IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本信号株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-揺動角検出装置 図1
  • 特開-揺動角検出装置 図2
  • 特開-揺動角検出装置 図3
  • 特開-揺動角検出装置 図4
  • 特開-揺動角検出装置 図5
  • 特開-揺動角検出装置 図6
  • 特開-揺動角検出装置 図7
  • 特開-揺動角検出装置 図8
  • 特開-揺動角検出装置 図9
  • 特開-揺動角検出装置 図10
  • 特開-揺動角検出装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037208
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】揺動角検出装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141844
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 純
(72)【発明者】
【氏名】山田 博隆
【テーマコード(参考)】
2H045
【Fターム(参考)】
2H045AB10
2H045AB13
2H045AB24
2H045AB44
2H045BA13
(57)【要約】
【課題】揺動体に設けたコイルの対辺部分に逆向きの磁界が作用するような構成でも該コイルを流れる誘導電流を基に揺動角を検出できる揺動角検出装置を提供する。
【解決手段】電磁アクチュエータ1は、揺動体40の第1軸A1周りに揺動する内側揺動部41に設けた高速検出コイル63を流れる誘導電流を基に内側揺動部41の揺動角を検出する機能を備える。揺動体40の内側揺動部41は、同一平面上に第1軸A1を挟んで配置された第1及び第2領域41,41を有し、該平面に沿う方向の第1磁界H1が第1領域41側に与えられ、第1磁界H1と反対方向の第2磁界H2が第2領域41側に与えられる。高速検出コイル63は、第1及び第2領域41,41に設けた第1及び第2配線部63,63に発生する各誘導電流I,Iが同方向となるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸周りに揺動する揺動体に設けたコイルを流れる誘導電流を基に揺動角を検出する装置であって、
前記揺動体は、同一平面上に前記第1軸を挟んで配置された第1及び第2領域を有し、該平面に沿う方向の第1磁界が第1領域側に与えられ、第1磁界と反対方向の第2磁界が第2領域側に与えられ、
前記コイルは、前記第1及び第2領域に設けた第1及び第2配線部に発生する各誘導電流が同方向となるように構成される、揺動角検出装置。
【請求項2】
前記揺動体は、前記第1及び第2領域の少なくとも一方に光を反射するミラーが形成されている、請求項1に記載の揺動角検出装置。
【請求項3】
前記揺動体は、内側揺動部と、外側揺動部とを有し、
前記内側揺動部は、前記外側揺動部によって前記第1軸周りに揺動可能に支持され、
前記外側揺動部は、前記外側揺動部の外側に配置された支持体によって前記第1軸と交差する第2軸周りに揺動可能に支持される、請求項1に記載の揺動角検出装置。
【請求項4】
前記外側揺動部は、同一平面上に前記第1軸を挟んで配置された第3及び第4領域を有し、
前記コイルは、前記第3及び第4領域に設けた第3及び第4配線部に発生する各誘導電流が同方向となり、かつ、前記第1及び第2配線部に発生する各誘導電流と前記第3及び第4配線部に発生する各誘導電流とが逆方向となるように構成される、請求項3に記載の揺動角検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動体に設けたコイルを流れる誘導電流を基に揺動角を検出する揺動角検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁アクチュエータを使用した光スキャナーなどでは、揺動可能に軸支された可動ミラー(揺動体)上にコイルを設け、該コイルを流れる誘導電流を基に可動ミラーの揺動角を検出するようにしたものが知られている。例えば、特許文献1には、揺動して光ビームを偏向する可動部の周縁部分に沿ってコイルを設け、可動部に対して反射面に沿った一方向の磁界を与えるようにした電磁アクチュエータが開示されている。この電磁アクチュエータでは、可動部の軸周りの揺動によって可動部上のコイル内側を貫く磁束が変化することで、可動部の角速度に比例した起電圧がコイルに発生し、該起電圧の値に基づいて可動部の振れ角(揺動角)が検出されている。
【0003】
また、上記のような光スキャナーなどに使用される電磁アクチュエータの駆動方式に関して、例えば、特許文献2には、第1回動体(揺動体)の外側に配置された第2回動体上において、第1及び第2回転軸により4分割された同一平面上の各領域に駆動用のコイルをそれぞれ設け、各コイルに対してコイル面に平行で内外の一方に向かう磁界を与え、駆動信号を各コイルに正相及び逆相で印加することにより、駆動効率が良く、大きな振り角を実現できるようにした技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4223328号公報
【特許文献2】特開2021-81484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような特許文献2の駆動方式が適用された電磁アクチュエータに対して、特許文献1に開示されている技術を応用して揺動体の揺動角を検出しようとした場合、該揺動体に設けたコイルにおける軸方向に平行な対辺部分には、逆向きの磁界が作用することになる。この場合、揺動体の軸周りの揺動によってコイルの対辺部分にそれぞれ発生する起電圧が正負で打ち消し合うようになり、揺動体上のコイルから揺動角を検出するための信号を取り出すことができないという課題があった。
【0006】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、揺動体に設けたコイルの対辺部分に逆向きの磁界が作用するような構成でも該コイルを流れる誘導電流を基に揺動角を検出できる揺動角検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため本発明の一態様は、第1軸周りに揺動する揺動体に設けたコイルを流れる誘導電流を基に揺動角を検出する揺動角検出装置であって、前記揺動体は、同一平面上に前記第1軸を挟んで配置された第1及び第2領域を有し、該平面に沿う方向の第1磁界が第1領域側に与えられ、第1磁界と反対方向の第2磁界が第2領域側に与えられ、前記コイルは、前記第1及び第2領域に設けた第1及び第2配線部に発生する各誘導電流が同方向となるように構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る揺動角検出装置によれば、揺動体に設けたコイルの配線を工夫して、該コイルにおける揺動体の第1及び第2領域に設けた第1及び第2配線部に発生する各誘導電流が同方向となるようにしたことで、コイルの対辺部分に逆向きの磁界が作用するような構成でもコイルを流れる誘導電流を基に揺動角を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る揺動角検出装置が適用された電磁アクチュエータの構成を示す概略図である。
