(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037294
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】車両制御装置及び車両制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 50/12 20120101AFI20240312BHJP
B60W 30/08 20120101ALI20240312BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240312BHJP
B60K 28/10 20060101ALI20240312BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20240312BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240312BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240312BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B60W50/12
B60W30/08
G08G1/16 C
B60K28/10
B60W40/02
B60W10/06
B60W10/08
F02D29/06 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142024
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】石神 裕丈
(72)【発明者】
【氏名】夏目 充啓
【テーマコード(参考)】
3D037
3D241
3G093
5H181
【Fターム(参考)】
3D037FA16
3D037FB01
3D037FB02
3D241BA31
3D241BA55
3D241BB05
3D241BC01
3D241CC02
3D241CC03
3D241CD07
3D241CD15
3D241CE05
3D241CE08
3D241DA13Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DC31Z
3D241DC33Z
3D241DC54Z
3G093BA04
5H181AA01
5H181BB15
5H181CC04
5H181LL01
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】ドライバの煩わしさを低減しつつ、障害物との衝突を防止することが可能な車両制御装置及び車両制御プログラムを提供する。
【解決手段】ECU20は、撮像装置10により撮像された静止画像に基づいて、車両の進行方向における障害物の有無を判定する障害物判定部22と、車両が発進する際に、障害物判定部22による判定結果に基づいて、車両の駆動力を制限する駆動力制御部23と、を備える。駆動力制御部23は、車両が発進してから予め定めた所定時間が経過するまでの期間で、車両にて許容される最大許容加速度よりも小さい中間加速度以下となるように、駆動力を第1制限駆動力以下に制限する一方、所定時間が経過した時点で、障害物判定部22により障害物が存在すると判定されれば、駆動力を第1制限駆動力より小さい第2制限駆動力以下に制限し、障害物が存在しないと判定されれば、駆動力の制限を解除する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバによるアクセル操作量に基づいて車両の駆動力を制御する車両制御装置(20)であって、
前記車両に搭載された撮像装置(10)により撮像された静止画像に基づいて、前記車両の進行方向における障害物の有無を判定する判定部(22)と、
前記車両が発進する際に、前記判定部による判定結果に基づいて、前記車両の駆動力を制限する制御部(23)と、を備え、
前記制御部は、
前記車両が発進してから予め定めた所定時間が経過するまでの期間で、前記車両にて許容される最大許容加速度よりも小さい中間加速度以下となるように、前記駆動力を第1制限駆動力以下に制限する一方、
前記所定時間が経過した時点で、前記判定部により前記障害物が存在すると判定されれば、前記駆動力を前記第1制限駆動力より小さい第2制限駆動力以下に制限し、前記障害物が存在しないと判定されれば、前記駆動力の制限を解除する、車両制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記車両の発進時における前記アクセル操作量に基づいて、前記所定時間を設定するものであり、前記アクセル操作量が大きい場合は、前記アクセル操作量が小さい場合と比較して前記所定時間を短くする、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記車両の発進時における当該車両の加速度に基づいて、前記所定時間を設定するものであり、前記車両の加速度が大きい場合は、前記車両の加速度が小さい場合と比較して前記所定時間を短くする、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記車両の周囲における前記撮像装置の撮像の環境情報を取得する取得部と、
