(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037272
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】放射線の計測計画支援システム、および、計測計画支援方法
(51)【国際特許分類】
G01T 1/167 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
G01T1/167 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141994
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】関 洋
(72)【発明者】
【氏名】名雲 靖
(72)【発明者】
【氏名】上田 清隆
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188AA19
2G188AA23
2G188CC00
2G188EE29
2G188EE37
2G188GG01
2G188GG02
(57)【要約】
【課題】 廃棄物の放射能を高精度に計測でき、短時間で設置、計測、撤去の一連の作業が可能な検出器配置の計画の作成を支援する。
【解決手段】 廃棄物の3次元の形状メッシュモデルを生成する形状メッシュ生成部と、形状メッシュモデルを2次元の平面メッシュ展開図に展開するメッシュ展開部と、局所汚染の態様を2次元表現した局所汚染モードを複数記録した局所汚染モードデータベースと、局所汚染モードデータベースから取得した局所汚染モードを平面メッシュ展開図の任意のメッシュに割り当てる局所汚染モード割当部と、局所汚染モードを割り当てた平面メッシュ展開図を3次元の形状メッシュモデルに復元し、形状メッシュモデル上の局所汚染からの放射線の3次元線量率を計算する3次元線量率計算部と、局所汚染からの放射線を検出する放射線検出器の配置を計算する検出器配置計算部と、を具備する計測計画支援システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物の放射能濃度を計測する放射線検出器の配置計画の作成を支援する計測計画支援システムであって、
前記廃棄物の3次元の形状メッシュモデルを生成する形状メッシュ生成部と、
前記形状メッシュモデルを2次元の平面メッシュ展開図に展開するメッシュ展開部と、
局所汚染の態様を2次元表現した局所汚染モードを複数記録した局所汚染モードデータベースと、
該局所汚染モードデータベースから取得した局所汚染モードを前記平面メッシュ展開図の任意のメッシュに割り当てる局所汚染モード割当部と、
前記局所汚染モードを割り当てた前記平面メッシュ展開図を3次元の形状メッシュモデルに復元し、該形状メッシュモデル上の局所汚染からの放射線の3次元線量率を計算する3次元線量率計算部と、
前記局所汚染からの放射線を検出する放射線検出器の配置を計算する検出器配置計算部と、
を具備することを特徴とする計測計画支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の計測計画支援システムにおいて、
前記検出器配置計算部は、前記局所汚染モードデータベースに記録された複数の局所汚染モードを順次選択するとともに、該局所汚染モードを割り当てる前記平面メッシュ展開図のメッシュを順次選択したときに、各状況下で前記3次元線量率計算部が計算した複数の3次元線量率の中から、事前に計測した概略汚染範囲に近似する3次元線量率を計算したときの前記形状メッシュモデル上の局所汚染に対して、前記放射線検出器の配置を計算することを特徴とする計測計画支援システム。
【請求項3】
請求項2に記載の計測計画支援システムにおいて、
前記事前に計測した概略汚染範囲に近似する3次元線量率とは、前記概略汚染範囲の汚染濃度曲線の代表座標と、前記3次元線量率の汚染濃度曲線の代表座標の差異の二乗和が最小となる3次元線量率であることを特徴とする計測計画支援システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の計測計画支援システムにおいて、
前記検出器配置計算部は、仕様により指定される数、または、作業者が指定した数の放射線検出器を、設定した計測時間内に前記廃棄物の放射能濃度を計測できる座標と方向に配置することを特徴とする計測計画支援システム。
