(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037296
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
A01B69/00 303P
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142026
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】大西 健太
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康司
(72)【発明者】
【氏名】黒田 智之
(72)【発明者】
【氏名】石田 博康
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB06
2B043CA03
2B043DA04
2B043DA17
2B043DC03
2B043EA03
2B043EA12
2B043EA15
2B043EB05
2B043EB17
2B043EB22
2B043EC12
2B043EC14
2B043EC16
2B043ED02
2B043ED12
2B043EE01
2B043EE06
(57)【要約】
【課題】作業領域に形成された目印に沿って自動走行する作業車両の作業精度を向上させることが可能な自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムを提供すること。
【解決手段】走行処理部111は、第1行程の走行軌跡の車輪跡Taに左右の車輪のいずれか一方が沿うように、前記第1行程に続く第2行程において作業車両1を自動走行させる。補正処理部113は、前記第2行程を自動走行する作業車両1における、予め設定された目標経路Rからの位置ずれ量W1が閾値以上の場合に、目標経路Rの位置を補正する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業領域に形成された目印ラインに車体の一部が沿うように作業車両を自動走行させることと、
前記作業領域に対して予め設定された目標経路に対する前記作業車両の位置ずれ量が閾値以上の場合に、前記目標経路の位置を補正することと、
を実行する自動走行方法。
【請求項2】
前記目印ラインは、前記作業車両が前記作業領域を走行した走行軌跡の車輪跡であって、
第1走行行程の前記走行軌跡の車輪跡に左右の車輪のいずれか一方が沿うように、前記第1走行行程に続く第2走行行程において前記作業車両を自動走行させ、
前記第2走行行程を自動走行する前記作業車両における、前記目標経路からの前記位置ずれ量が前記閾値以上の場合に、前記目標経路の位置を補正する、
請求項1に記載の自動走行方法。
【請求項3】
前記位置ずれ量が前記閾値以上の状態が所定距離又は所定時間継続した場合に、前記目標経路の位置を補正する、
請求項2に記載の自動走行方法。
【請求項4】
作業領域に形成された溝を左右の車輪のいずれか一方が走行することにより車体が左右方向に所定角度だけ傾斜した状態で作業車両を自動走行させることと、
前記車体の傾斜角度が前記所定角度だけ傾斜した状態から基準角度以内になった場合であって、前記作業領域に対して予め設定された目標経路に対する前記作業車両の位置ずれ量が減少した場合に、前記目標経路の位置を補正することと、
を実行する自動走行方法。
【請求項5】
前記車体の傾斜角度が前記基準角度以内になった状態が所定距離又は所定時間継続した場合に、前記目標経路の位置を補正する、
請求項4に記載の自動走行方法。
【請求項6】
前記車体の傾斜角度が前記基準角度以内の場合の前記作業車両の車速を、前記車体の傾斜角度が前記所定角度の場合の前記作業車両の車速よりも遅い速度に設定する、
請求項4に記載の自動走行方法。
【請求項7】
前記目標経路の位置を、前記作業車両の前記目標経路に対する位置ずれ方向と同じ方向に前記位置ずれ量だけずらす、
請求項1~6のいずれかに記載の自動走行方法。
【請求項8】
前記作業車両が前記第2走行行程を自動走行する場合の操舵感度及び最大操舵角を、前記作業車両が前記第1走行行程を自動走行する場合の操舵感度及び最大操舵角よりも小さいに値に設定する、
請求項2又は3に記載の自動走行方法。
【請求項9】
前記目標経路の位置を補正する処理を有効にするか否かを操作端末において選択可能に表示させる、
請求項1~6のいずれかに記載の自動走行方法。
【請求項10】
前記目標経路の位置を補正すべき補正量を操作端末に表示させる、
請求項1~6のいずれかに記載の自動走行方法。
【請求項11】
作業領域に形成された目印ラインに車体の一部が沿うように作業車両を自動走行させる走行処理部と、
前記作業領域に対して予め設定された目標経路に対する前記作業車両の位置ずれ量が閾値以上の場合に、前記目標経路の位置を補正する補正処理部と、
を備える自動走行システム。
【請求項12】
作業領域に形成された溝を左右の車輪のいずれか一方が走行することにより車体が左右方向に所定角度だけ傾斜した状態で作業車両を自動走行させる走行処理部と、
前記車体の傾斜角度が前記所定角度だけ傾斜した状態から基準角度以内になった場合であって、前記作業領域に対して予め設定された目標経路に対する前記作業車両の位置ずれ量が減少した場合に、前記目標経路の位置を補正する補正処理部と、
を備える自動走行システム。
【請求項13】
作業領域に形成された目印ラインに車体の一部が沿うように作業車両を自動走行させることと、
前記作業領域に対して予め設定された目標経路に対する前記作業車両の位置ずれ量が閾値以上の場合に、前記目標経路の位置を補正することと、
を一又は複数のプロセッサーに実行させるための自動走行プログラム。
【請求項14】
作業領域に形成された溝を左右の車輪のいずれか一方が走行することにより車体が左右方向に所定角度だけ傾斜した状態で作業車両を自動走行させることと、
前記車体の傾斜角度が前記所定角度だけ傾斜した状態から基準角度以内になった場合であって、前記作業領域に対して予め設定された目標経路に対する前記作業車両の位置ずれ量が減少した場合に、前記目標経路の位置を補正することと、
を一又は複数のプロセッサーに実行させるための自動走行プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場において作業車両を目標経路に従って自動走行させる自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場において作業車両を目標経路に従って自動走行させる技術が知られている。また、目標経路に対して作業車両の位置ずれが生じた場合に、位置ずれを補正する技術も知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作業車両が自動走行しながら行う作業の中には、畑作、野菜移植作業など、前行程の作業跡である車輪跡(タイヤ跡)に片側の車輪を入れて、前行程の走行軌跡に沿って自動走行しながら行う作業がある。このような作業において目標経路に対する位置ずれが生じると、作業車両が位置ずれを解消するように目標経路に向かって位置を補正しようとするため、作業車両の車輪が車輪跡から逸脱して作業精度が低下する問題が生じる。この問題は、前行程の車輪跡を利用して自動走行する作業車両に限定されず、作業領域に形成された所定の目印に沿って作業を行う作業車両においても同様に起こり得る。
【0005】
本発明の目的は、作業領域に形成された目印に沿って自動走行する作業車両の作業精度を向上させることが可能な自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自動走行方法は、作業領域に形成された目印ラインに車体の一部が沿うように作業車両を自動走行させることと、前記作業領域に対して予め設定された目標経路に対する前記作業車両の位置ずれ量が閾値以上の場合に、前記目標経路の位置を補正することと、を実行する。
【0007】
本発明に係る自動走行方法は、作業領域に形成された溝を左右の車輪のいずれか一方が走行することにより車体が左右方向に所定角度だけ傾斜した状態で作業車両を自動走行させることと、前記車体の傾斜角度が前記所定角度だけ傾斜した状態から基準角度以内になった場合であって、前記作業領域に対して予め設定された目標経路に対する前記作業車両の位置ずれ量が減少した場合に、前記目標経路の位置を補正することと、を実行する。
【0008】
本発明に係る自動走行システムは、走行処理部と補正処理部とを備える。前記走行処理部は、作業領域に形成された目印ラインに車体の一部が沿うように作業車両を自動走行させる。前記補正処理部は、前記作業領域に対して予め設定された目標経路に対する前記作業車両の位置ずれ量が閾値以上の場合に、前記目標経路の位置を補正する。
【0009】
