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特開2024-37251ローラーの支持方法および支持機構、ならびにそれを用いたウェブの搬送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037251
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ローラーの支持方法および支持機構、ならびにそれを用いたウェブの搬送装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 13/04 20060101AFI20240312BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F16C13/04
F16C13/00 Z
F16C13/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141948
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秋山 華人
【テーマコード(参考)】
3J103
【Fターム(参考)】
3J103AA02
3J103AA13
3J103AA23
3J103BA37
3J103BA41
3J103CA03
3J103CA05
3J103CA06
3J103CA25
3J103CA37
3J103CA62
3J103CA78
3J103DA01
3J103DA05
3J103FA04
3J103FA26
3J103GA02
3J103GA12
3J103GA32
3J103HA02
3J103HA12
3J103HA53
(57)【要約】
【課題】
固有振動数を大幅に変化させつつ微調整も可能なローラーの支持方法および支持機構、ならびにそれを用いたウェブの搬送装置を提供する。
【解決手段】
本発明のローラーの支持方法は、ローラーの片側の軸を第一の支持位置と、当該第一の支持位置よりも上記軸の端に向かう方向の少なくとも1箇所の第二の支持位置とで支持する方法であって、上記ローラーが共振しているのが確認されたときに、上記第二の支持位置で、上記軸を支持している状態から支持していない状態に、または上記軸を支持していない状態から支持している状態に変更する。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラーの片側の軸を第一の支持位置と、当該第一の支持位置よりも前記軸の端に向かう方向の少なくとも1箇所の第二の支持位置とで支持する方法であって、
前記ローラーが共振しているのが確認されたときに、前記第二の支持位置で、前記軸を支持している状態から支持していない状態に、または前記軸を支持していない状態から支持している状態に変更する、
ローラーの支持方法。
【請求項2】
ローラーの片側の軸を第一の支持位置と、当該第一の支持位置よりも前記軸の端に向かう方向の少なくとも1箇所の第二の支持位置とで支持する方法であって、
前記ローラーが共振しているのが確認されたときに、前記第二の支持位置を前記軸の長手方向に変更する、または前記第二の支持位置を支持している支持部の剛性を変更する、
ローラーの支持方法。
【請求項3】
ローラーの片側の軸を支持する機構であって、
前記軸を支持する第一の支持部と、
前記第一の支持部よりも前記軸の端に向かう方向の箇所で、前記軸を支持する状態と支持しない状態を変えられる少なくとも1つの第二の支持部と、
を備えた、ローラーの支持機構。
【請求項4】
ローラーの片側の軸を支持する機構であって、
前記軸を支持する第一の支持部と、
前記第一の支持部よりも前記軸の端に向かう方向の箇所で、前記軸を支持する少なくとも1つの第二の支持部と、を備え、
前記第二の支持部が、前記軸の長手方向に支持する箇所を変えられる、または当該第二の支持部の剛性を変えられる、
ローラーの支持機構。
【請求項5】
前記第二の支持部が、前記軸を押圧して支持する弾性体部材を有する、請求項4のローラーの支持機構。
【請求項6】
二重管構造の芯金、内部クラウン構造のゴム被覆、または内部逆クラウン構造のゴム被覆の少なくともいずれか1つを有するローラーと、
前記ローラーの片側の軸をそれぞれ支持する2つのローラーの支持機構と、を備え、
前記2つのローラーの支持機構のうち少なくとも一方が請求項3~5のいずれかのローラーの支持機構である、ウェブの搬送装置。
【請求項7】
前記ローラーがニップローラーである、請求項6のウェブの搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙、布、プラスチックフィルム、金属箔、薄鋼板など、長尺で薄肉な材料(以下、これらをウェブという)の搬送装置に実装されるローラーの支持機構と、その支持機構を使用したローラーの支持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェブを搬送する装置の中には、上流側と下流側の張力を分断するテンションカットや、ウェブの厚み制御や、ウェブに表面処理を施す際の随伴流の遮断などを目的として、2本のローラーを用いてウェブを挟持しつつウェブを搬送する装置が多数存在する。製紙業界では抄紙機のプレスローラー、鉄鋼業界では圧延ローラー、フィルム製膜業界ではコロナ処理装置のニップローラーなどがある。
【0003】
上記のような2本のローラーを用いてウェブを挟持しながら搬送するウェブの搬送装置では、特定の条件下にてローラーの回転周波数と、ウェブの搬送装置の固有振動数が一致、または近づいた際に共振が発生し、装置を構成するローラーが振動することが知られている。共振により振動が増大すると、ウェブの加工不良や機械の故障につながる。
【0004】
このような問題に対し、特許文献1では、ローラーの振動モードを特定し、特定の振動モードでの共振を検知した際に、ウェブの搬送装置の固有振動数を変化させ、共振を回避する技術が提案されている。また、固有振動数の調整手段として、ニップローラーの面圧の調整でゴムのつぶれ量を制御する方法を好ましく用いることができると提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-187642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、面圧は運転条件の1つであり調整可能な範囲が狭いため、特許文献1に開示されている技術では、固有振動数の調整代が狭く、共振を回避しきれないという課題がある。