【請求項5】
請求項4に記載の計測計画支援システムにおいて、
前記検出器配置計算部は、複数の放射線検出器を、前記局所汚染を中心とする仮想的な球の表面上に配置することを特徴とする計測計画支援システム。
【請求項6】
廃棄物の放射能濃度を計測する放射線検出器の配置計画の作成を支援する計測計画支援方法であって、
前記廃棄物の3次元の形状メッシュモデルを生成する形状メッシュ生成ステップと、
前記形状メッシュモデルを2次元の平面メッシュ展開図に展開するメッシュ展開ステップと、
局所汚染の態様を2次元表現した局所汚染モードを複数記録した局所汚染モードデータベースから取得した局所汚染モードを前記平面メッシュ展開図の任意のメッシュに割り当てる局所汚染モード割当ステップと、
前記局所汚染モードを割り当てた前記平面メッシュ展開図を3次元の形状メッシュモデルに復元し、該形状メッシュモデル上の局所汚染からの放射線の3次元線量率を計算する3次元線量率計算ステップと、
前記局所汚染からの放射線を検出する放射線検出器の配置を計算する検出器配置計算ステップと、
を具備することを特徴とする計測計画支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線で汚染された廃棄物の放射能濃度の計測作業前に、放射線検出器の配置計画の作成を支援する、放射線の計測計画支援システム、および、計測計画支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強い放射線が存在する環境(原子力発電プラント、病院のX線検査室やCT検査室など)から排出された、放射線で汚染された廃棄物のなかには、人体に影響しない低放射能濃度のものも多く存在する。この種の環境から排出される大量の廃棄物の全てを、人体に影響する高放射能濃度の廃棄物と同様に厳重管理するのは費用等の理由で現実的でない。そのため、高放射能濃度の廃棄物については厳重管理する一方、低放射能濃度の廃棄物については通常の廃棄物と同様の方法で再利用したり最終処分したりする運用が一般的である。
【0003】
そこで、高放射能濃度の廃棄物を高精度に特定すべく、放射能濃度を高精度に計測する技術が求められてきた。例えば、放射能濃度を高精度に計測する従来技術として、特許文献1の放射能測定装置が知られている。この放射能測定装置では、同文献の
図1、
図2、
図5等に示されるように、板状の放射線検出部10をトレイ上の放射能測定対象1に接近させることで、放射能測定対象1の放射能分布を高精度に検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の放射能測定装置では、トレイに載置できない態様の物体の放射能分布を計測できないため、実使用環境下にある大量の廃棄予定物(例えば、プラントに組み込まれた状態の配管や弁など)から高放射能濃度の廃棄物を特定できないという問題があった。
【0006】
また、原子力発電プラントのように強い放射線が存在する環境では、作業者の被曝量を抑制すべく作業者の作業時間が制限されるため、原子力発電プラントに組み込まれた状態の廃棄予定物(配管や弁など)の放射能濃度を計測するには、短時間で設置、計測、撤去の一連の作業が可能な検出器配置でありながら、廃棄予定物の放射能分布を高精度に計測できる検出器配置を、計測作業の開始前に計画しておく必要があった。
【0007】
そこで、本発明は、実使用環境下にある廃棄予定物の放射能を高精度に計測できる検出器配置でありながら、短時間で設置、計測、撤去の各作業が可能な検出器配置の計画作成を支援する、放射線の計測計画支援システム、および、計測計画支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の計測計画支援システムは、廃棄物の放射能濃度を計測する放射線検出器の配置計画の作成を支援する計測計画支援システムであって、前記廃棄物の3次元の形状メッシュモデルを生成する形状メッシュ生成部と、前記形状メッシュモデルを2次元の平面メッシュ展開図に展開するメッシュ展開部と、局所汚染の態様を2次元表現した局所汚染モードを複数記録した局所汚染モードデータベースと、該局所汚染モードデータベースから取得した局所汚染モードを前記平面メッシュ展開図の任意のメッシュに割り当てる局所汚染モード割当部と、前記局所汚染モードを割り当てた前記