図2】電磁アクチュエータの駆動制御回路の機能構成を示すブロック図である。
図3】電磁アクチュエータの第1系統の駆動コイルを拡大して示す平面図である。
図4】電磁アクチュエータの第2系統の駆動コイルを拡大して示す平面図である。
図5】電磁アクチュエータの高速検出コイルを拡大して示す平面図である。
図6】電磁アクチュエータの低速検出コイルを拡大して示す平面図である。
図7】低速駆動信号の供給による電磁作用を説明する図である。
図8】高速駆動信号の供給による電磁作用を説明する図である。
図9】電磁駆動された揺動体の状態を示す斜視図である。
図10】内側揺動部の第1軸周りの揺動角検出動作を説明する図である。
図11】外側揺動部の第2軸周りの揺動角検出動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る揺動角検出装置が適用された電磁アクチュエータの構成を示す概略図である。
図1において、電磁アクチュエータ1は、例えば、レーザ光等の光ビームを走査させる光スキャナーとして使用されるものであり、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などの光走査デバイス2と、駆動制御回路3とを備えて構成される。
【0011】
光走査デバイス2は、例えば、外部から与えられる光ビームを2次元的に走査することが可能な平板状の可動部4と、可動部4の所定箇所に対して所定方向の磁界を形成する磁界形成部5と、可動部4上に設けられたコイル部6と、を備えている。
【0012】
可動部4は、内側揺動部41及び外側揺動部42を有する揺動体40と、揺動体40の外側に配置され、揺動体40を軸支する支持体43とを備えている。揺動体40は、内側揺動部41の外側を囲むように外側揺動部42が配置されている。内側揺動部41は、外側揺動部42によって第1軸A1周りに揺動可能に支持されている。外側揺動部42は、支持体43によって第1軸A1と交差する第2軸A2周りに揺動可能に支持されている。本実施形態では、第1軸A1と第2軸A2とが直交する一例について説明するが、これに限らず第1軸A1と第2軸A2とが任意の角度で交差していてもよい。
【0013】
揺動体40(内側揺動部41及び外側揺動部42)と支持体43とは、例えば、シリコン基板などの半導体基板を異方性エッチング加工することによって一体的に作製することが可能である。なお、揺動体40及び支持体43は、半導体基板の異方性エッチング加工に限らず、ベリリウム銅、ステンレスその他の金属のウエットエッチング加工、板金打ち抜き加工等によっても作製することができる。
【0014】
具体的に、内側揺動部41は、平面視で、第1軸A1に沿う方向に長い概ね長円形の形状を有している。内側揺動部41の長手方向の両側部分には、第1軸A1に沿って延びる第1トーションバーTB1がそれぞれ形成されている。各第1トーションバーTB1の内側端部は、内側揺動部41の中央部分の近くまで延在している。各第1トーションバーTB1の外側端部は、外側揺動部42に接続されている。換言すると、内側揺動部41の長手方向の両側部分には、第1軸A1に沿って中央部分付近まで延びる切込み箇所がそれぞれ形成されており、各々の切込み箇所の底部(内側端部)と、該底部に対向する外側揺動部42の部分とが第1トーションバーTB1によって連結されている。
【0015】
また、内側揺動部41の表面上には、第1軸A1を挟んで第1領域41及び第2領域41が配置されている。図1の例においては、平面視で、第1軸A1(第1トーションバーTB1の延長線)を境界にして右側に第1領域41が配置され、左側に第2領域41が配置されている。さらに、内側揺動部41の表面上の中央部分には、光ビームを反射するアルミニウム等で形成されたミラーMが設けられている。本実施形態では、平面視で円形状のミラーMが第1及び第2領域41,41の双方に亘る範囲、又は内側揺動部41の表面全面に形成されている。なお、ミラーMは、円形に限らず任意の形状とすることができ、第1及び第2領域41,41の少なくとも一方に形成されていればよい。内側揺動部41の第1及び第2領域41,41におけるミラーMの外側には、コイル部6の後述する高速検出コイル63の一部が配線されている。
【0016】
外側揺動部42は、平面視で、第2軸A2に沿う方向に長い概ね矩形の外形を有している。具体的に、外側揺動部42は、矩形枠状の中央環状部分42Aと、該中央環状部分42Aの外側に隣接する4つの周辺環状部分42Bとから構成されている。4つの周辺環状部分42Bのそれぞれは、中央環状部分42Aと同様に、矩形枠状の形状を有している。前述した内側揺動部41は、外側揺動部42の中央環状部分42Aの開口内(枠の内側)に収まるように配置されており、第1トーションバーTB1によって内側揺動部41と外側揺動部42の中央環状部分42Aとが連結されている。つまり、内側揺動部41は、外側揺動部42により第1トーションバーTB1を介して第1軸A1周りに捩じり回転可能に支持されている。
【0017】
外側揺動部42の長手方向の両側部分には、第2軸A2に沿って延びる第2トーションバーTB2がそれぞれ形成されている。各第2トーションバーTB2の内側端部は中央環状部分42Aに接続され、各第2トーションバーTB2の外側端部は支持体43に接続されている。換言すると、各第2トーションバーTB2は、外側揺動部42の中央環状部分42Aにおける第2軸A2上に位置する箇所から第2軸A2に沿って外側に延び、第2軸A2を挟んで対向する周辺環状部分42Bの間を通って、支持体43における第2軸A2上に位置する箇所に連結されている。つまり、外側揺動部42は、支持体43により第2トーションバーTB2を介して第2軸A2周りに捩じり回転可能に支持されている。
【0018】
また、外側揺動部42における中央環状部分42Aの表面上には、第1軸A1を挟んで第3領域42及び第4領域42が配置されている。図1の例においては、平面視で、第1軸A1(第1トーションバーTB1の延長線)を境界にして右側に第3領域42が配置され、左側に第4領域42が配置されている。中央環状部分42Aの第3及び第4領域42,42には、コイル部6の後述する高速検出コイル63の一部が配線される。また、4つの周辺環状部分42Bそれぞれの表面上には、コイル部6の後述する駆動コイル61,62の一部が配線される。
【0019】
支持体43は、平面視で、矩形枠状の外形を有し、図示を省略した支持基板上に固定されている。前述した外側揺動部42は、支持体43の開口内(枠の内側)に収まるように配置されており、外側揺動部42と支持体43とが第2トーションバーTB2によって連結されている。支持体43は、第2トーションバーTB2を介して外側揺動部42を第2軸A2周りに捩じり回転可能に支持している。つまり、本実施形態における可動部4は、支持体43が外側揺動部42を第2軸A2周りに可動な状態で支持し、外側揺動部42が内側揺動部41を第1軸A1周りに可動な状態で支持する。これにより、内側揺動部41の表面上に形成されたミラーMは、第1及び第2軸A1,A2それぞれの周りで揺動可能すなわち傾斜可能となり、該ミラーMによる反射光を2次元的に走査することができる。
【0020】
