(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003722
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】対象アイテム取引システム及び対象アイテム取引方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0601 20230101AFI20240105BHJP
G06Q 20/12 20120101ALI20240105BHJP
【FI】
G06Q30/06 300
G06Q20/12 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103076
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】522232765
【氏名又は名称】株式会社Unison Arts
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】丸山 倫央
(72)【発明者】
【氏名】須田 祐介
【テーマコード(参考)】
5L049
5L055
【Fターム(参考)】
5L049BB22
5L055AA27
(57)【要約】
【課題】 非代替トークンを付帯させた対象アイテムを通信ネットワーク上にて売買取引するに際し、対象アイテムの取引に直接関与しない評価者や応援者の意思を対象アイテムの取引価格に反映することができるようにする。
【解決手段】 応援人は端末(この場合、応援者端末)から、出品された対象アイテムに対し応援媒体を投票でき、管理コンピュータは、該投票を通信ネットワークを介して受け付けるとともに、応援媒体の得票数が多くなるほど高額となるように対象アイテムの販売価格を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末と、通信ネットワークを介して前記端末と通信可能な管理コンピュータを備え、取引対象となるデジタル著作物及び物品の少なくともいずれかからなるアイテム本体に、前記通信ネットワーク下に構築されたブロックチェーンにおいて取引可能な前記アイテム本体に固有の非代替トークンを付帯させた対象アイテムを前記通信ネットワーク上にて売買取引するシステムであって、
前記管理コンピュータが、
前記複数の端末に含まれる1以上のものをなす応援者端末から、前記対象アイテムを評価又は販売応援するための電子投票媒体であって、単位数量当たりの発行価格が予め定められている応援媒体の、前記対象アイテムの応援人による購入要求である媒体購入要求を前記通信ネットワークを介して受信することにより受け付け、
前記応援人と紐づけた媒体口座を前記通信ネットワーク上に開設し、
前記応援媒体の購入対価の、法定通貨又は仮想通貨を用いた電子決済の完了と引き換えに前記応援媒体を前記購入対価に相当する数量にて、前記媒体購入要求を送信した前記応援人の前記媒体口座に発行し、
前記対象アイテムを前記通信ネットワーク上にて売買出品するために、前記対象アイテムの非代替トークンを前記ブロックチェーンにミントするとともに、前記対象アイテムの出品情報を前記通信ネットワーク上にアップロードし、
前記端末に設けられた表示装置に前記出品情報を閲覧のために出力するともに、前記対象アイテムへの前記応援人による前記応援媒体の投票を前記応援者端末から前記通信ネットワークを介して受け付け、
前記応援媒体の得票数に基づき、該得票数が多くなるほど高額となるように前記対象アイテムの販売価格を決定し、
決定された前記対象アイテムの販売価格を前記複数の端末に通知し、
前記販売価格の通知を受けた前記複数の端末のうちの1つのものを譲受人端末として、譲受人による前記対象アイテムの購入申込を前記譲受人端末から受け付け、
前記対象アイテムが獲得した前記応援媒体の得票数に基づいて、前記対象アイテムの前記販売価格に占める前記応援人への配分利益である応援人利益を算出し、さらに前記販売価格に予め定められた第一の料率を乗じることにより前記対象アイテムの販売管理手数料を算出するとともに、前記応援人利益及び前記販売管理手数料を含む形で利益控除額を決定し、
前記対象アイテムの取引規則を定める規則情報、前記対象アイテムの販売取引に用いられる仮想通貨に関する情報、及び前記対象アイテムの譲渡履歴を格納する複数のブロックを連結したブロックチェーンを取得し、
前記ブロックチェーンに書き込まれている前記譲渡履歴から前記対象アイテムの現在の所有者を特定し、
前記取引規則に従った手順が実行されることによって、少なくとも前記利益控除額に相当する金額の仮想通貨が前記譲受人から前記対象アイテムの販売取引管理団体に前記通信ネットワークを介して送金され、前記販売価格から前記利益控除額を減じた金額に相当する仮想通貨が、前記譲受人又は前記対象アイテムの販売取引管理団体のいずれかから前記対象アイテムの譲渡人となる前記現在の所有者に前記通信ネットワークを介して送金されることを条件として、前記対象アイテムの所有者移転情報を追加した新たな譲渡履歴を前記ブロックチェーンに追加する、
動作を実行するようプログラムされていることを特徴とする対象アイテム取引システム。
【請求項2】
前記管理コンピュータが、
前記取引規則に従った手順が実行されることによって、前記利益控除額に相当する仮想通貨のみが前記譲受人から前記対象アイテムの販売取引管理団体に前記通信ネットワークを介して送金され、前記販売価格から前記利益控除額を減じた金額に相当する仮想通貨が、前記譲受人から前記対象アイテムの譲渡人となる前記現在の所有者に前記通信ネットワークを介して送金されることを条件として、前記対象アイテムの所有者移転情報を追加した新たな譲渡履歴を前記ブロックチェーンに追加する、
動作を実行するようプログラムされている請求項1記載の対象アイテム取引システム。
【請求項3】
前記管理コンピュータが、
各前記応援人の前記媒体口座において、発行済みの前記応援媒体の数量を未投票媒体と投票中媒体とに区分して管理するとともに、前記対象アイテムへの投票が確定した媒体数量を前記未投票媒体から減ずる一方、該媒体数量を前記投票中媒体に加算し、
前記対象アイテムの売買取引が成立することを返還条件として、前記応援媒体の前記対象アイテムへの投票数量を、前記媒体口座において前記投票中媒体の数量から減ずる一方、前記投票数量の少なくとも一部を前記未投票媒体の数量に加算することにより、前記投票中媒体の少なくとも一部を前記媒体口座に再投票可能な状態で返還する、
動作を実行するようプログラムされている請求項1又は請求項2に記載の対象アイテム取引システム。
【請求項4】
前記管理コンピュータが、
各前記応援人の前記媒体口座において、発行済みの前記応援媒体の数量を未投票媒体と投票中媒体とに区分して管理するとともに、前記対象アイテムへの投票が確定した媒体数量を前記未投票媒体から減ずる一方、該媒体数量を前記投票中媒体に加算し、
前記対象アイテムに対し予め定められた長さを有する出品期間を設定し、
前記出品期間が満了した時点で前記対象アイテムの売買取引が未成立となることを返還条件として、前記応援媒体の前記対象アイテムへの投票数量を、前記媒体口座において前記投票中媒体の数量から減ずる一方、前記投票数量の少なくとも一部を前記未投票媒体の数量に加算することにより、前記投票中媒体の少なくとも一部を前記媒体口座に再投票可能な状態で返還する、
動作を実行するようプログラムされている請求項3に記載の対象アイテム取引システム。
【請求項5】
前記管理コンピュータが、
前記返還条件が成立するに伴い、前記投票中媒体の全数量を前記媒体口座に再投票可能な状態で返還する、
動作を実行するようプログラムされている請求項3又は請求項4に記載の対象アイテム取引システム。
【請求項6】
前記管理コンピュータが、
発行した前記応援媒体に予め定められた有効期限を設定し、
前記媒体口座に存する前記未投票媒体のうち、前記有効期限の到来したものの数量を無効化する、
動作を実行するようプログラムされている請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の対象アイテム取引システム。
【請求項7】
前記管理コンピュータが、
前記媒体口座に存する前記投票中媒体のうち、前記有効期限の到来したものの数量を、前記返還条件が成立することを条件に無効化する、
動作を実行するようプログラムされている請求項6に記載の対象アイテム取引システム。
【請求項8】
前記管理コンピュータが、
前記対象アイテムに対する前記応援媒体の得票数を前記応援人別に集計することにより応援人別得票数を求め、
前記販売価格に予め定められた第二の料率を乗じることにより前記対象アイテムに設定する前記応援人利益の総額を総応援人利益として算出し、
算出された前記総応援人利益を、前記応援人別得票数に応じて各前記応援人に配分した利益額を応援人別利益額として算出する、
動作を実行するようプログラムされている請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の対象アイテム取引システム。
【請求項9】
前記管理コンピュータが、
前記対象アイテムに対する前記応援媒体の得票数を集計し、
集計された前記得票数に予め定められた第三の料率を乗じて価格増分を算出するとともに、前記販売開始価格に前記価格増分を加算した金額により前記販売価格を更新し、
更新された前記販売価格を前記複数の端末に通知する、
動作を実行するようプログラムされている請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の対象アイテム取引システム。
【請求項10】
前記管理コンピュータが、
前記対象アイテムに対し予め定められた期間長を有する出品期間を、複数の利益ゾーン期間に分割した形で設定し、
各前記応援人に対する単位投票数当たりの前記応援人利益の配分金額を、時系列的に上流に位置する利益ゾーン期間に前記応援媒体を投票した応援人に対し、それよりも時系列的に下流に位置する利益ゾーン期間に前記応援媒体を投票した応援人よりも高額に設定する、
動作を実行するようプログラムされている請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の対象アイテム取引システム。
【請求項11】
前記管理コンピュータが、
前記対象アイテムの所有者移転情報を追加した新たな譲渡履歴を前記ブロックチェーンに追加するに際し、前記対象アイテムへの前記応援媒体の投票数が反映された情報である応援獲得情報を、前記譲渡履歴とともに前記ブロックチェーンに追加する、
動作を実行するようプログラムされている請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の対象アイテム取引システム。
【請求項12】
前記管理コンピュータが、
前記対象アイテムの前記譲受人による購入を証明する証明書データを作成し、
前記対象アイテムの所有者移転情報を追加した新たな譲渡履歴を前記ブロックチェーンに追加するに際し、前記譲渡履歴とともに前記証明書データを前記ブロックチェーンに追加する、
動作を実行するようプログラムされている請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の対象アイテム取引システム。
【請求項13】
前記証明書データは、前記対象アイテムの前記譲受人による購入証明内容とともに前記対象アイテムへの前記応援媒体の投票数が反映された情報である応援獲得情報が記載された証明書の画像データである請求項12に記載の対象アイテム取引システム。
【請求項14】
複数の端末と通信ネットワークを介して通信可能な管理コンピュータを用いて、取引対象となるデジタル著作物及び物品の少なくともいずれかからなるアイテム本体に、前記通信ネットワーク下に構築されたブロックチェーンにおいて取引可能な前記アイテム本体に固有の非代替トークンを付帯させた対象アイテムを前記通信ネットワーク上にて売買取引する方法であって、プログラムに従い前記管理コンピュータが実行する手順として、
