(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003729
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】横型射出成型機の昇降装置及び横型射出成型機の金型交換方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/07 20060101AFI20240105BHJP
B29C 45/64 20060101ALI20240105BHJP
B22D 17/22 20060101ALI20240105BHJP
B22D 17/20 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B29C45/07
B29C45/64
B22D17/22 A
B22D17/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103086
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】596037194
【氏名又は名称】パスカルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134131
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 知理
(74)【代理人】
【識別番号】100092738
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】北浦 一郎
(72)【発明者】
【氏名】上良 祥平
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AM04
4F202CA11
4F202CR03
4F202CR10
4F202CS07
4F202CS10
4F206AM04
4F206JA07
4F206JL03
4F206JL05
4F206JP30
4F206JQ02
4F206JQ06
4F206JQ81
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】 本発明は、小型の金型交換時にも安定して作業のできる射出成型機の昇降装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 本件発明の横型射出成型機の昇降装置6は、水平方向に相対移動自在に対向配置された固定プラテン1と可動プラテン2の対向空間に、吊り下げ装置4に吊り持ちされた金型5が挿入されて、該金型5が前記両プラテン1、2に取り付けられ、前記吊り下げ装置4と金型5の吊り持ちを解除する解除作業のために前記対向空間に作業者を位置させるものにおいて、前記昇降装置6は、梯子装置7と、該梯子装置7の上部に設けられた足場8と、該足場8の先端部に設けられた昇降用ステップ9とを有し、作業者が前記梯子装置7を上り、前記足場8から昇降用ステップ9により前記対向空間に位置するよう構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に相対移動自在に対向配置された固定プラテンと可動プラテンの対向空間に、吊り下げ装置に吊り持ちされた金型が挿入されて、該金型が前記両プラテンに取り付けられ、前記吊り下げ装置と金型の吊り持ちを解除する解除作業のために前記対向空間に作業者を位置させる昇降装置において、
前記昇降装置は、梯子装置と、該梯子装置の上部に設けられた足場と、該足場の先端部に設けられた昇降用ステップとを有し、
作業者が前記梯子装置を上り、前記足場から昇降用ステップにより前記対向空間に位置するよう構成された横型射出成型機の昇降装置。
【請求項2】
前記足場の先端部に該足場を延長するように第一ステップが位置変更可能に設けられ、
前記第一ステップに前記昇降用ステップが設けられている請求項1記載の横型射出成型機の昇降装置。
【請求項3】
前記第一ステップは、前記足場の先端部に回動自在に設けられて位置変更可能とされ、
前記昇降用ステップは、前記第一ステップの先端部にスライド自在に設けられている請求項2記載の横型射出成型機の昇降装置。
【請求項4】
前記第一ステップには、前記昇降用ステップ用の手摺が設けられている請求項3記載の横型射出成型機の昇降装置。
【請求項5】
水平方向に相対移動自在に対向配置された固定プラテンと可動プラテンの対向空間に、吊り下げ装置に吊り持ちされた金型が挿入されて、該金型が前記両プラテンに取り付けられ、前記吊り下げ装置と金型の吊り持ちを解除する解除作業をするために前記対向空間に作業者を位置させる金型交換作業において、
請求項1~4の何れか一つに記載の昇降装置を用いて、前記解除作業を行う横型射出成型機の金型交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横型射出成型機の昇降装置及び横型射出成型機の金型交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
横型射出成型機においては、例えば特開2020-66159号公報(特許文献1)に記載のように、金型を交換する場合、射出成形機の固定側および可動側プラテン間に、天井走行クレーのフックにより吊り持ちされた金型を挿入する。金型交換作業者は、クレーンの操作と射出成型機の型締め操作を行いつつ金型を両プラテンに固定した後、射出成型機によじ登ってクレーンフックを取外す作業を行っていた。なお、プラテン(platen)とは、金型取付盤のことである。射出成型機に金型を取り付けるための盤状の機構は、固定側と可動側とで構成されている。
