(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037259
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/74 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
H01L29/74 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141965
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591132955
【氏名又は名称】株式会社秋田新電元
(74)【代理人】
【識別番号】100110858
【弁理士】
【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
(74)【代理人】
【識別番号】100172627
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 亘
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 いく子
【テーマコード(参考)】
5F005
【Fターム(参考)】
5F005AC01
5F005AD02
5F005AE03
5F005AF01
(57)【要約】
【課題】製造時の組み立て性の良さと高い破壊耐量を併せ持つ半導体装置を提供する。
【解決手段】本発明は、第1のP型半導体層と、前記第1のP型半導体層上に配置された第1のN型半導体層と、前記第1のN型半導体層上に配置された第2のP型半導体層と、前記第2のP型半導体層上に配置されたエミッタ層14と、前記第2のP型半導体層上に配置されたゲート電極15と、を有するサイリスタ18を備え、前記ゲート電極15の直下の前記第2のP型半導体層の周囲がエミッタ層14に囲まれており、平面視においてゲート電極15は、サイリスタ18の中央に対してサイリスタ18の外周に近い側に配置されている半導体装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の第1導電型半導体層と、
前記第1の第1導電型半導体層上に配置された第1の第2導電型半導体層と、
前記第1の第2導電型半導体層上に配置された第2の第1導電型半導体層と、
前記第2の第1導電型半導体層上に配置された第2の第2導電型半導体層と、
前記第2の第1導電型半導体層上に配置されたゲート電極と、
を有するサイリスタを備え、
前記ゲート電極の直下の前記第2の第1導電型半導体層の周囲が前記第2の第2導電型半導体層に囲まれており、
平面視において前記ゲート電極は、前記サイリスタの中央に対して前記サイリスタの外周に近い側に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記サイリスタの平面形状は多角形、円形又は楕円形であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2において、
平面視において前記ゲート電極は、前記多角形の中央に対して前記多角形の辺に近い側に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項2において、
平面視において前記ゲート電極は、前記多角形の中央に対して前記多角形のコーナーに近い位置に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、
平面視において前記ゲート電極の中心と前記サイリスタの外周との距離は、前記ゲート電極の中心と前記サイリスタの中心との距離より短いことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項において、
平面視において前記ゲート電極の平面形状は、円形状、楕円形状又は矩形を有することを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のサイリスタではゲート電極がチップのコーナーに配置されている。このサイリスタにゲート電極からゲート電流が振り込まれ、ゲート電極の周りからのある一定の傾きの電流上昇率でサイリスタがOFFからONへ移行する。
【0003】
使用例によっては、寄生の平滑コンデンサなどからの放電により、急峻な電流上昇率でサイリスタのアノードから電流が流れ、ゲート電極の周りで電流集中の起こりやすい箇所で破壊に至る。この破壊耐量を臨界電流上昇率(di/dt)という。
【0004】
この破壊耐量を向上させるために、センターゲートのサイリスタが提案されている(例えば特許文献1の
図2参照)。このセンターゲートとは、平面視においてゲート電極をサイリスタの中心に配置することである。
