(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037313
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】過酢酸水溶液の送液システム
(51)【国際特許分類】
B65B 55/10 20060101AFI20240312BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B65B55/10 Z
A61L2/18 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142066
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】野村 勝
(72)【発明者】
【氏名】河二 大和
(72)【発明者】
【氏名】山本 仁士
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩次
(72)【発明者】
【氏名】樫田 佳真
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA25
4C058BB07
4C058DD01
4C058DD04
4C058DD07
4C058JJ07
4C058JJ24
4C058JJ28
4C058JJ29
(57)【要約】
【課題】 より正確に過酢酸水溶液の過酢酸濃度を測定する。
【解決手段】 被殺菌物を過酢酸水溶液によって殺菌する殺菌手段2と、過酢酸水溶液を貯留する過酢酸水溶液タンク3との間で過酢酸水溶液を循環させる過酢酸水溶液の送液システム1に関する。
供給配管4より分岐した濃度検出用配管9に、過酢酸濃度検出手段10と、過酢酸水溶液を冷却水によって冷却する冷却手段11と、冷却水の流量を調整する流量調整バルブ29とを設け、さらに冷却水配管27に上記冷却水の温度Bを検出する冷却水温度検出手段30を設けた。
上記冷却水温度検出手段30が検出した冷却水温度Bに所定の温度を加算した目標温度Aを設定し、さらに上記流量調整バルブ29を制御して上記濃度検出用配管9を流通する過酢酸水溶液温度Cを上記目標温度Aまで冷却するようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被殺菌物を過酢酸水溶液によって殺菌する殺菌手段と、過酢酸水溶液を貯留する過酢酸水溶液タンクと、上記過酢酸水溶液タンクから上記殺菌手段へと過酢酸水溶液を供給する供給配管と、上記殺菌手段から上記過酢酸水溶液タンクへと過酢酸水溶液を還流させる戻り配管と、上記供給配管の途中に設けられて上記過酢酸水溶液を加熱する加熱手段と、上記過酢酸水溶液の濃度を測定する過酢酸濃度検出手段と、これらを制御する制御手段とを備えた過酢酸水溶液の送液システムにおいて、
上記供給配管における上記加熱手段よりも上流側となる位置に、上記供給配管を流通する過酢酸水溶液を過酢酸水溶液タンクへと還流させる濃度検出用配管を分岐して設け、当該濃度検出用配管に、上記過酢酸濃度検出手段と、過酢酸水溶液の温度を検出する過酢酸温度検出手段とを設け、
上記濃度検出用配管における過酢酸濃度検出手段および過酢酸温度検出手段よりも上流側となる位置に、冷却水を流通させる冷却水配管との間で熱交換を行う冷却手段と、上記冷却水配管における冷却水の流量を調整する流量調整バルブと、上記冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段とを設け、
上記制御手段は、上記冷却水温度検出手段が検出した冷却水の温度に所定の温度を加算した目標温度を設定するとともに、さらに上記流量調整バルブを制御することにより、上記濃度検出用配管内の過酢酸水溶液の温度を上記目標温度まで冷却することを特徴とする過酢酸水溶液の送液システム。
【請求項2】