本発明に係る自動走行システムは、走行処理部と補正処理部とを備える。前記走行処理部は、作業領域に形成された溝を左右の車輪のいずれか一方が走行することにより車体が左右方向に所定角度だけ傾斜した状態で作業車両を自動走行させる。前記補正処理部は、前記車体の傾斜角度が前記所定角度だけ傾斜した状態から基準角度以内になった場合であって、前記作業領域に対して予め設定された目標経路に対する前記作業車両の位置ずれ量が減少した場合に、前記目標経路の位置を補正する。
【0010】
本発明に係る自動走行プログラムは、作業領域に形成された目印ラインに車体の一部が沿うように作業車両を自動走行させることと、前記作業領域に対して予め設定された目標経路に対する前記作業車両の位置ずれ量が閾値以上の場合に、前記目標経路の位置を補正することと、を一又は複数のプロセッサーに実行させるための自動走行プログラムである。
【0011】
本発明に係る自動走行プログラムは、作業領域に形成された溝を左右の車輪のいずれか一方が走行することにより車体が左右方向に所定角度だけ傾斜した状態で作業車両を自動走行させることと、前記車体の傾斜角度が前記所定角度だけ傾斜した状態から基準角度以内になった場合であって、前記作業領域に対して予め設定された目標経路に対する前記作業車両の位置ずれ量が減少した場合に、前記目標経路の位置を補正することと、を一又は複数のプロセッサーに実行させるための自動走行プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、作業領域に形成された目印に沿って自動走行する作業車両の作業精度を向上させることが可能な自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る作業車両の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る作業車両の一例を示す外観図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る作業車両の目標経路の一例を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の実施形態に係る操作装置に表示される設定画面の一例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の実施形態に係る操作装置に表示される設定画面の一例を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の実施形態に係る経路生成方法を説明するための図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の実施形態に係る経路生成方法を説明するための図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の実施形態に係る作業車両の走行方法の具体例を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の実施形態に係る作業車両の走行方法の具体例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る作業車両の走行方法の具体例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る作業車両の走行方法(第1の補正方法)の具体例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る作業車両の走行方法(第1の補正方法)の具体例を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る作業車両の走行方法(第1の補正方法)の具体例を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る作業車両によって実行される第1の自動走行処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12A】
図12Aは、本発明の実施形態に係る作業車両の走行方法(第2の補正方法)の具体例を示す図である。
【
図12B】
図12Bは、本発明の実施形態に係る作業車両の走行方法(第2の補正方法)の具体例を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態に係る作業車両の走行方法(第2の補正方法)の具体例を示す図である。
【
図14A】
図14Aは、本発明の実施形態に係る作業車両の走行方法(第2の補正方法)の具体例を示す図である。
【
図14B】
図14Bは、本発明の実施形態に係る作業車両の走行方法(第2の補正方法)の具体例を示す図である。
【
図15A】
図15Aは、本発明の実施形態に係る作業車両の走行方法の具体例を示す図である。
【
図15B】
図15Bは、本発明の実施形態に係る作業車両の走行方法の具体例を示す図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施形態に係る作業車両によって実行される第2の自動走行処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図17A】
図17Aは、本発明の実施形態に係る作業車両の他の走行方法の具体例を示す図である。
【
図17B】
図17Bは、本発明の実施形態に係る作業車両の他の走行方法の具体例を示す図である。
【
図18】
図18は、本発明の実施形態に係る操作装置に表示される走行画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0015】
図1及び
図2に示すように、本発明の実施形態に係る自動走行システムは、作業車両1と、衛星(不図示)と、基地局(不図示)とを含んでいる。本実施形態では、作業車両1が野菜移植機である場合を例に挙げて説明する。なお、他の実施形態として、作業車両1は、田植機、コンバイン、トラクタなどであってもよい。作業車両1は、圃場F(
図4参照)内をオペレータ(ユーザー)の操作に応じて、目標経路Rに従って走行しながら所定の作業(例えば野菜移植作業)を行う。具体的には、作業車両1は、自動操舵に応じて目標経路Rを直進走行し、オペレータによる手動操舵(運転操作)に応じて旋回走行する。作業車両1は、直進経路の自動走行と旋回経路の手動走行とを切り替えながら圃場F内を走行して作業を行う。目標経路Rは、オペレータの操作に基づいて予め生成され、経路データとして記憶されてもよい。
【0016】
作業車両1は、例えば
図3に示す圃場Fにおいて、直進走行と旋回走行とを繰り返しながら作業が終了するまで走行する。複数の直進経路のそれぞれは互いに略平行である。
図3に示す目標経路Rは一例であって、目標経路Rは、作業車両1のサイズ、作業機14のサイズ(作業幅)、作業内容、圃場Fの形状などに応じて適宜決定される。
【0017】
なお、自動走行システムは、オペレータが操作する操作端末(タブレット端末、スマートフォンなど)を含んでもよい。前記操作端末は、携帯電話回線網、パケット回線網、無線LANなどの通信網を介して作業車両1と通信可能である。例えばオペレータは、前記操作端末において、各種情報(作業車両情報、圃場情報、作業情報など)などを登録する操作を行う。また、オペレータは、作業車両1から離れた場所において、前記操作端末に表示される走行軌跡により、作業車両1の走行状況、作業状況などを把握することが可能である。
【0018】
[作業車両1]
図1及び
図2に示すように、作業車両1は、車両制御装置11、記憶部12、走行装置13、作業機14、通信部15、測位装置16、操作装置17などを備える。車両制御装置11は、記憶部12、走行装置13、作業機14、測位装置16、操作装置17などに電気的に接続されている。なお、車両制御装置11及び測位装置16は、無線通信可能であってもよい。また、車両制御装置11及び操作装置17は、無線通信可能であってもよい。
【0019】
通信部15は、作業車両1を有線又は無線で通信網に接続し、通信網を介して外部機器(操作端末など)との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0020】
記憶部12は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部である。記憶部12には、車両制御装置11に後述の自動走行処理(
図11及び
図16参照)を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部12に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網を介して作業車両1にダウンロードされて記憶部12に記憶されてもよい。また、記憶部12には、操作装置17において生成される目標経路Rのデータが記憶されてもよい。
【0021】
