(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037279
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】タイヤ用モールド
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20240312BHJP
B29C 33/10 20060101ALI20240312BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20240312BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C33/10
B29C35/02
B29L30:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142002
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 吉博
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AH20
4F202AM32
4F202AR07
4F202AR12
4F202CA21
4F202CB01
4F202CU07
4F203AA45
4F203AH20
4F203AM32
4F203AR07
4F203AR12
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DL10
(57)【要約】
【課題】エアーの排出性に優れ、かつ効率的に製造されうる、タイヤ用モールドの提供。
【解決手段】タイヤ用モールドは、トレッドのためのセグメント14を有している。このセグメント14は、リセス38及びベントホールを有している。リセス38は、第一コーナー46a、第二コーナー46b及び第三コーナー46cを有している。ベントホールは、開口42を有している。この開口42は、リセス38の輪郭に沿って延在している。開口42は、第一スリット44a及び第二スリット44bを含んでいる。第二スリット44bは、第一スリット44aから分岐している。第一スリット44aは、第一コーナー46aの近傍から第二コーナー46bの近傍に至っている。第二スリット44bは、第二コーナー46bの近傍から第三コーナー46cの近傍に至っている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティ面と、このキャビティ面に開口を有するベントホールとを備えており、
上記開口がスリットを含む、タイヤ用モールド。
【請求項2】
上記ベントホールが、
(1)上記開口を含むメインホール
及び
(2)上記メインホールに連続しており、このメインホールと外部とを連通するためのサブホール
を有しており、
上記サブホールの流路面積が上記メインホールの流路面積よりも小さい、請求項1に記載のモールド。
【請求項3】
上記開口が、第一コーナー及び第二コーナーを含むリセスの中に存在しており、
上記スリットが、上記第一コーナーの近傍から上記第二コーナーの近傍に至っている、請求項1又は2に記載のモールド。
【請求項4】
上記スリットの幅が0.5mm以上2.0mm以下であり、上記スリットの長さが3.0mm以上である、請求項1又は2に記載のモールド。
【請求項5】
上記開口が、第一スリットと、この第一スリットから分岐する第二スリットとを含む、請求項1又は2に記載のモールド。
【請求項6】
上記開口が、コーナーを含むリセスの中に存在しており、
上記第二スリットの上記第一スリットからの分岐位置が、上記コーナーに近接している、請求項5に記載のモールド。
【請求項7】
上記コーナーと上記分岐位置との距離が、0.5mm以上2.0mm以下である、請求項6に記載のモールド。
【請求項8】
雄型が用いられた鋳造加工により、この雄型の形状を転写して、スリット状の開口を含むメインホールを有するセグメントを得る工程、
及び
上記セグメントの切削加工により、上記メインホールに連続するサブホールを形成する工程
を備えた、タイヤ用モールドの製造方法。
【請求項9】
キャビティ面と、このキャビティ面に開口を有するベントホールとを有しており、この開口がスリットを有するモールドに、ローカバーを投入する工程、
及び
上記ローカバーをモールド内で加圧及び加熱する工程