上記濃度検出用配管を流通する過酢酸水溶液の流量を、上記供給配管を流通する過酢酸水溶液の流量よりも少なくしたことを特徴とする請求項1に記載の過酢酸水溶液の送液システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は過酢酸水溶液の送液システムに関し、詳しくは過酢酸水溶液の濃度を検出する過酢酸濃度検出手段を備えた過酢酸水溶液の送液システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペットボトルなどの容器に飲料を充填する飲料充填ラインでは、飲料を充填する前にペットボトルの殺菌を行っており、殺菌媒体としての過酢酸水溶液をペットボトルに噴射することが行われている。
上記ペットボトルの殺菌を行う殺菌手段に過酢酸水溶液を供給する送液システムとして、上記殺菌手段と過酢酸水溶液を貯留する過酢酸水溶液タンクとの間で過酢酸水溶液を循環させるように構成したものが知られている(特許文献1)。
一方、上記ペットボトルを殺菌するには、過酢酸水溶液の過酢酸濃度を一定の範囲に保つ必要があり、上記特許文献1の送液システムには、上記過酢酸濃度を測定する過酢酸濃度検出手段を設けて、濃度の監視を行っている。
そして上記過酢酸濃度検出手段として、いわゆる電気化学測定法、すなわち過酢酸水溶液に接触させた一対の電極に電流を流し、これらの電極に酸化還元反応を生じさせて電流値を測定するとともに、この電流値に所要の換算式を適用して濃度を算出するようにしたものが知られている(特許文献2、特に第0040欄参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-342919号公報
【特許文献2】特許第6262680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで過酢酸水溶液は温度の影響を受けやすく、長時間高温の状態にすると過酢酸が酢酸と過酸化水素とに分解しやすくなるため、濃度を測定する際には過酢酸水溶液を冷却することが望ましい。
しかしながら、上記特許文献1に記載された送液システムでは、上記タンクに過酢酸濃度検出手段を設けていることから、流通する全ての過酢酸水溶液を冷却してから濃度を測定する必要があり、熱効率的に無駄が多いという問題がある。
また、過酢酸水溶液を冷却するために、過酢酸水溶液と冷却水との間で熱交換を行うことが考えられるが、この冷却水が環境によって温度変化すると、冷却される過酢酸水溶液の温度のばらつきが大きくなり、電気化学測定法を用いた過酢酸濃度検出手段による濃度の測定が安定しないといった問題があった。
このような問題に鑑み、本発明はより正確に過酢酸水溶液の過酢酸濃度を測定することが可能な過酢酸水溶液の送液システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明にかかる過酢酸水溶液の送液システムは、被殺菌物を過酢酸水溶液によって殺菌する殺菌手段と、過酢酸水溶液を貯留する過酢酸水溶液タンクと、上記過酢酸水溶液タンクから上記殺菌手段へと過酢酸水溶液を供給する供給配管と、上記殺菌手段から上記過酢酸水溶液タンクへと過酢酸水溶液を還流させる戻り配管と、上記供給配管の途中に設けられて上記過酢酸水溶液を加熱する加熱手段と、上記過酢酸水溶液の濃度を測定する過酢酸濃度検出手段と、これらを制御する制御手段とを備えた過酢酸水溶液の送液システムにおいて、
上記供給配管における上記加熱手段よりも上流側となる位置に、上記供給配管を流通する過酢酸水溶液を過酢酸水溶液タンクへと還流させる濃度検出用配管を分岐して設け、当該濃度検出用配管に、上記過酢酸濃度検出手段と、過酢酸水溶液の温度を検出する過酢酸温度検出手段とを設け、
上記濃度検出用配管における過酢酸濃度検出手段および過酢酸温度検出手段よりも上流側となる位置に、冷却水を流通させる冷却水配管との間で熱交換を行う冷却手段と、上記冷却水配管における冷却水の流量を調整する流量調整バルブと、上記冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段とを設け、
