(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037308
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】医用画像処理装置および医用画像処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/46 20240101AFI20240312BHJP
【FI】
A61B6/03 360Z
A61B6/03 360Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142046
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山川 恵介
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大雅
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA13
4C093FC11
4C093FD03
4C093FD12
4C093FD13
4C093FE14
4C093FF34
4C093FF35
4C093FF36
(57)【要約】
【課題】再構成画像に含まれる高吸収体アーチファクトが補正された補正画像のノイズの偏りを低減可能な医用画像処理装置および医用画像処理方法を提供する。
【解決手段】高吸収体アーチファクトを補正する演算部を備える医用画像処理装置であって、前記演算部は、高吸収体アーチファクトが含まれる再構成画像の中の高吸収体領域に対応する投影データを生成する投影データ生成部と、前記投影データを用いてノイズ画像を生成するノイズ画像生成部と、高吸収体アーチファクトが補正された補正画像に前記ノイズ画像を重み付き合成する重み付き合成部を有することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高吸収体アーチファクトを補正する演算部を備える医用画像処理装置であって、
前記演算部は、高吸収体アーチファクトが含まれる再構成画像の中の高吸収体領域に対応する投影データを生成する投影データ生成部と、
前記投影データを用いてノイズ画像を生成するノイズ画像生成部と、
高吸収体アーチファクトが補正された補正画像に前記ノイズ画像を重み付き合成する重み付き合成部を有することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記投影データ生成部は、前記再構成画像に対応する投影データと、前記再構成画像の中の高吸収体領域以外の領域の投影データとの差分によって、高吸収体領域に対応する投影データを生成することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記ノイズ画像生成部は、高吸収体領域に対応する投影データを偶奇分割することによって奇数投影データと偶数投影データとを生成し、前記奇数投影データと前記偶数投影データとをそれぞれ再構成することにより奇数再構成画像と偶数再構成画像とを生成し、前記奇数再構成画像と前記偶数再構成画像との差分に基づいて前記ノイズ画像を生成することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記重み付き合成部は、前記再構成画像のノイズ分布に基づいて生成されるノイズ係数画像と前記ノイズ画像との乗算画像を前記補正画像に加算することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記演算部は、高吸収体アーチファクトを含まない再構成画像を教師画像、前記教師画像に高吸収体アーチファクトが追加された再構成画像と前記重み付き合成部によって生成されるノイズ付加画像とを入力画像として機械学習することにより生成される機械学習処理部をさらに有することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記演算部は、高吸収体アーチファクトを含まない再構成画像を教師画像、前記教師画像に高吸収体アーチファクトが追加された再構成画像と前記ノイズ画像生成部によって生成されるノイズ画像とを入力画像として機械学習することにより生成される機械学習処理部をさらに有することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項7】
高吸収体アーチファクトを補正する医用画像処理方法であって、
高吸収体アーチファクトが含まれる再構成画像の中の高吸収体領域に対応する投影データを生成する投影データ生成ステップと、
前記投影データを用いてノイズ画像を生成するノイズ画像生成ステップと、
