(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037206
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】塗装処理装置
(51)【国際特許分類】
B05B 13/02 20060101AFI20240312BHJP
B05B 16/20 20180101ALI20240312BHJP
B05B 16/60 20180101ALI20240312BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20240312BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B05B13/02
B05B16/20
B05B16/60
B05B12/00 A
B25J13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141842
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 智英
【テーマコード(参考)】
3C707
4D073
4F035
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS13
3C707BS09
3C707DS01
3C707JS02
3C707NS02
4D073AA01
4D073BB01
4D073BB03
4D073CA20
4D073CB02
4D073DD03
4D073DD09
4D073DD10
4D073DD25
4D073DD26
4F035AA03
4F035BA03
4F035BC03
4F035CA02
4F035CA05
4F035CB01
4F035CB16
4F035CB26
4F035CB29
4F035CC01
4F035CC04
(57)【要約】
【課題】 塗装品質と省エネ性能を両立できる塗装処理装置を提供する。
【解決手段】 塗装処理装置1は、塗装ブース10と、塗装ブース10内に設けられワークWを塗装位置P2と退避位置P1,P3との間で搬送可能に構成された搬送用ロボット20と、搬送用ロボット20によって塗装位置P2に搬送されたワークWに向けて塗料Nを噴射する塗装機40と、塗装ブース10の天井部11から塗装処理空間13aに空調風Aを下向きに供給する給気部としての給気室12と、を備え、退避位置P1,P3は、塗装位置P2よりも高所であり且つ塗装位置P2から側方に外れた位置とされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装ブースと、
上記塗装ブース内に設けられワークを塗装位置と退避位置との間で搬送可能に構成された搬送用ロボットと、
上記搬送用ロボットによって上記塗装位置に搬送された上記ワークに向けて塗料を噴射する塗装機と、
上記塗装ブースの天井部から塗装処理空間に空調風を下向きに供給する給気部と、
を備え、
上記退避位置は、上記塗装位置よりも高所であり且つ上記塗装位置から側方に外れた位置とされている、塗装処理装置。
【請求項2】
上記塗装機を上方から保持する塗装用ロボットを備え、
上記搬送用ロボットは、上記ワークを下方から支持した状態で上記退避位置と上記塗装位置との間で搬送するように構成されている、請求項1に記載の塗装処理装置。
【請求項3】
上記退避位置として、上記ワークが上記塗装位置に搬送される前の塗装前位置と、上記ワークが上記塗装位置で塗装された後に搬送される塗装後位置と、が設定されており、
上記ワークを上記塗装前位置と上記塗装後位置のそれぞれの位置で支持するように水平方向に延びるコンベアレールを備える、請求項1または2に記載の塗装処理装置。
【請求項4】
上記コンベアレールが上記塗装位置よりも高所に配置されている、請求項3に記載の塗装処理装置。
【請求項5】
上記搬送用ロボットの本体部が上記コンベアレールの直下に設けられている、請求項3に記載の塗装処理装置。
【請求項6】
