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特開2024-37250プレキャスト基礎およびプレキャスト基礎の施工方法
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  • 特開-プレキャスト基礎およびプレキャスト基礎の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037250
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】プレキャスト基礎およびプレキャスト基礎の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20240312BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
E02D27/01 102A
E04B1/41 502B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141944
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】浅井 和久
(72)【発明者】
【氏名】藤咲 雅巳
(72)【発明者】
【氏名】桁山 吉治
(72)【発明者】
【氏名】森川 勝浩
(72)【発明者】
【氏名】岡田 茂樹
【テーマコード(参考)】
2D046
2E125
【Fターム(参考)】
2D046BA24
2D046BA32
2E125AA45
2E125AB04
2E125AC02
2E125BA02
2E125BA22
2E125CA03
(57)【要約】
【課題】基礎梁部およびフーチング部がプレキャスト化されており、且つレベル調整が可能であるプレキャスト基礎を提供する。
【解決手段】プレキャスト基礎1は、鉄筋が埋設される基礎梁部15および当該基礎梁部15の下部側の両側から側方に張り出したフーチング部16を有する。このプレキャスト基礎1は、フーチング部16内に埋設されており、鉛直方向に雌螺子部が形成された埋設螺合部材13と、埋設螺合部材13の上記雌螺子部に螺合され、上端側がフーチング部16の上面側に露出し、下端側がフーチング部16の下面から下方に突出する雄螺子部材14と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋が埋設される基礎梁部および当該基礎梁部の下部側の両側から張り出したフーチング部を有するプレキャスト基礎であって、
上記フーチング部内に埋設されており、鉛直方向に雌螺子部が形成された埋設螺合部材と、
上記埋設螺合部材の上記雌螺子部に螺合され、上端側が上記フーチング部の上面側に露出し、下端側が上記フーチング部の下面から下方に突出する雄螺子部材と、
を備えることを特徴とするプレキャスト基礎。
【請求項2】
請求項1に記載のプレキャスト基礎において、上記埋設螺合部材の外周面から横方向に突出する突出部を有することを特徴とするプレキャスト基礎。
【請求項3】
請求項1に記載のプレキャスト基礎において、上記フーチング部の上面に座堀が形成されており、上記座堀内に上記雄螺子部材の上記上端側が位置することを特徴とするプレキャスト基礎。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のプレキャスト基礎を捨てコンクリート上に固定する施工方法であって、当該プレキャスト基礎の延設方向に交差する方向に延びる仕切り板を、上記捨てコンクリートと上記フーチング部との間に位置する上記雄螺子部材の上記下端側によって支持し、上記捨てコンクリートと上記フーチング部との間であって、隣り合う上記仕切り板間に、順次に流動性コンクリートを投入することを特徴とするプレキャスト基礎の施工方法。
【請求項5】
請求項4に記載のプレキャスト基礎の施工方法において、上記仕切り板を上記雄螺子部材の上記下端側に寄りかけることを特徴とするプレキャスト基礎の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄筋コンクリート部材がプレキャスト化されたプレキャスト基礎およびプレキャスト基礎の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート部材をプレキャスト化したプレキャスト基礎を施工現場で組み付ける工法が知られている。この工法では、上記プレキャスト基礎の製作誤差や施工現場での施工誤差の吸収のために、当該プレキャスト基礎の接合面間に隙間を空けて縦目地を形成している。また、既に設置したプレキャスト基礎に対して次のプレキャスト基礎を組み付ける際には、既に設置したプレキャスト基礎に対して次のプレキャスト基礎の高さを調整することが必要となる。