高吸収体アーチファクトが補正された補正画像に前記ノイズ画像を重み付き合成する重み付き合成ステップを備えることを特徴とする医用画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT(Computed Tomography)装置等の医用画像撮影装置によって得られる医用画像を扱う医用画像処理装置および医用画像処理方法に係り、金属のような高吸収体が被検体内に含まれる場合に発生するアーチファクトを補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像撮影装置の一例であるX線CT装置は、被検体の周囲からX線を照射して複数の投影角度における投影データを取得し、投影データを逆投影することによって、画像診断に用いられる被検体の再構成画像を生成する装置である。金属のような高吸収体、例えば骨の固定に用いられるプレート等が被検体内に含まれると、高吸収体の影響による高吸収体アーチファクトが医用画像に発生し、画像診断の妨げになる。金属アーチファクトを低減する技術は、MAR(Metal Artifact Reduction)と呼ばれ、ビーム硬化補正法や線形補間法、ディープラーニング法等の様々な方法がある。
【0003】
特許文献1には、原画像のハイパスフィルタ画像と金属アーチファクトが低減されたMAR画像のハイパスフィルタ画像とを金属への近接度に依る重みで加重加算し、さらにMAR画像のローパスフィルタ画像を加算することで補正画像を得ることが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1では、高吸収体アーチファクトが補正された補正画像のノイズの偏りに対する配慮がなされていない。すなわち、高吸収体の近傍では、高吸収体アーチファクトの補正にともなってノイズが過剰に低減されるため、高吸収体から離れた領域と近傍領域との間でノイズの偏りが生じ、画像診断に支障をきたす。
【0006】
そこで本発明の目的は、再構成画像に含まれる高吸収体アーチファクトが補正された補正画像のノイズの偏りを低減可能な医用画像処理装置および医用画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、高吸収体アーチファクトを補正する演算部を備える医用画像処理装置であって、前記演算部は、高吸収体アーチファクトが含まれる再構成画像の中の高吸収体領域に対応する投影データを生成する投影データ生成部と、前記投影データを用いてノイズ画像を生成するノイズ画像生成部と、高吸収体アーチファクトが補正された補正画像に前記ノイズ画像を重み付き合成する重み付き合成部を有することを特徴とする。
【0008】
また本発明は、高吸収体アーチファクトを補正する医用画像処理方法であって、高吸収体アーチファクトが含まれる再構成画像の中の高吸収体領域に対応する投影データを生成する投影データ生成ステップと、前記投影データを用いてノイズ画像を生成するノイズ画像生成ステップと、高吸収体アーチファクトが補正された補正画像に前記ノイズ画像を重み付き合成する重み付き合成ステップを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、再構成画像に含まれる高吸収体アーチファクトが補正された補正画像のノイズの偏りを低減可能な医用画像処理装置および医用画像処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】医用画像撮影装置の一例であるX線CT装置の全体構成図
【
図4】実施例1のS301の処理の流れの一例を示す図
【
図5】実施例1のS302の処理の流れの一例を示す図
【
図6】実施例1のS303の処理の流れの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に従って本発明に係る医用画像処理装置及び医用画像処理方法の実施例について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【実施例0012】
図1は医用画像処理装置1のハードウェア構成を示す図である。医用画像処理装置1は、演算部2、メモリ3、記憶装置4、ネットワークアダプタ5がシステムバス6によって信号送受可能に接続されて構成される。また医用画像処理装置1は、ネットワーク9を介して医用画像撮影装置10や医用画像データベース11、機械学習処理装置12と信号送受可能に接続される。さら医用画像処理装置1には、表示装置7と入力装置8が接続される。ここで、「信号送受可能に」とは、電気的、光学的に有線、無線を問わずに、相互にあるいは一方から他方へ信号送受可能な状態を示す。
【0013】
演算部2は、各構成要素の動作を制御する装置であり、具体的にはCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processor Unit)等である。演算部2は、記憶装置4に格納されるプログラムやプログラム実行に必要なデータをメモリ3にロードして実行し、医用画像に対して様々な画像処理を施す。メモリ3は、演算部2が実行するプログラムや演算処理の途中経過を記憶するものである。記憶装置4は、演算部2が実行するプログラムやプログラム実行に必要なデータを格納する装置であり、具体的にはHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等である。ネットワークアダプタ5は、医用画像処理装置1をLAN、電話回線、インターネット等のネットワーク9に接続するためのものである。演算部2が扱う各種データはLAN(Local Area Network)等のネットワーク9を介して医用画像処理装置1の外部と送受信されても良い。
【0014】