平面メッシュ展開図を3次元の形状メッシュモデルに復元し、該形状メッシュモデル上の局所汚染からの放射線の3次元線量率を計算する3次元線量率計算部と、前記局所汚染からの放射線を検出する放射線検出器の配置を計算する検出器配置計算部と、を具備する計測計画支援システムとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の放射線の計測計画支援システム、または、計測計画支援方法によれば、実使用環境下にある廃棄予定物の放射能を高精度に計測できる検出器配置でありながら、短時間で設置、計測、撤去の各作業が可能な検出器配置の計画作成を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施例の計測計画支援システムの機能ブロック図。
【
図3】局所汚染モードデータベースに記録された局所汚染モードの説明図。
【
図4】機器形状メッシュ生成部が生成した弁の3次元形状メッシュの一例。
【
図5】メッシュ展開部による形状メッシュから平面メッシュへの展開方法の一例。
【
図6】局所汚染モード割当部による平面メッシュへの局所汚染モードの割り当て例。
【
図7】3次元線量率計算部による形状メッシュへの汚染源の割り当て例。
【
図8】検出器配置計算部の計算による検出器配置例。
【
図9】検出器配置計算部の計算による検出器配置をテーブル表現した例。
【
図10】一実施例の計測計画支援システムの処理フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の計測計画支援システムの一実施例について、図面を用いて説明する。なお、以下では、原子力発電プラントに組み込まれた廃棄物(配管や弁など)の放射能濃度の計測作業前に、その廃棄物周辺での放射線検出器の配置を計画する状況を例示するが、本発明を利用する環境はこの例に限定されず、放射線で汚染された廃棄物が存在する環境であれば、病院など他の環境で本発明を利用しても良い。
【0012】
図1は、本実施例の計測計画支援システム100の機能ブロック図である。ここに示すように、本実施例の計測計画支援システム100は、入力部1、出力部2、計測範囲選択部3、機器形状メッシュ生成部4、メッシュ展開部5、局所汚染モード割当部6、3次元線量率計算部7、検出器配置計算部8、プラントモデルデータベースDB1、概略汚染範囲データベースDB2、局所汚染モードデータベースDB3、検出器仕様データベースDB4を備えている。なお、
図1の破線内の構成は、具体的には、CPU等の演算装置、半導体メモリ等の記憶装置、および、通信装置などのハードウェアを備えたコンピュータである。そして、演算装置が所定のプログラムを実行することで、計測範囲選択部3等の各種機能部を実現するが、以下では、このような周知技術を適宜省略しながら、各部の詳細を順次説明する。
【0013】
プラントモデルデータベースDB1は、原子力発電プラント全体の3次元モデルを記録したデータベースである。従って、このデータベースを参照することで、原子力発電プラントの構成要素である配管や弁などの3次元的な接続関係だけでなく、各構成要素の3次元形状も取得することができる。
【0014】
概略汚染範囲データベースDB2は、原子力発電プラント全体の概略汚染範囲を記録したデータベースである。従って、このデータベースを参照することで、原子力発電プラントの大凡の汚染範囲を特定することができる。なお、このデータベースは、作業員が事前に簡易調査した概略汚染範囲を登録したデータベースであり、各廃棄物の部位毎の放射能濃度を特定できるほどの計測精度を持たないものである。
【0015】
図2は、実使用環境下にあるプラント構成要素の汚染範囲を簡易調査する方法を例示したものである。この例では、作業者は、略円柱状のプラント構成要素の近傍の図示する位置に3つの放射線検出器9(9a、9b、9c)を設置して、各位置での放射線量を短時間で簡易計測する。また、図示する位置に測距カメラ10を設置して、プラント構成要素と放射線検出器9a~9cの相対位置を計測する。その結果、放射線検出器9aで計測した放射線が強く、放射線検出器9cで計測した放射線が弱く、放射線検出器9bで計測した放射線が中程度であれば、プラント構成要素の放射線検出器9a寄りの位置に汚染範囲があると推定できるため、その推定結果を概略汚染範囲として概略汚染範囲データベースDB2に記録する。この作業をプラント各所で実行することで、原子力発電プラント全体の概略汚染範囲を登録することができる。