前記複数の端末に含まれる1以上のものをなす応援者端末から、前記対象アイテムを評価又は販売応援するための電子投票媒体であって、単位数量当たりの発行価格が予め定められている応援媒体の、前記対象アイテムの応援人による購入要求である媒体購入要求を前記通信ネットワークを介して受信することにより受け付けること、
前記応援人と紐づけた媒体口座を前記通信ネットワーク上に開設すること、
前記応援媒体の購入対価の、法定通貨又は仮想通貨を用いた電子決済の完了と引き換えに前記応援媒体を前記購入対価に相当する数量にて、前記媒体購入要求を送信した前記応援人の前記媒体口座に発行すること、
前記対象アイテムを前記通信ネットワーク上にて売買出品するために、前記対象アイテムの非代替トークンを前記ブロックチェーンにミントするとともに、前記対象アイテムの出品情報を前記通信ネットワーク上にアップロードすること、
前記端末に設けられた表示装置に前記出品情報を閲覧のために出力するともに、前記対象アイテムへの前記応援人による前記応援媒体の投票を前記応援者端末から前記通信ネットワークを介して受け付けること、
前記応援媒体の得票数に基づき、該得票数が多くなるほど高額となるように前記対象アイテムの販売価格を決定すること、
決定された前記対象アイテムの販売価格を前記複数の端末に通知すること、
前記販売価格の通知を受けた前記複数の端末のうちの1つのものを譲受人端末として、譲受人による前記対象アイテムの購入申込を前記譲受人端末から受け付けること、
前記対象アイテムが獲得した前記応援媒体の得票数に基づいて、前記対象アイテムの前記販売価格に占める前記応援人への配分利益である応援人利益を算出し、さらに前記販売価格に予め定められた第一の料率を乗じることにより前記対象アイテムの販売管理手数料を算出するとともに、前記応援人利益及び前記販売管理手数料を含む形で利益控除額を決定すること、
前記対象アイテムの取引規則を定める規則情報、前記対象アイテムの販売取引に用いられる仮想通貨に関する情報、及び前記対象アイテムの譲渡履歴を格納する複数のブロックを連結したブロックチェーンを取得すること、
前記ブロックチェーンに書き込まれている前記譲渡履歴から前記対象アイテムの現在の所有者を特定すること、
記取引規則に従った手順が実行されることによって、前記販売価格から前記利益控除額を減じた金額に相当する仮想通貨が、前記譲受人又は前記対象アイテムの販売取引管理団体のいずれかから前記対象アイテムの譲渡人となる前記現在の所有者に前記通信ネットワークを介して送金されることを条件として、前記対象アイテムの所有者移転情報を追加した新たな譲渡履歴を前記ブロックチェーンに追加すること、
ことを含む特徴とする対象アイテム取引方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物品あるいはデジタル著作物に固有の非代替トークンを付帯させた対象アイテムを通信ネットワーク上にて売買取引するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のアーティストやコレクターの端末とサーバとを含む作品販売システムとして、作品情報、作者情報、価格情報、出品情報、付加情報、過去取引情報を管理し、作品が転売された場合に、転売価格の一部を、作者に還元する作品販売システムが開示されている。
【0003】
近年、例えばデジタルアート、デジタル動画作品、デジタル音楽作品、ゲームアイテム、さらにはトレーディングカード等のデジタル資産や、さらには有体の芸術作品や工芸品等の物品に対して、その唯一性や所有者を証明することができる非代替性トークン(Non-Fungible Token:以下、NFTともいう)が注目されている。そして、そのNFTを扱うマーケットプレイス(NFTマーケットプレイス)が開設されており、NFTマーケットプレイスを利用してNFTを購入したり販売したりすることができるようになっている。引用文献2~4には、商品の偽物等の流通を防止するために、ブロックチェーンを用いて商品の所有権の移行履歴を管理するシステムが開示されている。
【0004】
他方、特許文献5には、アーティストとそのファンであるユーザとをネットワークを介して結び付けることにより、アーティストのイベント情報などをユーザに提供して、イベントのチケットなどの購買行動を促進できるようにしたシステムが開示されている。こうしたシステムにおいて、アーティストあるいは楽曲等の応援を行うために、いわゆる「投げ銭」と呼ばれる仕組みが一般化しつつある。特許文献6には、次のようなシステムが開示されている。すなわち、ユーザ端末にて、仮想ライブ配信サーバからのストリーミングデータを受信して再生することにより、仮想的に演奏会を視聴することができるとともに、ユーザは、リワード取得あるいは仮想通貨により購入したポイントを投げ銭として、仮想ライブ配信サーバに送信できる。仮想ライブ配信サーバからは投げ銭として支払われたポイントは管理サーバに通知され、管理サーバでは、そのポイントを会場、ライブの運営者、あるいは演奏者などに分配することができる。
【0005】
また、特許文献7には、次のような機能を具備したシステムが提案されている。該システムではユーザに対し、特定のアーティストに関連しない商品の支払対価に応じた特典として共通ポイントが付与される一方、特定のアーティストに関連する商品を購入した際には、アーティスト別にエールポイント(応援ポイント)が付与される。ユーザによる購入支払額が多いアーティストほど、エールポイント付与数が多くなることになり、アーティスト別のエールポイントの獲得数を閲覧できるようにすることで、ユーザにより応援されている度合いの強いアーティストが誰であるかを情報発信することが可能となる。ユーザは、特定のアーティストのエールポイント保有数が特定数に到達するごとに、当該アーティストのプレミアムカードを受け取るといった特典を享受できるようにされている。該特許文献6には、共通ポイントを仮想通貨の支払いにより直接購入する機能、ユーザの意思により、保有する共通ポイントを支持するアーティストに向けられたエールポイントに交換する機能が開示されている。その結果、共通ポイントを経由した形ではあるが、ユーザは贔屓のアーティストに対するエールポイントを自分の意思で増やすことができる。他方、エールポイントから共通ポイントへの逆交換も可能にされており、贔屓のアーティストの乗り換えを行ったユーザは、乗り換え前のアーティストのエールポイントを、共通ポイントへの逆交換を経た後、乗り換え後のアーティストのエールポイントに転換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4279343号公報
【特許文献2】特許第6656628号公報
【特許文献3】特許第6391128号公報
【特許文献4】特許第6710401号公報
【特許文献5】再公表WO2016/035424号公報
【特許文献6】特開2019-220029号公報
【特許文献7】特開2021-071903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1のシステムにおいては、多くの人がアーティストの作品を鑑賞して評価できるようにし、かつ適正な価格で取引されるようにし、さらに取引価格の一部を合理的にアーティストに還元することによって、アーティストの創作意欲の増進を図り、アーティスト作品の取引市場を活発化させることが目的として標榜されている。そして、これを実現するために、NFT化された作品(アイテム)を、最新のブロックチェーン技術により取引の透明性や利益取得の追求性を高めた上で、インターネット上でオークション販売するようにしている。しかし、この方式では、アーティストの作品の価格には、初めから作品購入の意思がある入札者の意思が反映されるのみであり、インターネット上での閲覧によって仮にその作品に高い価値を見出したユーザが相当数存在したとしても、価格が吊り上がっていれば入札することができず、作品価値の客観的な評価には貢献できない。また、仮に入札できたとしても、自分が落札できなければ、オークション(結果的に作品の評価)に参加しても、何らの見返りも得ることはできない。
【0008】
例えば、入札はせず閲覧のみ行なうユーザを応援者として、その応援者による評価情報(例えば「いいね」等)を取得・開示できるようにしたとしても、それらの評価情報が作品の取引価格を上げるための、直接的かつ確定的な機能を発揮することにはならない。一方、特許文献6の投げ銭は、ストリートライブなどへの一過性のパフォーマンスへの寄付に近いものであり、特許文献7のエールポイントは、作品ではなくアーティストに対する支持表明の指標とされるものであって、いずれも特定の作品の取引価格に応援者の意思を反映させたり、取引価格に応じて応援者への見返り利益を担保させたりする機能を発揮することはできない。
【0009】
本発明の課題は、非代替トークンを付帯させた対象アイテムを通信ネットワーク上にて売買取引するに際し、対象アイテムの取引に直接関与しない評価者や応援者の意思を対象アイテムの取引価格に反映することができ、かつ、対象アイテムの取引が成立した際に、それら評価者や応援者にも見返りとなる利益を確定的に担保する機能を有した対象アイテム取引システム及び対象アイテム取引方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の端末と、通信ネットワークを介して端末と通信可能な管理コンピュータを備え、取引対象となるデジタル著作物及び物品の少なくともいずれかからなるアイテム本体に、通信ネットワーク下に構築されたブロックチェーンにおいて取引可能なアイテム本体に固有の非代替トークンを付帯させた対象アイテムを通信ネットワーク上にて売買取引するシステムであって、上記の管理コンピュータが、以下の動作を実行するようプログラムされていることを特徴とする。
・複数の端末に含まれる1以上のものをなす応援者端末から、対象アイテムを評価又は販売応援するための電子投票媒体であって、単位数量当たりの発行価格が予め定められている応援媒体の、対象アイテムの応援人による購入要求である媒体購入要求を通信ネットワークを介して受信することにより受け付ける。
・応援人と紐づけた媒体口座を通信ネットワーク上に開設する。
・応援媒体の購入対価の、法定通貨又は仮想通貨を用いた電子決済の完了と引き換えに応援媒体を購入対価に相当する数量にて、媒体購入要求を送信した応援人の媒体口座に発行する。
・対象アイテムを通信ネットワーク上にて売買出品するために、対象アイテムの非代替トークンをブロックチェーンにミントするとともに、対象アイテムの出品情報を通信ネットワーク上にアップロードする。
・端末に設けられた表示装置に出品情報を閲覧のために出力するともに、対象アイテムへの応援人による応援媒体の投票を応援者端末から通信ネットワークを介して受け付ける。
・応援媒体の得票数に基づき、該得票数が多くなるほど高額となるように対象アイテムの販売価格を決定する。
・決定された対象アイテムの販売価格を複数の端末に通知する。
・販売価格の通知を受けた複数の端末のうちの1つのものを譲受人端末として、譲受人による対象アイテムの購入申込を譲受人端末から受け付ける。
・対象アイテムが獲得した応援媒体の得票数に基づいて、対象アイテムの販売価格に占める応援人への配分利益である応援人利益を算出し、さらに販売価格に予め定められた第一の料率を乗じることにより対象アイテムの販売管理手数料を算出するとともに、応援人利益及び販売管理手数料を含む形で利益控除額を決定する。
・対象アイテムの取引規則を定める規則情報、対象アイテムの販売取引に用いられる仮想通貨に関する情報、及び対象アイテムの譲渡履歴を格納する複数のブロックを連結したブロックチェーンを取得する。