表示装置7は、医用画像処理装置1の処理結果等を表示する装置であり、具体的には液晶ディスプレイ等である。入力装置8は、操作者が医用画像処理装置1に対して操作指示を行う操作デバイスであり、具体的にはキーボードやマウス、タッチパネル等である。マウスはトラックパッドやトラックボール等の他のポインティングデバイスであっても良い。
【0015】
医用画像撮影装置10は、例えば被検体の投影データを取得し、投影データから再構成画像を生成するX線CT(Computed Tomography)装置であり、
図2を用いて後述される。医用画像データベース11は、医用画像撮影装置10によって取得された投影データや再構成画像、再構成画像に画像処理が施された補正画像等を記憶するデータベースシステムである。
【0016】
機械学習処理装置12は、再構成画像に含まれる高吸収体アーチファクトを低減することを機械学習して生成され、例えばCNN(Convolutional Neural Network)を用いて構成される。機械学習処理装置12の生成には教師画像として、例えば金属のような高吸収体を含まない再構成画像が用いられる。また入力画像には、当該教師画像に高吸収体領域を追加した画像を順投影して高吸収体が含まれる投影データを生成し、当該投影データを逆投影して得た高吸収体アーチファクトを含む再構成画像が用いられる。
【0017】
ここで、高吸収体とは、典型的には金属や骨、造影剤であり、他の組織(例えば、臓器)よりも相対的にX線吸収率が高い物質のことである。以下では金属や骨を例として実施例を説明するが、本発明においては、高吸収体は金属や骨に限らない。例えば、脂肪と筋肉を比べると筋肉の方がX線吸収率は高く、金属や骨、造影剤を含まない領域であれば筋肉は高吸収体といえる。つまり、本発明では、ユーザによる選択または閾値抽出等の処理で関心領域を設定した箇所において、X線吸収率が相対的に高い組織に起因するアーチファクトを低減することができる。
【0018】
図2を用いて医用画像撮影装置10の一例であるX線CT装置100の全体構成を説明する。なお、
図2において、横方向をX軸、縦方向をY軸、紙面に垂直な方向をZ軸とする。X線CT装置100は、スキャナ200と操作ユニット250を備える。スキャナ200は、X線管211、検出器212、コリメータ213、駆動部214、中央制御部215、X線制御部216、高電圧発生部217、スキャナ制御部218、寝台制御部219、コリメータ制御部221、プリアンプ222、A/Dコンバータ223、寝台240等を有する。
【0019】
X線管211は寝台240上に載置された被検体210にX線を照射する装置である。X線制御部216から送信される制御信号に従って高電圧発生部217が発生する高電圧がX線管211に印加されることによりX線管211から被検体にX線が照射される。
【0020】
コリメータ213はX線管211から照射されるX線の照射範囲を制限する装置である。X線の照射範囲は、コリメータ制御部221から送信される制御信号に従って設定される。
【0021】
検出器212は被検体210を透過したX線を検出することにより透過X線の空間的な分布を計測する装置である。検出器212はX線管211と対向配置され、X線管211と対向する面内に多数の検出素子が二次元に配列される。検出器212で計測された信号はプリアンプ222で増幅された後、A/Dコンバータ223でデジタル信号に変換される。その後、デジタル信号に対して様々な補正処理が行われ、投影データが取得される。
【0022】
駆動部214はスキャナ制御部218から送信される制御信号に従って、X線管211と検出器212とを被検体210の周囲で回転させる。X線管211と検出器212の回転とともに、X線の照射と検出がなされることにより、複数の投影角度からの投影データが取得される。投影角度毎のデータ収集単位はビューと呼ばれる。二次元に配列された検出器212の各検出素子の並びは、検出器212の回転方向がチャネル、チャネルに直交する方向が列と呼ばれる。投影データはビュー、チャネル、列によって識別される。
【0023】
寝台制御部219は寝台240の動作を制御し、X線の照射と検出がなされる間、寝台240を静止させたままにしたり、被検体210の体軸方向であるZ軸方向に等速移動させたりする。寝台240を静止させたままのスキャンはアキシャルスキャン、寝台240を移動させながらのスキャンはらせんスキャンとそれぞれ呼ばれる。
【0024】
中央制御部215は、以上述べたスキャナ200の動作を、操作ユニット250からの指示に従って制御する。次に操作ユニット250について説明する。操作ユニット250は、再構成処理部251、画像処理部252、記憶部254、表示部256、入力部258等を有する。
【0025】
再構成処理部251は、スキャナ200で取得された投影データを逆投影することにより、再構成画像を生成する。画像処理部252は再構成画像を診断に適した画像にするため、様々な画像処理を行う。記憶部254は投影データや再構成画像、画像処理後の画像を記憶する。表示部256は再構成画像や画像処理後の画像を表示する。入力部258は投影データの取得条件(管電圧、管電流、スキャン速度等)や再構成画像の再構成条件(再構成フィルタ、FOVサイズ等)を操作者が設定する際に用いられる。
【0026】
なお、操作ユニット250が
