(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037288
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、投錨案内システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B63B 22/04 20060101AFI20240312BHJP
G06N 20/00 20190101ALN20240312BHJP
【FI】
B63B22/04 Z
G06N20/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142014
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 徳保
(57)【要約】
【課題】 船舶の投錨開始位置を効率的に案内する。
【解決手段】 プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置であって、過去における、船舶が港湾に入港したときの入港軌跡を示す特徴量と、前記船舶が前記港湾内で投錨を開始したときの第1投錨開始位置を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデルを記憶し、複数の前記第1投錨開始位置の投錨開始平均位置と、前記投錨開始平均位置の周囲に設定される、前記船舶に投錨の開始を許容する投錨開始許容エリアと、を算出し、現在における、前記船舶が前記港湾に入港したときの入港軌跡を示すデータを前記学習モデルに入力することにより、前記船舶が前記港湾内で投錨を開始する第2投錨開始位置を予測し、前記第2投錨開始位置が前記投錨開始許容エリアに存在するとき、前記第2投錨開始位置を前記船舶が投錨を開始する位置に決定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ及び記憶装置を有し、
過去における、船舶が港湾に入港したときの入港軌跡を示す特徴量と、前記船舶が前記港湾内で投錨を開始したときの第1投錨開始位置を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデルを記憶し、
複数の前記第1投錨開始位置の投錨開始平均位置と、前記投錨開始平均位置の周囲に設定される、前記船舶に投錨の開始を許容する投錨開始許容エリアと、を算出し、
現在における、前記船舶が前記港湾に入港したときの入港軌跡を示すデータを前記学習モデルに入力することにより、前記船舶が前記港湾内で投錨を開始する第2投錨開始位置を予測し、
前記第2投錨開始位置が前記投錨開始許容エリアに存在するとき、前記第2投錨開始位置を前記船舶が投錨を開始する位置に決定する、
情報処理装置。
【請求項2】
プロセッサ及び記憶装置を有し、
過去における、船舶が港湾に入港したときの入港軌跡を示す特徴量と、前記船舶が前記港湾内で投錨の準備を開始したときの第1投錨準備開始位置、及び、前記船舶が前記港湾内で投錨を開始したときの第1投錨開始位置を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデルを記憶し、
複数の前記第1投錨準備開始位置の投錨準備開始平均位置と、前記投錨準備開始平均位置の周囲に設定される、前記船舶に投錨の準備の開始を許容する投錨準備開始許容エリアと、複数の前記第1投錨開始位置の投錨開始平均位置と、前記投錨開始平均位置の周囲に設定される、前記船舶に投錨の開始を許容する投錨開始許容エリアと、を算出し、
現在における、前記船舶が前記港湾に入港したときの入港軌跡を示すデータを前記学習モデルに入力することにより、前記船舶が前記港湾内で投錨の準備を開始する第2投錨準備開始位置、及び、前記船舶が前記港湾内で投錨を開始する第2投錨開始位置を予測し、
前記第2投錨準備開始位置が前記投錨準備開始許容エリアに存在するとき、前記第2投錨準備開始位置を前記船舶が投錨の準備を開始する位置に決定し、前記第2投錨開始位置が前記投錨開始許容エリアに存在するとき、前記第2投錨開始位置を前記船舶が投錨を開始する位置に決定する、
情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記第2投錨準備開始位置が前記投錨準備開始許容エリアに存在するとともに、前記第2投錨開始位置が前記投錨開始許容エリアに存在するとき、前記第2投錨準備開始位置を前記船舶が投錨の準備を開始する位置に決定するとともに、前記第2投錨開始位置を前記船舶が投錨を開始する位置に決定する、
情報処理装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の情報処理装置であって、
前記特徴量は、前記船舶の大きさ、前記船舶が前記港湾に入港したときの前記港湾付近の海象、の少なくとも1つの情報を含む、
情報処理装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の情報処理装置であって、
前記入港軌跡は、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)による位置情報を含む、
情報処理装置。
【請求項6】
プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置が、
過去における、船舶が港湾に入港したときの入港軌跡を示す特徴量と、前記船舶が前記港湾内で投錨を開始したときの第1投錨開始位置を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデルを記憶し、
複数の前記第1投錨開始位置の投錨開始平均位置と、前記投錨開始平均位置の周囲に設定される、前記船舶に投錨の開始を許容する投錨開始許容エリアと、を算出し、
現在における、前記船舶が前記港湾に入港したときの入港軌跡を示すデータを前記学習モデルに入力することにより、前記船舶が前記港湾内で投錨を開始する第2投錨開始位置を予測し、
前記第2投錨開始位置が前記投錨開始許容エリアに存在するとき、前記第2投錨開始位置を前記船舶が投錨を開始する位置に決定する、
情報処理方法。
【請求項7】
プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置が、
