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特開2024-37281プラズマ処理システム及びプラズマ処理システムの情報設定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037281
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】プラズマ処理システム及びプラズマ処理システムの情報設定方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/26 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
H05H1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142004
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日下 航
(72)【発明者】
【氏名】神藤 高広
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA07
2G084BB37
2G084CC34
2G084HH53
2G084HH57
(57)【要約】
【課題】マスタ/スレーブの関係を形成する制御装置の簡素化が可能なプラズマ処理システムを提供すること。
【解決手段】プラズマ処理システムは、複数のプラズマ発生装置と、各々のプラズマ発生装置の動作を制御する複数の制御装置と、を備え、複数の制御装置のうちの一つをマスタ制御装置、且つ、マスタ制御装置以外の制御装置をスレーブ制御装置とし、複数のプラズマ発生装置の各々は、ネットワークを介してマスタ制御装置からのプラズマ発生装置の動作に関する動作指令情報を含む指令情報がスレーブ制御装置に出力されることによって連携して動作可能とされており、マスタ制御装置のみが制御装置の間で共用可能な共用装置の少なくとも一つを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプラズマ発生装置と、
各々の前記プラズマ発生装置の動作を制御する複数の制御装置と、を備え、
複数の前記制御装置のうちの一つをマスタ制御装置、且つ、前記マスタ制御装置以外の前記制御装置をスレーブ制御装置とし、
複数の前記プラズマ発生装置の各々は、ネットワークを介して前記マスタ制御装置からの前記プラズマ発生装置の動作に関する動作指令情報を含む指令情報が前記スレーブ制御装置に出力されることによって連携して動作可能とされており、
前記マスタ制御装置のみが前記制御装置の間で共用可能な共用装置の少なくとも一つを有する、プラズマ処理システム。
【請求項2】
前記指令情報は、前記プラズマ発生装置を緊急停止させる緊急停止情報を含む、請求項1に記載のプラズマ処理システム。
【請求項3】
前記緊急停止情報は、前記マスタ制御装置に設けられた前記共用装置としての緊急停止装置によって発生する、請求項2に記載のプラズマ処理システム。
【請求項4】
複数の前記スレーブ制御装置の各々は、
信号の送受信が可能な信号線を介して、前記マスタ制御装置に接続される、請求項1-3の何れか一項に記載のプラズマ処理システム。
【請求項5】
前記マスタ制御装置は、
前記信号線を介して、少なくとも前記ネットワーク上において前記スレーブ制御装置を識別するための識別情報を出力する、請求項4に記載のプラズマ処理システム。
【請求項6】
前記識別情報は、前記信号線を介して、前記マスタ制御装置から各々の前記スレーブ制御装置に出力される複数の信号の各々の状態を表す信号状態に応じて決定されるIPアドレスである、請求項5に記載のプラズマ処理システム。
【請求項7】
前記マスタ制御装置及び前記スレーブ制御装置は、前記ネットワークを介して前記指令情報を送受信する情報送受信部、及び、前記信号線を介して前記ネットワーク上における前記スレーブ制御装置の識別に用いられる信号を送受信する信号送受信部を有するシングルボードコンピュータを備え、
前記マスタ制御装置が備える前記シングルボードコンピュータは、更に、前記共用装置を接続する共用装置接続部を有する、請求項4に記載のプラズマ処理システム。
【請求項8】
前記共用装置は、入力装置又は表示装置を含む、請求項1又は2に記載のプラズマ処理システム。
【請求項9】
前記マスタ制御装置及び前記スレーブ制御装置は、前記プラズマ発生装置を緊急停止させる緊急停止情報を発生する緊急停止装置を有する、請求項1に記載のプラズマ処理システム。
【請求項10】
前記スレーブ制御装置は、前記マスタ制御装置から出力された前記指令情報以外の指令情報に従って前記プラズマ発生装置の動作を制御可能である、請求項1に記載のプラズマ処理システム。
【請求項11】
前記指令情報には、前記プラズマ発生装置を動作させるオン信号又は前記プラズマ発生装置を停止させるオフ信号が含まれ、
前記マスタ制御装置及び前記スレーブ制御装置が動作を制御する全ての前記プラズマ発生装置について、前記マスタ制御装置及び前記スレーブ制御装置は、前記オン信号に応じて全ての前記プラズマ発生装置を動作させ、若しくは、前記オフ信号に応じて全ての前記プラズマ発生装置を停止させ、又は、
前記マスタ制御装置及び前記スレーブ制御装置の各々が動作を制御する前記プラズマ発生装置について、前記マスタ制御装置及び前記スレーブ制御装置の各々は、前記オン信号に応じて前記プラズマ発生装置を個別に動作させ、若しくは、前記オフ信号に応じて各々の前記プラズマ発生装置を個別に停止させる、請求項1又は2に記載のプラズマ処理システム。
【請求項12】
前記マスタ制御装置及び前記スレーブ制御装置は、前記オフ信号に応じて、前記プラズマ発生装置に供給される電力を遮断してから所定時間の経過後に、前記プラズマ発生装置にてプラズマ化されるプロセスガスの供給を遮断する、請求項11に記載のプラズマ処理システム。
【請求項13】
前記マスタ制御装置及び前記スレーブ制御装置は、前記オン信号に応じて、前記プラズマ発生装置を暖機運転させる、請求項11に記載のプラズマ処理システム。
【請求項14】
複数のプラズマ発生装置と、
各々の前記プラズマ発生装置の動作を制御する複数の制御装置と、を備えるプラズマ処理システムに適用され、
複数の前記制御装置のうちの一つをマスタ制御装置、且つ、前記マスタ制御装置以外の前記制御装置をスレーブ制御装置とし、
複数の前記プラズマ発生装置の各々は、ネットワークを介して前記マスタ制御装置からの前記プラズマ発生装置の動作に関する動作指令情報を含む指令情報が前記スレーブ制御装置に出力されることによって連携して動作可能とされており、
