(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037261
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】プローブ
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20240312BHJP
C22C 5/04 20060101ALI20240312BHJP
C22C 30/02 20060101ALI20240312BHJP
C22C 9/00 20060101ALI20240312BHJP
C22C 9/06 20060101ALI20240312BHJP
C22C 19/03 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01R1/067 Z
C22C5/04
C22C30/02
C22C9/00
C22C9/06
C22C19/03 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141968
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢一
【テーマコード(参考)】
2G011
【Fターム(参考)】
2G011AA04
2G011AB01
2G011AB03
2G011AC21
(57)【要約】
【課題】はんだに含まれる成分のプローブへの拡散を抑制する。
【解決手段】40質量%以上95質量%以下のPtと、0.5質量%以上50質量%以下のCuと、3質量%以上50質量%以下のNiと、を含むプローブ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
40質量%以上95質量%以下のPtと、
0.5質量%以上50質量%以下のCuと、
3質量%以上50質量%以下のNiと、
を含むプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路等の検査対象物を検査するため、ソケットに設けられたプローブを介して、検査対象物を検査基板に電気的に接続させることがある。プローブは、Ag、Pd及びCuの合金を含んでいることがある。以下、必要に応じて、Ag、Pd及びCuの合金をAgPdCu合金という。
【0003】
特許文献1には、AgPdCuの合金の一例について記載されている。特許文献1に記載のAgPdCu合金は、4%以上のAgと、約35%~約59%のPdと、16%以上50%以下のCuと、を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
AgPdCu合金は、プローブを構成する材料に利用されることがある。しかしながら、AgPdCu合金を含むプローブの先端を検査対象物のはんだに繰り返し接触させて電気的に接続させた場合、ジュール熱等の要因によって、はんだに含まれるSn等の成分と、プローブに含まれる成分と、が相互に拡散する傾向があった。はんだに含まれる成分が拡散すると、プローブの先端が消耗し得る。したがって、AgPdCuの合金を含むプローブが用いられる場合、プローブの先端の洗浄や交換の回数が比較的多くなり、検査工程の稼働率が低下し得る。
【0006】
本発明の目的の一例は、はんだに含まれる成分のプローブへの拡散を抑制することにある。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
40質量%以上95質量%以下のPtと、
0.5質量%以上50質量%以下のCuと、
3質量%以上50質量%以下のNiと、
を含むプローブである。
【0008】
本発明の上記態様によれば、はんだに含まれる成分のプローブへの拡散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】第1の変形例に係るソケットの断面図である。
【
図3】第2の変形例に係るプローブの断面図である。
【
図4】実施例1~実施例14に係る試験材料に含まれるPtの質量比と、Cuの質量比と、Niの質量比と、の関係を示す三角グラフである。
【
図5】通電耐久試験前の第1試験ピンの接触部の先端の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
【
図6】通電耐久試験後の第1試験ピンの接触部の先端のSEM画像を示す図である。
【
図7】通電耐久試験後の第1試験ピンの接触部の1つの尖りの先端の拡大SEM画像である。
【
図8】通電耐久試験前の第2試験ピンの接触部の先端のSEM画像を示す図である。
【
図9】通電耐久試験後の第2試験ピンの接触部の先端のSEM画像を示す図である。
【
図10】通電耐久試験後の第2試験ピンの接触部の1つの尖りの先端の拡大SEM画像である。
【