【0007】
そこで本発明は、上記課題を解決し、面圧等の運転条件を変えることなく、固有振動数を変化させつつ、微調整も可能なローラーの支持方法および支持機構、ならびにそれを用いたウェブの搬送装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]上記課題を解決する本発明のローラーの支持方法は、ローラーの片側の軸を第一の支持位置と、当該第一の支持位置よりも上記軸の端に向かう方向の少なくとも1箇所の第二の支持位置とで支持する方法であって、
上記ローラーが共振しているのが確認されたときに、上記第二の支持位置で、上記軸を支持している状態から支持していない状態に、または上記軸を支持していない状態から支持している状態に変更する。
【0009】
[2]上記課題を解決する本発明の別態様のローラーの支持方法は、ローラーの片側の軸を第一の支持位置と、当該第一の支持位置よりも上記軸の端に向かう方向の少なくとも1箇所の第二の支持位置とで支持する方法であって、
上記ローラーが共振しているのが確認されたときに、上記第二の支持位置を上記軸の長手方向に変更する、または上記第二の支持位置を支持している支持部の剛性を変更する。
【0010】
[3]本発明のローラーの支持機構は、ローラーの片側の軸を支持する機構であって、
上記軸を支持する第一の支持部と、
上記第一の支持部よりも上記軸の端に向かう方向の箇所で、上記軸を支持する状態と支持しない状態を変えられる少なくとも1つの第二の支持部と、
を備える。
【0011】
[4]本発明の別態様のローラーの支持機構は、ローラーの片側の軸を支持する機構であって、
上記軸を支持する第一の支持部と、
上記第一の支持部よりも上記軸の端に向かう方向の箇所で、上記軸を支持する少なくとも1つの第二の支持部と、を備え、
上記第二の支持部が、上記軸の長手方向に支持する箇所を変えられる、または当該第二の支持部の剛性を変えられる。
【0012】
[5]上記[4]のローラーの支持機構は、上記第二の支持部が、上記軸を押圧して支持する弾性体部材を有することが好ましい。
【0013】
[6]本発明のウェブの搬送装置は、二重管構造の芯金、内部クラウン構造のゴム被覆、または内部逆クラウン構造のゴム被覆の少なくともいずれか1つを有するローラーと、
上記ローラーの片側の軸をそれぞれ支持する2つのローラーの支持機構と、を備え、
上記2つのローラーの支持機構のうち少なくとも一方が上記[3]~[5]のいずれかのローラーの支持機構である。
【0014】
[7]上記[6]のウェブの搬送装置は、上記ローラーがニップローラーであることが好ましい。
【0015】
[用語の説明]
次に、本発明における各用語の意味を説明する。
「支持機構」とは、ローラーを回転自由に支える部材や装置をいう。旋回アーム等、作動機構を有するものも含む。
【0016】
「ウェブの搬送装置」とは、ウェブを長手方向の上流から下流へと送る装置をいう。ローラー1本からなる搬送装置だけでなく、複数のローラーからなる搬送装置も含む。
【0017】
「第一の支持部」とは、後述する第二の支持部よりもローラーの軸の中心に向かう方向の箇所で、ローラーの軸を同じ位置で常時支持する支持部をいう。
【0018】
「第二の支持部」とは、第一の支持部よりもローラーの軸の端に向かう方向の箇所で、ローラーの軸を支持する支持部であって、分離支持機構、移動支持機構、剛性調整機構のいずれか1つ、またはこれらを組み合わせた機構を有する支持部をいう。第二の支持部はローラーの片側の軸に1つだけ備えていてもよいし、複数備えていてもよい。
【0019】
「第一の支持位置」とは、第一の支持部で軸を支持する箇所をいう。
【0020】
「第二の支持位置」とは、第二の支持部で軸を支持する箇所をいう。
【0021】
「ローラーが共振しているのが確認されたときに」とは、ウェブの搬送装置に含まれる少なくとも1つのローラーが共振していることが確認できたときをいう。共振の確認方法に限りは無いが、例えばレーザー変位計や加速度センサを用いてローラー表面の変位や、アームや支持部の加速度を監視し、予め設定しておいた値を上回ったときいう。
【0022】
「軸を支持している状態から支持していない状態に、または前記軸を支持していない状態から支持している状態に変更する」や、「軸を支持する状態と支持しない状態を変えられる」とは、ローラーと基礎やフレームとを連結したり、分離することや、それらを実現する機構をいう。例えば、図1図2のようにローラーの軸と支持部とを連結したり、分離する機構や、図3のように、ローラーの軸自体を連結したり、分離する機構や、図4のように、支持部自体を連結したり、分離する機構も含む。
【0023】
「軸の長手方向に変更する」や、「軸の長手方向に支持する箇所を変えられる」とは、ローラーの軸の長手方向に対して、ローラーの軸と支持部との連結部を移動させることや、移動可能な機構をいう。例えば、図5のようにローラーの軸と接するベアリングの位置を移動可能な機構や、図6のようにローラーの軸とベアリングの間に部材を有し、その部材の位置を移動可能な機構も含む。また、ローラーの軸と支持機構との連結部は同一径の軸だけでなく、径の異なる軸へ連結することも含む。
【0024】
「支持部の剛性を変更する」や、「支持部の剛性を変えられる」とは、支持部を1つのバネと見立てた時の剛性を変えることや、剛性を調整可能な機構をいう。剛性を調整する部位は支持部の一部でもよいし、全体でもよい。例えば、図7のように支持部にゴムなどの弾性体部材を有しその変形量を制御することで剛性が調整可能な機構や、図8のように支持部に交換可能な部材を有し、材質や構造の異なる部材へ付け替え可能な機構を含む。
【0025】
「弾性体部材」とは、力を加えていると変形するが、力を除くともとの形状に戻る物体をいう。ヤング率や形状に制限は無く、例えばゴムやバネを指す。
【0026】
「二重管構造」とは、中空円筒形状の外筒部材と該外筒部材と同軸に配置された中心軸とを備え、上記外筒部材の長手方向中央部において上記外筒部材と上記中心軸が連結された構造をいう。
【0027】