前記プラズマ処理システムは、前記マスタ制御装置のみが前記制御装置の間で共用可能な共用装置の少なくとも一つを有し、
前記マスタ制御装置が各々の前記スレーブ制御装置に対して、前記スレーブ制御装置を識別する識別情報を設定するための複数の信号を出力する第一工程と、
前記スレーブ制御装置が前記マスタ制御装置から出力された複数の前記信号を入力し、複数の前記信号の各々の状態を表す信号状態を判別し、判別した前記信号状態に対応する前記識別情報を設定する第二工程と、
を備える、プラズマ処理システムの情報設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、プラズマ処理システム及びプラズマ処理システムの情報設定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の装置の接続に関し、例えば、特許文献1-3には、複数の装置においてマスタ/スレーブの関係を形成することが開示されている。特許文献1には、複数のインバータにおいてマスタ/スレーブの関係を形成することが開示されている。又、特許文献2には、複数のマイクロコントローラにおいてマスタ/スレーブの関係を形成することが開示されている。又、特許文献3には、複数の電源装置においてマスタ/スレーブの関係を形成することが開示されている。このように、マスタ/スレーブの関係を形成した場合、マスタの操作に対して全てのスレーブを同様に動作させたり、マスタの操作に対して特定のスレーブを選択的に動作させたりできる。従って、マスタ/スレーブの関係を形成することは、作業者による個々の機器の操作を省略できて作業負荷を低減できるという点で極めて有望である。
【0003】
又、特許文献4には、複数のプラズマトーチを有するプラズマ切断機が開示されている。この従来のプラズマ切断機においては、複数のプラズマトーチを独立して非同期で動作できるように、プラズマ電源装置から分配器を通じて出力電流が分配されると共に、転か回路が各々のプラズマトーチに割り当てられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-1350号公報
【特許文献2】特表2019-513561号公報
【特許文献3】特開2009-284734号公報
【特許文献4】特開2008-105043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のようにマスタ/スレーブの関係を形成する場合においては、マスタとなる装置もスレーブとなる装置も同一の構成である。即ち、従来のようにマスタ/スレーブの関係を形成する場合においては、全ての装置等が同一の部品、例えば、装置間で共用可能な共用装置を備えており、どの装置であってもマスタ又はスレーブになることができるようになっている。ところが、上述したように、マスタ/スレーブの関係が形成された場合には、マスタを操作することによってスレーブを動作させることができる。従って、特に、スレーブに設けられた共用装置については、利用される頻度が低いにもかかわらず、共用装置の分が高価になると共に装置自体が複雑化且つ大型化する虞がある。
【0006】
本明細書は、マスタ/スレーブの関係を形成する制御装置の簡素化が可能なプラズマ処理システム及びプラズマ処理システムの情報設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、複数のプラズマ発生装置と、各々のプラズマ発生装置の動作を制御する複数の制御装置と、を備え、複数の制御装置のうちの一つをマスタ制御装置、且つ、マスタ制御装置以外の制御装置をスレーブ制御装置とし、複数のプラズマ発生装置の各々は、ネットワークを介してマスタ制御装置からのプラズマ発生装置の動作に関する動作指令情報を含む指令情報がスレーブ制御装置に出力されることによって連携して動作可能とされており、マスタ制御装置のみが制御装置の間で共用可能な共用装置の少なくとも一つを有する、プラズマ処理システムを開示する。
【0008】
又、本明細書は、複数のプラズマ発生装置と、各々のプラズマ発生装置の動作を制御する複数の制御装置と、を備えるプラズマ処理システムに適用され、、複数の制御装置のうちの一つをマスタ制御装置、且つ、マスタ制御装置以外の制御装置をスレーブ制御装置とし、複数のプラズマ発生装置の各々は、ネットワークを介してマスタ制御装置からのプラズマ発生装置の動作に関する動作指令情報を含む指令情報がスレーブ制御装置に出力されることによって連携して動作可能とされており、プラズマ処理システムは、マスタ制御装置のみが制御装置の間で共用可能な共用装置の少なくとも一つを有し、マスタ制御装置が各々のスレーブ制御装置に対して、スレーブ制御装置を識別する識別情報を設定するための複数の信号を出力する第一工程と、スレーブ制御装置がマスタ制御装置から出力された複数の信号を入力し、複数の信号の各々の状態を表す信号状態を判別し、判別した信号状態に対応する識別情報を設定する第二工程と、を備える、プラズマ処理システムの情報設定方法を開示する。
【0009】
本明細書では、出願当初の請求項8において、「請求項1又は2に記載のプラズマ処理システム」を「請求項1-7の何れか一項に記載のプラズマ処理システム」に変更した技術的思想も開示されている。又、本明細書では、出願当初の請求項9において、「請求項1に記載のプラズマ処理システム」を「請求項1-8の何れか一項に記載のプラズマ処理システム」に変更した技術的思想も開示されている。又、本明細書では、出願当初の請求項10において、「請求項1に記載のプラズマ処理システム」を「請求項1-9の何れか一項に記載のプラズマ処理システム」に変更した技術的思想も開示されている。更に、本明細書では、出願当初の請求項11において、「請求項1又は2に記載のプラズマ処理システム」を「請求項1-10の何れか一項に記載のプラズマ処理システム」に変更した技術的思想も開示されている。
【発明の効果】
【0010】
これらによれば、マスタ/スレーブの関係を形成する制御装置の簡素化が可能であり、制御装置、ひいては、プラズマ処理システムの製造コストを低減することができる。プラズマ処理システムの情報設定方法についても、同様である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】プラズマ処理システムの全体構成を説明するための概略図である。
図2】プラズマ発生装置の構成を説明するための概略図である。
図3図1のマスタ制御装置の構成を説明するための機能ブロック図である。
図4図1のスレーブ制御装置の構成を説明するための機能ブロック図である。
