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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037271
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】発電システム、及び起動方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/08 20060101AFI20240312BHJP
   H02P 103/10 20150101ALN20240312BHJP
   H02P 101/35 20150101ALN20240312BHJP
【FI】
H02P9/08 A
H02P103:10
H02P101:35
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141993
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100207192
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 健一
(72)【発明者】
【氏名】織田 健志
【テーマコード(参考)】
5H590
【Fターム(参考)】
5H590CA07
5H590CA22
5H590CB01
5H590CB03
5H590CC09
5H590CC18
5H590CC24
5H590CD01
5H590CD03
5H590CE03
5H590CE05
5H590EA01
5H590EA10
5H590EB21
5H590FA08
5H590HA02
5H590HA10
5H590HA27
5H590HB02
5H590JA02
(57)【要約】
【課題】回転電機を起動させるのに十分な電力系統の系統電圧が無い状況で、発電休止状態の回転電機を起動させる。
【解決手段】発電システムの回転電機は、固定子巻線への通電によって励磁され、回転子を回転させる動力が前記励磁中に供給されて発電して、前記発電した電力を第1交流電力系統に供給する。電力変換装置は、起動した後の発電状態にある前記回転電機から供給される前記第1交流電力系統の第1電力を変換して、前記第1電力から変換された第2電力を第2交流電力系統に供給し、発電休止状態の前記回転電機を起動させて前記発電状態にする起動段階に、前記第2交流電力系統の第3電力又は直流電力から変換された第4電力を前記第1交流電力系統に供給する。制御部は、前記回転電機の起動前に蓄電部に蓄えられている前記直流電力から変換した前記第4電力を、前記回転電機を起動させるために前記回転電機に供給するように電力変換装置を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子巻線への通電によって励磁され、回転子を回転させる動力が前記励磁中に供給されて発電して、前記発電した電力を第1交流電力系統に供給する回転電機と、
起動した後の発電状態にある前記回転電機から供給される前記第1交流電力系統の第1電力を変換して、前記第1電力から変換された第2電力を第2交流電力系統に供給し、前記発電休止状態の前記回転電機を起動させて前記発電状態にする起動段階に、前記第2交流電力系統の第3電力又は直流電力から変換された第4電力を前記第1交流電力系統に供給する電力変換装置と、
前記回転電機の起動前に蓄電部に蓄えられている前記直流電力から変換した前記第4電力を、前記回転電機を起動させるために前記回転電機に供給するように前記電力変換装置を制御する制御部と、
を備える発電システム。
【請求項2】
船舶の軸発電装置として形成されている、
請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記電力変換装置は、
前記第1交流電力系統と直流リンクとの間に配置され、前記第1電力を前記直流電力に変換可能な第1交直変換器と、
前記第2交流電力系統と前記直流リンクとの間に配置され、前記直流電力を前記第2電力に変換可能な第2交直変換器と、
を備える請求項1に記載の発電システム。
【請求項4】
前記蓄電部を蓄電するために、前記電力変換装置に直流電圧を供給する電源部
を備える請求項3に記載の発電システム。
【請求項5】
前記蓄電部は、二次電池又はコンデンサである、
請求項3に記載の発電システム。
【請求項6】
前記回転電機は、かご型誘導機と、リラクタンス機とのうちの何れかである、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の発電システム。
【請求項7】
十分な系統電圧が電力系統に無い状況で、回転電機の起動前に蓄電部に蓄えられている直流電力から変換した交流電力を、前記回転電機を起動させるために前記回転電機に供給するように電力変換装置を制御して、発電休止状態の前記回転電機を起動させるステップ、
