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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037224
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】振動測定システム及び振動測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20240312BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20240312BHJP
   H04N 23/69 20230101ALI20240312BHJP
   H04N 23/695 20230101ALI20240312BHJP
【FI】
G01H9/00 Z
G01M99/00 Z
H04N5/232 960
H04N5/232 990
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141898
(22)【出願日】2022-09-07
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.THUNDERBOLT
(71)【出願人】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(72)【発明者】
【氏名】小池 智幸
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
5C122
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC43
2G064DD02
5C122DA13
5C122FD01
5C122FE02
5C122FE05
5C122FH09
5C122FH11
5C122FH15
5C122GD06
5C122HB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】廉価カメラでも精度良く振動を測定可能なシステム及び方法を提供する。
【解決手段】撮像装置とコンピュータとを備え、撮像装置は、ズーム可能な光学部を有し、連続撮像可能なカメラを備え、コンピュータは、通信部と記憶部と制御部を備え、通信部は、カメラから画像情報を受信可能に、且つ、制御部からの情報を送信可能に構成され、記憶部は、カメラからの画像情報を記憶可能に、且つ、制御部からの情報を記憶可能に構成され、制御部は、分割部と振動測定部と判定部と撮像調整部を備え、分割部は、画像情報を領域毎、分割可能に構成され、振動測定部は、各領域の時系列画像情報より振動測定可能に構成され、判定部は、測定された各領域の振動を閾値で判定可能に構成され、撮像調整部は、判定部における「NO」判定の領域に対して、それを拡大して撮像可能な調整情報を処理し、それを光学部に送信可能に構成される、振動測定システム。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置とコンピュータとを備える振動測定システムであって、
前記撮像装置は、光学部を有し、連続撮像可能なカメラを備え、
前記光学部は、画角を変更可能なズーム機能を有し、
前記コンピュータは、通信部と、記憶部と、制御部とを備え、
前記通信部は、前記カメラで撮像された画像情報を受信可能に、且つ、前記制御部で
処理された情報を送信可能に構成され、
前記記憶部は、前記カメラから受信した画像情報を記憶可能に、且つ、前記制御部で
処理された情報を記憶可能に構成され、
前記制御部は、分割部と、振動測定部と、判定部と、撮像調整部とを備え、
前記分割部は、前記画像情報を格子状に領域毎、分割可能に構成され、
前記振動測定部は、各領域の時系列画像情報より振動を測定可能に構成され、
前記判定部は、測定された各領域の振動を閾値で判定可能に構成され、
前記撮像調整部は、前記判定部における「NO」判定の領域に対して、当該領域を
拡大して撮像可能な調整情報を処理し、当該調整情報を前記光学部に送信可能に構成
される、
振動測定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の振動測定システムにおいて、
さらに前記撮像装置は、前記カメラの撮像方向を所定の方向に駆動させる駆動部を備え、
前記駆動部は、少なくとも1方向に駆動可能に構成され、
前記撮像調整部は、前記判定部における「NO」判定の領域に対して、当該領域を中心に撮像可能な調整情報を処理し、当該調整情報を前記駆動部に送信可能に構成される、
振動測定システム。
【請求項3】
請求項1に記載の振動測定システムにおいて、
さらに前記光学部は、フォーカス機能と、アイリス機能と、を有する、
振動測定システム。
【請求項4】
振動測定方法であって、
所定の画角で連続画像を撮像し、(ステップS1)
前記各画像を格子状の領域に分割し(ステップS2)、
分割した各領域の時系列情報から振動を測定し(ステップS3)、
測定した各領域の振動を閾値で判定し(ステップS4)、
その判定が全領域で完了したかを判定し(ステップS5)、
全領域で完了したら測定完了とし(終了)、
一方、その判定が一か所でも未完了であれば、未完了の領域を拡大(ズーム機能)して再度撮像可能に撮像装置を調整し(ステップS6)、
全領域の判定が完了するまでステップS1~ステップS5が繰り返される、
振動測定方法。
【請求項5】
請求項4の振動測定方法において、
