IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本製鋼所の特許一覧

特開2024-37291産業機械および産業機械における配線方法
<>
  • 特開-産業機械および産業機械における配線方法 図1
  • 特開-産業機械および産業機械における配線方法 図2
  • 特開-産業機械および産業機械における配線方法 図3
  • 特開-産業機械および産業機械における配線方法 図4
  • 特開-産業機械および産業機械における配線方法 図5
  • 特開-産業機械および産業機械における配線方法 図6
  • 特開-産業機械および産業機械における配線方法 図7
  • 特開-産業機械および産業機械における配線方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037291
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】産業機械および産業機械における配線方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/03 20060101AFI20240312BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B29C45/03
B22D17/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142018
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中▲崎▼ 友喜
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AJ02
4F206AJ12
4F206AR06
4F206AR16
4F206JA07
4F206JQ90
4F206JT32
4F206JT35
4F206JT40
(57)【要約】
【課題】産業機械において省スペースで敷設可能な配線構造および配線方法を提供する。
【解決手段】射出成形機100は、サーボアンプ143と、モータ151~154と、サーボアンプとモータとを接続する経路の少なくとも一部に配置された配線180とを備える。配線180は、少なくとも1つの絶縁層181に導電部182が配置された基板構造を有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1機器と、
第2機器と、
前記第1機器および前記第2機器とを接続する経路の少なくとも一部に配置された配線とを備え、
前記配線は、少なくとも1つの絶縁層に導電部が配置された基板構造を有している、産業機械。
【請求項2】
前記配線は、前記導電部を用いて動力用電力を伝達する動力配線である、請求項1に記載の産業機械。
【請求項3】
前記配線は、前記少なくとも1つの絶縁層における最外層の絶縁層の外部に配置され、前記少なくとも1つの絶縁層よりも熱伝達係数が大きい伝熱部材をさらに含む、請求項1に記載の産業機械。
【請求項4】
前記伝熱部材は、接地電位に接続されている、請求項3に記載の産業機械。
【請求項5】
前記配線は、前記産業機械内の構造部材に接触して配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の産業機械。
【請求項6】
装置内を冷却するための冷却媒体が流れる冷却配管をさらに備え、
前記配線は、前記冷却配管に接触して配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の産業機械。
【請求項7】
前記第1機器は、サーボアンプであり、
前記第2機器は、前記サーボアンプから供給される電力で駆動されるモータである、請求項1~4のいずれか1項に記載の産業機械。
【請求項8】
半導体、接続端子、および、前記半導体を冷却するための冷却部を含むサーボアンプをさらに備え、
前記第1機器は、前記半導体であり、
前記第2機器は、前記接続端子であり、
前記配線は、前記冷却部に接触して配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の産業機械。
【請求項9】
前記産業機械は、射出成形機である、請求項1~4のいずれか1項に記載の産業機械。
【請求項10】
前記配線は、前記産業機械内の構造部材に接触して配置されている、請求項9に記載の産業機械。
【請求項11】
装置内を冷却するための冷却媒体が流れる冷却配管をさらに備え、
前記配線は、前記冷却配管に接触して配置されている、請求項9に記載の産業機械。