図11】通電耐久試験前の第3試験ピンの接触部の先端のSEM画像を示す図である。
【
図12】通電耐久試験後の第3試験ピンの接触部の先端のSEM画像を示す図である。
【
図13】通電耐久試験後の第3試験ピンの接触部の1つの尖りの先端の拡大SEM画像である。
【
図14】通電耐久試験前の第4試験ピンの接触部の先端のSEM画像を示す図である。
【
図15】通電耐久試験後の第4試験ピンの接触部の先端のSEM画像を示す図である。
【
図16】通電耐久試験後の第4試験ピンの接触部の1つの尖りの先端の拡大SEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態及び変形例について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
本明細書において、「第1」、「第2」、「第3」等の序数詞は、特に断りのない限り、同様の名称が付された構成を単に区別するために付されたものであり、構成の特定の特徴(例えば、順番又は重要度)を意味するものではない。
【0012】
図1は、実施形態に係るソケット10の断面図である。
【0013】
図1において、「+Z」によって示される矢印は、鉛直方向の上方向を示しており、「-Z」によって示される矢印は、鉛直方向の下方向を示している。以下、必要に応じて、鉛直方向に直交する方向を水平方向という。
【0014】
ソケット10は、プローブ100及び絶縁支持体200を備えている。プローブ100は、絶縁支持体200に形成された貫通孔に設けられている。プローブ100は、第1プランジャ110、第2プランジャ120、チューブ130及びスプリング140を有している。
図1では、プローブ100を用いて、検査対象物20が検査基板30によって検査されている状態が示されている。具体的には、
図1に示す状態では、プローブ100を介して、検査対象物20のはんだボール22と、検査基板30のパッド32と、が電気的に接続されている。
【0015】
チューブ130は、鉛直方向に延伸している。スプリング140は、チューブ130の内部に位置している。プローブ100は、チューブ130を有していなくてもよい。スプリング140は、チューブ130の中心を鉛直方向に通過する仮想軸の周りにスパイラル状に巻かれている。
【0016】
第1プランジャ110は、スプリング140の上端側に位置している。第1プランジャ110は、スプリング140によって、上方に向けて、すなわち、第2プランジャ120から離れる方向に向けて付勢されている。検査対象物20が検査基板30によって検査されている状態において、第1プランジャ110は、プローブ100の上方に位置する検査対象物20に接続されている。この状態において、第1プランジャ110の先端、すなわち上端は、検査対象物20のはんだボール22に接触している。
図1に示す例において、第1プランジャ110の先端は、第1プランジャ110の中心を鉛直方向に通過する仮想軸の周りに等間隔で並ぶ複数の尖りを有している。第1プランジャ110の先端の形状は
図1に示す例に限定されない。
【0017】
第2プランジャ120は、スプリング140の下端側に位置している。第2プランジャ120は、スプリング140によって、下方に向けて、すなわち、第1プランジャ110から離れる方向に向けて付勢されている。検査対象物20が検査基板30によって検査されている状態において、第2プランジャ120は、プローブ100の下方に位置する検査基板30に接続されている。この状態において、第2プランジャ120の先端、すなわち下端は、検査基板30のパッド32に接触している。第2プランジャ120の先端は、半球形状となっている。第2プランジャ120の先端の形状は
図1に示す例に限定されない。
【0018】
第1プランジャ110は、材料(A)を含んでいる。材料(A)は、40質量%以上95質量%以下のPtと、0.5質量%以上50質量%以下のCuと、3質量%以上50質量%以下のNiと、を含んでいる。例えば、第1プランジャ110の少なくとも表面が材料(A)からなっている。この例では、例えば、第1プランジャ110の全体が材料(A)から形成されていてもよい。或いは、材料(A)は、めっき等の処理によって第1プランジャ110の表面を覆っていてもよい。材料(A)が第1プランジャ110の表面を覆う場合、第1プランジャ110の材料(A)によって覆われている部分は、材料(A)と異なる材料から形成されていてもよい。また、例えば、第1プランジャ110における、少なくとも、はんだボール22と接触する部分が材料(A)からなっていてもよい。この例では、例えば、材料(A)は、めっき等の処理によって、第1プランジャ110のはんだボール22と接触する部分の表面のみを覆っていてもよい。
【0019】