さらにステップS6において、撮像装置のフォーカス機能、アイリス機能、パン角、及びチルト角の少なくとも1つを調整する、
振動測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動測定システム及び振動測定方法に関し、特に非接触で機械振動を測定するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像解析により、非接触で機械振動を測定する装置が提案されている(特許文献1参照)。
非接触によって画像から振動を測定する場合、測定できる周波数帯と変位量はフレームレートと解像度に依存する。つまり、フレームレートが高いほど高い周波数が測定でき、一方、解像度が高いほど小さい変位が測定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-156389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的なカメラの性能は、高フレームレートにすると低解像度となり、一方、高解像度にすると低フレームレートとなる。すなわち、高フレームレート・低解像度のカメラを使用すると、測定対象によっては、振動の測定漏れが発生する恐れがある。また、高フレームレートと高解像度を両立させることも可能であるが、その場合、特殊なカメラが必要となり、高価なものとなる。
【0005】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、一般的な廉価カメラでも精度良く振動を測定可能な振動測定システム及び振動測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、撮像装置とコンピュータとを備える振動測定システムであって、前記撮像装置は、光学部を有し、連続撮像可能なカメラを備え、前記光学部は、画角を変更可能なズーム機能を有し、前記コンピュータは、通信部と、記憶部と、制御部とを備え、前記通信部は、前記カメラで撮像された画像情報を受信可能に、且つ、前記制御部で処理された情報を送信可能に構成され、前記記憶部は、前記カメラから受信した画像情報を記憶可能に、且つ、前記制御部で処理された情報を記憶可能に構成され、前記制御部は、分割部と、振動測定部と、判定部と、撮像調整部とを備え、前記分割部は、前記画像情報を格子状に領域毎、分割可能に構成され、前記振動測定部は、各領域の時系列画像情報より振動を測定可能に構成され、前記判定部は、測定された各領域の振動を閾値で判定可能に構成され、前記撮像調整部は、前記判定部における「NO」判定の領域に対して、当該領域を拡大して撮像可能な調整情報を処理し、当該調整情報を前記光学部に送信可能に構成される、振動測定システム。
また、本発明の別の態様によれば、振動測定方法であって、所定の画角で連続画像を撮像し、(ステップS1)前記各画像を格子状の領域に分割し(ステップS2)、分割した各領域の時系列情報から振動を測定し(ステップS3)、測定した各領域の振動を閾値で判定し(ステップS4)、その判定が全領域で完了したかを判定し(ステップS5)、全領域で完了したら測定完了とし(終了)、一方、その判定が一か所でも未完了であれば、未完了の領域を拡大(ズーム機能)して再度撮像可能に撮像装置を調整し(ステップS6)、全領域の判定が完了するまでステップS1~ステップS5が繰り返される、振動測定方法。
【0007】
かかる態様によれば、一般的な廉価カメラでも精度良く振動を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る振動測定システムの構成概要を示す図である。
図2】コンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】本発明に係る振動測定システムの動作を示すフローチャートである。
図4】撮像画像の一例を示し、(a)は撮像範囲Rで撮像した画像、(b)は(a)の画像を領域分割した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
本実施形態においてソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよく、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよく、また、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、「部」は、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、様々な情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0012】
上述の広義の回路は、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現されるものである。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
1.全体構成
振動測定システム1の全体構成について説明する。図1は、本発明に係る振動測定システム1の構成概要を示す図である。
【0014】
図1に示すように、振動測定システム1は、振動測定対象物W(以下、単に対象物Wという場合がある)の一部または全部を含んだ撮像範囲Rを撮像する撮像装置2と、得られた画像情報に対して画像処理等を行うコンピュータ3と、を備え、これらが電気的に接続されたシステムである。具体的にいうと、撮像装置2とコンピュータ3とは、互いに情報の送受信を行うことができる。本発明の振動測定システム1は、一般的な廉価カメラでも精度良く振動を測定可能なシステムである。換言すると、低解像度での撮像においても振動の測定漏れが発生し難いシステムである。
