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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037284
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】がん治療のための放射線増感剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240312BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142009
(22)【出願日】2022-09-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2021年9月9日 https://jrrs64.jp/programs/にて発表 2021年9月24日 第64回日本放射線影響学会にて発表 2021年12月27日 https://kaken.nii.ac.jp/report/KAKENHI-PROJECT-19K20455/19K204552020hokoku/にて発表 2022年2月7日 https://6th-international-symposium.com/にて発表 2022年2月7日 The 6th International Symposium of the Network-type Joint Usage/Research Center for Radiation Disaster Medical Scienceにて発表 2022年6月16日 https://www.researchsquare.com/article/rs-1731932/v1にて発表 2022年6月17日 ISSCR Annual Meeting 2022 San Franciscoにて発表 2022年6月7日 https://www.researchsquare.com/article/rs-1731932/v1にて発表 2022年4月4日https://www.fmu.ac.jp/kenkyu/html/5656_kydo_knkyu_1_ja.htmlにて発表
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】509013703
【氏名又は名称】公立大学法人福島県立医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098121
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 世津子
(74)【代理人】
【識別番号】100107870
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 健一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 健一
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZC411
(57)【要約】
【課題】 乳がんをはじめとした放射線誘発上皮がんのメカニズムを解明し、がんの治療戦略に役立つ新たな知見をもたらすこと。
【解決手段】ΔNp63αの発現を抑制する物質を含む、がん治療のための放射線増感剤。
【選択図】図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ΔNp63αの発現を抑制する物質を含む、がん治療のための放射線増感剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん治療のための放射線増感剤に関する。
【背景技術】
【0002】
原爆被爆者コホート調査により、乳腺は放射線誘発がんに対して感受性が高い臓器であることがわかった(非特許文献1)。発癌中心である乳腺上皮は基底細胞と内腔細胞から構成される。複数の研究が乳腺の基底細胞の放射線誘発アポトーシスに対する抵抗性を報告している(非特許文献2、3)。しかしその原因は不明であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Preston DL, Ron E, Tokuoka S, Funamoto S, Nishi N, Soda M, et al. Solid cancer incidence in atomic bomb survivors: 1958-1998. Radiat Res. 2007;168:1-64.
【非特許文献2】Chang CH, Zhang M, Rajapakshe K, Coarfa C, Edwards D, Huang S, et al. Mammary stem cells and tumor-initiating cells are more resistant to apoptosis and exhibit increased DNA repair activity in response to DNA damage. Stem Cell Reports. 2015;5:378-91.
【非特許文献3】Kudo KI, Takabatake M, Nagata K, Nishimura Y, Daino K, Iizuka D, et al. Flow cytometry definition of rat mammary epithelial cell populations and their distinct radiation responses. Radiat Res. 2020;194:22-37.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、乳がんをはじめとした放射線誘発上皮がんのメカニズムを解明し、がんの治療戦略に役立つ新たな知見をもたらすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
DNA損傷応答(DDR)は、放射線によるDNA酸化損傷に対して、細胞周期停止やアポトーシスを引き起こすことで細胞を保護する機構である。TP63は腫瘍抑制因子TP53遺伝子ファミリーの一員であり、TP63のスプライシングバリアントであるΔNp63αは、乳腺を含む上皮組織の幹細胞を含む基底層に恒常的に発現し、幹細胞性の維持や組織形成に重要な役割を果たしている。ΔNp63αは、腫瘍抑制タンパク質であるp53による下流遺伝子の転写を抑制することが報告されている。このp53抑制活性は、放射線に曝された上皮幹細胞においてゲノム不安定性を引き起こす可能性があると考えて、本発明者は、放射線誘発 DDR に対する ΔNp63α の抑制効果を解析した。すなわち、放射線応答におけるΔNp63αのp53抑制効果の役割を明らかにするために、ΔNp63αを発現するヒト乳腺上皮細胞(HMEC)を用いてp63-siRNAノックダウン実験を行い、次にヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)を用いてectopic発現実験を実施した。X線照射(4 Gy, 0.7 Gy/min)後、ΔNp63α発現細胞と対照細胞におけるDDR関連遺伝子とタンパク質の発現を、RT-qPCR、ウェスタンブロッティング、フローサイトメトリーで解析した。その結果、照射後のp63-siRNA処理HMEC(sip63)では、BAXとp21のmRNA/protein発現量が有意に増加したが、scramble-siRNA処理HMEC(scr)では、そのような変化は認められなかった。トランスクリプトーム解析の結果、sip63細胞ではscr細胞に比べ、細胞周期関連遺伝子のRNA発現が減少し、プログラム細胞死関連遺伝子の発現が増加した。さらに、フローサイトメトリー解析の結果、sip63細胞ではscr細胞と比較してアポトーシス細胞の増加、5-ethynyl-2´-deoxyuridine (EdU)の取り込み量の減少が見られた。一方、アポトーシスに感受性であるhiPSCにおけるΔNp63αのectopic発現は、いずれも放射線照射後のBAXの発現レベルを低下させ、放射線照射により誘導されるアポトーシス細胞数を有意に減少させた。これらの結果は、ΔNp63αがp53に関連する放射線誘発DDRを抑制し、それによって上皮幹細胞のゲノム不安定性を引き起こす可能性があることを示している。