図5】識別情報の設定を説明するための表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、プラズマ処理システムについて、図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、プラズマ処理システムを形成するプラズマ発生装置が大気圧プラズマ発生装置である場合を例示して説明する。
【0013】
1.プラズマ処理システム1の概要
プラズマ処理システム1は、図1に示すように、複数のプラズマ発生装置10と、各々のプラズマ発生装置10に設けられた制御装置100とを備える。各々のプラズマ発生装置10は、大気圧下でプラズマを発生させる大気圧プラズマ発生装置である。各々の制御装置100は、対応する各々のプラズマ発生装置10の動作を統括的に制御する。そして、各々の制御装置100は、ネットワークNを介して、互いに通信可能に接続されている。
【0014】
ここで、プラズマ処理システム1を形成する複数の制御装置100は、1つの制御装置100を「マスタ」とし、他の制御装置100を「スレーブ」とするマスタ/スレーブの関係を形成する。このため、本実施形態の説明において、図1に示すように、ネットワークNに接続された複数の制御装置100のうちの1つの制御装置100を「マスタ制御装置100M」とする。又、本実施形態の説明において、ネットワークNに接続された複数の制御装置100のうちの他の制御装置100を「スレーブ制御装置100S」とする。そして、マスタ制御装置100Mと、各々のスレーブ制御装置100Sとは、それぞれ、接続線Lcによって直接的に接続されている。
【0015】
1-1.プラズマ発生装置10の全体構成
プラズマ発生装置10は、図2に示すように、大気圧下でプラズマを発生させるプラズマヘッド11を備えている。又、プラズマ発生装置10は、電源装置12と、ガス供給装置13と、を備えている。プラズマ発生装置10は、電源装置12から電源ケーブル14を介してプラズマヘッド11に電力を供給し、ガス供給装置13からガス配管15を介してプラズマ化するプロセスガスを供給する。これにより、プラズマ発生装置10は、プラズマヘッド11から生成したプラズマガスを照射することができる。
【0016】
プラズマヘッド11は、産業用ロボット16のロボットアーム16A,16Bの先端に取り付けられている。ここで、電源ケーブル14及びガス配管15は、ロボットアーム16A,16Bに沿って取り付けられている。ロボットアーム16A,16Bは、一方向に連結されて、多関節ロボットを形成する。そして、産業用ロボット16は、ロボットアーム16A,16Bを駆動してプラズマヘッド11を移動させ、ワーク台Dが支持するワークWにプラズマガスを照射する作業を行う。尚、照射されたプラズマガスは、例えば、ワークWの表面を疎水性から親水性へと改質する改質処理を行うことができる。
【0017】
電源装置12は、例えば、商用電源(図示省略)からプラズマヘッド11の電極(図示省略)に供給する電力を生成する。そして、電源装置12は、電源ケーブル14を介して、生成した電力をプラズマヘッド11の電極に供給する。ガス供給装置13は、窒素等の不活性ガスと酸素等の活性ガスとの少なくとも一方を含む、例えば、空気等をプロセスガスとして圧送して供給する。このため、ガス供給装置13は、プロセスガスを貯留するタンク(図示省略)を備えている。
【0018】
制御装置100は、CPU、ROM、RAM、各種インターフェース等を有する、所謂、シングルボードコンピュータを備えるものである。本実施形態においては、複数(4つ)の制御装置100のうちの1つが予めマスタ制御装置100Mとして設定されている。そして、残り(3つ)の制御装置100がスレーブ制御装置100Sとして設定される。
【0019】
マスタ制御装置100Mは、ネットワークN及び接続線Lc(より詳しくは、後述する信号線Lcs)に接続可能であり、且つ、後述する共用装置Cである入力装置101、表示装置102及び緊急停止ボタン103が接続可能である。このため、マスタ制御装置100に備えられたシングルボードコンピュータが有する各種インターフェースは、ネットワークNに接続して指令情報を送受信する情報送受信部としての通信インターフェースItと、接続線Lc(より詳しくは、後述する信号線Lcs)に接続して信号を送受信する信号送受信部としての信号インターフェースIsとを備える。又、制御装置100のうちの少なくともマスタ制御装置100Mは、各種インターフェースは、共用装置Cと接続する共用装置接続部としての接続インターフェースIcを備える。
【0020】
スレーブ制御装置100Sも、ネットワークN及び接続線Lcに接続可能である。但し、本実施形態においては、スレーブ制御装置100Sには、共用装置Cは接続されない。このため、スレーブ制御装置100に備えられたシングルボードコンピュータが有する各種インターフェースは、通信インターフェースItと、信号インターフェースIsとを備える。尚、必要に応じて、スレーブ制御装置100Sの各種インターフェースに、接続インターフェースIcを設けることも可能である。
【0021】
マスタ制御装置100Mは、後述するように、信号線Lcsを介してスレーブ制御装置100Sに対して識別情報IであるIPアドレスを設定するための信号を出力する。これにより、スレーブ制御装置100Sは、入力した信号の状態に応じて自身のIPアドレスを設定する。尚、マスタ制御装置100Mにおいては、予め自身のIPアドレスが設定されている。
【0022】
そして、マスタ制御装置100M及びスレーブ制御装置100Sは、IPアドレスを設定することによってネットワークNに接続された状態で互いに通信可能となる。これにより、マスタ制御装置100Mは、後述するように、ネットワークNを介して、例えば、作業者によって入力された指令情報としての動作指令を表す動作指令情報Omをスレーブ制御装置100Sに出力する。従って、マスタ制御装置100M及びスレーブ制御装置100Sは、連携して(或いは、協働して)各々が対応するプラズマ発生装置10の動作を統括的に制御する。
【0023】
ここで、指令情報には、プラズマ発生装置10を動作させるオン信号又はプラズマ発生装置10を停止させるオフ信号が含まれる。具体的に、本実施形態においては、動作指令情報Omに、プラズマ発生装置10を動作させるオン信号又はプラズマ発生装置10を停止させるオフ信号が含まれる。
【0024】
そして、マスタ制御装置100M及びスレーブ制御装置100Sが動作を制御する全てのプラズマ発生装置10について、マスタ制御装置100M及びスレーブ制御装置100Sは、動作指令情報Omに含まれるオン信号に応じて全てのプラズマ発生装置10を動作させることができる。若しくは、マスタ制御装置100M及びスレーブ制御装置100Sは、動作指令情報Omに含まれるオフ信号に応じて全てのプラズマ発生装置10を停止させることができる。