前記環境情報に基づいて、前記所定時間を設定する設定部と、
を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
ドライバによるアクセル操作量に基づいて車両の駆動力を制御する車両制御装置(20)であって、
前記車両に搭載された撮像装置(10)により車両停止状態で撮像された静止画像に基づいて、前記車両の進行方向における障害物の有無を判定する第1判定部(24)と、
前記撮像装置により車両移動状態で撮像された複数の時系列画像に基づいて、前記車両の進行方向における障害物の有無を判定する第2判定部(25)と、
前記車両が発進する際に、前記各判定部による判定結果に基づいて、前記車両の駆動力を制限する制御部(23)と、を備え、
前記制御部は、
前記車両の発進時点において前記第1判定部により前記障害物が存在すると判定された場合に、前記車両にて許容される最大許容加速度よりも小さい中間加速度以下となるように、前記駆動力を第1制限駆動力以下に制限する一方、
前記車両の発進後において前記第2判定部により前記障害物が存在すると判定されれば、前記駆動力を前記第1制限駆動力より小さい第2制限駆動力以下に制限し、前記障害物が存在しないと判定されれば、前記駆動力の制限を解除する、車両制御装置。
【請求項6】
車両に搭載された撮像装置(10)により撮像された静止画像に基づいて、前記車両の進行方向における障害物の有無を判定する判定部(22)と、
前記車両が発進する際に、前記判定部による判定結果に基づいて、前記車両の駆動力を制限する制御部(23)と、を備える車両制御装置(20)に適用され、
前記制御部に、
前記車両が発進してから予め定めた所定時間が経過するまでの期間で、前記車両にて許容される最大許容加速度よりも小さい中間加速度以下となるように、前記駆動力を第1制限駆動力以下に制限させる一方、
前記所定時間が経過した時点で、前記判定部により前記障害物が存在すると判定されれば、前記駆動力を前記第1制限駆動力より小さい第2制限駆動力以下に制限させ、前記障害物が存在しないと判定されれば、前記駆動力の制限を解除させる、車両制御プログラム。
【請求項7】
車両に搭載された撮像装置(10)により車両停止状態で撮像された静止画像に基づいて、前記車両の進行方向における障害物の有無を判定する第1判定部(24)と、
前記撮像装置により車両移動状態で撮像された複数の時系列画像に基づいて、前記車両の進行方向における障害物の有無を判定する第2判定部(25)と、
前記車両が発進する際に、前記各判定部による判定結果に基づいて、前記車両の駆動力を制限する制御部(23)と、を備える車両制御装置(20)に適用され、
前記制御部に、
前記車両の発進時点において前記第1判定部により前記障害物が存在すると判定された場合に、前記車両にて許容される最大許容加速度よりも小さい中間加速度以下となるように、前記駆動力を第1制限駆動力以下に制限させる一方、
前記車両の発進後において前記第2判定部により前記障害物が存在すると判定されれば、前記駆動力を前記第1制限駆動力より小さい第2制限駆動力以下に制限させ、前記障害物が存在しないと判定されれば、前記駆動力の制限を解除させる、車両制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置及び車両制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクセルペダルの誤踏みに起因する車両の急激な加速や、誤発進による車両と障害物との衝突を防止する発明が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載された発明では、障害物が無いと判定した場合は、アクセル操作量に応じた要求駆動力を動力源により発生させ、障害物が有ると判定した場合は、駆動力を要求駆動力よりも小さい制限駆動力以下に抑制し、障害物の有無を判定できない場合は、駆動力を要求駆動力よりも小さく制限駆動力よりも大きい中間駆動力以下に抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、障害物の有無の判定ができない状態が続くと中間駆動力以下の抑制が継続することになり、ドライバは煩わしさを感じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ドライバの煩わしさを低減しつつ、障害物との衝突を防止することが可能な車両制御装置及び車両制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明は、
ドライバによるアクセル操作量に基づいて車両の駆動力を制御する車両制御装置であって、
前記車両に搭載された撮像装置により撮像された静止画像に基づいて、前記車両の進行方向における障害物の有無を判定する判定部と、