【0006】
本発明者は、ΔNp63αが放射線抵抗性の原因となることを明らかにした。このことは癌治療への応用につながる。たとえば、肺扁平上皮がんのような90%以上がΔNp63αに陽性であるがんに対し、ΔNp63αノックダウン後に放射線照射およびシスプラチンのようなDNA二本鎖切断を発生させる化学薬剤を投与することにより、細胞増殖活性を下げ、なおかつ癌細胞をアポトーシスに至らせるような効果的な治療が期待できる。特に扁平上皮がんの多くは放射線治療が適用となるが70Gyもの大線量を照射するので正常組織に影響が出やすい。ΔNp63αノックダウン法によって総線量を下げることが期待できる。
【0007】
本発明は、ΔNp63αの発現を抑制する物質を含む、がん治療のための放射線増感剤を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ΔNp63αの発現減少によって、細胞の抑制されていたDDRを復旧させることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1-1】HMECを用いたΔNp63αノックダウン実験。(a) ヒトp53とp63のアイソフォームのドメイン構造。p63のアイソフォームはTAp63とΔNp63に大別され、図はそれらのトランスアクチベーション(TA)、DNA結合、オリゴマー化、およびSAMドメインを強調している。(b) 図1-1aに示した(1)-(4)の位置と一致するmRNA発現。(c) p63 siRNA (sip63) またはスクランブルsiRNA (scr) 処理したHMECにおけるΔNp63αおよびサイトケラチン14 (CK14) タンパク質の時間依存的発現変動。矢印はΔNp63αタンパク質バンドを示す。(d) sip63で処理し、ΔNp63抗体およびCK14抗体で染色したHMECの代表的な免疫蛍光染色(IF)の画像。赤はΔNp63を、緑はCK14を示す(スケールバーは10μm)。(e, f) sip63処理HMECの全細胞抽出液に含まれるΔNp63 mRNA(e)およびΔNp63αタンパク質(f)の時間的変化。(g) sip63処理HMECにおけるDNA損傷応答(DDR)マーカーmRNAの発現の測定。(h) BAXおよびp21タンパク質のウェスタンブロッティング解析。(i) フローサイトメトリー(FCM)によるEdU陽性頻度の評価。(j) FCMで検出されたアポトーシス細胞の頻度。mRNA発現データのすべての値は、内部コントロールGAPDHの発現レベルに対してスケーリングされた。データは少なくとも3つの独立したアッセイの平均とSEを表す。*P < 0.05, **P < 0.01 by Student's t test。
図1-2】(a) HMECの明視野およびIF画像。抗p63(4A4)抗体は、p63のすべてのアイソフォームを検出する。(b) 乳腺上皮細胞の主要マーカーであるCD49fおよびCD24抗体で染色したHMECsとラット乳腺初代細胞(rMCs)のFCMデータ。図中のLum、Bas、Strは、それぞれ内腔細胞、基底細胞、間質細胞を表す。(c) 図1-1aに示したp63、p63α、ΔNのmRNA発現比。データはsiRNA処理後0-96時間で取得し、scr処理したHMECで正規化した。(d) siRNA処理後96時間におけるHMECのTP53 mRNAの時間的変化。(e) siRNA処理後のFst、Birc5、およびKi67のmRNA発現レベル。データは、少なくとも3つの独立したアッセイの平均値とSEを表す。(f) MTS(プロメガ)を用いて評価したX線照射後48時間のHMECsの細胞生存率。(g) 左パネル:サリドマイド処理後24時間のHMECにおけるΔNp63αタンパク質発現のウェスタンブロッティング分析。GAPDHをローディングコントロールとして使用した。右パネル:RT-qPCRにより測定したCDKN1A mRNAの発現。mRNA発現データのすべての値は、内部コントロールGAPDHの発現レベルに対してスケーリングされた。*P < 0.05, **P < 0.01 by Student's t test。
図1-3】(a) X線照射後sip63処理HMECの細胞周期解析。左図は、EdU対PI(Propidium Iodide)染色のプロットであり、図中の各数値は、それぞれG0/G1期、S期、G2/M期の頻度を表す。右グラフは、各細胞周期のヒストグラム。データは少なくとも3つの独立したアッセイの平均値とSEを表す。*P < 0.05, **P < 0.01 by Student's t test。(b) FCMによって検出されたCC3陽性アポトーシス細胞の頻度(左)、および強度の平均値と中央値(右)。
図2】HMECのRNAトランスクリプトーム解析。(a) 左:X線照射後24時間におけるsiRNA処理HMECの遺伝子発現を示すK-means clustering heatmaps。右:Gene Ontology(GO)生物学的プロセスデータベースに基づく、各クラスタにおけるscr-およびsip63処理群のパスウェイ濃縮解析。クラスタAとBには295と205の遺伝子が含まれ、発現量の多い遺伝子と少ない遺伝子はそれぞれ赤と青で描かれている。(b) X線照射後24時間におけるsiRNA処理HMECに対するBCCC法に基づくバイクラスタリング解析。
図3】HMECにおける放射線誘発DNA損傷に対するGPX2およびCYGB発現の抑制効果。(a) RT-qPCRで測定したGPX2およびCYGB mRNA発現レベル。データは少なくとも3回の独立したアッセイの平均値とSEを表す。(b) ウェスタンブロッティング分析によるHMECにおけるGPX2およびCYGBタンパク質発現の検出。(c) 細胞内のGPX2およびCYGBタンパク質の局在を示す。HMECのマーカーとしてCD49fを使用した(スケールバーは10μm)。(d) 中性コメットアッセイを用いた二本鎖切断(DSB)の定量。左図は、右図のコメットテールから算出した%tail DNAを示す(n = 100)。(e) X線照射後4時間目に核内で観察されたγH2AX fociの測定(n = 50)。左側のパネルは、細胞あたりのγH2AX fociの数を示している。右図はγH2AX fociのIF画像であり、緑、赤、青はそれぞれγH2AX、ΔNp63、DAPIを示す。下の画像では、ΔNp63の代わりにDAPIをカウンター染色色素として用いた。(f) X線照射直後のHMECで発生した活性酸素種(ROS)をFCMで検出した。活性酸素の検出には主要なDCF誘導体の一つであるDCFH-DAを、死細胞の検出にはPIをプローブ色素として使用した。データは少なくとも3回の独立したアッセイの平均値とSEを示す。*P < 0.05, **P < 0.01 by Student's t test。