を含む起動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発電システム、及び起動方法である。
に関する。
【背景技術】
【0002】
発電システム(軸発電システム)には、ガスタービン、ディーゼルエンジン等の原動機から動力の供給を受けて、その動力を用いて発電機(回転電機)に発電させるものがある。このような発電システムは、交流電力の供給先になる交流電力系統が停電している期間に、その発電機による発電を開始させることが要求される場合があり、この要求を満たすために同期発電機が利用されることがある。
【0003】
同期発電機に比べると、かご型誘導機(誘導機という。)、リラクタンス機などの誘導型の回転電機は比較的簡略化された構造を有する。発電システムの構造の簡略化が望まれるが、誘導機(誘導型の回転電機)は、単にその軸が回されているだけでは誘起電圧が発生しない。誘起電圧を発生するためには、誘導機の固定子を励磁する必要がある。そのため、交流電力系統側に十分な電圧が無い場合には、動力が供給されていても誘導機を発電可能な状態に遷移させることができなかった。これは、永久磁石又は界磁巻線を備えていない回転子を有するリラクタンス機についても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/073951号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、発電休止状態の回転電機を起動させる発電システム、及び起動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様の発電システムは、回転電機と、電力変換装置と、制御部と、を備える。回転電機は、固定子巻線への通電によって励磁され、回転子を回転させる動力が前記励磁中に供給されて発電して、前記発電した電力を第1交流電力系統に供給する。電力変換装置は、起動した後の発電状態にある前記回転電機から供給される前記第1交流電力系統の第1電力を変換して、前記第1電力から変換された第2電力を第2交流電力系統に供給し、前記発電休止状態の前記回転電機を起動させて前記発電状態にする起動段階に、前記第2交流電力系統の第3電力又は直流電力から変換された第4電力を前記第1交流電力系統に供給する。制御部は、前記回転電機の起動前に蓄電部に蓄えられている前記直流電力から変換した前記第4電力を、前記回転電機を起動させるために前記回転電機に供給するように前記電力変換装置を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の発電システムの構成図。
図2】実施形態の電動機の起動処理に関するフローチャート。
図3】実施形態の電動機20の起動制御に係るタイミングチャート。
図4】第2の実施形態の発電システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の発電システム、及び起動方法について説明する。なお、以下の説明では、電気的に接続されることを、単に「接続される」ということがある。実施形態における微小な固定値には、0が含まれてもよい。なお、本明細書で言う「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。さらに、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。実施形態における「発電システム」は、回転電機を用いた軸発電システム(軸発電装置)として形成されている。「発電システム」は、回転電機を発電機として用いる軸発電システムとして構成されていてもよく、回転電機を電動機として用いる電動機駆動システムを兼ねてもよい。以下の説明における「発電システム」は、少なくとも電動機20によって発電する「発電システム」として機能させる「軸発電動作モード」を備えるものとして説明するが、これに制限されない。「発電システム」は、さらに、電動機20を駆動させる「駆動動作モード」を備えていてもよい。以下の説明では、両方の動作モードを備える事例について説明する。
【0009】
また、「発電システム」において「発電機を起動する」とは、誘導型の発電機が発電しない状態から発電可能な状態にすることをいう。例えば、発電する状態であれば、動力が発電機に供給されている状態で電力(有効電力)を出力する状態のことである。実施形態における回転電機の一例として、電動機20を例示して説明する。後述するように電動機20は、例えば、かご型誘導機(誘導機という。)、リラクタンス機などの誘導型の回転電機である。以下の説明では、電動機20を誘導機として説明するが、これに制限されない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態の発電システム1の構成図である。発電システム1は、発電システムの一例である。