【請求項12】
前記第1機器は、サーボアンプであり、
前記第2機器は、前記サーボアンプから供給される電力で駆動されるモータである、請求項9に記載の産業機械。
【請求項13】
半導体、接続端子、および、前記半導体を冷却するための冷却部を含むサーボアンプをさらに備え、
前記第1機器は、前記半導体であり、
前記第2機器は、前記接続端子であり、
前記配線は、前記冷却部に接触して配置されている、請求項9に記載の産業機械。
【請求項14】
以下のステップを含む、第1機器および第2機器を含む産業機械内における配線方法:
(a)少なくとも1つの絶縁層に導電部が配置された基板構造を有する配線を準備するステップ;
(b)前記配線を前記産業機械の構造部材に配置するステップ;
(c)前記配線を用いて前記第1機器および前記第2機器とを接続するステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、産業機械および産業機械における配線方法に関し、より特定的には、産業機械に設けられる機器間の配線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-008397号公報(特許文献1)には、金型を型締めする型締装置、および、樹脂を溶融して金型内に射出する射出装置などの各装置が、サーボモータによって動作するように構成された電動射出成形機が開示されている。特開2018-008397号公報(特許文献1)に開示された射出成形機においては、各装置を駆動するサーボモータはサーボアンプにより駆動されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-008397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような電動射出成形機に用いられるモータは、大きな駆動力を出力するために比較的大きな駆動電流がサーボアンプから供給される場合がある。そのため、サーボアンプからモータに至る給電経路には、駆動電流による発熱に耐えられるように、一般的には、難燃性ポリフレックス電線(MLFC)のような耐熱ケーブル、あるいは、銅またはアルミなどで形成されたバスバーが用いられる。
【0005】
一方で、MLFCおよびバスバーは、耐熱性を確保するために比較的大きな体積を有する。そのため、MLFCあるいはバスバーなどで給電経路を構成した場合、装置および/または制御盤内にこれらの部材の配置のために広いスペースが必要となり、機器の配置あるいはケーブルの敷設が制限される場合が生じ得る。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、産業機械において、省スペースで敷設可能な配線構造および配線方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面に係る産業機械は、第1機器と、第2機器と、第1機器および第2機器とを接続する経路の少なくとも一部に配置された配線とを備える。配線は、少なくとも1つの絶縁層に導電部が配置された基板構造を有している。
【0008】
本開示の他の局面に係る配線方法は、第1機器および第2機器を含む産業機械内における配線方法に関する。配線方法は、(a)少なくとも1つの絶縁層に導電部が配置された基板構造を有する配線を準備するステップと、(b)上記配線を産業機械の構造部材に配置するステップと、(c)上記配線を用いて第1機器および第2機器とを接続するステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示による産業機械においては、産業機械に設けられる機器同士の接続の一部に、基板構造を有する配線が用いられる。これにより、産業機械内において配線が占有するスペースを削減して、他の機器等の配置スペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に従う産業機械の一例である射出成形機の構成を説明するための図である。
図2】射出成形機におけるモータの配線経路を説明するための図である。
図3】基板配線の断面構造を示す図である。
図4】変形例の基板配線の平面図を示す図である。
図5】基板配線の敷設方法の第1例を示す図である。
図6】基板配線の敷設方法の第2例を示す図である。
図7】産業機械における配線方法を説明するためのフローチャートである。
図8】サーボアンプ内の配線に基板配線を適用した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
[実施の形態]
(射出成形機の構成)