・ブロックチェーンに書き込まれている譲渡履歴から対象アイテムの現在の所有者を特定する。
・取引規則に従った手順が実行されることによって、少なくとも利益控除額に相当する金額の仮想通貨が譲受人から対象アイテムの販売取引管理団体に通信ネットワークを介して送金され、販売価格から利益控除額を減じた金額に相当する仮想通貨が、譲受人又は対象アイテムの販売取引管理団体のいずれかから対象アイテムの譲渡人となる現在の所有者に通信ネットワークを介して送金されることを条件として、対象アイテムの所有者移転情報を追加した新たな譲渡履歴をブロックチェーンに追加する。
【0011】
また、本発明は、複数の端末と、通信ネットワークを介して端末と通信可能な管理コンピュータを用いて、取引対象となるデジタル著作物及び物品の少なくともいずれかからなるアイテム本体に、前記通信ネットワーク下に構築されたブロックチェーンにおいて取引可能な前記アイテム本体に固有の非代替トークンを付帯させた対象アイテムを通信ネットワーク上にて売買取引する方法に関するものであり、プログラム従い管理コンピュータが実行する以下の手順を含むことを特徴とする。
・複数の端末に含まれる1以上のものをなす応援者端末から、対象アイテムを評価又は販売応援するための電子投票媒体であって、単位数量当たりの発行価格が予め定められている応援媒体の、対象アイテムの応援人による購入要求である媒体購入要求を通信ネットワークを介して受信することにより受け付けること。
・応援人と紐づけた媒体口座を通信ネットワーク上に開設すること。
・応援媒体の購入対価の、法定通貨又は仮想通貨を用いた電子決済の完了と引き換えに応援媒体を購入対価に相当する数量にて、媒体購入要求を送信した応援人の媒体口座に発行すること。
・対象アイテムを通信ネットワーク上にて売買出品するために、対象アイテムの非代替トークンをブロックチェーンにミントするとともに、対象アイテムの出品情報を通信ネットワーク上にアップロードすること。
・端末に設けられた表示装置に出品情報を閲覧のために出力するともに、対象アイテムへの応援人による応援媒体の投票を応援者端末から通信ネットワークを介して受け付けること。
・応援媒体の得票数に基づき、該得票数が多くなるほど高額となるように対象アイテムの販売価格を決定すること。
・決定された対象アイテムの販売価格を複数の端末に通知すること。
・販売価格の通知を受けた複数の端末のうちの1つのものを譲受人端末として、譲受人による対象アイテムの購入申込を譲受人端末から受け付けること。
・対象アイテムが獲得した応援媒体の得票数に基づいて、対象アイテムの販売価格に占める応援人への配分利益である応援人利益を算出し、さらに販売価格に予め定められた第一の料率を乗じることにより対象アイテムの販売管理手数料を算出するとともに、応援人利益及び販売管理手数料を含む形で利益控除額を決定すること。
・対象アイテムの取引規則を定める規則情報、対象アイテムの販売取引に用いられる仮想通貨に関する情報、及び対象アイテムの譲渡履歴を格納する複数のブロックを連結したブロックチェーンを取得すること。
・ブロックチェーンに書き込まれている譲渡履歴から対象アイテムの現在の所有者を特定すること。
・取引規則に従った手順が実行されることによって、販売価格から利益控除額を減じた金額に相当する仮想通貨が、譲受人又は対象アイテムの販売取引管理団体のいずれかから対象アイテムの譲渡人となる現在の所有者に通信ネットワークを介して送金されることを条件として、対象アイテムの所有者移転情報を追加した新たな譲渡履歴をブロックチェーンに追加すること。
【0012】
上記本発明のシステムないし方法における作用は、以下の通りである。
取引対象となるデジタル著作物及び物品の少なくともいずれかからなるアイテム本体に、通信ネットワーク下に構築されたブロックチェーンにおいて取引可能なアイテム本体に固有の非代替トークンを付帯させたものを売買取引の対象アイテムとする。対象アイテムの通信ネットワーク上での売買出品は、対象アイテムの非代替トークンをブロックチェーンにミントすることにより行なう。管理コンピュータは、対象アイテムの出品情報は通信ネットワーク上にアップロードし、端末の表示装置に出品情報を閲覧のために出力する。そして、複数の端末のうちの1つのものを譲受人端末として、譲受人による対象アイテムの購入申込を譲受人端末から受け付ける。
【0013】
他方、管理コンピュータは、複数の端末に含まれる1以上のものをなす応援者端末から、応援媒体の購入要求(媒体購入要求)を通信ネットワークを介して受信することにより受け付ける。この応援媒体は、応援人が対象アイテムを評価又は販売応援するための電子投票媒体であり、単位数量当たりの発行価格が予め定められている。また、応援人と紐づけた媒体口座が通信ネットワーク上に開設される。媒体購入要求を送信した応援人の媒体口座には、購入対価の決済完了と引き換えに、その購入対価に相当する数量の応援媒体が発行される。
【0014】
端末への出品情報は応援人と、対象アイテムの購入を望む譲受人の双方が閲覧可能である。応援人は端末(この場合、応援者端末)から、出品された対象アイテムに対し応援媒体を投票でき、管理コンピュータは、該投票を通信ネットワークを介して受け付けるとともに、応援媒体の得票数が多くなるほど高額となるように対象アイテムの販売価格を決定する。そして、対象アイテムが獲得した応援媒体の得票数に基づいて、対象アイテムの販売価格に占める応援人利益を算出し、また販売価格に予め定められた第一の料率を乗じることにより対象アイテムの販売管理手数料を算出するとともに、応援人利益及び販売管理手数料を含む形で利益控除額を決定する。
【0015】
対象アイテムは、改竄耐性の高いブロックチェーンにて固有の非代替トークンにより、取引規則、使用可能な仮想通貨、及び対象アイテムの譲渡履歴が特定されるようになっており、譲渡履歴における所有者移転情報の書き換えに関して上記の取引規則が、
(1)少なくとも利益控除額に相当する金額の仮想通貨が譲受人から対象アイテムの販売取引管理団体に通信ネットワークを介して送金され、
(2)販売価格から利益控除額を減じた金額に相当する仮想通貨が、譲受人又は対象アイテムの販売取引管理団体のいずれかから、対象アイテムの譲渡人となる現在の所有者に通信ネットワークを介して送金される、
の2つを条件として定めている。
【0016】
よって、本発明は以下の効果を奏することができる。
・応援人が購入する応援媒体が対象アイテムに投票可能であり、応援媒体の投票数が多い対象アイテムほど販売価格が高額となるように設定されるので、対象アイテムの対象アイテムの取引に直接関与しない応援人の意思を対象アイテムの販売価格(取引価格)に反映することができる。
・対象アイテムが獲得した応援媒体の得票数に基づいて、対象アイテムの販売価格に占める応援人への配分利益である応援人利益が決定されるようになっているので、対象アイテムの取引が成立した際に、応援人にも見返りとなる利益が確定的に担保される。ブロックチェーン上の対象アイテム固有のNFT(非代替トークン)に記録されている取引規則の(1)によって、応援人利益を含む利益控除額が、対象アイテムの販売取引管理団体に確実に送金されるので、有償で応援媒体を購入し投票した応援人が利益を逸失するリスクも小さい。
【0017】
以下、本発明に付加可能な要件についてさらに説明する。
管理コンピュータは、取引規則に従った手順が実行されることによって、利益控除額に相当する仮想通貨が譲受人から対象アイテムの販売取引管理団体に通信ネットワークを介して送金され、販売価格から利益控除額を減じた金額に相当する仮想通貨が、譲受人から対象アイテムの譲渡人となる現在の所有者に通信ネットワークを介して送金されることを条件として、対象アイテムの所有者移転情報を追加した新たな譲渡履歴をブロックチェーンに追加する、動作を実行するようプログラムしておくことができる。
【0018】
前述の取引規則の(1)については、利益控除額だけでなく、販売価格の全額に相当する金額の仮想通貨が譲受人から対象アイテムの販売取引管理団体に通信ネットワークを介して送金するようにシステムを構成することも可能である。しかし、この場合は、次のような課題を生じうる。すなわち、日本国内におけるトークンの扱いとして現時点では、要件1:不特定の者を相手方として、1号仮想通貨と交換することができる財産的価値であること、要件2:電子情報処理組織を用いて移転することができるもの、の2つの要件を満たした場合、当該トークンは2号仮想通貨として扱われ(資金決済法第2条第5項第2号)、2号仮想通貨の取引を行う場合には仮想通貨交換業が可能な取引業者である必要がある。NFTとして取り扱われる対象アイテムの販売価格の全額が対象アイテムの販売取引管理団体に送金されてしまうと、対象アイテムにかかるNFTは現時点では2号仮想通貨に該当する可能性があり、仮想通貨交換業が可能な取引業者でなければ、これを販売取引管理団体として取り扱うことができないおそれがある。
【0019】
これに対し、上記の構成によれば、販売取引管理団体に送金されるのは応援人利益及び販売管理手数料を含む利益控除額のみであり、NFTの所有権移転と引き換えとなる代金(=販売価格-利益控除額)は、販売取引管理団体を介さず、譲受人から対象アイテムの譲渡人に直接送金されることとなり、(1号)仮想通貨とNFT(対象アイテム)の交換イベントには販売取引管理団体は直接関与しないことになる。また、譲受人から見て譲渡人は当然「不特定の者」には該当しない。よって、上記の形態の取引において対象アイテムのNFTは2号仮想通貨に該当しない蓋然性が高くなると考えられ、本発明のシステムを用いて対象アイテムを1号仮想通貨や法定通貨により利用者間で、より自由に取引できるようにすることが見込まれる。また、この構成によれば、例えば特許文献2の方式における、過去に取引実績のある利用者に売買が限定されてしまう欠点を克服することができる。さらに、特許文献3の方式では、利益控除額に相当する金額についても、譲受人から対象アイテムの譲渡人に直接送金することで、NFTが2号仮想通貨に該当してしまう難を回避しているように見受けられるが、本願発明のように多数の応援人にも利益発生させる場合、各応援人へ利益を個別に送金する手続きを譲受人に強いる問題を生じる。しかし、上記の構成によれば、応援人利益を含む利益控除額が、対象アイテムの販売取引管理団体に集約的に送金されるため、このような問題を回避することができる。
【0020】
管理コンピュータは、各応援人の媒体口座において、発行済みの応援媒体の数量を未投票媒体と投票中媒体とに区分して管理するとともに、対象アイテムへの投票が確定した媒体数量を未投票媒体から減ずる一方、該媒体数量を投票中媒体に加算し、対象アイテムの売買取引が成立することを返還条件として、応援媒体の対象アイテムへの投票数量を、媒体口座において投票中媒体の数量から減ずる一方、投票数量の少なくとも一部を未投票媒体の数量に加算することにより、投票中媒体の少なくとも一部を媒体口座に再投票可能な状態で返還する、動作を実行するようプログラムしておくことができる。
【0021】
応援者は応援媒体を法定通貨又は仮想通貨を用いて購入する形で発行を受ける。一度投票した応援媒体が、対象アイテムの取引成立後に回収されてしまうシステム構成であると、応援者は次の対象アイテムへの投票を行ないたい場合は、都度、応援媒体を追加購入しなければならない。その際、対象アイテムの取引成立に伴い得られる応援者利益の応援者への配分が、投票した応援媒体の購入金額を下回っていると、応援者は購入した応援媒体の元本を回収できない問題がある。しかしながら、上記の構成では、対象アイテムの売買取引が成立するに伴い、投票した応援媒体の少なくとも一部が応援者の媒体口座に再投票可能な状態で返還されるので、応援者は一旦購入した応援媒体を異なる対象アイテムに繰り返し投票することができ、購入した応援媒体の元本回収が容易となる。
【0022】