図1に示した医用画像処理装置1であっても良い。その場合、は、再構成処理部251や画像処理部252が演算部2に、記憶部254が記憶装置4に、表示部256が表示装置7に、入力部258が入力装置8に、それぞれ相当することになる。
【0027】
図3を用いて、実施例1で実行される処理の流れの一例についてステップ毎に説明する。
【0028】
(S301)
演算部2は、高吸収体アーチファクトが含まれる再構成画像の中の高吸収体領域に対応する投影データを生成する。すなわち、演算部2は、高吸収体アーチファクトが含まれる再構成画像の中の高吸収体領域に対応する投影データを生成する投影データ生成部として機能する。
【0029】
図4を用いてS301の処理の流れの一例についてステップ毎に説明する。
【0030】
(S401)
演算部2は、高吸収体アーチファクトを含む再構成画像を取得する。高吸収体アーチファクトを含む再構成画像は、金属や骨などの高吸収体を含む被検体の投影データが逆投影されることによって生成されても良いし、記憶装置4や医用画像データベース11から読み出されても良い。
【0031】
(S402)
演算部2は、高吸収体アーチファクトを含む再構成画像から高吸収体領域を抽出する。高吸収体領域は例えば閾値処理によって抽出される。すなわち予め定められた閾値よりも高い画素値を有する画素が高吸収体領域として再構成画像から抽出される。
【0032】
(S403)
演算部2は、高吸収体領域以外の領域を順投影し、高吸収体領域以外の領域の投影データを生成する。より具体的には、S402にて抽出された高吸収体領域の画素値がゼロに置換された再構成画像が順投影されることにより、高吸収体領域以外の領域の投影データが生成される。
【0033】
(S404)
演算部2は、高吸収体領域以外の領域の投影データと元の投影データとの差分を取り、高吸収体領域の投影データを取得する。より具体的には、S403にて生成された高吸収体領域以外の領域の投影データが、S401にて取得された再構成画像に対応する投影データから減算されることにより、高吸収体領域の投影データが生成される。
【0034】
図4に例示される処理の流れによって、高吸収体アーチファクトが含まれる再構成画像の中の高吸収体領域に対応する投影データが生成される。
図4の処理の流れによれば、高吸収体領域の影響によるノイズを含む投影データを生成できる。
図3の説明に戻る。
【0035】
(S302)
演算部2は、高吸収体領域の影響によるノイズ画像を生成する。すなわち、演算部2は、高吸収体領域の影響によるノイズを含む投影データを用いてノイズ画像を生成するノイズ画像生成部として機能する。
【0036】
図5を用いてS302の処理の流れの一例についてステップ毎に説明する。
【0037】
(S501)
演算部2は、高吸収体領域に対応する投影データの偶奇分割を実施する。すなわちS301にて生成された高吸収体領域の投影データが奇数ビューと偶数ビューとに分割され、複数の奇数ビューから奇数投影データが、複数の偶数ビューから偶数投影データが、それぞれ生成される。
【0038】
(S502)
演算部2は、奇数投影データと偶数投影データとのそれぞれを再構成する。すなわちS301にて生成された奇数投影データの再構成により奇数再構成画像が生成され、偶数投影データの再構成により偶数再構成画像が生成される。奇数投影データと偶数投影データは、隣接するビューを分割して生成されたものであるので、それぞれの再構成により生成される奇数再構成画像と偶数再構成画像には同等の高吸収体領域が含まれる。
【0039】
(S503)
演算部2は、奇数再構成画像と偶数再構成画像との差分画像を生成する。奇数再構成画像と偶数再構成画像には同等の高吸収体領域が含まれるので、両者の差分画像では高吸収体領域が削除され、ノイズのみが残る。すなわちS502にて生成された奇数再構成画像と偶数再構成画像との差分により、高吸収体領域の影響によるノイズが画像化される。なお差分処理によりノイズ量が√2倍になるので、差分画像を√2で除すことでノイズ画像が生成されても良い。
【0040】
図5に例示される処理の流れによって、高吸収体領域の影響によるノイズ画像が生成される。
図5の処理の流れによれば、高吸収体領域は含まれず高吸収体領域の影響によるノイズのみが残る画像を生成できるので、補正画像のノイズの偏りの低減が容易になる。
図3の説明に戻る。
【0041】
(S303)
演算部2は、高吸収体アーチファクトが補正された補正画像と、S302にて生成されたノイズ画像とを重み付き合成する。すなわち、演算部2は、高吸収体アーチファクトが補正された補正画像に前記ノイズ画像を重み付き合成する重み付き合成部として機能する。
【0042】
図6を用いてS303の処理の流れの一例についてステップ毎に説明する。
【0043】
(S601)
演算部2は、高吸収体アーチファクトを含む再構成画像のノイズ分布を算出する。より具体的には、再構成画像の中の対象画素と対象画素の周囲の画素との各画素値を用いて算出される標準偏差が、対象画素のノイズ量として求められる。すなわち再構成画像の中の全画素に対してノイズ量がそれぞれ求められることによりノイズ分布が算出される。さらに演算部2は、算出されたノイズ分布が規格化されたノイズ係数画像を生成する。より具体的には、ノイズ分布の中の各ノイズ量が、ノイズ分布の中の最大値で除されることによってノイズ分布が規格化され、ノイズ係数画像が生成される。