【0003】
そこで、安全作業のために、特開2022-44515号公報(特許文献2)に示されるような昇降装置が提案されている。この従来のものは、特許文献2の
図16や
図21に示すように、作業者が射出成型機内の作業空間に出入りするための「足場」を備えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-66159号公報
【特許文献2】特開2022-44515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献2記載の従来のものでは、金型交換作業時、作業者は、「足場」を利用して作業空間に出入りしていた。
【0006】
成型機に取り付けられる金型は大小色々な種類があるところ、小さい金型の交換作業時は、足場から作業空間内に降りたり上がったりしなければならない。その際には、作業者は機械に足を掛けたりして昇り降りしなければならず、不安定な作業を伴うものであった。
【0007】
そこで、本発明は、小型の金型交換時にも安定して作業のできる射出成型機の昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、次の手段を講じた。すなわち、本発明は、水平方向に相対移動自在に対向配置された固定プラテンと可動プラテンの対向空間に、吊り下げ装置に吊り持ちされた金型が挿入されて、該金型が前記両プラテンに取り付けられ、前記吊り下げ装置と金型の吊り持ちを解除する解除作業のために前記対向空間に作業者を位置させる昇降装置において、前記昇降装置は、梯子装置と、該梯子装置の上部に設けられた足場と、該足場の先端部に設けられた昇降用ステップとを有し、作業者が前記梯子装置を上り、前記足場から昇降用ステップにより前記対向空間に位置するよう構成された横型射出成型機の昇降装置である。
【0009】
前記足場の先端部に該足場を延長するように第一ステップが位置変更可能に設けられ、
【0010】
前記第一ステップに前記昇降用ステップが設けられているのが好ましい。
【0011】
前記第一ステップは、前記足場の先端部に回動自在に設けられて位置変更可能とされ、前記昇降用ステップは、前記第一ステップの先端部にスライド自在に設けられているのが好ましい。
【0012】
前記第一ステップには、前記昇降用ステップ用の手摺が設けられているのが好ましい。
【0013】
本発明の横型射出成型機の金型交換方法は、水平方向に相対移動自在に対向配置された固定プラテンと可動プラテンの対向空間に、吊り下げ装置に吊り持ちされた金型が挿入されて、該金型が前記両プラテンに取り付けられ、前記吊り下げ装置と金型の吊り持ちを解除する解除作業をするために前記対向空間に作業者を位置させる金型交換作業において、前記昇降装置を用いて、前記解除作業を行うものである。
【発明の効果】
【0014】
本件発明によれば、固定プラテンと可動プラテンの対向空間内の作業領域に降りるための昇降用ステップを足場の先端部に設けたので、従来のように作業者が機械に直に足を掛けたりして昇り降りすることなく、安全に作業が行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態を示す横型射出成型機の昇降装置の斜視図。
【
図2】本発明の実施の形態を示す横型射出成型機の昇降装置の平面図。
【
図3】
図2のA―A線断面図であって、第一ステップが折畳まれた状態の図。
【
図5】昇降ステップを下方にスライドさせた状態の図。
【
図6】昇降ステップ上昇と、下降の状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1、
図2において、横型射出成型機は、水平方向に相対移動自在に対向配置された固定プラテン1と可動プラテン2を有する。固定プラテン1の四隅にタイバー3が固定され、可動プラテン2がタイバー3に沿って移動自在とされている。この両プラテ1、2の対向空間に、吊り下げ装置4(
図3参照)に吊り持ちされた金型5が挿入されて、この金型5が両プラテン1、2に取り付けられる。
【0017】
吊り下げ装置4と金型5の吊り持ちを解除する解除作業のために対向空間に作業者24を位置させる昇降装置6が設けられている。
【0018】
この昇降装置6は、梯子装置7を有する。梯子装置7の上部に足場8が設けられている。足場8の先端部に昇降用ステップ9が設けられている。この昇降装置6は、作業者24が梯子装置7を上り、足場8から昇降用ステップ9により対向空間に位置するよう構成されている。
【0019】
昇降装置6は、前記特許文献2に記載のように、射出成型機の側方に位置変更可能に設けられているが、定位置に設けられたものであってもよい。
【0020】
梯子装置7は、ほぼ正方形の四隅に立設された縦枠10を有する。一対の縦枠10間に上下方向等間隔に、作業者24が昇降する踏桟11が設けられている。踏桟11の設けられた縦枠10と対になる縦枠10間に横桟12が設けられ、また、上部の横桟12間を連結して、昇降する作業者24の安全を確保する安全桟13が設けられている。
【0021】