前記車両が発進する際に、前記判定部による判定結果に基づいて、前記車両の駆動力を制限する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記車両が発進してから予め定めた所定時間が経過するまでの期間で、前記車両にて許容される最大許容加速度よりも小さい中間加速度以下となるように、前記駆動力を第1制限駆動力以下に制限する一方、
前記所定時間が経過した時点で、前記判定部により前記障害物が存在すると判定されれば、前記駆動力を前記第1制限駆動力より小さい第2制限駆動力以下に制限し、前記障害物が存在しないと判定されれば、前記駆動力の制限を解除することを特徴とする。
【0007】
上記構成では、車両が発進してから所定時間が経過するまでは、車両にて許容される最大許容加速度よりも小さい中間加速度以下となるように、車両の駆動力を第1制限駆動力以下に制限するようにした。これにより、車両の発進時(走行開始直後)において、仮にアクセル誤操作が発生したとしても、車両の急加速が抑制される。また、所定時間が経過した時点で、障害物が存在すると判定されるか障害物が存在しないと判定されるかに応じて、駆動力を第1制限駆動力より小さい第2制限駆動力以下に制限するか、又は駆動力の制限を解除するようにした。この場合、車両が僅かに進んだ時点での加速制限の強化により障害物に対する適正な衝突抑制が可能になる一方、加速制限の状態が不要に継続されることが回避され、ドライバが感じる煩わしさを低減することが可能となる。このように上記構成によれば、衝突防止と煩わしさ低減を両立させることが可能となる。
【0008】
第2発明は、
ドライバによるアクセル操作量に基づいて車両の駆動力を制御する車両制御装置であって、
前記車両に搭載された撮像装置により車両停止状態で撮像された静止画像に基づいて、前記車両の進行方向における障害物の有無を判定する第1判定部と、
前記撮像装置により車両移動状態で撮像された複数の時系列画像に基づいて、前記車両の進行方向における障害物の有無を判定する第2判定部と、
前記車両が発進する際に、前記各判定部による判定結果に基づいて、前記車両の駆動力を制限する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記車両の発進時点において前記第1判定部により前記障害物が存在すると判定された場合に、前記車両にて許容される最大許容加速度よりも小さい中間加速度以下となるように、前記駆動力を第1制限駆動力以下に制限する一方、
前記車両の発進後において前記第2判定部により前記障害物が存在すると判定されれば、前記駆動力を前記第1制限駆動力より小さい第2制限駆動力以下に制限し、前記障害物が存在しないと判定されれば、前記駆動力の制限を解除することを特徴とする。
【0009】
上記構成では、車両停止状態において、撮像装置の静止画像に基づいて、車両の進行方向における障害物の有無を判定するとともに、車両移動状態において、撮像装置の複数の時系列画像に基づいて、車両の進行方向における障害物の有無を判定することとしており、かかる場合、時系列画像による障害物判定は、静止画像による障害物の判定よりも高精度である反面、判定が可能になるまでに時間を要する。この点を考慮し、車両の発進時点において、撮像装置の静止画像を用いた障害物判定によって障害物が存在すると判定された場合に、車両にて許容される最大許容加速度よりも小さい中間加速度以下となるように、車両の駆動力を第1制限駆動力以下に制限するようにした。これにより、車両の発進時(走行開始直後)において、仮にアクセル誤操作が発生したとしても、車両の急加速による障害物への衝突が抑制される。
【0010】
また、車両の発進後において時系列画像を用いた障害物判定が可能になった後は、その障害物判定により障害物が存在すると判定されるか障害物が存在しないと判定されるかに応じて、駆動力を第1制限駆動力より小さい第2制限駆動力以下に制限するか、又は駆動力の制限を解除するようにした。この場合、時系列画像による障害物判定が可能になるタイミングは車両が僅かに進んだ時点であり、その時点での加速制限の強化により障害物に対する適正な衝突抑制が可能になる一方、加速制限の状態が不要に継続されることが回避され、ドライバが感じる煩わしさを低減することが可能となる。このように上記構成によれば、衝突防止と煩わしさ低減を両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る加速抑制システムの構成図。
【
図2】第1実施形態に係るECUの一動作例を説明するフローチャート。
【
図4】加速抑制制御をより具体的に説明するタイムチャート。
【
図5】第2実施形態に係る加速抑制システムの構成図。
【
図6】第2実施形態に係るECUの一動作例を説明するフローチャート。
【
図7】加速抑制制御をより具体的に説明するタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)
図1を参照して、第1実施形態に係る加速抑制システム100の構成例について説明する。以下では加速抑制システム100は、四輪車等の自動車に搭載されるものとして説明する。