を備えた、タイヤ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、タイヤの加硫工程に用いられるモールドを開示する。本明細書はさらに、このモールドの製造方法と、このモールドが用いられたタイヤ製造方法とを開示する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの加硫工程に、モールドが用いられている。この加硫工程では、予備成形されたローカバー(グリーンタイヤ)が、モールドに投入される。このローカバーは、モールドとブラダー(又は中子)とによって形成されるキャビティにおいて、加圧されつつ加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバーのゴム組成物がキャビティ内を流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤが得られる。
【0003】
特開2018-114668公報には、ベントホールを有するモールドが開示されている。このベントホールは、キャビティと外気とを連通する。加硫工程において、モールドのキャビティ面とローカバーとの間のエアーは、このベントホールを通じて排出される。この排出により、ベアーが抑制されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エアーの十分な排出には、多数のベントホールが必要である。ベントホールは、工具(ドリル等)による切削によって形成される。多数のベントホールの形成には、手間がかかる。
【0006】
多数のベントホールが順次形成される過程において、既存のベントホールに近接する箇所への、他のベントホールための切削がなされると、工具が位置ズレを起こす。互いに近接した複数のベントホールの形成には、困難が伴う。
【0007】
本出願人の意図するところは、エアーの排出性に優れ、かつ効率的に製造されうる、タイヤ用モールドの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、タイヤ用モールドを開示する。このモールドは、キャビティ面と、このキャビティ面に開口を有するベントホールとを有する。この開口は、スリットを含む。
【発明の効果】
【0009】
このタイヤ用モールドでは、ベントホールを通じてエアーが十分に排出されうる。このベントホールの形成は、容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るタイヤ用モールドの一部が示された概略図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿った拡大断面図である。
【
図3】
図3は、
図2のモールドのセグメントが示された正面図である。
【
図6】
図6は、
図3のセグメントの一部が示された拡大正面図である。
【
図7】
図7は、
図6のセグメントの一部が示された拡大図である。
【
図8】
図8は、
図6のVIII-VIII線に沿った拡大断面図である。
【
図9】
図9は、
図6のIX-IX線に沿った拡大断面図である。
【
図13】
図13は、他の実施形態に係るタイヤ用モールドのセグメントの一部が示された正面図である。
【
図15】
図15は、さらに他の実施形態に係るタイヤ用モールドのセグメントの一部が示された正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面が参照されつつ、タイヤ用モールドの好ましい実施形態が詳細に説明される。
【0012】
図1及び2に、タイヤ用モールド2が示されている。
図2において、矢印Xはモールド2の径方向を表し、矢印Yはモールド2の軸方向を表す。このモールド2は、下プレート4、上プレート6、一対のサイドウォールプレート8、コンテナリング10、複数のセクターシュー12及び複数のセグメント14を有している。
図1では、便宜上、上プレート6の図示が省略されている。下プレート4は、リング状の形状を有する。上プレート6は、ディスク状の形状を有する。それぞれのサイドウォールプレート8は、実質的にリング状の形状を有する。
【0013】
図1に示されるように、コンテナリング10は、筒状である。
図2に示されるように、コンテナリング10は、内周面16を有している。この内周面16は、軸方向に対して傾斜している。内周面16は、下に向かうに従って径方向外側に向かう形状を、有している。内周面16は、複数のレール18を有している。
【0014】
図1に示されるように、セクターシュー12の平面形状は、実質的に扇形である。
図2に示されるように、セクターシュー12は、内周面20及び外周面22を有している。
図1では、複数のセクターシュー12が周方向に沿って並んでいる。セクターシュー12の数は、通常3以上20以下である。本実施形態では、セクターシュー12の数は、9である。
【0015】
外周面22は、軸方向に対して傾斜している。外周面22は、下に向かうに従って径方向外側に向かう形状を、有している。