【0016】
局所汚染モードデータベースDB3は、高放射能濃度の廃棄物の局所汚染の態様を2次元表現した局所汚染モードを複数記録したデータベースである。
【0017】
図3は、汚染源の放射能濃度が正規分布するという前提で用意した、複数の局所汚染モードRを例示した図である。ここでは、所定範囲内に1つの局所汚染のみが存在するモードR1、所定範囲内に2つの局所汚染が近接して存在するモードR2、所定範囲内に2つの局所汚染がやや離れて存在するモードR3を例示しているが、所定範囲内の局所汚染の数を更に増やしたモードを用意しても良いし、所定範囲内の複数の局所汚染の放射能濃度を異ならせたモードを用意しても良い。また、モードR2やモードR3などを所定量回転させた態様のモードを用意しても良い。
【0018】
検出器仕様データベースDB4は、廃棄物の放射能濃度を計測する際に使用する放射線検出器9の仕様を記録したデータベースである。ここに記録される放射線検出器9の仕様は、例えば、放射線検出器9の体積、計測効率、1つの廃棄物の放射能を計測するために併用する放射線検出器9の標準的な数などである。なお、放射線検出器9の計測効率が高ければ、所定精度の計測を完了するまでに要する時間を短縮できるとともに、所定精度の計測を実現するために併用する放射線検出器9の数を低減することができる。
【0019】
入力部1は、キーボード、マウス、タッチパネルなどのマンマシンインタフェースであり、作業者が計測計画支援システム100に所望の情報を入力する際に使用する。
【0020】
出力部2は、液晶ディスプレイなどのマンマシンインタフェースであり、計測計画支援システム100が作業者に所望の情報を提示する際に使用する。
【0021】
計測範囲選択部3は、入力部1とプラントモデルデータベースDB1と概略汚染範囲データベースDB2の出力に基づいて、原子力発電プラント全体から計測対象のプラント構成要素を選択する機能部である。具体的には、液晶ディスプレイ(出力部2)に原子力発電プラント全体の3次元モデル(プラントモデルデータベースDB1の出力)と概略汚染範囲(概略汚染範囲データベースDB2の出力)が表示されると、作業者は、マウス等(入力部1)を操作して、原子力発電プラントの一部領域(特定の階床や特定の部屋など)を指定する。そして、この指定を受けた計測範囲選択部3は、指定領域内のプラント構成要素を計測対象として選択する。
【0022】
機器形状メッシュ生成部4は、プラントモデルデータベースDB1を参照して、計測範囲選択部3で選択した各プラント構成要素の3次元の形状メッシュを生成する機能部である。
【0023】
図4は、計測範囲選択部3で選択したプラント構成要素に弁Bが含まれていた場合に、機器形状メッシュ生成部4が、その弁Bについて生成した3次元の形状メッシュモデルの一例である。なお、図示するように、
図4における各メッシュの位置は、3軸が直交するxyz座標系によって特定することができる。
【0024】
メッシュ展開部5は、機器形状メッシュ生成部4で生成した3次元の形状メッシュモデルを、2次元の平面メッシュに展開する機能部である。複雑な形状のプラント構成要素に対して、機器形状メッシュ生成部4で形状メッシュモデルを生成すると、部位毎に形状メッシュの曲率や形状が大きく異なる。その場合、任意の形状メッシュ同士の対応関係の情報をxyz座標系によって規定することが煩雑となる。そこで、本実施例のメッシュ展開部5では、曲率や形状の異なる様々な形状メッシュを、形状を規格化した2次元の平面メッシュに変換したうえで、2軸が直交するuv座標系によって任意のメッシュ同士の対応関係の情報を簡便に規定できるようにした。
【0025】
図5は、
図4の弁Bの内面の形状メッシュを平面メッシュに展開する方法を例示した図である。
図5左図は、
図4の弁Bの形状メッシュモデルを断面Aで仮想的に切断した図である。
図4と
図5左図に示すように、略円筒状の弁Bの内側には、上端から下端に貫通する流路を有しており、流路の中央には楕円体状の膨張流路が形成されている。弁Bの内面がこのような複雑な形状をしているため、弁Bの内面形状に対応して生成される形状メッシュは均一形状ではない。例えば、膨張流路の内面にあるメッシュM1とメッシュM2は曲率や寸法が異なるため、xyz座標系を用いて両者の対応関係を規定するのは煩雑である。そこで、