材料(A)に含まれるPtの質量比の下限は、材料(A)の耐食性の観点から決定されている。材料(A)に含まれるPtの質量比が40質量%未満であると、材料(A)の耐食性が不十分となる場合がある。このため、材料(A)に含まれるPtの質量比は、40質量%以上にすることができる。材料(A)に含まれるPtの質量比は、45質量%以上又は50質量%以上としてもよい。
【0020】
材料(A)に含まれるPtの質量比の上限は、強加工によって加工硬化された材料(A)の硬さの観点から決定されている。材料(A)に含まれるPtの質量比が95質量%超であると、強加工によって加工硬化された材料(A)の硬さが、300HVに届かない場合がある。この場合、強加工によって加工硬化された材料(A)の硬さが、第1プランジャ110に要求される硬さに届かないことがある。このため、材料(A)に含まれるPtの質量比は、95質量%以下にすることができる。材料(A)に含まれるPtの質量比は、90質量%以下又は83質量%以下としてもよい。
【0021】
材料(A)に含まれるPtの質量比は、例えば、45質量%以上90質量%以下とすることができる。或いは、材料(A)に含まれるPtの質量比は、例えば、50質量%以上83質量%以下とすることができる。
【0022】
材料(A)に含まれるCuの質量比の下限は、材料(A)の硬さの観点から決定されている。CuをPtに添加することで、材料(A)の加工性を良好に維持しつつ材料(A)の硬さを向上させることができる。しかしながら、材料(A)に含まれるCuの質量比が0.5質量%未満であると、材料(A)の硬さが不十分となる場合がある。このため、材料(A)に含まれるCuの質量比は、0.5質量%以上にすることができる。材料(A)に含まれるCuの質量比は、2質量%以上又は5質量%以上としてもよい。また、材料(A)に含まれるCuの質量比は、9質量%以上としてもよい。
【0023】
材料(A)に含まれるCuの質量比の上限は、材料(A)の耐食性の観点から決定されている。材料(A)に含まれるCuの質量比が50質量%超であると、材料(A)の耐食性が不十分となる場合がある。このため、材料(A)に含まれるCuの質量比は、50質量%以下にすることができる。材料(A)に含まれるCuの質量比は、40質量%以下又は30質量%以下としてもよい。
【0024】
材料(A)に含まれるCuの質量比は、例えば、2質量%以上40質量%以下とすることができる。或いは、材料(A)に含まれるCuの質量比は、例えば、5質量%以上30質量%以下とすることができる。
【0025】
材料(A)に含まれるNiの質量比の下限は、加工硬化された材料(A)の硬さの観点から決定されている。材料(A)がNiを含むことで、材料(A)に含まれる成分とはんだボール22等のはんだに含まれる成分との拡散の抑制を低下させることなく、加工硬化された材料(A)の硬さを向上させることができる。しかしながら、材料(A)に含まれるNiの質量比が3質量%未満であると、加工硬化された材料(A)の硬さが不十分となる場合がある。このため、材料(A)に含まれるNiの質量比は、3質量%以上にすることができる。材料(A)に含まれるNiの質量比は、5質量%以上又は10質量%以上としてもよい。
【0026】
材料(A)に含まれるNiの質量比の上限は、例えば、材料(A)の冷間での圧延や伸線といった塑性加工の観点から決定されている。材料(A)に含まれるNiの質量比が50質量%を超えると、材料(A)の冷間での圧延や伸線といった塑性加工が難しくなる場合がある。このため、材料(A)に含まれるNiの質量比は、50質量%以下にすることができる。材料(A)に含まれるNiの質量比は、例えば、40質量%以下又は35質量%以下としてもよい。
【0027】
材料(A)に含まれるNiの質量比は、例えば、5質量%以上40質量%以下とすることができる。或いは、材料(A)に含まれるNiの質量比は、例えば、10質量%以上35質量%以下とすることができる。
【0028】
実施形態においては、第1プランジャ110がAgPdCu合金を含む場合と比較して、第1プランジャ110の先端とはんだボール22の表面との間の界面において、はんだボール22に含まれる成分の第1プランジャ110への拡散を抑制することができる。また、実施形態においては、第1プランジャ110がAgPdCu合金を含む場合と比較して、はんだボール22に含まれる成分の第1プランジャ110への拡散が抑制されることで、第1プランジャ110の先端の消耗を抑制することができる。
【0029】
材料(A)が用いられる場合、AgPdCu合金が用いられる場合と比較して、はんだに含まれる成分の材料(A)への拡散が抑制される理由は、次のとおりであると推定される。すなわち、材料(A)とはんだとが接触する際に材料(A)とはんだとの間の界面において、材料(A)に含まれるNiに起因して、Sn-Ni等の金属化合物を含む緻密な薄膜が形成される。この金属化合物が材料(A)とはんだとの間の界面に存在する場合、この金属化合物が材料(A)とはんだとの間の界面に存在しない場合と比較して、材料(A)及びはんだに含まれる成分の拡散がこの金属化合物によって抑制される。これに対して、AgPdCu合金が用いられる場合、上記金属化合物は形成され難い。したがって、実施形態においては、第1プランジャ110がAgPdCu合金を含む場合と比較して、第1プランジャ110の先端とはんだボール22との間において、はんだボール22に含まれる成分の第1プランジャ110への拡散を抑制することができる。