上記制御手段は、上記冷却水温度検出手段が検出した冷却水の温度に所定の温度を加算した目標温度を設定するとともに、さらに上記流量調整バルブを制御することにより、上記濃度検出用配管内の過酢酸水溶液の温度を上記目標温度まで冷却することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、上記過酢酸水溶液タンクと殺菌手段との間に形成した循環経路から濃度検出用配管を分岐させて、当該濃度検出用配管に過酢酸濃度検出手段および冷却手段を設けたため、循環する全ての過酢酸水溶液を冷却せずに濃度の測定を行うことが可能となり、効率的な濃度の測定を行うことができる。
また、過酢酸水溶液の過酢酸濃度を測定する際に、過酢酸水溶液の目標温度を設定し、かつ当該目標温度を冷却水の温度変化に応じて変動させるとともに、実際の過酸化水溶液の温度が上記目標温度となるように冷却させている。
これにより、冷却水の温度変化にかかわらず、より正確に過酢酸水溶液の過酢酸濃度を測定することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】冷却水温度と過酢酸水溶液温度と目標温度との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施形態について説明すると、
図1は被殺菌物としてのペットボトルを殺菌するための過酢酸水溶液を送液する送液システム1を示している。
上記送液システム1は飲料充填ラインを構成する容器殺菌装置に設けられており、ペットボトルを過酢酸水溶液によって殺菌する殺菌手段2と、過酢酸水溶液を貯留する過酢酸水溶液タンク3と、上記過酢酸水溶液タンク3から上記殺菌手段2へと過酢酸水溶液を供給する供給配管4と、上記殺菌手段2から上記過酢酸水溶液タンク3へと過酢酸水溶液を還流させる戻り配管5と、上記供給配管4の途中に設けられて上記過酢酸水溶液を加熱する加熱手段6とを備えている。
また上記送液システム1には、過酢酸水溶液タンク3の過酢酸水溶液が減少した際に、過酢酸原液および水を供給して新たな過酢酸水溶液を作成するため、上記過酢酸水溶液タンク3に過酢酸原液を供給する過酢酸原液供給手段7と、過酢酸水溶液タンク3に水を供給する水供給手段8とを備えている。
さらに上記送液システム1では、上記過酢酸水溶液の濃度を常時測定するようになっており、上記供給配管4から分岐して設けた濃度検出用配管9と、当該濃度検出用配管9に設けた過酢酸濃度検出手段10と、上記濃度検出用配管9を流通する過酢酸水溶液を冷却する冷却手段11とを備えている。
そして、本実施形態の送液システム1は、制御手段12によって制御されるようになっている。
【0009】
上記殺菌手段2は従来公知であるため詳細な説明については省略するが、上記供給配管4の他端と上記戻り配管5の他端とが接続されており、供給配管4を介して供給された過酢酸水溶液をペットボトルに対して噴射する噴射ノズルや、噴射された後に落下した過酢酸水溶液を回収して上記戻り配管5へと排出する回収手段を備えている。
ここで、本実施形態の送液システムでは、一例として温度が55~65℃、過酢酸濃度が2000~2500ppmの過酢酸水溶液を上記殺菌手段2に送液している。
【0010】
上記過酢酸水溶液タンク3には所定量の過酢酸水溶液が貯溜可能となっており、当該過酢酸水溶液タンク3の下部には上記供給配管4の一端が接続され、上部には上記戻り配管5の一端が接続されている。
当該過酢酸水溶液タンク3から供給配管4を介して殺菌手段2に供給された過酢酸水溶液は、ペットボトルの殺菌に使用された後、上記殺菌手段2で回収され、上記戻り配管5によって過酢酸水溶液タンク3へと還流するようになっている。