図5左図の形状メッシュ群を上下方向に三分割した領域の夫々を、
図5右図のように、uv座標系による平面P1、P2、P3に展開する。これにより、3次元の形状メッシュ上では規定が煩雑であったメッシュM1,M2の対応関係を、2次元の平面メッシュ上で簡便に規定することができる。
【0026】
局所汚染モード割当部6は、メッシュ展開部5で展開された平面Pの任意の平面メッシュ上に、局所汚染モードデータベースDB3に登録された局所汚染モードを順次割り当てる機能部である。
【0027】
図6は、局所汚染モードデータベースDB3に登録されたモードR2(
図3参照)を、平面P2(
図5参照)の所定のメッシュに割り当てた状態の一例である。なお、以下では、平面P2に割り当てた局所汚染をr1,r2と称する。このように、本来は弁Bの膨張流路の内面に3次元的に割り当てるべき2つの汚染源r1,r2を2次元平面上で模擬することで、汚染源の割り当て位置を簡易に指定することができる。なお、局所汚染モード割当部6による汚染源rの割り当ての意義は後述することとする。
【0028】
3次元線量率計算部7は、汚染源rを割り当てた平面メッシュと対応する形状メッシュに汚染源rを割り当てた後、形状メッシュ上の汚染源rの放射能濃度が正規分布するものと仮定して、汚染源rからの放射線の3次元線量率を計算する機能部である。
【0029】
図7は、
図6右図に示す平面P2上の汚染源r1,r2を、弁Bの形状メッシュモデルにおける対応する形状メッシュに割り当てた状態を示すものである。この場合、3次元線量率計算部7は、図示する2箇所に所定の放射能濃度の汚染源r1,r2があるものと仮定し、モンテカルロ法等を利用することで、弁Bの近傍における放射線の3次元線量率を計算することができる。
【0030】
検出器配置計算部8は、検出器仕様データベースDB4から取得した放射線検出器9の仕様と、3次元線量率計算部7で計算した3次元線量率に基づいて、放射線検出器9の適切な配置(座標、方向)を計算する機能部である。
【0031】
図8は、検出器仕様データベースDB4の仕様上の併用数が5である場合の、放射線検出器9(90~94)の適切な配置の一例を示したものである。この例では、まず、3次元線量率計算部7で計算した3次元線量率が最大となる方向(例えば、汚染源rの法線ベクトル上)に1つ目の放射線検出器90を仮配置する。次に、放射線検出器90の体積、計測効率[%]、汚染源rの放射能[Bq=カウント数/s]、予定する計測時間等を考慮して、汚染源rから放射線検出器90までの距離を決定する。これにより、放射線検出器90の配置(座標、方向)が特定される。その後、汚染源rを中心とし、汚染源rから放射線検出器90までの距離を半径とする仮想的な球の表面上に、残る4つの放射線検出器91~94を配置する。その際、放射線検出器90の視線方向を軸にして放射線検出器91~94を均等に配置することが望ましい。このような検出器配置により、少ない数の放射線検出器9を用いて弁Bの放射能濃度を高精度に計測することができる。
【0032】
<フローチャート>
次に、
図10のフローチャートを用いて、本実施例の計測計画支援システム100による、放射線検出器9の配置計画の作成支援処理の手順を説明する。
【0033】
ステップS1では、計測範囲選択部3は、プラントの計測範囲を選択する。具体的には、計測範囲選択部3は、まず、プラントモデルデータベースDB1から原子力発電プラント全体の3次元モデルを取得するとともに、概略汚染範囲データベースDB2から概略汚染計測データを取得する。その後、計測範囲選択部3は、出力部2(液晶ディスプレイ)を介して作業者に、原子力発電プラント全体における概略汚染範囲を通知する。そして、通知を受けた作業者が、所望の計測範囲を入力すると、計測範囲選択部3は、作業者が入力した計測範囲に含まれる計測対象の機器(プラント構成要素)を選択する。
【0034】
ステップS2では、機器形状メッシュ生成部4は、ステップS1で選択した計測対象機器の形状メッシュモデルを、同じくステップS1で取得した3次元モデルに基づいて生成する(
図4参照)。
【0035】
ステップS3では、メッシュ展開部5は、ステップS2で生成した形状メッシュモデルを平面メッシュ展開図に変換する(
図5参照)。
【0036】
ステップS4では、局所汚染モード割当部6は、局所汚染モードデータベースDB3から局所汚染モードを取得する(