【0030】
材料(A)には、既存のAgPdCu合金の硬さほどの硬さは要求されない。しかしながら、検査回数の増加にともない、第1プランジャ110の接触面が機械的に潰れることがある。このため、材料(A)は、比較的硬いことが望ましい。例えば、200HV以上の硬さにおいて第1プランジャ110は使用可能である。材料(A)の硬さは、250HV以上、好ましくは300HVであることが要請されることがある。なお、材料(A)の硬さは、加工硬化によって向上された硬さであってもよい。
【0031】
材料(A)には、比較的低い比抵抗が要求されることがある。例えば、材料(A)の比抵抗は、90μΩ・cm以下にすることができる。材料(A)の比抵抗を低くすることで、プローブ100を用いた検査において材料(A)から発生するジュール熱を抑制することができる。
【0032】
図2は、第1の変形例に係るソケット10Aの断面図である。本変形例に係るソケット10Aは、以下の点を除いて、実施形態に係るプローブ100と同様である。
【0033】
第1プランジャ110Aの下端には、第1プランジャ110Aの下方に向けて延伸する延伸部112Aが設けられている。第1プランジャ110A及び延伸部112Aは、一体となっている。したがって、第1プランジャ110A及び延伸部112Aの双方が材料(A)を含んでいる。延伸部112Aの下端には、先端ヘッド114Aが設けられている。先端ヘッド114Aは、材料(A)を含んでいてもよいし、又は含んでいなくてもよい。
【0034】
第2プランジャ120Aの上端には、基端部122Aが設けられている。基端部122Aの上面には、基端部122Aの上方に向けて開口した穴124Aが形成されている。基端部122Aにおける穴124Aを画定する内壁の一部分には、係止部126Aが設けられている。穴124Aの係止部126Aにおける水平方向の直径は、穴124Aの係止部126Aより下方に位置する部分における水平方向の直径より狭くなっている。先端ヘッド114Aは、穴124Aの係止部126Aよりも下方に入り込んでいる。また、先端ヘッド114Aは、穴124Aの係止部126Aよりも下方において鉛直方向に可動になっている。先端ヘッド114Aの水平方向の直径は、穴124Aの係止部126Aにおける水平方向の直径より大きくなっている。したがって、先端ヘッド114Aが穴124Aの上方に向けて抜けることが係止部126Aによって防止されている。
【0035】
本変形例に係るプローブ100Aは、実施形態に係るプローブ100のチューブ130に対応するチューブを有していない。スプリング140Aは、第1プランジャ110Aの下端と、基端部122Aの上端と、の間に位置している。また、スプリング140Aは、延伸部112Aの周りにスパイラル状に巻かれている。第1プランジャ110A、延伸部112A及び先端ヘッド114Aは、スプリング140Aによって上方に向けて付勢されている。第2プランジャ120A及び基端部122Aは、スプリング140Aによって下方に向けて付勢されている。
【0036】
図3は、第2の変形例に係るプローブ100Bの断面図である。本変形例に係るプローブ100Bは、以下の点を除いて、実施形態に係るプローブ100と同様である。
【0037】
図3に示す例では、第1プランジャ110B及びチューブ130Bが一体となっている。したがって、第1プランジャ110B及びチューブ130Bの双方が材料(A)を含んでいる。また、第1プランジャ110B及びチューブ130Bは、スプリング140Bによって、上方に向けて、すなわち、第2プランジャ120Bから離れる方向に向けて付勢されている。第2プランジャ120Bは、スプリング140Bによって、下方に向けて、すなわち、第1プランジャ110Bから離れる方向に向けて付勢されている。
【0038】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び変形例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0039】
本発明の一態様を実施例及び比較例に基づいて説明する。本発明は、以下の各実施例に限定されるものではない。
【0040】
表1は、実施例1~14及び比較例1~2の各々の試験材料に含まれる組成を示す表である。表1の実施例1~14及び比較例2において、「αPtβCuγNi」の表記は、試験材料が、α質量%のPtと、β質量%のCuと、γ質量%のNiと、を含むことを意味している。比較例1において、「24.5Ag45Pd25Cu0.5In」の表記は、試験材料が、24.5質量%のAgと、45質量%のPdと、25質量%のCuと、0.5質量%のInと、を含むことを意味している。