【0011】
図1に示す発電システム1は、船舶2に設けられ、主軸が駆動される力を用いて船舶2内で発電する。発電システム1は、例えば、電動機20と、プロペラ50と、発電機60とを備える。発電システム1は、さらにエンジン又はタービンなどの原動機を夫々含めて構成されている主機10と原動機70とを備えていてもよい。電動機20は、誘導型の回転電機の一例である。電動機20は、軸発電動作モードにおいて発電機として利用される。主機10は、船舶2を駆動する駆動部の一例であり、船舶2の駆動用の動力を発生する。この船舶2は、船舶2を駆動する駆動部と、電動機20(発電機)と、船舶2の駆動用の動力の一部を、駆動部から電動機20に供給する軸連結部と、を備えている。
【0012】
発電システム1は、第1交流電力系統81と第2交流電力系統82とに分けて構成された交流電力系統を備える。発電システム1は、軸連結部から供給された動力によって電動機20にて発生した電力を、第1交流電力系統81に供給可能に構成されている。その電力は、第1交流電力系統81を経て第2交流電力系統82に共有される。
【0013】
以下、実施形態に係る発電システム1の一例について具体的に説明する。
【0014】
発電システム1は、第1交流電力系統81と第2交流電力系統82とに分けて構成された交流電力系統を備える。
発電システム1は、第1交流電力系統81と第2交流電力系統82とを利用して、電動機20を駆動して船舶2を駆動するための動力を生成する。
【0015】
電動機20は、例えば3相交流型の誘導電動機(誘導機)である。これに制限されることなく、電動機20は、例えばリラクタンスモータ(リラクタンス機)であってもよい。リラクタンスモータは、その回転子に永久磁石を設けずに構成できることから、コストを低減できる。以下、電動機20に誘導電動機を適用した場合を中心に説明する。
【0016】
電動機20の軸21は、図示されないクラッチ、減速機40(速度変換機)などを介して主軸51に連結されている。主軸51と、図示されないクラッチと、減速機40(速度変換機)は、前述の軸連結部の一例である。主軸51にはプロペラ50が設けられている。電動機20には、図示されない速度センサが設けられている。速度センサは、電動機20の軸21の回転速度を検出して、電動機20の軸21の回転速度である電動機20の速度検出値を出力する。なお、速度センサを設けることに制限はなく、速度センサを省略することができる。
【0017】
発電機60は、電動機20とは異なり、発電システム1内で専ら交流電力を生成する発電機の一例である。例えば発電機60の軸は、例えば原動機70の軸に連結されている。発電機60は、原動機70から供給される動力によって発電する。発電機60は、発電した交流電力を、発電機60の出力から交流系統(第2交流電力系統82)を介して電力変換装置100に供給可能に構成されている。
例えば、発電機60の出力は、遮断器92が設けられた接続導体82Sを介して第2交流電力系統82に接続される。第2交流電力系統82は、遮断器91が設けられた接続導体82Lを介して電力変換装置100の交流端子TBA2に接続される。
【0018】
例えば、電力変換装置100は、遮断器91と遮断器92とを導通状態にすることで、発電機60から供給される電力を利用することができる。これに対し、遮断器91と遮断器92との何れかを遮断状態にすることで、発電機60からの交流電力の供給が止まる。
【0019】
また、発電機60による発電が中断すると、遮断器91と遮断器92とを導通状態にしていても、上記の交流系統(第2交流電力系統82)の電圧が消失して、電力変換装置100に対する電力の供給が中断する。
例えば、接続導体82Lなどに計器用変成器VACを設けることで、交流系統(第2交流電力系統82)の電圧が所定の範囲を超えて低下したことなどを検出して、遮断器91と遮断器92との導通状態と、計器用変成器VACによって検出された交流電圧から、発電機60による発電が中断したことを検出するとよい。例えば、遮断器91と遮断器92との導通状態にあって、計器用変成器VACによって検出された交流電圧が所定の範囲を超えて低下している状態を、第2交流電力系統82の停電と呼ぶことがある。この「停電」には、不足電圧(LV)の状態が含まれていてもよい。
【0020】
例えば、計器用変成器VACの出力が、電力変換装置100(制御部105)の入力に接続されている。電力変換装置100は、計器用変成器VACの検出結果を取得して、第2交流電力系統82の停電状態の検出、第2交流電力系統82の交流電圧の基準位相の推定などに利用する。
【0021】
発電システム1は、さらに電力変換装置100と、上位制御装置200と、初期充電用電源30とを備える。