過去における、船舶が港湾に入港したときの入港軌跡を示す特徴量と、前記船舶が前記港湾内で投錨の準備を開始したときの第1投錨準備開始位置、及び、前記船舶が前記港湾内で投錨を開始したときの第1投錨開始位置を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデルを記憶し、
複数の前記第1投錨準備開始位置の投錨準備開始平均位置と、前記投錨準備開始平均位置の周囲に設定される、前記船舶に投錨の準備の開始を許容する投錨準備開始許容エリアと、複数の前記第1投錨開始位置の投錨開始平均位置と、前記投錨開始平均位置の周囲に設定される、前記船舶に投錨の開始を許容する投錨開始許容エリアと、を算出し、
現在における、前記船舶が前記港湾に入港したときの入港軌跡を示すデータを前記学習モデルに入力することにより、前記船舶が前記港湾内で投錨の準備を開始する第2投錨準備開始位置、及び、前記船舶が前記港湾内で投錨を開始する第2投錨開始位置を予測し、
前記第2投錨準備開始位置が前記投錨準備開始許容エリアに存在するとき、前記第2投錨準備開始位置を前記船舶が投錨の準備を開始する位置に決定し、前記第2投錨開始位置が前記投錨開始許容エリアに存在するとき、前記第2投錨開始位置を前記船舶が投錨を開始する位置に決定する、
情報処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の情報処理方法であって、
前記第2投錨準備開始位置が前記投錨準備開始許容エリアに存在するとともに、前記第2投錨開始位置が前記投錨開始許容エリアに存在するとき、前記第2投錨準備開始位置を前記船舶が投錨の準備を開始する位置に決定するとともに、前記第2投錨開始位置を前記船舶が投錨を開始する位置に決定する、
情報処理方法。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の情報処理方法であって、
前記特徴量は、前記船舶の大きさ、前記船舶が前記港湾に入港したときの前記港湾付近の海象、の少なくとも1つの情報を含む、
情報処理方法。
【請求項10】
請求項6又は7に記載の情報処理装置であって、
前記入港軌跡は、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)による位置情報を含む、
情報処理方法。
【請求項11】
プロセッサ及び記憶装置を有し、過去における、船舶が港湾に入港したときの入港軌跡を示す特徴量と、前記船舶が前記港湾内で投錨を開始したときの第1投錨開始位置を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデルを記憶し、複数の前記第1投錨開始位置の投錨開始平均位置と、前記投錨開始平均位置の周囲に設定される、前記船舶に投錨の開始を許容する投錨開始許容エリアと、を算出し、現在における、前記船舶が前記港湾に入港したときの入港軌跡を示すデータを前記学習モデルに入力することにより、前記船舶が前記港湾内で投錨を開始する第2投錨開始位置を予測し、前記第2投錨開始位置が前記投錨開始許容エリアに存在するとき、前記第2投錨開始位置を前記船舶が投錨を開始する位置に決定する、情報処理装置と、
応答要求者に対して、前記情報処理装置による決定結果である前記第2投錨開始位置を案内する管理装置と、を含む、
投錨案内システム。
【請求項12】
プロセッサ及び記憶装置を有するコンピュータに、
過去における、船舶が港湾に入港したときの入港軌跡を示す特徴量と、前記船舶が前記港湾内で投錨を開始したときの第1投錨開始位置を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデルを記憶する処理と、
複数の前記第1投錨開始位置の投錨開始平均位置と、前記投錨開始平均位置の周囲に設定される、前記船舶に投錨の開始を許容する投錨開始許容エリアと、を算出する処理と、
現在における、前記船舶が前記港湾に入港したときの入港軌跡を示すデータを前記学習モデルに入力することにより、前記船舶が前記港湾内で投錨を開始する第2投錨開始位置を予測する処理と、
前記第2投錨開始位置が前記投錨開始許容エリアに存在するとき、前記第2投錨開始位置を前記船舶が投錨を開始する位置に決定する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の投錨開始位置を案内する情報処理装置、情報処理方法、投錨案内システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶と、港湾内の陸地に建設されている建屋(例えば発電所等)と、の間で荷役作業(例えば貨物の積み込みや荷下ろし等)を行う場合、船舶は、港湾に入港した後、港湾管理者からの案内に従って、岸壁の安全な位置に投錨した状態で(例えば特許文献1等)、建屋と向かい合う位置まで移動し、船舶及び建屋の作業者は、船舶の移動位置で荷役作業を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、港湾管理者は、船舶に対して、船舶の入港軌跡、港湾付近の海象等の情報を参考にして岸壁の投錨開始位置を案内しているため、港湾管理者の負荷が大きくなるとともに、船舶に対して岸壁の投錨開始位置を案内するまでの時間が長くなって荷役作業に支障を来たす虞があった。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、船舶の投錨開始位置を効率的に案内することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明のうちの1つは、プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置であって、過去における、船舶が港湾に入港したときの入港軌跡を示す特徴量と、前記船舶が前記港湾内で投錨を開始したときの第1投錨開始位置を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデルを記憶し、複数の前記第1投錨開始位置の投錨開始平均位置と、前記投錨開始平均位置の周囲に設定される、前記船舶に投錨の開始を許容する投錨開始許容エリアと、を算出し、現在における、前記船舶が前記港湾に入港したときの入港軌跡を示すデータを前記学習モデルに入力することにより、前記船舶が前記港湾内で投錨を開始する第2投錨開始位置を予測し、前記第2投錨開始位置が前記投錨開始許容エリアに存在するとき、前記第2投錨開始位置を前記船舶が投錨を開始する位置に決定する。