「内部クラウン構造」とは、少なくとも1つのゴム層を有するローラーであり、単層のゴム層を有し、ローラーの芯金の外径が中央部から両端部へ向けて順次小さくなっている構造、または2層以上のゴム層を有し、内層の少なくとも1つのゴム層の厚さが、ローラーの長手方向に対して中央部から両端部へ向けて順次薄くなるように巻かれている構造をいう。また、2層以上のゴム層を有する場合、上記ゴム層の硬度は、最表層と、内層の中央部から両端部へ向けて順次薄くなるように巻かれている層では、最表層のゴム硬度の方が低い特徴を有する。
【0028】
「内部逆クラウン構造」とは、2層以上のゴム層を有し、内層の少なくとも1つのゴム層の厚さが、ローラーの長手方向に対して中央部から両端部へ向けて順次厚くなるように巻かれている構造をいう。また、上記ゴム層の硬度は、最表層と、内層の中央部から両端部へ向けて順次厚くなるように巻かれている層では、最表層のゴム硬度の方が高い特徴を有する。
【発明の効果】
【0029】
本発明のローラーの支持方法によれば、面圧等の運転条件を変えることなく、ウェブの搬送装置の固有振動数を変化させつつ微調整も可能となり、共振を回避することができる。また、本発明のローラーの支持機構によれば、本発明のローラーの支持方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】分離支持機構を有する第二の支持部を備えた本発明のローラーの支持機構の一実施形態を示す概略側面図である。
図2】分離支持機構を有する第二の支持部を備えた本発明のローラーの支持機構の別の実施形態を示す概略側面図である。
図3】分離支持機構を有する第二の支持部を備えた本発明のローラーの支持機構の、さらに別の実施形態を示す概略側面図である。
図4】分離支持機構を有する第二の支持部を備えた本発明のローラーの支持機構の、さらに別の実施形態を示す概略側面図である。
図5】移動支持機構を有する第二の支持部を備えた本発明のローラーの支持機構の一実施形態を示す概略側面図である。
図6】移動支持機構を有する第二の支持部を備えた本発明のローラーの支持機構の別の実施形態を示す概略側面図である。
図7】剛性調整機構を有する第二の支持部を備えた本発明のローラーの支持機構の一実施形態を示す概略側面図である。
図8】剛性調整機構を有する第二の支持部を備えた本発明のローラーの支持機構の別の実施形態を示す概略側面図である。
図9】分離支持機構と移動支持機構を有する第二の支持部を備えた本発明のローラーの支持機構の一実施形態を示す概略側面図である。
図10】移動支持機構と剛性調整機構を有する第二の支持部を備えた本発明のローラーの支持機構の一実施形態を示す概略側面図である。
図11】分離支持機構と剛性調整機構を有する第二の支持部を備えた本発明のローラーの支持機構の一実施形態を示す概略側面図である。
図12】分離支持機構と移動支持機構を有する第二の支持部を備えた本発明のローラーの支持機構の一実施形態を示す概略側面図である。
図13】分離支持機構、移動支持機構および剛性調整機構を有する第二の支持部を備えた本発明のローラーの支持機構の一実施形態を示す概略側面図である。
図14】分離支持機構、移動支持機構および剛性調整機構を有する第二の支持部を備えた本発明のローラーの支持機構の別の実施形態を示す概略側面図である。
図15】コロナ処理工程のニップローラーに本発明のローラーの支持機構を適用した概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。
【0032】
図1に本発明のローラーの支持機構の一実施形態の概略断面図を示す。なお、図1では主要部のみを示し、用役配管や回転駆動手段などは省略している。
【0033】
[分離支持機構を有する第二の支持部]
本発明のローラーの支持機構は、ローラー1の片側の軸を支持する。そして、本発明のローラーの支持機構は、ローラー1の軸を回転可能に常時支持する支持部を少なくとも1つ備える。以下、この支持部を第一の支持部30という。
【0034】
本発明者は、第一の支持部30よりも軸の端に向かう方向の箇所を、さらに1つまたは複数の支持部で支持することで、ウェブの搬送装置の固有振動数が大幅に上昇し、支持する箇所を減らすことで固有振動数が大幅に下降することを見出した。このローラーの支持機構の構造を、図面を参照して説明する。
【0035】
図1を参照する。図1のローラーの支持機構は、ローラー1の片側の軸を支持する機構である。このローラーの支持機構は、ローラー1の軸を常時支持する第一の支持部30と、第一の支持部30よりもローラー1の軸の端に向かう方向の少なくとも1箇所で、ローラー1の軸を支持する状態と支持しない状態を変えられる第二の支持部31を備えている。以下、ローラー1の軸のうち、第一の支持部30が支持している箇所を第一の支持位置40、第二の支持部31が支持している箇所を第二の支持位置41という。
【0036】
図1の実施形態では、第二の支持部31が1つであるが、第二の支持部31を複数備えていてもよい。以下、この軸を支持する状態と支持しない状態を変えられる機構を、分離支持機構32という。
【0037】
分離支持機構32とは、ローラー1と基礎やフレームとを連結したり、分離する機構全般をいい、ローラー1の軸と第二の支持部31とを連結したり、分離する機構や、ローラー1の軸自体を連結したり、分離する機構や、第二の支持部31自体を連結したり、分離する機構を含む。
【0038】
図1に加え、図2~4も参照して分離支持機構32の実施形態の例を示す。図1の分離支持機構32は、ローラー1の軸端部がテーパー形状を有しており、その軸の形状に沿った部材を軸の長手方向に移動することで、規定の位置でローラー1の軸と第二の支持部31とを連結、分離できる機構である。図2の分離支持機構32は、ローラー1の軸と第二の支持部31とを連結、分離できる機構の別の形態であり、図1の機構とは異なり、ベアリング2の外輪でローラー1の軸を支持する。図3の分離支持機構32は、ローラー1の軸自体を連結、分離できる機構である。軸自体を連結、分離できる機構は特に限定されないが、例えばカップリングやフランジ締結等を用いることができる。この内、軸同士の回転軸のずれが許容可能なカップリングを好ましく用いることができる。図4の分離支持機構32は、第二の支持部31自体を連結、分離できる機構である。図4の機構は、大きく2つの部材がボルト7で締結されたアーム4で構成されており、ボルトの着脱によってローラー1と基礎やフレームとを連結、分離できる機構である。
【0039】
[分離支持方法]