【0022】
電力変換装置100は、後述するように制御部105を備えて構成されていてよく、制御部105が、電力変換装置100の外部に構成されていてもよい。以下の説明は、電力変換装置100が制御部105を備えて構成された事例について説明する。
【0023】
上位制御装置200は、電力変換装置100を制御して、電力変換装置100による電力変換を調整する。
【0024】
電力変換装置100は、交流電力を相互に変換可能に構成されている。電力変換装置100は、上位制御装置200からの制御情報、又は検出された状態の情報などにより、交流電力の変換方向を切り替える。
【0025】
例えば電力変換装置100は、コンバータ101(図中に「AC/DC」と記載。第2交直変換器)と、インバータ102(図中に「DC/AC」と記載。第1交直変換器)と、制御部105とを備える。コンバータ101と、インバータ102は、それぞれ交流電力と直流電力を相互に変換可能に構成されている。
【0026】
例えば、コンバータ101の交流側には交流系統(第2交流電力系統82)を介して発電機60が接続されている。コンバータ101の直流側には直流リンクDCLを介してインバータ102の直流側が接続されている。コンバータ101は、上記のとおり第2交流電力系統と直流リンクDCLとの間に配置されている。コンバータ101のより具体的な構成には、制限はなく、一般に知られている構成を適用できる。
【0027】
直流リンクDCLの正極と負極との間に蓄電部104が設けられている。蓄電部104は、例えば二次電池又はコンデンサである。蓄電部104は、単独のコンデンサであってもよく、互いに直列に又は並列に接続された複数のコンデンサを含めて構成されていてもよい。図に示された蓄電部104は、1つのコンデンサの場合を例示している。蓄電部104は、直流リンクDCLの正極と負極間の直流電圧を平滑化する。直流電圧検出器VDCは、この直流電圧を検出して検出結果を出力する。直流電圧検出器VDCの出力は、制御部105の入力に接続されている。制御部105は、直流電圧検出器VDCの検出結果を取得して、直流リンクDCLの給電状態の検出に利用する。
【0028】
上記のように構成されたコンバータ101は、例えば発電機60から供給される交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を、直流リンクDCLを介してインバータ102に供給する。さらに、コンバータ101は、例えば直流電力を交流電力(第2交流電力系統に供給する第2電力)に変換して、交流側(第2交流電力系統)に供給可能に構成されている。
【0029】
インバータ102は、後述する制御部105が生成したゲート信号等によって制御される複数の半導体スイッチ素子(不図示)を備える。インバータ102のより具体的な構成には、制限はなく、電動機20に適用可能な一般に知られている構成を適用できる。インバータ102は、「電力変換装置」の一例である。インバータ102の交流側には交流系統(第1交流電力系統81)を介して電動機20が接続されている。
【0030】
インバータ102は、上記のとおり第1交流電力系統と直流リンクDCLとの間に配置されている。インバータ102は、ゲート制御部(不図示)からの制御により複数の半導体スイッチの導通状態が調整される。インバータ102は、コンバータ101側又は蓄電部104から供給される直流電力を変換することで、3相交流電力を生成する。インバータ102は、生成した3相交流電力を電動機20に供給する。さらに、インバータ102は、例えば交流電力(第1交流電力系統から供給される第1電力)を直流電力に変換して、直流側(直流リンクDCL)に供給する。
【0031】
初期充電用電源30(電源部)は、蓄電部104を充電する場合に、直流リンクDCLに直流電圧を供給する。
【0032】
電力変換装置100は、発電システム1の状態を検出するための各種検出器として、例えば、直流電圧検出部S104をさらに備える。直流電圧検出部S104は、コンバータ101とインバータ102との間の直流リンクDCL部分の電圧(直流電圧VDCという。)を検出する。
【0033】
電力変換装置100は、さらに制御部105を備える。制御部105は、例えば、トルク制御部、電流制御部、ゲート制御部などを備える。
【0034】
なお、制御部105と上位制御装置200は、例えば、プロセッサを含み、そのプロセッサ(コンピュータ)がプログラムを実行することにより実現される機能部であってもよく、その一部又は全部がハードウェアであってもよい。上記の各部に関する詳細については後述する。
【0035】
上位制御装置200は、発電システム1の各部に関する各種情報を収集する。上位制御装置200は、各種情報と、予め定められる諸条件とに基づいて、電動機20を制御して船舶2の推力を調整する。
【0036】