図4】ΔNp63αを異所性発現させたhiPSC-ΔNp63α(iPS-DN)の放射線応答解析。(a) Dox Tet-off系でΔNp63αを異所的に発現させたiPS-DNにおけるΔNp63αの免疫染色像(スケールバーは20μm)。(b) X線照射後のiPS-DNにおけるDDRマーカーmRNAの発現。すべての値は、内部コントロールGAPDHの発現レベルに対してスケーリングされた。データは3つの独立したアッセイの平均とSEを表す。(c) FCMにより検出された各細胞周期の割合。(d) FCMにより検出されたCleaved Caspase-3陽性を示すアポトーシス細胞の割合。(e) 照射後のiPS-DNに対するウェスタンブロッティング解析。*P < 0.05, **P < 0.01 by Student's t test。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明は、ΔNp63αの発現を抑制する物質を含む、がん治療のための放射線増感剤を提供する。
【0012】
がんの治療方法には、主として、「手術」、「薬物療法」及び「放射線療法」の3種類があり、このうち、放射線療法は、がんの病巣部に放射線を照射して、がん細胞を死滅させる局所療法である。治療用放射線としては、電子線、陽子線、重粒子線、αアルファ線、βベータ線、γガンマ線などが用いられている。放射線治療には、体の外から放射線をあてる外部照射と、体の内側から放射線を照射する内部照射とがある。放射線療法は、単独で行われることもあるが、薬物療法や手術と併用されることもある。放射線療法と併用される薬物としては、DNA二本鎖切断を発生させる化学薬剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチンなど)を例示することができる。がんの治療には、がんの寛解や軽快、進行の遅延や停滞、転移の防止、再発の予防などが包含される。
【0013】
本発明において、ΔNp63αの発現を抑制する物質を放射線療法と併用することにより、放射線に対するがん細胞の感受性を高めることができ、その結果として、総線量を下げることができる。総線量を下げるには、1回あたりの線量を下げてもよいし、放射線照射の回数を減らしてもよい。
【0014】
TP63は1998年にTP53ファミリー遺伝子として発見され、トランスアクティベーション (TransActivation: TA) ドメイン、DNA結合ドメイン、4量体化ドメインにおいてTP53と高い相同性を持つ(Yang A, Kaghad M, Wang Y, Gillett E, Fleming MD, Dotsch V, et al. p63, a p53 homolog at 3q27-29, encodes multiple products with transactivating, death-inducing, and dominant-negative activities. Mol Cell.1998;2:305-16.; Osada M, Ohba M, Kawahara C, Ishioka C, Kanamaru R, Katoh I, et al. Cloning and functional analysis of human p51, which structurally and functionally resembles p53. Nat Med. 1998;4:839-43.)。大別してTAp63とΔNp63の2つのアイソフォームが存在する。TAp63はp53と相同なN末端TAドメインを持ち、ΔNp63はTAドメインが切断されて短くなっていることが特徴であり、その発現は選択的プロモーターに依存する。さらに、これら2つのアイソフォームはそれぞれ、alternative RNA splicingによって生成された異なるC末端を持つα、β、γの3つのアイソフォームを持っている。特に、α型(p63α)は、C末端に付加的な領域を持ち、この領域にはsterile alpha motif(SAM)ドメインが含まれ、タンパク質間相互作用に重要な役割を果たしている(Westfall MD, Mays DJ, Sniezek JC, Pietenpol JA. The Delta Np63 alpha phosphoprotein binds the p21 and 14-3-3 sigma promoters in vivo and has transcriptional repressor activity that is reduced by Hay-Wells syndrome-derived mutations. Mol Cell Biol. 2003;23:2264-76.; Katoh I, Maehata Y, Moriishi K, Hata RI, Kurata SI. C-terminal α domain of p63 binds to p300 to coactivate β-catenin. Neoplasia. 2019;21:494-503.)。TAp63とΔNp63のアイソフォームは相反する機能性を持っている。TAp63はp53のように作用し、DDRにおけるアポトーシスと細胞周期停止を促進する一方、ΔNp63はTAp63のドミナントネガティブレギュレーターとして働く。α型のΔNp63(ΔNp63α)は、全てのアイソフォームの中で最も強力なp53リプレッサーである(Yang A, Kaghad M, Wang Y, Gillett E, Fleming MD, Dotsch V, et al. p63, a p53 homolog at 3q27-29, encodes multiple products with transactivating, death-inducing, and dominant-negative activities. Mol Cell. 1998;2:305-16.; Westfall MD, Mays DJ, Sniezek JC, Pietenpol JA. The Delta Np63 alpha phosphoprotein binds the p21 and 14-3-3 sigma promoters in vivo and has transcriptional repressor activity that is reduced by Hay-Wells syndrome-derived mutations. Mol Cell Biol. 2003;23:2264-76.; Woodstock DL, Sammons MA, Fischer M. p63 and p53: collaborative partners or dueling rivals? Front Cell Dev Biol. 2021;9:701986.)。ΔNp63αは表皮、乳腺、前立腺など上皮組織の基底細胞層に高発現し,幹細胞の維持と細胞の再増殖に重要な役割を果たしている(Yang A, Kaghad M, Wang Y, Gillett E, Fleming MD, Dotsch V, et al. p63, a p53 homolog at 3q27-29, encodes multiple products with transactivating, death-inducing, and dominant-negative activities. Mol Cell. 1998;2:305-16.; Melino G, Memmi -EM, Pelicci PG, Bernassola F. Maintaining epithelial stemness with p63. Sci Signal. 2015;8:re9.)。ΔNp63αのアミノ酸配列及び塩基配列をそれぞれ配列番号1及び2に示す。本発明者は、ΔNp63αが放射線抵抗性の原因となることを明らかにした。このことは癌治療への応用につながる。ΔNp63αの発現を減少させることによって、細胞の抑制されていたDDRを復旧させ、そこに放射線・薬剤等の刺激を加えることで癌細胞等を死滅させることができる。
【0015】