上記分離支持機構32を有する第二の支持部31を備えたローラーの支持機構により、ローラー1の共振を回避する方法を説明する。ローラー1が共振しているのが確認されたときに、第二の支持部31の分離支持機構32を作動させ、第二の支持位置41でローラー1の軸を支持している状態から支持していない状態に、または上記軸を支持していない状態から第二の支持位置41で支持している状態に変更することで、ローラー1の共振を回避できる。このようにローラー1の軸を支持する方法を分離支持方法という。
【0040】
ローラー1の共振の確認方法は特に限定されないが、例えばレーザー変位計や加速度センサ10を用いてローラー1表面の変位や、第一の支持部30のアーム4の加速度を監視し、予め設定しておいた値と比較する方法を用いることができる。
【0041】
ローラー1が共振しているのが確認されたときに第二の支持部31で分離支持機構32を作動することで、ウェブの搬送装置の固有振動数を大幅に変化させ、共振を早期に回避し設備の故障を防ぐことができる。
【0042】
[移動支持機構を有する第二の支持部]
本発明者は、第一の支持部30よりも軸の端に向かう方向の箇所で、第二の支持部31の支持する箇所を変えることでウェブの搬送装置の固有振動数を微調整可能なことも見出した。このローラーの支持機構の構造を、図面を参照して説明する。
【0043】
図5を参酌する。図5のローラーの支持機構は、ローラー1の片側の軸を支持する機構である。このローラーの支持機構は、ローラー1の軸を常時支持する第一の支持部30と、第一の支持部30よりもローラー1の軸の端に向かう方向の少なくとも1箇所で、ローラー1の軸の長手方向に支持する箇所を変えられる第二の支持部31を備えている。以下、この軸を支持する箇所を変えられる機構を、移動支持機構33という。
【0044】
移動支持機構33とは、ローラー1の軸の長手方向に対して、軸と第二の支持部との連結部を移動する機構をいい、軸と接するベアリング2の位置を移動する機構や、軸とベアリング2の間に部材を介在させ、その部材の位置を移動する機構を含む。
【0045】
図5に加え図6も参酌して、移動支持機構33の実施形態の例を示す。図5の移動支持機構33は、ローラー1の軸をベアリング2の内輪で支持し、ベアリング2の外輪を、移動機構8を備えるアーム4で支持している。軸とベアリング2は固着されておらず、移動機構8を作動することで、R2の範囲内で軸を支持する箇所を変えることができる。移動機構8は市販のリニアガイドや、リニアベアリングとシャフトの組み合わせ、およびラックピニオンやボールネジなどを好適に用いることが出来る。図6の移動支持機構33は、ベアリング2、軸とベアリングの連結部材22、ベアリングとアームの連結部材23の3つの部材を有し、それら3つの部材をアーム4で支持している。3つの部材の内、軸とベアリングの連結部材22とベアリングとアームの連結部材23は軸の長手方向に位置を移動可能であり、R2の範囲で支持する箇所を変えることできる。
【0046】
[移動支持方法]
上記移動支持機構33を有する第二の支持部31を備えたローラーの支持機構により、ローラー1の共振を回避する方法を説明する。ローラー1が共振しているのが確認されたときに、第二の支持部31の移動支持機構33を作動させ、第二の支持位置を軸の長手方向に変更することで、ローラー1の共振を回避できる。このようにローラー1の軸を支持する方法を移動支持方法という。
【0047】
[剛性調整機構を有する第二の支持部]
本発明者は、第一の支持部30よりも軸の端に向かう方向の箇所で、第二の支持部31の剛性を変えることでもウェブの搬送装置の固有振動数を微調整可能なことも見出した。このローラーの支持機構の構造を、図面を参照して説明する。
【0048】
図7を参酌する。図7のローラーの支持機構は、ローラー1の片側の軸を支持する機構である。このローラー1の支持機構は、ローラー1の軸を常時支持する第一の支持部30と、第一の支持部30よりもローラー1の軸の端に向かう方向の少なくとも1箇所で、支持部の剛性を変えられる第二の支持部31を備えている。以下、この剛性を変える機構を、剛性調整機構34という。
【0049】
剛性調整機構34とは、第二の支持部31を1つのバネと見立てた時の剛性を変えられる機構をいい、剛性を調整する部位は第二の支持部31の一部でもよいし、全体でもよい。剛性の調整機構として、例えば、第二の支持部31にゴムなどの弾性体部材6を取り付け、その変形量を制御することで剛性を調整する機構や、第二の支持部31に交換可能部材9を取り付け、材質や構造の異なる部材へ付け替え変える機構を用いることができる。
【0050】
図7に加え図8も参酌して、剛性調整機構34の実施形態の例を示す。図7の剛性調整機構34は、弾性体部材6を用いた機構である。ローラー1の軸をベアリング2の外輪で支持し、ベアリング2を支持するアーム4に弾性体部材6とボルト7を取り付け、ボルト7を伸ばすことで弾性体部材6が圧縮して剛性が高まり、ボルト7を縮めることで弾性体部材6が元の形状に戻り剛性が弱くなる機構である。弾性体部材6の部材や構造に特に限りはないが、例えばゴムやバネが利用できる。図8の剛性調整機構34は、ローラー1の軸とベアリングの連結部材22を有し、連結部材22が交換可能な交換可能部材9となっている。交換可能部材9の材質は特に限定されないが、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金などの金属材料やプラスチック、繊維強化樹脂といった一般的な機械構造材料に加えて、ゴムやバネ等の弾性体部材6を適宜用いることができる。また、交換可能部材9の構造も特に限定されないが、断面積や厚み、形状等が異なる部材を適宜用いることができる。
【0051】
[剛性調整方法]
上記剛性調整機構34を有する第二の支持部31を備えたローラーの支持機構により、ローラー1の共振を回避する方法を説明する。ローラー1が共振しているのが確認されたときに、第二の支持部31の剛性調整機構34を作動させ、第二の支持位置を支持している支持部の剛性を変更することで、ローラー1の共振を回避できる。このようにローラー1の軸を支持する方法を剛性調整方法という。
【0052】
ローラー1が共振しているのが確認されたときに第二の支持部31で移動支持機構33や、剛性調整機構34を作動することで、ウェブの搬送装置の固有振動数を変化させ、共振を早期に回避し設備の故障を防ぐことができる。
【0053】
[複合的な支持機構を有する第二の支持部]
本発明のローラーの支持機構は、分離支持機構32、移動支持機構33、剛性調整機構34を組み合わせた機構を用いてもよい。これらを組み合わせた複合的な機構を、図面を参酌して説明する。