上記給気部を第1給気部としたとき、上記第1給気部に加えて、上記塗装ブースの側壁部に設けられた第2給気部を備え、上記第2給気部は、上記塗装処理空間に空調風を横向きに供給して上記本体部及び上記コンベアレールの側方から上記塗装位置に向けて流すように構成されている、請求項5に記載の塗装処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、自動車の車体をワークとして塗装するための塗装処理装置が開示されている。この塗装処理装置は、塗装ブース内に設けられたロボットと、空調装置と、を備えている。ロボットは、多くの関節を有する多関節ロボットであり、その先端部にワークを保持して位置および姿勢を変更したりワークを塗装位置と退避位置との間で搬送したりできるように構成されている。空調装置は、塗装ブースの天井部に設けられており、温度および湿度を調整した空調風を塗装ブース内に供給するように構成されている。このような空調装置によれば、塗装ブース内が塗装作業に適した空調条件に制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、塗装ブース内の空調に要するエネルギー費用は、塗装ブースが大型になるほどに増大する。すなわち、塗装ブースの大きさが増えるにつれて空調風の使用量が増加する。そこで、この種の塗装処理装置の省エネ性能を向上させるためには、塗装ブースを小型化するのが好ましい。
【0005】
ところが、塗装ブースを小型化すると、塗装位置と退避位置との間の側方距離が小さくなり、塗装位置で飛散した塗料ダストが退避位置まで到達することが起こり得る。この場合、退避位置に配置されたワーク(すなわち、塗装前や塗装後のワーク)に飛散した塗料ダストが付着する現象が生じる。このような現象は、一般的に「塗料かぶり」と称される。
【0006】
例えば、塗装前のワークに塗料ダストが付着すると、この塗料ダストの色に塗装時の塗料の色が混じることになる。また、塗装後のワークに塗料ダストが付着すると、この塗料ダストがワークの表面に塗料ブツを形成することになる。したがって、塗装ブースを小型化すると、一方で塗装品質が低下するという問題が生じ得る。かといって、塗料ダストがワークに到達するのを抑制するように塗装位置から退避位置を水平方向に大幅に離そうとすれば、それに伴って塗装ブースを大型になるため、本来の目的である、塗装処理装置の所望の省エネ性能を実現するのが難しい。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、塗装品質と省エネ性能を両立できる塗装処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
塗装ブースと、
上記塗装ブース内に設けられワークを塗装位置と退避位置との間で搬送可能に構成された搬送用ロボットと、
上記搬送用ロボットによって上記塗装位置に搬送された上記ワークに向けて塗料を噴射する塗装機と、
上記塗装ブースの天井部から塗装処理空間に空調風を下向きに供給する給気部と、
を備え、
上記退避位置は、上記塗装位置よりも高所であり且つ上記塗装位置から側方に外れた位置とされている、塗装処理装置、
にある。
【発明の効果】
【0009】
上述の態様の塗装処理装置において、ワークは塗装ブース内に設けられた搬送用ロボットによって塗装位置と退避位置との間で搬送される。このワークは搬送用ロボットによって塗装位置に搬送された状態で塗装機から噴射される塗料で塗装される。一方で、給気部から塗装処理空間に空調風が下向きに供給される。このため、塗装位置で塗装機から噴射された後にワークに塗着せずにその周辺に飛散した塗料ダストは、塗装ブース内の塗装処理空間を下向きの空調風の流れにしたがって流下する。
【0010】
本態様では、ワークの退避位置を、その塗装位置よりも高所であり且つ塗装位置から側方に外れた位置とすることが特徴とされている。これにより、塗装位置で生じた塗料ダストは、退避位置が塗装位置よりも高所であることに加えて、空調風の影響で塗装位置から流下することが要因で、塗装位置から退避位置に到達することが妨げられる。したがって、塗料ダストが退避位置に配置されているワークに付着して塗装品質が低下するのを防ぐことができる。
【0011】
また、退避位置を塗装位置よりも高所に設定すれば、塗装品質が影響されにくくなるため、退避位置と塗装位置との間の側方距離を小さく抑えることができる。すなわち、退避位置と塗装位置を水平方向に極力近づけることができる。その結果、塗装ブースを小型化することができ、空調風の使用量を減らすことによって省エネ性能を向上させることが可能になる。
【0012】
以上のごとく、上述の態様によれば、塗装品質と省エネ性能を両立できる塗装処理装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態1の塗装処理装置の内部構造を側方から示す図。