梯子装置7の最上部の踏桟11に、足場8が水平に配置されている。足場8は、平面視凸形状を呈している。足場8は、射出成型機の側方に沿った側部8aと、側部8aの中央部より対向空間に向かって突出する凸部8bを有する。足場8は、射出成型機の安全扉14の上端より上方に位置しており、側部8aは、安全扉14よりも外方に位置している。凸部8bは、安全扉14を超えてタイバー3の手前まで伸びている。
【0022】
足場8の周縁には、落下防止のための安全柵15が立設されている。
【0023】
凸部8bの先端に、タイバー3を超えて対向空間の内部まで入り込む第一ステップ16が設けられている。この第一ステップ16は足場8の一部である。
【0024】
図3に示すように、凸部8bの先端部に設けられた第一ステップ16は、金型5を吊り下げ装置4で吊り下げて、対向空間内に挿入するときに、邪魔にならないように、位置変更可能に設けられている。第一ステップ16は、足場8の先端部に枢支軸17を介して回動自在に設けられて位置変更可能とされている。
【0025】
図4に示すように、金型5が対向空間内に挿入されたのち、第一ステップ16は、枢支軸17回りに回動されて、第一ステップ16の平面と凸部8bの平面が同一平面の水平面とされる。この水平状態を維持するストッパ18が凸部8bの下面に設けられている。また第一ステップ16には、タイバー3の上面に当接して水平を維持する補助脚19が設けられている。
【0026】
第一ステップ16の先端には、昇降用ステップ9とそれ用の手摺20が設けられている。
【0027】
図5、6に示すように、昇降用ステップ9は、第一ステップ16に設けられたスライド筒21に、上下方向スライド自在に設けられている。昇降用ステップ9に設けられたストッパ22が、スライド筒21の上端に係止されて、昇降用ステップ9は、下降位置で保持される。
【0028】
手摺20には、昇降用ステップ9のストッパ22を吸着するマグネット23が設けられ、昇降用ステップ9の収納状態を維持する。
【0029】
上記昇降装置6によれば、吊り下げ装置4と金型5の吊り持ちを解除する解除作業は、次のように行われる。
【0030】
昇降装置6は、横型射出成型機に対し、常時定位置に設けられていてもよいが、通常は、待機位置と作業位置に位置変更可能に設けられている。作業位置において、足場8は、タイバー3の上方手前に位置している。足場8は、天井走行クレーン等の吊り下げ装置4に吊り持ちされた金型5が、対向空間内に出入りするのに障害とならないよう位置している。
【0031】
図3に示すように、この位置において、足場8の先端部に回動自在に設けられた第一ステップ16は、足場8から起立した状態で保持されている。
【0032】
図4に示すように、作業者24は、梯子装置7の踏桟11により足場8まで上がり、足場8の先端部に設けられた第一ステップ16が足場8と同一平面になるよう回動させる。この状態において、第一ステップ16は、タイバー3の上方を覆う位置とされている。足場8の下面にストッパ18が設けられ、このストッパ18により第一ステップ16は、水平を維持している。また、第一ステップ16の下面には、タイバー3の上面に当接する補助脚19が設けられ、第一ステップ16の水平を維持している。
【0033】
図5に示すように、第一ステップ16の先端にスライド自在に設けられている昇降用ステップ9を下げる。
【0034】
作業者24は、手摺20を持ち昇降用ステップ9から、対向空間の作業空間に出入りすることができる。
【0035】
なお、上記手順では、第一ステップ16を水平状態にした後、昇降用ステップ9を下げたが、先に昇降用ステップ9を伸ばした後に、第一ステップ16を水平状態にしてもよい。
【0036】
上記実施の形態によれば、次の効果を奏する。
【0037】
第一ステップ16を設置したことで、タイバー3を超え、金型5上面まで歩いていくことができる。なお、金型5を成形機に搭載する際は、第一ステップ16は退避する必要があるので、「位置変更可能」とされている。
【0038】
昇降用ステップ9を設けたので、金型5が小さい場合、第一ステップ16から金型5上面までの段差が大きくなるが、昇降用ステップ9により昇降が容易になる。
【0039】
昇降用手摺20を設けたので、安全に昇降できる。
【0040】
なお、本発明の横型射出成型機の金型交換方法の実施の形態は、上記の各昇降装置を用いて金型を取り換えるものである。
【0041】
本発明は上記実施の形態に示すものに限定されない。例えば、第一ステップ16は、足場8に回動自在に設けたものに限らず、伸縮自在にスライド式に設けられたものであってもよい。また、着脱自在に足場8を延長するように設けられたものであってもよい。
【0042】
昇降用ステップ9もスライド自在のものに限定されない。手摺20は、第一ステップ16に設けたものに限らず、昇降用テップ9に設けられたものであってもよい。
【0043】
また、本発明を、吊り下げ装置4と金型5の吊り持ちを解除する解除作業において説明したが、射出成型機から金型5を取り外すときに、吊り下げ装置4と金型5の吊り持ちを行う吊持ち作業においても適用できるものである。
【0044】
本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1 固定プラテン
2 可動プラテン
3 タイバー
4 吊り下げ装置
5 金型
6 昇降装置
7 梯子装置
8 足場
8a 側部
8b 凸部
9 昇降用ステップ
10 縦桟
11 踏桟
12 横桟
13 安全桟
14 安全扉
15 安全柵
16 第一ステップ
17 枢支軸
18 ストッパ
19 補助脚
20 手摺
21 スライド筒
22 ストッパ
23 マグネット
24 作業者