OCDにより検出される酸素濃度OCを用いて算出される酸素ストイキとする。
【0054】
例えば、制御部CNTは、燃料電池スタックFCSのエアストイキと、酸素濃度検出部OCDにより検出される酸素濃度OCを標準酸素濃度OCsで除算した値とを乗算した値を、酸素ストイキとする。すなわち、制御部CNTは、下記式1を計算した結果を酸素ストイキとする。なお、エアストイキや標準酸素濃度OCsは、記憶部STRに予め記憶されているものとする。また、エアストイキとは、燃料電池スタックFCSの発電電力Pが目標発電電力Ptと等しくなるときにエアコンプレッサACPから燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量に対する、エアコンプレッサACPから燃料電池スタックFCSに供給される空気の実際の流量の割合とする。また、標準酸素濃度OCsとは、燃料電池スタックFCS内の換気が十分に行われているときに酸素濃度検出部OCDにより検出される酸素濃度OCとする。また、酸素ストイキとは、燃料電池スタックFCSに供給される空気の酸素濃度の指標とする。
【0055】
酸素ストイキ=エアストイキ×酸素濃度OC÷標準酸素濃度OCs ・・・式1
【0056】
<実施例1>
図3は、実施例1における制御部CNTの動作の一例を示すフローチャートである。
【0057】
まず、制御部CNTは、酸素ストイキ低下回避処理を開始すると、酸素濃度検出部OCDにより検出される酸素濃度OCを取得し(ステップS1)、ステップS1で取得した酸素濃度OCを用いて酸素ストイキを算出する(ステップS2)。
【0058】
次に、制御部CNTは、ステップS2で算出した酸素ストイキが目標酸素ストイキ以上である場合(ステップS3:No)、今回の酸素ストイキ低下回避処理を終了する。
【0059】
一方、制御部CNTは、ステップS2で算出した酸素ストイキが目標酸素ストイキより小さい場合(ステップS3:Yes)、必要エア流量を算出する(ステップS4)。なお、必要エア流量とは、酸素ストイキを目標酸素ストイキまで増加させるために必要である、燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量とする。例えば、エアストイキを1.5とし、目標酸素ストイキを1.2とし、酸素濃度検出部OCDにより検出される酸素濃度OCを13[%]とし、標準酸素濃度OCsを21[%]とし、エアストイキが1であるときに燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量を100[NL/min]とする場合、制御部CNTは、まず、1.5×13[%]÷21[%]を計算することにより酸素ストイキとして0.92を算出し、次に、1.5×1.2÷0.92を計算することにより新たなエアストイキとして1.95を算出し、そして、1.95×100[NL/min]を計算することにより必要エア流量として195[NL/min]を算出する。
【0060】
また、制御部CNTは、ステップS4で算出した必要エア流量が、燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量の許容範囲の上限値以下である場合(ステップS5:Yes)、エアコンプレッサACPの動作を制御することにより燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量を増加させて(ステップS6)、ステップS8の処理に進む。例えば、制御部CNTは、燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量が、ステップS4で算出した必要エア流量に近づくように、エアコンプレッサACPの動作を制御する。このように、燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量を増加させることで、エアストイキが増加するため、酸素ストイキの増加を期待することができる。なお、上限値は、実験やシミュレーションなどを行うことにより、エアコンプレッサACPの騒音レベルや燃料電池スタックFCS内の空気の流路の乾燥度合いを用いて予め求められる値とする。
【0061】
一方、制御部CNTは、ステップS4で算出した必要エア流量が上限値より大きい場合(ステップS5:No)、燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量を変化させず(ステップS7)、ステップS8の処理に進む。
【0062】
次に、ステップS8において、制御部CNTは、酸素濃度検出部OCDにより検出される酸素濃度OCを取得し、ステップS8で取得した酸素濃度OCを用いて酸素ストイキを算出する(ステップS9)。
【0063】
次に、制御部CNTは、ステップS9で算出した酸素ストイキが目標酸素ストイキ以上である場合(ステップS10:No)、今回の酸素ストイキ低下回避処理を終了する。
【0064】