【0015】
1.1 撮像装置
撮像装置2は、対象物Wを含んだ撮像範囲Rを撮像する適当な位置に配置され、その撮像範囲Rを一定時間(例えば5秒間)、高速で連続撮像するものである。
本実施形態に係る撮像装置2の形態は特に限定されるものではないが、好ましくは、カメラ20と駆動部22と三脚23とを備える。撮像装置2における駆動部22とカメラ20の制御は、コンピュータ3によって制御され、予め定められた制御にしたがって、駆動部22がカメラ20の撮像方向を自動的に制御し、対象物Wを撮像する。たとえば三脚に設置したパン・チルト電動雲台(駆動部22の一例)に望遠レンズを装着した高速カメラ(カメラ20の一例)を固定し、予め定められた撮像範囲角にしたがい、パン・チルト電動雲台が高速カメラの撮像方向を上下左右方向に調整して撮像する。
【0016】
(カメラ)
カメラ20は、対象物Wを含んだ撮像範囲Rを撮像した画像情報をデータ転送可能に構成されている。具体的には、入射した光を検出し、搭載された光量センサによって電気信号に変換され、後述の通信部31(コンピュータ3のハードウェア構成の一部)へデータ転送するものである。
カメラ20は、高速カメラを例示するがこれに限定されず、ビデオカメラ、ネットワークカメラであってもよく、対象物Wの振動を測定可能な程度の撮像を行うことが可能な周知のカメラを用いることができる。本実施形態では、高速カメラは、モノクロ8bitの解像度1280×1024pxでフレームレート210fpsの撮像が可能なものを採用した。また、より高い周波数の機械振動を測定する場合は、モノクロ8bitの解像度320×240pxでフレームレート2302fpsにすれば良い。
一般的にガタやゆるみによる機械振動を測定するには、1000Hzまでの周波数帯が測定できれば良く、その際のフレームレートは2000fps以上が好ましい。解像度は人が画像を見て対象を認識できる最低限の解像度320×240px以上が好ましい。
【0017】
(光学部)
カメラ20は、光学部21を備える。光学部21は、カメラ20と一体に組み込まれていてもよく、別体のものをカメラ20に取り付けてもよい。光学部21は、例えば、光を集中、発散、反射、又は屈折させるズームレンズもしくはバリフォーカルレンズであり、複数枚の凹凸レンズを備えることで、対象物Wに対してズーム・フォーカス・アイリスの調整が可能に構成されている。ズームを調整する場合は、光学部内部にある複数レンズのレンズ間隔を調整させる。フォーカスを調整する場合は、光学部内部にある撮像レンズ全体とイメージセンサとの間隔を調整させる。アイリスを調整する場合は、光学部内部にある通過する光の量を調整するための遮蔽物の開口部の大きさを調整させる。
本発明に係る光学部21は、当該内部にズーム・フォーカス・アイリスを電動で駆動させる機構を備えているが、これに限らず、その他の方法によってズーム・フォーカス・アイリスを調整させる機構でもよい。
【0018】
(駆動部)
駆動部22は、パン・チルトといった2軸の方向に回転可能に構成される、いわゆる電動雲台である。具体的には、後述の制御部33からの指令情報によって、撮像したい箇所に対して、少なくとも1軸の方向を回転制御してカメラ20の姿勢を変更させるものである。駆動部22は、カメラ20と別体としているが、これに限らず一体であっても構わない。
【0019】
(三脚)
三脚23は、対象物Wを含んだ撮像範囲Rが安定して撮像可能な周知の三脚を用いることができる、なお、三脚23に限らず、ジャイロ、3軸ステージ、又は光学微動ステージ等でもよい。
【0020】
1.2 コンピュータ
続いて、コンピュータ3について説明する。図2は、コンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0021】
本実施形態では、図1に示すように、撮像装置2で対象物Wを含んだ撮像範囲Rを撮像し、その画像情報のデータ転送先として、コンピュータ3が使用される。また、コンピュータ3は、得られた画像情報から撮像装置2に対して、制御信号を出力する。
コンピュータ3は、例えば、振動の画像処理等を行う専用の制御装置であり、図2に示すように、通信部31と、記憶部32と、制御部33等で構成され、これらの構成要素が通信バス30を介して電気的に接続されている。各構成要素についてさらに説明する。
【0022】
(通信部)
通信部31は、USB、IEEE1394、Thunderbolt、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいものの、無線LANネットワーク通信、LTE/3G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等を必要に応じて含めてもよい。これらは一例であり、専用の通信規格を採用してもよい。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。
【0023】
通信部31は、コンピュータ3から種々の電気信号を外部の構成要素に送信可能に構成
されている。また、通信部31は、外部の構成要素から種々の電気信号をコンピュータ3に受信可能に構成されている。例えば、通信部31は、撮像装置2(外部の構成要素の一例)の一部に設けられた不図示のイメージセンサから、連続して撮像した画像情報(電気信号)を受信可能に構成される。また、通信部31は、制御部33からの指令情報を撮像装置2に送信可能に構成される