図1は、実施の形態に従う産業機械の一例である射出成形機100の構成を説明するための図である。なお、説明の便宜上、射出成形機100が配置される床面をXY平面とし、当該床面に垂直な方向をZ軸方向とする。Z軸の正方向を上面側または上方、負方向を下面側または下方と称する場合がある。なお、実施の形態1における射出成形機100は、横型の射出成形機として示されているが、横型に限られず、竪型の射出成形機であってもよい。また、以降の説明においては、産業機械が射出成形機である場合の例について説明するが、本開示の特徴は、たとえば工作機械、プレス装置、押出成形機、レーザ加工機、および/または、産業用ロボットなどの他の産業機械にも適用可能である。
【0013】
図1を参照して、射出成形機100は、金型を型締めするための型締装置110、射出材料を溶融して射出するための射出装置120、操作盤130、および、制御装置140を含んで構成されている。図1においては、型締装置110は、射出装置120に対してX軸の負方向側に配置されている。
【0014】
型締装置110は、ベッド111と、固定盤112と、型締ハウジング113と、可動盤114と、タイバー115と、型締機構116と、金型117,118と、ボールねじ119とを含む。ベッド111は床面に配置されており、その上面に、固定盤112、型締ハウジング113および可動盤114等の機器が搭載されている。
【0015】
固定盤112は、ベッド111上において、射出装置120に近い側(すなわち、X軸の正方向)の端部に固定されている。型締ハウジング113は、ベッド111上におけるX軸の負方向の端部に配置されている。固定盤112と型締ハウジング113とは、複数のバーを含むタイバー115によって連結されている。型締ハウジング113は、ベッド111上において、X軸方向に移動可能である。
【0016】
可動盤114は、ベッド111上において、固定盤112と型締ハウジング113との間に配置されている。可動盤114は、X軸方向に移動可能に構成されている。型締ハウジング113と可動盤114とは、型締機構116によって連結されている。型締機構116はトグル機構を有している。トグル機構には、ボールねじ119が連結されており、型締ハウジング113に配置されるサーボモータ151を駆動して当該ボールねじ119を回転させることによって、型締ハウジング113に対して可動盤114をX軸方向に相対移動させることができる。なお、型締機構116として、油圧によって駆動される直動式のシリンダを用いてもよい。
【0017】
可動盤114および固定盤112には、金型117,118がそれぞれ配置されている。金型117および金型118は、可動盤114と固定盤112との間において互いに対向して配置されている。型締機構116を用いて金型117をX軸方向に移動させることによって、金型117と金型118とを密着させたり、金型117を金型118から離間させたりすることができる。以降の説明においては、金型117および金型118が離間した状態から密着する状態へ移行させる工程を「型締」と称する。また、金型117および金型118が密着している状態から離間した状態へ移行させる工程を「型開」と称する。
【0018】
型締工程によって金型117と金型118とが密着させた状態で、金型内部に溶融材料(樹脂)を充填し、冷却して固化させることによって、所望の形状の製品を成形することができる。製品の成形後、型開工程によって金型117を金型118から離間させた状態で、可動盤114に配置された突出機構(図示せず)を動作させることによって、成形された製品を金型117から取り出すことができる。突出機構は、可動盤114に配置されたサーボモータ152によって駆動される。なお、突出機構を用いて製品を取り出す工程を「突出」工程と称する。
【0019】
射出装置120は、基台121と、加熱シリンダ122と、駆動装置124と、ホッパ125と、ノズルタッチ装置127と、温度センサ128とを含む。基台121は、ベッド111のX軸の正方向側の床面に配置され、その上面に駆動装置124が搭載されている。駆動装置124には、サーボモータ153,154が配置されている。
【0020】
駆動装置124には、X軸方向に延在する加熱シリンダ122が配置されている。加熱シリンダ122は、内部を加熱するためのヒータ(図示せず)と、スクリュ123と、射出ノズル126とを含む。スクリュ123は、駆動装置124内のサーボモータ153によって駆動され、X軸方向を回転軸として回転可能に構成される。また、スクリュ123は、サーボモータ154によってX軸方向に移動可能に構成されている。射出ノズル126は、加熱シリンダ122における型締装置110側の端部(すなわち、X軸の負方向の端部)に配置されている。加熱シリンダ122は、ホッパ125から投入されたビーズ状の樹脂材料を加熱溶融し、スクリュ123を用いて混練することによって溶融材料を生成する。このように、樹脂材料を溶融する工程を「可塑化」工程と称する。