ここで、上記殺菌手段2で過酢酸水溶液をペットボトルに噴射すると、蒸発等によって過酢酸水溶液の総量が減少することから、上記過酢酸水溶液タンク3にレベルセンサ3aを設けて、過酢酸水溶液の量を監視するようになっている。
【0011】
上記供給配管4には、上記過酢酸水溶液タンク3からの過酢酸水溶液を殺菌手段2へと送液する第1ポンプ13が設けられ、当該第1ポンプ13の下流側には過酢酸水溶液を加熱する上記加熱手段6とが設けられている。
上記第1ポンプ13は、上記殺菌手段2で用いる過酢酸水溶液を送液するため、本実施形態では例えば26000L/hの流量で送液が可能となっている。
上記加熱手段6は熱交換器6aによって構成され、当該熱交換器6aには上記供給配管4と加熱配管14とが接続されている。
上記加熱配管14には蒸気供給源31から加熱水蒸気が供給されるようになっており、上記加熱配管14を流通する加熱水蒸気と上記供給配管4を流通する過酢酸水溶液との間で熱交換器6aを介して熱交換が行われ、これにより過酢酸水溶液は55~65℃に加熱されて、上記殺菌手段2へと送液されるようになっている。
上記戻り配管5は、上記殺菌手段2で使用された過酢酸水溶液を上記過酢酸水溶液タンク3に戻すようになっており、殺菌手段で使用された過酢酸水溶液の温度は40℃程度まで冷却されている。
したがって、上記過酢酸水溶液タンクには、循環使用されている約40℃の過酢酸水溶液が貯溜されるようになっている。
【0012】
上記過酢酸原液供給手段7は、過酢酸原液を貯留する原液タンク15と、当該原液タンク15に対して過酢酸原液を供給する過酢酸原液供給源16と、過酢酸水溶液タンク3と原液タンク15との間に配設された原液供給配管17と、当該原液供給配管17に設けられた第2ポンプ18とから構成されている。
上記過酢酸水溶液タンク3に設けたレベルセンサ3aが液面の低下を検出すると、制御手段12は上記第2ポンプ18を制御して、所定量の過酢酸原液を上記過酢酸水溶液タンク3に向けて送液する。
また過酢酸水溶液の濃度の低下が検出された場合にも、制御手段12は上記第2ポンプ18を制御して、所定量の過酢酸原液を上記過酢酸水溶液タンク3に向けて送液するようになっている。
【0013】
上記水供給手段8は、水(以下、冷却水とも表する)を供給する給水源19と、上記水を一時的に貯溜する水タンク20と、過酢酸水溶液タンク3と水タンク20との間に配設された水供給配管21と、当該水供給配管21に設けられた第3ポンプ22とから構成されている。
また、給水源19と水タンク20との間に設けられた給水配管23には制御手段12によって制御される開閉弁24が設けられている。
なお本実施形態の水供給手段8は、上記濃度検出用配管9に設けた冷却手段11に冷却水を供給するようにも構成されている。
上記過酢酸水溶液タンク3に設けたレベルセンサ3aが液面の低下を検出すると、制御手段12は上記第3ポンプ22を制御して、水タンク20に貯溜された所定量の水を上記過酢酸水溶液タンク3に向けて送液するようになっている。
上記開閉弁24は水タンク20に設けられた図示しないレベルセンサによって液面の低下が検出されると開放され、給水源19の水を水タンク20に供給するようになっている。
ここで、上記給水源19によって供給される水の温度は一定に管理されておらず、使用する時間帯に応じて外気の影響を受けて温度変化するようになっている。例えば早朝および深夜に比べ、日中の冷却水の温度は高くなっている(
図2参照)。
【0014】
上記濃度検出用配管9は、上記供給配管4における上記加熱手段6よりも上流側となる位置で分岐しており、その端部は上記過酢酸水溶液タンク3に接続されている。
したがって、過酢酸水溶液タンク3より排出された過酢酸水溶液は、濃度検出用配管9を流通した後、過酢酸水溶液タンク3に還流されるようになっている。
上記濃度検出用配管9には過酢酸水溶液の濃度を測定する過酢酸濃度検出手段10の他、過酢酸水溶液を送液する第4ポンプ25と、過酢酸水溶液を冷却する上記冷却手段11と、過酢酸水溶液の温度を測定する過酢酸温度検出手段26とが設けられている。