作業車両1の車体部2は、機体フレーム10と、エンジン131と、トランスミッション134と、左右一対の走行装置13とを備えている。エンジン131及びトランスミッション134は、機体フレーム10に取り付けられている。エンジン131は、車体部2の左右方向中央付近で前部に配置され、各部を駆動する回転動力を発生させる。トランスミッション134は、エンジン131の下部に接続されており、エンジン131の動力を変速する。また、トランスミッション134は、車体部2の後部に設けられたパワーテイクオフ軸(PTO軸、図示せず)に接続されており、エンジン131の動力をPTO軸を介して作業機14(移植作業部)へと伝達する。
【0022】
左右一対の走行装置13は、左右方向両端で前部に回転可能に取り付けられる一対の前輪13aと、左右方向両端で後部に回転可能に取り付けられる一対の後輪13bとを備える。左右一対の前輪13aは、機体フレーム10の前部に設けられたフロントアクスルケース141の左右両端部に支持され、左右一対の後輪13bは、機体フレーム10の後部に設けられたリアアクスルケース151の左右両端部に支持される。エンジン131及びトランスミッション134からの動力をフロントアクスルケース141及びリアアクスルケース151を介して左右一対の前輪13a及び左右一対の後輪13bへと伝達することで、左右一対の前輪13a及び左右一対の後輪13bが駆動される。
【0023】
一対の前輪13a及び一対の後輪13bは、エンジン131及びトランスミッション134から伝達される動力に応じて回転駆動して車体部2を前方又は後方へ走行させる。手動走行モード又は自動直進モードでは、変速操作ペダル21及び主変速レバーなどの操作に応じて、あるいは、自動走行モードでは、車両制御装置11からの制御信号に応じて、エンジン131及びトランスミッション134からの動力を一対の前輪13a及び一対の後輪13bへと伝達する。
【0024】
また、一対の前輪13aは、操向アクチュエータ(不図示)に連結されており、手動走行モードでは、操向ハンドル20の操作に応じて操向アクチュエータを駆動することで一対の前輪13aを回動させて車体部2の手動操向が行われる。一方、自動直進モード及び自動走行モードでは、車両制御装置11からの制御信号に応じて操向アクチュエータを駆動することにより一対の前輪13aを回動させて車体部2の自動操向が行われる。
【0025】
さらに、車体部2は、機体フレーム10の上部中央付近に運転席19を備えている。機体フレーム10の上部には、運転席19の周囲の床面にオペレータが移動可能なステップ171を備え、ステップ171の前部に、作業機14に補充される苗マットを載置するための複数の予備苗台18を備えている。車体部2は、運転席19の周囲に、操向ハンドル20、変速操作ペダル21及び変速レバー(不図示)などの運転操作具と、操作装置17とを備えている。
【0026】
操向ハンドル20は、オペレータが作業車両1を操舵するための操作具であり、オペレータによる操向ハンドル20の回転操作に応じて一対の前輪13aへ伝達される操舵が調節される。変速操作ペダル21は、オペレータが作業車両1の走行速度を調節するための操作具であり、オペレータによる変速操作ペダル21の踏み込み操作に応じて一対の走行装置13へ伝達される回転動力が調整される。主変速レバーは、オペレータによる変速操作をトランスミッション134に伝達して、作業車両1の前進走行、後進走行及び停止を切り換え、また前進設定速度又は後進設定速度を切り換える。
【0027】
作業機14は、圃場Fの畝に対して野菜などの苗を複数(例えば2つ)の条毎に移植する移植作業を行う。作業機14は、車体部2の後方に配置され、昇降機構26を介して車体部2に連結されており、昇降機構26は、車体部2に対して作業機14を昇降可能に構成されている。
【0028】
作業機14は、苗を供給する苗供給部27と、複数の移植ユニット28とを備えている。各移植ユニット28は、例えば、苗供給部27から苗を取り出す苗取出部(不図示)と、苗取出部が取り出した苗を受けて圃場に植付ける植付部(不図示)とを備えている。苗供給部27は、苗マットを載置する苗載台31と、苗載台31に載置された苗を下方へ縦送りする縦送り機構(不図示)とを備えている。複数の移植ユニット28は、複数の条のそれぞれに対応して設けられる。
【0029】
作業機14は、例えば、作業機14の入力軸として、左右方向に延びた伝動軸(不図示)を備えている。伝動軸には、車体部2のトランスミッション134からPTO軸を介して動力を取り入れる動力取り入れ部(不図示)や、取り入れた動力を移植ユニット28に出力する出力部(不図示)や、取り入れた動力の苗供給部27及び苗取出部への接続・切断を切り換える移植クラッチ部(不図示)などが接続されている。そして、作業機14は、トランスミッション134からの動力を、PTO軸を介して伝動軸へと伝達し、さらに伝動軸から動力取り入れ部や出力部を介して各移植ユニットへと伝達するように構成されている。
【0030】
例えば、苗取出部は、苗取爪(不図示)と、苗取爪を作動させる苗取作動機構(不図示)を備えている。苗取作動機構は、出力部を介して伝達される動力に応じて、苗取爪を、苗供給部27から苗を取り出す苗取出位置と、苗を下方へ放出する苗取爪側受継位置との間で回転運動させるように構成されている。植付部は、植付爪(不図示)と、植付爪を作動させる植付作動機構(不図示)を備えている。植付作動機構は、出力部を介して伝達される動力に応じて、植付爪を、苗取出部から苗を受け継ぐ植付爪側受継位置と、苗を圃場土中に放出する植付位置との間で、回転運動させるように構成されている。作業機14は、上述の各部を連動して作動させることで苗を圃場Fに移植する。
【0031】
測位装置16は、測位制御部161、記憶部162、通信部163、及び測位用アンテナ164などを備える通信機器である。例えば、測位用アンテナ164は、
図2に示すように、車体部2の前方上部に設けられている。また、測位装置16の測位制御部161、記憶部162、通信部163、及び測位用アンテナ164は、作業車両1において異なる位置に分散して配置されていてもよい。なお、前述したように測位装置16には前記バッテリーが接続されており、当該測位装置16は、エンジン131の停止中も稼働可能である。また、測位装置16として、例えば携帯電話端末、スマートフォン、又はタブレット端末などが代用されてもよい。
【0032】
測位制御部161は、一又は複数のプロセッサーと、不揮発性メモリ及びRAMなどの記憶メモリとを備えるコンピュータシステムである。記憶部162は、測位制御部161に測位処理を実行させるための測位制御プログラム、及び測位情報、移動情報などのデータを記憶する不揮発性メモリなどである。例えば、前記測位制御プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部162に記憶される。なお、前記測位制御プログラムは、サーバー(不図示)から通信網を介して測位装置16にダウンロードされて記憶部162に記憶されてもよい。
【0033】
通信部163は、測位装置16を有線又は無線で通信網に接続し、通信網を介して基地局サーバーなどの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0034】
測位用アンテナ164は、衛星から発信される電波(GNSS信号)を受信するアンテナである。
【0035】
測位制御部161は、測位用アンテナ164が衛星から受信するGNSS信号に基づいて作業車両1の現在位置を算出する。例えば、作業車両1が圃場Fを自動走行する場合に、測位用アンテナ164が複数の衛星のそれぞれから発信される電波(発信時刻、軌道情報など)を受信すると、測位制御部161は、測位用アンテナ164と各衛星との距離を算出し、算出した距離に基づいて作業車両1の現在位置(緯度及び経度)を算出する。また、測位制御部161は、作業車両1に近い基地局(基準局)に対応する補正情報を利用して作業車両1の現在位置を算出する、リアルタイムキネマティック方式(RTK-GNSS測位方式(RTK方式))による測位を行ってもよい。このように、作業車両1は、RTK方式による測位情報を利用して自動走行を行う。なお、作業車両1の現在位置は、測位位置(例えば測位用アンテナ164の位置)と同一位置であってもよいし、測位位置からずれた位置であってもよい。
【0036】
[操作装置17]
操作装置17は、作業車両1に搭乗するオペレータが操作する機器であり、各種情報を表示したり、オペレータの操作を受け付けたりする。具体的には、操作装置17は、各種設定画面を表示させてオペレータから各種の設定操作を受け付けたり、走行中の作業車両1に関する情報を表示させたりする。操作装置17は、例えば
図2に示すように、運転席19内の操向ハンドル20付近に設置される。
【0037】