図3参照)。なお、局所汚染モードデータベースDB3に複数の局所汚染モードが記録されていても、本ステップでは、何れか1つの局所汚染モードを取得する。
【0037】
ステップS5では、局所汚染モード割当部6は、ステップS3で用意した平面メッシュ展開図の何れかのメッシュに、ステップS4で取得した局所汚染モードを割り当てる(
図6参照)。
【0038】
ステップS6では、3次元線量率計算部7は、ステップS5で局所汚染を割り当てた平面メッシュ展開図を3次元の形状メッシュモデルに復元し(
図7参照)、その位置に局所汚染があるものと仮定して、計測対象機器の周辺の3次元線量率を計算する。なお、ここでの計算には、上述したように、モンテカルロ法等を利用することができる。
【0039】
ステップS7では、検出器配置計算部8は、検出器仕様データベースDB4から放射線検出器9の仕様データを取得する。
【0040】
ステップS8では、検出器配置計算部8は、n個の放射線検出器9を、ステップS6で復元した3次元の形状メッシュモデルにおける局所汚染を中心に配置して、各放射線検出器の座標と視線方向を計算する(
図8参照)。なお、上記のnは、ステップS7で取得した仕様データによって指定された併用数であっても良いし、作業者が指定した数であっても良い。
【0041】
ステップS9では、検出器配置計算部8は、ステップS6で計算した3次元線量率を、ステップS8で配置した放射線検出器9群で検出する場合の放射線量を計算する。
【0042】
ステップS10では、検出器配置計算部8は、概略汚染範囲データベースDB2から取得した概略汚染分布と、ステップS9で計算した放射線量分布を比較し、汚染濃度曲線の代表座標の差異の二乗和を計算する。この計算結果により、ステップS5で局所汚染を割り当てた位置の尤度を推測することができる。
【0043】
ステップS11では、局所汚染モード割当部6は、ステップS4で取得した局所汚染モードを全てのメッシュに割り当てたかを判定する。そして、要件を満たす場合はステップS12に進む。一方、要件を満たさない場合はステップS5に進み、他のメッシュに局所汚染モードを割り当てたうえで、ステップS6からステップS10の処理を再度実施する。
【0044】
ステップS12では、局所汚染モード割当部6は、局所汚染モードデータベースDB3に登録された全ての局所汚染モードについてステップS5からステップS10の処理を終了したかを判定する。そして、要件を満たす場合はステップS13に進む。一方、要件を満たさない場合はステップS4に進み、他の局所汚染モードを取得したうえで、ステップS5からステップS11の処理を再度実施する。
【0045】
最後に、ステップS13では、検出器配置計算部8は、メッシュの数や局所汚染モードの数に応じて繰り返されるステップS10で計算した、多数の二乗和のなかから、最小の二乗和を特定する。この最小の二乗和を計算したときの局所汚染モードと、その局所汚染モードを割り当てたメッシュの位置は、計測対象機器の実際の汚染状況に類似しており、これに対応する放射線検出器9の配置が実際の汚染状況を計測するための最適な配置と考えられるため、検出器配置計算部8は、最小の二乗和を計算したときの放射線検出器9の配置を検出器配置計画として出力する(S14)。
【0046】
図9は、液晶ディスプレイ(出力部2)に表示される、表形式の検出器配置計画の一例である。この表1では、放射線検出器9に識別番号をつけて、検出器中心の座標、方向、検出効率、計測時間などを表形式で出力する。なお、
図8のようなイラストを、検出器配置計画としてそのまま液晶ディスプレイ(出力部2)に表示しても良い。
【0047】
以上で説明したように、本実施例の計測計画支援システムによれば、実使用環境下にある廃棄予定物の放射能を高精度に計測できる検出器配置でありながら、短時間で設置、計測、撤去の各作業が可能な検出器配置の計画作成を支援することができる。
【符号の説明】
【0048】
100 計測計画支援システム
1 入力部
2 出力部
3 計測範囲選択部
4 機器形状メッシュ生成部
5 メッシュ展開部
6 局所汚染モード割当部
7 3次元線量率計算部
8 検出器配置計算部
9 放射線検出器
10 測距カメラ
DB1 プラントモデルデータベース
DB2 概略汚染範囲データベース
DB3 局所汚染モードデータベース
DB4 検出器仕様データベース