ΔNp63αの発現を抑制する物質としては、ΔNp63αをノックダウンできるsiRNA(例えば、TP63 mRNAのDNA結合ドメインを標的としたsiRNAなど)、サリドマイド及びその誘導体(例えば、ポマリドミド、レナリドミドなど)、DNA脱メチル化剤(例えば、5-aza-2’-deoxycytidine(5-dAza)など)、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(例えば、トリコスタチンA、バルプロ酸、酪酸ナトリウム、ボリノスタット、ニコチンアミドなど)などを例示することができる。
【0016】
siRNAは、3’末端に2塩基のDNAオーバーハング(dTdT)をもつ二本鎖RNAであり、目的遺伝子の発現を特異的に抑制することができる。ΔNp63αをノックダウンできるsiRNAとしては、TP63 mRNAのDNA結合ドメインを標的としたsiRNAを例示することができ、その各鎖の塩基配列を配列番号51又は52に示す。siRNAは公知の化学合成法(例えば、ホスホロアミダイト法)で製造することができる。siRNAなどの核酸を医薬として用いる場合には、ヌクレアーゼ耐性を向上させるために、リン酸部がS化された核酸、糖部の2’位が修飾(2’-F化、2’-OMe化、2’-MOE化など)された核酸、糖部の2’位と4’位を化学的に架橋した核酸(2’, 4’-BNA(別名LNA)、ENA、AmNA、GuNA、scpBNAなど)、糖部をモルフォリノ環に置換した核酸類似体(モルフォリノ核酸)などを用いるとよい。シュードウリジン、N1-メチルシュードウリジンなどの塩基が修飾された核酸を用いてもよい。また、RNAのリボヌクレオチドの一部をデオキシリボヌクレオチドに置換してもよい。
【0017】
サリドマイドは、セレブロン(CRBN)調節因子であり、E3ユビキチンリガーゼの基質受容体に結合し、それによってCRBNとΔNp63αの結合を増強し、ΔNp63αのユビキチン化およびその後に続くプロテアソーム分解に寄与することが報告されている(Asatsuma-Okumura T, Ando H, De Simone M, Yamamoto J, Sato T, Shimizu N, et al. p63 is a cereblon substrate involved in thalidomide teratogenicity. Nat Chem Biol. 2019;15:1077-84.)。サリドマイド及びその誘導体を用いて、ΔNp63αをノックダウンできる。サリドマイド及びその誘導体は公知の方法で製造してもよいし、市販のものを使用してもよい。
【0018】
また、本発明においては、ΔNp63αの発現をTAp63αに転換することができるDNA脱メチル化剤を用いることができる。ΔNp63αはTP63遺伝子から転写されたmRNAが特定の形を取ったときにできるタンパク質である。TP63にはプロモーターがexon1とexon4の2種類あり、ΔNp63αはexon4が転写開始点となる。最近、DNA脱メチル化剤(5-dAza)の投与によって転写開始点をexon4からexon1へスイッチさせ、それによってΔNp63αの発現をp53と類似した機能を持つTAp63αに転換することに成功したことが報告されている(Pokorna Z, Hrabal V, Tichy V, Vojtesek B and Coates PJ (2022) DNA Demethylation Switches Oncogenic DNp63 to Tumor Suppressive TAp63 in Squamous Cell Carcinoma. Front. Oncol. 12:924354)。DNA脱メチル化剤は公知の方法で製造してもよいし、市販のものを使用してもよい。
【0019】
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(トリコスタチンA、バルプロ酸、酪酸ナトリウム、ボリノスタット、ニコチンアミドなど)は、ΔNp63のプロモーターまたはエンハンサー領域でのヒストンアセチル化を変化させることによって転写あるいはΔNp63発現に影響を与える他の遺伝子による制御を変化させることで、ΔNp63の発現量を減少させると考えられている(Pokorna et al. Cellular&Molecular Biology Letters 2022)。しかし、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤はその作用の初期段階でΔNp63発現量を一時的に増加させることがあるので注意が必要である。
【0020】
本発明の放射線増感剤は、医薬として使用することができる。医薬として使用する場合には、ΔNp63αの発現を抑制する物質を単独で、あるいは賦形剤または担体と混合し、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤、シロップ、エアロゾル、坐剤、注射剤等に製剤化するとよい。ΔNp63αの発現を抑制する物質がsiRNAのような核酸である場合には、核酸を脂質で封入したナノ粒子(LNP)や核酸送達に適したリガンド(例えば、GalNAc)と核酸を結合したもの(コンジュゲート)を用いるとよい。賦形剤または担体は、当分野で常套的に使用され、医薬的に許容されるものであればよく、その種類及び組成は適宜変更される。例えば、液状担体としては水、植物油などが用いられる。固体担体としては、乳糖、白糖、ブドウ糖などの糖類、バレイショデンプン、トウモロコシデンプンなどのデンプン、結晶セルロースなどのセルロース誘導体などが使用される。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤、カルボキシメチルセルロースなどの崩壊剤等を添加してもよい。その他、抗酸化剤、着色剤、矯味剤、保存剤等を添加してもよい。
【0021】
本発明の放射線増感剤は、経口、経鼻、直腸、経皮、皮下、静脈内、筋肉内などの種々の経路によって投与できる。
【0022】
ΔNp63αの発現を抑制する物質の製剤中における含量は、製剤の種類により異なるが、通常1~100 重量%、好ましくは50~100 重量%である。例えば、液剤の場合には、ΔNp63αの発現を抑制する物質の製剤中における含量は、1~100重量%が好ましい。カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤の場合は、ΔNp63αの発現を抑制する物質の製剤中における含量は、通常約10~100 重量%、好ましくは50~100 重量%であり、残部は担体である。製剤は、単位投与製剤に製剤化するとよい。
【0023】
本発明の放射線増感剤の投与量、投与の回数及び頻度は、ΔNp63αの発現を抑制する物質の種類、被験者の症状、年齢、体重、投与方法、投与形態などにより異なるが、例えば、ΔNp63αの発現を抑制する物質がΔNp63αをノックダウンできるsiRNA(核酸)である場合には、通常、成人一人当たり、有効成分の量に換算して、100 μg(又はμl)~1 mg(又はml)/kg体重程度、好ましくは0.3 mg(又はml)/kg体重程度を少なくとも3週間に1回、所望の効果が確認できる頻度で投与するとよい。ΔNp63αの発現を抑制する物質がサリドマイド若しくはその誘導体、DNA脱メチル化剤又はヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(低分子化合物)である場合には、通常、成人一人当たり、100 μg(又はμl)~400 mg(又はml)/body程度、好ましくは250 μg(又はμl)~25 mg(又はml)/body程度を少なくとも1日1回、所望の効果が確認できる頻度で投与するとよい。
【0024】
本発明の放射線増感剤の投与は、放射線照射の前、同時又は後のいずれであってもよいが、放射線照射の前が好ましい。
【0025】