図1に示すように、操作装置17は、操作制御部71、記憶部72、操作表示部73などを備える。操作装置17は、作業車両1に着脱可能な機器であってもよい。また、操作装置17は、オペレータが携帯可能な携帯端末(タブレット端末、スマートフォンなど)であってもよい。また、操作装置17は、車両制御装置11に有線又は無線により通信可能に接続されている。
【0038】
操作表示部73は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示部と、操作を受け付ける操作ボタン又はタッチパネルなどの操作部とを備えるユーザーインターフェースである。操作表示部73は、操作制御部71の指示に応じて各種の設定画面、作業画面などを表示する。また、操作表示部73は、前記設定画面、前記作業画面において、オペレータの操作を受け付ける。
【0039】
また、前記操作部は、作業車両1に自動走行を開始させる際にオペレータが走行開始指示を行う自動走行ボタンと、作業車両1と目標経路Rとの位置偏差(位置ずれ)を補正する補正操作(シフト操作)を行う経路シフトボタンと、設定画面D1及び走行画面D2において選択操作を行う複数の選択ボタンとを含んでいる(いずれも不図示)。これらの操作ボタンは、物理的なボタンであってもよいし、タッチパネルに表示される電子画像ボタンであってもよい。
【0040】
記憶部72は、各種の情報を記憶するHDD又はSSDなどの不揮発性の記憶部である。記憶部72には、操作装置17に各種制御処理を実行させるための制御プログラムが記憶されている。例えば、前記制御プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部72に記憶される。なお、前記制御プログラムは、サーバー(不図示)から通信網を介して操作装置17にダウンロードされて記憶部72に記憶されてもよい。また、前記制御プログラムは、作業車両1の記憶部12に記憶されてもよい。また、記憶部72には、操作装置17において生成される目標経路Rのデータが記憶されてもよい。
【0041】
操作制御部71は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、操作制御部71は、前記ROM又は記憶部72に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより操作装置17を制御する。
【0042】
具体的には、
図1に示すように、操作制御部71は、表示処理部711、受付処理部712、生成処理部713などの各種の処理部を含む。なお、操作装置17は、前記CPUで前記制御プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0043】
表示処理部711は、各種情報を操作表示部73に表示させる。例えば、表示処理部711は、各種の設定を行う設定画面(例えば
図4A及び
図4Bの設定画面D1)、作業車両1の走行状況、作業状況等の走行情報を含む走行画面(例えば
図18の走行画面D2)などを操作表示部73に表示させる。
【0044】
受付処理部712は、オペレータによる各種操作を受け付ける。例えば、受付処理部712は、前記設定画面において、目標経路Rを生成するための操作、すなわち経路生成作業に関する各種操作をオペレータから受け付ける。
【0045】
生成処理部713は、オペレータの設定操作に応じて設定される基準線L1を含む目標経路Rを生成する。具体的には、生成処理部713は、圃場F内のA点(第1基準点)及びB点(第2基準点)を通る基準線L1に基づいて、等間隔に配置される複数の直進経路を含む目標経路Rを生成する。
【0046】
以下、目標経路Rの生成手順の一例を説明する。例えば、表示処理部711は、基準線L1を設定する設定操作をオペレータから受け付ける設定画面D1(
図4A参照)を操作表示部73に表示させる。オペレータは、圃場F内において作業車両1を任意の位置に移動させてA点登録ボタンKaを押下する。例えば、オペレータは、作業車両1を圃場Fの外周端部に移動させてA点登録ボタンKaを押下する。オペレータがA点登録ボタンKaを押下すると、生成処理部713は作業車両1の現在位置を第1基準点(A点)として登録する。生成処理部713がA点を登録すると、表示処理部711は、第2基準点(B点)の登録操作を受け付ける設定画面D1(
図4B参照)を操作表示部73に表示させる。オペレータは、作業車両1に走行及び作業させたい方向(目標方向)に、作業車両1を手動走行させる(
図5A参照)。具体的には、オペレータは、作業車両1が作業領域で作業する際の作業方向(例えば植付方向)に平行な方向に作業車両1を直進走行させる。そして、オペレータは、任意の位置(例えば圃場Fの外周端部)においてB点登録ボタンKb(
図4B参照)を押下する。オペレータがB点登録ボタンKbを押下すると、生成処理部713は作業車両1の現在位置を第2基準点(B点)として登録する。
【0047】
生成処理部713は、A点及びB点の位置情報を取得すると、A点及びB点を通る直線を基準線L1として設定する(
図5A参照)。なお、生成処理部713は、作成した基準線L1の方位を調整可能であってもよい。例えば、生成処理部713は、作成した基準線L1を設定画面D1に表示させて、オペレータから登録操作を受け付けた場合に基準線L1を設定(登録)する。一方、生成処理部713は、オペレータから基準線L1の方位を変更する操作(例えば、画面のタッチ操作など)を受け付けると、操作に応じて基準線L1の方位を調整する。生成処理部713は、B点を登録する操作を受け付けた場合に、基準線L1を登録するか又は調整するかの選択画面を表示させてもよい。
【0048】
生成処理部713は、基準線L1と、基準線L1に平行な複数の直線とを含む走行経路(目標経路R)を生成する。例えば、生成処理部713は、予め設定される作業幅(作業機14の横幅)及びラップ幅(隣接する作業済領域と重なる幅)に基づいて複数の平行な直線を、基準線L1を中心として左右に等間隔に生成する(
図5B参照)。生成処理部713は、生成した目標経路Rを記憶部72に登録するとともに、操作表示部73に表示させる。
【0049】
上記方法によれば、圃場Fの両端部の2点(A点及びB点)を通る基準線L1により目標経路Rを生成することができるため、作業車両1による作業精度を向上させることができる。なお、生成処理部713は、A点を登録してから作業車両1が所定距離(例えば5m)だけ走行した場合にB点を登録可能としてもよい。これにより、より精度の高い基準線L1を設定することができる。
【0050】
目標経路Rが生成された後、オペレータは、圃場F内において作業車両1に自動走行を開始させる指示(走行開始指示)を行う。例えば作業車両1が、目標経路Rから所定距離以内かつ目標経路Rに対して所定方位以内に位置するなど、自動走行開始条件を満たし自動走行可能な状態になった場合に、オペレータは操作表示部73の自動走行ボタン(不図示)を押下して走行開始指示を行うことが可能になる。なお、オペレータは、目標経路Rを生成するためにA点及びB点を登録する際の走行経路において、作業車両1に作業を実行させてもよい。これにより、作業車両1は、目標経路Rを生成しつつ初めの行程(第1行程)の作業を行うことができる。
【0051】
オペレータが走行開始指示を行うと、車両制御装置11は、走行開始指示を受け付けて、作業車両1を目標経路Rに沿うように作業車両1の自動操舵を開始する。これにより、車両制御装置11は、作業車両1を目標経路Rの直進経路に沿って自動操舵により自動走行させる。
【0052】
なお、車両制御装置11は、各直進経路の終端において自動操舵を終了させてもよい。例えば、車両制御装置11は、作業車両1が自動操舵により直進経路を直進走行して、当該直進経路に隣接する作業済(直前)の直進経路の終端に対応する位置に近づくとオペレータに案内情報(
図18参照)を報知して、オペレータの操作に応じて自動操舵を終了させる。
【0053】
ここで、本実施形態に係る作業車両1の走行方法の一例を説明する。
図6及び
図7は、作業車両1の走行方法を説明するための図である。なお、
図7は、作業車両1を正面から見た状態を示している。例えば
図6Aに示すように、作業車両1は、第1行程(本発明の第1走行行程に相当)において、A点及びB点を通る基準線L1(直進経路)に沿って走行しながら移植作業を行う。なお、作業車両1は、第1行程において、A点及びB点を登録するオペレータの手動走行により移植作業を行ってもよい。作業車両1が走行すると、左右の車輪により所定の深さの溝(車輪跡Ta)が形成される(
図6A参照)。作業車両1は、第1行程の作業を終了すると、オペレータの手動操舵に従って旋回走行して第2行程に移動する。オペレータは、
図7に示すように、作業車両1の片側の車輪(ここでは右側の車輪)が第1行程の車輪跡Taに入るように作業車両1を位置合わせてして第2行程の自動走行を開始させる。これにより、