【0044】
(S602)
演算部2は、高吸収体領域のノイズ画像とノイズ係数画像との乗算画像を生成する。すなわち、S302にて生成されたノイズ画像に、S601にて生成されたノイズ係数画像が乗じられることにより、補正画像のノイズの偏りの低減に用いられるノイズ調整画像が生成される。
【0045】
(S603)
演算部2は、高吸収体アーチファクトが補正された補正画像とノイズ調整画像との加算画像を生成する。すなわち、S602にて生成されたノイズ調整画像が補正画像に加算されることにより、補正画像のノイズの偏りが低減された画像であるノイズ付加画像が生成される。
【0046】
図6に例示される処理の流れによって、補正画像のノイズの偏りが低減されたノイズ付加画像が生成される。
図6の処理の流れによれば、高吸収体アーチファクトが補正された補正画像にノイズ調整画像を加算するだけでノイズ付加画像が生成できるので、高吸収体から離れた領域と近傍領域との間でノイズの偏りを容易に低減できる。
【0047】
以上、説明したように実施例1では、高吸収体領域に対応する投影データから生成されるノイズ画像と、高吸収体アーチファクトが補正された補正画像とが重み付き合成されることによって、補正画像のノイズの偏りが低減された画像であるノイズ付加画像が生成される。ノイズ付加画像では、高吸収体アーチファクトの補正にともなって生じるノイズの偏りが低減されるので、高吸収体から離れた領域と近傍領域との間で画像診断に支障をきたさずに済む。
【0048】
なお高吸収体アーチファクトが補正された補正画像は、ビーム硬化補正法や線形補間法、ディープラーニング法等の様々なMARによって生成される。
図7Aを用いて、補正画像を生成する機械学習処理部の一例について説明する。
図7Aに例示される機械学習処理部は、高吸収体アーチファクトを含まない再構成画像を教師画像、当該教師画像に高吸収体アーチファクトが追加された再構成画像を入力画像として、多数の入力画像と教師画像の対を機械学習することにより生成される。なお高吸収体アーチファクトが追加された再構成画像である入力画像は、教師画像に高吸収体領域が追加された画像を順投影することで生成される投影データを逆投影することによって生成される。
【0049】
図7Aの機械学習処理部では、高吸収体の近傍においてノイズが過剰に低減されることがあるので、
図3の処理の流れを実行する必要がある。そこで
図3の処理の流れによって生成されるノイズ付加画像やノイズ画像を入力画像として機械学習することにより、高吸収体アーチファクトが補正されるとともにノイズの偏りが低減された画像を出力する機械学習処理部が生成されても良い。
【0050】
図7Bを用いて、高吸収体アーチファクトが補正されるとともにノイズの偏りが低減される補正画像を生成する機械学習処理部の一例について説明する。
図7Bに例示される機械学習処理部は、高吸収体アーチファクトを含まない再構成画像を教師画像、当該教師画像に高吸収体アーチファクトが追加された再構成画像とノイズ付加画像とを入力画像として、多数の入力画像と教師画像の対を機械学習することにより生成される。ノイズ付加画像には、S303で生成された画像が用いられる。高吸収体アーチファクトを含む再構成画像とともにノイズ付加画像を入力画像として機械学習することにより、高吸収体アーチファクトが補正されるとともにノイズの偏りが低減された補正画像を出力できる機械学習処理部が生成される。
【0051】
図7Cを用いて、高吸収体アーチファクトが補正されるとともにノイズの偏りが低減される補正画像を生成する機械学習処理部の他の例について説明する。
図7Cに例示される機械学習処理部は、高吸収体アーチファクトを含まない再構成画像を教師画像、当該教師画像に高吸収体アーチファクトが追加された再構成画像とノイズ画像とを入力画像として、多数の入力画像と教師画像の対を機械学習することにより生成される。ノイズ画像には、S302で生成された画像が用いられる。高吸収体アーチファクトを含む再構成画像とともにノイズ画像を入力画像として機械学習することにより、高吸収体アーチファクトが補正されるとともにノイズの偏りが低減された補正画像を出力できる機械学習処理部が生成される。
【0052】
以上、本発明の実施例について説明した。なお本発明は上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせても良い。さらに、上記実施例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。
1:医用画像処理装置、2:演算部、3:メモリ、4:記憶装置、5:ネットワークアダプタ、6:システムバス、7:表示装置、8:入力装置、10:医用画像撮影装置、11:医用画像データベース、12:機械学習処理装置、100:X線CT装置、200:スキャナ、210:被検体、211:X線管、212:検出器、213:コリメータ、214:駆動部、215:中央制御部、216:X線制御部、217:高電圧発生部、218:スキャナ制御部、219:寝台制御部、221:コリメータ制御部、222:プリアンプ、223:A/Dコンバータ、240:寝台、250:操作ユニット、251:再構成処理部、252:画像処理部、254:記憶部、256:表示部、258:入力部