また、管理コンピュータは、各応援人の媒体口座において、発行済みの応援媒体の数量を未投票媒体と投票中媒体とに区分して管理するとともに、対象アイテムへの投票が確定した媒体数量を未投票媒体から減ずる一方、該媒体数量を投票中媒体に加算し、対象アイテムに対し予め定められた長さを有する出品期間を設定し、出品期間が満了した時点で対象アイテムの売買取引が未成立となることを返還条件として、応援媒体の対象アイテムへの投票数量を、媒体口座において投票中媒体の数量から減ずる一方、投票数量の少なくとも一部を未投票媒体の数量に加算することにより、投票中媒体の少なくとも一部を媒体口座に再投票可能な状態で返還する、動作を実行するようプログラムしておくことができる。対象アイテムに対し出品期間を設定する場合も、投票した応援媒体の少なくとも一部が応援者の媒体口座に再投票可能な状態で返還されるので、応援者は一旦購入した応援媒体を異なる対象アイテムに繰り返し投票することができ、購入した応援媒体の元本回収が容易となる。これらの構成においては、管理コンピュータを、返還条件が成立するに伴い、投票中媒体の全数量を媒体口座に再投票可能な状態で返還する、動作を実行するようプログラムしておくことができる。
【0023】
管理コンピュータは、発行した応援媒体に予め定められた有効期限を設定し、媒体口座に存する未投票媒体のうち、有効期限の到来したものの数量を無効化する、動作を実行するようプログラムしておくことができる。発行した応援媒体に有効期限を設定することで、応援媒体が無制限に繰り返し使用されることが防止され、応援媒体販売に伴う収益性を向上できる。また、応援媒体に有効期限を設定しておくことで、期限内に応援媒体を投票しようとする応援者のモチベーションを高めることができるので、対象アイテムへの投票数増加を推進することができる。
【0024】
この場合、管理コンピュータは、媒体口座に存する投票中媒体のうち、有効期限の到来したものの数量を、返還条件が成立することを条件に無効化する、動作を実行するようプログラムしておくことができる。このようにすると、前述の返還期限が到来するまでは投票中媒体が無効とならないので、対象アイテムの取引成立の有無とは無関係に、投票された応援媒体に基づく利益を応援者が逸失する不具合を効果的に防止することができる。
【0025】
管理コンピュータは、対象アイテムに対する応援媒体の得票数を応援人別に集計することにより応援人別得票数を求め、販売価格に予め定められた第二の料率を乗じることにより対象アイテムに設定する応援人利益の総額を総応援人利益として算出し、算出された総応援人利益を、応援人別得票数に応じて各応援人に配分した利益額を応援人別利益額として算出する、動作を実行するようプログラムしておくことができる。このようにすると、対象アイテムに対する応援媒体の得票数に比例した利益を応援者が得ることができ、応援媒体投票に基づく応援者への利益還元を公平に実施することができる。
【0026】
管理コンピュータは、対象アイテムに対する応援媒体の得票数を集計し、集計された得票数に予め定められた第三の料率を乗じて価格増分を算出するとともに、販売開始価格に価格増分を加算した金額により販売価格を更新し、更新された販売価格を複数の端末に通知する、動作を実行するようプログラムしておくことができる。このようにすると、対象アイテムに対する応援媒体の総得票数に比例した価格増分を販売開始価格に加算することができ、応援者による媒体投票数を対象アイテムの現在価格に合理的に反映させることができる。
【0027】
管理コンピュータは、対象アイテムに対し予め定められた期間長を有する出品期間を、複数の利益ゾーン期間に分割した形で設定し、各応援人に対する単位投票数当たりの応援人利益の配分金額を、時系列的に上流に位置する利益ゾーン期間に応援媒体を投票した応援人に対し、それよりも時系列的に下流に位置する利益ゾーン期間に応援媒体を投票した応援人よりも高額に設定する、動作を実行するようプログラムしておくことができる。このようにすると、対象アイテムの価値をいち早く認め、出品期間の初期段階にて率先して応援媒体を投票した応援者への利益還元率を高めることができ、対象アイテムへの応援媒体の投票を促進することができる。また、出品期間の末期まで様子見を行い、期間満了寸前に多数の応援媒体を投票して多額の利益を安易に貪ろうとする不当な応援者の排除を図ることができ、対象アイテムの評価・応援の公正性維持にも貢献できる。
【0028】
管理コンピュータが、対象アイテムの所有者移転情報を追加した新たな譲渡履歴をブロックチェーンに追加するに際し、対象アイテムへの応援媒体の投票数が反映された情報である応援獲得情報を、譲渡履歴とともにブロックチェーンに追加する、動作を実行するようプログラムムしておくことができる。対象アイテムの応援媒体の得票数は、該対象アイテムの評価を客観的に示す指標となるため、これを応援獲得情報として譲渡履歴とともに改竄耐性の高いブロックチェーンに追加することで、対象アイテムの評価証明の機能を効果的に付与することが可能となる。
【0029】
また、管理コンピュータは、対象アイテムの譲受人による購入を証明する証明書データを作成し、対象アイテムの所有者移転情報を追加した新たな譲渡履歴をブロックチェーンに追加するに際し、譲渡履歴とともに証明書データをブロックチェーンに追加する、動作を実行するようプログラムしておくことができる。証明書データがNFTに組み込まれることで、対象アイテムの所有権の譲受人への帰属を、対外的により簡便に示すことが可能となる。そして、その証明書データを、対象アイテムの譲受人による購入証明内容とともに対象アイテムへの応援媒体の投票数が反映された情報としておけば、当該証明書データを対象アイテムの客観的な評価証明データとしても活用することができる。
【発明の効果】
【0030】
発明が解決しようとする課題の欄に記載の通り。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の対象アイテム取引システムの一実施形態にかかる概略構成を示すブロック図。
【
図2】管理コンピュータの電気的構成を示すブロック図。
【
図3】アイテムデータサーバの電気的構成を示すブロック図。
【
図5】対象アイテム管理データのデータ構造の一例を示す。
【
図6】分散データベースで共有されるブロックチェーンの構成を模式的に示す図。
【
図7】端末における応援媒体の購入画面の一例を示す図。
【
図8】応援媒体購入に伴い更新された状態の購入画面を示す図。
【
図9】出品中の作品(対象アイテム)リストの出力例を示す図。
【
図12】表示価格が更新された状態の作品表示画面の一例を示す図。
【
図13】応援媒体購入データの構造を模式的に示す図。
【
図14】応援媒体投票データの構造を模式的に示す図。
【
図15】作品ID別の応援媒体の投票集計データを模式的に示す図。
【
図16】応援媒体の投票、変換及び無効化に関する一連の管理処理の具体例を示す第一の図。
【
図23】NFTの取引の規則情報の一例を説明するフローチャート。
【
図24】応援者による応援媒体購入、作品NFTのミント処理及び応援媒体投票に伴う作品販売価格の更新にかかる通信処理の流れを示すフローチャート。
【
図25】応援媒体口座管理処理の流れを示すフローチャート。
【
図26】援媒体期限管理処理の流れを示すフローチャート。
【
図27】応援媒体返還処理の詳細を示すフローチャート。
【
図28】応援媒体口座管理処理の流れを示すフローチャート。
【
図31】取引の規則情報の変形例を示すフローチャート。
【
図32】
図24に続く通信処理の流れを、
図31の規則情報を反映した形で変更したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を用いて説明する。
図1は、本発明の対象アイテム取引システムの一実施形態にかかる概略構成のブロック図である。対象アイテム取引システム1は、複数の端末150、通信ネットワークをなすインターネット200を介して端末150と通信可能な管理コンピュータ50、ブロックチェーンを用いて対象アイテムの流通を管理する分散データベース250、後述の応援媒体を法定通貨を用いて購入決済するためのクレジット決済サーバ300、対象アイテムがデジタル著作物である場合に、その著作物のデジタルデータ本体を格納するアイテムデータサーバ100などを備えるものである。
【0033】
対象アイテムは、取引対象となるデジタル著作物及び物品の少なくともいずれかからなるアイテム本体に、分散データベース250が構築するブロックチェーンにおいて取引可能なNFT(非代替トークン)を各アイテム本体に固有となる形で付帯させたものである。なお、現実の商取引にてやり取りされるのはアイテム本体と対応するNFTとを合わせた概念であるが、ネットワーク上でのデータ通信により取引される実体はNFTのみである。以下の説明においては、取引対象を「対象アイテム」と称することもあるし、「対象アイテムのNFT」あるいは単に「NFT」と称することもあるが、対象アイテム取引システム1の動作を説明する上においては、すべて同じ概念を意味する。
【0034】
デジタル著作物は、例えばデジタル音楽データ(オーディオデータ、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)データ及びそれらの組み合わせにより構成されているもの)、デジタル映像データ(音楽ライヴ映像、スタジオ演奏映像、映画など)、デジタル静止画データ(デジタルアーツなど)、さらにはゲームのキャラクタやデジタルトレーディングカードなどを概念として含み、そのオリジナルデータがアイテムデータサーバ100に格納されている。また、物品は有体物であって、例えば絵画や彫刻などの美術作品や陶磁器、漆器、その他の工芸品であって唯一性価値の高いもの、アパレル製品、玩具、電子機器などのプロトタイプや試作品などであるが、これらに限定されるものではない。なお、以下の説明においては対象アイテムをアーティストが作成した音楽あるいはアートにかかるデジタル作品を例にとり、対象アイテムのことを単に「作品」とも称するが、本発明の適用対象をこれら「作品」に限定するものではない。
【0035】
複数の端末150は一般的なPCあるいは携帯端末であり、対象アイテム取引システム1のユーザ(対象アイテムの出品者(所有者、譲渡人)、購入者(譲受人)及び応援者)が使用するためのものであり、有線あるいは無線によりインターネット200に接続される。管理コンピュータ50は単独のコンピュータで構成されていてもよいし、通信接続されて連係動作する複数のコンピュータで構成されていてもよく、例えば後者の概念にはクラウドサーバが含まれる。この場合、複数の端末150の一部がクラウドサーバによるコンピューティング処理に参加することがあり得る。アイテムデータサーバ100についても同様である。また、クレジット決済サーバ300はクレジット管理会社が運営する課金ネットワークに属するものであり、ゲートウェイ301を介してインターネット200に接続されている。
【0036】
また、分散データベース250は周知の概念であり、仮想通貨やNFTをなすトークンの取引を実現するためのプログラムがインストールされた図示しない複数の端末がP2Pネットワークを介して相互接続されたものである。分散データベースに参加する端末群は、それぞれブロックチェーンデータとトランザクションデータを取得するとともに、その全体が連携して不正を監視し、唯一のブロックチェーンを共有する。対象アイテムのNFTは、このブロックチェーンを媒介としてインターネット250上にて売買取引される。
【0037】
図2は、管理コンピュータ50の電気的構成を示すブロック図である。管理コンピュータ50は、CPU51、プログラム実行領域となるRAM52、ROM53、入出力部54及びそれらを相互に接続するバス56等からなる。また、バス56には記憶装置(SSDあるいはハードディスクドライブ等からなる)55が接続され、対象アイテム取引管理プログラム50a及び応援媒体管理プログラム50bがインストールされている。対象アイテム取引管理プログラム50a及び応援媒体管理プログラム50bは、CPU51により実行されることで、対象アイテム取引システム1の基本機能を実現する。