図2に示されるように、外周面22は溝24を有している。図示は省略されるが、この溝24は、いわゆる蟻溝である。この蟻溝24は、アンダーカット形状を有している。外周面22は、コンテナリング10の内周面16と当接している。蟻溝24には、レール18が嵌まっている。蟻溝24とレール18との引っかかりにより、セクターシュー12のコンテナリング10からの離脱が阻止されている。蟻溝24は、レール18に対して擦動可能である。従ってセクターシュー12は、コンテナリング10に対して擦動可能である。
【0016】
図1では、複数のセグメント14がリング状に配置されている。これらのセグメント14により、キャビティが形成されている。セグメント14の数は、通常3以上20以下である。セグメント14の数は、セクターシュー12の数と一致している。従って本実施形態では、セグメント14の数は、9である。モールド2が、互いにサイズの異なる複数種のセグメント14を有してもよい。
【0017】
それぞれのセグメント14の平面形状は、実質的に扇形である。
図2に示されるように、セグメント14は、キャビティ面26と背面28とを有している。背面28は、セクターシュー12の内周面20に当接している。セグメント14は、セクターシュー12に固定されている。固定は、ボルト等の図示されない手段によって達成されている。セクターシュー12とセグメント14との間に、他の部材(ホルダー等)が介在してもよい。
【0018】
モールド2が開かれた状態では、セクターシュー12は
図2に示された位置よりも径方向外側にあり、コンテナリング10は
図2に示された位置よりも上方にある。モールド2の閉動作では、コンテナリング10が、徐々に下降する。コンテナリング10の内周面16にその外周面22が押されたセクターシュー12は、径方向内側に向かって、徐々に移動する。この移動により、セクターシュー12とこれに隣接するセクターシュー12との距離が、徐々に小さくなる。セクターシュー12の移動に伴い、セグメント14が、径方向内側に向かって徐々に移動する。この移動により、セグメント14とこれに隣接するセグメント14との距離が、徐々に小さくなる。コンテナリング10の下降が終了した時点で、セグメント14が隣接するセグメント14と当接し、キャビティが形成される。セグメント14が隣接するセグメント14と当接したときが、モールド2が閉じたときである。
【0019】
閉じているモールド2が開かれるとき、コンテナリング10が徐々に上昇する。蟻溝24とレール18とは引っかかっているが、セクターシュー12には重力がかかっているので、このセクターシュー12は上昇しない。セクターシュー12は、コンテナリング10と擦動しつつ、径方向外側に向かって、徐々に移動する。この移動により、セクターシュー12とこれに隣接するセクターシュー12との距離が、徐々に大きくなる。セクターシュー12の移動に伴い、セグメント14が、径方向外側に向かって徐々に移動する。この移動により、セグメント14とこれに隣接するセグメント14との距離が、徐々に大きくなる。
【0020】
図3-5に、セグメント14が示されている。
図3において、矢印Zはモールド2の周径方向を表し、矢印Yはモールド2の軸方向を表す。前述の通りセグメント14は、キャビティ面26と背面28とを有している。セグメント14はさらに、一対の側面30及び一対の端面32を有している。セグメント14の材質は、金属である。典型的な金属は、アルミニウム合金である。
【0021】
図3に示されるように、キャビティ面26は、4つのメインリッジ34と、多数のサブリッジ36とを有している。それぞれのメインリッジ34は、周方向に延在している。このメインリッジ34は、タイヤのトレッドの周方向溝に対応する。それぞれのサブリッジ36は、周方向に対して傾斜している。このサブリッジ36は、タイヤのトレッドの横溝に対応する。これらのメインリッジ34及びサブリッジ36により、キャビティ面26に多数のリセス38が形成されている。これらのリセス38は、多数のセンターリセス38a及び多数のミドルリセス38bを含んでいる。それぞれのリセス38は、タイヤのトレッドのブロックに対応する。リセス38は雌であり、ブロックは雄である。ブロックには、リセス38の形状が転写される。
【0022】
図6には、キャビティ面26の一部が拡大されて示されている。
図6には、複数のリセス38(具体的にはミドルリセス38b)が示されている。
図6にはさらに、複数のベントホール40も示されている。それぞれのベントホール40は、開口42を有している。この開口42は、キャビティ面26(
図5参照)に位置している。
図6の実施形態では、開口42は、リセス38に位置している。
【0023】