治療の対象とするがんは、放射線療法の対象となるがんであればよく、扁平上皮がん、乳がん、前立腺がんなどを例示することができるが、ΔNp63αに陽性であるがんが好ましい。ΔNp63αに陽性であるがんとしては、肺扁平上皮がん、頭頚部扁平上皮がんを含むあらゆる扁平上皮がん、トリプルネガティブ乳がん、前立腺がん、膀胱がんなど)を例示することができる。
【0026】
治療の対象は、ヒト及びヒト以外の哺乳動物(例えば、ラット、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ネコ、ヒト、ウマ、ウシ、水牛、ヤク、ウサギ、マウス、ハムスター、モルモットなど)としうる。
【実施例0027】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
〔実施例1〕
DNA損傷応答(DDR)は、放射線によるDNA酸化損傷に対して、細胞周期停止やアポトーシスを引き起こすことで細胞を保護する機構である。本研究では、放射線誘発 DDR に対する ΔNp63α の抑制効果を解析した。
【0028】
実験方法
材料
ΔNp63αの機能を解析するために、ヒト乳腺上皮細胞(HMEC、Thermo Fisher Scientific)を購入し、gentamicin/amphotericin溶液を添加したHuMEC Ready Medium(1X)(HuMEC、Thermo Fisher Scientific)で培養を行った。DeltaNp63alpha-FLAG(#26979; RRID:Addgene_26979)はAddgene(www.addgene.org)から入手した。pRetro-X-Tight-Pur および pRetro-X-Tet-Off Advanced ベクターはTaKaRa Bio Inc.から入手した。PCRプライマーはMerckから入手した(表1参照)。ノックダウン実験は、TP63 mRNAのDNA結合ドメインを標的としたsiRNAをsiLentFect(Bio-Rad)によるリポフェクションによって細胞内に導入して行った。スクランブルsiRNA(scr)はネガティブコントロールとして用いた。すべてのsiRNA二本鎖はNIPPON GENEにより合成された(表1参照)。細胞のセレクションには、G418 sulfate(Nacalai Tesque)およびピューロマイシン(TaKaRa Bio Inc)を用いた。ドキシサイクリン(Dox、TaKaRa Bio Inc.)は、誘導性Tet-OFFシステムを用いて遺伝子発現を制御するために使用した。
【0029】
2. X線照射
マイクロチューブ、プレート、およびディッシュ内の細胞に対し,X線発生装置MBR-1605R(HITACHI)を用いて,150 kVp, 5 mA, 0.5 mm Al+0.2 mm Cuフィルターの条件で,X線照射した。線量率は0.7Gy/minであった。
【0030】
3. iPSC細胞培養、トランスフェクション、ウイルスパッケージング
ヒト線維芽細胞由来で高い放射線感受性を有するヒト人工多能性幹細胞(hiPSC、HiPS-RIKEN-2A; RRID:CVCL_B512)をRiken Cell Bankから入手した。iMatrix-511(Nippi) を塗布したプレートにhiPSCを播種し、10μM Y27632を含むStemFit AK02N(REPROCELL)で培養した。Dox依存性のΔNp63αを発現するhiPSC-ΔNp63α(iPS-DN)は後述のレトロウイルス感染により生成させた。DeltaNp63α-FLAGプラスミドをBamHI及びNotIで消化し、ΔNp63αコード配列を含むフラグメントをアガロースゲル電気泳動で単離し、FastGene Gel/PCR Extraction Kit(NIPPON Genetics)を用いて精製した。このΔNp63αフラグメントをLigation high reagent(TOYOBO)を用い、tight TREプロモーターを持つpRetro-X-Tight-Purベクター(puromycin耐性)の下流にライゲーションした。レトロウイルスのパッケージングのために、プラスミドをPEImax 40000(Polyscience Inc.)を用いてgp293細胞(RRID:CVCL_E072)にトランスフェクションさせた(Tsuyama N. et al., Oncol Lett 2019; 18:275-282)。ウイルス粒子は、PEG6000とNaClを添加した培養上清を遠心分離することにより回収した。また、pRetro-X-Tet-Off Advancedベクター(Neomycin耐性、TaKaRa Bio Inc.)からウイルス粒子を作製した。次に、ポリブレン(4μg/mL)の存在下でこれらのウイルス懸濁液でhiPSCに共感染させ、1μg/mL ピューロマイシン、200μg/mL G418 sulfate、および10ng/mL Doxを含む培地で培養を行った。14日間培養後、培地からDoxを除去し、Reverse Transcription-quantitative PCR(RT-qPCR)とウェスタンブロッティングの両方でΔNp63αの発現を確認した。その後、5回継代を行い、実験に使用する細胞を得た。
【0031】
4. 免疫細胞化学(ICC)
細胞はディッシュ内に置いた滅菌済みカバースリップ上に播種し、37℃、5% CO2 でインキュベートした。X線照射後、細胞を4%パラホルムアルデヒド(PFA)で室温15分間固定し、PBS中0.2% Triton X-100で30分間透過処理し、非特異的結合をブロックするために5%の正常ヤギ血清でインキュベートした。次に、細胞を一次抗体で一晩インキュベートし、二次抗体とともに1時間インキュベートした。細胞は、DAPIを含むVectashield mounting medium(Vector Laboratories)でマウントした。画像はAxio Imager Z2を用いて撮影した。本研究で使用した一次抗体および二次抗体を表2に示す。
【0032】
5. 中性コメットアッセイによるDSB定量
放射線によって誘発されたDSBを定量化するために、中性コメットアッセイを行った。細胞を0.5%低融点アガロース(Nacalai Tesque)と混合し、0.8%正常融点アガロースゲル(Nacalai Tesque)を塗布した顕微鏡用スライド上に播種した。アガロースゲルを氷上で15分間固化した後、スライドをアルカリ溶解バッファ(1% Triton X-100、10% DMSO、100 mM EDTA、2.5 M NaCl、10 mM Tris-HCl、1% lauryl sarcosine、pH = 10)中に4℃で1時間浸して細胞からのDNA放出とタンパク質除去を行った。その後、スライドをTAEバッファで1時間電気泳動(13-15 V、70-100 mA)し、SYBR Gold Nucleic Acid Gel Stain(Thermo Fisher Scientific)で30分間DNAの染色を行った。1つの細胞で生成したDSB量を計算するために、%tail DNAをComet Assay Software Project ver.1.2.3b2(RRID:SCR_007249; CaspLab)を用いて算出した。
【0033】
6. フローサイトメトリー(FCM)
DNA合成能の測定と細胞周期解析のために,Click-iT Plus EdU Flow Cytometry Assay kit(Thermo Fisher Scientific)を用いてDNAに取り込まれたEdUを染色した。細胞回収前に10 μM EdUを含む培地で30分間処理し,DNA合成中のS期細胞にEdUを取り込ませた。300 x g,4℃ で 5 分間遠心した後,細胞を HBSS で洗浄し,4% PFA で固定し,製造プロトコルにしたがってサポニン溶液で透過処理を行った.最後に,細胞を3 μM propidium iodide(PI、Thermo Fisher Scientific)で15分間,室温で染色した.