【0054】
図9~11を参酌する。図9は、分離支持機構32と移動支持機構33を組み合わせた機構を有する第二の支持部31の例である。図10は、移動支持機構33と剛性調整機構34を組み合わせた機構を有する第二の支持部31の例である。図11は、分離支持機構32と剛性調整機構34を組み合わせた機構を有する第二の支持部31の例である。
【0055】
図12を参酌する。図12の第二の支持部31は、移動支持機構33がローラー1の軸の長手方向に移動することで、ローラー1の軸と基礎やフレームとが連結したり、分離する。具体的には、第二の支持部31の移動範囲がR2の範囲内であれば第二の支持部31は軸を支持する状態となり、移動範囲がR1の範囲であれば軸を支持しない状態となる。このような形態も、分離支持機構32と移動支持機構33を組み合わせた機構に含まれる。
【0056】
図13を参酌する。図13の第二の支持部31は、分離支持機構32、移動支持機構33および剛性調整機構34を全て用いた例である。図13の第二の支持部31は、ベアリング2、ローラー1の軸とベアリングとの連結部材22、ベアリングとアームとの連結部材23の3つの部材から構成され、各部材はテーパー形状の部分をはめ合うことで連結する。各部材をR2の範囲で組み上げることで第二の支持部31は軸を支持する状態となり、各部材を分離することで第二の支持部31は軸を支持しない状態になるため分離支持機構32の要素を含む。また、軸とベアリングとの連結部材22は軸の長手方向に移動可能であり、移動支持機構33の要素も含む。さらに、軸とベアリングとの連結部材22や、ベアリングとアームとの連結部材23に異なる材質の部材を用いることで剛性調整機構34の要素も含む。
【0057】
図14を参酌する。図14の第二の支持部31は、分離支持機構32、移動支持機構33、剛性調整機構34を全て用いた例の別の形態を示す。図14の第二の支持部31は、ベアリング2、ローラー1の軸とベアリングとの連結部材22、ベアリングとアームとの連結部材23の3つの部材から構成され、軸とベアリングとの連結部材22と、ベアリングとアームとの連結部材23は弾性体部材6を有し、それぞれボルト7を用いて弾性体部材6を変形させることで連結する。各部材をR2の範囲で組み上げることで第二の支持部31は軸を支持する状態となり、各部材を分離することで第二の支持部31は軸を支持しない状態になるため分離支持機構32の要素を含む。また、軸とベアリングとの連結部材22は軸の長手方向に移動可能であり、移動支持機構33の要素も含む。さらに、ボルト7を用いて弾性体部材6の変形量を調整可能であり剛性調整機構34の要素も含む。
【0058】
第一の支持部30や第二の支持部31は、例えばローラー1の軸にベアリング2を嵌合し、そのベアリング2をアーム4やフレームなどで支持するものや、ベアリング2の内輪に軸を嵌合して支持したものを2個並べて軸を支持し、それらベアリング2の外輪上にローラー1を乗せて支持するものなどを使用することができる。
【0059】
第一の支持部30や第二の支持部31に用いるベアリング2の種類は特に限定されないが、玉軸受けやころ軸受けを用いることができ、型式も深溝軸受け、アンギュラ軸受け、自動調心軸受けなどを適宜用いることができる。この中でもローラー1の曲げ変形や、軸とアーム4の回転軸の不一致に対応できる自動調心のベアリング2を好ましく用いることができる。
【0060】
本発明において、アーム4とは、ローラー1の軸を支持するベアリング2を支持する部材一式をいう。また、アーム4は基礎やフレームに固定されていてもよいし、旋回可能な作動機構を有していてもよい。アーム4の作動機構は特に限定されないが、例えば作動流体に空気を用いるエアーシリンダーや、油を用いるオイルシリンダー、1次側と2次側にそれぞれ空気と油を用いるエアハイドロシリンダー、電磁石を用いたリニアモーターシステムなどを適宜用いることができる。
【0061】
第一の支持部30や第二の支持部31の材質は特に限定されないが、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金などの金属材料やプラスチック、繊維強化樹脂といった一般的な機械構造材料を適宜用いることができる。
【0062】
分割支持機構32、移動支持機構33、剛性調整機構34は、手動で動作してもよいし、自動で動作してもよい。共振を検知した際に運転中に固有振動数を変えられるように、自動で動作することが好ましい。
【0063】
本発明が対象とするローラー1は、特にサイズに限りはないが、外径100mm以上1000mm以下、面長1m以上10m以下の比較的大型のローラーに好適に用いられる。例えば、製紙装置やプラスチックフィルムの製膜装置、金属帯の圧延装置、およびウェブ帯のコーティングや蒸着と言った後次加工設備などに用いられるローラーや、印刷装置や複写装置などに用いられるローラーが挙げられる。また、ガイドローラーやニップローラー、受けローラー等、およそあらゆるローラーに適用可能である。
【0064】
ローラー1の外径は長手方向で一定でもよいし、外径を中央部から端部に向かって漸減させる、いわゆるクラウン形状としてもよいし、外径を中央部から端部に向かって漸増させる、いわゆるコンケイブ形状としてもよい。また、表面はフラットでもよいし、溝加工が施されていてもよい。
【0065】
ローラー1の芯金の材質は特に限定されないが、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金などの金属材料や、強化材に炭素繊維、母材に樹脂を用いた炭素繊維複合材料などを適宜用いることができる。
【0066】
ローラー1の被覆の材質も特に限定されないが、ウェブとの摩擦を高めるためにゴムで被覆されていてもよい。ゴムの種類は特に限定されないが、例えば天然ゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、およびこれらの混合物より使用目的、使用環境により適宜用いることが出来る。また、ゴム層は単層であっても、2層や3層といった多層であってもよい。
【0067】
