IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ベークライト株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-樹脂組成物、硬化物およびその用途 図1
  • 特開-樹脂組成物、硬化物およびその用途 図2
  • 特開-樹脂組成物、硬化物およびその用途 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037317
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20240312BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240312BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20240312BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20240312BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20240312BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20240312BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/013
C08L45/00
C08G59/40
C08J5/24 CFC
B32B27/38
H05K1/03 610L
H05K1/03 610R
H05K1/03 630H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142074
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】大東 範行
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AB09
4F072AB28
4F072AD27
4F072AE01
4F072AE02
4F072AF06
4F072AF14
4F072AF15
4F072AF19
4F072AF23
4F072AF27
4F072AF29
4F072AG03
4F072AG19
4F072AH02
4F072AH25
4F072AJ22
4F072AK14
4F072AL13
4F100AA01A
4F100AB01B
4F100AG00A
4F100AK17A
4F100AK41A
4F100AK46A
4F100AK49A
4F100AK53A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA23A
4F100DG00A
4F100DH01A
4F100EJ08A
4F100EJ82A
4F100GB43
4F100JA05A
4F100JB12A
4F100JG05A
4F100JJ03
4F100JK06
4J002BG07W
4J002BK003
4J002CD01W
4J002CD02W
4J002CD04W
4J002CD05W
4J002CD06W
4J002CD07W
4J002CD08W
4J002CD11W
4J002CD12W
4J002CD13W
4J002CD14W
4J002CD18W
4J002CD19W
4J002CM00X
4J002DE076
4J002DE086
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE187
4J002DE236
4J002DE286
4J002DF016
4J002DG036
4J002DG046
4J002DG056
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DK006
4J002DL006
4J002ER006
4J002EU027
4J002FD016
4J002FD147
4J002FD14X
4J002GF00
4J002GH00
4J002GQ01
4J036AA01
4J036AE07
4J036DC32
4J036EA06
4J036FA05
4J036FB01
4J036JA05
4J036JA08
4J036JA10
4J036JA11
(57)【要約】
【課題】低誘電率および低誘電正接に優れ、さらに耐熱性に優れた硬化物等が得られるとともに、基材への含浸性に優れており成形性が改善された樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂組成物は、(A)シアネート当量が200以上であるシアネート樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)シリカと、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シアネート当量が200以上であるシアネート樹脂と、
(B)エポキシ樹脂と、
(C)無機充填剤と、
を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
シアネート樹脂(A)は下記一般式(1)で表される樹脂(a1)および/またはそのプレポリマー(a2)を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Aは、下記一般式(1a)で表される2価の基、置換された炭素数1~5のアルキレン基、または置換されていてもよい2価の環状脂肪族基を示す。
置換された炭素数1~5の前記アルキレン基の置換基は、炭素数1~3のアルキル基またはアリール基である。
【化2】
(一般式(1a)中、XおよびXは同一でも異なっていてもよく、炭素数1~3のアルキル基で置換された炭素数1~5のアルキレン基を示し、*は結合手を示す。)
およびQは同一でも異なっていてもよく、水素原子または置換されていてもよいアリール基を示す。
Aが-C(CH-であり、QおよびQが水素原子である場合、Aが-CH(CH)-であり、QおよびQが水素原子である場合を除く。)
【請求項3】
樹脂(a1)は構造中に含まれるアリール基の数が3以上である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
シアネート樹脂(A)は、樹脂(a1)のオリゴマーを含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂(B)は、エポキシ当量が190g/eq以上のエポキシ樹脂を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらにマレイミド化合物(D)を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらにクマロン樹脂(E)を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項請求項1または2に記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化物からなる低誘電率材料。