図1に示すように、加速抑制システム100は、撮像装置としてのカメラ10と、アクセル開度センサ11と、車速センサ12と、ECU20(Electronic Control Unit)と、走行駆動装置13を備える。
【0014】
カメラ10は、車両の前方や後方などに設置され、移動時に車両の前方や後方を連続的に撮像する。カメラ10によって撮像された画像は、ECU20に入力される。この画像の主な使用用途として、先行車両、歩行者、壁などの障害物までの距離を算出することに用いられる。本実施形態では、カメラ10は単眼カメラである。
【0015】
アクセル開度センサ11は、ドライバの操作対象であるアクセルペダルの操作量(ペダル踏込量)をアクセル開度として検出し、そのアクセル開度を示すアクセル開度信号をECU20に出力する。車速センサ12は、車両の速度に応じた車速信号をECU20に出力する。走行駆動装置13は、車両の走行時に走行用動力を生じさせる装置であり、例えばエンジンや走行用モータである。
【0016】
ECU20は、CPU(Central Processing Unit)、記憶部、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。記憶部は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、フラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)などであり、ECU20の備えるCPUが実行する各種プログラム(ファームウェアやアプリケーションプログラムなど)やCPUが実行した処理の結果などを格納する。ECU20は、アクセル開度に応じて車両の要求駆動力TR(要求トルク)を算出し、その要求駆動力TRに基づいて走行駆動装置13の駆動を制御する。要求駆動力TRは、例えばアクセル開度と駆動力との関係を定めた相関マップを用い、アクセル開度に応じて決定される。また、ECU20は、エンジンに対してスロットル開度制御や点火時期制御などを行ったり、走行用モータに対してトルク指令信号を出力したりすることで、車両の駆動力を制御する。
【0017】
また、ECU20は、
図1に示す発進判定部21、障害物判定部22、駆動力制御部23を備えており、これらは、カメラ10やアクセル開度センサ11、車速センサ12等から取得した情報に基づいて記憶部に格納されたプログラムをCPUが実行することにより機能するソフトウェア機能部である。ECU20が提供する機能は、実体的な記憶部に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータだけでなく、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供されてもよい。ECU20が「車両制御装置」に相当する。
【0018】
発進判定部21は、車両が停止状態から発進したことを判定する。判定方法は特に限定されないが、例えば、発進判定部21は、車速センサ12からの車速信号を用い、車両が発進したか否かの判定を行うことができる。
【0019】
障害物判定部22は、車両の移動中において、カメラ10によって撮像された画像に基づいて、車両の進行方向に障害物が存在するか否かを判定する。具体的には、障害物判定部22は、カメラ10によって連続的に撮像された複数の画像に基づいて、障害物を認識するとともに、その障害物までの距離を推定する。そして、推定された障害物までの距離が所定距離内(例えば数メートル以内)である場合に、車両の進行方向に障害物が存在すると判定する。なお、車両の進行方向の障害物について、車両が前進走行していれば、前方の障害物が判定の対象となり、車両がバック走行していれば、後方の障害物が判定の対象となる。障害物判定部22が「判定部」に相当する。
【0020】
駆動力制御部23は、車両の発進時において、車両の駆動力を制限することで加速抑制を実施する。本実施形態では、車両の駆動力を制限する制限駆動力として第1制限駆動力TL1と、第2制限駆動力TL2との設定が可能であり、第1制限駆動力TL1によれば、車両の加速度が、車両にて許容される最大許容加速度よりも小さい中間加速度以下に抑制される。また、第2制限駆動力TL2は、第1制限駆動力TL1よりも小さい駆動力となっている。例えば、車両にて許容される最大許容加速度は0.3Gであり、中間加速度は0.15Gである。駆動力制御部23が「制御部」に相当する。
【0021】
次に、
図2のフローチャートを参照して、ECU20により実行される加速抑制処理の一例を説明する。
図2に示す処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0022】
ステップS101では、例えば車速センサ12からの車速信号を用い、車両が停止状態から発進したか否かを判定する。車両が発進したと判定された場合(ステップS101でYES)、ステップS102に進む。一方、車両が発進したと判定されるまで処理は待機する(ステップS101でNO)。
【0023】