一方、制御部CNTは、ステップS9で算出した酸素ストイキが目標酸素ストイキより小さい場合(ステップS10:Yes)、ファンFの動作制御することにより燃料電池ユニット内を換気させて(ステップS11)、今回の酸素ストイキ低下回避処理を終了する。なお、ステップS11において、すでにファンFが駆動している場合、制御部CNTは、目標酸素ストイキと酸素ストイキとの差が大きいほど、ファンFの回転数を増加させるように構成してもよい。このように、ファンFの動作を制御して燃料電池ユニットFCU内の換気を行うことで、燃料電池ユニットFCUの外の空気を燃料電池ユニットFCU内に取り込むとともに燃料電池ユニットFCU内の空気を燃料電池ユニットFCUの外に排出することができるため、エアコンプレッサACPに吸入される空気の酸素濃度を上昇させることができ、燃料電池スタックFCSに供給される空気の酸素濃度を上昇させることができ、酸素ストイキの増加を期待することができる。
【0065】
実施例1によれば、酸素ストイキ低下回避処理が一定周期毎に繰り返し実行されることで、酸素ストイキを目標酸素ストイキに近づけることができる。
【0066】
また、実施例1によれば、酸素ストイキが目標酸素ストイキより小さい場合で、かつ、必要エア流量が上限値より大きい場合、燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量を増加させないようにすることができるため、エアコンプレッサACPにかかる負荷を低減させることができるとともに、燃料電池スタックFCS内の乾燥を抑制することができる。
【0067】
<実施例2>
図4は、実施例2における制御部CNTの動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図4に示すフローチャートのステップS1~ステップS11は、
図3に示すフローチャートのステップS1~ステップS11と同様であるため、それらの説明を省略する。また、実施例2において、
図1または
図2に示す燃料電池ユニットFCUには、警告灯やブザーなどにより構成される通知部(不図示)が備えられているものとする。
【0068】
ステップS11において、制御部CNTは、燃料電池ユニットFCU内を換気させた後、酸素濃度検出部OCDにより検出される酸素濃度OCを取得し(ステップS12)、ステップS12で取得した酸素濃度OCを用いて予め定めている酸素濃度の閾値と比較する(ステップS13)。閾値は、警告を行うために用いられる所定濃度とする。
【0069】
次に、制御部CNTは、ステップS12で取得した酸素濃度OCが閾値以上である場合(ステップS13:No)、今回の酸素ストイキ低下回避処理を終了する。
【0070】
一方、制御部CNTは、ステップS12で取得した酸素濃度OCが閾値より小さい場合(ステップS13:Yes)、燃料電池ユニットFCUの外の空気の酸素濃度が少なくとも標準酸素濃度より低下している旨を通知部により燃料電池ユニットFCU(車両Veや定置式発電機Sg)の外に通知させて(ステップS14)、今回の酸素ストイキ低下回避処理を終了する。
【0071】
このように、実施例2によれば、燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量を増加させたり、燃料電池ユニットFCU内を換気させたりしたにもかかわらず、酸素濃度OCが閾値以上にならない場合、燃料電池ユニットFCUの外の空気の酸素濃度が低下している旨を燃料電池ユニットFCUの外に通知させる構成であるため、燃料電池ユニットFCUを備える車両Veや定置式発電機Sgの近くにいるユーザに燃料電池ユニットFCUの周囲の空気の酸素濃度が低下している旨を知らせることができる。
【0072】
また、実施例2によれば、燃料電池ユニットFCU内を換気させる処理を実行した後に取得した酸素濃度OCが閾値より小さいか否かを判断する構成であるため、酸素濃度検出部OCDにより検出される酸素濃度OCに含まれるノイズの影響により酸素濃度OCが閾値より小さいと誤って判断されることを抑制することができ、燃料電池ユニットFCUの外に誤った通知が行われることを抑制することができる。
【0073】
また、
図3または
図4に示すフローチャートでは、酸素ストイキが目標酸素ストイキより小さい場合、燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量を増加させた後、燃料電池ユニットFCU内を換気させる構成であるが、燃料電池ユニットFCU内を換気させた後、燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量を増加させるように構成してもよい。すなわち、ステップS8~S11を実行した後、ステップS1~S7を実行するように構成してもよい。なお、燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量を増加させる処理、及び、燃料電池ユニットFCU内を換気させる処理の優先順位は、制御部CNTによるエアコンプレッサACPまたはファンFの制御開始からエアコンプレッサACPまたはファンFの動作開始までにかかる時間やエアコンプレッサACPまたはファンFの動作に伴う酸素ストイキの単位時間あたりの増加量により決めてもよい。例えば、制御部CNTによるエアコンプレッサACPの制御開始からエアコンプレッサACPの動作開始までにかかる時間が、制御部CNTによるファンFの制御開始からファンFの動作開始までにかかる時間より短い場合、燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量を増加させる処理を、燃料電池ユニットFCU内を換気させる処理より優先させる。また、ファンFの動作に伴う酸素ストイキの単位時間あたりの増加量が、エアコンプレッサACPの動作に伴う酸素ストイキの単位時間あたりの増加量より大きい場合、燃料電池ユニットFCU内を換気させる処理を、燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量を増加させる処理より優先させる。