【0025】
又は、マスタ制御装置100M及びスレーブ制御装置100Sの各々が動作を制御するプラズマ発生装置10について、マスタ制御装置100M及びスレーブ制御装置100Sの各々は、動作指令情報Omに含まれるオン信号に応じてプラズマ発生装置10を個別に動作させることができる。若しくは、マスタ制御装置100M及びスレーブ制御装置100Sの各々は、動作指令情報Omに含まれるオフ信号に応じて各々のプラズマ発生装置10を個別に停止させることができる。
【0026】
1-2.マスタ制御装置100M
複数のプラズマ発生装置10の各々に設けられる制御装置100については、一般に、製造作業の容易性を勘案して、全て同一の構成にして製造される場合がある。ところで、複数の制御装置100について、マスタ/スレーブの関係が形成される場合、作業者は、主にマスタ制御装置100Mを操作してマスタ制御装置100Mに制御されるプラズマ発生装置10を動作させると共に、マスタ制御装置100Mを介して各々のスレーブ制御装置100Sを操作してそれぞれのスレーブ制御装置100Sに制御されるプラズマ発生装置10を動作せることが行われる。
【0027】
従って、複数の制御装置100について、マスタ/スレーブの関係が形成される場合、全ての制御装置100が同一の構成を有する必要がなく、特に、制御装置100において共用可能な共用装置の少なくとも一つ、例えば、入力装置や表示装置等は、マスタ制御装置100Mにのみ別途設けられていれば良い。換言すれば、プラズマ発生装置10の動作を制御するコンピュータ装置として必要最低限の共通の構成を有するシングルボードコンピュータを用いて制御装置100を製造する。そして、プラズマ処理システム1を形成する複数の制御装置100(シングルボードコンピュータ)のうちの1つをマスタ制御装置100Mとした場合、マスタ制御装置100Mに対してのみ共用装置の少なくとも一つを設けることにより、プラズマ処理システム1の全体を統括的に制御することができる。
【0028】
そこで、本実施形態においては、マスタ制御装置100Mは、図3に示すように、シングルボードコンピュータを「マスタ」として機能させるために、通信制御部110、指令取得部120、指令出力部130、及び、情報記憶部140を備えている。又、マスタ制御装置100Mには、共用装置Cとして、作業者によって操作される入力装置101、及び、作業者に対して各種情報を表示する表示装置102が接続されている。
【0029】
又、マスタ制御装置100Mには、緊急時に作業者によって操作されて、プラズマ発生装置10の動作を停止させるための緊急停止装置としての緊急停止ボタン103が接続されている。尚、本実施形態においては、緊急停止装置としてボタン操作可能な緊急停止ボタン103を例示する。しかし、停止装置としては、ボタン形式に限られず、例えば、スイッチやレバー、或いは、タッチパネル等種々の形式を採用することが可能である。
【0030】
マスタ制御装置100Mの通信制御部110は、接続線Lcを介して、スレーブ制御装置100Sに識別情報IであるIPアドレスを設定するための第一信号Fs1及び第二信号Fs2を出力する。より詳しく、マスタ制御装置100Mの通信制御部110は、第一信号Fs1の信号状態をHigh状態又はLow状態に切り替えてスレーブ制御装置100Sに出力すると共に、第二信号Fs2の信号状態をHigh状態又はLow状態に切り替えてスレーブ制御装置100Sに出力する。即ち、通信制御部110は、後述するように、各々のスレーブ制御装置100Sが設定すべき識別情報IであるIPアドレスを表すように、第一信号Fs1の信号状態と第二信号Fs2の信号状態とを組み合わせる。
【0031】
尚、第一信号Fs1の信号状態及び第二信号Fs2の信号状態については、High状態又はLow状態に限られず、例えば、High状態又はLow状態の継続時間を変更した状態も含まれる。又、通信制御部110は、第一信号Fs1及び第二信号Fs2を出力することに加えて、後述するように情報記憶部140にIPアドレスを表す情報として予め記憶されているテーブルHを出力することも可能である。
【0032】
これにより、スレーブ制御装置100Sにおいては、受信した(入力した)第一信号Fs1の信号状態及び第二信号Fs2の信号状態に基づいて、自身が設定すべきIPアドレスを確認し、自身によって確認したIPアドレスを設定する。ここで、接続線Lcは、第一信号Fs1及び第二信号Fs2を送受信するための信号線Lcs(図1にて実線により示す)と、マスタ制御装置100Mに設けられた電源(図示省略)からの電力を供給するための電力線Lcp(図1にて破線により示す)とを有する。
【0033】
マスタ制御装置100Mの指令取得部120は、例えば、作業者によって入力装置101を介して入力されたプラズマ発生装置10の動作に関する動作指令を表す動作指令情報Omを取得する。ここで、動作指令情報Omは、プラズマ発生装置10の動作に関する動作指令として、プラズマ発生装置10に設けられた各種センサによって検出された検出値や、動作の設定に関する各種パラメータ等を例示することができる。尚、マスタ制御装置100Mの指令取得部120については、直接的に接続された入力装置101から入力された動作指令情報Omに限られず、例えば、別途記憶媒体に予め記憶された動作指令情報Om、或いは、ネットワークNを介して別途装置から供給された動作指令情報Omを取得することが可能である。
【0034】
又、マスタ制御装置100Mの指令取得部120は、例えば、作業者によって緊急停止ボタン103が操作された際に、マスタ制御装置100Mによって制御されるプラズマ発生装置10及びスレーブ制御装置100Sによって制御されるプラズマ発生装置10、即ち、プラズマ処理システム1の全てのプラズマ発生装置10の動作を一斉に緊急停止させるための緊急停止情報Osを取得する。ここで、上述したように、指令情報には、動作しているプラズマ発生装置10を停止させるオフ信号を含むことができるため、緊急停止情報Osをオフ信号としたり、緊急停止情報Osにオフ信号を含ませたりとすることも可能である。尚、後述するように、各々のスレーブ制御装置100Sに緊急停止ボタン103が設けられる場合には、各々のプラズマ発生装置10の動作を個別に停止させることができる。
【0035】