上記濃度検出用配管9に設けられた第4ポンプ25は、上記供給配管4に設けられた上記第1ポンプ13に対し、送液する流量が少なく設定されており、例えば上記供給配管4の第1ポンプ13が26000L/minの流量で送液するのに対し、第4ポンプ25は100L/minの流量で送液するように設定されている。
【0015】
上記過酢酸濃度検出手段10は、いわゆる電気化学測定法に基づいて過酢酸水溶液の過酢酸濃度を測定するものとなっており、例えば上記特許文献2に記載されたものを使用することができる。
当該過酢酸濃度検出手段10の具体的な説明については省略するが、過酢酸水溶液に接触させた一対の電極に電流を流してこれらの電極に酸化還元反応を生じさせ、その際に過酢酸水溶液を通過した電流の電流値を測定し、測定した電流値に対して所要の換算式を適用することで、過酢酸水溶液の過酢酸濃度を算出するようになっている。
また上記過酢酸濃度検出手段10によって過酢酸水溶液の過酢酸濃度を算出するには、過酢酸水溶液の温度が40℃以上の状態では、過酢酸が不安定となって酢酸と過酸化水素とに分解しやすくなることから、本実施形態では上記冷却手段11によって過酢酸水溶液を40℃未満の目標温度Aに冷却した状態で過酢酸濃度の測定を行うようになっている。
【0016】
上記冷却手段11は、濃度検出用配管9に設けられた熱交換器11aを備え、上記水供給手段8を構成する上記水タンク20に接続された水供給配管21より分岐して設けられた冷却水配管27と、当該冷却水配管27に設けられた第5ポンプ28と、制御手段12によって制御される流量調整バルブ29とから構成されている。
また上記給水源19と水タンク20との間に設けられた給水配管23には、冷却水の温度を測定する冷却水温度検出手段30が設けられている。
上記冷却水配管27は、上記水供給配管21より分岐した後、上記水タンク20に接続されており、水タンク20の冷却水を上記冷却水配管27によって循環させるようになっている。
上記熱交換器11aには上記濃度検出用配管9および上記冷却水配管27が接続され、濃度検出用配管9を流通する過酢酸水溶液と冷却水配管27を流通する冷却水との間で熱交換を行い、これにより過酢酸水溶液を上記目標温度Aに冷却するようになっている。
上記冷却水配管27に設けた流量調整バルブ29は、制御手段12の制御によって冷却水の流量を調整するようになっており、これにより上記熱交換器11aにおいて過酢酸水溶液の冷却度合いを調整することが可能となっている。
【0017】
ここで、本実施形態の送液システム1では、上記給水源19より供給される冷却水の温度が外気の影響を受けて変動することと、過酢酸水溶液の温度変動幅が大きいと上記過酢酸濃度検出手段10によって検出される濃度の値が安定しなくなることから、目標温度Aを上記給水配管23に設けた冷却水温度検出手段30によって測定される冷却水の温度に応じて変動させながら、過酢酸水溶液の冷却を制御するようになっており、具体的には冷却水の温度に2℃加算した温度に目標温度Aを設定するようにしている。
【0018】
以下、上記実施形態にかかる送液システム1の動作について説明する。
まず、上記過酢酸水溶液タンク3には所定量の過酢酸水溶液が収容されており、この状態から上記供給配管4に設けられた第1ポンプ13が作動して、過酢酸水溶液が殺菌手段2へと送液される。このとき、上記第1ポンプ13による送液量は例えば26000L/hに設定されている。
上記供給配管4において、上記過酢酸水溶液は加熱手段6の熱交換器6aを通過し、このとき加熱配管14を流通する加熱蒸気との間で熱交換が行われ、過酢酸水溶液は55~65℃に加熱される。
加熱された過酢酸水溶液は上記殺菌手段2においてペットボトルの外面や内面に噴射され、噴射された過酢酸水溶液は殺菌手段2において回収され、上記戻り配管5を流通して過酢酸水溶液タンク3に還流する。このとき、殺菌手段2において使用された過酢酸水溶液は大体40℃ぐらいまで温度が下がった状態となっている。