上記のような可動部4の構成において、揺動体40は第1及び第2軸A1,A2に関して対称な形状を有している。つまり、揺動体40の内側揺動部41は、第1及び第2軸A1,A2に関して対称的な形状を有している。また、揺動体40の外側揺動部42における中央環状部分42Aは、第1及び第2軸A1,A2に関して対称的な形状を有している。さらに、揺動体40の外側揺動部42における4つの周辺環状部分42Bは、互いに等しい大きさを有し、かつ、第1及び第2軸A1,A2に関して対称的に配置されている。ただし、内側揺動部41及び外側揺動部42の各形状が第1及び第2軸A1,A2に関して対称的であることは必須の事項ではない。つまり、内側揺動部41及び外側揺動部42の各形状は、第1及び第2軸A1,A2に関して非対称であってもよく、この場合も揺動体40に所期の揺動動作を行わせることが可能である。
【0021】
磁界形成部5は、揺動体40の外側揺動部42における4つの周辺環状部分42Bにそれぞれ対応させて設けられた4つの磁界形成器50を備えている。各磁界形成器50は、第1磁石51と、第2磁石52とを有している。第1磁石51は、対応する周辺環状部分42Bの開口内(枠の内側)に収まるように配置されている。第2磁石52は、対応する周辺環状部分42Bの外側であって、外側揺動部42と支持体43との間に形成された隙間部分に配置されている。第2磁石52は、平面視で略L字型の形状を有している。
【0022】
第1及び第2磁石51,52は、前述した支持基板(図示省略)上に固定されており、各々の上端部分が、上下方向において、外側揺動部42の周辺環状部分42Bの表面付近に位置している。第1及び第2磁石51,52の各上端部は、互いに異なる磁極を持ち、図1の例では、第1磁石51の上端部がS極、第2磁石52の上端部がN極となっている。ただし、第1及び第2磁石51,52の磁極の関係は逆であってもよい。
【0023】
コイル部6は、揺動体40の内側揺動部41及び外側揺動部42を電磁駆動するための2つの系統の駆動コイル61,62と、内側揺動部41の揺動角を検出するための高速検出コイル63と、外側揺動部42の揺動角を検出するための低速検出コイル64とを備えている。本実施形態では、高速検出コイル63が本発明の揺動角検出装置における「コイル」に相当する。
【0024】
2つの系統の駆動コイル61,62は、それぞれ、揺動体40の外側揺動部42及び第2トーションバーTB2の各表面上に設けられている。第1系統の駆動コイル61は、外側揺動部42の4つの周辺環状部分42Bのうちで対角配置された2つの周辺環状部分42B(図1の例では、右上の周辺環状部分42Bと左下の周辺環状部分42B)を通るように配線されている。第2系統の駆動コイル62は、4つの周辺環状部分42Bのうちで対角配置された残りの2つの周辺環状部分42B(図1の例では、右下の周辺環状部分42Bと左上の周辺環状部分42B)を通るように配線されている。なお、2つの系統の駆動コイル61,62の具体的な配線パターンについては後述する。
【0025】
高速検出コイル63は、揺動体40の内側揺動部41における第1領域41及び第2領域41、揺動体40の外側揺動部42における中央環状部分42Aの第3領域42及び第4領域42、並びに、第1及び第2トーションバーTB1,TB2の各表面上に設けられている。高速検出コイル63は、前述した内側揺動部41の第1領域41に設けられている第1配線部63と、内側揺動部41の第2領域41に設けられている第2配線部63と、外側揺動部42の中央環状部分42Aの第3領域42に設けられている第3配線部63と、中央環状部分42Aの第4領域42に設けられている第4配線部63とを含んでいる。
【0026】
高速検出コイル63は、揺動体40が電磁駆動された際、第1配線部63に発生する起電圧によって該第1配線部63を流れる誘導電流と、第2配線部63に発生する起電圧によって該第2配線部63を流れる誘導電流とが同方向となるように配線パターンが設計されている。また、高速検出コイル63は、揺動体40が電磁駆動された際、第3配線部63に発生する起電圧によって該第3配線部63を流れる誘導電流と、第4配線部63に発生する起電圧によって該第4配線部63を流れる誘導電流とが同方向となり、かつ、上記第1及び第2配線部63,63を流れる各誘導電流と、上記第3及び第4配線部63,63を流れる各誘導電流とが逆方向となるように配線パターンが設計されている。なお、高速検出コイル63の具体的な配線パターンについても後述する。
【0027】
低速検出コイル64は、揺動体40の外側揺動部42及び第2トーションバーTB2の各表面上に設けられている。低速検出コイル64は、外側揺動部42の外縁部分を通るように配線されている。なお、低速検出コイル64の具体的な配線パターンについても後述する。
【0028】
上記のようなコイル部6に備えられた2つの系統の駆動コイル61,62、高速検出コイル63及び低速検出コイル64のそれぞれには、駆動制御回路3が電気的に接続されている。駆動制御回路3は、可動部4の揺動体40を電磁駆動するための駆動信号を生成してコイル部6の各駆動コイル61,62にそれぞれ供給する。また、駆動制御回路3は、揺動体40が電磁駆動された際に、コイル部6の高速検出コイル63及び低速検出コイル64に発生する各起電圧よって各々のコイルを流れる誘導電流を基に、揺動体40の内側揺動部41及び外側揺動部42それぞれの揺動角を検出し、該検出結果に基づき各駆動コイル61,62に印加する駆動信号をフィードバック制御する。
【0029】
図2は、本実施形態における駆動制御回路3の構成例を示すブロック図である。
図2において、駆動制御回路3は、駆動部31と、高速制御部32H及び低速制御部32Lとを含んでいる。
駆動部31は、高周波側及び低周波側の2つの系統にそれぞれ対応させて設けられている、駆動信号生成回路311H,311L、ダイレクト・デジタル・シンセサイザ(DDS)312H,312L、パルス密度変調器(PDM)313H,313L、及びローパスフィルタ(LPF)314H,314Lと、高周波側及び低周波側に共通に設けられている、加算回路315及び減算回路316とを有している。
【0030】
駆動信号生成回路311H,311Lは、ダイレクト・デジタル・シンセサイザ312H,312Lなどの波形生成手段を利用して、所要の周波数及び波形を有する駆動信号を生成する。本実施形態では、高周波側の駆動信号生成回路311Hにおいて、周波数fh(例えば、2kHz等)で正弦波の波形を有する駆動信号が生成され、低周波側の駆動信号生成回路311Lにおいて、周波数fl(例えば、420Hz等)で正弦波の波形を有する駆動信号が生成される。ただし、駆動信号生成回路311H,311Lで生成される駆動信号の周波数及び波形は上記の一例に限定されない。高周波側の駆動信号生成回路311Hで生成された駆動信号は高周波側のパルス密度変調器313Hに出力され、低周波側の駆動信号生成回路311Lで生成された駆動信号は低周波側のパルス密度変調器313Lに出力される。
【0031】
パルス密度変調器313H,313Lは、駆動信号生成回路311H,311Lで生成された正弦波の駆動信号を、正弦波情報を含んだ2値のデジタル信号に変換する。高周波側のパルス密度変調器313Hでデジタル化された周波数fhの正弦波情報を含む駆動信号は高周波側のローパスフィルタ314Hに与えられ、低周波側のパルス密度変調器313Lでデジタル化された周波数flの正弦波情報を含む駆動信号は低周波側のローパスフィルタ314Lに与えられる。
【0032】