【0021】
ノズルタッチ装置127は、たとえば油圧シリンダを用いた機構、あるいは、ボールねじを用いた機構によって構成されており、駆動装置124と、型締装置110の固定盤112とを連結している。ノズルタッチ装置127がボールねじを用いた機構によって構成されている場合には、ノズルタッチ装置127は、駆動装置124によって駆動され、駆動装置124および加熱シリンダ122をX軸方向に移動させる。ノズルタッチ装置127によって、射出ノズル126を型締装置110における金型118のスプルーブッシュに接触させ、射出ノズル126から溶融材料を射出することによって、金型117,118のキャビティ内に溶融材料が充填される。サーボモータ154は、加熱シリンダ122内のスクリュ123をX軸の負方向に移動させることによって溶融材料に圧力を付与し、金型117,118内への溶融材料の注入、および、注入後の溶融材料の圧力を一定に保持する。
【0022】
なお、ノズルタッチ機構の構成については、上記のように固定盤112と駆動装置124との間に配置されたボールねじによって射出装置全体を移動させる構成には限らず、他の構成であってもよい。たとえば、装置フレームと加熱シリンダ後部の固定部材とをボールねじを用いて連結し、加熱シリンダ自体を金型方向へ移動させる構成であってもよい。あるいは、射出装置が搭載されたスライドベースと装置フレームとをボールねじを用いて連結し、スライドベースとともに射出装置を移動させて射出ノズルを金型へ接触させる構成であってもよい。
【0023】
なお、金型117,118内に溶融材料を注入する工程を「射出」工程と称する。また、射出工程後、金型117,118内に充填された溶融材料を一定圧力に保持して冷却する工程を「保圧」工程と称する。
【0024】
温度センサ128は、加熱シリンダ122における射出ノズル126の近傍に配置されている。温度センサ128は、加熱シリンダ122内部の溶融材料の温度を検出し、制御装置140へ出力する。制御装置140は、温度センサ128の検出値に基づいてヒータを制御して、溶融材料の温度を所望の温度に調整する。
【0025】
保圧工程が完了すると、型開工程および突出工程が実行されて、成形された製品が取り出される。
【0026】
射出成形機100は、型締工程、射出工程、保圧工程、可塑化工程、型開工程および突出工程をサイクリックに繰り返し実行することによって、製品を連続的に形成することができる。
【0027】
制御装置140は、基台121の内部に格納されている。制御装置140は、CPU(Central Processing Unit)141と、メモリ142と、サーボモータ151~154を駆動するためのサーボアンプ143とを含む。制御装置140は、射出成形機100に配置された各種センサの検出値を取得し、射出成形機100を統括的に制御する。
【0028】
操作盤130は、オペレータが射出成形機100を操作するための機器であり、液晶ディスプレイのような表示装置、および、キーボードなどの入力装置を含む。操作盤130は制御装置140に接続されており、射出成形機100の状態を取得して表示したり、入力装置からのユーザ操作信号を制御装置140に出力したりすることができる。操作盤130は、表示装置および入力装置が一体化されたタッチパネルであってもよい。また、操作盤130は、射出成形機100のベッド111あるいは基台121に取り付けられていてもよいし、射出成形機100とは独立した位置に配置されていてもよい。
【0029】
図2は、射出成形機100におけるモータの配線経路を説明するための図である。上述のように、射出成形機100には、トグル機構を駆動するためのサーボモータ151、突出機構を駆動するためのサーボモータ152、スクリュ123を回転するためのサーボモータ153、および、スクリュ123をX軸方向に移動するためのサーボモータ154が設けられている。これらのサーボモータ151~154には、制御装置140内に配置されたサーボアンプ143から。給電経路171~174によって駆動電力がそれぞれ供給される。
【0030】
サーボアンプからサーボモータへは、数十アンペア以上の比較的大きな駆動電流が供給される場合があるため、駆動電流による発熱に対する耐熱性の観点から、この給電経路にはMLFCのような耐熱ケーブル、あるいは、銅またはアルミなどで形成されたバスバーが一般的に用いられる。