【
図3】実施形態2の塗装処理装置の内部構造を側方から示す図。
【
図4】実施形態3の塗装処理装置の内部構造を側方から示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0015】
上述の態様の塗装処理装置は、上記塗装機を上方から保持する塗装用ロボットを備え、上記搬送用ロボットは、上記ワークを下方から支持した状態で上記退避位置と上記塗装位置との間で搬送するように構成されているのが好ましい。
【0016】
この塗装処理装置によれば、搬送用ロボットがワークを下方から支持する一方で、塗装用ロボットが塗装機を上方から保持する構造であるため、搬送用ロボットと塗装用ロボットの一方が他方の動作を邪魔するのを防ぐことができる。
【0017】
上述の態様の塗装処理装置では、上記退避位置として、上記ワークが上記塗装位置に搬送される前の塗装前位置と、上記ワークが上記塗装位置で塗装された後に搬送される塗装後位置と、が設定されており、この塗装処理装置は、上記ワークを上記塗装前位置と上記塗装後位置のそれぞれの位置で支持するように水平方向に延びるコンベアレールを備えるのが好ましい。
【0018】
この塗装処理装置によれば、塗装位置で生じた塗料ダストがコンベアレールによって塗装前位置まで搬入されたワークに付着して、この塗料ダストの色に塗装時の塗料の色が混じることで塗装品質が低下するのを防ぐことができる。また、塗装位置で生じた塗料ダストがコンベアレールによって塗装後位置から搬出される前のワークに付着して、この塗料ダストがワークの表面に塗料ブツを形成することで塗装品質が低下するのを防ぐことができる。
【0019】
上述の態様の塗装処理装置では、上記コンベアレールが上記塗装位置よりも高所に配置されているのが好ましい。
【0020】
この塗装処理装置によれば、コンベアレールを塗装位置よりも高所に配置することによって、塗装位置で生じた塗料ダストがコンベアレールに付着するのを抑制できる。これにより、コンベアレールの清掃に要するメンテンナンスコストを低く抑えることができる。
【0021】
上述の態様の塗装処理装置では、上記搬送用ロボットの本体部が上記コンベアレールの直下に設けられているのが好ましい。
【0022】
この塗装処理装置によれば、搬送用ロボットの本体部をコンベアレールの直下に設けることによって、搬送用ロボットによる運搬距離を短く抑えることができる。これにより、退避位置と塗装位置との間でのワークの運搬作業に要するサイクルタイムを短縮することが可能になる。
【0023】
上述の態様の塗装処理装置は、上記給気部を第1給気部としたとき、上記第1給気部に加えて、上記塗装ブースの側壁部に設けられた第2給気部を備え、上記第2給気部は、上記塗装処理空間に空調風を横向きに供給して上記本体部及び上記コンベアレールの側方から上記塗装位置に向けて流すように構成されているのが好ましい。
【0024】
この塗装処理装置によれば、塗装位置で生じた塗料ダストが、搬送用ロボットの本体部及びコンベアレールに付着するのを第2給気部から塗装処理空間に供給された空調風によって抑制することができる。これにより、搬送用ロボットとコンベアレールのそれぞれの清掃に要するメンテンナンスコストを低く抑えることができる。
【0025】
以下、上述の態様の塗装処理装置の具体的な実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0026】
この実施形態を説明するための図面において、特にことわらない限り、塗装ブースの互いに直交する2つの水平方向を矢印X,Yで示し、塗装ブースの高さ方向(上下方向)を矢印Zで示すものとする。
【0027】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1の塗装処理装置1は、ワークWの噴霧塗装を行うための装置である。本形態では、塗装処理装置1は、ワークWとして自動車ボディを想定した大型のものである。この塗装処理装置1は、塗装ブース10と、コンベアレール17と、搬送用ロボット20と、塗装用ロボット30と、塗装機40と、空調装置50と、を備えている。
【0028】
ここで、塗装ブース10は、塗装室13と、塗装室13の上方の天井部11に設けられた給気室12と、塗装室13の下方に設けられた塗料回収室14と、に大別される。
【0029】