ローパスフィルタ314H,314Lは、予め設定された共通のカットオフ周波数fc(例えば、10kHz等)を有し、デジタルの入力信号に含まれるカットオフ周波数Fc以下の信号成分を抽出してアナログ波形の信号を出力する。したがって、高周波側のローパスフィルタ314Hからは周波数fhを有する正弦波のアナログ信号(以下、「高速駆動信号」とする)が出力され、低周波側のローパスフィルタ314Lからは周波数flを有する正弦波のアナログ信号(以下、「低速駆動信号」とする)が出力される。高周波側及び低周波側のローパスフィルタ314H,314Lの各出力信号は、加算回路315及び減算回路316の双方に与えられる。
【0033】
加算回路315は、高周波側のローパスフィルタ314Hから出力される高速駆動信号と、低周波側のローパスフィルタ314Lから出力される低速駆動信号とを重畳(加算)したアナログの第1駆動信号を生成する。加算回路315で生成された第1駆動信号は、コイル部6の第1系統の駆動コイル61に印加される。つまり、第1系統の駆動コイル61には、高速駆動信号及び低速駆動信号がそれぞれ正相で供給される。
【0034】
減算回路316は、高周波側のローパスフィルタ314Hから出力される高速駆動信号の位相を反転させた信号と、低周波側のローパスフィルタ314Lから出力される低速駆動信号とを重畳(減算)したアナログの第2駆動信号を生成する。減算回路316で生成された第2駆動信号は、コイル部6の第2系統の駆動コイル62に印加される。つまり、第2系統の駆動コイル62には、高速駆動信号が逆相で供給され、低速駆動信号が正相で供給される。
【0035】
駆動制御回路3の高速制御部32Hは、増幅回路(AMP)321Hと、アナログ-デジタル変換回路(ADC)322Hと、ピーク検出回路323Hと、タイミング検出回路324Hとを有している。増幅回路321Hは、コイル部6の高速検出コイル63で得られるモニタ信号(誘導起電圧又は誘導電流)を所要の利得で増幅してアナログ-デジタル変換回路322Hに出力する。アナログ-デジタル変換回路322Hは、増幅回路321Hで増幅された高速側のモニタ信号をアナログからデジタルに変換する。アナログ-デジタル変換回路322Hでデジタル化された高速側のモニタ信号は、ピーク検出回路323H及びタイミング検出回路324Hにそれぞれ与えられる。
【0036】
ピーク検出回路323Hは、高速側のモニタ信号(正弦波)における振幅のピーク値を検出して、揺動体40の内側揺動部41における第1軸A1周りの揺動角(振れ角)情報を取得する。タイミング検出回路324Hは、高速側のモニタ信号(正弦波)におけるゼロクロスタイミングを検出して、内側揺動部41の揺動動作における位相情報を取得する。ピーク検出回路323H及びタイミング検出回路324Hで取得された内側揺動部41の揺動角情報及び位相情報は、高周波側の駆動信号生成回路311Hにフィードバックされる。なお、本実施形態では、コイル部6の高速検出コイル63、並びに、高速制御部32Hの増幅回路321H、アナログ-デジタル変換回路322H、ピーク検出回路323H及びタイミング検出回路324Hを組み合わせた構成が、本発明の「揺動角検出装置」に相当している。
【0037】
高周波側の駆動信号生成回路311Hは、ピーク検出回路323Hからの揺動角情報を受けて、内側揺動部41の揺動動作が所望の振幅で一定に保たれるように、周波数fhを有する正弦波の駆動信号における振幅を最適化する。また、駆動信号生成回路311Hは、タイミング検出回路324Hからの位相情報を受けて、内側揺動部41の揺動動作が所望の位相(タイミング)で一定に保たれるように、周波数fhを有する正弦波の駆動信号における位相を最適化する。
【0038】
駆動制御回路3の低速制御部32Lは、上記の高速制御部32Hと同様に、増幅回路(AMP)321Lと、アナログ-デジタル変換回路(ADC)322Lと、ピーク検出回路323Lと、タイミング検出回路324Lとを有している。増幅回路321Lは、コイル部6の低速検出コイル64で得られるモニタ信号(誘導起電圧又は誘導電流)を所要の利得で増幅してアナログ-デジタル変換回路322Lに出力する。アナログ-デジタル変換回路322Lは、増幅回路321Lで増幅された低速側のモニタ信号をアナログからデジタルに変換する。アナログ-デジタル変換回路322Lでデジタル化された低速側のモニタ信号は、ピーク検出回路323L及びタイミング検出回路324Lにそれぞれ与えられる。
【0039】
ピーク検出回路323Lは、低速側のモニタ信号(正弦波)における振幅のピーク値を検出して、揺動体40の外側揺動部42における第2軸A2周りの揺動角(振れ角)情報を取得する。タイミング検出回路324Lは、低速側のモニタ信号(正弦波)におけるゼロクロスタイミングを検出して、外側揺動部42の揺動動作における位相情報を取得する。ピーク検出回路323L及びタイミング検出回路324Lで取得された外側揺動部42の揺動角情報及び位相情報は、低周波側の駆動信号生成回路311Lにフィードバックされる。
【0040】
低周波側の駆動信号生成回路311Lは、ピーク検出回路323Lからの揺動角情報を受けて、外側揺動部42の揺動動作が所望の振幅で一定に保たれるように、周波数flを有する正弦波の駆動信号における振幅を最適化する。また、駆動信号生成回路311Lは、タイミング検出回路324Lからの位相情報を受けて、外側揺動部42の揺動動作が所望の位相(タイミング)で一定に保たれるように、周波数flを有する正弦波の駆動信号における位相を最適化する。
【0041】
ここで、前述したコイル部6の2つの系統の駆動コイル61,62、高速検出コイル63、及び低速検出コイル64それぞれの配線パターンについて、図3図6を参照しながら具体的に説明する。
【0042】
図3は、第1系統の駆動コイル61を拡大して示す平面図である。
図3に示すように、第1系統の駆動コイル61は、右側の第2トーションバーTB2、外側揺動部42の右上の周辺環状部分42B、左下の周辺環状部分42B、及び左側の第2トーションバーTB2を順に通る1本の配線パターンによって形成されている。具体的に、第1系統の駆動コイル61の配線パターンは、右側引出部61Aと、右上コイル部61Bと、接続部61Cと、左下コイル部61Dと、左側引出部61Eとを有している。
【0043】
右側引出部61Aは、右側の第2トーションバーTB2の表面上を外側から内側に向かって延び、外側揺動部42における中央環状部分42Aの表面上で屈曲して上側に延びている。右側引出部61Aに続く右上コイル部61Bは、外側揺動部42における右上の周辺環状部分42Bの表面上で開口の外側を囲むように一方向(反時計回り)に巻かれている。接続部61Cは、右上コイル部61Bの終端部分に接続され、外側揺動部42における中央環状部分42Aの上辺及び左辺の表面上を通って左下の周辺環状部分42Bまで延びている。
【0044】
接続部61Cに続く左下コイル部61Dは、外側揺動部42における左下の周辺環状部分42Bの表面上で開口の外側を囲むように、右上コイル部61Bの巻き方向とは反対方向(時計回り)に巻かれている。左側引出部61Eは、左下コイル部61Dの終端部分に接続され、外側揺動部42における中央環状部分42Aの表面上を上側に延びた後に屈曲して、左側の第2トーションバーTB2の表面上を内側から外側に向かって延びている。
【0045】
図4は、第2系統の駆動コイル62を拡大して示す平面図である。