アポトーシス解析のために、照射した細胞に対して抗Cleaved Caspase3(CC3)抗体 (RRID:AB_2341188; Cell Signaling Technology)によるFCM計測を行った。4%PFAで固定し、0.1%Triton X-100で透過処理した後、CC3抗体で氷上2時間処理し、その後2次抗体(表2参照)を用いた。
【0034】
X線照射細胞で誘導された活性酸素を測定するために、2´,7´-dichlorodihydrofluorescein diacetate(DCFH-DA、同仁堂研究所)を比色性の細胞透過性プローブとして使用した。HMECを60 mmディッシュに1 x 106 cells/dishの細胞密度で播種し、X照射の30分前にDCFH-DA色素溶液(λex = 505 nm、λem = 525 nm)を添加した。その後、細胞をトリプシン処理し、ディッシュから剥離し、FCMで分析した。
【0035】
すべてのFCM解析は、S3eセルソーター(RRID:SCR_019710; Bio-Rad)を用いて行った。データはFlowJoソフトウェアバージョン10.8(RRID:SCR_008520; BD Biosciences)で分析した。
【0036】
7. RT-qPCR
細胞からSepasol-RNA I Super G(Nacalai Tesque)を用いてTotal RNAを抽出し,SuperScript IV VILO Master Mix reverse transcriptase(Thermo Fisher Scientific)を用いて製造プロトコルにしたがってcomplementary DNAに逆転写した。RT-qPCRは、SYBR Premix Ex Taq(TaKaRa Bio Inc.)とLightCycler Nano(Roche Diagnostics)を用いて実施された。プライマー配列は表1に示す。サイクリングプロファイルは、95℃・120秒のホットスタート、95℃・10秒の変性ステップ、60℃・20秒のアニーリング、72℃・10秒の伸長、72℃で蛍光シグナル取得を40サイクル繰り返し、最後に解離曲線解析を行った。すべての遺伝子発現量は、内部コントロールとしてグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)を用いて正規化した。各遺伝子の相対的なmRNA発現量は、閾値サイクル(Ct)に基づいて定義し、2-ΔCt の式で算出した。
【0037】
8. RNA-seq
照射後24時間のHMECからFastGene RNA Premium Kit(NIPPON Genetics)を用いてTotal RNAを抽出した。データの正確性を確保するため、各サンプルは2つの独立した実験から得られたTotal RNAを混合して作成した。RNAの品質はアガロース電気泳動で確認した(Total RNA > 1.0 μg, OD260/280 = 1.8-2.2, RIN > 6.5)。RNA-seq は DNBSEQ-G400RS(RRID:SCR_017980; MGI Tech Co., Ltd.)を用いて実施した。すべての解析は、integrated Differential Expression and Pathway analysis (iDEP) version 0.95(http://bioinformatics.sdstate.edu/idep95/)を用いて行った。
【0038】
9. ウェスタンブロッティング
プロテアーゼ阻害剤(Nacalai Tesque)を加えたRIPAバッファーで細胞を溶解させた。氷上で30分後、細胞溶解液を12,000×g、4℃で20分間遠心分離し、上清を回収した。各サンプルのタンパク質含量をBradford法で測定し、各サンプルの等量のタンパク質をSDS-PAGEで分離して、ニトロセルロース膜(Bio-Rad)またはPVDF膜(ATTO)に転写した。このメンブレンを一次抗体と西洋わさびペルオキシダーゼ標識二次抗体でインキュベートした。その後、Chemi-Lumi One Super(Nacalai Tesque)でシグナルを可視化し、ChemDox XRS+(Bio-Rad)で検出した。本実験で使用した全ての抗体を表2に示す。
【0039】
実験結果
1. ΔNp63αノックダウン実験
放射線応答におけるΔNp63αのp53リプレッサーとしての機能を調べるために、まず乳腺基底細胞マーカーであるサイトケラチン(CK)5/14とインテグリンα6(CD49f)を発現するHMECでsiRNAノックダウン実験を行った(図1-1,2)。HMECはFCM解析により単一集団であることが確認され、核内にすべてのp63アイソタイプのうちΔNp63α(72kDa)をほぼ独占的に発現していた(図1-1a~d、図1-2a,b)。p63-siRNA(sip63)処理後、ΔNp63αのmRNAとタンパク質は24時間後にはscr処理した細胞のレベルの10-20%に減少したが、96時間後にはsip63処理前に観察されたレベルまで回復した(図1-1c,d、図1-2c)。このとき、CK14やFstなどのΔNp63αによって発現が上昇する遺伝子発現は減少を示した(図1-1c、図1-2e、図2b)。
【0040】
本研究で用いたsip63の配列は、p63のDNA結合ドメインを標的としており(NM_001114980.2:714-732)、他の遺伝子と相同性がないことが、NCBI BLAST(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)およびGGGenome(https://gggenome.dbcls.jp/)により確認された。RNA-seqおよびRT-qPCRの結果、sip63処理後にTP53 mRNAの発現が増加した(図2b図1-2d)。本研究の目的は、放射線誘発DDRにおけるΔNp63αのp53抑制活性と機能性を調べることなので、ΔNp63αが十分に減弱し、p53発現が一定となるsip63処理後30時間から42時間の間にX線照射することとした(図1-2d)。X線照射後24時間以内ではΔNp63αの発現量はほとんど変化しなかったが(図1-1e, f)、p53の発現量は時間依存的に増強された(図1-1f)。一方、scr処理群で検出されたp53の量は、sip63処理群のそれよりも豊富であった。放射線誘発乳がんの研究では、ラットなどの実験動物にγ(X)線を4Gy照射して腫瘍を誘発させる(Imaoka T. et al., Radiat Res. 2017;188:419-25)。このため、本実験で使用した線量は4Gyとした。
【0041】
sip63処理細胞における放射線誘発DDRをRT-qPCRおよびRNA-seqを用いて検討した。RT-qPCRでは、p53タンパク質の標的であるアポトーシス関連遺伝子BAXとNOXA、細胞周期停止関連遺伝子CDKN1AとCDKN2Aの発現量が定量された(図1-1g)。X線照射後、p53はATMなどのキナーゼによってリン酸化されてユビキチン分解を逃れ、これらの遺伝子のシスエレメントに結合して転写を活性化する(Valerie K. and Povirk LF., Oncogene. 2003;22:5792-812)。RT-qPCRの結果、scr処理群では、X線照射後24時間以内に各遺伝子の発現量がわずかに増加するのみだったが、sip63投与群では、これらの遺伝子の発現量は、時間依存的に有意な増加を示した(図1-1g)。特に、BAXとCDKN1Aの反応が顕著であり、BAXについては、非照射時でも有意差が見られた(図1-1g、P0Gy-0Gy<0.05)。この結果を確認するために、ウエスタンブロット解析により、X線照射後のBAXとp21の発現変化を調べた(図1-1h)。その結果、両タンパク質の全体的な発現量はsip63投与群で多く、RT-qPCR解析の結果と一致した。