特に、本発明を2本のローラーを用いてウェブを挟持しながら搬送するウェブの搬送装置に適用する場合、内部クラウン形状や、内部逆クラウン形状のゴムをローラー1に被覆させることが好ましく、さらに上記内部クラウン形状や、内部逆クラウン形状のゴムを被覆させるローラー1は、ニップローラーであることが好ましい。内部クラウン形状や、内部逆クラウン形状のゴムを被覆させることで、ローラー1の軸を支持する状態と支持しない状態、ローラーの軸を支持する箇所、支持剛性が変化することでローラー1のたわみが変化し、それに伴い面圧分布の変化を抑制することが期待できる。
【0068】
ローラー1の構造も特に限定されないが、中実の円柱形や、中空の円筒形の芯金を有する単軸構造、また、中空円筒形状の外筒部材と該外筒部材と同軸に配置された中心軸とを備え、上記外筒部材の長手方向中央部において上記外筒部材と上記中心軸が連結された構造を有する二重管構造などを適宜用いることができる。
【0069】
特に、本発明を2本のローラーを用いてウェブを挟持しながら搬送するウェブの搬送装置に適用する場合、二重管構造を有することが好ましく、さらに上記二重管構造のローラー1は、ニップローラーであることが好ましい。二重管構造を有することで、ローラー1の軸を支持する状態と支持しない状態、ローラー1の軸を支持する箇所、支持剛性の変化でローラー1のたわみが変化し、それに伴い面圧分布の変化を抑制することが期待できる。ここで、ローラーの芯金は一体成型でできていてもよいし、複数の芯金を繋げた、いわゆるつなぎ構造であってもよい。
【0070】
ローラー1は図示しない回転駆動手段に連結され、回転駆動されていてもよい。回転駆動手段は、例えば、ACモーターやDCモーターといった一般的なモーターを用いることができ、必要に応じて変速機構を設けてもよい。
【実施例0071】
以下、実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0072】
[実施例1]
図15に示すプラスチックフィルムの製造ラインのコロナ処理工程で、ニップローラー50と電極ローラー51とで平均厚み5μm、幅6000mmのポリプロピレンフィルムを挟持して搬送した。電極ローラー51の抱き角は180度、搬送速度は200m/分、面圧は400N/mとした。ニップローラー50は炭素鋼の芯金からなる単軸構造であり、直径はφ330mm、面長は7000mmである。また、ニップローラー50は表層に硬度50HsJIS A(JIS K 6301-1995)のエチレンプロピレンゴム52を有する。また、電極ローラー51の直径はφ400mm、面長は7000mmである。ニップローラー50の両側の軸をそれぞれ、図2の態様の第一の支持部30と、分離支持機構32を有する第二の支持部31を支持した。第一の支持部30として、作動可能な旋回アーム4を、ニップローラー50の面長の端部から200mmの位置の軸に、片側に1か所ずつ設置した。第二の支持部31は軸の片側に1か所ずつ設置し、軸との連結位置は第一の支持部30から軸の端に向かう方向に100mmの位置とした。分離支持機構32には複動式のエアーシリンダー3を用い、推力は100Nとした。ニップローラー50を支持する条件は以下の通りとした。
条件1:軸の両側の第一の支持部30のみで支持した。
条件2:第一の支持部30に加えて、軸の両側の第二の支持部31で支持した。
【0073】
[実施例2]
ニップローラー50の両側の軸をそれぞれ、図5の態様の第一の支持部30と、移動支持機構33を有する第二の支持部31で支持した。第二の支持部31は軸の片側に1か所ずつ設置し、軸との連結位置は第一の支持部30から軸の端に向かう方向に100~300mmの範囲を移動可能にした。また、移動支持機構33にはボールネジを用いた。その他の条件は実施例1と同様にした。ニップローラー50を支持する条件は以下の通りとした。
条件1:第一の支持部30に加えて、軸の両側の第二の支持部31で、第一の支持部30から軸の端に向かう方向に100mmの位置を支持した。
条件2:第二の支持部31で支持する位置を、第一の支持部30から軸の端に向かう方向に300mmの位置に変更した以外は条件1と同じにした。
【0074】
[実施例3]
ニップローラー50の両側の軸をそれぞれ、図8の態様の第一の支持部30と、剛性調整機構34を有する第二の支持部31で支持した。第二の支持部31は軸の片側に1か所ずつ設置し、軸との連結位置は第一の支持部30から軸の端に向かう方向に100mmの位置とした。剛性調整機構34の弾性体部材6にはシリコーンゴムを用い、ボルト7によってシリコーンゴムの変形量を5mm調節可能にした。その他の条件は実施例1と同様にした。ニップローラー50を支持する条件は以下の通りとした。
条件1:第一の支持部30に加えて、軸の両側の第二の支持部31で、第一の支持部30から軸の端に向かう方向に100mmの位置を支持した。剛性調整機構34のシリコーンゴムの変形量は5mmとした。
条件2:剛性調整機構34のシリコーンゴムの変形量を1mmに変更した以外は条件1と同じにした。
【0075】
[実施例4]
ニップローラー50の両側の軸をそれぞれ、図9の態様の第一の支持部30と、分離支持機構32と移動支持機構33を組み合わせた複合的な機構を有する第二の支持部31で支持した。第二の支持部31は軸の片側に1か所ずつ設置し、軸との連結位置は移動支持機構33を用いて第一の支持部30から軸の端に向かう方向に100~300mmの範囲を移動可能にした。分離支持機構32と移動支持機構33には複動式のエアーシリンダー3を用い、推力は100Nとした。その他の条件は実施例1と同様にした。ニップローラー50を支持する条件は以下の通りとした。
条件1:軸の両側の第一の支持部30のみで支持した。
条件2:第一の支持部30に加えて、軸の両側の第二の支持部31で、第一の支持部30から軸の端に向かう方向に100mmの位置を支持した。
条件3:第二の支持部31で支持する位置を、第一の支持部30から軸の端に向かう方向に300mmの位置に変更した以外は条件2と同じにした。
【0076】
[実施例5]
ニップローラー50の両側の軸をそれぞれ、図10の態様の第一の支持部30と、移動支持機構33と剛性調整機構34を組み合わせた複合的な機構を有する第二の支持部31で支持した。第二の支持部31は軸の片側に1か所ずつ設置し、軸との連結位置は移動支持機構33を用いて第一の支持部30から軸の端に向かう方向に100~300mmの範囲を移動可能にした。また、移動支持機構33にはボールネジを用いた。剛性調整機構34には交換可能部材9として鉄鋼材料の部材と、同じ形状のアルミニウム材料の部材を用いた。その他の条件は実施例1と同様にした。ニップローラー50を支持する条件は以下の通りとした。