図4に示すように、第2系統の駆動コイル62は、右側の第2トーションバーTB2、外側揺動部42の右下の周辺環状部分42B、左上の周辺環状部分42B、及び左側の第2トーションバーTB2を順に通る1本の配線パターンによって形成されている。具体的に、第2系統の駆動コイル62の配線パターンは、右側引出部62Aと、右下コイル部62Bと、接続部62Cと、左上コイル部62Dと、左側引出部62Eとを有している。
【0046】
右側引出部62Aは、右側の第2トーションバーTB2の表面上を外側から内側に向かって延び、外側揺動部42における中央環状部分42Aの表面上で屈曲して下側に延びている。右側引出部62Aに続く右下コイル部62Bは、外側揺動部42における右下の周辺環状部分42Bの表面上で開口の外側を囲むように一方向(時計回り)に巻かれている。接続部62Cは、右下コイル部62Bの終端部分に接続され、外側揺動部42における中央環状部分42Aの下辺及び左辺の表面上を通って左上の周辺環状部分42Bまで延びている。
【0047】
接続部62Cに続く左上コイル部62Dは、外側揺動部42における左上の周辺環状部分42Bの表面上で開口の外側を囲むように、右下コイル部62Bの巻き方向とは反対方向(反時計回り)に巻かれている。左側引出部62Eは、左上コイル部62Dの終端部分に接続され、外側揺動部42における中央環状部分42Aの表面上を下側に延びた後に屈曲して、左側の第2トーションバーTB2の表面上を内側から外側に向かって延びている。
【0048】
図5は、高速検出コイル63を拡大して示す平面図である。
図5に示すように、高速検出コイル63は、右側の第2トーションバーTB2、外側揺動部42の中央環状部分42Aにおける第3領域42の上部、上側の第1トーションバーTB1、内側揺動部41の第1領域41、及び下側の第1トーションバーTB1を順に通り、更に続けて、外側揺動部42の中央環状部分42Aにおける第4領域42、上側の第1トーションバーTB1、内側揺動部41の第2領域41、下側の第1トーションバーTB1、外側揺動部42の中央環状部分42Aにおける第3領域42の下部、及び右側の第2トーションバーTB2を順に通る1本の配線パターンによって形成されている。
【0049】
具体的に、高速検出コイル63の配線パターンは、上側引出部63Aと、右上外側配線部63Bと、右上接続部63Cと、右内側配線部63Dと、左下接続部63Eと、左外側配線部63Fと、左上接続部63Gと、左内側配線部63Hと、右下接続部63Iと、右下外側配線部63Jと、下側引出部63Kとを有している。
【0050】
上側引出部63Aは、右側の第2トーションバーTB2の表面上を外側から内側に向かって延びている。上側引出部63Aに続く右上外側配線部63Bは、外側揺動部42の中央環状部分42Aにおける右辺の表面上で屈曲して上側に延びている。右上接続部63Cは、右上外側配線部63Bの上端部分に接続され、中央環状部分42Aにおける上辺の表面上を内側(左側)に延びた後に上側の第1トーションバーTB1付近で屈曲して、該第1トーションバーTB1の表面上を内側揺動部41まで延びている。
【0051】
右上接続部63Cに続く右内側配線部63Dは、上側の第1トーションバーTB1の下端部分から、内側揺動部41における第1領域41の外縁部分に沿って、下側の第1トーションバーTB1の上端部分まで延びている。左下接続部63Eは、右内側配線部63Dの終端部分に接続され、下側の第1トーションバーTB1の表面上を外側揺動部42の中央環状部分42Aまで延びた後に屈曲し、中央環状部分42Aにおける下辺の表面上を外側(左側)に延びている。
【0052】
左下接続部63Eに続く左外側配線部63Fは、中央環状部分42Aにおける左辺の表面上を上側に延びている。左上接続部63Gは、左外側配線部63Fの上端部分に接続され、中央環状部分42Aにおける上辺の表面上を内側(右側)に延びた後に上側の第1トーションバーTB1付近で屈曲して、該第1トーションバーTB1の表面上を内側揺動部41まで延びている。
【0053】
左上接続部63Gに続く左内側配線部63Hは、上側の第1トーションバーTB1の下端部分から、内側揺動部41における第2領域41の外縁部分に沿って、下側の第1トーションバーTB1の上端部分まで延びている。右下接続部63Iは、左内側配線部63Hの終端部分に接続され、下側の第1トーションバーTB1の表面上を外側揺動部42の中央環状部分42Aまで延びた後に屈曲し、中央環状部分42Aにおける下辺の表面上を外側(右側)に延びている。なお、前述した左下接続部63Eと右下接続部63Iとが交差する部分については、立体的な配線パターンによって左下接続部63Eと右下接続部63Iとの間の絶縁が保たれている。
【0054】
右下接続部63Iに続く右下外側配線部63Jは、外側揺動部42の中央環状部分42Aにおける右辺の表面上を上側に向けて右側の第2トーションバーTB2付近まで延びている。下側引出部63Kは、右下外側配線部63Jの上端部分に接続され、右側の第2トーションバーTB2の表面上を外側に延びている。
【0055】
上記のように高速検出コイル63は、揺動体40の表面上において、内側揺動部41と外側揺動部42との間に形成された隙間部分の周りを一筆書きで囲むように配線が施されている。なお、図5に示した高速検出コイル63の配線パターンの一例では、右内側配線部63Dが前述の図1に示した第1配線部63に対応し、左内側配線部63Hが前述の図1に示した第2配線部63に対応する。また、右上外側配線部63B及び右下外側配線部63Jが前述の図1に示した第3配線部63に対応し、左外側配線部63Fが前述の図1に示した第4配線部63に対応する。
【0056】
図6は、低速検出コイル64を拡大して示す平面図である。
図6に示すように、低速検出コイル64は、揺動体40における外側揺動部42の外縁部分を周回する配線パターンによって形成されている。具体的に、低速検出コイル64の配線パターンは、右側引出部64Aと、上側配線部64Bと、下側配線部64Cと、左側引出部64Dとを有している。
【0057】
右側引出部64Aは、右側の第2トーションバーTB2の表面上を外側から内側に向かって延びている。右側引出部64Aの内側端部分には、上側配線部64Bの一端部分と、下側配線部64Cの一端部分とがそれぞれ接続されている。
【0058】
上側配線部64Bは、右側引出部64Aの内側端部分から、外側揺動部42における中央環状部分42Aの右辺の表面上を上側に延びた後に屈曲し、右上の周辺環状部分42Bにおける下辺、右辺及び上辺の各表面上を外縁部分に沿って延びている。さらに、上側配線部64Bは、外側揺動部42における中央環状部分42Aの上辺の表面上を右側から左側に向けて延びた後に、左上の周辺環状部分42Bにおける上辺、左辺及び下辺の各表面上を外縁部分に沿って延びている。
【0059】
下側配線部64Cは、右側引出部64Aの内側端部分から、外側揺動部42における中央環状部分42Aの右辺の表面上を下側に延びた後に屈曲し、右下の周辺環状部分42Bにおける上辺、右辺及び下辺の各表面上を外縁部分に沿って延びている。さらに、下側配線部64Cは、外側揺動部42における中央環状部分42Aの下辺の表面上を右側から左側に向けて延びた後に、左下の周辺環状部分42Bにおける下辺、左辺及び上辺の各表面上を外縁部分に沿って延びている。
【0060】