図6Bに示すように、作業車両1は、第2行程において、車輪跡Taに沿って自動走行しながら移植作業を行う。上記走行方法によれば、左右方向に一定間隔で移植作業を行うことができる。
【0054】
上記走行方法において、例えば
図8に示すように、作業車両1が、第2行程において片側の車輪(右側の車輪)が第1行程の車輪跡Taに入った状態で自動走行する場合に、目標経路Rに対して位置ずれが生じる場合がある。
図8に示す例では、作業車両1が目標経路Rに対して距離W1だけ進行方向に対して右側にずれている。上記位置ずれが生じると、作業車両1は、
図9に示すように、目標経路Rに沿うように操舵制御して進行方向を補正する。上記位置ずれ量が大きくなると、作業車両1の車輪が車輪跡Taから逸脱して自動走行が継続され、作業行程間の植え付け間隔が一定にならず作業精度が低下する問題が生じる。
【0055】
これに対して、本実施形態に係る作業車両1は、以下に示すように、前行程の車輪跡Taなど圃場Fに形成された目印に沿って自動走行する作業車両1の作業精度を向上させることが可能である。
【0056】
具体的には、車両制御装置11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、車両制御装置11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより作業車両1を制御する。また、車両制御装置11は、前記CPUで前記自動走行プログラムに従った各種の処理を実行する。
【0057】
車両制御装置11は、作業車両1に対する各種のユーザー操作に応じて作業車両1の動作を制御する。また、車両制御装置11は、測位装置16により算出される作業車両1の現在位置と、予め設定される目標経路Rとに基づいて、当該作業車両1の自動走行処理を実行する。
【0058】
具体的には、
図1に示すように、車両制御装置11は、走行処理部111、検出処理部112、補正処理部113などの各種の処理部を含む。なお、車両制御装置11は、前記CPUで前記自動走行プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記自動走行プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0059】
走行処理部111は、作業車両1の走行を制御する。例えば、走行処理部111は、作業車両1の走行モードが手動走行(手動走行モード)の場合に、オペレータの操作(手動操舵)に基づいて作業車両1を手動走行させる。例えば、走行処理部111は、オペレータによるハンドル操作、変速操作、シフト操作、アクセル操作、ブレーキ操作などの運転操作に対応する操作情報を取得し、当該操作情報に基づいて走行装置13に走行動作を実行させる。
【0060】
また、走行処理部111は、作業車両1の走行モードが自動走行(自動走行モード)の場合に、測位制御部161により測位される作業車両1の現在位置を示す位置情報(測位情報)に基づいて作業車両1を自動走行させる。例えば、走行処理部111は、作業車両1が自動走行開始条件を満たし、オペレータから走行開始指示を取得すると、前記測位情報に基づいて作業車両1の自動走行を開始させる。また、走行処理部111は、予め生成された目標経路R(直進経路)に従って作業車両1を自動走行させる。
【0061】
また、走行処理部111は、作業車両1が直進経路の終端に到達すると走行モードを手動走行に切り替える。走行処理部111は、作業車両1が終端に到達したと判定した場合に走行モードを手動走行に切り替えてもよいし、オペレータの操作に応じて走行モードを手動走行に切り替えてもよい。走行モードが手動走行に切り替えられると、例えばオペレータは、手動操舵により作業車両1を旋回走行(手動走行)させる。
【0062】
以上のようにして、走行処理部111は、オペレータによる操作装置17における操作に応じて走行モードを切り替えて、作業車両1を、自動操舵により直進経路(目標経路R)を自動走行させ、手動操舵により旋回経路を手動走行させる。
【0063】
検出処理部112は、行程(走行行程)を自動走行する作業車両1における、予め設定された目標経路Rからの位置ずれ量を検出する。例えば、作業車両1が初めの行程(第1行程)以降の行程(
図8では第2行程)を自動走行する場合において、作業車両1が目標経路Rから左右方向にずれている場合に、検出処理部112は、位置ずれ量を検出する。具体的には、
図8に示すように、作業車両1が第2行程において、右車輪を第1行程の車輪跡Taの溝(
図7参照)に入れて自動走行する場合に、作業車両1が目標経路Rから距離W1だけずれている場合に(
図8参照)、検出処理部112は、位置ずれ量W1を検出する。
【0064】
また、検出処理部112は、作業車両1の車体の左右方向の傾斜角度d1(ロール角)(
図7参照)を検出する。
【0065】
なお、目標経路Rに対する位置ずれが生じると、走行処理部111は、
図9に示すように、目標経路Rの方向(ここでは左方向)に操舵角を調整する。
【0066】
補正処理部113は、検出処理部112により検出される位置ずれ量W1に基づいて目標経路Rの位置を補正する。目標経路Rの位置を補正する具体的な補正方法(第1の補正方法、第2の補正方法)について、以下に説明する。
【0067】
[第1の補正方法]
例えば、作業車両1は、片側の車輪が車輪跡Taの溝に入った状態で走行している場合には、目標経路Rに対する位置ずれに応じて目標経路Rの方向に操舵角を調整しても車輪が溝から抜け出すことが困難な状態となる。また、作業車両1は、片側の車輪が車輪跡Taの溝に入った状態で走行することが適切な走行方法であるため、目標経路Rの方向に移動しないことが望ましい。そこで、第1の補正方法では、補正処理部113は、位置ずれ量W1が閾値以上の場合に、目標経路Rの位置を補正する。具体的には、補正処理部113は、位置ずれ量W1が閾値以上の状態が所定距離又は所定時間継続した場合に、目標経路Rの位置を補正する。なお、前記閾値は、例えば、作業車両1の車輪が車輪跡Taの溝に収まった状態で車輪跡Taに沿って適切に自動走行することが可能な上限値に設定される。位置ずれ量W1が前記閾値以上になると、車輪が車輪跡Taの溝に適切に収まらない状態になり、作業車両1が車輪跡Taに沿って適切に自動走行することが困難になる。
【0068】
ここで、作業車両1が第2行程を走行する場合の走行方向が、目標経路Rの方向に対して位置ずれ量W1が大きくなる方向の場合、作業車両1が第2行程の自動走行を継続すると、位置ずれ量W1が徐々に大きくなるため車輪が車輪跡Taの溝から抜け出したタイミングで急激な旋回動作が行われるリスクが生じる。
【0069】
このようなリスクを回避するために、補正処理部113は、位置ずれ状態が所定距離又は所定時間継続した時点で目標経路Rの位置を補正する。
【0070】
例えば
図10に示すように、補正処理部113は、目標経路Rを右側にシフトさせる。具体的には、補正処理部113は、目標経路Rを位置ずれ量W1だけ右側にシフトさせる。すなわち、補正処理部113は、目標経路Rの位置を、作業車両1の目標経路Rに対する位置ずれ方向と同じ方向に位置ずれ量W1だけずらす。
【0071】
これにより、作業車両1の左右方向の中心位置が補正後の目標経路Rに略一致するため、走行処理部111は、車輪跡Taに沿った直進方向に操舵制御して作業車両1を自動走行させる。よって、作業車両1を車輪跡Taに沿って自動走行させることができるため、作業車両1の作業精度を向上させることが可能となる。
【0072】
[第1の自動走行処理]
以下、
図11を参照しつつ、車両制御装置11によって実行される自動走行処理の一例について説明する。
図11には、前記第1の補正方法に対応する第1の自動走行処理を示している。なお、本発明は、車両制御装置11が前記自動走行処理の一部又は全部を実行する自動走行方法の発明、又は、当該自動走行方法の一部又は全部を車両制御装置11に実行させるための自動走行プログラムの発明として捉えてもよい。また、一又は複数のプロセッサーが前記自動走行処理を実行してもよい。
【0073】
ステップS11において、車両制御装置11は、自動走行開始指示を取得したか否かを判定する。例えば、作業車両1が自動走行可能な状態になりオペレータが操作装置17において自動走行開始指示を行うと、車両制御装置11は前記自動走行開始指示を取得する。車両制御装置11は、前記自動走行開始指示を取得すると(S11:Yes)、処理をステップS12に移行させる。車両制御装置11は、前記自動走行開始指示を取得するまで待機する(S11:No)。
【0074】
ステップS12において、車両制御装置11は、作業車両1に自動走行を開始させる。具体的には、車両制御装置11は、第1行程において、作業車両1をA点及びB点を通る基準線L1(直進経路)に沿って自動走行又は手動走行させながら移植作業を行う(
図6A参照)。
【0075】