マスタ制御装置100Mの指令出力部130は、指令取得部120によって取得された動作指令情報Om及び緊急停止情報Osを、ネットワークNを介して、スレーブ制御装置100Sに出力する。ここで、指令情報としての動作指令情報Om及び緊急停止情報Osは、図1に示すように、例えば、IPアドレスが記載されるヘッダ及び動作指令情報Om及び緊急停止情報Osが記載されるデータフィールドを有するフレームFとして出力される。つまり、マスタ制御装置100Mの指令出力部130から出力される動作指令情報Om及び緊急停止情報Os即ちフレームFは、スレーブ制御装置100Sを特定した状態でネットワークNを介して供給される。このため、スレーブ制御装置100Sは、後述するように、自身でIPアドレスを設定した後のコンフィグレーション処理により、ネットワークNに対して通信可能に接続される必要がある。
【0036】
マスタ制御装置100Mの情報記憶部140は、スレーブ制御装置100Sが設定すべきIPアドレスを表す情報としてテーブルH(図5を参照)を予め記憶している。又、情報記憶部140は、指令取得部120によって取得された動作指令情報Om及び緊急停止情報Osを一時的に記憶する。
【0037】
1-3.スレーブ制御装置100S
スレーブ制御装置100Sは、図4に示すように、シングルボードコンピュータを「スレーブ」として機能させるために、通信制御部150、識別情報設定部160、指令取得部170、指令出力部180、及び、情報記憶部190を備えている。尚、本実施形態においては、上述したように、マスタ制御装置100Mにのみ緊急停止ボタン103を設ける場合を例示する。しかし、各々のスレーブ制御装置100Sのそれぞれに緊急停止ボタン103を設けることも可能である。
【0038】
スレーブ制御装置100Sの通信制御部150は、接続線Lcを介して、マスタ制御装置100Mの通信制御部110から出力された第一信号Fs1及び第二信号Fs2を入力する。即ち、通信制御部150は、通信制御部110によって信号状態がHigh状態又はLow状態に切り替えられた第一信号Fs1及び第二信号Fs2を入力する。そして、通信制御部150は、入力した第一信号Fs1及び第二信号Fs2を識別情報設定部160に出力する。
【0039】
識別情報設定部160は、通信制御部150が入力した第一信号Fs1及び第二信号Fs2の信号状態、換言すれば、マスタ制御装置100Mの通信制御部110によって切り替えられた第一信号Fs1及び第二信号Fs2の信号状態を判別し、信号状態に対応する識別情報IであるIPアドレスを設定する。このため、識別情報設定部160は、信号状態判別部161と、対応判定部162とを備えている。
【0040】
信号状態判別部161は、通信制御部150から取得した第一信号Fs1の信号状態及び第二信号Fs2の信号状態を判別する。即ち、信号状態判別部161は、第一信号Fs1の信号状態がHigh状態又はLow状態であるかを判別すると共に、第二信号Fs2の信号状態がHigh状態又はLow状態であるかを判別する。尚、信号状態判別部161は、第一信号Fs1及び第二信号Fs2の信号状態として、High状態又はLow状態を判別することに代えて又は加えて、例えば、High状態又はLow状態の継続時間を判別したり、所定時間内におけるHigh状態及びLow状態の繰り返し回数等を判別したりすることができる。そして、信号状態判別部161は、判別した第一信号Fs1及び第二信号Fs2の信号状態を対応判定部162に出力する。
【0041】
対応判定部162は、信号状態判別部161によって判別された第一信号Fs1及び第二信号Fs2の信号状態に対応する識別情報IであるIPアドレスを判定する。対応判定部162は、例えば、情報記憶部190に予め記憶されている、或いは、マスタ制御装置100Mから供給された図5に示すテーブルHを参照し、テーブルHに表された第一信号Fs1及び第二信号Fs2の信号状態に対応するIPアドレスを決定する。そして、対応判定部162は、決定したIPアドレスを、スレーブ制御装置100S自身のIPアドレスとして設定する。これにより、第一信号Fs1及び第二信号Fs2を入力したスレーブ制御装置100Sにおいては、自身により、ネットワークNにおいて識別されるIPアドレスを設定する。
【0042】
スレーブ制御装置100Sの指令取得部170は、マスタ制御装置100Mの指令出力部130からネットワークNを介して出力された動作指令情報Om及び緊急停止情報Osを取得する。尚、指令取得部170は、動作指令情報Om及び緊急停止情報Osが記載されてネットワークN上に供給されたフレームFにおけるヘッダを参照し、自身のスレーブ制御装置100S宛てに供給されたフレームF即ち指令情報としての動作指令情報Om及び緊急停止情報Osを取得する。
【0043】
スレーブ制御装置100Sの指令出力部180は、例えば、自身が制御しているプラズマ発生装置10の動作状態やプラズマガスを照射したワークWの改質処理の程度、工程の下流側におけるワークWに対する追加処理等の動作指令情報Omを、マスタ制御装置100Mや他のスレーブ制御装置100Sに出力する。或いは、スレーブ制御装置100Sに緊急停止ボタン103が設けられている場合において、緊急停止ボタン103が操作された際、マスタ制御装置100M及び他のスレーブ制御装置100Sに緊急停止情報Osを出力する。尚、スレーブ制御装置100Sの指令出力部180については、必要に応じて、省略することが可能である。
【0044】
スレーブ制御装置100Sの情報記憶部190は、例えば、マスタ制御装置100Mと接続線Lcを介して直接的に接続された際に供給された、或いは、予め与えられている図5に示すテーブルHを記憶する。又、情報記憶部190は、指令取得部170によって取得された動作指令情報Om及び緊急停止情報Osを一時的に記憶する。尚、スレーブ制御装置100Sの情報記憶部190についても、必要に応じて、省略することが可能である。
【0045】
1-4.スレーブ制御装置100S自身によるIPアドレスの設定(プラズマ処理システムの情報設定方法)
上述したように、プラズマ処理システム1を形成する複数の制御装置100については、1つの制御装置100をマスタ制御装置100Mとして設定し、他の制御装置100をスレーブ制御装置100Sとして設定する、マスタ/スレーブの関係が形成される。そして、マスタ制御装置100M及び複数のスレーブ制御装置100Sは、ネットワークNに接続され、特に、マスタ制御装置100Mから出力される自身宛てのフレームF(動作指令情報Om及び緊急停止情報Os)をスレーブ制御装置100Sが取得する。
【0046】
ここで、本実施形態においては、ネットワークNとして、例えば、イーサネット(登録商標)に準拠した通信方式を用いた通信により各種の情報伝送を行う産業用イーサネットを適用した場合を例示する。この場合、マスタ制御装置100M(指令出力部130)は、ネットワークNを介して、各々のスレーブ制御装置100S(指令取得部170)と定周期で通信を行う。尚、ネットワークNにおける通信は、マスタ制御装置100Mの指令出力部130から送信されたフレームFが全てのスレーブ制御装置100Sを通過すると共に、フレームFが再び全てのスレーブ制御装置100Sを通過してマスタ制御装置100Mに戻される処理を一周期とする。