【請求項10】
キャリア基材と、
前記キャリア基材上に設けられている請求項1または2に記載の樹脂組成物からなる樹脂膜と、を備える、キャリア付樹脂膜。
【請求項11】
請求項1または2に記載の樹脂組成物を繊維基材に含浸させて形成されたプリプレグ。
【請求項12】
前記繊維基材が、ガラス繊維基材、ポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、およびフッ素樹脂繊維の中から選ばれる1種または2種以上を含む、請求項11に記載のプリプレグ。
【請求項13】
請求項11または12に記載のプリプレグと、
前記プリプレグの少なくとも一方の面に積層された金属層と、
を備える、金属張積層板。
【請求項14】
請求項11または12に記載のプリプレグの成形体と、前記成形体の両面または片面に設けられた配線パターンとを備える、プリント配線基板。
【請求項15】
請求項14に記載のプリント配線基板と、
前記プリント配線基板の前記回路層上に搭載された、または前記プリント配線基板に内蔵された半導体素子と、を備える、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、硬化物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで回路基板に用いる樹脂組成物において様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1には、ポリフェニレンエーテル誘導体、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種類の熱硬化性樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、及び所定の共重合樹脂を含む樹脂組成物が開示され、シアネート樹脂として、フェノールノボラック型シアネートエステル化合物等が例示されている。当該文献には、この樹脂組成物によれば誘電特性に優れると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-006879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の技術においては、依然として得られる硬化物の低誘電率および低誘電正接に改善の余地があった。さらに、耐熱性が低く、また基材への含浸性が十分でないため、ボイドが発生して成形性が低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定のシアネート樹脂を用いることで低誘電率および低誘電正接を改善できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0006】
[1] (A)シアネート当量が200以上であるシアネート樹脂と、
(B)エポキシ樹脂と、
(C)無機充填剤と、
を含む、樹脂組成物。
[2] シアネート樹脂(A)は下記一般式(1)で表される樹脂(a1)および/またはそのプレポリマー(a2)を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Aは、下記一般式(1a)で表される2価の基、置換された炭素数1~5のアルキレン基、または置換されていてもよい2価の環状脂肪族基を示す。
置換された炭素数1~5の前記アルキレン基の置換基は、炭素数1~3のアルキル基またはアリール基である。
【化2】
(一般式(1a)中、XおよびXは同一でも異なっていてもよく、炭素数1~3のアルキル基で置換された炭素数1~5のアルキレン基を示し、*は結合手を示す。)
およびQは同一でも異なっていてもよく、水素原子または置換されていてもよいアリール基を示す。
Aが-C(CH-であり、QおよびQが水素原子である場合、Aが-CH(CH)-であり、QおよびQが水素原子である場合を除く。)
[3] 樹脂(a1)は構造中に含まれるアリール基の数が3以上である、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4] シアネート樹脂(A)は、樹脂(a1)ののオリゴマーを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] エポキシ樹脂(B)は、エポキシ当量が190g/eq以上のエポキシ樹脂を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] さらにマレイミド化合物(D)を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] さらにクマロン樹脂(E)を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
[9] [8]に記載の硬化物からなる低誘電率材料。
[10] キャリア基材と、
前記キャリア基材上に設けられている[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物からなる樹脂膜と、を備える、キャリア付樹脂膜。
[11] [1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物を繊維基材に含浸させて形成されたプリプレグ。
[12] 前記繊維基材が、ガラス繊維基材、ポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、およびフッ素樹脂繊維の中から選ばれる1種または2種以上を含む、[11]に記載のプリプレグ。
[13] [11]または[12]に記載のプリプレグと、
前記プリプレグの少なくとも一方の面に積層された金属層と、
を備える、金属張積層板。
[14] [11]または[12]に記載のプリプレグの成形体と、前記成形体の両面または片面に設けられた配線パターンとを備える、プリント配線基板。
[15] [14]に記載のプリント配線基板と、
前記プリント配線基板の前記回路層上に搭載された、または前記プリント配線基板に内蔵された半導体素子と、を備える、半導体装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、誘電率および誘電正接が低く誘電特性に優れ、さらに耐熱性に優れた硬化物等が得られるとともに、基材への含浸性に優れており成形性が改善された樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る半導体装置の製造プロセスの一例を示す工程断面図である。
図2】合成例1で得たシアネート樹脂A1の赤外吸収スペクトルチャートである。