【0007】
本発明の情報処理装置によれば、港湾に入港する船舶に対して、第2投錨開始位置を効率的に案内することが可能となる。
【0008】
上記目的を達成するための本発明のうちの他の1つは、プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置であって、過去における、船舶が港湾に入港したときの入港軌跡を示す特徴量と、前記船舶が前記港湾内で投錨の準備を開始したときの第1投錨準備開始位置、及び、前記船舶が前記港湾内で投錨を開始したときの第1投錨開始位置を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデルを記憶し、複数の前記第1投錨準備開始位置の投錨準備開始平均位置と、前記投錨準備開始平均位置の周囲に設定される、前記船舶に投錨の準備の開始を許容する投錨準備開始許容エリアと、複数の前記第1投錨開始位置の投錨開始平均位置と、前記投錨開始平均位置の周囲に設定される、前記船舶に投錨の開始を許容する投錨開始許容エリアと、を算出し、現在における、前記船舶が前記港湾に入港したときの入港軌跡を示すデータを前記学習モデルに入力することにより、前記船舶が前記港湾内で投錨の準備を開始する第2投錨準備開始位置、及び、前記船舶が前記港湾内で投錨を開始する第2投錨開始位置を予測し、前記第2投錨準備開始位置が前記投錨準備開始許容エリアに存在するとき、前記第2投錨準備開始位置を前記船舶が投錨の準備を開始する位置に決定し、前記第2投錨開始位置が前記投錨開始許容エリアに存在するとき、前記第2投錨開始位置を前記船舶が投錨を開始する位置に決定する。
【0009】
本発明の情報処理装置によれば、港湾に入港する船舶に対して、第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置を効率的に案内することが可能となる。
【0010】
上記目的を達成するための本発明のうちの他の1つは、情報処理装置であって、前記第2投錨準備開始位置が前記投錨準備開始許容エリアに存在するとともに、前記第2投錨開始位置が前記投錨開始許容エリアに存在するとき、前記第2投錨準備開始位置を前記船舶が投錨の準備を開始する位置に決定するとともに、前記第2投錨開始位置を前記船舶が投錨を開始する位置に決定する。
【0011】
本発明の情報処理装置によれば、港湾に入港する船舶に対して、停泊が可能である場合のみ、第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置の双方を案内することが可能となる。
【0012】
上記目的を達成するための本発明のうちの他の1つは、情報処理装置であって、前記特徴量は、前記船舶の大きさ、前記船舶が前記港湾に入港したときの前記港湾付近の海象の少なくとも1つの情報を含む。
【0013】
本発明の情報処理装置によれば、学習データは複数種類の特徴量を含むため、港湾に入港する船舶に対して、第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置を高精度に案内することが可能となる。
【0014】
上記目的を達成するための本発明のうちの他の1つは、情報処理装置であって、前記入港軌跡は、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)による位置情報を含む。
【0015】
本発明の情報処理装置によれば、入港軌跡として高精度の位置情報を利用するため、港湾に入港する船舶に対して、第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置を高精度に案内することが可能となる。
【0016】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、港湾に入港する船舶に対して、投錨開始位置を効率的に案内することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】船舶20が入港又は出港する港湾10の一例を上空から眺めた様子を示す平面図である。
【
図2】本実施形態に係る情報処理装置200を用いる投錨案内システム100の概略的な構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る情報処理装置200に用いる学習データ112の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る情報処理装置200に用いる学習モデル113の一例である深層ニューラルネットワークの構造を示す図である。
【
図5】岸壁12付近の海域の一例を上空から眺めた様子を示す拡大平面図である。
【
図6】投錨案内システム100の実現に用いる、本実施形態に係る情報処理装置200のハードウェアの一例を示すブロック図である。
【
図7】本実施形態に係る情報処理装置200が学習データ112を用いて学習モデル113の学習を行うときの処理を示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態に係る情報処理装置200が、学習モデル113を用いて、船舶20が投錨の準備を開始する第2投錨準備開始位置と、船舶20が投錨を開始する第2投錨開始位置と、を予測するときの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。以下、本発明をその一実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1は、船舶20が入港又は出港する港湾10の一例を上空から眺めた様子を示す平面図である。
【0021】
港湾10は、船舶20が荷役作業を行う際に停泊する、陸地30に囲まれた海域である。港湾10は、船舶20が入港又は出港する出入口11と、船舶20が投錨を行うときに接岸する岸壁12と、を備える。尚、岸壁12付近の海域は、船舶20が投錨を行ったとき、錨が港湾10及び港湾10内の設備等に影響を与えない海域であることとする。防波堤40は、津波、高潮等の到来から港湾10及び陸地30等を保護する建造物である。
【0022】