条件1:第一の支持部30に加えて、軸の両側の第二の支持部31で、第一の支持部30から軸の端に向かう方向に100mmの位置を支持した。剛性調整機構34には鉄鋼材料の部材を用いた。
条件2:第二の支持部31で支持する位置を、第一の支持部30から軸の端に向かう方向に300mmの位置に変更した以外は条件1と同じにした。
条件3:剛性調整機構34にアルミニウム材料の部材を用いた以外は条件2と同じにした。
【0077】
[実施例6]
ニップローラー50の両側の軸をそれぞれ、図11の態様の第一の支持部30と、分離支持機構32と剛性調整機構34を組み合わせた複合的な機構を有する第二の支持部31で支持した。第二の支持部31は軸の片側に1か所ずつ設置し、軸との連結位置は第一の支持部30から軸の端に向かう方向に100mmの位置とした。分離支持機構32には複動式のエアーシリンダー3を用いた。剛性調整機構34の弾性体部材6にはシリコーンゴムを用い、エアーシリンダー3によってシリコーンゴムの変形量を5mm調節可能にした。その他の条件は実施例1と同様にした。ニップローラー50を支持する条件は以下の通りとした。
条件1:軸の両側の第一の支持部30のみで支持した。
条件2:第一の支持部30に加えて、軸の両側の第二の支持部31で、第一の支持部30から軸の端に向かう方向に100mmの位置を支持した。エアーシリンダー3の推力を100Nとし、剛性調整機構34のシリコーンゴムの変形量は5mmとした。
条件3:エアーシリンダー3の推力を80Nとし、剛性調整機構34のシリコーンゴムの変形量を1mmに変更した以外は条件2と同じにした。
【0078】
[実施例7]
ニップローラー50の両側の軸をそれぞれ、図14の態様の第一の支持部30と、分離支持機構32、移動支持機構33および剛性調整機構34を組み合わせた複合的な機構を有する第二の支持部31で支持した。第二の支持部31は軸の片側に1か所ずつ設置し、軸との連結位置は第一の支持部30から軸の端に向かう方向に100~300mmの範囲を移動可能にした。軸とベアリングの連結部材22、ベアリングとアームの連結部材23には弾性体部材6としてシリコーンゴムを用い、ボルト7によってシリコーンゴムの変形量を5mm調節可能にした。その他の条件は実施例1と同様にした。ニップローラー50を支持する条件は以下の通りとした。
条件1:軸の両側の第一の支持部30のみで支持した。
条件2:第一の支持部31に加えて、軸の両側の第二の支持部31で、第一の支持部30から軸の端に向かう方向に100mmの位置を支持した。剛性調整機構34のシリコーンゴムの変形量は5mmとした。
条件3:第二の支持部31で支持する位置を、第一の支持部30から軸の端に向かう方向に300mmの位置に変更した以外は条件1と同じにした。
条件4:剛性調整機構34のシリコーンゴムの変形量を1mmに変更した以外は条件2と同じにした。
【0079】
[実施例8]
ニップローラー50に二重管構造のローラーを用いた以外は実施例7と同じ構成にした。ニップローラー50は、炭素繊維複合材料製の外筒部材と炭素鋼製の中心軸を備え、外筒部材と中心軸が長手方向中央部において連結された構造を有する。ニップローラー50の直径はφ330mm、面長は7000mmである。ニップローラー50は表層に硬度50Hs JIS A(JIS K 6301-1995)のエチレンプロピレンゴムを有する。ニップローラー50を支持する条件も実施例7と同じにした。
【0080】
[実施例9]
ニップローラー50に内部クラウン構造のローラーを用いた以外は実施例7と同じ構造にした。ニップローラー50は炭素鋼の芯金からなる単軸構造であり、直径はφ330mm、面長は7000mmである。また、ニップローラー50は2層のゴム層を有し、表層に硬度80HsJIS A(JIS K 6301-1995)のエチレンプロピレンゴム、下層に50Hs JIS A(JIS K 6301-1995)のエチレンプロピレンゴムを有する。下層のエチレンプロピレンゴムは、厚みが中央部から両端部へ向けて直径で1.5mm漸減するように巻かれている。ニップローラー50を支持する条件も実施例7と同じにした。
【0081】
[比較例1]
ニップローラー50の両側の軸をそれぞれ、第一の支持部30のみで支持した。第一の支持部30の構造や支持する位置は実施例1と同じにした。その他の条件も実施例1と同じにした。ニップローラー50を支持する条件は以下の通りとした。
条件1:軸の両側の第一の支持部30のみでニップローラー50を支持した。
条件2:面圧を600N/mまで上昇した。
【0082】
各実施例と比較例1における計算方法、測定方法を以下に示す。
【0083】
[固有振動数の計算方法]
有限要素解析を用い、ニップローラー50と電極ローラー51からなるコロナ処理装置の固有振動数を計算した。
【0084】
[ローラーの振動の測定方法]
株式会社キーエンスのレーザー変位計LK-500を用い、ローラーの長手方向中央部の振れを測定し、最大値と最小値の差を振幅とした。
【0085】
[均一ニップ性の測定方法]
まず、ニッタ株式会社の面圧分布測定システムI-SCANを用い、ニップローラー50と電極ローラー51の間に掛かる圧力分布を測定した。測定は、ローラーの長手方向中央部を基準とし、中央から両端に向けて1.5mの間隔で中央部を含めて合計5点で実施した。測定幅は1か所当たり56mmである。各測定点の内、ニップ幅の中央部の値を長手方向に抽出し、抽出した値の中の最小値を最大値で割り、100を掛けた値を均一ニップ性とした。この値が高いほど面圧分布が均一になっていることを示す。
【0086】
各実施例と比較例1の結果を表1に示す。なお、表1の「〇」記号は各実施例で用いた支持機構と、ローラーの構造を示す。
【0087】
【表1】
【0088】
実施例1の条件1においてはローラー中央部の振動は200μmと大きく、共振が発生していることが分かった。その際、コロナ処理装置の固有振動数は60Hzであった。そこで、分離支持機構32を作動させ、条件2へと変更して分離支持方法による共振の回避操作を行った。その結果、コロナ処理装置の固有振動数を110Hzまで大幅に上昇し、共振を回避することで振動は70μmまで低下した。一方で支持条件が変わったことで面圧分布が変化し、均一ニップ性は95%から70%へと低下した。
【0089】