図3】合成例1で得たシアネート樹脂A1のGPCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、例えば「1~10」は特に断りがなければ「1以上」から「10以下」を表す。
【0010】
本実施形態の樹脂組成物は、(A)シアネート当量が200以上であるシアネート樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)無機充填剤と、を含む。
【0011】
[シアネート樹脂(A)]
シアネート樹脂(A)は、シアネート当量(g/eq)が200以上、好ましくは205以上、より好ましくは210以上である。上限値は特に限定されないが500以下である。「シアネート当量(g/eq)」はH-NMRやGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、標準物質:ポリスチレン換算)等で測定することができる。
これにより、本実施形態の樹脂組成物は低誘電率および低誘電正接に優れ、さらに耐熱性に優れた硬化物等が得られるとともに、基材への含浸性に優れており成形性を改善することができる。
【0012】
シアネート樹脂(A)は、本発明の効果の観点から、下記一般式(1)で表される樹脂(a1)および/またはそのプレポリマー(a2)を含むことが好ましく、少なくとも一部にプレポリマー(a2)を含むことがより好ましい。
【0013】
【化3】
【0014】
一般式(1)中、Aは、下記一般式(1a)で表される2価の基、置換された炭素数1~5のアルキレン基、または置換されていてもよい2価の環状脂肪族基を示す。
【0015】
【化4】
【0016】
一般式(1a)中、XおよびXは同一でも異なっていてもよく、炭素数1~3のアルキル基で置換された炭素数1~5のアルキレン基、好ましくは炭素数1または2のアルキル基で置換された炭素数1~3のアルキレン基、より好ましくは炭素数1のアルキル基で置換された炭素数1のアルキレン基を示す。*は結合手を示す。
【0017】
一般式(1)のAにおいて、置換された炭素数1~5の前記アルキレン基としては、好ましくは置換された炭素数1~3のアルキレン基、より好ましくは置換された炭素数1のアルキレン基である。
【0018】
置換された炭素数1~5の前記アルキレン基の置換基は、炭素数1~3のアルキル基またはアリール基であり、好ましくは炭素数1のアルキル基またはアリール基である。前記アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0019】
一般式(1)のAにおいて、置換されていてもよい2価の環状脂肪族基の2価の環状脂肪族基としては、炭素原子数3~10の単環式又は多環式脂肪族環から誘導される2価の基であることが好ましい。炭素原子数3~10の単環式又は多環式脂肪族環としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロへプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、スピロビシクロペンタン、ビシクロ[2.1.0]ペンタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、トリシクロ[3.2.1.02,7]オクタン、スピロ[3,4]オクタン、ノルボルナン、ノルボルネン、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン(アダマンタン)等が挙げられ、好ましくはシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、より好ましくはシクロヘキサンである。
【0020】
置換されていてもよい2価の環状脂肪族基の置換基は、炭素数1~3のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1~2のアルキル基、より好ましくは炭素数1のアルキル基である。
【0021】
およびQは同一でも異なっていてもよく、水素原子または置換されていてもよいアリール基を示す。アリール基としては前述と同様の基を挙げることができ、好ましくはフェニル基である。置換されていてもよいアリール基の置換基としては、炭素数1~3のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1~2のアルキル基、より好ましくは炭素数1のアルキル基である。
【0022】
樹脂(a1)は構造中に含まれるアリール基の数が好ましくは3以上であり、より好ましくは4以上である。アリール基の数の上限値は好ましくは6以下、より好ましくは5以下である。
【0023】
なお、本実施形態のシアネート樹脂(A)は、一般式(1)のAが-C(CH-であり、かつQおよびQが水素原子である化合物、および一般式(1)のAが-CH(CH)-であり、かつQおよびQが水素原子である化合物を含まない。
【0024】
樹脂(a1)としては、具体的に、以下の式で表される樹脂を挙げることができ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
【化5】
【0026】
シアネート樹脂(A)は、樹脂(a1)のオリゴマーを含むことができる。オリゴマーとしては三量体であるトリアジン骨格を有するものが挙げられる。
【0027】
シアネート樹脂(A)は、本発明の効果の観点から、樹脂組成物100質量%中に、好ましくは2質量%以上40質量%以下、より好ましくは5質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上25質量%以下の量で含むことができる。
【0028】
(シアネート樹脂(A)の製造方法)
本実施形態のシアネート樹脂(A)に含まれる樹脂(a1)は、下記一般式(2)に示すビフェニル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとを反応させることにより得ることができる。
【0029】
【化6】
【0030】
一般式(2)中、A、Q、Qは一般式(1)と同義である。
【0031】
本実施形態の樹脂(a1)の合成条件、及び方法は、特に限定されないが、例えば、有機溶媒中に前記一般式(2)で示されるビフェニル型フェノール樹脂を溶解させ、低温でハロゲン化シアン化合物を滴下し、次に低温で3級アミンなどの塩基性化合物を滴下する。ハロゲン化シアンと3級アミンなどの塩基性化合物は、交互に滴下しても良く、同時でも良い。発熱反応による副反応が起こらないよう、低温で反応を進めることにより、高収率でシアネート樹脂(A)を得ることができる。低温とは、副反応がおこる温度以下をいう。好ましくは、0℃以下である。
【0032】
前記合成条件において、ビフェニル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとの仕込み比率は、ビフェニル型フェノール樹脂のフェノール性水酸基1に対してハロゲン化シアンを1.5~3が好ましい。