船舶20は、港湾10への入港が許可されるまで、港湾10の外側となる沖合の海域で待機し、港湾10への入港が許可されると、出入口11から港湾10に入港し、岸壁12に接岸する。船舶20は、岸壁12に接岸するとき、第2投錨準備開始位置(例えば緯度、経度等)の案内に従って投錨の準備を開始するとともに、第2投錨開始位置(例えば緯度、経度等)の案内に従って投錨を開始する。尚、第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置については後述する。船舶20は、投錨を完了すると、矢印に示すように、船首が出入口11の方向を向くように旋回した後、荷役作業を行う場所まで移動して停泊する。
【0023】
建屋50は、船舶20との間で荷役作業が行われる建造物であり、陸地30の所定位置に建造されている。船舶20が建屋50付近の荷揚場60と面する位置で停泊した後、船舶20及び建屋50の作業者は、重油や資機材の搬入等の荷役作業を行う。例えば、建屋50が水力発電所である場合、建屋50付近の海域には、海水の流れ落ちる落差を利用して発電機を発電させるために、海水を引き上げるための取水設備70が建造されているため、船舶20が投錨を行う海域は、岸壁12付近の海域であることが望ましい。
【0024】
波浪計190は、港湾10付近の海域における波浪の有義波高、有義波周期等を求める観測器である。波浪計190としては、例えば、超音波式沿岸波浪計、レーダー式沿岸波浪計等を採用することができる。超音波式沿岸波浪計は、海底に設置されている超音波送受波器から発射された超音波が海面で反射して戻るまでの時間に基づいて、海面の水位変動を測定することにより、波浪の有義波高、有義波周期等を求める観測器である。一方、レーダー式沿岸波浪計は、電波(マイクロ波)を海面に向けて発射し、波浪に伴う海面の動きに応じてドップラー効果により変調された反射波を測定することにより、波浪の有義波高、有義波周期等を求める観測器である。2本の破線で囲まれる海域は、波浪計190が波浪の有義波高、有義波周期等を求める海域であるため、船舶20の航行は禁止されている。
【0025】
本実施形態では、船舶20が港湾10に入港したときの入港軌跡、船舶20の大きさ、船舶20が港湾10に入港したときの港湾10付近の海象(例えば波高(有義波高)、風向、風速等)に基づいて、岸壁12付近の海域において、船舶20にとって安全とされる第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置を効率的に案内する投錨案内システム100を提供する。
【0026】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置200を用いる投錨案内システム100の概略的な構成を示すブロック図である。
【0027】
投錨案内システム100は、船舶20が岸壁12に接岸するとき、船舶20が港湾10に入港したときの入港軌跡、船舶20の大きさ、船舶20が港湾10に入港したときの港湾10付近の海象に基づいて、船舶20にとって安全とされる第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置を、人工知能であるAI(Artificial Intelligence)を用いて案内するシステムである。
【0028】
投錨案内システム100は、上記の機能を実現するための手段として、記憶部110、入力部120、投錨準備開始位置決定部130、投錨開始位置決定部140、出力部150、位置情報提供装置160、海象情報提供装置170、管理装置180、波浪計190を備える。記憶部110、入力部120、投錨準備開始位置決定部130、投錨開始位置決定部140、出力部150は、情報処理装置200によって実現される。
【0029】
位置情報提供装置160、海象情報提供装置170、管理装置180、波浪計190は、通信ネットワーク105を介して情報処理装置200と双方向通信が可能な状態で接続されている。尚、通信ネットワーク105は、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、専用線、電力線通信網、各種公衆通信網等である。また、海象情報提供装置170は、通信ネットワーク105とは別に、インターネット115を介して海象情報提供サーバ125と接続されている。尚、海象情報提供装置170は、インターネット115の代わりに、通信ネットワーク105を介して海象情報提供サーバ125と接続されるようにしてもよい。
【0030】
位置情報提供装置160は、3つのGPS衛星135A,135B,135Cから発射された電波(マイクロ波)に基づいて、船舶20の現在位置(例えば緯度、経度等)を算出し、船舶20の現在位置を示す情報を情報処理装置200に随時提供する。位置情報提供装置160は、船舶20に搭載され、上記の機能を実現するための手段として、受信装置161及び演算装置162を備える。GPS衛星135A,135B,135Cは、位置情報提供装置160が船舶20の現在位置を算出するときに必要となる、例えば数百~数万kmの軌道高度を有する人工衛星である。GPS衛星135A,135B,135Cは、軌道情報及び時刻情報を含む電波を地球に向けて発射する。受信装置161は、GPS衛星135A,135B,135Cから発射された電波を受信する。演算装置162は、GPS衛星135Aが電波を発射したときの時刻と、受信装置161がGPS衛星135Aからの電波を受信したときの時刻と、の差に基づいて、GPS衛星135Aと受信装置161との間の距離を算出する。同様に、演算装置162は、GPS衛星135Bが電波を発射したときの時刻と、受信装置161がGPS衛星135Bからの電波を受信したときの時刻と、の差に基づいて、GPS衛星135Bと受信装置161との間の距離を算出する。同様に、演算装置162は、GPS衛星135Cが電波を発射したときの時刻と、受信装置161がGPS衛星135Cからの電波を受信したときの時刻と、の差に基づいて、GPS衛星135Cと受信装置161との間の距離を算出する。そして、演算装置162は、GPS衛星135A,135B,135Cの軌道と、GPS衛星135A,135B,135Cの夫々と受信装置161との間の3つの距離と、に基づいて、船舶20の現在位置を算出する。位置情報提供装置160は、船舶20の現在位置を示す情報を情報処理装置200に提供する。
【0031】
海象情報提供装置170は、港湾10の周辺地域に存在する海象観測所やインターネット115上の海象情報提供サーバ125等から提供される、現在における海象情報を情報処理装置200に随時提供する。また、海象情報提供装置170は、海象観測所や海象情報提供サーバ125から提供される、過去の所定期間(例えば、過去数年間)における海象情報を蓄積管理し、学習データ112を作成する際の基礎データとして情報処理装置200に随時提供する。