【表1】
【0041】
実施例1~14及び比較例1~2の各々の試験材料は以下のようにして作製した。
【0042】
実施例1について、表1に示すように、95質量%のPtと、2質量%のCuと、3質量%のNiと、を配合して、配合物を得た。実施例2~14及び比較例2の各々についても、Pt、Cu及びNiを表1に示す実施例2~14及び比較例2の組成となるように配合して、配合物を得た。比較例1について、Ag、Pd、Cu及びInを表1に示す比較例1の組成となるように配合して、配合物を得た。
【0043】
次いで、実施例1~14及び比較例1~2の各々について、上記配合物をアルゴン雰囲気中においてアーク溶解にて溶解し、合金インゴットを作製した。
【0044】
次いで、実施例1~14及び比較例1~2の各々について、上記合金インゴットの圧延及び熱処理を繰り返すことで、圧延率80%の板材を作製した。圧延率RRは、合金インゴットの圧延前の厚さをt1とし、合金インゴットの圧延後の厚さをt2として、以下の式(1)に従って決定されている。
RR={(t1-t2)/t1}×100 (1)
【0045】
実施例1~14並びに比較例1について、圧延率80%の板材を作製することができた。これに対して、比較例2について、圧延率80%の板材を作製することができなかった。比較例2については、後述する表2を用いて説明する測定を行わなかった。
【0046】
表2は、実施例1~14及び比較例1の各々について、試験材料の比抵抗(単位:μΩ・cm)と、試験材料の加工材硬さ(単位:HV)と、試験材料とはんだとの間の拡散層の厚さ(単位:μm)と、の測定結果を示す表である。
【表2】
【0047】
実施例1~20及び比較例1の各々について、試験材料の比抵抗は、試験材料の電気抵抗Rを室温で測定し、以下の式(2)に従って比抵抗ρを算出することで測定した。
ρ=RS/l (2)
ただし、lは、試験材料における電流が流れる方向の測定長であり、Sは、試験材料における電流が流れる方向に垂直な断面積である。比抵抗の測定においては、圧延率90%の板材を試験材料として用いた。
【0048】
表2に示すように、実施例1~14において、比抵抗は、90μΩ・cm未満となった。したがって、実施例1~14において、プローブに要求される比抵抗を得ることができたといえる。
【0049】
実施例1~14及び比較例1の各々について、試験材料の加工材硬さは、マイクロビッカース硬さ試験機で、試験材料の断面の中心を200gfの荷重で10秒間保持することで測定した。
【0050】
表2に示すように、実施例1~14において、加工材硬さは、300HV以上となった。したがって、実施例1~14において、プローブに要求される硬さを得ることができたといえる。
【0051】
実施例1~14及び比較例1の各々について、試験材料とはんだとの間の拡散層の厚さは、次のようにして測定した。まず、Sn-Bi系はんだを10mm×10mm×厚さ0.5mmの試験材料上に載せた。次いで、Sn-Bi系はんだを試験材料に載せた状態で試験材料及びSi-Bi系はんだをN2雰囲気中250℃で1時間熱処理して、試験材料上ではんだを溶融させた。次いで、試験材料を樹脂に埋め込んで、試験材料とはんだとの双方を含む断面を露出させた。次いで、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)を用いて、試験材料とはんだとの間の界面を、当該界面に垂直な方向に線分析を行った。実施例1~14において、拡散層は、はんだから拡散するSnと、試験材料から拡散する主元素のPtと、の双方が線分析において存在する層とした。比較例1において、拡散層は、はんだから拡散するSnと、試験材料から拡散する主元素のPdと、の双方が線分析において存在する層とした。
【0052】
表2に示すように、比較例1では、拡散層の厚さは、600μm以上となった。これに対して、実施例1~14では、拡散層の厚さは、100μm未満となった。したがって、実施例1~14では、比較例1と比較して、はんだに含まれる成分の試験材料への拡散を抑制することができたといえる。
【0053】
表2に示す結果より、実施例1~14に係る試験材料では、比較例1に係る試験材料と比較して、プローブに要求される比抵抗及び加工材硬さを実現しつつ、はんだに含まれる成分の試験材料への拡散を抑制することができたといえる。
【0054】
図4は、実施例1~実施例14に係る試験材料に含まれるPtの質量比と、Cuの質量比と、Niの質量比と、の関係を示す三角グラフである。
【0055】