【0033】
前記ハロゲン化シアン化合物としては、特に限定されないが、例えば、塩化シアン、臭化シアンなどを用いることができる。
【0034】
前記3級アミンとしては、特に限定されないが、例えば、アルキルアミン、アリールアミン、シクロアルキルアミンのいずれでも良く、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、メチルジブチルアミンなどが挙げられる。
【0035】
合成に用いる前記有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ケトン系溶剤、芳香族系溶剤、エーテル系溶剤、ハロゲン化炭素水素系溶剤、アルコール系溶剤、非プロトン系溶剤、二トリル系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤などがあり、いずれも用いることができる。これらの1種類または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
一般式(2)で示されるビフェニル型フェノール樹脂とハロゲン化シアン化合物とを反応させた後の処理としては、析出した3級アミンなどの塩基性化合物の塩化水素塩をろ過または水洗によって除去する。さらにアミン類を除去するため、酸性水溶液を用いて分液洗浄を行うことができる。希塩酸を主に用いる。最後に脱水のため、無水硫酸ナトリウムなどを用いる。水洗の場合は、分液作業が可能な溶媒を選択する必要がある。
さらに、樹脂(a1)を温度80℃~200℃で、30分~5時間程度反応させることで、少なくとも一部をプレポリマー化することができ、プレポリマー(a2)を含むシアネート樹脂(A)を得ることができる。
上記の反応温度や時間を調整することにより、シアネート樹脂(A)のシアネート当量を調整することができる。
【0037】
[エポキシ樹脂(B)]
エポキシ樹脂(B)としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4’-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4’-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4’-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリヒドロキシフェノニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂)等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、ヒドロキシナフタレンおよび/またはジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られる2官能ないし4官能のナフタレン型エポキシ樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、tert-ブチルカテコール型エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂;N,N,N’,N’-テトラグリシジルメタキシレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N-ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との共重合物;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
エポキシ樹脂(B)は、エポキシ当量が好ましくは190g/eq以上、より好ましくは200g/eq以上、さらに好ましくは210g/eq以上のエポキシ樹脂を含むことができる。これにより、最適な架橋密度によって、樹脂組成物の硬化物の誘電特性を改善することができる。エポキシ当量の上限値は、特に限定されないが、例えば、700g/eq以下としてもよく、600g/eq以下としてもよく、500g/eq以下としてもよい。これにより、樹脂組成物の硬化物の強度を向上させることができる。
【0039】
本実施形態において、エポキシ樹脂(B)は、誘電特性の観点から、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂およびナフトールアラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上を含むことができる。この中でも、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0040】
また、本実施形態のエポキシ樹脂(B)は、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、上記エポキシ樹脂の他に、エポキシ当量が190g/eq未満のエポキシ樹脂を含んでもよい。
【0041】
エポキシ樹脂(B)は、本発明の効果の観点から、樹脂組成物100質量%中に、好ましくは5質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上30質量%以下の量で含むことができる。
【0042】
[無機充填剤(C)]
無機充填材(C)としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカ、溶融シリカ等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。
【0043】
これらの中でも、タルク、アルミナ、ガラス、シリカ、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましく、シリカが特に好ましい。無機充填材(C)としては、これらの中の1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
無機充填材(C)の平均粒子径の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上としてもよく、0.05μm以上としてもよい。これにより、樹脂ワニスの粘度が高くなるのを抑制でき、絶縁層作製時の作業性を向上させることができる。また、無機充填材(C)の平均粒子径の上限値は、特に限定されないが、例えば、5.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.0μm以下がさらに好ましい。これにより、樹脂ワニス中における無機充填材(C)の沈降等の現象を抑制でき、より均一な樹脂膜を得ることができる。また、プリント配線基板の回路寸法L/Sが20μm/20μmを下回る際には、配線間の絶縁性への影響を抑制することができる。
【0045】