【0003】
なお、特許文献1には、基礎梁部がプレキャストコンクリート体であるプレキャスト基礎からなり、フーチング部(ベース部)が現場打ちコンクリート体からなり、上記プレキャスト基礎の真下に上記フーチング部の主筋が位置し、上記プレキャスト基礎の下端から突出した複数本のあばら筋に上記主筋が結合された連続基礎における、上記プレキャスト基礎を基礎構築場所で起立姿勢に支持するプレキャスト基礎施工治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-188472号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のプレキャスト基礎施工治具は、基礎梁部についてはプレキャストコンクリート体であるが、フーチング部は現場打ちコンクリート体からなる基礎構造に対して適用される治具であり、基礎梁部およびフーチング部がともにプレキャスト化されたプレキャスト基礎についてのレベル調整に用いることはできない。
【0006】
この発明は、基礎梁部およびフーチング部がプレキャスト化されており、且つレベル調整が可能とされたプレキャスト基礎および、このプレキャスト基礎の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のプレキャスト基礎は、鉄筋が埋設される基礎梁部および当該基礎梁部の下部側の両側から張り出したフーチング部を有するプレキャスト基礎であって、上記フーチング部内に埋設されており、鉛直方向に雌螺子部が形成された埋設螺合部材と、上記埋設螺合部材の上記雌螺子部に螺合され、上端側が上記フーチング部の上面側に露出し、下端側が上記フーチング部の下面から下方に突出する雄螺子部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記の構成であれば、当該プレキャスト基礎は、設置面上において、上記雄螺子部材の下方に突出する部位により、当該設置面に対して空間をあけて支持される。当該プレキャスト基礎の高さ調整は、上記雄螺子部材を回し、当該雄螺子部材の出入り量を変化させて行うことができる。
【0009】
上記埋設螺合部材の外周面から横方向に突出する突出部を有してもよい。これによれば、上記埋設螺合部材が上記フーチング部から上下方向に抜ける事態および上記埋設螺合部材が上記雄螺子部材と共回りする事態を防止できる。
【0010】
上記フーチング部の上面に座堀が形成されており、上記座堀内に上記雄螺子部材の上記上端側が位置してもよい。これによれば、当該プレキャスト基礎の高さ調整の後に、上記座堀内に無収縮モルタルを充填して上記雄螺子部材の上部周囲を封止することにより、上記雄螺子部材の防錆が図れる。
【0011】
また、この発明のプレキャスト基礎の施工方法は、上記いずれかのプレキャスト基礎を捨てコンクリート上に固定する施工方法であって、当該プレキャスト基礎の延設方向に交差する方向に延びる仕切り板を、上記捨てコンクリートと上記フーチング部との間に位置する上記雄螺子部材の上記下端側によって支持し、上記捨てコンクリートと上記フーチング部との間であって、隣り合う上記仕切り板間に、順次に流動性コンクリートを投入することを特徴とする。
【0012】
上記の方法であれば、上記捨てコンクリートと上記フーチング部との間に投入される流動性コンクリートの横流れを上記仕切り板によって抑制することができる。
【0013】
上記プレキャスト基礎の施工方法において、上記仕切り板を上記雄螺子部材の上記下端側に寄りかけてもよい。これによれば、上記仕切り板を上記雄螺子部材に縛り付ける作業手間を無くすことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明であれば、基礎梁部およびフーチング部がプレキャスト化されたプレキャスト基礎におけるレベル調整が容易になる等の諸効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態のプレキャスト基礎同士の接合例を示した斜視説明図である。
図2】実施形態のプレキャスト基礎を示した斜視説明図である。
図3】実施形態のプレキャスト基礎の雄螺子部材等の断面を示した斜視説明図である。
図4】捨てコンクリート上に載置された実施形態のプレキャスト基礎下に流動性コンクリートが投入された状態を示した説明図である。
図5】実施形態のプレキャスト基礎の施工方法を示す説明図である。