ステップS102では、車両の駆動力を、第1制限駆動力TL1以下に制限する。続くステップS103では、車両が発進してから所定時間TAが経過したか否かを判定し、所定時間TAが経過するまでそのままの状態で待機する。これにより、車両が発進してから所定時間TAが経過するまでの間において、走行駆動装置13に出力させる駆動力(車両の駆動力)が、第1制限駆動力TL1以下に制限される。
【0024】
ECU20は、車両の発進時におけるアクセル開度に基づいて所定時間TAを可変に設定する。例えば、
図3(a)の関係を用い、アクセル開度が大きいほど、所定時間TAを短い時間に設定する。又は、車両の発進時における車両の加速度に基づいて、所定時間TAを可変に設定してもよい。例えば、
図3(b)の関係を用い、車両の加速度が大きいほど、所定時間TAを短い時間に設定する。なお、
図3(a),(b)の関係は、横軸のパラメータに応じて、所定時間TAを段階的に設定するものであってもよい。
【0025】
ただし、所定時間TAとして一定の時間を定めておくことも可能であり、所定時間TAは例えば1秒である。
【0026】
車両が発進してから所定時間TAが経過した後(ステップS103でYES)、ステップS104に進む。ステップS104では、カメラ10によって連続的に撮像された複数の画像に基づいて、車両の進行方向において、所定距離以内に障害物が存在しているか否かを判定する。障害物が存在すると判定された場合(ステップS104でYES)、ステップS105に進む。ステップS105では、車両の駆動力を第2制限駆動力TL2以下に制限する。
【0027】
一方、障害物が存在しないと判定された場合(ステップS104でNO)、ステップS106に進む。ステップS106では、駆動力の制限を解除する。すなわち、アクセル開度に応じて決定される要求駆動力TRになるように駆動力を制御する。
【0028】
ここで、
図4を参照して、本実施形態の加速抑制制御をより具体的に説明する。
図4の縦軸はアクセル開度、駆動力をそれぞれ示し、横軸は時間を示す。
【0029】
図4では、時刻t1で、ドライバによるアクセルペダルの踏み込み操作によりアクセル開度が増加し、それに伴い車両に駆動力が生じ、車両が停止状態から発進する。この時刻t1以降、所定時間TAが経過するまでは、車両の駆動力が第1制限駆動力TL1以下に制限される。これにより、車両の加速度が、車両にて許容される最大許容加速度よりも小さい中間加速度以下に抑制される。
【0030】
その後、所定時間TAが経過した時刻t2になると、車両の進行方向前方における障害物の有無が判定される。この時刻t2において、障害物有りと判定されると、図に実線で示すように、車両の駆動力が第1制限駆動力TL1より小さい第2制限駆動力TL2以下に制限される。つまり、さらに強い加速抑制制御が行われる。
【0031】
一方、時刻t2において、障害物無しと判定されると、駆動力の制限が解除され、図に一点鎖線で示すように、車両の駆動力が要求駆動力TRとなる。
【0032】
以上、詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0033】
車両が発進してから所定時間TAが経過するまでは、車両にて許容される最大許容加速度よりも小さい中間加速度以下となるように、車両の駆動力を第1制限駆動力TL1以下に制限するようにした。これにより、車両の発進時(走行開始直後)において、仮にアクセル誤操作が発生したとしても、車両の急加速が抑制される。また、所定時間TAが経過した時点で、障害物が存在すると判定されるか障害物が存在しないと判定されるかに応じて、駆動力を第1制限駆動力TL1より小さい第2制限駆動力TL2以下に制限するか、又は駆動力の制限を解除するようにした。この場合、車両が僅かに進んだ時点での加速制限の強化により障害物に対する適正な衝突抑制が可能になる一方、加速制限の状態が不要に継続されることが回避され、ドライバが感じる煩わしさを低減することが可能となる。このように上記構成によれば、衝突防止と煩わしさ低減を両立させることが可能となる。
【0034】
車両の発進時には、アクセル開度(アクセル操作量)が大きいほど、障害物に対する衝突危険度が大きくなる。この点、アクセル開度が大きい場合は、アクセル開度が小さい場合と比較して所定時間TAを短くすることで、ドライバのアクセル操作に合わせつつ適正な加速抑制制御が可能となる。
【0035】
車両の発進時には、ドライバのアクセル操作や道路勾配等に応じて車両の加速度(すなわち車速の変化量)が相違し、車両の加速度が大きいほど、障害物に対する衝突危険度が大きくなる。この点、車両の加速度が大きい場合は、車両の加速度が小さい場合と比較して所定時間TAを短くすることで、車両の発進状況に合わせつつ適正な加速抑制制御が可能となる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、
図5~7を参照して第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と重複する構成については符号を引用してその説明は省略する。以下、相違点を中心に説明する。
【0037】
図5は、第2実施形態に係る加速抑制システム100の構成図である。