次にステップS13において、車両制御装置11は、作業車両1を車体の傾斜角度d1(ロール角)が所定角度以上であるか否かを判定する。例えば、作業車両1が第2行程に移行して車輪が第1行程の車輪跡Taの溝に入ると、車体が第1行程側に傾いて傾斜角度d1が所定角度以上になる(
図6B及び
図7参照)。車両制御装置11は、傾斜角度d1が所定角度以上の場合に(S13:Yes)、処理をステップS14に移行させる。一方、車両制御装置11は、傾斜角度d1が所定角度未満の場合に(S13:No)、処理をステップS17に移行させる。なお、車両制御装置11は、傾斜角度d1が所定角度以上である場合に、車輪が車輪跡Taの溝に入っていると判定する。
【0076】
ステップS14において、車両制御装置11は、位置ずれ量W1が閾値以上であるか否かを判定する。例えば、車両制御装置11は、第2行程を自動走行する作業車両1における、予め設定された目標経路Rからの位置ずれ量W1を検出し(
図8参照)、位置ずれ量W1が閾値以上であるか否かを判定する。車両制御装置11は、位置ずれ量W1が閾値以上である場合に(S14:Yes)、処理をステップS15に移行させる。一方、車両制御装置11は、位置ずれ量W1が閾値未満である場合に(S14:No)、処理をステップS17に移行させる。
【0077】
ステップS15において、車両制御装置11は、位置ずれ量W1が閾値以上である状態が所定距離(又は所定時間)継続したか否かを判定する。車両制御装置11は、位置ずれ量W1が閾値以上である状態が所定距離(又は所定時間)継続すると(S15:Yes)、処理をステップS16に移行させる。一方、車両制御装置11は、位置ずれ量W1が閾値以上である状態が所定距離(又は所定時間)継続していない場合(S15:No)、処理をステップS14に移行させる。なお、ステップS14に戻り、位置ずれ量W1が閾値未満になると(S14:No)、車両制御装置11は、処理をステップS17に移行させる。
【0078】
ステップS16において、車両制御装置11は、目標経路Rの位置を補正する。例えば
図10に示すように、車両制御装置11は、目標経路Rを位置ずれ量W1だけ右側にシフトさせる。
【0079】
次にステップS17において、車両制御装置11は、作業車両1が作業を終了したか否かを判定する。車両制御装置11は、作業車両1が作業を終了したと判定すると(S17:Yes)、前記自動走行処理を終了させる。車両制御装置11は、作業車両1が作業を終了していないと判定すると(S17:No)、作業車両1に目標経路Rに従って自動走行を継続させて、処理をステップS13に移行させる。
【0080】
車両制御装置11は、作業車両1が作業を終了するまで、上述のステップS13~S16の処理を繰り返し実行する。以上のようにして、車両制御装置11は、第1の補正方法に対応する第1の自動走行処理を実行する。
【0081】
[第2の補正方法]
次に、目標経路Rの位置を補正する第2の補正方法について説明する。
【0082】
第2の補正方法では、補正処理部113は、車体の傾斜角度d1が所定角度だけ傾斜した状態から基準角度以内になった場合であって、目標経路Rに対する位置ずれ量W1が減少した場合に、目標経路Rの位置を補正する。なお、前記基準角度は、作業車両1が平坦地における車体の傾斜角度の上限角度であり、傾斜角度d1が基準角度以内の場合は、作業車両1は略水平状態となる。このため、例えば片側の車輪が車輪跡Taの溝に入った状態の場合(
図7参照)には傾斜角度d1は基準角度を超え、両方の車輪が車輪跡Taの溝に入っていない状態(
図12B参照)又は両方の車輪が車輪跡Taの溝に入った状態の場合に傾斜角度d1は基準角度以内となる。
【0083】
すなわち、第2の補正方法では、
図12A及び
図12Bに示すように、作業車両1が目標経路Rからずれて、さらに車輪が車輪跡Taの溝から抜け出して車体が水平状態になり、位置ずれ量W1が減少しことを条件として、補正処理部113が目標経路Rの位置を補正する。前記第1の補正方法と同様に、例えば
図13に示すように、補正処理部113は、目標経路Rを右側にシフトさせる。具体的には、補正処理部113は、目標経路Rを位置ずれ量W1だけ右側にシフトさせる。すなわち、補正処理部113は、目標経路Rの位置を、作業車両1の目標経路Rに対する位置ずれ方向と同じ方向(溝から抜け出して目標経路Rに近付く方向とは反対方向)に位置ずれ量W1だけずらす。
【0084】
これにより、作業車両1は目標経路Rに従って右側に移動することにより、車輪が車輪跡Taの溝に再度入り込んで車輪跡Taに沿って自動走行を再開する。
【0085】
図14A及び
図14Bには、他の例を示している。ここでは、作業車両1が目標経路Rに対して左側にずれているため、右側に操舵角が調整されることにより(
図14A参照)、右側の車輪が車輪跡Taの溝から抜け出して車輪跡Taを跨いで車体が水平状態になっている(
図14B参照)。この場合も上記構成と同様に、車輪が車輪跡Taの溝から抜け出して車体が水平状態になって位置ずれ量W1が減少するため、補正処理部113は、目標経路Rの位置を補正する。ここでは、補正処理部113は、目標経路Rの位置を、位置ずれ方向である左方向に位置ずれ量W1だけずらす。これにより、作業車両1は目標経路Rに従って左側に移動することにより、車輪が車輪跡Taの溝に再度入り込んで車輪跡Taに沿って自動走行を再開する。
【0086】
ここで、作業車両1が水平状態になるケースは、
図12A及び
図12B、
図14A及び
図14Bのケースに限定されず、例えば
図15A及び
図15Bに示すケースも考えられる。すなわち、作業車両1が、車輪跡Taの溝の状態や圃場Fの荒れ具合などの影響により、目標経路Rとは異なる方向(ここでは右側)に位置ずれして車輪が溝から抜け出して作業車両1が水平状態になる場合がある。この場合には、作業車両1を目標経路Rの方向(左側)に移動させる必要があるため、補正処理部113は、目標経路Rの位置を補正する処理を実行しない。すなわち、補正処理部113は、車体の傾斜角度d1が前記所定角度だけ傾斜した状態から基準角度以内になった場合であって、目標経路Rに対する位置ずれ量W1が増加した場合には、目標経路Rの位置を補正しない。
【0087】
第2の補正方法において、走行処理部111は、車体の傾斜角度d1が前記基準角度以内(略水平状態)の場合(
図12B参照)の作業車両1の車速を、車体の傾斜角度d1が前記所定角度(傾斜状態)の場合(
図7参照)の作業車両1の車速よりも遅い速度に設定(車速上限値を低く設定)してもよい。これにより、車輪が車輪跡Taから抜け出した後に作業車両1が高速で走行することを防ぐことができるため、作業車両1が車輪跡Taからずれて走行する距離を短くして、作業車両1を車輪跡Taにスムーズに戻すことができる。なお、走行処理部111は、作業車両1が車輪跡Taに戻った場合に車速の制限(減速)を解除してもよい。
【0088】
また第2の補正方法において、補正処理部113は、車体の傾斜角度d1が所定角度だけ傾斜した状態から基準角度以内になった場合であって、目標経路Rに対する位置ずれ量W1が閾値未満になった場合に、目標経路Rの位置を補正してもよい。また補正処理部113は、車体の傾斜角度d1が基準角度以内になった状態が所定距離又は所定時間継続した場合に、目標経路Rの位置を補正してもよい。
【0089】
[第2の自動走行処理]
以下、
図16を参照しつつ、車両制御装置11によって実行される自動走行処理の一例について説明する。
図16には、前記第2の補正方法に対応する第2の自動走行処理を示している。
【0090】
ステップS21において、車両制御装置11は、自動走行開始指示を取得したか否かを判定する。例えば、作業車両1が自動走行可能な状態になりオペレータが操作装置17において自動走行開始指示を行うと、車両制御装置11は前記自動走行開始指示を取得する。車両制御装置11は、前記自動走行開始指示を取得すると(S21:Yes)、処理をステップS22に移行させる。車両制御装置11は、前記自動走行開始指示を取得するまで待機する(S21:No)。
【0091】
ステップS22において、車両制御装置11は、作業車両1に自動走行を開始させる。具体的には、車両制御装置11は、第1行程において、作業車両1をA点及びB点を通る基準線L1(直進経路)に沿って自動走行又は手動走行させながら移植作業を行う(
図6A参照)。
【0092】
次にステップS23において、車両制御装置11は、作業車両1を車体の傾斜角度d1(ロール角)が所定角度以上であるか否かを判定する。例えば、作業車両1が第2行程に移行して車輪が第1行程の車輪跡Taの溝に入ると、車体が第1行程側に傾いて傾斜角度d1が所定角度以上となる(
図6B及び
図7参照)。車両制御装置11は、傾斜角度d1が所定角度以上の場合に(S23:Yes)、処理をステップS24に移行させる。一方、車両制御装置11は、傾斜角度d1が所定角度未満の場合に(S23:No)、処理をステップS28に移行させる。なお、車両制御装置11は、傾斜角度d1が所定角度以上である場合に、車輪が車輪跡Taの溝に入っていると判定する。