【0031】
一方で、MLFCおよびバスバーは、耐熱性を確保するために比較的大きな体積を有する。そのため、MLFCあるいはバスバーなどで給電経路を構成した場合、装置および/または制御盤内にこれらの部材を配置するために広いスペースが必要となり、機器の配置あるいはケーブルの敷設が制限される場合が生じ得る。あるいは、ケーブル敷設のためのスペース確保のために、射出成形機本体のサイズが大型化する場合もあり得る。
【0032】
そこで、本実施の形態においては、給電経路の一部に基板構造を有する薄型の配線(以下、「基板配線」とも称する。)を用いることによって、給電経路に必要とされるスペースを削減する構成を採用する。ここで、基板配線を用いた場合においても発熱に対する問題が生じるが、当該基板配線を、射出成形機の本体を支持するフレームなどの構造部材、機器を覆う筐体、および/または、他の機器を冷却するための冷却器などに接触させて敷設することによって、駆動電流によって生じるジュール熱の放熱を行なう。このような構成とすることによって、効率的に放熱を行ないながら、省スペースで給電経路を構築することができる。
【0033】
(基板配線の構造)
図3は、本実施の形態において用いられる基板配線180の断面構図を示す図である。基板配線180は、少なくとも2つの絶縁層181と、当該絶縁層181の間に配置された少なくとも1つの導電部182とを含む帯状の構造を有している。なお、図3の例においては、絶縁層181および導電部182の積層方向をZ軸方向とし、基板配線180の延在方向をX軸方向とする。図3に示される基板配線180においては、5つの絶縁層181と4つの導電部182が図中のZ軸方向に交互に積層された構成が示されているが、絶縁層181および導電部182の数はこれに限られない。
【0034】
絶縁層181は、たとえば、フェノール、エポキシ、ガラスエポキシ、ポリイミド、またはポリエステルなどの樹脂で形成されている。絶縁層181は、柔軟性のないリジッド基板であってもよいし、柔軟性を有し屈曲することができるフレキシブル基板であってもよい。導電部182は、銅あるいはアルミなどの金属部材が用いられる。
【0035】
サーボモータとして交流モータあるいは直流モータが用いられるが、基板配線180は、給電経路の各相ごとに個別に用いられてもよいし、1つの基板配線180内の絶縁された導電部182に各相を割り当ててもよい。また、電流容量を確保するために、基板配線180内の複数層の導電部182を、同一の相の経路として割り当ててもよい。
【0036】
さらに、基板配線180は、最外層の絶縁層181の外表面に、絶縁層181よりも熱伝達係数が大きい伝熱部材183が配置される。伝熱部材183としては、たとえば銅などの金属部材が用いることができるが、基板配線180内部の導電部182とは電気的には絶縁された状態とされる。伝熱部材183を設けることによって、基板配線180を構造部材などに配置した際に、導電部182で生じた熱を効率的に構造部材に伝達することができる。なお、伝熱部材183は必須の構成ではなく、発熱量が少ない場合には、伝熱部材183を設けず、絶縁層181を構造部材などに直接接触させる構成であってもよい。また、伝熱部材183を配置する場合には、最外層の絶縁層181のうち、少なくとも構造部材などに接触する側の絶縁層に配置されていればよい。
【0037】
また、伝熱部材183として金属などの導電材料が用いられる場合、当該伝熱部材183を接地電位に接続することによって、伝熱部材183を電磁シールドとして機能させることもできる。このようにすると、駆動電流に起因して生じる電磁波に伴う外部への影響を低減することができる。また、外部からの電磁ノイズによるサーボモータへの影響も低減することができる。
【0038】
図3には示されていないが、基板配線180の端部には、内部の導電部182と外部との電気的接続を行なうための接続端子あるいはリード線が設けられている。サーボアンプ143およびサーボモータ151~154(図1図2)の接続端子との接続、ならびに、異なる基板配線同士の接続は、上記のリード線を用いて、あるいは、双方の接続端子同士をMLFCなどの他のケーブルを用いて行なわれる。
【0039】
なお、図3の例においては、導電部182における積層方向の両面に絶縁層181が配置され、導電部182が絶縁層181で覆われている構成が示されているが、最外層の絶縁層181の一方がなく、導電部182が露出した構成であってもよい。この場合、最外層の絶縁層181が配置された面が構造部材などに接触するように取り付けられる。すなわち、基板配線180には、少なくとも1層の絶縁層181が配置されていればよい。