図7には、リセス38の一部と開口42とが、拡大されて示されている。開口42は、リセス38の輪郭に沿って延在している。開口42は、第一スリット44a及び第二スリット44bを含んでいる。第二スリット44bは、第一スリット44aから分岐している。セグメント14が、分岐を有さない開口を含んでもよい。
【0024】
図7において、符号46aはリセス38の第一コーナーを表し、符号46bはリセス38の第二コーナーを表し、符号46cはリセス38の第三コーナーを表す。第一スリット44aは、第一コーナー46aの近傍から第二コーナー46bの近傍に至っている。第二スリット44bは、第二コーナー46bの近傍から第三コーナー46cの近傍に至っている。開口42は、第一コーナー46aの近傍に存在しており、第二コーナー46bの近傍に存在しており、第三コーナー46cの近傍にも存在している。
【0025】
図8-11に、ベントホール40の断面が示されている。これらの図から明らかなように、ベントホール40は、キャビティ面26(リセス38)から背面28にまで至っている。このベントホール40は、メインホール48とサブホール50とを有している。
【0026】
メインホール48は、前述の開口42を含んでいる。この開口42は、キャビティ面26に位置している。径方向Xに対して垂直な断面におけるメインホール48の形状は、概して矩形である。
【0027】
サブホール50は、メインホール48よりも背面28の側に位置している。サブホール50は、メインホール48に連続しており、背面28に開口52を有している。サブホール50は、メインホール48とモールド2の外部とを、連通している。径方向Xに対して垂直な断面におけるサブホール50の形状は、概して円形である。
【0028】
図7及び8において、符号L1は第一スリット44aの長さを表す。メインホール48も、第一スリット44aの直下において、長さL1を有している。
図7及び11において、符号L2は第二スリット44bの長さを表す。メインホール48も、第二スリット44bの直下において、長さL2を有している。
図7及び9-11において、符号W1は第一スリット44aの幅を表す。メインホール48も、第一スリット44aの直下において、幅W1を有している。
図7において、符号W2は第二スリット44bの幅を表す。メインホール48も、第二スリット44bの直下において、幅W2を有している。
図8及び9において、符号Diはサブホール50の内径を表す。内径Diは、長さL1及びL2に比べ、十分に小さい。換言すれば、サブホール50の流路面積はメインホール48の流路面積よりも小さい。
【0029】
このモールド2が用いられたタイヤ製造方法では、まず、予備成形工程によってローカバーが得られる。次に、モールド2が開いており、ブラダー(図示されず)が収縮している状態で、ローカバーがモールド2に投入される。ブラダーは、ローカバーの内側に位置する。この段階では、ローカバーのゴム組成物は、未架橋状態である。次に、モールド2が締められ、セグメント14によってキャビティが形成される。次に、ブラダーが膨張する。ローカバーはブラダーによってモールド2のキャビティ面26に押しつけられ、加圧される。この状態のローカバーRcが、
図2に示されている。加圧と同時にローカバーRcは、加熱される。加圧と加熱とにより、ゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤが得られる(加硫工程)。このタイヤは、トレッド及びサイドウォールを有している。このトレッドは、複数のセグメント14によって形成されたキャビティによって成形される。サイドウォールは、サイドウォールプレート8によって成形される。
【0030】
ローカバーがキャビティ面26に押しつけられるとき、キャビティ面26とローカバーとの間のエアーは、メインホール48を通過し、サブホール50を通過し、背面28の開口52から排出される。もしベントホール40を有していないモールドでタイヤが成形されると、第一コーナー46a(
図7参照)、第二コーナー46b及び第三コーナー46cの近傍にエアーが残留しやすい。本実施形態に係るタイヤでは、前述の通り、ベントホール40の開口42が第一コーナー46aの近傍から第三コーナー46cの近傍にまで至っている。このベントホール40により、エアーが十分に排出される。このモールド2により、ベアーが少ないタイヤが得られうる。
【0031】
加硫工程において、ローカバーの未架橋ゴムの一部が、メインホール48に流入する。この流入に起因して、タイヤのトレッドにスピューが形成される。このスピューは、メインホール48の形状が転写された形状を有する。このスピューは、トリマーによって除去されうる。
【0032】