図2図3を参照して、実施形態の電動機20の起動処理について説明する。
図2は、実施形態の電動機20の起動処理に関するフローチャートである。
制御部105は、初期充電用電源30(電源部)から直流リンクDCLに所定の直流電圧を供給させて、蓄電部104を初期充電をする(ステップS10)。これにより、蓄電部104とインバータ102に直流電力が溜まる。
【0037】
制御部105は、インバータ102を制御して、蓄電部104とインバータ102に溜まった直流電力に応じた電圧(初期充電電圧)を使用して、電動機20の固定子を励磁する(ステップS20)。
【0038】
制御部105は、電動機20の固定子の励磁を開始した後、電動機20が発電可能な磁束が生じたか否かを識別する(ステップS30)。制御部105は、電動機20が発電可能な磁束が生じるまで電動機20の固定子を励磁する状態を維持するとともに、ステップS30の判定を適宜繰り返す。なお、電動機20が発電可能な磁束が生じている状態を、電動機20の固定子巻線に生じた交流電圧の振幅が所定の電圧を超えたことを検出することで検出してもよい。
【0039】
電動機20が発電可能な磁束が生じた後に、制御部105は、インバータ102によって交流電力を直流電力に変換するように制御するとともに、直流リンクDCLの直流電圧VDCが所定の電圧になるように制御する(ステップS40)。これに応じて、制御部105は、コンバータ101によって直流電力を交流電力に変換して、所望の交流電圧、基本周波数の交流電力を生成するように制御する。制御部105は、その後、遮断器91を閉じて第2交流電力系統82に所望の交流電圧、基本周波数の交流電力を供給する。
【0040】
上記の一連の処理により、第2交流電力系統82の停電状態が解消して、第2交流電力系統82の交流電圧、基本周波数が所望の範囲にある交流電力が供給される。
【0041】
図3は、実施形態の電動機20の起動制御に係るタイミングチャートである。
この図3(a)に、第2交流電力系統82の交流電圧の振幅と第2交流電力系統82の状態を示す。図3(b)と(c)に、遮断器91(SW91)と遮断器92(SW92)の導通状態を示す。図3(d)に、第1交流電力系統81の交流電圧の振幅VACを示す。図3(e)に、直流リンクDCLの直流電圧VDCを示し、図3(f)に、電動機20の速度FBKωfを示す。なお、速度基準ωrは、電動機20の速度の制御目標値である。電動機20の速度FBKωfとは、電動機20の速度検出値又は電動機20の速度推定値の何れかである。
【0042】
このタイミングチャートに示された期間の初期段階(時刻t0)において、(b):遮断器91と、(c):遮断器92が遮断状態(OFF)にある。このとき、(a):第2交流電力系統82の交流電圧Vが消失した状態にある。
【0043】
なお、(f):電動機20は、停止している状態にある。上記のように、(c):遮断器92は、遮断状態(OFF)にあり、インバータ102もコンバータ101も電力変換を停止している状態にある。(e):直流リンクDCLの直流電圧VDCも消失した状態にある。
【0044】
時刻t30に、(f):電動機20に主機10からの動力が供給されて、電動機20が回転し始める。この時刻t30は、後述する時刻t10と時刻t20から独立して定めることができる。図に示す時刻30は、時刻t30は、時刻t10と時刻t20よりも先行しているが、これに制限されない。これに応じて、(f):電動機20の速度FBKωfが徐々に上昇する。
【0045】
時刻t10に、制御部105は、初期充電用電源30(電源部)による蓄電部104の初期充電を開始する。これに応じて、(e):直流リンクDCLの直流電圧VDCが徐々に上昇する。
時刻t20に、(e):直流リンクDCLの直流電圧VDCが所望の充電電圧に達する。これに応じて、(d):制御部105は、インバータ102による電力変換を開始する。その結果、第1交流電力系統81の交流電圧が発生して、その振幅VACが上昇する。
【0046】
時刻t40に(f):電動機20の速度FBKωfが所望の値よりも速くなる。既に、電動機20が発電して出力する交流電力の交流電圧の振幅VACが所望の値を超えていることにより、この交流電力がインバータ102から回生されて、蓄電部104が充電される状態になり、(e):直流リンクDCLの直流電圧VDCが上昇して、所望の充電電圧に達する。制御部105は、直流電圧VDCが安定するように制御して、これを継続する。
【0047】
時刻t50に、制御部105は、(b):遮断器91を導通状態(ON)に制御する。この後の時刻t60に、制御部105は、コンバータ101を制御して、(a):コンバータ101から第2交流電力系統82に交流電力を供給させる。供給される交流電力によって第2交流電力系統82が復電し、停電状態が解消する。
【0048】