【0040】
なお、上記の例においては、「サーボアンプ143」が本開示の「第1機器」に対応し、「サーボモータ151~154」の各々が本開示の「第2機器」に対応する。
【0041】
図4は、変形例の基板配線180Aの平面図を示す図である。基板配線180Aにおいては、同一層内に、配線の延在方向(図中のX軸方向)に沿って2つの導電部182A,182Bが平行に配置されている。なお、導電部182Aおよび導電部182Bは、同一層内に配置されているが、電気的には互いに絶縁されている。
【0042】
(基板配線の敷設例)
図5および図6は、上述のような基板配線180の敷設例を示す図である。図5は、射出成形機100の構造部材に基板配線180を敷設した場合の例を示す図である。図5においては、構造部材として、射出成形機100のフレームのうち、ベース部分のチャンネルベース200、および、当該チャンネルベース200から鉛直方向に延在するポスト210が例示されている。基板配線180は、基本的には平板形状を有しているため、チャンネルベース200およびポスト210の平坦部分に接触して配置される。そして、段差がある場合、および/または、図5のように延在方向が鉛直方向から水平方向に屈曲する場合には、2つの基板配線180の間は、柔軟性のあるケーブル185あるいはバスバーを用いて接続される。なお、基板配線180がフレキシブル基板で形成される場合には、段差部および屈曲部にも同一の配線を用いてもよい。
【0043】
図6は、基板配線180が、射出成形機100内の冷却配管250に敷設される場合の例を示す図である。射出成形機100には、たとえば、加熱シリンダ122(図1)からの熱の影響を低減するため、あるいは、金型117,118(図1)を冷却するために、冷却水などの冷却媒体が流れる冷却配管250が設けられる場合がある。このような冷却配管250が配置されている場合には、基板配線180を当該冷却配管250に接触して配置することによって、放熱効果をさらに向上させることができる。なお、基板配線180は、端部において、柔軟性のあるケーブル186あるいはバスバーを用いて、他の基板配線、あるいは、サーボアンプまたはサーボモータなどの各機器に接続される。
【0044】
(配線方法)
図7は、本実施の形態に係る基板配線180を用いた、射出成形機100の配線方法を説明するためのフローチャートである。図7においては、上記のようにサーボアンプとサーブモータとを接続する配線経路の一部に、基板配線180を用いる場合を例として説明する。
【0045】
図7を参照して、ステップS10にて、サーボアンプから出力可能な定格電流等の仕様に適合した基板配線180を準備する。次に、ステップS20において、射出成形機100内に配置された機器(サーボアンプ/サーボモータ)の配置から配線ルートを検討し、射出成形機100の構造部材、筐体および/または冷却配管に基板配線180を敷設する。そして、ステップS30にて、配線経路の一部に基板配線180を用い、その他の部分にケーブルおよび/またはバスバーを用いて、サーボアンプとサーボモータとを接続する。
【0046】
なお、上記の説明においては、サーボアンプとサーボモータとを接続するための動力配線の一部に基板配線180を用いる場合を例として説明したが、たとえば、図示しない油圧ポンプユニットへの給電配線、あるいは、加熱ヒータへの給電配線などの、他の動力配線の一部に基板配線180を用いてもよい。さらに、動力配線に限らず、センサおよび/または機器間で制御信号を伝達する制御配線に基板配線180が用いられてもよい。
【0047】
本実施の形態の基板配線は、射出成形機内の機器間を接続するための配線として用いられるだけでなく、機器内で用いられる配線に適用することもできる。図8は、サーボアンプ143内の配線に基板配線180を適用した例を示す図である。図8においては、サーボアンプ143内のパワー半導体と接続端子とを接続する配線経路として基板配線180を用いる例を示す。
【0048】
(機器内配線への適用例)
図8を参照して、基板配線180は、サーボアンプ143内の放熱用の冷却フィン350に配置されている。そして、銅板あるいはアルミ板などの金属板で形成されたヒートスプレッダ310を介して半導体300が配置されている。図8には示されていないが、半導体300と基板配線180とは、ワイヤボンディング等により電気的に接続されている。また、基板配線180には接続端子190が配置されており、ケーブル187あるいはバスバーを用いて、サーボアンプ143内の他の機器と半導体300とが接続される。
【0049】