殺菌手段2での使用に伴い、過酢酸水溶液タンク3の過酢酸水溶液が減少すると、レベルセンサ3aが液面の低下を検出し、制御手段12は過酢酸原液供給手段7を構成する第2ポンプ18と、水供給手段8を構成する第3ポンプ22とを作動させて、所定量の過酢酸原液および水を過酢酸水溶液タンク3に送液し、新たな過酢酸水溶液が補充されることとなる。
【0019】
一方、本実施形態の送液システム1においては、過酢酸水溶液の温度を55~65℃、濃度を2000~2500ppmに調整して上記殺菌手段2へ送液している。このうち濃度については上記過酢酸水溶液タンク3の過酢酸水溶液の一部を上記濃度検出用配管9に流通させて測定するようになっている。
制御手段12は濃度検出用配管9の第4ポンプ25を作動させて、供給配管4を流通する過酢酸水溶液の一部を濃度検出用配管9に流通させる。このとき、例えば第4ポンプ25の送液流量は100L/hとなっており、上記供給配管4の第1ポンプ13に対して流量を少なくしている。
一方、上記過酢酸水溶液タンク3から供給配管4に排出された過酢酸水溶液の温度は約40℃であり、40℃を超えた過酢酸水溶液は濃度を正確に測定することができない。
そこで、上記濃度検出用配管9には、過酢酸濃度検出手段10の上流側に冷却手段11を設けて、過酢酸水溶液を確実に40℃未満の目標温度Aに冷却してから濃度の測定を行うようになっている。
【0020】
このようにして上記冷却手段11によって目標温度Aに冷却された過酢酸水溶液は、上記過酢酸濃度検出手段10において濃度が測定される。上述したように過酢酸濃度検出手段10では電気化学測定法を用いて過酢酸水溶液を流れる電流値を測定し、この電流値に対して所要の換算式を適用することで濃度を算出するようになっている。
図2は、上記制御手段12において目標温度Aを説明するグラフとなっており、縦軸は温度を、横軸は時間をそれぞれ示している。また
図2(a)は本発明にかかる目標温度Aの設定方法を説明する図を示し、
図2(b)は目標温度Aを一定に維持した場合をそれぞれ示している。
そして
図2には、それぞれ上記目標温度Aの他、上記冷却水温度検出手段30が測定した冷却水温度B、上記過酢酸温度検出手段26が測定した過酢酸水溶液温度Cが表示されている。
上記冷却水温度Bは、上述したように一日の間に温度変化があり、例えば早朝および夜中に比べて、日中の温度が高くなっている。またこの傾向は天候等によって毎日同じ条件とはならず、他の要因によって変動する場合もある。
【0021】
図2(a)に示す本発明にかかる目標温度Aの設定方法を説明すると、制御手段12は、上記冷却水温度検出手段30が測定した冷却水温度Bを測定すると、当該冷却水温度Bに対して所定の温度、例えば2℃加算した温度を上記目標温度Aとして設定する。
上述したように、上記給水源19から供給される冷却水には、
図2(a)に示すような温度変化があることから、上記目標温度Aは当該冷却水温度Bに従って変動するようになっている。
具体的には、測定された冷却水温度Bが23℃の場合は目標温度Aを25℃に設定し、そこから冷却水温度Bが24℃に上昇した場合は目標温度Aを26℃に変更している。
一方制御手段12は、上記過酢酸温度検出手段26によって濃度検出用配管9を流通する過酢酸水溶液の温度である過酢酸水溶液温度Cを計測し、制御手段12は当該過酢酸水溶液温度Cが上記目標温度Aとなるよう、上記冷却手段11を用いて過酢酸水溶液を冷却するようになっている。
このとき制御手段12は、目標温度Aと、測定された過酢酸水溶液温度Cとの温度差に基づいて、上記冷却水配管27に設けた流量調整バルブ29を制御して冷却水の流量を調整することにより、濃度検出用配管9を流通する過酢酸水溶液の過酢酸水溶液温度Cが上記目標温度Aまで冷却するようになっている。
【0022】
このようにして冷却手段11によって冷却された過酢酸水溶液は、上記過酢酸濃度検出手段10を通過する際に濃度が測定されるようになっている。