【0024】
(記憶部)
記憶部32は、上述の記載により定義される様々な情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶媒体である。これは、例えばソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。また、これらの組合せであってもよい。また、ストレージデバイスは、内蔵に限らず、外部からコンピュータ3に接続されてもよい。
【0025】
記憶部32は、制御部33によって実行される画像処理に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。特に記憶部32は、通信部31を介して受信した撮像装置2からの画像情報を記憶している。また、制御部33(後述の分割部33a、振動測定部33b、判定部33c、及び撮像調整部33d)で実行した画像情報、結果情報、または制御情報等を記憶している。
【0026】
(制御部)
制御部33は、受信した画像情報を処理、又は制御可能に構成されている。制御部33は、例えば、不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部33は、記憶部32に記憶された画像情報や所定のプログラムを読み出すことによって、画像処理に係る種々の機能を実現する。具体的には、記憶部32に記憶された画像情報を各領域に分割するための分割機能、分割部33aで分割された各領域の振動を測定するための振動測定機能、振動測定部33bで測定された振動の有無を判定するための判定機能、及び判定部33cによって振動が「無」の判定の領域に対して、再度撮像可能に撮像装置2の向き、及び/又は撮像範囲Rを調整するための撮像調整機能が該当する。すなわち、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されることで、分割部33a、振動測定部33b、判定部33c、及び撮像調整部33dとして実行されうる。なお、制御部33は単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部33を有するように実施してもよい。また、それらの組合せであってもよい。さらに、制御部33は、CPUに限らず、グラフィックス・プロセシング・ユニット(Graphics Processing Unit:GPU)でもよく、そのGPUは、外部から実施するように構成されてもよい。
以下、制御部33における分割部33a、振動測定部33b、判定部33c、及び撮像調整部33dについて、詳述する。
【0027】
〈分割部〉
分割部33aは、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。分割部33aは、記憶部32に記憶された画像情報を領域毎に分割可能に構成される。具体的は、図4を用いて説明する。図4は、撮像画像の一例を示し、(a)は撮像範囲Rで撮像した画像、(b)は(a)の画像を領域分割した模式図である。図4(b)に示すように、分割部33aは、時系列画像情報(記憶部32に記憶されている)から、各画像を格子状の領域に分割(a1,a2,a3,・・・,b1,b2,b3,・・・,c1,c2,c3,・・・)し、分割した各情報を記憶部32に記憶させる。なお、説明の便宜上、図4(b)の画像上にa1,b1、c1など符号を付した。分割する領域のサイズは、予め設定しておき、好ましくは30×30px以上である。また、各領域は正方形としているが、これに限らず、矩形であってもよい。すなわち、本実施形態では、画像の左上を基点に右下にむけて、30×30pxのサイズで分割している。
なお、後述の「振動判定未完了」と判定された領域の再撮像の場合における分割は、その領域内のみで行うことが好ましい。それによって、再撮像の画像全体でなく、必要な領域のみの測定ですむため、測定の効率化を図れ、保存データ量も最小限ですませることができる。
【0028】
〈振動測定部〉
振動測定部33bは、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。振動測定部33bは、分割部33aで分割された各領域の振動を測定可能に構成される。具体的には、振動測定部33bは、分割部33aで各領域に分割した時系列画像情報(記憶部32に記憶されている)から、各領域の振動を測定して、振動情報を記憶部32に記憶させる。なお、振動測定は、特に限定はしないが、以下のようにもとめることができる。
【0029】
各領域の画像情報について、基準画像を定め、それに対する変位をデジタル画像相関法(以下、DICという場合がある)等の従来技術によってサブピクセル単位で算出する。これを撮像した画像情報に対し時系列に実行することで、各領域の変位における時系列画像情報を求める。そして、この時系列画像情報を高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)することで周波数特性を求める。すなわち、この変位の時系列画像情報及び周波数特性が振動を測定する振動情報である。
【0030】
ここで、基準画像は、初期画像として各時間での画像を比較しているが、時間の前後の画像で比較してもよい。つまりスタート時刻での画像を基準とした場合は、初期位置からの変位量の時系列画像情報を求めればよく、時間の前後の画像で比較した場合は、フレーム間の時間差あたりの変位量の時系列画像情報を求めればよい。
【0031】
〈判定部〉