このような構成とすることによって、半導体300における瞬間的な発熱についてはヒートスプレッダ310にて吸収するとともに、冷却フィン350によって半導体300および基板配線180の熱を放熱することができる。そして、基板配線180を用いることによって、サーボアンプ143内のケーブルおよびバスバーの一部を削減することができ、サーボアンプ143内のスペースを確保することができる。
【0050】
図8の例においては、「半導体300」が本開示の「第1機器」に対応し、「接続端子190」が本開示の「第2機器」に対応する。また、「冷却フィン350」は、本開示における「冷却部」に対応する。
[態様]
(第1項)一態様に係る産業機械は、第1機器と、第2機器と、第1機器および第2機器とを接続する経路の少なくとも一部に配置された配線とを備える。配線は、少なくとも1つの絶縁層に導電部が配置された基板構造を有している。
【0051】
(第2項)第1項に記載の産業機械において、配線は、導電部を用いて動力用電力を伝達する動力配線である。
【0052】
(第3項)第1項または2項に記載の産業機械において、配線は、少なくとも1つの絶縁層における最外層の絶縁層の外部に配置された伝熱部材をさらに含む。伝熱部材は、上記の少なくとも1つの絶縁層よりも熱伝達係数が大きい。
【0053】
(第4項)第3項に記載の産業機械において、伝熱部材は、接地電位に接続されている。
【0054】
(第5項)第1項~第4項のいずれか1項に記載の産業機械において、配線は、産業機械内の構造部材に接触して配置されている。
【0055】
(第6項)第1項~第4項のいずれか1項に記載の産業機械は、装置内を冷却するための冷却媒体が流れる冷却配管をさらに備える。配線は、冷却配管に接触して配置されている。
【0056】
(第7項)第1項~第6項のいずれか1項に記載の産業機械において、第1機器は、サーボアンプであり、第2機器は、サーボアンプから供給される電力で駆動されるモータである。
【0057】
(第8項)第1項~第5項のいずれか1項に記載の産業機械は、半導体、接続端子、および、半導体を冷却するための冷却部を含むサーボアンプをさらに備える。第1機器は半導体であり、第2機器は接続端子である。配線は、冷却部に接触して配置されている。
【0058】
(第9項)第1項~第8項のいずれか1項に記載の産業機械は、射出成形機である。
(第10項)第9項に記載の産業機械において、配線は、産業機械内の構造部材に接触して配置されている。
【0059】
(第11項)第9項に記載の産業機械は、装置内を冷却するための冷却媒体が流れる冷却配管をさらに備える。配線は、冷却配管に接触して配置されている。
【0060】
(第12項)第9項に記載の産業機械において、第1機器は、サーボアンプであり、第2機器は、サーボアンプから供給される電力で駆動されるモータである。
【0061】
(第13項)第9項に記載の産業機械は、半導体、接続端子、および、半導体を冷却するための冷却部を含むサーボアンプをさらに備える。第1機器は半導体であり、第2機器は接続端子である。配線は、冷却部に接触して配置されている。
【0062】
(第14項)一態様に係る配線方法は、第1機器および第2機器を含む産業機械内における配線方法に関する。配線方法は、以下のステップを含む:
(a)少なくとも1つの絶縁層に導電部が配置された基板構造を有する配線を準備するステップ;
(b)配線を産業機械の構造部材に配置するステップ;
(c)配線を用いて第1機器および第2機器とを接続するステップ。
【0063】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
【符号の説明】
【0064】
100 射出成形機、110 型締装置、111 ベッド、112 固定盤、113 型締ハウジング、114 可動盤、115 タイバー、116 型締機構、117,118 金型、119 ボールねじ、120 射出装置、121 基台、122 加熱シリンダ、123 スクリュ、124 駆動装置、125 ホッパ、126 射出ノズル、127 ノズルタッチ装置、128 温度センサ、130 操作盤、140 制御装置、141 CPU、142 メモリ、143 サーボアンプ、151~154 サーボモータ、171~174 給電経路、180,180A 基板配線、181 絶縁層、182,182A,182B 導電部、183 伝熱部材、185~187 ケーブル、190 接続端子、200 チャンネルベース、210 ポスト、250 冷却配管、300 半導体、310 ヒートスプレッダ、350 冷却フィン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8