【0093】
ステップS24において、車両制御装置11は、作業車両1が目標経路Rに対して位置ずれしているか否かを判定する。例えば、車両制御装置11は、第2行程を自動走行する作業車両1における、予め設定された目標経路Rからの位置ずれ量W1を検出し(
図8参照)、位置ずれ量W1が基準値以上であるか否かを判定する。車両制御装置11は、位置ずれ量W1が基準値以上である場合に位置ずれが発生していると判断して(S24:Yes)、処理をステップS25に移行させる。一方、車両制御装置11は、位置ずれ量W1が基準値未満である場合に位置ずれが発生していないと判断して(S24:No)、処理をステップS28に移行させる。
【0094】
ステップS25において、車両制御装置11は、作業車両1を車体の傾斜角度d1が基準角度以内であるか否かを判定する。例えば、作業車両1が目標経路Rに向かって走行することによって車輪跡Taの溝を走行していた車輪が溝から抜け出すと、第1行程側に傾いていた車体が水平状態になって傾斜角度d1が基準角度以内になる(
図12A及び
図12B、
図14A及び
図14B参照)。車両制御装置11は、傾斜角度d1が基準角度以内になると(S25:Yes)、処理をステップS26に移行させる。一方、車両制御装置11は、傾斜角度d1が基準角度以内にならない場合(S25:No)、処理をステップS24に移行させる。
【0095】
ステップS26において、車両制御装置11は、位置ずれ量W1が減少したか否かを判定する。位置ずれ量W1が減少した場合(S26:Yes)、すなわち作業車両1が目標経路Rに近付いた場合、車両制御装置11は、処理をステップS27に移行させる。一方、位置ずれ量W1が増加した場合(S26:No)、すなわち作業車両1が目標経路Rから遠ざかった場合(
図15A及び
図15B)、車両制御装置11は、処理をステップS28に移行させる。この場合(S26:No)、車両制御装置11は、通常の操舵制御を実行して作業車両1を目標経路Rの方向に移動させる。
【0096】
ステップS27において、車両制御装置11は、目標経路Rの位置を補正する。例えば
図13に示すように、車両制御装置11は、目標経路Rを位置ずれ量W1だけ右側にシフトさせる。これにより、作業車両1は、車輪が車輪跡Taの溝に再度入り込んで車輪跡Taに沿って自動走行を再開する。
【0097】
次にステップS28において、車両制御装置11は、作業車両1が作業を終了したか否かを判定する。車両制御装置11は、作業車両1が作業を終了したと判定すると(S28:Yes)、前記自動走行処理を終了させる。車両制御装置11は、作業車両1が作業を終了していないと判定すると(S28:No)、作業車両1に目標経路Rに従って自動走行を継続させて、処理をステップS23に移行させる。
【0098】
車両制御装置11は、作業車両1が作業を終了するまで、上述のステップS23~S27の処理を繰り返し実行する。以上のようにして、車両制御装置11は、第2の補正方法に対応する第2の自動走行処理を実行する。
【0099】
車両制御装置11は、前記第1の補正方法及び前記第2の補正方法のいずれかにより目標経路Rを補正する処理を実行する。他の実施形態として、車両制御装置11は、前記第1の補正方法及び前記第2の補正方法を組み合わせて目標経路Rを補正する処理を実行してもよい。例えば、車両制御装置11は、車輪が車輪跡Taの溝に入った状態で自動走行している間は前記第1の補正方法を適用し、車輪が車輪跡Taの溝から抜け出した場合に前記第2の補正方法を適用する。
【0100】
以上説明したように、本実施形態に係る車両制御装置11は、第1行程の走行軌跡の車輪跡Taに左右の車輪のいずれか一方が沿うように、前記第1行程に続く第2行程において作業車両1を自動走行させる。また、車両制御装置11は、前記第2行程を自動走行する作業車両1における、予め設定された目標経路Rからの位置ずれ量W1に基づいて目標経路Rの位置を補正する。例えば、車両制御装置11は、目標経路Rからの位置ずれ量W1が閾値以上の場合に目標経路Rの位置を補正する(第1の補正方法)。また例えば、車両制御装置11は、車体の傾斜角度d1が所定角度だけ傾斜した状態から基準角度以内になった場合であって位置ずれ量W1が減少した場合に目標経路Rの位置を補正する(第2の補正方法)。
【0101】
上記構成によれば、作業車両1の目標経路Rに対する位置ずれが生じた場合に、作業車両1を目標経路Rに向けて走行方向を調整することなく、目標経路Rを作業車両1の位置に合うように補正する。このため、作業車両1を車輪跡Taに沿うように自動走行させることができるため、作業車両の作業精度を向上させることが可能となる。
【0102】
[他の実施形態]
本発明は上述の実施形態に限定されない。以下、本発明の他の実施形態について説明する。
【0103】
他の実施形態として、走行処理部111は、作業車両1が第1行程の車輪跡Taに沿って第2行程(
図6B参照)を自動走行する場合の操舵感度及び最大操舵角を、作業車両1が第1行程を自動走行する場合の操舵感度及び最大操舵角よりも小さいに値に設定してもよい。これにより、作業車両1が目標経路Rに近付こうと車輪跡Taの溝から抜け出す方向に操舵しても車輪を車輪跡Taの溝から抜け出し難くすることができるため、作業車両1を車輪跡Taに沿って自動走行させ易くすることができる。他の実施形態として、車両制御装置11は、位置ずれ量W1が閾値A未満の場合に操舵感度及び最大操舵角を小さい値に設定し、位置ずれ量W1が閾値A以上かつ閾値B未満(但し、閾値B>閾値A)の場合に前記第1の補正方法(
図10参照)及び前記第2の補正方法(
図13参照)の少なくともいずれかを適用し、位置ずれ量W1が閾値B以上の場合に補正処理を実行しない構成としてもよい。
【0104】
なお、車両制御装置11は、前行程に隣接しない行程では片側の車輪が前行程の車輪跡Taに沿うことなく自動走行し(
図6A参照)、前行程に隣接する行程では片側の車輪が前行程の車輪跡Taに沿って自動走行する(
図6B参照)。このため、車両制御装置11は、走行対象の行程が前行程に隣接しない行程の場合に、操舵感度及び最大操舵角を大きい値に設定し、走行対象の行程が前行程に隣接する行程の場合に、操舵感度及び最大操舵角を小さい値に設定する。
【0105】
車両制御装置11は、以下のようにして、走行対象の行程が前行程に隣接する行程であるか又は隣接しない行程であるかを判断してもよい。例えば、車両制御装置11は、A点及びB点の登録を完了した後、すなわち基準線L1を走行及び作業した後に旋回し、その後に自動走行を開始する行程を、「前行程に隣接する行程」と判断する。また例えば、車両制御装置11は、A点及びB点を通る経路(基準線L1)以外の経路を自動走行する行程を、「前行程に隣接する行程」と判断する。また例えば、車両制御装置11は、A点及びB点を通る経路(基準線L1)を走行する行程を、「前行程に隣接しない行程」と判断する。
【0106】
また、複数の平行な直進経路が目標経路Rとして予め設定されている場合に、車両制御装置11は、初めに走行する直進経路の行程を、「前行程に隣接しない行程」と判断し、最後に走行及び作業した直進経路の次の行程を、「前行程に隣接する行程」と判断する。
【0107】
また、複数の平行な直進経路が目標経路Rとして予め設定されていない場合に、車両制御装置11は、初めに走行する直進経路の行程を、「前行程に隣接しない行程」と判断し、最後に走行及び作業した直進経路の作業終了位置から次の行程の作業開始位置までの距離が所定距離(例えば予め設定された作業間隔の1.5倍の距離)以内の場合に当該行程を、「前行程に隣接する行程」と判断し、当該距離が所定距離を超える場合に当該行程を、「前行程に隣接しない行程」と判断する。
【0108】
車両制御装置11は、以上のようにして、走行対象の行程が前行程に隣接する行程であるか隣接しない行程であるかを判断して、操舵感度及び最大操舵角を調整してもよい。
【0109】
本発明の他の実施形態として、作業車両1が、マーカー138L、138Rと、マーカーセンサー139とを備えてもよい。マーカー138Lは、車体の左側に所定距離だけ離れた位置に設けられて、左側の次行程の作業経路の目印となる目印溝Tbを掘り、マーカー139Lは、車体の右側に所定距離だけ離れた位置に設けられて、右側の次行程の作業経路の目印となる目印溝Tbを掘る。例えば、
図17Aに示すように、作業車両1は、第1行程を作業しながら、マーカー138Rにより次行程(右側)の溝(目印溝Tb)を掘り、
図17Bに示すように、作業車両1は、第2行程を作業しながら、マーカー138Lにより次行程(左側)の溝(目印溝Tb)を掘る。
【0110】
マーカーセンサー139は、車体の中央前方の所定距離だけ離れた位置に設けられて、目印溝を検出する。車両制御装置11は、マーカーセンサー139の検出結果に応じて目印溝Tbに沿うように作業車両1を自動走行させる。例えば