【0032】
管理装置180は、船舶20が岸壁12に接岸するとき、投錨準備開始許容エリア502に含まれる第2投錨準備開始位置と、投錨開始許容エリア504に含まれる第2投錨開始位置と、を示す情報を記憶し、応答要求者(船舶20、港湾10の管理者及び作業者等)からの応答要求に応じて、第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置を示す情報を、通信ネットワーク105を介して船舶20の通信装置(不図示)、港湾10の管理者及び作業者等の通信端末(不図示)に送信する。船舶20は、第2投錨準備開始位置を示す情報に従って投錨の準備を開始し、第2投錨開始位置を示す情報に従って投錨を開始する。
【0033】
記憶部110は、制御プログラム111、学習データ112、学習モデル113を記憶する。
【0034】
制御プログラム111は、船舶20に対して第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置を案内するとき、情報処理装置200が実行するプログラムである。
【0035】
学習データ112は、情報処理装置200が第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置を予測するために事前に用意される、過去の実績である特徴量及びラベルを対応付けた教師ありデータである。
【0036】
図3は、学習データ112の一例を示す図である。特徴量は、例えば、(1)船舶20が港湾10に入港したときの入港軌跡、(2)船舶20の大きさ、(3)船舶20が港湾10に入港したときの港湾10付近の海象、を示すデータである。ラベルは、例えば、船舶20が岸壁12に接岸する場合に、(4)船舶20が投錨の準備を開始したときの第1投錨準備開始位置(例えば緯度、経度等)、(5)船舶20が投錨を開始したときの第1投錨開始位置(例えば緯度、経度等)、を示すデータである。尚、特徴量は、(1)のみの1つのデータであってもよいし、(1)に対して(2)(3)の何れかを選択的に組み合わせた2つのデータであってもよい。
【0037】
船舶20が港湾10に入港したときの入港軌跡は、例えば、船舶20が港湾10に入港したときの軌跡の中で、船舶20が出入口11よりも沖合側の一定距離(例えば数百m)を航行したときの軌跡であることとする。入港軌跡は、上記の一定距離の範囲で、位置情報提供装置160から一定時間(例えば数秒)ごとに提供される船舶20の現在位置を示す情報を時系列に辿ることによって形成される軌跡である。入港軌跡は、例えば、船舶20が港湾10に向かって直進する軌跡、船舶20が港湾10に向かって蛇行する軌跡、船舶20の進行方向が岸壁12に近づく軌跡、船舶20の進行方向が岸壁12から遠ざかる軌跡等、様々である。入港軌跡が変化すると、第1投錨準備開始位置及び第1投錨開始位置は変化する場合がある。また、入港軌跡の変化から第1投錨準備開始位置及び第1投錨開始位置を一義的に求めることはできない。そこで、学習データ112は、特徴量として、船舶20が港湾10に入港したときの入港軌跡を示すデータを含んでいる。
【0038】
船舶20の大きさは、例えば、船舶20の容積(船舶20の船体及び船室で囲まれている空間の容積)から算出される総トン数であることとする。船舶20の大きさが変化すると、第1投錨準備開始位置及び第1投錨開始位置は変化する場合がある。そこで、学習データ112は、特徴量として、船舶20が港湾10に入港したときの入港軌跡の他に、船舶20の大きさを示すデータを含んでいる。
【0039】
船舶20が港湾10に入港したときの港湾10付近の海象は、例えば、有義波高、風向、風速であることとする。港湾10付近の海象が変化すると、第1投錨準備開始位置及び第1投錨開始位置は変化する場合がある。そこで、学習データ112は、特徴量として、船舶20が港湾10に入港したときの入港軌跡、船舶20の大きさの他に、船舶20が港湾10に入港したときの港湾10付近の海象を示すデータを含んでいる。
【0040】
学習データ112は、特徴量(1)~(3)に対してラベル(4)(5)を対応付けることで形成されるデータである。そのため、学習データ112は、現在において、船舶20が港湾10に入港したときの第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置を学習モデル113が予測する上で十分な根拠を有することとなる。
【0041】
尚、学習データ112は、学習モデル113の学習を行うときのみ必要になるデータであるため、記憶部110に記憶する代わりに、外部のコンピュータの記憶装置(不図示)に記憶するようにしてもよい。そして、情報処理装置200が通信ネットワーク105を介して外部のコンピュータから学習データ112を取得し、情報処理装置200上で学習データ112を用いて学習モデル113の学習を行うようにしてもよい。或いは、外部のコンピュータ上で学習データ112を用いて学習モデル113の学習を行い、情報処理装置200が通信ネットワーク105を介して外部のコンピュータから学習済みの学習モデル113を取得して記憶部110に記憶するようにしてもよい。
【0042】
学習モデル113は、学習データ112を用いて学習を行うことにより、現在において、船舶20が港湾10に入港したときの第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置を予測するように形成された機械学習モデルである。学習モデル113は、より多くの学習データ112を用いて学習を行うほど、より正確な予測を行うことが可能となる。尚、本実施形態では、学習モデル113は、例えば深層ニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)であることとするが、勾配ブースティング(GBDT:Gradient Boosting Decision Tree)等の他の種類のモデルであってもよい。
【0043】
図4は、学習モデル113の一例である深層ニューラルネットワークの構造を示す図である。
【0044】