【0047】
このように、ネットワークNにおいて通信を行うためには、マスタ制御装置100Mを含め、各々のスレーブ制御装置100Sは、ネットワークN上にて自身を識別するためのIPアドレスを設定する必要がある。そこで、プラズマ処理システム1において予め指定されているマスタ制御装置100Mを除き、ネットワークNにおいて通信を行うスレーブ制御装置100Sは自身でIPアドレスを設定する。以下、このIPアドレスを設定する情報設定方法について説明する。
【0048】
例えば、ネットワークNが構築される前、或いは、構築されたネットワークNに新たなに参加する際には、IPアドレスによって各々の制御装置100が識別される必要がある。このため、マスタ制御装置100Mは、接続線Lcの信号線Lcsを介して制御装置100即ちスレーブ制御装置100Sが接続された場合、通信制御部110が第一信号Fs1及び第二信号Fs2を接続されたスレーブ制御装置100Sに出力する(第一工程)。この場合、通信制御部110は、過去に設定がなされていないIPアドレスに対応するように、第一信号Fs1の信号状態及び第二信号Fs2の信号状態を切り替える。尚、通信制御部110は、例えば、接続線Lcに接続された後(例えば、電力線Lcpを介して電力の供給が開始された後)に、接続されたスレーブ制御装置100Sに第一信号Fs1及び第二信号Fs2を出力する。
【0049】
スレーブ制御装置100Sにおいては、通信制御部150がマスタ制御装置100Mの通信制御部110から出力された第一信号Fs1及び第二信号Fs2を取得し、識別情報設定部160に出力する。そして、上述したように、識別情報設定部160は、信号状態判別部161が通信制御部150から供給された第一信号Fs1及び第二信号Fs2の各々の信号状態を判別し、対応判定部162が信号状態判別部161によって判別された信号状態についてテーブルHを参照して各々の信号状態に対応するIPアドレスを決定する(第二工程)。
【0050】
具体的に、プラズマ処理システム1において、1つのマスタ制御装置100Mが設定されると共に、3つのスレーブ制御装置100Sが設けられる場合を想定して説明する。この場合、マスタ制御装置100Mについては、例えば、「192.168.1.1」となるIPアドレスが予め割り当てられているとする。従って、この場合、マスタ制御装置100Mの通信制御部110は、接続線Lcの信号線Lcsを介してスレーブ制御装置100Sが接続された際には、「192.168.1.1」以外のIPアドレスを割り当てる。
【0051】
例えば、マスタ制御装置100Mの通信制御部110は、1つ目のスレーブ制御装置100Sに「192.168.1.2」となるIPアドレスを設定させる。この場合、通信制御部110は、信号線Lcsを介して、第一信号Fs1をHigh状態として供給すると共に、第二信号Fs2をLow状態として供給する(第一工程)。
【0052】
スレーブ制御装置100Sの通信制御部150は、信号線Lcsを介して、マスタ制御装置100Mの通信制御部110から供給された、High状態の第一信号Fs1及びLow状態の第二信号Fs2を入力する。そして、1つ目のスレーブ制御装置100Sの識別情報設定部160は、図5に示すように、例えば、情報記憶部190に予め記憶しているテーブルHを参照する。これにより、1つ目のスレーブ制御装置100S(より詳しくは、識別情報設定部160の対応判定部162)は、第一信号Fs1がHigh状態且つ第二信号Fs2がLow状態に対応する「192.168.1.2」を、ネットワークN上において自身を識別するIPアドレスとして決定して設定する(第二工程)。
【0053】
又、例えば、マスタ制御装置100Mの通信制御部110は、2つ目のスレーブ制御装置100Sに「192.168.1.3」となるIPアドレスを設定させる。この場合、通信制御部110は、信号線Lcsを介して、第一信号Fs1をLow状態として供給すると共に、第二信号Fs2をHigh状態として供給する(第一工程)。
【0054】
2つ目のスレーブ制御装置100Sの通信制御部150は、信号線Lcsを介して、マスタ制御装置100Mの通信制御部110から供給された、Low状態の第一信号Fs1及びHigh状態の第二信号Fs2を入力する。そして、2つ目のスレーブ制御装置100S(より詳しくは、識別情報設定部160の対応判定部162)は、テーブルHを参照し、第一信号Fs1がLow状態且つ第二信号Fs2がHigh状態に対応する「192.168.1.3」を、ネットワークN上において自身を識別するIPアドレスとして決定して設定する(第二工程)。
【0055】
更に、例えば、マスタ制御装置100Mの通信制御部110は、3つ目のスレーブ制御装置100Sに「192.168.1.4」となるIPアドレスを設定させる。この場合、通信制御部110は、信号線Lcsを介して、第一信号Fs1をLow状態として供給すると共に、第二信号Fs2をLow状態として供給する(第一工程)。
【0056】
3つ目のスレーブ制御装置100Sの通信制御部150は、信号線Lcsを介して、マスタ制御装置100Mの通信制御部110から供給された、Low状態の第一信号Fs1及びLow状態の第二信号Fs2を入力する。そして、3つ目のスレーブ制御装置100S(より詳しくは、識別情報設定部160の対応判定部162)は、テーブルHを参照し、第一信号Fs1がLow状態且つ第二信号Fs2がLow状態に対応する「192.168.1.4」を、ネットワークN上において自身を識別するIPアドレスとして決定して設定する(第二工程)。
【0057】
このように、プラズマ処理システム1を形成する複数のスレーブ制御装置100Sは、接続線Lcを介してマスタ制御装置100Mに接続されると、マスタ制御装置100Mの通信制御部110から出力された第一信号Fs1及び第二信号Fs2を入力することができる。そして、第一信号Fs1及び第二信号Fs2を入力したスレーブ制御装置100Sは、第一信号Fs1及び第二信号Fs2の各々の信号状態を判別し、自身により、ネットワークN上で識別するための識別情報IとしてのIPアドレスを自動的に設定することができる。そして、このように、マスタ制御装置100M及びスレーブ制御装置100SがIPアドレスを設定することにより、ネットワークNを介した通信により、動作指令情報Om及び緊急停止情報Osを取得することができる。
【0058】
1-5.ネットワークNを介した動作指令情報Om及び緊急停止情報Os(フレームF)の通信