上側配線部64Bの先端(他端)部分、及び下側配線部64Cの先端(他端)部分のそれぞれには、左側引出部64Dの内側端部分が接続されている。左側引出部64Dは、上側配線部64B及び下側配線部64Cとの接続箇所から、左側の第2トーションバーTB2の表面上を外側に向かって延びている。上記のように低速検出コイル64は、右側引出部64Aと左側引出部64Dとの間に、上側配線部64B及び下側配線部64Cを並列的に接続した配線パターンを有している。
【0061】
次に、本実施形態による電磁アクチュエータ1の動作について説明する。
まず、電磁アクチュエータ1の駆動側の動作について簡単に説明する。上述したような構成の電磁アクチュエータ1では、駆動制御回路3の駆動部31における高周波側及び低周波側の駆動信号生成回路311H,311Lにより、周波数fhを有する正弦波の駆動信号と、周波数fl(<fh)を有する正弦波の駆動信号とが生成される。
【0062】
これらの高周波側及び低周波側の駆動信号は、パルス密度変調器313H,313L及びローパスフィルタ314H,314Lを介して加算回路315と減算回路316にそれぞれ与えられる。そして、加算回路315の出力信号がコイル部6の第1系統の駆動コイル61に印加され、減算回路316の出力信号がコイル部6の第2系統の駆動コイル62に印加される。これにより、第1系統の駆動コイル61には、高速駆動信号及び低速駆動信号がそれぞれ正相で供給される一方、第2系統の駆動コイル62には、高速駆動信号が逆相で供給され、低速駆動信号が正相で供給される。
【0063】
低速駆動信号が第1及び第2駆動コイル61,62の双方に対して正相の信号として供給されることにより、例えば図7に示すように、第1系統の駆動コイル61における右上コイル部61Bに反時計回りの電流Ilが流れ、左下コイル部61Dに時計回りの電流Ilが流れるとともに、第2系統の駆動コイル62における右下コイル部62Bに時計回りの電流Ilが流れ、左上コイル部62Dに反時計回りの電流Ilが流れる。
【0064】
これらの電流Ilと磁界形成部5の4つの磁界形成器50により形成される固定的な磁界Hとの電磁作用によって、第1系統の駆動コイル61の右上コイル部61B、及び第2系統の駆動コイル62の左上コイル部62Dには、各々のコイル面に対して上向きのローレンツ力Fが発生するとともに、第1系統の駆動コイル61の左下コイル部61D、及び第2系統の駆動コイル62の右下コイル部62Bには、各々のコイル面に対して下向きのローレンツ力Fが発生する。また、図示を省略するが第1及び第2系統の駆動コイル61,62を流れる電流の向きが逆転すると、電磁作用によるローレンツ力Fの向きも反転する。
【0065】
これにより、揺動体40の外側揺動部42は、低速駆動信号の周波数flに従って第2軸A2周りに周期的に揺動する。また、外側揺動部42に第1トーションバーTB1を介して支持されている内側揺動部41も、外側揺動部42と一体となって第2軸A2周りに周期的に揺動するようになる。このような内側揺動部41及び外側揺動部42の第2軸A2周りの低速な揺動動作は、内側揺動部41の表面上に形成されているミラーMによる光ビームの副走査に用いられる。光ビームの副走査は、後述する主走査による光ビームの変位方向に対して直交する方向に光ビームを変位させる動作となる。
【0066】
一方、高速駆動信号が第1系統の駆動コイル61に対して正相の信号として供給され、第2系統の駆動コイル62に対して逆相の信号として供給されることにより、例えば図8に示すように、第1系統の駆動コイル61における右上コイル部61Bに反時計回りの電流Ihが流れ、左下コイル部61Dに時計回りの電流Ihが流れるとともに、第2系統の駆動コイル62における右下コイル部62Bに反時計回りの電流Ihが流れ、左上コイル部62Dに時計回りの電流Ihが流れる。
【0067】
これらの電流Ihと磁界形成部5の4つの磁界形成器50により形成される固定的な磁界Hとの電磁作用によって、第1系統の駆動コイル61の右上コイル部61B、及び第2系統の駆動コイル62の右下コイル部62Bには、各々のコイル面に対して上向きのローレンツ力Fが発生するとともに、第1系統の駆動コイル61の左下コイル部61D、及び第2系統の駆動コイル62の左上コイル部62Dには、各々のコイル面に対して下向きのローレンツ力Fが発生する。また、図示を省略するが第1及び第2系統の駆動コイル61,62を流れる電流の向きが逆転すると、電磁作用によるローレンツ力Fの向きも反転する。
【0068】
これにより、揺動体40の外側揺動部42は、第2トーションバーTB2の存在により大きくは変位しないものの、第1軸A1の周りで僅かな周期的なねじり回転(つまり変位角の周期的な変動)を与えられる。この僅かな周期的なねじり回転は、外側揺動部42から第1トーションバーTB1を介して内側揺動部41に伝わり、内側揺動部41を第1軸A1周りに揺動させる。このような第1軸A1周りの揺動が共振条件を満たす場合、内側揺動部41は、高速駆動信号の周波数fhに従って第1軸A1周りに比較的大きな振幅で周期的に揺動するようになる。このような内側揺動部41の第1軸A1周りの高速な揺動動作は、内側揺動部41の表面上に形成されているミラーMによる光ビームの前述した主走査に用いられる。本実施形態では、ミラーMで反射された光ビームが、主走査によって周波数fhに対応した周期で第2軸A2に沿う方向へ高速移動すると同時に、副走査によって周波数flに対応した周期で第1軸A1に沿う方向へ低速移動することで、最終的に面走査を行うことが可能になる。
【0069】
図9は、電磁駆動された揺動体40の状態を示す斜視図である。
上記のようにして駆動制御回路3の駆動部31で生成された低速駆動信号及び高速駆動信号がコイル部6の2つの系統の駆動コイル61,62に供給されることで可動部4の揺動体40が電磁駆動されると、該揺動体40の内側揺動部41及び外側揺動部42は、図9に示すように、主走査に対応した周波数fhで第1軸A1周りに揺動するとともに、副走査に対応した周波数flで第2軸A2周りに揺動する。
【0070】
このとき、内側揺動部41の第1軸A1周りの揺動と外側揺動部42の第1軸A1周りの揺動とは相反する方向、すなわち、内側揺動部41及び外側揺動部42が第1軸A1周りに互い違いに揺動する。図9に例示した状態では、内側揺動部41における第1軸A1の右側の第1領域41が基準面よりも下方に変位(第1軸A1の左側の第2領域41が基準面よりも上方に変位)しているのに対して、外側揺動部42における第1軸A1の右側の第3領域42が基準面よりも上方に変位(第1軸A1の左側の第4領域42が基準面よりも下方に変位)している。外側揺動部42の第1軸A1周りの変位は、第2トーションバーTB2により制限される。このため、外側揺動部42の揺動角(基準面に対する変位角)は、内側揺動部41の第1軸A1周りの揺動角よりも小さくなっている。なお、基準面は、第1軸A1及び第2軸A2に平行な平面である。
【0071】
第2軸A2周りについては、内側揺動部41及び外側揺動部42が一体となって同じ方向に揺動する。図9に例示した状態では、僅かではあるが第2軸A2よりも手前側の領域が基準面よりも上方に変位(第2軸A2よりも奥側の領域が基準面よりも下方に変位)している。上記のような揺動体40の第1及び第2軸A1,A2周りの周期的な揺動によって、内側揺動部41の表面上に形成されているミラーMによる光ビームの2次元的な走査、すなわち、主走査および副走査の組み合わせによる面走査が可能になっている。
【0072】
次に、本実施形態による電磁アクチュエータ1における揺動角の検出動作を説明する。