学習モデル113は、入力層1131、中間層1132、出力層1133の3層を含んで構成される。入力層1131は、現在における、船舶20が港湾10に入港したときの入港軌跡を示すデータ(特徴量(1)と同一種類のデータ)と、船舶20の大きさを示すデータ(特徴量(2)と同一種類のデータ)と、船舶20が港湾10に入港したときの港湾10付近の海象を示すデータ(特徴量(3)と同一種類のデータ)と、が入力される層である。中間層1132は、学習データ112を用いて学習を行うことにより調整されるパラメータを含む1つ以上のノードからなる1つ以上の隠れ層を含む層である。中間層1132は、入力層1131に入力されるデータに基づき、現在において、船舶20が港湾10に入港したときの第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置を予測する。出力層1133は、中間層1132による予測結果を出力する層である。
【0045】
図2に戻り、入力部120は、情報処理装置200が学習モデル113を用いて船舶20が港湾10に入港したときの第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置を予測するとき、現在における、船舶20が港湾10に入港したときの入港軌跡を示すデータと、船舶20の大きさを示すデータと、船舶20が港湾10に入港したときの港湾10付近の海象を示すデータと、が入力される。入力部120は、上記のデータの入力を契機として、上記のデータを学習モデル113の入力層1131に入力する。
【0046】
投錨準備開始位置決定部130は、船舶20が岸壁12に接岸するとき、学習モデル113によって予測された第2投錨準備開始位置が、船舶20が投錨の準備を開始する位置として適切であるかどうかを決定する。投錨準備開始位置決定部130は、学習データ112のラベルである複数の第1投錨準備開始位置を示すデータを取得し、複数の第1投錨準備開始位置の平均位置である投錨準備開始平均位置501を算出する。その後、投錨準備開始位置決定部130は、投錨準備開始平均位置501の周囲に設定される、投錨の準備の開始を許容する投錨準備開始許容エリア502を算出する。尚、投錨準備開始許容エリア502は、例えば、複数の第1投錨準備開始位置の中で、出入口11に最も近い第1投錨準備開始位置と、出入口11から最も遠い第1投錨準備開始位置と、を含むエリアであってもよいし、複数の第1投錨準備開始位置の散らばりの度合いが一定の範囲となるエリアであってもよい。そして、投錨準備開始位置決定部130は、第2投錨準備開始位置が投錨準備開始許容エリア502に含まれるとき、船舶20が投錨の準備を開始する位置として適切であることを決定する。一方、投錨準備開始位置決定部130は、第2投錨準備開始位置が投錨準備開始許容エリア502に含まれないとき、船舶20が投錨の準備を開始する位置として不適切であることを決定する。
【0047】
投錨開始位置決定部140は、船舶20が岸壁12に接岸するとき、学習モデル113によって予測された第2投錨開始位置が、船舶20が投錨を開始する位置として適切であるかどうかを決定する。投錨開始位置決定部140は、学習データ112のラベルである複数の第1投錨開始位置を示すデータを取得し、複数の第1投錨開始位置の平均位置である投錨開始平均位置503を算出する。その後、投錨開始位置決定部140は、投錨開始平均位置503の周囲に設定される、投錨の開始を許容する投錨開始許容エリア504を算出する。尚、投錨開始許容エリア504は、例えば、複数の第1投錨開始位置の中で、出入口11に最も近い第1投錨開始位置と、出入口11から最も遠い第1投錨開始位置と、を含むエリアであってもよいし、複数の第1投錨開始位置の散らばりの度合いが一定の範囲となるエリアであってもよい。そして、投錨開始位置決定部140は、第2投錨開始位置が投錨開始許容エリア504に含まれるとき、船舶20が投錨を開始する位置として適切であることを決定する。一方、投錨開始位置決定部140は、第2投錨開始位置が投錨開始許容エリア504に含まれないとき、船舶20が投錨を開始する位置として不適切であることを決定する。
【0048】
学習データ112の特徴量が(1)、(1)(2)、(1)(3)、(1)(2)(3)の4通りの何れを含む場合であっても、学習モデル113は、学習結果に従って、投錨準備開始許容エリア502内外の何れかに存在する第2投錨準備開始位置と、投錨開始許容エリア504内外の何れかに存在する第2投錨開始位置と、を予測する。
【0049】
図5は、岸壁12付近の海域の一例を上空から眺めた様子を示す拡大平面図である。
【0050】
投錨準備開始許容エリア502は、岸壁12付近の海域において、投錨準備開始平均位置501の周囲に設定される。例えば、第2投錨準備開始位置505は、投錨準備開始許容エリア502に含まれているため、船舶20が投錨の準備を開始する位置として適切である。一方、第2投錨準備開始位置506は、投錨準備開始許容エリア502に含まれていないため、船舶20が投錨の準備を開始する位置として不適切である。
【0051】
投錨開始許容エリア504は、岸壁12付近の建屋50寄りの海域において、投錨開始平均位置503の周囲に設定される。例えば、第2投錨開始位置507は、投錨開始許容エリア504に含まれているため、船舶20が投錨を開始する位置として適切である。一方、第2投錨開始位置508は、投錨開始許容エリア504に含まれていないため、船舶20が投錨を開始する位置として不適切である。
【0052】
図2に戻り、出力部150は、投錨準備開始位置決定部130が第2投錨準備開始位置を適切な位置であると決定し、投錨開始位置決定部140が第2投錨開始位置を適切な位置であると決定したとき、第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置を示す情報を外部に出力する。
【0053】
図6は、投錨案内システム100の実現に用いる情報処理装置200のハードウェアの一例を示すブロック図である。情報処理装置200は、プロセッサ210、主記憶装置220、補助記憶装置230、入力装置240、出力装置250、通信装置260を備える。情報処理装置200は、例えば、パーソナルコンピュータ、オフィスコンピュータ、各種サーバ装置、汎用機等である。情報処理装置200は、その全部又は一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。投錨案内システム100は、通信可能に接続された複数の情報処理装置200を用いて実現されるものであってもよい。
【0054】