【0038】
また、記憶装置55には対象アイテム管理データ50c、媒体購入・投票管理データ50d、媒体口座管理データ50e及び作品表示用データ50fが記憶されている。また、入出力部54にはモニタ58及びキーボード、マウス、タッチパネル等で構成された入力部59が接続されている。さらに、バス56にはブロードバンドルータ57が接続され、該ブロードバンドルータ57を介して管理コンピュータ50はインターネット200に接続される。
【0039】
図3はアイテムデータサーバ100の電気的構成を示すブロック図である。アイテムデータサーバ100は、CPU101、プログラム実行領域となるRAM102、ROM103、入出力部104及びそれらを相互に接続するバス106等からなる。また、バス106には記憶装置(SSDあるいはハードディスクドライブ等からなる)105が接続され、管理プログラム50aがインストールされている。また、記憶装置105には作品オリジナルデータ100aが記憶されている。CPU101による管理プログラム50aの実行により、作品オリジナルデータ100aの読み書きアクセスが制御される。また、入出力部104にはモニタ108及びキーボード、マウス、タッチパネル等で構成された入力部109が接続されている。
【0040】
図4は端末150の電気的構成を示すブロック図である。端末150は一般的なPCあるいは携帯端末、タブレット端末等であり、CPU151、プログラム実行領域となるRAM152、ROM153、入出力部154及びそれらを相互に接続するバス156等からなる。また、バス156には記憶装置(SSDあるいはハードディスクドライブ等からなる)155が接続され、本発明に関連する機能を実現するためのプログラムとして、応援媒体購入・投票アプリ150a、作品出品アプリ150b及び作品取引アプリ150cがインストールされている。また、入出力部154にはモニタ158及びキーボード、マウス、タッチパネル等で構成された入力部159が接続されている。モニタ158は、売買取引のために出品される作品の閲覧用の表示装置をなすものである。
【0041】
管理コンピュータ50は、対象アイテム取引管理プログラム50a及び応援媒体管理プログラム50bの実行により、以下の動作を実行する。
・複数の端末に含まれる1以上のものをなす応援者端末150(
図1)から、対象アイテム(作品)を評価又は販売応援するための電子投票媒体であって、単位数量当たりの発行価格が予め定められている応援媒体の、対象アイテムの応援人による購入要求である媒体購入要求を通信ネットワーク(インターネット200)を介して受信することにより受け付ける。
・応援人と紐づけた媒体口座を通信ネットワーク(インターネット200)上に開設する。
・応援媒体の購入対価の、法定通貨又は仮想通貨を用いた電子決済の完了と引き換えに応援媒体を購入対価に相当する数量にて、媒体購入要求を送信した応援人の媒体口座に発行する。
・対象アイテムを通信ネットワーク(インターネット200)上にて売買出品するために、対象アイテムの非代替トークンを分散データベース250上のブロックチェーンにミントするとともに、対象アイテムの出品情報を通信ネットワーク上(インターネット200)にアップロードする。
【0042】
・端末150に設けられた表示装置(モニタ158)に出品情報を閲覧のために出力するともに、対象アイテムへの応援人による応援媒体の投票を応援者端末から通信ネットワーク(インターネット200)を介して受け付ける。
・応援媒体の得票数に基づき、該得票数が多くなるほど高額となるように対象アイテムの販売価格を決定する(詳細は後述)。
・決定された対象アイテムの販売価格を複数の端末150に通知する。
・販売価格の通知を受けた複数の端末150のうちの1つのものを譲受人端末として、譲受人による対象アイテムの購入申込を譲受人端末から受け付ける。
・対象アイテムが獲得した応援媒体の得票数に基づいて、対象アイテムの販売価格に占める応援人への配分利益である応援人利益を算出し、さらに販売価格に予め定められた第一の料率(本実施形態では、例えば10%に固定:ただし、入力部59からの入力情報に基づき、希望の値に変更可能に設定してもよい)を乗じることにより対象アイテムの販売管理手数料を算出するとともに、応援人利益及び販売管理手数料を含む形で利益控除額を決定する。
・対象アイテムの取引規則を定める規則情報、対象アイテムの販売取引に用いられる仮想通貨に関する情報、及び対象アイテムの譲渡履歴を格納する複数のブロックを連結したブロックチェーンを取得する。
・ブロックチェーンに書き込まれている譲渡履歴から対象アイテムの現在の所有者を特定する。
・取引規則に従った手順が実行されることによって、少なくとも利益控除額に相当する金額の仮想通貨が譲受人から対象アイテムの販売取引管理団体に通信ネットワークを介して送金され、販売価格から利益控除額を減じた金額に相当する仮想通貨が、譲受人又は対象アイテムの販売取引管理団体のいずれかから対象アイテムの譲渡人となる現在の所有者に通信ネットワークを介して送金されることを条件として、対象アイテムの所有者移転情報を追加した新たな譲渡履歴をブロックチェーンに追加する。
【0043】
なお、本実施形態において「販売取引管理団体」は、例えば管理コンピュータ50にアカウント登録されている対象アイテム取引システム1の運営団体である。また、端末150のユーザは、管理コンピュータに利用アカウントを登録し、アカウントID及びパスワードにより管理コンピュータ50にログインすることで、応援人、作品出品者(譲渡人)及び作品購入者(譲受人)の立場で対象アイテム取引システム1を利用することができる。
【0044】
図5は管理コンピュータ50の対象アイテム管理データ50cにかかるデータ構造の一例を示すものである。対象アイテム管理データ50cは、作品ID(対象アイテムの特定データ)、作品情報(タイトル、演奏者、作成日、作品内容概要、PR情報など)、作成者情報、譲渡人情報(現在の所有者情報)、表示用データアドレス及びオリジナルデータURLが互いに関連付けられ記憶されている。
図2において管理コンピュータ50の記憶装置55に記憶されている作品表示用データ50fは、
図3のアイテムデータサーバ100の記憶装置105に記憶されている作品オリジナルデータ100aに基づき、そのデータ量を縮小する形で作成された低解像度のデータであり、
図1の端末150に対し作品を閲覧用に配信するためのものである。
図5の対象アイテム管理データ50cに含まれる表示用データアドレスは、作品IDに対応する作品表示用データの記憶装置105における格納アドレスを示すものである。また、オリジナルデータURLは、作品IDに対応する作品オリジナルデータのアイテムデータサーバ100における格納ノードのURLを示すものである。
【0045】
図6は分散データベース250で共有されるブロックチェーンの構成を模式的に示す図である。ブロックチェーンは、複数のブロックを連結した情報である。複数のブロックのそれぞれは、直前のブロックを示す情報のハッシュ値、ナンス値、作成者情報、取引の規則情報、仮想通貨の情報、作品に関する情報、作品のハッシュ値(作品(アイテム)本体がデジタルデータである場合のみ)、及び作品の取引履歴が含まれている。ナンス値は、ブロックのハッシュ値が特定の条件を満たされるようにするために用いられる情報である。
【0046】
譲渡履歴には、作品の譲渡人を特定するための譲渡人情報、作品の譲受人を特定するための譲受人情報、作品の取引が行われた日時を示す譲渡日時、及び作品の取引額を示す譲渡額が含まれる。作品が作成された時点で、作品の所有権は作成者に帰属する。よって、ブロックチェーンのうち、譲渡履歴を除く情報はブロックチェーンの生成時、すなわち、作成者が作品を管理コンピュータ50に登録したときに確定し、その後は作成者自身を除いて何人も変更することができない。
【0047】
応援媒体は作品(対象アイテム)を評価又は販売応援するための電子投票媒体であり、単位数量当たりの発行価格が予め定められている。本実施形態では、応援媒体を仮想的なコインの概念になぞらえており、例えば1個1円で販売取引管理団体から希望するユーザ(応援者)に有償発行するようにしている。
【0048】
図23は、ブロックチェーンに格納されているNFTの取引の規則情報の一例を説明するための図である。対象アイテム取引システム1が用いるブロックチェーンは、スマートコントラクト機能が実装されている。コントラクト機能の実態は所定のプログラミング言語を用いて実装された関数ないし手続きであり、プログラミング言語が表現可能な範囲において任意の処理を記述することができる。このため、取引の規則情報はフローチャートの形で表現することができる。
【0049】
対象アイテム取引システム1は、作品の作成者の追及権の履行を担保するために、以下のようなスマートコントラクトを実装している。
1.譲受人から販売取引管理団体へ作品代金に相当する仮想通貨を送金すること。
2.販売取引管理団体から譲渡人へ利益控除後の作品代金に相当する仮想通貨を送金すること。
3.最新販売価格にかかる仮想通貨額を含む譲渡履歴を更新(分散データベース250にブロックチェーンをブロードキャスト)すること。
【0050】
図23に示すフローチャートは、譲渡人が譲受人へ作品の所有権を譲渡する取引に同意したときに開始する。まず、譲受人から販売取引管理団体へ作品対価の全額に相当する仮想通貨を送金する(S101)。販売取引管理団体への送金が成功した場合(S102のYes)、販売取引管理団体から譲渡人(又は譲渡人及び所有者)へ利益控除額を減算後の作品対価に相当する仮想通貨を送金する(S103)。なお、利益控除額を決定するための後述の料率等は、予め規則情報に格納されている。譲渡人への送金が成功した場合(S104のYes)、譲渡価格を含む譲受人と譲渡人との間の譲渡履歴を追記したブロックチェーンを分散データベース250にブロードキャストする(S105)。これにより、作品の所有権が譲渡人から譲受人に譲渡されたことが確定する(S106)。
【0051】
譲受人から販売取引管理団体への送金が失敗した場合(S101のNo)、又は譲受人から譲渡人への送金が失敗した場合(S104のNoは、譲渡人との間における作品の所有権の譲渡取引を取り消す(S107)。この場合、譲受人から販売取引管理団体又は譲渡人に送金済みの仮想通貨は、譲受人に返却される。また、作品の所有権は譲渡人に帰属したままとなる。作品の所有権が譲渡人から譲受人に譲渡されたことが確定するか、譲渡人との間における作品の所有権の譲渡取引は不成立となると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0052】
以下、対象アイテム取引システム1による作品(対象アイテム)の取引処理の流れをフローチャートを用いて説明する。
図24は応援者による応援媒体購入処理、作品NFTのミント処理及び応援媒体投票に伴う作品販売価格の更新処理の流れを示すものである。まず、応援者の端末(応援者端末)では、S1001において応援媒体投票アプリ150aを立ち上げ、応援媒体対価の支払処理を行う。これに伴い、対価となる仮想通貨が管理コンピュータ50に送金される。なお、この決済は、
図1のクレジット決済サーバ300との間で法定通貨を用いて行ってもよい。S4001にて管理コンピュータ50は送金金額に相当する応援媒体を発行するとともに、対応する応援者IDの媒体口座の内容を更新し、購入申し込みのあった端末150に発行完了を通知する。端末150では、購入に伴う応援媒体の保有数をモニタ158(
図4)に更新表示する。
【0053】