図17Bに示すように、車両制御装置11は、第2行程において、マーカーセンサー139がマーカー138Rにより第1行程で形成された目印溝Tb(
図17A参照)を検出するように、作業車両1の操舵を制御して自動走行させる。
【0111】
図17A及び
図17Bに示す作業車両1においても上述した構成と同様に、車両制御装置11は、目標経路Rに対する位置ずれ量W1に基づいて目標経路Rの位置を補正してもよい。
【0112】
また
図17A及び
図17Bに示す作業車両1の他の実施形態として、車両制御装置11は、目印溝Tbに左右の車輪のいずれか一方が沿うように作業車両1を自動走行させてもよい。例えば、車両制御装置11は、第2行程において、右側の車輪が第1行程で形成された目印溝Tb(
図17A参照)に入って走行するように、作業車両1を自動走行させてもよい。この構成においても、車両制御装置11は、目標経路Rに対する位置ずれ量W1に基づいて目標経路Rの位置を補正してもよい。
【0113】
以上のように、本発明の走行方法は、走行軌跡の車輪跡Ta(
図6A及び
図6B参照)に沿って作業車両1を走行させてもよいし、マーカー138L、138Rにより土壌表面に形成された目印溝Tb(
図17A及び
図17B参照)に沿って作業車両1を走行させてもよい。すなわち、車両制御装置11は、作業領域(圃場F)に形成された目印ラインに車体の一部が沿うように作業車両1を自動走行させる。車輪跡Ta及び目印溝Tbは、本発明の目印ラインの一例である。なお、本発明の目印ラインは、溝に限定されず、土壌表面にマーキングされた付着物であってもよい。また、前記目印ラインは、作業車両1が作業をしながら形成されてもよいし、作業車両1が作業を開始する前に事前に形成されてもよい。また、前記車体の一部は、車輪であってもよいし、マーカーセンサー139であってもよいし、他の部品(作業機14など)であってもよい。以上より、本発明によれば、作業領域(圃場F)に形成された目印に沿って自動走行する作業車両1の作業精度を向上させることが可能となる。
【0114】
本発明の他の実施形態として、車両制御装置11は、オペレータの操作に応じて、目標経路Rの位置を補正する処理を実行するか否かを判断してもよい。具体的には、車両制御装置11は、目標経路Rの位置を補正する処理を有効にするか否かをオペレータから受け付け、オペレータが「有効」に設定した場合に、目標経路Rの位置を補正する処理を実行する。
【0115】
例えば
図18に示すように、操作装置17は、作業車両1が自動走行する場合に走行画面D2を操作表示部73に表示させる。具体的には、表示処理部711は、作業車両1の走行状況、作業状況等の走行情報を走行画面D2に表示させる。また、表示処理部711は、走行画面D2において、目標経路Rの位置を補正する処理を有効にするか又は無効にするかを選択する選択ボタンK1を表示させる。他の実施形態として、表示処理部711は、走行画面D2において、目標経路Rの位置を補正する処理を有効にするかどうかを問い合わせるメッセージを表示(ポップアップ表示)させてもよい。例えば、表示処理部711は、目標経路Rの位置を補正する条件を満たした場合に(
図11のステップS15で「Yes」の場合、又は、
図16のステップS26で「Yes」の場合)、選択ボタンK1又は前記メッセージを表示させてもよい。このように、表示処理部711は、目標経路Rの位置を補正する処理を有効にするか否かを選択可能に表示させる。
【0116】
車両制御装置11は、走行画面D2において、オペレータが「有効」を選択した場合に、前記第1の補正方法及び前記第2の補正方法を適用して、目標経路Rの位置を補正する処理を実行する。これにより、オペレータが車輪跡Taを無視して作業を行うことを希望する場合には「無効」に設定することにより、当該作業を実現することができる。また、車輪が車輪跡Taの溝に入っているか否かの判定処理(例えば
図11のステップS13)においてエラーが生じた場合に、オペレータは車輪が車輪跡Taの溝に入っていないことを目視により確認して「無効」に設定することにより、不要に目標経路Rの位置が補正されてしまう事態を回避することができる。
【0117】
また
図18に示すように、表示処理部711は、走行画面D2において、目標経路Rの位置を補正すべき補正量(推奨シフト量K2)を表示させてもよい。車両制御装置11は、オペレータが推奨シフト量K2に応じて経路シフトボタンK3、K4を操作した場合に、設定値に基づいて目標経路Rの位置をシフトさせてもよい。
【0118】
なお、本発明の作業車両1は、旋回時にも自動走行可能であってもよい。この場合、目標経路Rには、直進経路及び旋回経路が含まれる。また、作業車両1において、オペレータが旋回時の自動走行及び手動走行を切り替え可能であってもよい。また、作業車両1は、無人で目標経路Rを自動走行してもよい。この場合、オペレータは、操作端末を遠隔操作して走行開始指示などを行ってもよい。また、遠隔操作に利用される操作端末は、本実施形態に係る操作装置17であってもよいし、操作装置17の各処理部を備えてもよい。
【0119】
本発明の自動走行システムは、車両制御装置11単体で構成されてもよいし、車両制御装置11に含まれる各処理部を備えたサーバーで構成されてもよい。また、前記自動走行システムは、車両制御装置11を備える作業車両1で構成されてもよい。
【0120】
[発明の付記]
以下、実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0121】
<付記1>
作業領域に形成された目印ラインに車体の一部が沿うように作業車両を自動走行させることと、
前記作業領域に対して予め設定された目標経路に対する前記作業車両の位置ずれ量が閾値以上の場合に、前記目標経路の位置を補正することと、
を実行する自動走行方法。
【0122】
<付記2>
前記目印ラインは、前記作業車両が前記作業領域を走行した走行軌跡の車輪跡であって、
第1走行行程の前記走行軌跡の車輪跡に左右の車輪のいずれか一方が沿うように、前記第1走行行程に続く第2走行行程において前記作業車両を自動走行させ、
前記第2走行行程を自動走行する前記作業車両における、前記目標経路からの前記位置ずれ量が前記閾値以上の場合に、前記目標経路の位置を補正する、
付記1に記載の自動走行方法。
【0123】
<付記3>
前記位置ずれ量が前記閾値以上の状態が所定距離又は所定時間継続した場合に、前記目標経路の位置を補正する、
付記2に記載の自動走行方法。
【0124】
<付記4>
作業領域に形成された溝を左右の車輪のいずれか一方が走行することにより車体が左右方向に所定角度だけ傾斜した状態で作業車両を自動走行させることと、
前記車体の傾斜角度が前記所定角度だけ傾斜した状態から基準角度以内になった場合であって、前記作業領域に対して予め設定された目標経路に対する前記作業車両の位置ずれ量が減少した場合に、前記目標経路の位置を補正することと、
を実行する自動走行方法。
【0125】
<付記5>
前記車体の傾斜角度が前記基準角度以内になった状態が所定距離又は所定時間継続した場合に、前記目標経路の位置を補正する、
付記4に記載の自動走行方法。
【0126】
<付記6>
前記車体の傾斜角度が前記基準角度以内の場合の前記作業車両の車速を、前記車体の傾斜角度が前記所定角度の場合の前記作業車両の車速よりも遅い速度に設定する、
付記4又は5に記載の自動走行方法。
【0127】
<付記7>
前記目標経路の位置を、前記作業車両の前記目標経路に対する位置ずれ方向と同じ方向に前記位置ずれ量だけずらす、
付記1~6のいずれかに記載の自動走行方法。
【0128】
<付記8>
前記作業車両が前記第2走行行程を自動走行する場合の操舵感度及び最大操舵角を、前記作業車両が前記第1走行行程を自動走行する場合の操舵感度及び最大操舵角よりも小さいに値に設定する、
付記2又は3に記載の自動走行方法。
【0129】
<付記9>
前記目標経路の位置を補正する処理を有効にするか否かを操作端末において選択可能に表示させる、
付記1~8のいずれかに記載の自動走行方法。
【0130】
<付記10>
前記目標経路の位置を補正すべき補正量を操作端末に表示させる、
付記1~9のいずれかに記載の自動走行方法。
【符号の説明】
【0131】
1 :作業車両
11 :車両制御装置
12 :記憶部
13 :走行装置
13a :車輪
13b :車輪
14 :作業機
17 :操作装置
111 :走行処理部
112 :検出処理部
113 :補正処理部
71 :操作制御部
73 :操作表示部
711 :表示処理部
712 :受付処理部
713 :生成処理部
D1 :設定画面
D2 :走行画面
F :圃場
K1 :選択ボタン
K2 :推奨シフト量
K3 :経路シフトボタン
K4 :経路シフトボタン
R :目標経路
Ta :車輪跡(目印ライン)
W1 :位置ずれ量
d1 :傾斜角度(ロール角)