図6】実施形態のプレキャスト基礎の施工方法を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の一態様に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、この実施形態のプレキャスト基礎1とプレキャスト基礎2との接合を示している。この接合では、隣り合う一方のプレキャスト基礎1と他方のプレキャスト基礎2の互いに対向する接合面11,21間にグラウトが充填されて縦目地が形成される。そして、既に設置したプレキャスト基礎1に対して次のプレキャスト基礎2を組み付ける際には、既に設置したプレキャスト基礎1に対して次のプレキャスト基礎2の高さを調整する作業が行われる。
【0017】
上記のプレキャスト基礎1およびプレキャスト基礎2は、同一の構造を有している。上記プレキャスト基礎1は、図2にも示すように、基礎梁部15と、この基礎梁部15の下部から側方に張り出したフーチング部16と、上記基礎梁部15の上面から立ち上がる腰壁部17と、を有している。同様に、上記プレキャスト基礎2も、基礎梁部25と、この基礎梁部25の下部から側方に張り出したフーチング部26と、上記基礎梁部25の上面から立ち上がる腰壁部27と、を有している。
【0018】
上記プレキャスト基礎1,2の基礎梁部15,25には、所定の配置で例えば4本の主筋15a,25aが埋設されており、一方の接合面11,21からは、上記4本の主筋15a,25aが当該プレキャスト基礎1,2の延設方向に所定の長さで突き出ている。また、プレキャスト基礎1,2についての基礎梁部15,25の他方の接合面11,21側には、機械式継手18,28が埋設されている。
【0019】
さらに、プレキャスト基礎1,2のフーチング部16,26は、埋設螺合部材13,23および雄螺子部材14,24を備えている。
【0020】
埋設螺合部材13,23は、鉛直方向に雌螺子部が形成された高ナットからなる。また、例えば、2本の高ナットがボルトに螺合された状態で、当該高ナット同士が溶接により互いに固定される。さらに、この実施形態では、例えば、丸孔付きの四辺形板を、上記ボルトに通して上記2本の高ナットの接合端面間に位置させ、上記2本の高ナットと上記四辺形板を溶接により互いに固定している。上記四辺形板によって、埋設螺合部材13,23の外周面から横方向に突出する突出部13a,23aが形成される。突出部13a,23aは、上記四辺形板によるものに限られない。
【0021】
雄螺子部材14,24は、埋設螺合部材13,23の上記雌螺子部に螺合される六角頭部付きの長ボルトからなり、上端側がフーチング部16,26の上面側に露出し、下端側がフーチング部16,26の下面から下方に突出している。この下方の突出長さは、後述する流動性コンクリート6の厚みを規定する寸法となり、例えば、80mm程度とされる。
【0022】
フーチング部16,26の上面には座堀16a,26aが形成されており、上記座堀16a,26a内に雄螺子部材14,24の上記上端側の六角頭部が位置している。座堀16a,26aは、プレキャスト部材1,2の作製時に、例えば、すり鉢状治具を、プレキャスト部材1,2の作製型枠内に配置された埋設螺合部材13,23の上側にセットしておくことで、形成することができる。このとき、雄螺子部材14,24は外しておく。また、上記すり鉢状治具の底面に、埋設螺合部材13,23の上端面を当接させておく。また、座堀16a,26aは、上記六角頭部に嵌る回転ソケットが入る大きさを有する。
【0023】
上記の構成であれば、図3に示すように、当該プレキャスト基礎1,2は、捨てコンクリート4上において、雄螺子部材14,24の下方に突出する部位により、当該捨てコンクリート4に対して空間をあけて支持される。当該プレキャスト基礎1,2の高さ調整は、雄螺子部材14,24を回し、当該雄螺子部材14,24の出入り量を変化させて行うことができる。なお、プレキャスト基礎1,2を、捨てコンクリート4上に載置する際には、捨てコンクリート4と雄螺子部材14,24の下端との間に敷プレート141,241を置くこととしている。
【0024】
埋設螺合部材13,23の外周面から横方向に突出する突出部13a,23aを有すると、当該埋設螺合部材13,23が、フーチング部16,26から上下方向に抜ける事態および埋設螺合部材13,23が雄螺子部材14,24と共回りする事態を防止できる。
【0025】
フーチング部16の上面に形成された座堀16a,26a内に雄螺子部材14,24の上記上端側が位置すると、当該プレキャスト基礎1,2の高さ調整の後に、図4に示すように、座堀16a,26a内に無収縮モルタルMを充填して雄螺子部材14,24の上端部周囲を封止することができる。この封止によって、雄螺子部材14,24の錆止めが図れる。