実施例2の条件1においてもローラー中央部の振動は150μmと大きく、共振が発生していることが分かった。その際、コロナ処理装置の固有振動数は120Hzであった。そこで、移動支持機構33を作動させ、条件2へと変更して移動支持方法による共振の回避操作を行った。その結果、コロナ処理装置の固有振動数を110Hzまで低下し、共振を回避することで振動は70μmまで低下した。
【0090】
実施例3の条件1においてはローラー中央部の振動は70μmと低く共振は回避していたが、剛性調整機構34を作動させ、条件2へと変更して剛性調整方法による共振の回避操作を行うことで振動を40μmとさらに低下することができた。
【0091】
実施例4の条件1は、実施例1の条件1と同様にローラー中央部の振動は200μmと大きく、共振が発生していることが分かった。その際、コロナ処理装置の固有振動数は60Hzであった。そこで、分離支持機構32を作動させ、条件2へと変更して分離支持方法による共振の回避操作を行った。その結果、コロナ処理装置の固有振動数は110Hzまで大幅に上昇し、共振を回避することで振動は70μmまで低下した。その後、さらに振動を抑制するために移動支持機構33を作動させ、条件3へと変更して移動支持方法による共振の回避操作を行った。その結果、コロナ処理装置の固有振動数を100Hzへと微調整することで、振動は40μmまで低下した。
【0092】
実施例5の条件1は、実施例2の条件1と同様にローラー中央部の振動は150μmと大きく、共振が発生していることが分かった。その際、コロナ処理装置の固有振動数は120Hzであった。そこで、移動支持機構33を作動させ、条件2へと変更して移動支持方法による共振の回避操作を行った。その結果、コロナ処理装置の固有振動数は110Hzまで低下し、共振を回避することで振動は70μmまで低下した。その後、さらに振動を抑制するために剛性調整機構34を作動させ、条件3へと変更して剛性調整方法による共振の回避操作を行った。その結果、コロナ処理装置の固有振動数を100Hzへと微調整することで、振動は40μmまで低下した。
【0093】
実施例6の条件1は、実施例1の条件1と同様にローラー中央部の振動は200μmと大きく、共振が発生していることが分かった。その際、コロナ処理装置の固有振動数は60Hzであった。そこで、分離支持機構32を作動させ、条件2へと変更して分離支持方法による共振の回避操作を行った。その結果、コロナ処理装置の固有振動数は110Hzまで大幅に上昇し、共振を回避することで振動は70μmまで低下した。その後、さらに振動を抑制するために剛性調整機構34を作動させ、条件3へと変更して剛性調整方法による共振の回避操作を行った。その結果、コロナ処理装置の固有振動数を100Hzへと微調整することで、振動は40μmまで低下した。
【0094】
実施例7の条件1は、実施例1の条件1と同様にローラー中央部の振動は200μmと大きく、共振が発生していることが分かった。その際、コロナ処理装置の固有振動数は60Hzであった。そこで、分離支持機構32を作動させ、条件2へと変更して分離支持方法による共振の回避操作を行った。その結果、コロナ処理装置の固有振動数は110Hzまで大幅に上昇し、共振を回避することで振動は70μmまで低下した。その後、さらに振動を抑制するために移動支持機構33を作動させ、条件3へと変更して移動支持方法による共振の回避操作を行った。その結果、コロナ処理装置の固有振動数を100Hzへと微調整することで、振動は40μmまで低下した。その後、さらに振動を抑制するために剛性調整機構34を作動させ、条件4へと変更して剛性調整方法による共振の回避操作を行った。その結果、コロナ処理装置の固有振動数を90Hzへと微調整することで、振動は20μmまで低下した。
【0095】
実施例8、9は、実施例7と同じく支持条件を1から4へとすることで振動は20μmまで低下した。その際、二重管構造のニップローラー50や、内部クラウン構造のニップローラー50を用いることで、支持の変更に伴う均一ニップ性の変化量は少なく、いずれも90%以上となった。
【0096】
比較例1の条件1は、実施例1の条件1と同様にローラー中央部の振動は200μmと大きく、共振が発生していることが分かった。その際、コロナ処理装置の固有振動数は60Hzであった。そこで、面圧を400N/mから600N/mへと変更した。その結果、コロナ処理装置の固有振動数は65Hzまで上昇したものの、振動は150μmと共振を回避するまでには至らなかった。また、面圧を大幅に上昇した影響で、面圧分布が悪化し、均一ニップ性は50%まで低下した。
【0097】
このように本発明によれば、軸を支持する状態と支持しない状態を変えられる機構、軸の長手方向に支持する箇所を変えられる機構、または支持部の剛性を変えられる機構を有するローラーの支持機構を使用してローラーを支持することで、ウェブの搬送装置の固有振動数を大幅に変化させつつ微調整も可能となり、共振を回避することができる。さらに、二重管構造の芯金、内部クラウン構造のゴム被覆、または内部逆クラウン構造のゴム被覆の少なくともいずれか1つを有するローラーを有するウェブの搬送装置に対して本発明のローラーの支持方法を適用することで、固有振動数は制御しつつ、面圧分布の変化を抑制することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、フィルム製膜装置のニップローラーに限らず、製紙装置のプレスローラーや製鉄装置の圧延ローラーなどにも応用することができるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
【符号の説明】
【0099】
1:ローラー
2:ベアリング
3:シリンダー
4:アーム
5:軸(分離可能)
6:弾性体部材
7:ボルト
8:移動機構
9:交換可能部材
10:加速度センサ
20:軸と軸の連結部材
21:アームとアームの連結部材
22:軸とベアリングの連結部材
23:ベアリングとアームの連結部材
30:第一の支持部
31:第二の支持部
32:分離支持機構
33:移動支持機構
34:剛性調整機構
40:第一の支持位置
41:第二の支持位置
50:ニップローラー
51:電極ローラー
52:ゴム
53:芯金
54:フィルム
55:電源
56:コロナ処理電極
Da:分離支持機構の移動方向
Db:移動支持機構の移動方向
R1:第二の支持部で軸を支持しない範囲
R2:第二の支持部で軸を支持する範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15