この後の時刻t70に、制御部105は、(c):遮断器92を導通状態(ON)に制御する。これに応じて、例えば、発電機60の発電を開始させてもよい。これに制限されることなく発電機60の稼働は適宜定めてよい。
【0049】
このように、第2交流電力系統82に停電が生じている期間に、蓄電部104に蓄えた直流電力を用いて、電動機20の固定子巻線を励磁することができ、かご型の回転子が磁束がある中で転動することで、電動機20を発電する状態に導くことができる。
【0050】
実施形態の一態様の発電システム1(発電システム)は、電動機20と、電力変換装置100と、制御部105とを備える。電動機20は、固定子巻線への通電によって固定子が励磁され、回転子を回転させる動力が、固定子の励磁中に供給されて発電して、発電した電力を第1交流電力系統81に供給する。電力変換装置100は、起動した後の発電状態にある電動機20から供給される前記第1交流電力系統の第1電力を変換して、前記第1電力から変換された第2電力を第2交流電力系統に供給し、前記発電休止状態の電動機20を起動させて前記発電状態にする起動段階に、第2交流電力系統の第3電力又は直流電力から変換された第4電力を第1交流電力系統に供給する。制御部105は、電動機20の起動前に蓄電部104に蓄えられている直流電力から変換した第4電力を、電動機20を起動させるために電動機20に供給するように電力変換装置100を制御する。これにより、発電システム1は、発電休止状態の回転電機を起動させることができる。
【0051】
(第2の実施形態)
図4を参照して、第2の実施形態の発電システム1Aについて説明する。
図4は、第2の実施形態の発電システム1Aの構成図である。発電システム1Aは、発電システムの一例である。前述の発電システム1との相違点を中心に説明する。
【0052】
図4に示す発電システム1Aは、発電システム1と同様に船舶2に設けられる。この船舶2は、船舶2を駆動する駆動部と、電動機20A(発電機)と、船舶2の駆動用の動力の一部を、駆動部の主機10から電動機20Aに供給する軸連結部と、を備えている。電動機20Aの軸は、主機10の軸11と主軸51と連結されている。この場合、前述の減速機40を介さずに連結されている。この電動機20Aも、電動機20と同様に、軸発電動作モードにおいて発電機として利用される。
【0053】
このように、本実施形態の発電システム1Aは、前述の発電システム1に対して電動機20A周辺の構成が異なるが、発電システム1と同様の効果を奏する。
【0054】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、発電システムは、回転電機と、電力変換装置と、制御部と、を備える。回転電機は、固定子巻線への通電によって励磁され、回転子を回転させる動力が前記励磁中に供給されて発電して、前記発電した電力を第1交流電力系統に供給する。電力変換装置は、起動した後の発電状態にある前記回転電機から供給される前記第1交流電力系統の第1電力を変換して、前記第1電力から変換された第2電力を第2交流電力系統に供給し、前記発電休止状態の前記回転電機を起動させて前記発電状態にする起動段階に、前記第2交流電力系統の第3電力又は直流電力から変換された第4電力を前記第1交流電力系統に供給する。制御部は、前記回転電機の起動前に蓄電部に蓄えられている前記直流電力から変換した前記第4電力を、前記回転電機を起動させるために前記回転電機に供給するように前記電力変換装置を制御する起動方法により、発電システムは、発電休止状態の回転電機を起動させることができる。
【0055】
また、少なくとも一つの実施形態によれば、船舶2は、主機10(駆動部)と、発電システム1(1A)と、軸連結部とを備える。主機10(駆動部)は、船舶2を駆動する。発電システム1(1A)における軸連結部は、主機10から船舶2の駆動用の動力の一部を電動機20(回転電機)に供給する。これにより、船舶2は、発電休止状態の回転電機を起動させることができる。
【0056】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【0057】
上記の実施形態によれば、永久磁石同期発電機又は巻線界磁型の同期発電機を利用することなく、これに代えて誘導機を利用する。これにより、停電中にその誘導機を起動可能な発電システム1を構成する。例えば、永久磁石同期発電機は比較的高価であること、巻線界磁型の同期発電機は界磁巻線を励磁するための付帯回路が必要になることなどが、上記の同期発電機を利用する場合の制約になる。これに対して、本実施形態によって、上記の制約によらず、発電システム1(1A)を提供できる。
【符号の説明】
【0058】
1 発電システム、2 船舶、10 主機、20 電動機(誘導機)、100 電力変換装置、101 コンバータ、102 インバータ、104 蓄電部、105 制御部
図1
図2
図3
図4