給気室12は、塗装ブース10の天井部11から塗装室13の塗装処理空間13aに空調風Aを下向きに供給する給気部である。この給気室12の室内空間12aは、空調装置50のダクト51に接続されている。空調装置50は、外気を導入して温度および湿度を調整することで空調風Aを生成する機能を有する。この空調装置50で生成された空調風Aがダクト51を通じて室内空間12aに導入される。また、室内空間12aの空調風Aは、フィルター部材15を通じて塗装室13の塗装処理空間13aに供給される。
【0030】
塗料回収室14は、塗装室13で使用されなかった塗料ダストDを回収するためのものである。塗装室13の塗装処理空間13aでは、塗料ダストDは、排気ファン(図示省略)による吸引作用にしたがって空量風Aの下降流にしたがって噴霧状のミストとして下向きに流れる。塗料ダストDは、仕切床16の回収口16aを通じて塗料回収室14の室内空間14aに流入して回収される。
【0031】
塗装室13の塗装処理空間13aには、コンベアレール17と、搬送用ロボット20と、塗装用ロボット30が設けられている。コンベアレール17は、ワークWを塗装前位置P1と塗装後位置P3のそれぞれの位置で支持するように水平方向Yに直線状に延びている。搬送用ロボット20と塗装用ロボット30は同様の構造のロボットである。
【0032】
搬送用ロボット20は、概して、ワークWを塗装位置P2と塗装前位置P1及び塗装後位置P3との間で搬送する機能を有する。この搬送用ロボット20によれば、ワークWは、塗装前位置P1と塗装位置P2との間で適宜に搬送され、また、塗装後位置P3と塗装位置P2との間で適宜に搬送される。
【0033】
これに対して、塗装用ロボット30は、概して、塗装機40を保持して動かす機能を有する。この塗装用ロボット30によれば、ワークWの塗装処理時に塗装機40が塗装位置P2の上方まで搬送される。このとき、塗装機40は、搬送用ロボット20によって塗装位置P2に搬送されたワークWに向けて塗料Nを噴射するように制御される。
【0034】
ここで、塗装位置P2は、ワークWに塗装機40から塗料Nが実際に噴射される位置である。これに対して、塗装前位置P1とは、ワークWが塗装位置P2に搬送される前の位置である。また、塗装後位置P3とは、ワークWが塗装位置P2で塗装された後に搬送される位置である。したがって、塗装前位置P1と塗装後位置P3はいずれも、塗装位置P2に対する退避位置とされる。本形態では、塗装前位置P1と塗装後位置P3はいずれも、塗装位置P2よりも高所(
図1を参照)であり、且つ塗装位置P2から側方に外れた位置(
図1及び
図2を参照)とされている。
【0035】
1.搬送用ロボット20の構造
図1及び
図2に示されるように、搬送用ロボット20は、本体部21と、本体部21から延出した多関節構造のロボットアーム22と、を有する多関節ロボットである。本形態では、搬送用ロボット20の本体部21が高さ方向Zについてコンベアレール17の直下に設けられている。特に図示しないものの、搬送用ロボット20のロボットアーム22のアーム先端部には、ワークWを保持及び保持解除が可能な保持機構が設けられている。
【0036】
この搬送用ロボット20では、ロボットアーム22のアーム先端部の位置及び姿勢が制御される。これにより、搬送用ロボット20は、ワークWを所望の経路にしたがって塗装位置P2から塗装前位置P1及び塗装後位置P3までの間で搬送することができる。本形態では、搬送用ロボット20は、ワークWを下方から支持した状態で当該搬送を行うように構成されている。
【0037】
2.塗装用ロボット30の構造
図1及び
図2に示されるように、塗装用ロボット30は、搬送用ロボット20と同様に、本体部31と、本体部31から延出した多関節構造のロボットアーム32と、を有する多関節ロボットである。
図1では、塗装用ロボット30の構造を簡素化して示している。塗装用ロボット30のロボットアーム32のアーム先端部には塗装機40が固定されている。塗装用ロボット30の数は特に限定されるものではないが、本形態では、塗料の色が異なる複数の塗装機40を使用する場合について例示しており、これに応じて複数(
図2では4つ)の塗装用ロボット30が設けられている。
【0038】
各塗装用ロボット30では、ロボットアーム32のアーム先端部の位置及び姿勢が制御される。これにより、各塗装用ロボット30は、ワークWに対して所望の位置から所望の向きで塗料Nを噴射するように塗装機40を動かすことができる。本形態では、各塗装用ロボット30は、対応した塗装機40を上方から保持するように構成されている。
【0039】