図7は、端末150のモニタ158における応援媒体の購入画面の一例を示すものであり、応援媒体を購入する応援者の応援者別媒体口座データ50d(D)(媒体口座管理データ50eに基づいて管理コンピュータ50が作成するものであり、詳細は後述する)の内容とともに、数量入力ウィンドウ431及び購入決定ボタン432が表示されている。購入者は、数量入力ウィンドウ431に希望する数量を入力し、購入決定ボタン432をマウスクリック等により操作することにより、応援媒体を購入できる。該購入に伴い、
図8に示すように、応援者別媒体口座データ50d(D)には新規購入した応援媒体のレコード430aが追加表示されている。
【0054】
図24に戻り、端末150のうち作品作成者が使用する作成者端末では、作品が完成すると、S2001でオリジナルデータに基づいて作品表示用データが作成され、管理コンピュータ50に送信される。端末150におけるこれらの処理機能は、
図4の作品出品アプリ150bが実現する。また、作成された作品のNFTを作成するための必要情報(作品情報、作成者情報、販売価格情報及び譲渡人情報)も、管理コンピュータ50に送信される。管理コンピュータ50は、これを受信し、S4003にて作品NFT登録を行う。具体的には、これらの情報とオリジナルデータの格納URL(作品情報に組み込まれる)とが分散データベース250に送信される。分散データベース250では、ブロックチェーンが具備するスマートコントラクトによってNFTを作成し、ブロックチェーンに書き込まれる(ミントされる)。
【0055】
管理コンピュータ50は、S4004にて、作品表示用データと、NFTに含まれる作品ID、作品情報、作成者情報及び譲渡人情報等の情報を対応付け、対象アイテム管理データ(
図5:符号50c)として記憶装置55に記憶することで、作品出品登録を行う。一方、管理コンピュータ50は、オリジナルデータ格納URLを作成者端末に通知する。作成者端末ではこれを受け、S2002にてオリジナルデータを、作成されたNFTのトランザクションに記述されるURLに従い、
図3のアイテムデータサーバ100に送信する。該オリジナルデータは、記憶装置105に作品オリジナルデータ100aとして格納される。
【0056】
続いて、管理コンピュータ50は、S4005で登録されている作品の作品表示用データと投票集計データ50d(C)(
図15:後述)を端末150に送信する。端末150では、S1003において、
図4の作品取引アプリ150cの実行により、
図9に示す出品中の作品(対象アイテム)リスト401がモニタ158に出力され、閲覧可能となる。
【0057】
作品リスト401における各作品の表示項目は、アーティスト、作品名、現在価格、応援媒体獲得数、販売の終了日時及び後述の利益ゾーンの各情報となっている。各作品は入力部159(
図4)による選択入力(本実施形態では、各作品に対応して表示されている選択ボタン402のマウス等によるクリック)により所望のものが選択される。なお、次ページボタン403のクリックにより、次の出品作品のリストに切り替えて表示が可能である。また、作品リスト401における出品作品の表示順は、本実施形態では応援媒体の投票数順となっているが、所望の条件(例えば応援者端末からの選択入力により変更設定可能に構成できる)に従い、別の順序で表示を行うようにしてもよい。また、作品のジャンルやキーワード等による作品検索機能を設けてもよい。
【0058】
応援媒体の投票を行いたい作品の選択ボタン402を操作することで(
図24:S1004)、選択した作品の作品表示画面が
図10のごとく表示される。
図10は、
図9の一番上に表示されている作品が選択された時の作品表示画面を示すものである。この画面には、作品表示用データによる作品の表示ウィンドウ410、アーティスト名表示ウィンドウ411、作品名表示ウィンドウ412、現在価格表示ウィンドウ413、出品作品の販売終了日420及び利益ゾーン(後述)421が表示されている。また、該画面には機能操作ボタン群として、応援媒体投票ボタン414、作品購入ボタン415、応援媒体管理ボタン417(
図7の応援媒体の購入画面を呼び出すためのものである)、及び作品リスト表示ボタン416(
図9の作品リスト401を呼び出すためのものである)が形成されている。
図10は作品表示用データが動画データの場合の例を示し、再生ボタン418の操作により表示ウィンドウ410に動画データによる映像が再生され、停止ボタン419の操作により再生が停止される。
【0059】
また、
図24のS1004にて、応援者は、応援媒体の作品への投票を実行する(
図4の応援媒体投票アプリ150aの機能を用いる)。具体的には、
図10の作品表示画面の応援媒体投票ボタン414を操作することで、
図11の応援媒体投票画面に切り替わる。この画面には、
図10の機能操作ボタン群(符号414~417)に代えて応援媒体の投票数入力ウィンドウ420が表示されている。応援者は、応援者端末にて希望する投票数を入力を行い、投票実行ボタン421を操作することで当該作品への応援媒体の投票が完了する。
図24では、応援者ID、作品ID及び投票数を含む応援媒体投票情報が、応援者端末から管理コンピュータ50に送信される。
【0060】
管理コンピュータ50では上記の情報を受信し、応援媒体の投票受付け、媒体口座における応援媒体残高の更新、及び応援媒体の投票集計情報の更新にかかる処理を行う(S4006、S4007)。この処理は、S4009にて終了割込みが発生するまで繰り返され、
図10の作品表示画面にて作品情報を閲覧した応援者により、応援媒体の投票が出品中の各作品に対し継続される。一方、作品情報を閲覧したユーザは作品表示画面の作品購入ボタン415をクリックすることで、作品購入の取引申込みを行うことができる(
図4の作品取引アプリ150cの機能を用いる)。購入者となるユーザは作品の譲受人となり、該譲受人が作品購入のために使用する端末150を以下、譲受人端末と称する。すなわち、
図24のS3001にて取引申込が管理コンピュータに送信され、取引が成立することで、S4009にて上記S4006及びS4007の繰り返し処理に終了割り込みがなされる。また、S4008にて、取引成立しないまま出品期間が満了した場合も、同様の終了割り込みがなされる。これを受けて管理コンピュータ50での処理はS4011に進み、応援媒体返還処理となる。
【0061】
すなわち、管理コンピュータ50は、作品(対象アイテム)の売買取引が成立することを返還条件として、応援媒体の対象アイテムへの投票数量を、媒体口座において投票中媒体の数量から減ずる一方、投票数量の少なくとも一部を未投票媒体の数量に加算することにより、投票中媒体の少なくとも一部を媒体口座に再投票可能な状態で返還する。また、出品期間が満了した時点で対象アイテムの売買取引が未成立となることを返還条件として、応援媒体の作品(対象アイテム)への投票数量を、媒体口座において投票中媒体の数量から減ずる一方、投票数量の全部(一部であってもよい)を未投票媒体の数量に加算することにより、投票中媒体の全部(あるいは一部を)媒体口座に再投票可能な状態で返還する処理を実施する。S1005にて応援者端末は投票中の応援媒体の返還通知を管理コンピュータ50から受け、応援者別媒体口座データ50d(D)の内容を更新する。
【0062】
図13は媒体購入・投票管理データ50dに含まれる応援媒体購入データ50d(A)の構造を模式的に示すものである。応援媒体購入データ50d(A)は、応援媒体の購入が発生するごとに生成される応援媒体購入レコードが時系列順に集積されたものであり、各応援媒体購入レコードは、互いに対応付けられた応援者ID、応援媒体購入日、応援媒体購入数及び応援媒体有効期限の各データフィールドからなる。本実施形態において、購入された応援媒体の有効期限は、例えば購入日から1年間に設定しており、応援媒体有効期限は購入日から1年後の日付として自動生成され、応援媒体購入レコードに格納される。なお、応援媒体には特に有効期限を設けないようにすることも可能である。
【0063】
また、
図14は媒体購入・投票管理データ50dに含まれる応援媒体投票データ50d(B)の構造を模式的に示すものである。応援媒体投票データ50d(B)は、応援媒体の投票が発生するごとに生成される応援媒体投票レコードが時系列順に集積されたものであり、各応援媒体投票レコードは、互いに対応付けられた応援者ID、応援媒体が投票された作品ID、応援媒体の投票日、応援媒体の投票数及び応援媒体有効期限の各データフィールドからなる。
【0064】
管理コンピュータ50は応援媒体管理プログラム50bの実行により、これらの応援媒体購入データ50d(A)及び応援媒体投票データ50d(B)を集計し、
図15に示すように、作品ID別の応援媒体の投票集計データ50d(C)を作成する。投票状況データ50d(C)は、作品ID、作品の販売開始日(出品日)、作品の販売終了日、販売開始価格OP、応援媒体の得票数N及び作品の現在販売価格CPを含む。
【0065】
ここで、作品(対象アイテム)の販売価格OPは、応援媒体の得票数が多くなるほど高額となるように算出される。
図25は、応援媒体管理プログラム50b(
図2)の実行に基づいて管理コンピュータ50が行う応援媒体投票管理処理の流れを示すフローチャートである。S301にて応援媒体投票があるか否かを判断する。投票がない場合はS308にて応援媒体投票が発生するまで待機する。投票があった場合はS302に進み、応援者ID、作品ID及び応援媒体の得票数を取得する。また、S303では販売終了日を、S304では現在日付をそれぞれ取得する。そして、S305では投票された応援媒体に対する利益ゾーンを決定する。
【0066】
すなわち、作品(対象アイテム)に対し予め定められた期間長を有する出品期間が、複数の利益ゾーン期間に分割した形で設定され、各応援人に対する単位投票数当たりの応援人利益の配分金額は、時系列的に上流に位置する利益ゾーン期間に応援媒体を投票した応援人に対し、それよりも時系列的に下流に位置する利益ゾーン期間に応援媒体を投票した応援人よりも高額となるとうに設定されることとなる。投票された応援媒体がどの利益ゾーンに属するかは、応援媒体の投票日と販売終了日との比較に基づいて決定される。本実施形態においては、作品の出品期間が出品開始日より30日と定めており、最初の10日間が応援者への利益還元条件が最も有利となるAゾーン、次の10日間が応援者への利益還元条件がこれに準じて有利となるBゾーン、最後の10日間が応援者への利益還元条件最も不利となるCゾーンとなるように利益ゾーンが決定される。
【0067】
S306では、応援者ID、作品ID、応援媒体獲得数及び利益ゾーンを対応付け、応援者別媒体口座データ50d(D)(媒体口座管理データ50d(
図2)の一部をなす)として記録する。前述のごとく、
図7の応援媒体の購入画面には応援者別媒体口座データ50d(D)の内容が表示されており、応援者の応援者ID(
図7ではUID128)と、応援媒体購入日、応援媒体有効期限、応援媒体購入数、未投票応援媒体数及び投票中応援媒体数の各データが互いに対応付けられたものとなっている。また、各購入日の応援媒体の作品への投票状態を示すデータとして、作品ID、作品の販売開始日時、作品の販売終了日時、応援媒体の投票日、投票する及び利益ゾーンが互いに対応付けられている。
【0068】
図25に戻り、S307では、得票数が多くなるほど高額となるように作品の対象アイテムの販売価格が決定される。具体的には、作品(対象アイテム)の販売開始価格OPに対し、作品に応援媒体の投票が発生するごとに、該投票がなされた時点での作品に対する応援媒体の得票数Nを集計し、集計された得票数Nに予め定められた第三の料率、ここでは応援媒体の単価αを乗じて価格増分α・Nを算出するとともに、販売開始価格OPに価格増分α・Nを加算した金額OP+α・Nにより販売価格を更新して現在価格CPを得るようにしている。本実施形態では、コインの概念をなす応援媒体1個の投票につき、日本円で表示される作品価格に1円の増分が付加される。すなわち、第三の料率は1(=α)に設定されているが、第三の料率の設定形態はこれに限定されるものではない。