上述したように、マスタ制御装置100Mは、上述したように、識別情報IとしてのIPアドレスを設定した複数のスレーブ制御装置100Sとの通信において、フレームFを送受信する。このようなフレームFを用いた通信を行うネットワークNにおいて、マスタ制御装置100Mの通信制御部110は、指令出力部130と協働して、フレームFの送受信可能となるようにコンフィグレーション処理の実行を各々のスレーブ制御装置100Sに指令する。コンフィグレーション処理の実行により、スレーブ制御装置100Sは、動作指令情報Om及び緊急停止情報Osが記載されるデータフィールドのうち自己に割り当てられたデータ区画を割り当てられる。
【0059】
ここで、コンフィグレーション処理は、通常は、各々のスレーブ制御装置100Sが通信可能に接続されて、即ち、IPアドレスを設定してネットワークNが構築された場合に実行される。その他に、コンフィグレーション処理は、ネットワークNへの加入要求をするスレーブ制御装置100Sが検出された場合(例えば、電源がオンされた場合)や、一部のスレーブ制御装置100SがネットワークNから除外された場合(例えば、電源がオフされた場合)等に、必要に応じて実行される。
【0060】
ところで、各々の制御装置100(マスタ制御装置100M及び各々のスレーブ制御装置100S)は、入力された動作指令情報Om及び緊急停止情報Osに基づいて、制御するプラズマ発生装置10のプラズマ発生処理における制御内容等を決定する。これにより、各々の制御装置100は、例えば、プラズマヘッド11にプラズマガスを照射するように指令したり、産業用ロボット16に制御プログラムに応じてプラズマガスの照射範囲内にてプラズマヘッド11を移動するように指令したり、或いは、プラズマ発生装置10の動作を停止するように指令したりする。このため、プラズマ発生装置10の動作中においては、各々の制御装置100が取得した動作指令情報Om及び緊急停止情報Osを反映させた動作が必要となり、通信にリアルタイム性が要求される。
【0061】
ここで、ネットワークNにおける複数の制御装置100(マスタ制御装置100M及び各々のスレーブ制御装置100S)は、アクティブ状態とパッシブ状態とを切り換え可能に構成される。ここで、制御装置100の「アクティブ状態」とは、受信したフレームFの通過を許容し、且つフレームFへの書き込みを許容された状態をいう。つまり、アクティブ状態の制御装置100は、フレームFを通過させる際に、フレームFにおけるデータフィールドのうち自己に割り当てられたデータ区画にデータを書き込みすることを許容される。
【0062】
又、制御装置100の「パッシブ状態」とは、ネットワークNに加入した状態であり、且つ受信したフレームFの通過を許容しつつフレームFへの書き込みを禁止された状態をいう。つまり、パッシブ状態の制御装置100は、自己のデータ区画に対して書き込みを行わない。但し、パッシブ状態の制御装置100は、アクティブ状態の制御装置100と同様にデータの読み取りについては禁止されていない。従って、パッシブ状態の制御装置100は、通過させたフレームFにおけるデータフィールドのうち自己又は他の制御装置100に割り当てられたデータ区画のデータを読み取ることは許容される。
【0063】
上述のように、コンフィグレーション処理が行われ、ネットワークNにおいてアクティブ状態(又は、パッシブ状態)とされた場合、マスタ制御装置100Mは、ネットワークNを介して、スレーブ制御装置100Sに動作指令情報Om及び緊急停止情報Osが記載されたフレームFを送信することができる。つまり、マスタ制御装置100Mは、各々のスレーブ制御装置100Sを指定、即ち、フレームFのヘッダに対象となるスレーブ制御装置100Sに割り当てられたIPアドレスを記載して、フレームFを送信する。これにより、対象となるスレーブ制御装置100Sは、自身に宛てて送信されたフレームFを取得し、動作指令情報Om及び緊急停止情報Osに従ってプラズマ発生装置10の動作を制御する。
【0064】
特に、作業者によってマスタ制御装置100Mに設けられた緊急停止ボタン103が操作された際に、マスタ制御装置100Mは、ネットワークNを介して、リアルタイムに個々のスレーブ制御装置100S又は全てのスレーブ制御装置100Sに緊急停止情報Osを送信することができる。従って、例えば、複数のプラズマ発生装置10によって形成されるプラズマ処理システム1において異常等が発生した場合には、作業者は、一部のプラズマ発生装置10又は全てのプラズマ発生装置10の動作を緊急停止することができる。
【0065】
尚、上述したように、各々のスレーブ制御装置100Sにおいて、それぞれのスレーブ制御装置100Sが緊急停止ボタン103を備えることができる。この場合には、例えば、プラズマ発生装置10において異常が発生すると、異常の発生したプラズマ発生装置10に対応する緊急停止ボタン103が操作される。これにより、作業者は、異常の発生したプラズマ発生装置10の動作を個々に緊急停止することができる。つまり、この場合には、ネットワークNを介してマスタ装置Mmから出力される緊急停止情報Osに依らずに、異常の発生したプラズマ発生装置10の動作を個別に緊急停止することができる。
【0066】
ここで、マスタ制御装置100M及びスレーブ制御装置100Sの各々は、動作指令情報Om(指令情報又は指令情報に含まれる緊急停止情報Os)に含まれるオフ信号に応じて、電源装置12によってプラズマ発生装置10のプラズマヘッド11に供給される電力を遮断することができる。そして、マスタ制御装置100M及びスレーブ制御装置100Sの各々は、動作指令情報Om(指令情報又は指令情報に含まれる緊急停止情報Os)に含まれるオフ信号に応じて、電力の供給を遮断してから予め設定された所定時間の経過後に、ガス供給装置13からプラズマ発生装置10のプラズマヘッド11に供給されてプラズマヘッド11にてプラズマ化されるプロセスガスを遮断することができる。
【0067】
これにより、例えば、電力の供給を遮断して動作しているプラズマ発生装置10を停止させる場合、電力の供給が遮断された後に所定時間が経過するまではプロセスガスの供給を継続することができる。従って、例えば、所定時間が経過するまでに、或いは、所定時間が経過した後であっても、プラズマ発生装置10の動作を再開させる場合には効率的にプラズマガスを生成させることができる。
【0068】