【0042】
これらの結果をさらに確認するため、FCM分析によってEdU取り込み率と放射線誘発アポトーシス細胞を測定した(図1-1i, j)。sip63処理後、EdU取り込み率は約15%から7%への減少を示し、G0 /G1期細胞の割合は約90%に増加した(図1-1i、図1-3a)。照射後のアポトーシスCC3陽性細胞の検出は、照射後24時間以内にアポトーシス細胞の割合が時間依存的に増加し、2%から約10%になった(P<0.05、図1-1j、図1-3b)。これらの結果は、mRNAおよびタンパク質解析の結果と一致している(図1-1g, h)。scr処理群では、照射後24時間でS期の割合が減少し、G0 /G1期が優勢になった(図1-3a)。p21 タンパク質は強力な CDK阻害剤であり、G1-S期遷移を阻害するので(Valerie K. and Povirk LF., Oncogene. 2003;22:5792-812)、この結果は、図1-1gおよびhに示したCDKN1A mRNA とp21タンパク質の解析結果と一致する。
【0043】
siRNAを用いたノックダウン実験の結果を検証するために、CRL4CRBN -サリドマイド系を用いたΔNp63αのノックダウン実験を行った(図1-2g)。サリドマイドはセレブロン(CRBN)調節因子であり、E3ユビキチンリガーゼの基質受容体に結合してCRBNとネオ基質ΔNp63αの結合を増強し、ΔNp63αのユビキチン化ないし分解に寄与することが報告されている(Asatsuma-Okumura T. et al., Nat Chem Biol. 2019;15:1077-84)。HMECをサリドマイドで24時間処理すると、ΔNp63αはタンパク質レベルで60%ノックダウンされた(図1-2g、左図)。このときトリパンブルー染色で測定した細胞生存率は、10μMと100μMのサリドマイドの両方で90%以上であった。このことから、この濃度範囲のサリドマイドは細胞の生存率に影響しないと考えられた。サリドマイド処理後24時間で照射したHMECでは、CDKN1AのmRNA発現が図1-1gと同様、時間依存的に増加を示した(P<0.05)(図1-2g、右図)。
【0044】
2. RNA-seq解析
RNA-seq で有意な変動を示した 500 遺伝子について k-means 法による非階層的クラスタリングを行い、2 つのクラスターに分類した(図2a)。クラスターAでは、各遺伝子の発現量は非照射scr処理群で最も高く、X線照射後sip63処理群で最も低い結果となり、このクラスターで細胞増殖・細胞分裂に関連する遺伝子が濃縮されていることがわかった(図2a)。一方、クラスターBは、細胞分化、組織形成、細胞死、アポトーシスに関わる遺伝子が濃縮されており、各遺伝子の発現量は非照射scr処理群で最低で、X線照射後sip63処理群で最高となった(図2a)。これらの濃縮パスウェイ解析結果は、ΔNp63αが細胞周期進行、幹細胞維持に関わる遺伝子をアップレギュレートする一方で、アポトーシスや細胞分化に関わる遺伝子をダウンレギュレートすると報告した従来の研究と整合性があると考えられた。さらに、バイクラスタリング解析により、sip63投与群ではCDK1/2やITGA6/ITGB4などの細胞周期や幹細胞維持に関わる遺伝子の発現が減少し、BAXなどのアポトーシス関連遺伝子の発現が増加していることが示された(図2b)。
【0045】
3. ΔNp63α誘導タンパク質による抗酸化作用の影響調査
ΔNp63αによって発現が増加するGlutathione peroxidase-2 (GPX2) とCytoglobin (CYGB) は、細胞内の活性酸素種(ROS)を減少させて細胞を保護することが報告されている(Latina A. et al., Oncogene. 2016;35:1493-503、Yan W. and Chen X., J Biol Chem. 2006;281:7856-62)。本研究でも、sip63処理によってGPX2およびCYGBの発現が減少することが確認されている(図2bおよび図3a-c)。そのため、上述の実験で、ΔNp63αノックダウンが放射線応答性を高めることが示されたが、ΔNp63αノックダウンによりこのような抗酸化作用を持つ遺伝子の発現も低下することから、この効果はDSBを含むDNA酸化損傷の増加にも起因している可能性がある。そこで、ΔNp63αノックダウン前後の放射線誘発DSBと細胞内ROSを直接定量した。
【0046】
まず、放射線誘発DSBを直接定量するために、siRNA投与群に対して放射線照射後に中性コメットアッセイを行った。実験の結果、いずれのsiRNA処理群でも、照射後に%tail DNAが有意に増加した(図3d、P0Gy-4Gy<0.01)。X線照射に関係なく、sip63処理群ではscr処理群に比べ約5%多く%tail DNAが検出されたが、処理群間に有意差はなかった。この結果を確認するため、さらに、免疫染色で検出されたγH2AX foci数からDSBの量を見積もった。染色体DNAに放射線を照射してDSBを誘発すると、DSB周辺のH2AXのS139部位がATMなどのキナーゼによってリン酸化され、γH2AXが生成する。したがって、このfociを数えれば、放射線によって生じたDSBの数を知ることができる。放射線照射後にsiRNA投与群で誘導されたγH2AX fociを数え、生成されたDSBの数を計算したところ、放射線照射後にγH2AX fociは両投与群で有意な増加を示した(図3e、P0Gy-2Gy<0.01)。また、sip63 投与群では scr 投与群に比べ若干の増加が見られた(図3e、P0Gy-0Gy, 2Gy-2Gy<0.05).さらに、ΔNp63αの発現が細胞内ROSに影響を与えるかどうかを調べるために、DCFH-DAを用いて放射線誘発細胞内ROSを定量した。この物質は細胞膜を透過して細胞質に局在するエステラーゼによって脱アセチル化され、過酸化水素(H2O2)や水酸化ラジカルなどのROSと反応して、蛍光性2'-7'ジクロロフルオレセイン(DCF)に変化する(Lebel CP. and Bondy SC., Neurochem Int. 1990;17:435-40)。実験の結果、細胞内ROSは両照射処理群で有意に増加した(図3f、P0Gy-2Gy<0.01)。また、上述の結果と同様に、sip63投与群の細胞内ROSはscr投与群に比べて3%増加した(図3f、P4Gy-4Gy<0.05、P0Gy-0Gy=0.07)。これらの実験結果は、sip63投与群ではscr投与群に比べてDSBとROSの量がわずかに増加したことを示しており、ΔNp63αはGPX2やCYGBなどの抗酸化タンパク質をアップレギュレートし、ミトコンドリア活動等によって発生する細胞内ROSを除去することによって、DNA酸化損傷からゲノムDNAを守る役割を担っていることがわかる。しかし、DNA近傍にROSを発生させて直接効果によってDNA酸化損傷を引き起こす放射線に対しては効果がなく、ΔNp63αを介した抗酸化制御が放射線によるDNA損傷量の制御に直接関与していないことが示された。
【0047】
4. 異所性発現によるΔNp63αのDDR抑制効果の検証