三角グラフの右下側頂点から中央上側頂点にかけての辺は、試験材料に含まれるPtの質量比(単位:質量%)を示している。三角グラフの中央上側頂点から左下側頂点にかけての辺は、試験材料に含まれるCuの質量比(単位:質量%)を示している。三角グラフの左下側頂点から右下側頂点にかけての辺は、試験材料に含まれるNiの質量比(単位:質量%)を示している。
【0056】
図4の三角グラフにおいてハッチングが付された領域は、Ptの質量比が40質量%以上95質量%以下、Cuの質量比が0.5質量%以上50質量%以下、Niの質量比が3質量%以上50質量%以下の範囲を示している。実施例1~14のプロットは、当該ハッチングが付された領域内に位置している。実施例1~14のプロットの傾向より、当該ハッチングが付された領域内のいずれにおいても、試験材料がAgPdCu合金である場合と比較して、はんだに含まれる成分の試験材料への拡散を抑制することができるといえる。
【0057】
図5は、通電耐久試験前の第1試験ピンの接触部の先端の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
図6は、通電耐久試験後の第1試験ピンの接触部の先端のSEM画像を示す図である。
図7は、通電耐久試験後の第1試験ピンの接触部の1つの尖りの先端の拡大SEM画像である。
【0058】
第1試験ピンは、実施例2の試験材料を含んでいる。
図5及び
図6に示すように、第1試験ピンの接触部の先端は、試験ピンの中心軸の周りに等間隔に並ぶ4つの尖りを有している。
【0059】
通電耐久試験では、フライングプローブテスタを用いて125℃の温度下において第1試験ピンの接触部の先端をSn-40Biはんだに接触させて1Aの電流を20ms流すことを10,000回繰り返した。
【0060】
通電耐久試験前の第1試験ピンの長さと、通電耐久試験後の第1試験ピンの長さと、を比較して、第1試験ピンの消耗量を算出した。第1試験ピンの消耗量は、0μmであった。
【0061】
図8は、通電耐久試験前の第2試験ピンの接触部の先端のSEM画像を示す図である。
図9は、通電耐久試験後の第2試験ピンの接触部の先端のSEM画像を示す図である。
図10は、通電耐久試験後の第2試験ピンの接触部の1つの尖りの先端の拡大SEM画像である。
【0062】
第2試験ピンは、当該第2試験ピンが実施例3の試験材料を含む点を除いて、第1試験ピンと同様とした。第2試験ピンにおける通電耐久試験の条件は、第1試験ピンにおける通電耐久試験の条件と同様とした。
【0063】
通電耐久試験前の第2試験ピンの長さと、通電耐久試験後の第2試験ピンの長さと、を比較して、第1試験ピンの消耗量を算出した。第2試験ピンの消耗量は、0μmであった。
【0064】
図11は、通電耐久試験前の第3試験ピンの接触部の先端のSEM画像を示す図である。
図12は、通電耐久試験後の第3試験ピンの接触部の先端のSEM画像を示す図である。
図13は、通電耐久試験後の第3試験ピンの接触部の1つの尖りの先端の拡大SEM画像である。
【0065】
第3試験ピンは、当該第3試験ピンが実施例8の試験材料を含む点を除いて、第1試験ピンと同様とした。第3試験ピンにおける通電耐久試験の条件は、第1試験ピンにおける通電耐久試験の条件と同様とした。
【0066】
通電耐久試験前の第3試験ピンの長さと、通電耐久試験後の第3試験ピンの長さと、を比較して、第1試験ピンの消耗量を算出した。第3試験ピンの消耗量は、1μmであった。
【0067】
図14は、通電耐久試験前の第4試験ピンの接触部の先端のSEM画像を示す図である。
図15は、通電耐久試験後の第4試験ピンの接触部の先端のSEM画像を示す図である。
図16は、通電耐久試験後の第4試験ピンの接触部の1つの尖りの先端の拡大SEM画像である。
【0068】
第4試験ピンは、当該第4試験ピンが比較例1の試験材料を含む点を除いて、第1試験ピンと同様とした。第4試験ピンにおける通電耐久試験の条件は、第1試験ピンにおける通電耐久試験の条件と同様とした。
【0069】
通電耐久試験前の第4試験ピンの長さと、通電耐久試験後の第4試験ピンの長さと、を比較して、第1試験ピンの消耗量を算出した。第4試験ピンの消耗量は、4μmであった。
【0070】
第1試験ピン、第2試験ピン、第3試験ピン及び第4試験ピンの消耗量の結果より、試験ピンが、40質量%以上95質量%以下のPtと、0.5質量%以上50質量%以下のCuと、3質量%以上50質量%以下のNiと、を含む場合、試験ピンがAgPdCu合金を含む場合と比較して、試験ピンの先端の消耗を抑制することができるといえる。
【0071】
本明細書によれば、以下の態様のプローブが提供される。
(態様1)
態様1では、プローブが、40質量%以上95質量%以下のPtと、0.5質量%以上50質量%以下のCuと、3質量%以上50質量%以下のNiと、を含んでいる。
【0072】
上述の態様によれば、AgPdCu合金と比較して、プローブとはんだとの間の界面において、はんだに含まれる成分のプローブへの拡散を抑制することができる。