【0069】
例えば前述の
図11の作品表示画面においては、投票数入力ウィンドウ420に応援媒体を4000個(単位はEKCと表示されている)入力した状態が示されており、投票実行ボタン421をクリックすると
図12の状態の作品表示画面に遷移する。この画面の現在価格表示ウィンドウ413には、応援媒体投票前の価格94600円にα・Nに相当する価格増分4000円が加算され、950000円が現在価格として更新表示されている。
【0070】
図26は、応援媒体管理プログラム50b(
図2)の実行に基づいて管理コンピュータ50が行う応援媒体期限管理処理の流れを示すフローチャートである。この処理は各応援者ID毎に管理されている応援媒体について順次実行される。S401では、応援媒体購入レコードを日付順に読み出し、S403にて現在の日付と読み出したレコードの応援媒体の有効期限とを比較する。そして、期限が過ぎているようであれば当該レコードの応援媒体を無効化する処理を行う。この無効化は応援媒体購入レコードを削除することにより行ってもよいし、レコード自体は消去せず、投票入力自体を受け付けなくすることにより無効化を図ることもできる。
【0071】
図27は、S4011の応援媒体返還処理の詳細を示すものである。この処理も応援者IDごとに実行される。S501にて応援媒体投票データを読み出す。S502では、投票中応援媒体の有効期限を確認する。S503にて、投票中応援媒体が有効期限を超過していなければS504に進み、投票中応援媒体を未投票応援媒体として返還する。一方、投票中応援媒体を無効化する。すなわち、この処理では、媒体口座に存する投票中媒体のうち、有効期限の到来したものの数量を、返還条件が成立することを条件に無効化するようにしている。返還期限が到来するまでは投票中媒体が無効とならないので、対象アイテムの取引成立の有無とは無関係に、投票された応援媒体に基づく利益を応援者が逸失する不具合を阻止できる。
【0072】
図28は、管理コンピュータ50の応援媒体管理プログラム50b(
図2)の実行に基づく、応援媒体口座管理処理の流れを示すフローチャートである。各応援人の媒体口座においては、発行済みの応援媒体の数量が未投票媒体と投票中媒体とに区分され、作品(対象アイテム)への投票が確定した媒体数量(投票数)は、未投票媒体から減じられる一方、投票中媒体には加算されるように管理される。
図25の処理は各応援者IDごとに実行される。
【0073】
S201では(新規の)応援媒体の購入があったか否かを確認する。購入があった場合はS202に進んで購入日付を取得し、S203で有効期限を算出し、S204でこれらのデータを応援者IDと対応付けて新しい応援媒体購入レコードとして追加した後、S206では対応する応援者IDの応援者別媒体口座データ50d(D)の未投票媒体数及び媒体購入数に、購入された応援媒体数をそれぞれ加算して、プログラムの先頭に戻る。次いで、再びS201の処理となるが、先のサイクルの応援媒体購入はすでにS202以下の処理が終わっており、待機中の応援媒体購入のイベントがなければS201のNOの方向に進む。以下についても同様である。
【0074】
S201で(新規の)応援媒体の購入がなかった場合はS206に進む。S206では応援媒体の(新規の)投票があったか否かを確認する。S206で応援媒体の投票があった場合はS207に進み、投票日、投票された作品ID及び投票された応援媒体の有効期限を取得する。また、S208では、
図25のS305で決定された利益ゾーンを取得する。S209でこれらのデータを応援者IDと対応付けて新しい応援媒体投票レコードとして追加し、S210では投票された応援媒体数を、対応する応援者IDの応援者別媒体口座データ50d(D)の未投票媒体数から減算し、投票中媒体数に加算して、プログラムの先頭に戻る。
【0075】
S206で(新規の)応援媒体の投票がなかった場合はS211に進む。S211では、(新規の)返還媒体があったか否かを確認する。S211で応援媒体の返還があった場合はS212に進み、返還された応援媒体の購入日を取得する。S213では返還された応援媒体数を、対応する応援者IDの応援者別媒体口座データ50d(D)の未投票媒体数に加算し、投票中媒体数から減算して、プログラムの先頭に戻る。
【0076】
S211で(新規の)応援媒体の返還がなかった場合はS214に進む。S214では、(新規の)無効化媒体があったか否かを確認する。S214で応援媒体の無効化があった場合はS215に進み、無効化された応援媒体の購入日を取得する。S216では無効化された応援媒体数を、対応する応援者IDの応援者別媒体口座データ50d(D)の投票中媒体数から減算し、さらに購入媒体数から減算して、プログラムの先頭に戻る。
【0077】
応援媒体管理プログラム50bの実行に基づく管理コンピュータ50の、上記説明した応援媒体の投票、変換及び無効化に関する一連の管理処理の具体例及び変形例について、
図16~
図20により説明する。
図16は応援者IDが「UID128」の応援者(以下、簡単のため「応援者UID128」等という)の応援者別媒体口座データ50d(D)(以下、簡単のため「媒体口座50d(D)」ともいう)を示している。この応援者UID128は3つの異なる日付にて応援媒体を3回購入しており、2021年7月28日に購入した50000個の応援媒体は3つの対象作品に、2021年8月5日に購入した50000個の応援媒体は4つの対象作品に、それぞれすべて投票された状態となっている。2021年8月5日購入分の応援媒体の最後の5000個は、2022年8月23日に作品IID148に投票されている。この状態で、応援者UID128は手持ちの未投票応援媒体がなくなったため、2022年8月1日購入分の50000個の応援媒体からさらに10000個を同じ作品IID148に投票している。その結果、2022年8月1日購入分の購入数50000個の応援媒体は、未投票数が初期値の50000個から10000個減じられて40000個となり、投票中数が初期値の0個から10000個減加算されて10000個となっている。
【0078】
以上から明らかな通り、本実施形態では、応援媒体が購入日基準にて一定(ここでは1年間)の有効期限が定められ、同一の作品への投票であっても、有効期限の異なる応援媒体は媒体口座50d(D)上にて別々に管理されていることがわかる。他方、この有効期限は、応援媒体の購入日とは無関係に、カレンダー上の特定に日付に一律に定めること(例えば12月31日や3月31日など)もできるし、応援媒体の有効期限をそもそも設けない方式を採用することも可能である。この場合の応援媒体投票の管理形態の一例を
図17に示している。
図17の左側に示すように、応援者UID128が購入した総計100000個の応援媒体は、購入日とは無関係に一括して管理されている。
図17の上の媒体口座50d(D)の状態から応援者UID128は、50000個の応援媒体を追加購入するとともに、新たに2022年8月23日付けにて15000個の応援媒体を作品IID148に投票を行うことで、媒体口座50d(D)の状態は
図17の下の状態となる。応援媒体の購入数は購入前の10000個から、新規購入分の50000個が加算されて150000個になっている。未投票数は購入前の5000個に新規購入分の50000個が加算された後、投票分の15000個が減じられて40000個となっている(5000+50000-15000=40000)。また、投票中数は購入前の9500個に新規投票分の15000個が加算されて110000個となっている。なお、応援媒体に一律に有効期限を設ける場合は、その期限満了日が到来したとき、投票中のものを除いて一挙に応援媒体は無効化されることとなる。
【0079】
図18の上段では、応援者UID65の媒体口座50d(D)において、2021年3月22日に購入し、2022年3月22日に有効期限が満了する50000個の応援媒体のうち40000個を、応援媒体の有効期限よりも後の2022年4月9日に販売終了する作品IID033に投票した状態となっている。
図18の中段は有効期限の翌日である2022年3月23日の状態を示し、未投票の10000個がこの時点で失効して無効化され0個となっているが、投票中の40000個は有効のまま存続している。また、未投票と投票中の合計数で表される応援媒体購入数(保有数と同じ概念である)は、50000個から10000個が減じられ、40000個となっている。そして、
図18の下段は、作品IID033の販売が終了した翌日の2022年4月10日の状態を示し、投票中の40000個も失効して2021年3月22日購入分の応援媒体のデータ自体が削除されている。
【0080】
図19の上段では、応援者UID65の媒体口座50d(D)において、2021年3月18日に購入し、2022年3月18日に有効期限が満了する50000個の応援媒体のうち40000個を、応援媒体の有効期限よりも前の2022年2月9日に販売終了する作品IID033に投票した状態となっている。
図19の下段は、作品IID033の販売が終了した後の状態を示し、投票中の40000個が元の有効期限を引き継ぐ形で返還された結果、購入数は50000個のまま、未投票数は10000個に返還された40000個が加算された50000個に戻っている。なお、応援媒体は一部のみを返還するようにしてもよい(このようにすると、期限到来に伴い、販売した応援媒体の返還されない一部は管理団体の利益に間接的に貢献できるようになる)。
【0081】
応援媒体を投票中の作品の売買が成立した場合は、特典として返還される応援媒体の一部または全部の有効期限を延長する処理を行ってもよい。
図20はその一例を示すものである。返還される40000個の応援媒体のうち一部、例えば50%をなす20000個については、返還日を基準に新たに一定の期間、例えば1年延長された2023年2月9日が有効期限となる応援媒体として、残りが元の有効期限(2022年3月18日)の応援媒体として、それぞれ返還されている点が、
図19との相違点である。
【0082】
次に、作品の最終購入者をどのようにして決定するか、については、例えば以下のような方式が考えられ、いずれを採用してもよいし、また、これらに限定されるものでもない。
(1)時系列的に最も早期に取引申込を受け付けた申込者を最終購入者とする。これは、いわゆる「早い者勝ち」の論理に従う方式であり、管理が容易である反面、注目性の高い作品の場合、応援媒体がほとんど投票されないうちに販売終了となる可能性があり得る。
(2)出品期間中に複数人から取引希望価格による入札を受け付けるとともに、販売終了時の作品価格よりも高い入札額を付けている購入希望者のうち、最も入札額の高い購入希望者を最終購入者とする。入札額は非公開としても公開としてもいずれでもよい。
(3)出品期間中は購入申込を受け付けず、出品期間が満了し作品の最終価格が決定してから、改めて一定の期間(例えば1日など、出品期間よりも短い期間)を設け、改めて入札あるいは競売により最終購入者を決定する。
【0083】
本実施形態では簡単のため、(1)の方式を採用した場合を例にとっている。以下、作品取引の申し込みがあった後の処理について、
図29のフローチャートにより説明する。まず、管理コンピュータ50では、S4012において証明書データを作成する。証明書データは、例えば
図33に示すような画像データ500であり、作品(対象アイテム)の譲受人による購入を証明する情報として、購入者名501、購入したことを認証する認証文言502が含まれている。また、証明書データに組み込む情報として、購入した作品名503及び獲得した応援媒体の投票数(650000エニクマコイン)も追記される。この証明書データは分散データベース250に送信され、そこで生成される新たなブロックにトランザクションデータとして書き込まれ、ブロックチェーンに追加される(S5002)。なお、作品の所有者はブロックチェーンから読み出した証明書を、例えば図示しないプリンタにて印刷出力する、といったことがもちろん可能である。