【0074】
また、
図3または
図4に示すフローチャートでは、酸素ストイキが目標酸素ストイキより小さい状態が継続する場合、燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量を増加させる処理、及び、燃料電池ユニットFCU内を換気させる処理の2つの処理を実行する構成であるが、酸素ストイキが目標酸素ストイキより小さい場合、燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量を増加させる処理、及び、燃料電池ユニットFCU内を換気させる処理の2つの処理の一方の処理を実行するように構成してもよい。
【0075】
ところで、給気口が前面に設けられていない車両Veや走行速度が比較的遅い車両Veに燃料電池ユニットFCUが備えられている場合、または、定置式発電機Sgに燃料電池ユニットFCUが備えられている場合では、燃料電池ユニットFCU内に外気を積極的に取り入れることができず、エアコンプレッサACPから燃料電池スタックFCSに供給される空気の酸素濃度が比較的低くなるため、濃度過電圧が増加し燃料電池スタックFCSの電圧Vfが低下するおそれがある。
【0076】
また、ラジエタRを通る冷媒の温度が比較的低くファンFを駆動させる必要が無い場合、燃料電池ユニットFCU内に外気を積極的に取り入れることができず、エアコンプレッサACPから燃料電池スタックFCSに供給される空気の酸素濃度が比較的低くなるため、濃度過電圧が増加し燃料電池スタックFCSの電圧Vfが低下するおそれがある。
【0077】
また、負荷Loから燃料電池ユニットFCUに要求される電力が比較的大きい場合、濃度過電圧が増加し燃料電池スタックFCSの電圧Vfが低下するおそれがある。
【0078】
また、一般に、大気中の酸素濃度(車両Veの外の空気の酸素濃度や定置式発電機Sgを覆う建物の外の空気の酸素濃度)は約21[%]であるが、燃料電池スタックFCS内の空気に含まれる酸素は発電によって消費されるため、燃料電池スタックFCSから排出される空気の酸素濃度は大気中の酸素濃度より低い。そのため、燃料電池スタックFCSから排出される空気をエアコンプレッサACPが吸い込んだ場合、エアコンプレッサACPから燃料電池スタックFCSに供給される空気の酸素濃度が比較的低くなるため、濃度過電圧が増加し燃料電池スタックFCSの電圧Vfが低下するおそれがある。
【0079】
そして、これらの条件が重なると、燃料電池スタックFCSの電圧Vfが低下する可能性がさらに高くなる。
【0080】
そこで、実施形態の燃料電池ユニットFCUでは、燃料電池スタックFCSに供給される空気の酸素濃度の指標である酸素ストイキが目標酸素ストイキより小さい場合に、エアコンプレッサACPから燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量を増加させる処理、または、燃料電池ユニットFCU内を換気させる処理のうち少なくとも1つの処理を実行する構成である。燃料電池スタックFCSに供給される空気の流量を増加させる処理、または、燃料電池ユニットFCU内を換気させる処理が実行されると、燃料電池スタックFCSに供給される空気の酸素濃度を上昇させることができる。これにより、酸素ストイキが目標酸素ストイキより小さい場合、燃料電池スタックに供給される空気の酸素濃度を上昇させることができ、燃料電池スタックの電圧が低下することを抑制することができる。すなわち、実施形態の燃料電池ユニットFCUによれば、燃料電池スタックFCSに供給される空気の酸素濃度が低下し易い環境下において、燃料電池スタックFCSの発電を安定させることができる。
【0081】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
FCU 燃料電池ユニット
STR 記憶部
CNT 制御部
Ve 車両
Lo 負荷
Sg 定置式発電機
FCS 燃料電池スタック
Tk 燃料タンク
SV 主止弁
INJ インジェクタ
GLS 気液分離機
HP 循環ポンプ
EDV 排気排水弁
DIL 希釈器
ACP エアコンプレッサ
ARV エア調圧弁
ASV エアシャット弁
R ラジエタ
F ファン
WP ウォータポンプ
IC インタークーラ
CNV DCDCコンバータ
B 蓄電装置
Svf 電圧センサ
Sif 電流センサ
Svb 電圧センサ
Sib 電流センサ
OCD 酸素濃度検出部