3.ワークWの運搬動作
図1及び
図2に示されるように、ワークWは、先ず、コンベアレール17によって塗装ブース10の外部から塗装室13の塗装処理空間13aに搬入される。搬送用ロボット20は、ワークWをコンベアレール17上の塗装前位置P1でピックアップして塗装位置P2まで搬送するように制御される。これにより、ワークWは、塗装位置P2に配置される。一方で、塗装用ロボット30は、塗装位置P2に配置されたワークWに対して塗装機40が近接するように制御される。そして、各塗装用ロボット30に保持されている塗装機40の塗料噴射口(図示省略)から噴射された塗料NによってワークWの表面が塗装される。このとき、搬送用ロボット20は、ワークWを下方から支持したままの状態を維持するように制御される。
【0040】
ワークWの塗装終了後に、搬送用ロボット20は、このワークWを塗装位置P2からコンベアレール17上の塗装後位置P3まで搬送し、塗装後位置P3でワークWの保持を解除するように制御される。その後、このワークWは、コンベアレール17によって塗装室13の塗装処理空間13aから塗装ブース10の外部に搬出される。
【0041】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0042】
実施形態1の塗装処理装置1において、ワークWは塗装ブース10内に設けられた搬送用ロボット20によって塗装位置P2と塗装前位置P1及び塗装後位置P3との間で搬送される。このワークWは搬送用ロボット20によって塗装位置P2に搬送された状態で塗装機40から噴射される塗料Nで塗装される。一方で、給気室12から塗装室13の塗装処理空間13aに空調風Aが下向きに供給される。このため、塗装位置P2で塗装機40から噴射された後にワークWに塗着せずにその周辺に飛散した塗料ダストDは、塗装ブース10内の塗装処理空間13aを下向きの空調風Aの流れにしたがって流下する。
【0043】
実施形態1では、ワークWの塗装前位置P1及び塗装後位置P3を、その塗装位置P2よりも高所であり且つ塗装位置P2から側方に外れた位置とすることが特徴とされている。これにより、塗装位置P2で生じた塗料ダストDは、塗装前位置P1及び塗装後位置P3が塗装位置P2よりも高所であることに加えて、空調風Aの影響で塗装位置P2から流下することが要因で、塗装位置P2から塗装前位置P1及び塗装後位置P3に到達することが妨げられる。
【0044】
したがって、塗料ダストDが塗装前位置P1及び塗装後位置P3に配置されているワークWに付着するような塗料かぶりによって塗装品質が低下するのを防ぐことができる。すなわち、塗装位置P2で生じた塗料ダストDがコンベアレール17によって塗装前位置P1まで搬入されたワークWに付着して、この塗料ダストDの色に塗装時の塗料の色が混じることで塗装品質が低下するのを防ぐことができる。また、塗装位置P2で生じた塗料ダストDがコンベアレール17によって塗装後位置P3から搬出される前のワークWに付着して、この塗料ダストDがワークWの表面に塗料ブツを形成することで塗装品質が低下するのを防ぐことができる。
【0045】
また、塗装前位置P1及び塗装後位置P3を塗装位置P2よりも高所に設定すれば、塗装品質が影響されにくくなるため、塗装前位置P1及び塗装後位置P3と塗装位置P2との間の側方距離を小さく抑えることができる。すなわち、塗装前位置P1及び塗装後位置P3と塗装位置P2を水平方向Xに極力近づけることができる。その結果、塗装ブース10を小型化することができ、空調風Aの使用量を減らすことによって省エネ性能を向上させることが可能になる。
【0046】
以上のごとく、実施形態1によれば、塗装品質と省エネ性能を両立できる塗装処理装置1を提供することが可能になる。
【0047】
実施形態1の塗装処理装置1によれば、搬送用ロボット20がワークWを下方から支持する一方で、塗装用ロボット30が塗装機40を上方から保持する構造であるため、搬送用ロボット20と塗装用ロボット30の一方が他方の動作を邪魔するのを防ぐことができる。
【0048】
実施形態1の塗装処理装置1によれば、搬送用ロボット20の本体部21をコンベアレール17の直下に設けることによって、搬送用ロボット20による運搬距離を短く抑えることができる。これにより、塗装前位置P1及び塗装後位置P3と塗装位置P2との間でのワークWの運搬作業に要するサイクルタイムを短縮することが可能になる。
【0049】