このセグメント14は、鋳造加工と切削加工とによって製造されうる。鋳造加工では、雄型が準備される。この雄型の典型的な材質は、石膏である。この雄型は、筋状の突起を有している。この雄型が用いられた鋳造加工により、セグメント中間品が得られる。この中間品は、雄型の形状が転写された形状を有する。この中間品は、メインホール48を有している。このメインホール48は、雄型の突起の形状が転写された形状を有する。このメインホール48は、スリット状の開口42を含む。
【0033】
この中間品に、切削加工が施される。切削加工は、ドリル等の切削工具によってなされる。メインホール48の底面から背面28に向けて切削がなされ、サブホール50が形成されて、セグメント14が得られる。このセグメント14が他の部材とアッセンブリーされて、モールド2(
図1参照)が得られる。
【0034】
第一コーナー46a、第二コーナー46b及び第三コーナー46cのそれぞれの近傍にベントホールを形成する場合、ベントホールの数は3である。これらのベントホール40の加工は、手間である。しかも、第二コーナー46b近傍のベントホールの形成後、第三コーナー46cのベントホールを形成するとき、工具のズレが生じやすい。本実施形態では、ベントホール40の数は1である。このベントホール40は、簡便にかつ精度よく形成されうる。このモールド2は容易に得られうる。
【0035】
第一スリット44aの幅W1(
図7参照)は、0.5mm以上2.0mm以下が好ましい。第一スリット44aの長さL1は、3.0mm以上が好ましい。幅W1に対する長さL1の比は1.5以上が好ましく、3.0以上がより好ましく、5.0以上が特に好ましい。
【0036】
第二スリット44bの幅W2は、0.5mm以上2.0mm以下が好ましい。第二スリット44bの長さL2は、3.0mm以上が好ましい。幅W2に対する長さL2の比は1.5以上が好ましく、3.0以上がより好ましく、5.0以上が特に好ましい。
【0037】
図8-11において矢印Dpは、メインホール48の深さである。エアー排出の観点から、深さDpは1.0mm以上が好ましく、3.0mm以上がより好ましく、4.0mm以上が特に好ましい。セグメント14の製作容易の観点及び強度の観点から、深さDpは15.0mm以下が好ましく、10.0mm以下がより好ましく、8.0mm以下が特に好ましい。
【0038】
図12には、セグメント14の一部がさらに拡大されて示されている。
図12において符号54は、スリット44の分岐点を表す。矢印Dsは、リセス38のコーナー46(この例では第二コーナー46b)と分岐点54との距離である。エアーの排出の観点から、距離Dsは2.0mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましく、1.0mm以下が特に好ましい。加工の容易の観点から、距離Dsは0.5mm以上が好ましい。
【0039】
本実施形態では、1つの開口42に含まれるスリット44の数は、2である。この数が1であってもよく、3以上であってもよい。
【0040】
サブホール50が、屈曲してもよい。サブホール50の開口52が、側面30又は端面32に位置してもよい。
【0041】
本実施形態では、ベントホール40は、1つのメインホール48と1つのサブホール50とを有する。ベントホール40が1つのメインホール48と2以上のサブホール50とを有しても、よい。
【0042】
セグメント14が、サブホール50を含まないベントホール40を有してもよい。この場合、スリット状のホールが、セグメント14のキャビティ面26から背面28にまで至る。セグメント14の強度の観点から、サブホール50を含むベントホール40が好ましい。
【0043】
サイドウォールプレート8が、スリットを含む開口を有するベントホールを有してもよい。モールド2のうち、タイヤのビード近傍を成形する部分が、スリットを含む開口を有するベントホールを有してもよい。
【0044】
図13及び14に、他の実施形態に係るタイヤ用モールドのセグメント56が示されている。
図13には、1つのセンターリセス58と、ベントホール60(
図14参照)の開口62とが示されている。このモールドの、ベントホール60以外の仕様は、
図1-12に示されたモールド2の仕様と同じである。
【0045】
図14に示されるように、ベントホール60は、メインホール64とサブホール66とを有している。メインホール64は、前述の開口62を含んでいる。
図13から明らかなように、この開口62は、ループ状のスリット68を含んでいる。開口62は、リセス58の輪郭に沿って延在している。サブホール66は、メインホール64よりも背面70の側に位置している。サブホール66は、メインホール64に連続しており、背面70に開口72を有している。サブホール66は、メインホール64とモールドの外部とを、連通している。