【0026】
次に、実施形態のプレキャスト基礎の施工作業について説明する。この作業では、既に設置した一方のプレキャスト基礎1の接合面11に、他方のプレキャスト基礎2の接合面21を対面させ、これら接合面11,21を突き合わせる。この突き合わせの作業においては、例えば、揚重機で持ち上げたプレキャスト基礎2の4本の主筋25aを、設置済のプレキャスト基礎1の機械式継手18の継手部材内に差し込む操作が行われる。
【0027】
また、既に設置した一方のプレキャスト基礎1の高さに合わせて他方のプレキャスト基礎2の高さ調整を行う。例えば、揚重機で持ち上げた状態のプレキャスト基礎2のフーチング部26の上面高さを、スタッフ棒を使用して確認しながら、当該フーチング部26を仮支持する爪付きジャッキの支持高さを調整する。そして、プレキャスト基礎2を上記爪付きジャッキに載せた状態で、雄螺子部材24を、その下端が捨てコンクリート4側の敷プレート241に当たるまで回す。また、プレキャスト基礎2の高さ調整においては、プレキャスト基礎2の各接合面側の左右各々2か所を上記爪付きジャッキで持ち上げる。また、腰壁部27に水平器を当てて水平を確認する。
【0028】
次に、図5に示すように、プレキャスト基礎1,2と捨てコンクリート4との間に流動性コンクリート6を流し込む作業を行う。捨てコンクリート4の幅は、プレキャスト基礎1,2のフーチング幅よりも左右でそれぞれ150mm程度広くされるが、流動性コンクリート6を流す側(腰壁部17,27が設けられていない側)は、200mm程度と広くしており、この側に流動性コンクリート投入用のシュート9を配置する。また、捨てコンクリート4の縁に沿って止め枠7を配置し、木杭8等で上記止め枠7を固定する。
【0029】
また、プレキャスト基礎1,2と捨てコンクリート4との間に流動性コンクリート6を流し込む作業においては、図6に示すように、プレキャスト基礎1,2の延設方向に交差する方向に延びる仕切り板(スラブ打継フェンスバー等)5を、捨てコンクリート4とフーチング部16,26との間に位置する雄螺子部材14,24の下端側によって支持する。この支持は、仕切り板5を雄螺子部材14,24の上記下端側に縛り付けるのではなく、当該下端側に寄りかけることとしており、これによって、上記縛り付けの作業手間を無くしている。
【0030】
そして、捨てコンクリート4とフーチング部16,26との間に、流動性コンクリート6を、白抜き矢印方向(プレキャスト基礎の延設方向に交差する方向)に投入する。この投入は、隣り合う仕切り板5・5間において順次に行う。すなわち、隣り合う仕切り板5・5間の1区画において流動性コンクリート6の充填が完了したら、隣の仕切り板5・5間の次の1区画において流動性コンクリート6を充填することを繰り返す。これにより、流動性コンクリート6の横流れを仕切り板5によって抑制し、大区画内で流動性コンクリート6が長時間にわたって投入され続けるといった問題を解消できる。流動性コンクリート6としては、例えば流動化コンクリートが用いられる。
【0031】
さらに、上記基礎梁部15,25の側面には、目地形成で用いるグラウトの漏れを封じるための板張り処理等を行う。その後、上記接合面11,21間に液状のグラウトを導入する。この液状のグラウトの導入では、上記機械式継手18の複数の充填管における液状のグラウトの導入用の1本の充填管にパイプを差し込み、このパイプに接続したホースから、所定圧で液状のグラウトを送り出す。上記接合面11,21間および上記機械式継手18内に液状のグラウトが満たされると、上記充填管から液状のグラウトが溢れ出るので、液状のグラウトの注入作業を終了する。
【0032】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 :プレキャスト部材
2 :プレキャスト部材
4 :捨てコンクリート
5 :仕切り板
6 :流動性コンクリート
7 :止め枠
8 :木杭
9 :シュート
11 :接合面
13 :埋設螺合部材
13a :突出部
14 :雄螺子部材
15 :基礎梁部
15a :主筋
16 :フーチング部
16a :座堀
17 :腰壁部
18 :機械式継手
21 :接合面
23 :埋設螺合部材
23a :突出部
24 :雄螺子部材
25 :基礎梁部
25a :主筋
26 :フーチング部
26a :座堀
27 :腰壁部
28 :機械式継手
141 :敷プレート
241 :敷プレート
M :無収縮モルタル
図1
図2
図3
図4
図5
図6