判定部33cは、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。判定部33cは、測定された各領域の振動判定を可能に構成される。具体的には、判定部33cは、振動測定部33bで測定された各領域の振動情報(記憶部32に記憶されている)から、各領域の振動を判定し、その判定結果を記憶部32に記憶させる。なお、ここでの判定は、特に限定はしないが、好ましくは、振動情報の変位の大きさによる判定である。例えば、振動があった(振動情報の変位の大きさがあった)としても、変位の大きさが予め設定していた閾値以下であれば、「振動判定未完了」と判定させ、閾値より大きければ「振動判定完了」と判定させればよい。この時の閾値は変位を求める方法に応じて定めればよく、例えばDICを用いる場合は、閾値を1/10pxとすることが好ましい。
また、周波数特性に閾値を設けて、振動判定としてもよい。具体的には周波数特性は、周波数ごとに強度が算出されるため、この強度の値に閾値を設けるとよい。また、強度を正規化したものに閾値を設けてもよい。
【0032】
〈撮像調整部〉
撮像調整部33dは、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。撮像調整部33dは、判定部33cで判定された「振動判定未完了」の領域に対して、拡大して再度撮像可能に調整し、その調整情報を撮像装置2に対して、送信可能に構成される。具体的には、撮像調整部33dは、判定部33cで判定された「振動判定未完了」の領域(記憶部32に記憶されている)に対して、再度撮像可能に撮像装置2の向き、及び/又は撮像範囲Rを調整する。以下、図4(b)を用いて、詳細に説明する。例えば、判定部33cにて「振動判定未完了」と判定された領域を領域b1とする。判定部33cは、撮像調整部33dに領域b1の位置情報を転送し、撮像調整部33dは、その位置情報から光学部21及び駆動部22の調整値を算出し、光学部21及び駆動部22に通信部31を介して調整値における指令情報を送るように構成されている。
本実施形態では、撮像範囲R2は、領域b1の中心と撮像範囲R2の中心が一致するように決めた。また、撮像範囲R2の大きさは、撮像範囲Rの2倍にズーム機能により拡大するように光学部21に指令した。すなわち、駆動部22に対して、撮像範囲R2の位置で撮像可能にパン・チルト角の調整値を指令し、光学部21に対して、画角を変更可能にズーム・フォーカス・アイリスの調整値を指令するにように制御している。
【0033】
2.画像処理方法
次に、振動測定システム1の動作について、図3を参照して説明する。図3は、本発明に係る振動測定システムの動作を示すフローチャートである。
まず、動作の下準備として、撮像装置2及びコンピュータ3を設置する。コンピュータ3の設置は、特に限定しないが、撮像装置2の近傍(有線ケーブルが届く範囲)が好ましいが、遠隔地に設置して無線通信を行っても構わない。
次いで、振動を測定したい対象物Wの全体(または必要な箇所)が撮像できる画角に撮像装置2の位置を調整する。好ましくは、光学部21の焦点距離を短く調整する。必要に応じて、パン・チルトにおける両方向に駆動部22が動作可能に撮像装置2を調整する。
【0034】
[開始]
調整された位置で連続画像を撮像する(ステップS1)。撮像枚数は、次工程で行われる振動測定に必要な枚数でよい。例えば、振動測定をFFTにより行う場合、画像枚数は、カメラ20のフレームレートと要求する周波数分解能とから、以下の公知の式1で求めるとよい。尚、フレームレートと周波数分解能は、対象物Wに応じて予め決めるとよい。
画像枚数 = フレームレート/周波数分解能 ・・・(式1)
【0035】
次いで、撮像画像を領域分割する(ステップS2)。ここでは、記憶部32に記憶されている時系列画像情報から、各画像を格子状の領域に分割し、分割した各領域の情報を記憶部32に記憶させる。
【0036】
次いで、ステップS2で分割した各領域の振動を測定する(ステップS3)。
【0037】
次いで、ステップS3で測定した各領域の振動を判定する(ステップS4)。
【0038】
次いで、ステップS4の各領域の振動の判定が全領域で完了したか?(ステップS5)
全領域で完了した場合(ステップS5:YES)、「終了」となる。各領域のうち、1つでも完了しない(振動判定未完了)場合(ステップS5:NO)、処理はステップS6に進む。
【0039】
振動判定未完了の領域の撮像を調整する(ステップS6)。ここでは、振動判定未完了の領域を再度撮像するために、カメラ20の撮像方向を調整するように駆動部22のパン・チルト角を指令し、光学部21のズーム・フォーカス・アイリスを指令する。そして、ステップS1に戻り、全領域で振動判定が完了するまで繰り返される。
【0040】
以上より、振動判定が完了していないところを撮像調整して、再度撮像することで、必要な領域のみの撮像ですむため、測定の効率化を図れる。また、低解像度のカメラを用いた場合でも、微小な振動でも測定漏れを防ぎながら、効率よく、精度の良い振動の測定が行える。それによる、保存データ量も最小限ですませることができる。
【0041】
最後に、本発明に係る実施形態及び変形例を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0042】
1.振動測定システム, 2.撮像装置, 3.コンピュータ, 20.カメラ,
21.光学部, 22.駆動部, 23.三脚, 30.通信バス, 31.通信部, 32.記憶部, 33.制御部, 33a.分割部, 33b.振動測定部,
33c.判定部, 33d.撮像調整部, R,R2.撮像範囲, W.対象物
図1
図2
図3
図4