まず、揺動体40の内側揺動部41における第1軸A1周りの揺動角検出動作について図10を参照しながら詳しく説明する。
前述したように駆動制御回路3から2つの系統の駆動コイル61,62への駆動信号の供給により揺動体40が電磁駆動され、揺動体40の内側揺動部41が第1軸A1周りに揺動すると、内側揺動部41の表面上に形成されている高速検出コイル63の第1配線部63(右内側配線部63D)、及び第2配線部63(左内側配線部63H)が、磁界形成部5により形成される固定的な磁界内を移動する。これにより、第1配線部63(63D)及び第2配線部63(63H)のそれぞれに起電圧が発生して誘導電流が流れる。
【0073】
具体的に、内側揺動部41の第1領域41に形成されている高速検出コイル63の第1配線部63(63D)には、図10の白抜き矢印に示すような内側揺動部41の表面に沿って第1軸A1から離れる方向(右方向)の第1磁界H1が与えられている。この第1磁界H1は、磁界形成部5の4つの磁界形成器50(図1)のうち、右上及び右下に配置されている各磁界形成器50によって形成される固定的な漏れ磁界である。また、内側揺動部41の第2領域41に形成されている高速検出コイル63の第2配線部63(63H)には、上記第1磁界H1とは反対方向(左方向)の第2磁界H2が磁界形成部5により与えられている。この第2磁界H2は、磁界形成部5の4つの磁界形成器50(図1)のうち、左上及び左下に配置されている各磁界形成器50によって形成される固定的な漏れ磁界である。
【0074】
上記のような第1及び第2磁界H1,H2が与えられている揺動体40の内側揺動部41が、前述の図9に例示した状態、すなわち、内側揺動部41における第1軸A1の右側の第1領域41が基準面よりも下方に変位(第1軸A1の左側の第2領域41が基準面よりも上方に変位)した状態では、高速検出コイル63の第1配線部63(63D)に、図10の太線矢印に示すような下向きの誘導電流Iが発生するとともに、第2配線部63(63H)に下向きの誘導電流Iが発生する。つまり、高速検出コイル63の第1及び第2配線部63(63D),63(63H)には同方向の誘導電流I,Iが発生する。高速検出コイル63の第1配線部63(63D)と第2配線部63(63H)とは、左下接続部63E、左外側配線部63F及び左上接続部63Gを介して直列的に接続されているので、第1及び第2配線部63(63D),63(63H)で発生する各誘導電流I,Iは、高速検出コイル63の全体において共通の方向に流れることになる。
【0075】
また、上記のような内側揺動部41の揺動と互い違いに外側揺動部42が第1軸A1周りに揺動すると、外側揺動部42の中央環状部分42Aの表面上に形成されている高速検出コイル63の第3配線部63(右上外側配線部63Bと右下外側配線部63J)、及び第4配線部63(左外側配線部63F)が、磁界形成部5により形成される固定的な磁界内を移動する。これにより、第3配線部63(63B,63J)及び第4配線部63(63F)のそれぞれに起電圧が発生して誘導電流が流れる。
【0076】
具体的に、高速検出コイル63の第3配線部63(63B,63J)には前述した第1磁界H1が与えられ、高速検出コイル63の第4配線部63(63F)には前述した第2磁界H2が与えられている(図10の白抜き矢印)。このような第1及び第2磁界H1,H2が与えられている揺動体40の外側揺動部42が、前述の図9に例示した状態、すなわち、外側揺動部42における第1軸A1の右側の第3領域42が基準面よりも上方に変位(第1軸A1の左側の第4領域41が基準面よりも下方に変位)した状態では、高速検出コイル63の第3配線部63(63B,63J)に、上向きの誘導電流Iが発生するとともに、第4配線部63(63F)に上向きの誘導電流Iが発生する(図10の太線矢印)。つまり、高速検出コイル63の第3及び第4配線部63(63B,63J),63(63F)には同方向の誘導電流I,Iが発生する。
【0077】
したがって、内側揺動部41と外側揺動部42とが第1軸A1周りに互い違いに揺動することによって、第1軸A1の一方側(右側)で対向配置されている、高速検出コイル63の第1配線部63(63D)と第3配線部63(63B,63J)とには、逆方向の誘導電流I,Iが発生する。これと同様に、第1軸A1の他方側(左側)で対向配置されている、高速検出コイル63の第2配線部63(63H)と第4配線部63(63F)とにも、逆方向の誘導電流I,Iが発生する。
【0078】
前述したように高速検出コイル63は、内側揺動部41と外側揺動部42との間に形成された隙間部分の周りを一筆書きで囲むように配線が施されており、第1~第4配線部63~63が直列的に接続されているので、第1~第4配線部63~63で発生する各誘導電流I~Iは、高速検出コイル63の全体において共通の方向に流れることになる。
【0079】
上記のように揺動体40の内側揺動部41及び外側揺動部42が第1軸A1周りに揺動することによって、高速検出コイル63には、第1~第4配線部63~63で発生する各誘導電流I~Iを足し合わせた大きな誘導電流が流れるようになり、該誘導電流が高速側のモニタ信号として駆動制御回路3の高速制御部32Hに与えられる。高速制御部32Hでは、高速検出コイル63からのモニタ信号が増幅回路321Hで増幅された後にアナログ-デジタル変換回路322Hでデジタル化されて、ピーク検出回路323H及びタイミング検出回路324Hにそれぞれ与えられる。
【0080】
ピーク検出回路323Hでは、高速側のモニタ信号における振幅のピーク値が検出されることにより、揺動体40の内側揺動部41における第1軸A1周りの揺動角(振れ角)情報が取得される。また、タイミング検出回路324Hでは、高速側のモニタ信号におけるゼロクロスタイミングが検出されることにより、内側揺動部41の揺動動作における位相情報が取得される。ピーク検出回路323H及びタイミング検出回路324Hで取得された内側揺動部41の揺動角情報及び位相情報は、高周波側の駆動信号生成回路311Hに与えられる。
【0081】
駆動信号生成回路311Hでは、ピーク検出回路323Hからの揺動角情報に基づいて高速駆動信号の振幅がフィードバック制御されるとともに、タイミング検出回路324Hからの位相情報に基づいて高速駆動信号の位相がフィードバック制御される。これにより、内側揺動部41の第1軸A1周りの揺動動作が所望の振幅及び位相(タイミング)で一定に保たれるようになる。
【0082】
続いて、揺動体40の外側揺動部42における第2軸A2周りの揺動角検出動作について図11を参照しながら詳しく説明する。
前述したように駆動制御回路3から2つの系統の駆動コイル61,62への駆動信号の供給により揺動体40が電磁駆動され、揺動体40の外側揺動部42が第2軸A2周りに揺動すると、外側揺動部42の表面上の外縁部分を周回するように形成されている低速検出コイル64の上側配線部64B及び下側配線部64Cが、磁界形成部5により形成される固定的な磁界内を移動する。これにより、上側配線部64B及び下側配線部64Cのそれぞれに起電圧が発生して誘導電流が流れる。
【0083】