【0084】
一方、管理コンピュータ50では、S4013で取引申込がないまま出品期間が満了したか否かを確認する。取引申込があった場合は、分散データベース250から取引対象の作品のNFTにかかるブロックチェーンの最新のブロックの情報を取得し、S4014にて取得されたブロックに書き込まれている最新の作品所有者の情報を譲渡人情報として取得する。また、S4015では、応援媒体投票結果を受けて最終的に確定している作品販売価格を取得する。次いで、S4016では、販売管理手数料と応援者利益(=利益控除額)及び利益控除後対価(=販売価格-利益控除額)を算出する。
【0085】
図30はその利益計算の流れを示すフローチャートである。S601では取引対象の作品の作品IDを取得する。S602では応援媒体単価αを取得する。該作品IDの作品について、S603では販売開始価格OPを取得し、S604では総応援媒体投票数Nを読み出す。次に、S605にて販売価格LPをLP=P+α×Nにて算出する。また、S606で販売管理手数料CBをCB=LP×0.1にて計算する。この式に含まれる「0.1」は第一の料率(10%)である。S607では総応援人利益ETBをETB=LP×0.075にて計算する。この式に含まれる「0.075」は第二の料率(7.5%)である。S608では、利益控除額を販売管理手数料CB+総応援人利益ETBとして計算し、利益控除後対価THをTH=LP-CB-ETB(販売価格から利益控除額を減じた金額)にて計算する。
【0086】
続いてS609では、Cゾーンにて投票された応援媒体の投票数CVを読み出す。S610では、Bゾーンにて投票された応援媒体の投票数BVを読み出す。S611では、Aゾーンにて投票された応援媒体の投票数AVを読み出す。そして、S612では、Cゾーンへの応援媒体投票数による総利益CBをCB=CV/N×LP×0.05にて計算する。S613では、Bゾーンへの応援媒体投票数による総利益BBをBB=CV/N×LP×0.065にて計算する。ここで、Bゾーンに投票された応援媒体に対しては、第二の料率(7.5%)よりも低いゾーン利益率6.5%(0.065)が設定されており、Cゾーンに投票された応援媒体に対しては、Bゾーンよりもさらに低いゾーン利益率5%(0.05)が設定されている。そして最も有利となるAゾーンの総利益ABは、AB=ETB-BB-CB、すなわち、利益率が第二の料率よりも低く設定された他の利益ゾーンの配分利益の合計を総応援人利益から減じた値として算出している。すなわち、各応援人に対する単位投票数当たりの応援人利益の配分金額を、時系列的に上流に位置する利益ゾーン期間に応援媒体を投票した応援人に対し、それよりも時系列的に下流に位置する利益ゾーン期間に応援媒体を投票した応援人よりも高額に設定する仕組みが合理的に実現している。
【0087】
図21は、この場合の利益計算例の一例を示すものであり(金額の単位は円)、作品の開始価格は300000円、終了価格(販売価格)は950000円である。Bゾーンに投票した応援者への利益率は8.8%と、Cゾーンに投票した応援者への利益率7.3%よりも高い値となっている。しかし、より上流のAゾーンに投票した応援者への利益率は28.8%とずば抜けて高く、Aゾーンへの優遇を顕著にした実施形態となっている。ゾーン間の格差については、Aゾーン以外の利益ゾーンに設定する利益率を変更することで調整可能である。
図22は、
図21の条件をスライドしつつ、Bゾーン利益率を8.5%(0.085)、Cゾーン利益率を5%(0.05)として計算した例を示す。Aゾーンに投票した応援者への利益率は19.3%、Bゾーンに投票した応援者への利益率は12.4%、Cゾーンに投票した応援者への利益率は7.3%とゾーン間の利益率差がより均等化されていることがわかる。
【0088】
図29に戻り、管理コンピュータ50は分散データベース250に対し、作品のNFTに記述された取引の規則情報(
図23)に従いブロックチェーンが具備するスマートコントラクトを実行させることを要求する。分散データベース250はその実行結果に従い、譲受人端末(譲受人のアカウント)に対し、販売価格の全額を管理コンピュータ50(販売取引管理団体のアカウント)へ対価として支払うことを要求する(
図23のS101参照)。譲受人端末ではS3002にて要求された対価を取引規則が指定する仮想通貨(例えばイーサリアムなど)にて管理コンピュータ50に送金する(
図23のS103参照)。管理コンピュータ50では、送金された対価を受け取り、S4018にて利益控除後対価(前述のTH=LP-CB-ETB)に相当する仮想通貨を作成者端末(すなわち、譲渡人端末)に送金する。
【0089】
譲受人端末では利益控除後対価の受け取りと引き換えに、S2004にて、作品のNFTの所有権を譲受人に譲渡したことを示す譲渡履歴を書き込んだデータブロックを譲受人端末にブロードキャストにて送信する。譲受人端末はS3003にて該データブロックを受け取り、所有権を譲渡人から譲受したしたことを示す譲渡履歴を書き込んだデータブロックを分散データベース250にブロードキャストにて送信する。分散データベース250は受け取ったデータブロックをブロックチェーンに追加する。以下、図示はしていないが、分散データベース250がデータブロック追加済みのブロックチェーンをブロードキャストすることで、作品の所有権移転処理は終了する。なお、管理コンピュータ50の処理のS4013にて取引申込がなかった場合はS4013~S4019の処理はスキップされる。
【0090】
管理コンピュータ50は、譲渡人からの対価を受け取り、さらに譲受人への利益控除後対価を支払うことで、総応援人利益を残額として保有している。一方、管理コンピュータ50は、すでに詳細に説明したごとく、作品(対象アイテム)に対する応援媒体の得票数を応援人別に集計することにより応援人別得票数を算出しており、上記の応援人利益を、応援人別得票数に応じて各応援人に配分した利益額を応援人別利益額として算出する。
図29のS4019では、この応援人別利益額を対応する各応援人のアカウント(応援者端末)に仮想通貨にて送金する(この処理は作品NFTの取引規則外の事項となる)。応援者端末はS1101にてこれを受け取る。
【0091】
なお、
図29の処理においては、販売価格の全額に相当する金額の仮想通貨が譲受人から販売取引管理団体に通信ネットワークを介して送金するようにしていた。他方、取引対象のNFTが2号仮想通貨とみなされないようとするために、利益控除額に相当する仮想通貨が譲受人から対象アイテムの販売取引管理団体に通信ネットワークを介して送金され、販売価格から利益控除額を減じた金額に相当する仮想通貨が、譲受人から対象アイテムの譲渡人となる現在の所有者に通信ネットワークを介して送金されるようにしてもよい。この場合、取引の規則情報は
図31にようになる。
【0092】
まず、譲受人から販売取引管理団体へ前述の利益控除額に相当する仮想通貨を送金する(S901)。販売取引管理団体への送金が成功した場合(S902のYes)、譲受人から譲渡人へ利益控除額を減算後の作品対価に相当する仮想通貨を送金する(S903)。譲渡人への送金が成功した場合(S904のYes)、譲渡価格を含む譲受人と譲渡人との間の譲渡履歴を追記したブロックチェーンを分散データベース250にブロードキャストする(S905)。これにより、作品の所有権が譲渡人から譲受人に譲渡されたことが確定する(S906)。
【0093】
譲受人から販売取引管理団体への送金が失敗した場合(S901のNo)、又は譲受人から譲渡人への送金が失敗した場合(S904のNoは、譲渡人との間における作品の所有権の譲渡取引を取り消す(S907)。この場合、譲受人から販売取引管理団体又は譲渡人に送金済みの仮想通貨は、譲受人に返却される。また、作品の所有権は譲渡人に帰属したままとなる。作品の所有権が譲渡人から譲受人に譲渡されたことが確定するか、譲渡人との間における作品の所有権の譲渡取引は不成立となると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0094】
この場合、
図29の処理の後半部分は、
図32のごとく変更される。以下、
図29との相違点についてのみ説明する。管理コンピュータ50は分散データベース250に対し、作品のNFTに記述された取引の規則情報(
図31)に従いブロックチェーンが具備するスマートコントラクトを実行させることを要求する。分散データベース250はその実行結果に従い、譲受人端末(譲受人のアカウント)に対し、利益控除額に相当する金額を管理コンピュータ50(販売取引管理団体のアカウント)へ対価として支払うことを要求する。譲受人端末ではS3002にて要求された金額を取引規則が指定する仮想通貨(例えばイーサリアムなど)にて管理コンピュータ50に送金する(
図31のS901参照)。管理コンピュータ50では、送金された対価を受け取る(S4018)。一方、譲受人端末はS3019にて、利益控除後対価(前述のTH=LP-CB-ETB)に相当する仮想通貨を作成者端末(すなわち、譲渡人端末)に送金する(
図31のS905参照)。以下の処理は基本的に
図29と同様である。
【0095】
図29及び
図32のいずれの方式においても、作品(対象アイテム)は、改竄耐性の高いブロックチェーン上にて固有のNFT(非代替トークン)により、取引規則、使用可能な仮想通貨、及び対象アイテムの譲渡履歴が特定されるようになっており、譲渡履歴における所有者移転情報の書き換えに関して上記の取引規則が、特に、少なくとも利益控除額に相当する金額の仮想通貨が譲受人から対象アイテムの販売取引管理団体に通信ネットワークを介して送金され
ることを条件として定めている。
【0096】
特に、
図32の方式では、販売取引管理団体に送金されるのは応援人利益及び販売管理手数料を含む利益控除額のみであり、NFTの所有権移転と引き換えとなる代金(=販売価格-利益控除額)は、販売取引管理団体を介さず、譲受人から対象アイテムの譲渡人に直接送金される。よって、1号仮想通貨と作品NFTの交換イベントには販売取引管理団体は直接関与しないことになる。また、譲受人から見て譲渡人は当然「不特定の者」には該当しない。よって、取引対象となる作品のNFTは2号仮想通貨に該当しない蓋然性が高くなると考えられ、作品を1号仮想通貨や法定通貨により利用者間で、より自由に取引できるようにすることが見込まれる。
【0097】
そして、応援人が購入する応援媒体が出品された作品(対象アイテム)に投票可能であり、応援媒体の投票数が多い作品ほど販売価格が高額となるように設定される。よって、作品の取引に直接関与しない応援人も、その応援意思を作品の販売価格(取引価格)に反映することができる。また、作品が獲得した応援媒体の得票数に基づいて、作品の販売価格に占める応援人への配分利益である応援人利益が決定されるようになっているので、作品の取引が成立した際に、応援人にも見返りとなる利益が確定的に担保される。ブロックチェーン上の作品固有のNFT(非代替トークン)に記録されている取引規則の(1)によって、応援人利益を含む利益控除額が、作品の販売取引管理団体に確実に送金されるので、有償で応援媒体を購入し投票した応援人が利益を逸失するリスクも小さい。
【0098】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、あくまで例示であって、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、応援媒体の実体を1号仮想通貨として構築することも可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 対象アイテム取引システム
50 管理コンピュータ
150 端末
250 分散データベース