【0005】
ゲート電極がサイリスタのチップ中央にある場合は、ゲート電極がチップのコーナーにある場合に比べて組み立て時にゲート電極に接続する接続子を長くしなければならない等、接続子の設計が難しくなる。そのため、ゲート電極はチップのコーナーに近い場所にあることが製造上は望ましい。
【0006】
そこで、製造時の組み立て性の良さと高い破壊耐量を併せ持つ半導体装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の種々の態様は、製造時の組み立て性の良さと高い破壊耐量を併せ持つ半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に本発明の種々の態様について説明する。
【0010】
[1]第1の第1導電型半導体層と、
前記第1の第1導電型半導体層上に配置された第1の第2導電型半導体層と、
前記第1の第2導電型半導体層上に配置された第2の第1導電型半導体層と、
前記第2の第1導電型半導体層上に配置された第2の第2導電型半導体層と、
前記第2の第1導電型半導体層上に配置されたゲート電極と、
を有するサイリスタを備え、
前記ゲート電極の直下の前記第2の第1導電型半導体層の周囲が前記第2の第2導電型半導体層に囲まれており、
平面視において前記ゲート電極は、前記サイリスタの中央に対して前記サイリスタの外周に近い側に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【0011】
本発明の一態様の上記[1]に係る半導体装置によれば、平面視においてゲート電極を、サイリスタの中央に対してサイリスタの外周に近い側に配置するため、組み立て時にゲート電極に接続する接続子(電極、クリップ、端子なども含む)を長くする必要がなく、接続子の設計も容易となる。このため、従来のセンターゲートのサイリスタのような製造時の組み立て性の困難性を回避でき、製造時の組み立て性を良くすることができる。また、チップの良否を選別するプローバーのプローブユニットの複雑化を回避できる。
これに加え、ゲート電極の直下の第2の第1導電型半導体層の周囲が第2の第2導電型半導体層に囲まれている。このため、ゲート電極又はゲート電極の直下の第2の第1導電型半導体層の全外周が第2の第2導電型半導体層と接するため、従来のゲート電極の一部だけが第2の第2導電型半導体層と接するサイリスタと比べて電流集中を緩和することができる。別言すれば、ゲート電極の全外周が第2の第2導電型半導体層と接するため、ゲート電流の流れる方向が限定されることがなく、ゲート電極に電流集中する場所の発生を抑制でき、その結果、電流集中を緩和できる。従って、サイリスタの破壊耐量を高めることができる。
以上の説明により、製造時の組み立て性の良さと高い破壊耐量を併せ持つサイリスタを備えた半導体装置を提供することができる。
【0012】
[2]上記[1]において、
前記サイリスタの平面形状は多角形、円形又は楕円形であることを特徴とする半導体装置。
【0013】
[3]上記[2]において、
平面視において前記ゲート電極は、前記多角形の中央に対して前記多角形の辺に近い側に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【0014】
本発明の一態様の上記[3]に係る半導体装置によれば、平面視においてゲート電極を、多角形の中央に対して多角形の辺に近い側に配置するため、組み立て時にゲート電極に接続する接続子を長くする必要がなく、接続子の設計も容易になる。このため、従来のセンターゲートのサイリスタのような製造時の組み立て性の困難性を回避でき、製造時の組み立て性を良くすることができる。また、チップの良否を選別するプローバーのプローブユニットの複雑化を回避できる。
【0015】
[4]上記[2]において、
平面視において前記ゲート電極は、前記多角形の中央に対して前記多角形のコーナーに近い位置に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【0016】
本発明の一態様の上記[4]に係る半導体装置によれば、ゲート電極を多角形のコーナーに近い位置に配置することで、組み立て時にゲート電極に接続する接続子を長くする必要がなく、接続子の設計も容易になる。また接続子の長さを短くすることが可能となることで、内部抵抗の低減が見込まれ、ゲート損失の低減が図られる。
【0017】
[5]上記[1]から[4]のいずれか一項において、
平面視において前記ゲート電極の中心と前記サイリスタの外周との距離は、前記ゲート電極の中心と前記サイリスタの中心との距離より短いことを特徴とする半導体装置。
【0018】