図5に示すように、第2実施形態に係るECU20は、
図1に示す障害物判定部22に代えて、停止時障害物判定部24と、移動時障害物判定部25とを備える。停止時障害物判定部24が「第1判定部」に相当し、移動時障害物判定部25が「第2判定部」に相当する。
【0038】
停止時障害物判定部24は、車両停止状態でカメラ10によって撮像された静止画像を用いて、車両の進行方向における障害物の有無を判定する。具体的な判定方法としては、周知のディープニューラルネットワークが挙げられる。ディープニューラルネットワークでは、画像の中から様々な特徴を検出して学習することにより、静止画像に基づいて画像に含まれる障害物を認識するとともに、障害物までの距離を推定することが可能である。推定された障害物までの距離が所定距離内(例えば数メートル以内)である場合、停止時障害物判定部24は、車両の進行方向に障害物が存在すると判定する。
【0039】
また、移動時障害物判定部25は、車両移動状態でカメラ10により撮像された複数の時系列画像に基づいて、障害物を認識するとともに、その障害物までの距離を推定する。そして、推定された障害物までの距離が所定距離内(例えば数メートル以内)である場合に、車両の進行方向に障害物が存在すると判定する。なお、移動時障害物判定部25の機能は、
図1の障害物判定部22と同じである。
【0040】
駆動力制御部23は、車両が発進する際に、各判定部24,25による判定結果に基づいて、車両の駆動力を制限する。具体的には、駆動力制御部23は、車両の発進時点においてカメラ10の静止画像により障害物有りと判定された場合に、車両にて許容される最大許容加速度よりも小さい中間加速度以下となるように、駆動力を第1制限駆動力TL1以下に制限する。また、車両の発進後においてカメラ10の時系列画像により障害物有りと判定されれば、駆動力を第1制限駆動力TL1より小さい第2制限駆動力TL2以下に制限し、障害物が存在しないと判定されれば、駆動力の制限を解除する。
【0041】
次に、
図6のフローチャートを参照して、ECU20により実行される加速抑制処理の一例を説明する。
図6に示す処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0042】
ステップS201では、例えば車速センサ12からの車速信号を用い、車両が停止状態から発進したか否かを判定する。車両が発進したと判定された場合(ステップS201でYES)、ステップS202に進む。一方、車両が発進したと判定されるまで処理は待機する(ステップS201でNO)。
【0043】
ステップS202では、車両停止状態で取得したカメラ10の静止画像により障害物の判定処理を行い、続くステップS203では、その判定結果に基づいて、車両の進行方向における障害物の有無を判定する(停止時障害物判定部24)。そして、障害物が存在すると判定された場合(ステップS203でYES)、ステップS204に進む。一方、障害物が存在しないと判定された場合(ステップS203でNO)、ステップS208に進む。
【0044】
ステップS204では、車両の駆動力を、第1制限駆動力TL1以下に制限する。続くステップS205では、車両移動状態で取得したカメラ10の時系列画像による障害物判定が可能になったか否かを判定し、その障害物判定が可能になるまでそのままの状態で待機する。つまり、時系列画像による障害物判定では、所定数の画像を時系列で取得する必要があり、その所定数の画像取得が完了するまで、ステップS205で待機する。ステップS205でYESになると、ステップS206に進む。
【0045】
ステップS206では、車両移動状態で取得したカメラ10の時系列画像により障害物の判定処理を行い、続くステップS207では、その判定結果に基づいて、車両の進行方向における障害物の有無を判定する(移動時障害物判定部25)。そして、障害物が存在すると判定された場合(ステップS207でYES)、ステップS208に進む。一方、障害物が存在しないと判定された場合(ステップS207でNO)、ステップS209に進む。
【0046】
ステップS208では、車両の駆動力を第2制限駆動力TL2以下に制限する。一方、ステップS209では、駆動力の制限を解除する。すなわち、アクセル開度に応じて決定される要求駆動力TRになるように駆動力を制御する。ただし、ステップS203のNOからステップS209に遷移する場合は、加速抑制制御の解除は発生しない。
【0047】
ここで、
図7を参照して、本実施形態の加速抑制制御をより具体的に説明する。
図7の縦軸はアクセル開度、駆動力、判定フラグをそれぞれ示し、横軸は時間を示す。なお、
図7では、車両停止状態での静止画像による障害物判定において、車両が存在していると判定される場合を例示している。
【0048】
図7では、時刻t11で、ドライバによるアクセルペダルの踏み込み操作によりアクセル開度が増加し、それに伴い車両に駆動力が生じ、車両が停止状態から発進する。上述したように、車両停止状態での静止画像による障害物判定において、車両が存在していると判定されるため、時刻t11において停止時における障害物判定フラグが0から1に切り替わる。この時刻t11以降、車両の駆動力が第1制限駆動力TL1以下に制限される。これにより、車両の加速度が、車両にて許容される最大許容加速度よりも小さい中間加速度以下に抑制される。