プロセッサ210は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成される。
【0055】
主記憶装置220は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0056】
補助記憶装置230は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード、SDカード、光学式記録媒体等の記録媒体の読取/書込装置、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置230には、記録媒体の読取装置や通信装置260を介してプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置230に記憶されているプログラムやデータは主記憶装置220に随時読み込まれる。
【0057】
入力装置240は、外部からの入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0058】
出力装置250は、処理経過や処理結果等の各種情報を出力するインタフェースである。出力装置250は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、情報処理装置200は、通信装置260を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0059】
入力装置240及び出力装置250は、ユーザとの間で情報の受け付けや情報の提示を行うユーザインタフェースを構成する。
【0060】
通信装置260は、通信ネットワーク105等の通信基盤を介した他の装置との間での通信(有線通信又は無線通信)を実現する装置であり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール等を用いて構成される。
【0061】
尚、情報処理装置200には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(Data Base Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0062】
投錨案内システム100が備える機能は、情報処理装置200のプロセッサ210が、主記憶装置220に読み込まれているプログラム(制御プログラム)を実行することにより実現され、又は、投錨案内システム100を構成するハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)自体の機能により実現される。例えば、
図2の記憶部110は主記憶装置220及び補助記憶装置230により実現され、
図2の入力部120は入力装置240により実現され、
図2の投錨準備開始位置決定部130及び投錨開始位置決定部140はプロセッサ210により実現され、
図2の出力部150は出力装置250及び通信装置260により実現される。
【0063】
図7は、情報処理装置200が学習データ112を用いて学習モデル113の学習を行うときの処理を示すフローチャートである。
【0064】
先ず、情報処理装置200は、過去における、船舶20が港湾10に入港したときの入港軌跡、船舶20の大きさ、船舶20が港湾10に入港したときの港湾10付近の海象を示す説明変数である特徴量と、過去における、船舶20が投錨の準備を開始した位置である第1投錨準備開始位置、船舶20が投錨を開始した位置である第1投錨開始位置を示す目的変数であるラベルと、を対応付けた学習データ112を生成する(S1000)。
【0065】
次に、情報処理装置200は、学習データ112を用いて学習モデル113の学習を行う(S1010)。尚、情報処理装置200は、学習済みの学習モデル113に対して予測精度の検証を行うようにしてもよい。その場合、情報処理装置200は、学習データ112として学習用データ及び検証用データを用意し、学習用データを用いて学習モデル113の学習を行い、検証用データを用いて学習モデル113の検証を行う。
【0066】
図8は、情報処理装置200が、学習モデル113を用いて、船舶20が投錨の準備を開始する第2投錨準備開始位置と、船舶20が投錨を開始する第2投錨開始位置と、を予測するときの処理を示すフローチャートである。尚、本実施形態では、船舶20が港湾10の出入口11に到達した時点で、船舶20の航行速度は、船舶20が投錨を行うことが可能な速度まで減速していることとする。
【0067】
先ず、情報処理装置200は、船舶20が港湾10に入港したときの入港軌跡、船舶20の大きさ、船舶20が港湾10に入港したときの港湾10付近の海象、を示す情報が、入力部120に入力されたか否かを判定する(S2000)。情報処理装置200は、上記の情報が入力部120に入力されていないと判定すると(S2000:NO)、ステップS2000の処理を再度実行する。尚、本実施形態では、港湾10付近の海象に含まれる有義波高の情報は、波浪計190の代わりに、海象情報提供装置170から得るようにしてもよい。
【0068】
次に、情報処理装置200は、上記の情報が入力部120に入力されたと判定すると(S2000:YES)、学習モデル113によって予測された第2投錨準備開始位置が投錨準備開始許容エリア502に含まれているかどうかを判定する(S2010)。
【0069】
次に、情報処理装置200は、学習モデル113によって予測された第2投錨準備開始位置が投錨準備開始許容エリア502に含まれていると判定すると(S2010:YES)、学習モデル113によって予測された第2投錨開始位置が投錨開始許容エリア504に含まれているかどうかを判定する(S2020)。
【0070】
次に、情報処理装置200は、学習モデル113によって予測された第2投錨開始位置が投錨開始許容エリア504に含まれていると判定すると(S2020:YES)、第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置を示す情報を出力する(S2030)。
【0071】
尚、情報処理装置200は、第2投錨準備開始位置が投錨準備開始許容エリア502に含まれていないと判定するか(S2010:NO)、或いは、第2投錨開始位置が投錨開始許容エリア504に含まれていないと判定すると(S2020:NO)、一連の処理を終了する。
【0072】