本発明の一態様の上記[5]に係る半導体装置によれば、ゲート電極の中心と前記サイリスタの外周との距離を、ゲート電極の中心とサイリスタの中心との距離より短くすることにより、組み立て時にゲート電極に接続する接続子(電極、クリップ、端子なども含む)をある程度短くすることができ、接続子の設計も容易となる。このため、従来のセンターゲートのサイリスタのような製造時の組み立て性の困難性を回避でき、製造時の組み立て性を良くすることができる。
【0019】
[6]上記[1]から[4]のいずれか一項において、
平面視において前記ゲート電極の平面形状は、円形状、楕円形状又は矩形を有することを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明の種々の態様によれば、製造時の組み立て性の良さと高い破壊耐量を併せ持つ半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一態様に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図3】
図1に示すサイリスタ18の変形例を示す平面図である。
【
図4】本発明の一態様に係る半導体装置の作用効果を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0023】
図1は、本発明の一態様に係る半導体装置を示す平面図であり、
図2は、
図1に示すA-A'に沿った断面図である。
【0024】
本発明の一態様に係る上記[1]の半導体装置は、第1の第1導電型半導体層11と、前記第1の第1導電型半導体層11上に配置された第1の第2導電型半導体層12と、前記第1の第2導電型半導体層12上に配置された第2の第1導電型半導体層13と、前記第2の第1導電型半導体層13上に配置された第2の第2導電型半導体層14と、前記第2の第1導電型半導体層13上に配置されたゲート電極15と、を有するサイリスタ18を備え、前記ゲート電極15の直下の前記第2の第1導電型半導体層13の周囲が前記第2の第2導電型半導体層14に囲まれており、平面視において前記ゲート電極15は、前記サイリスタ18の中央に対して前記サイリスタ18の外周に近い側に配置されている。
【0025】
以下に詳細に説明する。
この半導体装置は平面形状が四角形のサイリスタ18を有し、このサイリスタ18は、
図2に示すように第1の第1導電型半導体層11を有する。第1の第1導電型半導体層11は、例えば第1のP型半導体層(第1のP
+型不純物拡散層)である。
【0026】
第1の第1導電型半導体層(第1のP型半導体層)11上には第1の第2導電型半導体層12が配置されている。第1の第2導電型半導体層12は、例えば第1のN型半導体層(第1のN-型半導体層)である。
【0027】
第1の第2導電型半導体層(第1のN型半導体層)12上には第2の第1導電型半導体層13が配置されている。第2の第1導電型半導体層13は、例えば第2のP型半導体層(第2のP+型不純物拡散層)である。
【0028】
第2の第1導電型半導体層(第2のP型半導体層)13上には第2の第2導電型半導体層14が配置されている。この第2の第2導電型半導体層14はエミッタ層である。第2の第2導電型半導体層14は、例えば第2のN型半導体層(第2のN+型不純物拡散層)である。
【0029】
第2の第1導電型半導体層13上にはゲート電極15が配置されている。
図2に示すサイリスタ18は、第1の第1導電型半導体層11、第1の第2導電型半導体層12、第2の第1導電型半導体層13及び第2の第2導電型半導体層(エミッタ層)14を有している。
【0030】
詳細に説明すると、
図2に示すように、第1の第1導電型半導体層(第1のP型半導体層)11と第1の第2導電型半導体層(第1のN型半導体層)12は接しており、第1のN型半導体層12と第2の第1導電型半導体層(第2のP型半導体層)13は接している。また、第1のP型半導体層11と第2のP型半導体層13は絶縁層(パッシベーション)31によって電気的に分離されており、第1のN型半導体層12と第2の第2導電型半導体層(エミッタ層)14は絶縁層31によって電気的に分離されている。
【0031】
別言すれば、絶縁層31は、第1のP型半導体層11と第1のN型半導体層12の接合のパッシベーションとなり、第1のN型半導体層12と第2のP型半導体層13の接合のパッシベーションとなり、エミッタ電極(エミッタ層)14とゲート電極15のパッシベーションとなる。
【0032】
図1及び
図2に示すように、このゲート電極15の直下の第2の第1導電型半導体層(第2のP
+型不純物拡散層)13の周囲が第2の第2導電型半導体層(エミッタ層)14に囲まれている。
【0033】
図1に示すように、サイリスタ18の平面形状は多角形(例えば四角形19)である。なお、サイリスタの平面形状は、多角形に限定されるものではなく、円形又は楕円形であってもよい。また、平面形状が多角形の場合、角の部分が尖ってなくてもよく、曲線としてもよい。