【0049】
その後、時刻t12において時系列画像による障害物判定が可能になると、車両の進行方向前方における障害物の有無が判定される。この時刻t12において、障害物有りと判定されると、すなわち、移動時における障害物判定フラグが0から1に切り替わると、図に実線で示すように、車両の駆動力が第1制限駆動力TL1より小さい第2制限駆動力TL2以下に制限される。つまり、さらに強い加速抑制制御が行われる。
【0050】
一方、時刻t12において、障害物無しと判定されると、駆動力の制限が解除され、図に一点鎖線で示すように、車両の駆動力が要求駆動力TRとなる。時刻t12において、障害物無しと判定された場合、移動時における障害物判定フラグは0のままとなる。
【0051】
以上、詳述した第2実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0052】
車両停止状態において、静止画像に基づいて車両の進行方向における障害物の有無を判定するとともに、車両移動状態において、複数の時系列画像に基づいて車両の進行方向における障害物の有無を判定する場合、時系列画像による障害物判定は、静止画像による障害物の判定よりも高精度である反面、判定が可能になるまでに時間を要する。この点を考慮し、車両の発進時点において、静止画像を用いた障害物判定によって障害物が存在すると判定された場合に、車両にて許容される最大許容加速度よりも小さい中間加速度以下となるように、車両の駆動力を第1制限駆動力TL1以下に制限するようにした。これにより、車両の発進時(走行開始直後)において、仮にアクセル誤操作が発生したとしても、車両の急加速による障害物への衝突が抑制される。
【0053】
また、車両の発進後において時系列画像を用いた障害物判定が可能になった後は、その障害物判定により障害物が存在すると判定されるか障害物が存在しないと判定されるかに応じて、駆動力を第1制限駆動力TL1より小さい第2制限駆動力TL2以下に制限するか、又は駆動力の制限を解除するようにした。この場合、時系列画像による障害物判定が可能になるタイミングは車両が僅かに進んだ時点であり、その時点での加速制限の強化により障害物に対する適正な衝突抑制が可能になる一方、加速制限の状態が不要に継続されることが回避され、ドライバが感じる煩わしさを低減することが可能となる。このように上記構成によれば、衝突防止と煩わしさ低減を両立させることが可能となる。
【0054】
(変形例)
上記実施形態の構成の一部を変形してもよい。以下、変形例について説明する。
【0055】
第1実施形態において、カメラ10による撮像の環境情報を取得し、その環境情報に基づいて、所定時間TAを可変に設定することも可能である。カメラ10による撮像の環境情報は、カメラ10の時系列画像(連続画像)を用いた障害物判定の精度に依存する環境パラメータと言い換えることが可能である。例えば、車両周囲の明るさ(暗さ)や天候などの情報に基づいて、所定時間TAを可変に設定する。より具体的には、
図8の関係を用い、車両周囲が明るいほど、所定時間TAを短い時間に設定する。ここで、車両周囲が暗い場合には、明るい場合に比べてカメラ画像(時系列画像)による障害物判定の精度が低くなるため、画像のサンプリング回数を増やすことが望ましい。その他、降雨時や降雪時に、降雨時や降雪時でない場合に比べて、所定時間TAを短い時間に設定するようにしてもよい。
【0056】
車両の発進時において、アクセル開度(アクセル操作量)に基づいて所定時間TAを設定する場合、又は車両の加速度に基づいて所定時間TAを設定する場合に、カメラ10による撮像の環境情報に基づいて、所定時間TAを基準値(例えば1秒)から変更することを許容する構成であってもよい。例えば、車両周囲が明るいなど、カメラ画像による障害物判定に好都合な状況であれば、所定時間TAを短縮することを許容する。また、車両周囲が暗いなど、カメラ画像による障害物判定に悪都合な状況であれば、所定時間TAを延長することを許容する。
【0057】
撮像装置として、単眼カメラに代えて複眼カメラを用いる構成としてもよい。複眼カメラを用いる場合であっても、車両停止状態の静止画像を用いた障害物判定と、車両移動状態の時系列画像を用いた障害物判定とで判定精度の差が生じることが考えられる。そこで、例えば第2実施形態のように、車両停止状態の静止画像を用いた障害物判定と、車両移動状態の時系列画像を用いた障害物判定とを使い分けるようにするとよい。
【0058】
本発明は、四輪車等の自動車だけでなく、二輪車にも適用可能である。本発明を二輪車に適用する場合、アクセルグリップの回動操作量が「アクセル操作量」に相当する。
【0059】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…カメラ、20…ECU、22…障害物判定部、23…駆動力制御部、24…停止時障害物判定部、25…移動時障害物判定部