そして、管理装置180は、投錨準備開始許容エリア502内に存在する第2投錨準備開始位置と、投錨開始許容エリア504内に存在する第2投錨開始位置と、を示す情報を記憶し、応答要求者(船舶20、港湾10の管理者及び作業者等)からの応答要求に応じて、第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置を示す情報を、通信ネットワーク105を介して応答要求者の通信端末等に送信する。
【0073】
以上説明したように、プロセッサ210及び記憶装置(主記憶装置220、補助記憶装置230)を有する情報処理装置200は、過去における、船舶20が港湾10に入港したときの入港軌跡を示す特徴量と、船舶20が港湾10内で投錨を開始したときの第1投錨開始位置を示すラベルと、を対応付けた学習データ112に基づいて学習を行う学習モデル113を記憶し、複数の第1投錨開始位置の投錨開始平均位置503と、投錨開始平均位置503の周囲に設定される、船舶20に投錨の開始を許容する投錨開始許容エリア504と、を算出し、現在における、船舶20が港湾10に入港したときの入港軌跡を示すデータを学習モデル113に入力することにより、船舶が港湾10内で投錨を開始する第2投錨開始位置を予測し、第2投錨開始位置が投錨開始許容エリア504に存在するとき、第2投錨開始位置を船舶20が投錨を開始する位置に決定する。
【0074】
情報処理装置200によれば、港湾10に入港する船舶20に対して、第2投錨開始位置を効率的に案内することが可能となる。
【0075】
また、プロセッサ210及び記憶装置(主記憶装置220、補助記憶装置230)を有する情報処理装置200は、過去における、船舶20が港湾10に入港したときの入港軌跡を示す特徴量と、船舶20が港湾10内で投錨の準備を開始したときの第1投錨準備開始位置、及び、船舶20が港湾10内で投錨を開始したときの第1投錨開始位置を示すラベルと、を対応付けた学習データ112に基づいて学習を行う学習モデル113を記憶し、複数の第1投錨準備開始位置の投錨準備開始平均位置501と、投錨準備開始平均位置501の周囲に設定される、船舶20に投錨の準備の開始を許容する投錨準備開始許容エリア502と、複数の第1投錨開始位置の投錨開始平均位置503と、投錨開始平均位置の周囲に設定される、船舶20に投錨の開始を許容する投錨開始許容エリア504と、を算出し、現在における、船舶20が港湾10に入港したときの入港軌跡を示すデータを学習モデル113に入力することにより、船舶20が港湾10内で投錨の準備を開始する第2投錨準備開始位置、及び、船舶20が港湾10内で投錨を開始する第2投錨開始位置を予測し、第2投錨準備開始位置が投錨準備開始許容エリア502に存在するとき、第2投錨準備開始位置を船舶20が投錨の準備を開始する位置に決定し、第2投錨開始位置が投錨開始許容エリア504に存在するとき、第2投錨開始位置を船舶20が投錨を開始する位置に決定する。
【0076】
情報処理装置200によれば、港湾10に入港する船舶20に対して、第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置を効率的に案内することが可能となる。
【0077】
また、情報処理装置200は、第2投錨準備開始位置が投錨準備開始許容エリア502に存在するとともに、第2投錨開始位置が投錨開始許容エリア504に存在するとき、第2投錨準備開始位置を船舶20が投錨の準備を開始する位置に決定するとともに、第2投錨開始位置を船舶20が投錨を開始する位置に決定する。
【0078】
情報処理装置200によれば、港湾10に入港する船舶20に対して、停泊が可能である場合のみ、第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置の双方を案内することが可能となる。
【0079】
また、情報処理装置200において、学習データ112は、特徴量として、船舶20の大きさ、船舶20が港湾10に入港したときの港湾10付近の海象(風速、風向、波高等)の少なくとも1つの情報を更に含む。
【0080】
情報処理装置200によれば、学習データ112は複数種類の特徴量を含むため、港湾10に入港する船舶20に対して、第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置を高精度に案内することが可能となる。
【0081】
また、情報処理装置200において、船舶20が港湾10に入港したときの入港軌跡は、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)による位置情報を含む。
【0082】
情報処理装置200によれば、入港軌跡として高精度の位置情報を利用するため、港湾10に入港する船舶20に対して、第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置を高精度に案内することが可能となる。
【0083】
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。本実施形態では、投錨案内システム100は、第2投錨準備開始位置及び第2投錨開始位置の双方を案内するシステムであるが、船舶20が余裕を持って投錨の準備を行うことが可能であれば、第2投錨開始位置のみを案内するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10 港湾
11 出入口
12 岸壁
20 船舶
30 陸地
40 防波堤
50 建屋
60 荷揚場
70 取水設備
100 投錨案内システム
105 通信ネットワーク
110 記憶部
111 制御プログラム
112 学習データ
113 学習モデル
115 インターネット
120 入力部
125 海象情報提供サーバ
130 投錨準備開始位置決定部
140 投錨開始位置決定部
150 出力部
160 位置情報提供装置
161 受信装置
162 演算装置
170 海象情報提供装置
180 管理装置
190 波浪計
200 情報処理装置
210 プロセッサ
220 主記憶装置
230 補助記憶装置
240 入力装置
250 出力装置
260 通信装置
501 投錨準備開始平均位置
502 投錨準備開始許容エリア
503 投錨開始平均位置
504 投錨開始許容エリア
505,506 第2投錨準備開始位置
507,508 第2投錨開始位置
1131 入力層
1132 中間層
1133 出力層