【0034】
本実施形態によれば、平面視においてゲート電極15を、サイリスタの中央に対してサイリスタの外周に近い側に配置するため、組み立て時にゲート電極15に接続する接続子(電極、クリップ、端子なども含む)を長くする必要がなく、接続子の設計も容易となる。このため、従来のセンターゲートのサイリスタのような製造時の組み立て性の困難性を回避でき、製造時の組み立て性を良くすることができる。また、チップの良否を選別するプローバーのプローブユニットの複雑化を回避できる。
これに加え、ゲート電極15の直下の第2の第1導電型半導体層(第2のP型半導体層)13の周囲が第2の第2導電型半導体層(エミッタ層である第2のN型半導体層)14に囲まれている(
図1及び
図2参照)。このため、ゲート電極15又はゲート電極15の直下の第2のP型半導体層13の全外周がエミッタ層14と接するため、従来のゲート電極の一部だけがエミッタ層と接するサイリスタと比べて電流集中を緩和することができる。別言すれば、ゲート電極15の全外周がエミッタ層14と接するため、ゲート電流の流れる方向が限定されることがなく、ゲート電極15に電流集中する場所の発生を抑制でき、その結果、電流集中を緩和できる。従って、サイリスタの破壊耐量を高めることができる。
以上の説明により、製造時の組み立て性の良さと高い破壊耐量を併せ持つサイリスタを備えた半導体装置を提供することができる。
【0035】
図1に示すように、平面視においてゲート電極15は、多角形(例えば四角形)19の中央に対して多角形(四角形)19の辺17に近い側に配置されている。なお、多角形(四角形)19は、角が尖ってないものも含み、例えば角が曲線のものも含む。また、ゲート電極15は、多角形(四角形)19の辺17に近い側に配置されていれば、
図1に示すようにコーナー20に配置されてもよいし、
図3に示すように辺17の中央21に配置されてもよい。なお、本実施形態では、多角形19を四角形として説明しているが、他の多角形、例えば五角形、六角形などであってもよい。また
図3は、
図1に示すサイリスタ18の変形例を示すサイリスタ18aであり、
図1と同一部分には同一符号を付す。
【0036】
本実施形態によれば、平面視においてゲート電極15を、四角形19の中央に対して四角形19の辺17に近い側に配置するため、組み立て時にゲート電極15に接続する接続子を長くする必要がなく、接続子の設計も容易となる。このため、従来のセンターゲートのサイリスタのような製造時の組み立て性の困難性を回避でき、製造時の組み立て性を良くすることができる。また、チップの良否を選別するプローバーのプローブユニットの複雑化を回避できる。
これに加え、ゲート電極15の直下の第2の第1導電型半導体層(第2のP型半導体層)13の周囲が第2の第2導電型半導体層(エミッタである第2のN型半導体層)14に囲まれている(
図1及び
図2参照)。このため、ゲート電極15又はゲート電極15の直下の第2のP型半導体層13の全外周がエミッタ14と接するため、従来のゲート電極の一部だけがエミッタと接するサイリスタと比べて電流集中を緩和することができる。別言すれば、ゲート電極15の全外周がエミッタ14と接するため、ゲート電流の流れる方向が限定されることがなく、ゲート電極15に電流集中する場所の発生を抑制でき、その結果、電流集中を緩和できる。従って、サイリスタの破壊耐量を高めることができる。
以上の説明により、製造時の組み立て性の良さと高い破壊耐量を併せ持つサイリスタを備えた半導体装置を提供することができる。
【0037】
図1に示すように、平面視においてゲート電極15は、多角形(四角形)19の中央に対して多角形(四角形)19のコーナー20に近い位置に配置されているとよい。
この場合においても上述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0038】
また、ゲート電極15を多角形(四角形)19のコーナー20に近い位置に配置することで、
図3に示す半導体装置に比べて組立がより容易となり、またゲート電極15と端子電極(図示せず)をつなぐ接続子(図示せず)の長さをより短くすることが可能となることで、内部抵抗の低減が見込まれ、ゲート損失の低減が図られる。
また、平面視においてゲート電極15の中心とサイリスタの外周との距離16は、ゲート電極15の中心とサイリスタの中心との距離16aより短いとよい(
図1及び
図3参照)。これにより、組み立て時にゲート電極15に接続する接続子(電極、クリップ、端子なども含む)をある程度短くすることができ、接続子の設計も容易となる。このため、従来のセンターゲートのサイリスタのような製造時の組み立て性の困難性を回避でき、製造時の組み立て性を良くすることができる。
【0039】