又、マスタ制御装置100M及びスレーブ制御装置100Sの各々は、動作指令情報Om(指令情報)に含まれるオン信号に応じて、プラズマ発生装置10を暖機運転させることができる。例えば、プラズマ発生装置10の動作開始直後においてはプロセスガスのプラズマ化処理が不安定になる可能性が高く、その結果、プラズマガスの生成が不安定になる可能性がある。このため、暖機運転を行わない場合には、通常、プラズマ発生装置10の動作開始直後にはプラズマガスの被処理物への照射を行わない。これに対して、プラズマ発生装置10を暖機運転させた場合には、暖機運転によってプラズマ化処理を安定させることができ、プラズマガスを安定して生成することができる。このため、プラズマ発生装置10を暖機運転させた場合には、被処理物に安定して生成されたプラズマガスを速やかに照射することができる。
【0069】
以上の説明からも理解できるように、プラズマ処理システム1は、プラズマガスを生成して照射するプラズマヘッド11を有する複数のプラズマ発生装置10と、各々のプラズマ発生装置10の動作を制御する複数の制御装置100と、を備え、複数の制御装置100のうちの少なくとも一つがマスタ制御装置100M、且つ、マスタ制御装置100M以外の制御装置100がスレーブ制御装置100Sであり、ネットワークNを介してマスタ制御装置100Mからのプラズマ発生装置10の動作に関する動作指令情報Omを含む指令情報を記載したフレームFがスレーブ制御装置100Sに出力されることによって複数のプラズマ発生装置10の各々が動作可能とされており、マスタ制御装置100Mのみが制御装置100の間で共用可能な共用装置Cを有する。
【0070】
これによれば、マスタ制御装置100Mのみが、プラズマ発生装置10を動作させる際に作業者によって利用される入力装置101や表示装置102等の共用装置Cを備えることができる。換言すれば、スレーブ制御装置100Sには、プラズマ発生装置10を動作させる際に作業者による利用頻度の低い共用装置Cは設けられない。従って、マスタ/スレーブの関係を形成する制御装置100のうち、スレーブ制御装置100Sの簡素化が可能であり、制御装置100、ひいては、プラズマ処理システム1の製造コストを低減することができる。
【0071】
又、制御装置100は、必要最低限の構成を有するシングルボードコンピュータを用いて形成することができる。これにより、プラズマ発生装置10を動作させる際に不要な部品を設ける必要がなく、従って、制御装置100の簡素化が可能であり、製造コストを低減することができる。
【0072】
又、マスタ制御装置100Mに共用装置Cに含まれる緊急停止ボタン103を設け、緊急停止ボタン103が操作された際に、マスタ制御装置100MがネットワークNを介してスレーブ制御装置100Sに緊急停止情報Osを出力することができる。これにより、例えば、プラズマ処理システム1を形成する複数のプラズマ発生装置10において何らかの異常が発生した場合であっても、プラズマ発生装置10を一斉に停止させることができる。
【0073】
ここで、スレーブ制御装置100Sにも、必要に応じて、緊急停止ボタン103を設けることも可能である。この場合には、例えば、異常の発生したプラズマ発生装置10のみの動作を停止させることができる。これにより、例えば、プラズマ処理システム1全体の生産への影響を小さく抑えることができる。
【0074】
2.変形例
上述した実施形態においては、スレーブ制御装置100Sは、ネットワークNを介してマスタ制御装置100Mから供給されるフレームFに記載された動作指令情報Om及び緊急停止情報Osに従って、プラズマ発生装置10の動作を制御するようにした。しかしながら、例えば、スレーブ制御装置100Sは、プラズマ発生装置10に設けられた各種センサによる検出値に基づいて、或いは、ネットワークNを介して他のスレーブ制御装置100Sから取得した指令情報に基づいて、プラズマ発生装置10の動作を制御するようにしても良い。即ち、この場合には、各々のスレーブ制御装置100Sは、独自のコマンド等に従って、プラズマ発生装置10の動作を制御することができる。この場合においても、常に共用装置Cを設けておく必要がなく、上述した実施形態と同様の効果が期待できる。
【0075】
又、上述した実施形態においては、プラズマ処理システム1が3つのスレーブ制御装置100Sを有する場合を例示した。しかしながら、スレーブ制御装置100Sの数については、これに限られず、2つ以下、又は、4つ以上設けることが可能であることは言うまでもない。ここで、スレーブ制御装置100Sが4つ以上となる場合には、マスタ制御装置100Mの通信制御部110は、出力する第一信号Fs1及び第二信号Fs2の信号状態として、例えば、High状態又はLow状態の継続時間を異ならせたり、High状態とLow状態の切替パターンを異ならせたりする。
【0076】
これにより、第一信号Fs1及び第二信号Fs2の信号状態に対応してネットワークN上において識別可能な識別情報IであるIPアドレスの数を増やすことができる。従って、例えば、第一信号Fs1及び第二信号Fs2を受信した4番目以降のスレーブ制御装置100Sは、上述した実施形態と同様に、自身でIPアドレスを決定して設定することができる。
【0077】
更に、上述した実施形態においては、ネットワークNを介して、マスタ制御装置100Mからスレーブ制御装置100Sに対して動作指令情報Om及び緊急停止情報Osが供給される場合を例示した。しかしながら、例えば、プラズマ処理システム1の稼働に伴って状況変化等が生じた場合、図4にて二点鎖線により示すように、スレーブ制御装置100Sの指令出力部180が、生じた状況変化等を動作指令情報Om及び緊急停止情報Osとして、マスタ制御装置100Mや他のスレーブ制御装置100Sに出力することも可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…プラズマ処理システム、10…プラズマ発生装置、11…プラズマヘッド、12…電源装置、13…ガス供給装置、14…電源ケーブル、15…ガス配管、16…産業用ロボット、16A,16B…ロボットアーム、100…制御装置、100M…マスタ制御装置、100S…スレーブ制御装置、101…入力装置、102…表示装置、103…緊急停止ボタン、110…通信制御部、120…指令取得部、130…指令出力部、140…情報記憶部、150…通信制御部、160…識別情報設定部、161…信号状態判別部、162…対応判定部、170…指令取得部、180…指令出力部、190…情報記憶部、C…共用装置、It…通信インターフェース(情報送受信部)、Is…信号インターフェース(信号送受信部)、Ic…接続インターフェース(共用装置接続部)、Fs1…第一信号、Fs2…第二信号、N…ネットワーク、H…テーブル、I…識別情報、Lc…接続線、Lcs…信号線、Lcp…電力線、F…フレーム(指令情報)、Om…動作指令情報、Os…緊急停止情報、W…ワーク、D…ワーク台
図1
図2
図3
図4
図5