ここで、上記過酢酸濃度検出手段10が計測した電流値は、実際に濃度測定用配管9を流通している過酢酸水溶液より得られたものであるが、このときの実際の過酢酸水溶液の過酢酸水溶液温度Cは、上記目標温度Aに対してずれている場合がある。
つまり、
図2(a)に示す過酢酸温度検出手段26が測定した過酢酸水溶液温度Cは、時間の経過に伴って上下にジグザグ状に変動するものとなっているが、これは上記過酢酸温度検出手段26が所定時間ごとに温度の測定を行っているからである。
つまり、過酢酸温度検出手段26による測定間隔の間に、上記制御手段12が流量調整バルブ29を制御して冷却水の流量を調整した結果、過度に冷却されて冷却水温度B近くまで下降した温度と、冷却が不十分な目標温度Aを超えた温度とが検出されるため、上述したようなジグザグ状の測定結果が得られるものとなっている。
そこで本実施形態では、
図2(a)に示すように、目標温度Aを上記冷却水温度Bに追従するように設定し、かつ当該過酢酸水溶液温度Cを目標温度Aに追従するように冷却するようになっている。
その結果、過酢酸温度検出手段26が検出した過酢酸水溶液温度Cのジグザグ状の温度変化の変位量を小さくすることができるので、上記過酢酸濃度検出手段10による濃度の検出値を安定させることができる。
【0023】
これに対し、
図2(b)に示すように、目標温度Aを一定に設定し、冷却手段11が過酢酸水溶液温度Cを当該目標温度Aに追従させるようにした場合、例えば早朝や深夜などの冷却水温度Bが低い時間帯において、目標温度Aと冷却水温度Bとの差が大きくなってしまう。
この場合、過酢酸温度検出手段26が所定時間ごとに温度の測定を行うことで、冷却水温度Bに近い下降した値と、目標温度Aに近い上昇した値との変位量が大きくなってしまう。
すなわち、測定される過酢酸水溶液温度Cの温度変動幅が大きくなってしまい、上記過酢酸濃度検出手段10によって検出される濃度の値が大きく変動して正常に検出できなくなっていた。
【0024】
このようにして殺菌手段2においてペットボトルの殺菌を行う間、過酢酸濃度検出手段10は常時過酢酸水溶液の濃度を測定しており、当該濃度が殺菌手段2での使用に適した濃度から逸脱した場合には、制御手段12は上記過酢酸原液供給手段7を制御して過酢酸原液を過酢酸水溶液タンク3に供給するか、もしくは給水手段を制御して水を過酢酸水溶液タンク3に供給し、過酢酸水溶液の濃度を一定に保つようになっている。
【0025】
上記実施形態によれば、過酢酸水溶液タンク3から殺菌手段2へと供給される過酢酸水溶液の一部を濃度検出用配管9に分岐させて濃度の測定を行っていることから、流通する過酢酸水溶液の一部のみを上記冷却手段11によって冷却すればよく、過酢酸水溶液の全量を冷却する場合に比べて、効率的に濃度の測定を行うことができる。
また、本実施形態では、濃度を測定する過酢酸水溶液に目標温度Aを設定するとともに、この目標温度Aを上記冷却水温度Bの変化に追従するように変動させることにより、実際の過酢酸水溶液温度Cを目標温度Aに追従させることで、濃度を測定する過酢酸水溶液の温度変動幅を小さくし、より正確な濃度測定を行うことが可能となっている。
【0026】
なお、上記実施形態では、目標温度Aは冷却水温度Bに2℃加算した値としているが、それに限るものではなく、例えば3℃加算した値としても良い。
また、上記実施形態では殺菌手段2としてペットボトルを殺菌するものとなっているが、被殺菌物としてその他の物品を殺菌することも可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 送液システム 2 殺菌手段
3 過酢酸水溶液タンク 9 濃度測定用配管
10 過酢酸濃度検出手段 11 冷却手段
12 制御手段 19 給水源
26 過酢酸温度検出手段 27 冷却水配管
29 流量調整バルブ 30 冷却水温度検出手段
A 目標温度 B 冷却水温度
C 過酢酸水溶液温度