図1に示すように、平面視においてゲート電極15の中心とサイリスタの外周との距離(例えば四角形19の辺17との距離16)は、電極15の中心とサイリスタ外周の辺17の対辺までの距離に対して、サージ電流耐量とdi/dt試験条件の電流値の比より大きくなるような距離とすることが望ましい。これは、局所的に、サージ電流耐量の弱い箇所が発生してしまうことを抑制するためである。なお、サージ電流耐量とは、例えば実力値であり、実力値とは、素子が破壊に至る電流値である。また、di/dt試験条件の電流値とは、EIAJ-4521に定めるオン電流のことである。di/dt試験条件の電流値を、実機回路の平滑コンデンサなどから流れる電流値に変更してもよい。実機回路の平滑コンデンサなどから流れる電流値とは、平滑コンデンサからの放電電流でありコンデンサの容量により決定する。
ゲートの位置よってコーナー20あるいは辺19とに囲まれるエミッタ層14に局部的に電流が集中し、サージ耐量以下で破壊に至る位置にあってはならず、それはサージ電流耐量とEIAJ-4521di/dt耐量試験時の条件とゲート面積などのバランスにより決定される。なお、EIAJ-ED4521とは、JEITA(電子情報技術産業協会)電子デバイス品目の3端子サイリスタの定格、特性および試験方法に規格化されているものである。
【0040】
図1及び
図3に示すように、平面視においてゲート電極15は円形状を有するが、楕円形状又は矩形などを有していてもよい。
【0041】
次に、
図4及び
図5を用いて本実施形態の作用効果について詳細に説明する。
図4及び
図5に示す矢印101は、OFFからONへの移行時(点弧時)の電流経路を示す。
図4に示す本実施形態によるサイリスタのエミッタ層14と接するゲート電極15の面積を、
図5に示す従来のサイリスタのエミッタ層14aと接するゲート電極15aの面積より大きくすることで、ゲート電極周辺一部への電界集中を防ぐことができる。
【0042】
ゲート電極15はトリガとなる電流を流すだけの面積があればよく、小さいほどよい。
図5に示すゲート電極15aの平面の面積と同じ面積の
図4に示すゲート電極15を、エミッタ層14で囲むように配置した場合、エミッタ層14の平面の面積中無効となる面積は同じでも、ゲート電極15がエミッタ層14の角に配置されてない
図4に示すサイリスタでは、ON移行時(臨界時)に電流が拡がる有効なゲート周辺長は大きくなる。実際は、
図2に示すように深さ方向に拡散されているため、その面積が広くなるに等しい。
【0043】
一方で、臨界電流上昇率は、一般的にA/μsオーダーでサイリスタの破壊となる。電子の移動度は「cm2/V・s」で表され、単位時間μs間の移動度は数mm2以下である。エミッタ層への平面的な拡がりの影響よりもゲート電極の全外周が確保されていることが有効であるから、その位置は中央にある必要は無く、組み立て性を重視した位置にあっても良い。ゲート周りはサイリスタの保証耐圧による。
【0044】
要するに、
図4に示すようにエミッタ層14がゲート電極15を囲む場合、有効なゲート周辺長が長くなり、深さ方向にも拡散されるので、縦方向で見た場合も、円筒の側面の面積が広くなる。移動度については、臨界電流上昇率di/dtの値に比べて、電子の移動度が数μm
2/V・sと遅く、
図4に示すようなゲート電極15がコーナー付近にあったとしてもエミッタ層14が狭くてキャリアの行先を失うような心配はなく、組立がしやすい場所で島状ゲートであれば、本実施形態の効果を実現できる。
【0045】
要するに、
図4に示すようにエミッタ層14がゲート電極15を囲む場合、有効なゲート周辺長が長くなり、深さ方向にも拡散されるので、縦方向で見た場合も、円筒の側面の面積が広くなる。移動度については、臨界電流上昇率di/dtの値に比べて、電子の移動度が数mm
2/V・s程度で、
図4に示すようなゲート電極15がコーナー付近にあったとしても、コーナー20あるいは辺19とに囲まれるエミッタ層14はキャリアの行先を確保できれば、組立がしやすい場所で島状ゲートで、本実施形態の効果を実現できる。
【0046】
なお、移動度の単位については、電子やホールが1V/cmの電界をかけたときに、どのくらいの速度cm/sで移動するかを考えればよい。
(cm/s)/(V/cm)=cm2/(V・s)
【符号の説明】
【0047】
11 第1の第1導電型半導体層(第1のP型半導体層、第1のP+型不純物拡散層)
12 第1の第2導電型半導体層(第1のN型半導体層、第1のN-型半導体層)
13 第2の第1導電型半導体層(第2のP型半導体層、第2のP+型不純物拡散層)
14 第2の第2導電型半導体層(エミッタ層、第2のN型半導体層、第2のN+型不純物拡散層
15 ゲート電極
16 ゲート電極の中心とサイリスタの外周との距離(四角形の辺との距離)
17 多角形の辺(四角形の辺)
18 サイリスタ
19 多角形(四角形)
20 コーナー