図13から明らかなように、1つのメインホール64から、6つのサブホール66が延びている。このモールドでも、ベントホール60によってエアーが十分に排出される。
【0046】
図15及び16に、さらに他の実施形態に係るタイヤ用モールドのセグメント74が示されている。
図15には、1つのセンターリセス76が示されている。
図15にはさらに、第一ベントホールの2つの開口78と、第二ベントホール80(
図16参照)の開口82とが示されている。第一ベントホールの仕様は、
図6に示されたベントホール40の仕様と同じである。第二ベントホール80を有することを除けば、このモールドの仕様は、
図1-12に示されたモールド2の仕様と同じである。
【0047】
図16に示されるように、第二ベントホール80は、メインホール84とサブホール86とを有している。メインホール84は、前述の開口82を含んでいる。
図15に示されるように、この開口82は、ジグザグ状のスリット88を含んでいる。サブホール86は、メインホール84よりも背面90の側に位置している。サブホール86は、メインホール84に連続しており、背面90に開口92を有している。サブホール86は、メインホール84とモールドの外部とを、連通している。
図15から明らかなように、1つのメインホール84から、2つのサブホール86が延びている。このモールドでは、第一ベントホール及び第二ベントホール80によってエアーが十分に排出される。
【0048】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0049】
[項目1]
キャビティ面と、このキャビティ面に開口を有するベントホールとを備えており、
上記開口がスリットを含む、タイヤ用モールド。
【0050】
[項目2]
上記ベントホールが、
(1)上記開口を含むメインホール
及び
(2)上記メインホールに連続しており、このメインホールと外部とを連通するためのサブホール
を有しており、
上記サブホールの流路面積が上記メインホールの流路面積よりも小さい、項目1に記載のモールド。
【0051】
[項目3]
上記開口が、第一コーナー及び第二コーナーを含むリセスの中に存在しており、
上記スリットが、上記第一コーナーの近傍から上記第二コーナーの近傍に至っている、項目1又は2に記載のモールド。
【0052】
[項目4]
上記スリットの幅が0.5mm以上2.0mm以下であり、上記スリットの長さが3.0mm以上である、項目1から3のいずれかに記載のモールド。
【0053】
[項目5]
上記開口が、第一スリットと、この第一スリットから分岐する第二スリットとを含む、項目1から4のいずれかに記載のモールド。
【0054】
[項目6]
上記開口が、コーナーを含むリセスの中に存在しており、
上記第二スリットの上記第一スリットからの分岐位置が、上記コーナーに近接している、項目5に記載のモールド。
【0055】
[項目7]
上記コーナーと上記分岐位置との距離が、0.5mm以上2.0mm以下である、項目6に記載のモールド。
【0056】
[項目8]
雄型が用いられた鋳造加工により、この雄型の形状を転写して、スリット状の開口を含むメインホールを有するセグメントを得る工程、
及び
上記セグメントの切削加工により、上記メインホールに連続するサブホールを形成する工程
を備えた、タイヤ用モールドの製造方法。
【0057】
[項目9]
キャビティ面と、このキャビティ面に開口を有するベントホールとを有しており、この開口がスリットを有するモールドに、ローカバーを投入する工程、
及び
上記ローカバーをモールド内で加圧及び加熱する工程
を備えた、タイヤ製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明されたモールドにより、種々のタイヤが製造されうる。
【符号の説明】
【0059】
2・・・タイヤ用モールド
14・・・セグメント
26・・・キャビティ面
28・・・背面
30・・・側面
32・・・端面
34・・・メインリッジ
36・・・サブリッジ
38・・・リセス
38a・・・センターリセス
40・・・ベントホール
42・・・開口
44・・・スリット
44a・・・第一スリット
44b・・・第二スリット
46・・・リセスのコーナー
48・・・メインホール
50・・・サブホール
52・・・開口
54・・・分岐点
56・・・セグメント
58・・・センターリセス
60・・・ベントホール
62・・・開口
64・・・メインホール
66・・・サブホール
68・・・スリット
70・・・背面
72・・・開口
74・・・セグメント
76・・・センターリセス
78・・・開口
80・・・第二ベントホール
82・・・開口
84・・・メインホール
86・・・サブホール
88・・・スリット
90・・・背面
92・・・開口