HMECを用いた上記の実験から、ΔNp63αの発現はp53関連遺伝子の転写を阻害することによって放射線誘発DDRを抑制することが明らかになった。このことを確認するため、次に、異所性発現させたΔNp63αが放射線誘発DDRに対して同様の効果を発揮するかどうかを観察した。この実験は、放射線誘発アポトーシスに高い感受性を示すhiPSCを用い、Tet-off制御下でΔNp63αをectopicallyに発現させたhiPSC(iPS-DN)を作製して行った。レトロウイルスベクターによりhiPSCに導入したΔNp63αの発現は、Dox除去後3-5日で確認された(図4a)。Dox+ iPS-DNでは、X線照射から24時間後、BAX、CDKN1A、NOXA、GADD45Aの4つのDDR関連遺伝子の発現量は非照射細胞に比べて有意に増加を示したが、Dox- iPS-DN のBAXの発現量は増加していなかった(図4b)。この結果と一致して、ウェスタンブロッティングによるタンパク質解析では、Dox- iPS-DNでは、Dox+ iPS-DNと比較してX線照射後に発現するBAXが減弱を示した(図4e)。さらに、FCM解析の結果、Dox- iPS-DNではDox+ iPS-DNと比較して放射線誘発アポトーシス細胞の数が有意に減少しており、上記の結果を裏付けた(図4d)。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
ディスカッション
本研究では、放射線応答におけるΔNp63αによるp53抑制を実験的に解明した。TP63はTP53遺伝子ファミリーの一員であり、TP53とはTA、DNA結合ドメイン、四量体化領域が相同である。ΔNp63は、TP63転写後に選択的スプライシングによって生成されるタンパク質の一つであり、TAを欠損している。そのため、ΔNp63、特にΔNp63αは発見以来、標的遺伝子に対してp53と競合的に働き、p53の本来の機能を阻害すると考えられてきた。一方、放射線は細胞透過性が高く、DSBを含むDNA酸化損傷を誘発し、核内のDNA近傍で水酸化ラジカルや一重項酸素などのROSを発生させて遺伝子変異や染色体異常の原因となる。これが、ATMなどのキナーゼの活性化につながり、細胞周期停止やアポトーシスなどp53由来のDDRを誘導する。したがって、放射線生物学分野は、ΔNp63αがこれらのシグナル伝達におけるDDRにどのように影響するか、また、ΔNp63αがp53の競合阻害剤であるかどうかを明らかにするために必要な環境を提供するのに適していると考えられる。
【0051】
まず、乳腺基底細胞の特徴を示すHMECを用いたsiRNAノックダウン実験を行い、RT-qPCRによりp53下流のDDR関連遺伝子の発現の変化を観察した。HMECへのX線照射後、細胞周期停止やアポトーシスに関連する遺伝子は、scr処理群ではほとんど反応を示さなかったが、ΔNp63αノックダウン後には顕著な発現増加を示した。このことは、ウェスタンブロッティングおよびRNA-seqによってさらに確認された。これらのDDR関連遺伝子は、放射線照射後にプロモーター領域にp53が結合することで発現が上昇するが、非照射下でも発現に差があることから、ΔNp63αがこれらの遺伝子の発現を常時抑えていることが示唆された。
【0052】
DDR関連遺伝子の転写抑制がDNA損傷量に依存しないかどうかを調べるために、照射後にHMECに生成されるDSBを直接定量した(図3)。その結果、sip63投与群ではscr投与群に比べ、照射後に生成されるDSBと活性酸素の量が増加していることがわかった。しかし、非照射群でも同様の増加が見られたことから、群間差はΔNp63αによってGPX2やCYBGなどの抗酸化遺伝子が発現上昇し、H2O2など長寿命のROSが減少したことに起因すると考えられた。したがって、ΔNp63αを発現する細胞は、反応性の低い長寿命ROSに対して耐性があると見られた。一方で、ΔNp63αが介在する細胞の抗酸化システムは、放射線によってDNA近傍で発生する水酸化ラジカルのような反応性の高い短寿命ROSからDNAを守るほど強力ではなく、放射線誘発DDRには影響しないと考えられた。
【0053】
HMECのRNA-seq解析により、ΔNp63αは細胞周期や細胞分裂に関連する遺伝子をアップレギュレートする一方で、アポトーシスや細胞死に関連する遺伝子をダウンレギュレートすることが明らかになった(図2)。この結果はRT-qPCRとウェスタンブロッティングの結果を支持している(図1-1g,h)。
【0054】
本研究で用いたHMECとiPS-DNにおいて、RT-qPCR解析の結果、ΔNp63αはBAXの発現を有意に抑制していることが示された(図1-1g、図4b)。また、FCMによるアポトーシス細胞の検出の結果、ΔNp63α発現細胞ではアポトーシス細胞の割合が減少しており、放射線誘発アポトーシスを抑制していることが示された(図1-1j、図4d)。これらの結果はいずれも、ΔNp63αがp53によるBAXなどのアポトーシス関連遺伝子の発現を抑制することで放射線誘発アポトーシスを抑制していることを示唆している。ΔNp63αはCDKN1Aを転写抑制するが、p21は転写抑制後も一定量発現しており、さらにFCMによる細胞周期解析の結果から、細胞周期停止中は転写抑制効果が限定的と見られた(図1-1g,h、図4b,c)。iPS-DNにおいてX線照射後に発現するG2 phase停止関連遺伝子GADD45Aは、p53下流遺伝子でありながら全く転写が抑制されなかった(図4b)。このことはiPS-DNのX線照射後に見られたG2 phase停止でも同様である(図4c)。したがって、ΔNp63αはp53標的遺伝子の発現を転写抑制するが、その効果はアポトーシスに特異的であると考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、がんの治療に有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0056】
<配列番号1>ΔNp63αのアミノ酸配列を示す。
MLYLENNAQTQFSEPQYTNLGLLNSMDQQIQNGSSSTSPYNTDHAQNSVTAPSPYAQPSSTFDALSPSPAIPSNTDYPGPHSFDVSFQQSSTAKSATWTYSTELKKLYCQIAKTCPIQIKVMTPPPQGAVIRAMPVYKKAEHVTEVVKRCPNHELSREFNEGQIAPPSHLIRVEGNSHAQYVEDPITGRQSVLVPYEPPQVGTEFTTVLYNFMCNSSCVGGMNRRPILIIVTLETRDGQVLGRRCFEARICACPGRDRKADEDSIRKQQVSDSTKNGDGTKRPFRQNTHGIQMTSIKKRRSPDDELLYLPVRGRETYEMLLKIKESLELMQYLPQHTIETYRQQQQQQHQHLLQKQTSIQSPSSYGNSSPPLNKMNSMNKLPSVSQLINPQQRNALTPTTIPDGMGANIPMMGTHMPMAGDMNGLSPTQALPPPLSMPSTSHCTPPPPYPTDCSIVSFLARLGCSSCLDYFTTQGLTTIYQIEHYSMDDLASLKIPEQFRHAIWKGILDHRQLHEFSSPSHLLRTPSSASTVSVGSSETRGERVIDAVRFTLRQTISFPPRDEWNDFNFDMDARRNKQQRIKEEGE

<配列番号2>ΔNp63αの塩基配列を示す。
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<配列番号3~50>プライマーの塩基配列を示す。
<配列番号51及び52>siRNAの塩基配列を示す。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4