以下、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0050】
(実施形態2)
図3に示されるように、実施形態2の塗装処理装置1Aは、コンベアレール17が塗装位置P2よりも高所に配置されている点で、実施形態1の塗装処理装置1と相違している。
【0051】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0052】
実施形態2の塗装処理装置1Aによれば、コンベアレール17を塗装位置P2よりも高所に配置することによって、塗装位置P2で生じた塗料ダストDがコンベアレール17に付着するのを抑制できる。これにより、コンベアレール17の清掃に要するメンテンナンスコストを低く抑えることができる。
【0053】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0054】
(実施形態3)
図4に示されるように、実施形態3の塗装処理装置1Bは、給気室12に加えて給気室19を備える点で、実施形態1の塗装処理装置1と相違している。給気室19は、塗装ブース10の側壁部18から塗装室13の塗装処理空間13aに空調風Aを横向きに供給する給気部である。この給気室19は、給気室12を第1給気部12としたときに第2給気部19とされる。
【0055】
給気室19の室内空間19aは、給気室12の室内空間12aに連通している。したがって、空調装置50で生成された空調風Aは、給気室12から塗装室13の塗装処理空間13aに供給される一方で、給気室19からも塗装室13の塗装処理空間13aに供給される。給気室19から供給された空調風Aは、搬送用ロボット20の本体部21及びコンベアレール17の側方から塗装位置P2に向けて流れるようになっている。
【0056】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0057】
実施形態3の塗装処理装置1Bによれば、塗装位置P2で生じた塗料ダストDが、搬送用ロボット20の本体部21及びコンベアレール17に付着するのを給気室19から塗装室13の塗装処理空間13aに供給された空調風によって抑制することができる。これにより、搬送用ロボット20とコンベアレール17のそれぞれの清掃に要するメンテンナンスコストを低く抑えることができる。
【0058】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0059】
なお、実施形態3に特に関連する変更例では、必要に応じて、実施形態2の塗装処理装置1Aに実施形態3の給気室19を追加した構造を採用することができる。
【0060】
本発明は、上述の形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0061】
上述の形態では、塗装機40を塗装用ロボット30で保持する場合について例示したが、これに代えて、塗装用ロボット30を省略し、塗装機40が塗装ブース10内の塗装位置P2で常時に固定される構造を採用することもできる。本構造を採用する場合には、ワークWは搬送用ロボット20によって下方から支持された状態で搬送されてもよいし、或いはそれ以外の方向から支持された状態で搬送されてもよい。
【0062】
上述の形態では、搬送用ロボット20の本体部21がコンベアレール17の直下に設けられる場合について例示したが、本体部21とコンベアレール17の配置関係はこれに限定されるものではない。例えば、搬送用ロボット20の本体部21がコンベアレール17の側方に配置される構造を作用することもできる。
【0063】
上述の形態では、塗装ブース10内の退避位置を塗装前位置P1と塗装後位置P3の2つに設定する場合について例示したが、退避位置の数はこれに限定されるものではなく、必要に応じて1つ或いは3つ以上に設定してもよい。
【0064】
上述の形態では、自動車ボディの塗装に使用する塗装処理装置について例示したが、この塗装処理装置の構造を、自動車部品の塗装処理装置の構造や、自動車以外の他の分野の塗装処理装置の構造などに適用することもできる。
【符号の説明】
【0065】
1,1A,1B 塗装処理装置
10 塗装ブース
11 天井部
12 給気室(給気部、第1給気部)
13a 塗装処理空間
18 側壁部
19 給気室(第2給気部)
20 搬送用ロボット
21 本体部
30 塗装用ロボット
A 空調風
N 塗料
P1 塗装前位置(退避位置)
P2 塗装後位置(退避位置)
W ワーク
Y 水平方向