具体的に、低速検出コイル64の上側配線部64Bには、図11の白抜き矢印に示すように、磁界形成部5の4つの磁界形成器50(図1)のうち、右上及び左上に配置されている各磁界形成器50によって形成される固定的な磁界Hが与えられている。このような磁界Hが与えられている揺動体40の外側揺動部42が、前述の図9に例示した状態、すなわち、外側揺動部42における第2軸A2よりも手前側の領域が基準面よりも上方に変位(第2軸A2よりも奥側の領域が基準面よりも下方に変位)した状態では、低速検出コイル64の上側配線部64Bに、図11の太線矢印に示すような反時計回りの誘導電流Iuが発生する。また、低速検出コイル64の下側配線部64Cには、時計回りの誘導電流Idが発生する。
【0084】
低速検出コイル64の上側配線部64B及び下側配線部64Cは、右側引出部64Aと左側引出部64Dとの間で並列的に接続されている。このため、低速検出コイル64の全体では、上側配線部64Bで発生する誘導電流Iuと下側配線部64Cで発生する誘導電流Idとを足し合わせた誘導電流が流れるようになり、該誘導電流が低速側のモニタ信号として駆動制御回路3の低速制御部32Lに与えられる。低速制御部32Lでは、低速検出コイル64からのモニタ信号が増幅回路321Lで増幅された後にアナログ-デジタル変換回路322Lでデジタル化されて、ピーク検出回路323L及びタイミング検出回路324Lにそれぞれ与えられる。
【0085】
ピーク検出回路323Lでは、低速側のモニタ信号における振幅のピーク値が検出されることにより、揺動体40の外側揺動部42における第2軸A2周りの揺動角(振れ角)情報が取得される。また、タイミング検出回路324Lでは、低速側のモニタ信号におけるゼロクロスタイミングが検出されることにより、外側揺動部42の揺動動作における位相情報が取得される。ピーク検出回路323L及びタイミング検出回路324Lで取得された外側揺動部42の揺動角情報及び位相情報は、低周波側の駆動信号生成回路311Lに与えられる。
【0086】
駆動信号生成回路311Lでは、ピーク検出回路323Lからの揺動角情報に基づいて低速駆動信号の振幅がフィードバック制御されるとともに、タイミング検出回路324Lからの位相情報に基づいて低速駆動信号の位相がフィードバック制御される。これにより、外側揺動部42の第2軸A2周りの揺動動作が所望の振幅及び位相(タイミング)で一定に保たれるようになる。
【0087】
以上説明したように本実施形態では、電磁アクチュエータ1の可動部4を構成する揺動体40の内側揺動部41が第1軸A1周りに揺動可能であり、内側揺動部41の表面上に設けた高速検出コイル63を流れる誘導電流を基に内側揺動部41の揺動角の検出が行われる。このとき、内側揺動部41の第1軸A1を挟んだ第1及び第2領域41,41に対して、内側揺動部41の表面に沿った逆向きの第1及び第2磁界H1,H2が与えられていても、高速検出コイル63における内側揺動部41の第1及び第2領域41,41に設けた第1及び第2配線部63,63に発生する各誘導電流I,Iが同方向となるように高速検出コイル63の配線パターンを工夫することによって、誘導電流I,Iを加算した大きな誘導電流が高速検出コイル63を流れるようになるので、該誘導電流を基に内側揺動部41の揺動角を検出することが可能になる。
【0088】
上記のような高速検出コイル63を流れる誘導電流を基に検出した揺動角に関する情報を利用して、揺動体40の内側揺動部41を電磁駆動するための高速駆動信号のフィードバック制御を行うことにより、内側揺動部41の第1軸A1周りの揺動を高い精度で制御することができる。本実施形態では、内側揺動部41の第1及び第2領域41,41に光を反射するミラーMが形成されているので、ミラーMによる反射光を第1軸A1に直交する方向に精度良く走査することが可能になる。
【0089】
また、本実施形態では、揺動体40の内側揺動部41が外側揺動部42によって第1軸A1周りに揺動可能に支持されており、外側揺動部42がその外側に配置された支持体43によって第1軸A1と交差する第2軸A2周りに揺動可能に支持されている。このような構成においては、内側揺動部41及びその表面に形成されたミラーMによる反射光が2次元的に走査されるようになる。このとき、高速検出コイル63を流れる誘導電流を基にして、2次元的に走査される内側揺動部41における第1軸A1周りの揺動角を検出することができる。
【0090】
さらに、本実施形態における高速検出コイル63には、外側揺動部42の第1軸A1を挟んだ第3及び第4領域41,41に第3及び第4配線部63,63が設けられており、それらの第3及び第4配線部63,63に発生する各誘導電流I,Iが同方向となり、かつ、第1及び第2配線部63,63に発生する各誘導電流I,Iと第3及び第4配線部63,63に発生する各誘導電流I,Iとが逆方向となるように、高速検出コイル63の配線パターンが工夫されている。これにより、各々の誘導電流I~Iを加算した更に大きな誘導電流が高速検出コイル63を流れるようになるので、該誘導電流を基に内側揺動部41の第1軸A1周りの揺動角を確実に検出することが可能になる。
【0091】
上記のような高速検出コイル63を流れる誘導電流を基に検出した揺動角に関する情報を利用して高速駆動信号のフィードバック制御を行うことにより、2次元的に走査される内側揺動部41の第1軸A1周りの揺動状態を高い精度で制御することができる。特に、外側揺動部42の表面上に低速検出コイル64を設け、低速検出コイル64の上側配線部64B及び下側配線部64Cが、外側揺動部42の外縁部分を周回するように形成されるようにすれば、低速検出コイル64を流れる誘導電流を基に内側揺動部41及び外側揺動部42の第2軸A2周りの揺動角を検出することもできる。これにより、内側揺動部41及びその表面に形成されたミラーMによる反射光の2次元的な走査を精度良く制御することが可能になる。
【0092】
以上、本発明の実施形態について述べたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、揺動体40が内側揺動部41及び外側揺動部42を有し、第1及び第2軸A1,A2の周りに揺動可能に軸支されている一例を説明したが、単一の軸周りに揺動可能に軸支された揺動体であっても、該揺動体の単一軸周りの揺動角を本発明によって検出することが可能である。
【0093】
また、上述した実施形態では、ミラーMが内側揺動部41の第1及び第2領域41,41の両方に形成されている一例を示したが、第1及び第2領域41,41のいずれか一方にミラーMが形成されていてもよい。また、揺動体の表面だけでなく裏面にもミラーが設けられていても構わない。或いは、ミラーが設けられていない揺動体の揺動角検出にも本発明は有効である。ミラーが設けられていない揺動体の具体的な一例としては、揺動体の変位に応じて揺れや加速度を検知する地震計などのセンサがある。
【符号の説明】
【0094】
1…電磁アクチュエータ、2…光走査デバイス、3…駆動制御回路、4…可動部、5…磁界形成部、6…コイル部、31…駆動部、32H…高速制御部、32L…低速制御部、40…揺動体、41…内側揺動部、41…第1領域、41…第2領域、42…外側揺動部、42A…中央環状部分、42B…周辺環状部分、42…第3領域、42…第4領域、43…支持体、50…磁界形成器、51…第1磁石、52…第2磁石、61,62…駆動コイル、63…高速検出コイル、63…第1配線部、63…第2配線部、63…第3配線部、63…第4配線部、64…低速検出コイル、A1…第1軸、A2…第2軸、H1…第1磁界、H2…第2磁界、I~I…誘導電流、TB1…第1トーションバー、TB2…第2トーションバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11