無機充填材(C)の平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA-500)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)を平均粒子径とすることができる。
【0046】
また、無機充填材(C)は、特に限定されないが、平均粒子径が単分散の無機充填材を用いてもよいし、平均粒子径が多分散の無機充填材を用いてもよい。さらに平均粒子径が単分散および/または多分散の無機充填材を1種類または2種類以上で併用してもよい。
【0047】
無機充填材(C)はシリカ粒子を含むことが好ましい。シリカ粒子は球状であってもよい。上記シリカ粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、5.0μm以下としてもよく、0.1μm以上4.0μm以下としてもよく、0.2μm以上2.0μm以下としてもよい。これにより、無機充填材(C)の充填性をさらに向上させることができる。
【0048】
無機充填材(C)は、本発明の効果の観点およびハンドリング性の観点から、樹脂組成物100質量%中に、好ましくは30質量%以上80質量%以下、より好ましくは40質量%以上75質量%以下、さらに好ましくは50質量%以上70質量%以下の量で含むことができる。
【0049】
[マレイミド化合物(D)]
本実施形態の樹脂組成物は、さらにマレイミド化合物(D)を含むことができる。
マレイミド化合物(D)は、二環式炭化水素基を有するものであり、二環式炭化水素基を有する芳香族マレイミド化合物であることが好ましい。
二環式炭化水素基は、8~10個の炭素原子で形成される二環式炭化水素から水素1原子を除いた残基を示す。具体例として、ナフタレン環基、ジヒドロナフタレン環基、テトラヒドロナフタレン環基、オクタテトラヒドロナフタレン環基、インデン環基、インダン環基またはアズレン環基等が挙げられる。なかでも、低粘度下する点から、インダン環基であることが好ましい。
【0050】
インダン環基を有する芳香族マレイミド化合物としては、例えば、以下の式(a-1)で示されるものが挙げられる。
【0051】
【化7】
【0052】
(式(a-1)中、RaおよびRbはそれぞれ、独立に、炭素数1~10のアルキル基、アルキルオキシ基およびアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、アリールオキシ基およびアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、メルカプト基のいずれかを表す。qは0~4の整数値、rは0~3の整数値を示す。nは0.5~20の平均繰り返し単位数を示す。)
【0053】
式(a-1)中、qが2~4の場合、Raは同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよく、rが2~3の場合、Rbは同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0054】
式(a-1)中、Raは、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基のいずれかであることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましい。これにより、マレイミド基の良好な反応性が保持しつつも、マレイミド基近傍の平面性を低減し結晶性を低下することにより、溶剤に対する溶解性を向上できる。また、qは好ましくは2~3であり、より好ましくは2である。
【0055】
式(a-1)中、rが0の場合、Rbは、水素原子であることが好ましい。これにより、マレイミド中のインダン骨格の形成の際に、立体障害が少なくなり、マレイミドの合成が安定的にできる。
また、rが1~3の場合、Rbは、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、および、炭素数6~10のアリール基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましい。
【0056】
本実施形態のマレイミド化合物(D)は、構造中にインダン骨格を有することで、従来のマレイミド化合物と比較して、溶剤溶解性を向上できる。
式(a-1)のインダン骨格における平均繰り返し単位数n(平均値)として好ましくは0.5~20であり、より好ましくは0.7~10.0であり、さらに好ましくは0.95~10.0であり、こと更に好ましくは0.98~9.0であり、更に好ましくは0.99~8.0であり、更に好ましくは1.0~7.0であり、更に好ましくは1.0~6.0である。
繰り返し単位nを上記下限値以上とすることで、高分子量成分の割合が高くなり、硬化物の耐脆性、耐熱性が得られる。
一方、繰り返し単位nを上記上限値以下とすることで、高分子量成分の割合が低くなり、溶剤溶解性を良好にできる。また、良好な流動性、ハンドリング性が得られる。
【0057】
また、マレイミド化合物(D)中のマレイミド基は、5員環の平面構造を有し、マレイミド基の二重結合が分子間で相互作用しやすく極性が高いため、マレイミド基、ベンゼン環、その他の平面構造を有する化合物等と強い分子間相互作用を示し、分子運動を抑制することができる。そのため、本実施形態の樹脂組成物は、マレイミド化合物(D)を含むことにより、得られる絶縁層の線膨張係数を下げ、ガラス転移温度を向上させることができ、さらに、耐熱性を向上させることができる。
【0058】
マレイミド化合物(D)は、本発明の効果の観点から、樹脂組成物100質量%中に、好ましくは1質量%以上50質量%以下、より好ましくは2質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上30質量%以下の量で含むことができる。
【0059】
[クマロン樹脂(E)]
本実施形態の樹脂組成物は、さらにクマロン樹脂(E)を含むことができる。
クマロン樹脂(E)とは、その骨格構造にクマロン残基を含む平均重合度4~8の(共)重合体のことを示し、クマロン(1-ベンゾフラン)重合体の他、インデン(C)、スチレン(C)、α-メチルスチレン、メチルインデン及びビニル卜ルエンとの共重合体であってもよい。なかでも、クマロン-インデン共重合体、クマロン-インデン-スチレン共重合体であることが好ましい。
【0060】
インデン-クマロン樹脂は、インデ系モノマー由来の構造単位Aおよびクマロン系モノマー由来の構造単位Bを含むものである。上記インデン-クマロン樹脂は、他のモノマー由来の構造単位を有していてもよい。上記インデン-クマロン樹脂は、例えば、スチレン系モノマー由来の構造単位Cを有していてもよい。これらの構造単位の繰り返し構造を有することができる。
上記インデン系モノマーに由来する構造単位Aは、例えば、下記一般式(M1)で表されるものが挙げられる。
【0061】
【化8】
【0062】
一般式(M1)中、RからRは、それぞれ独立して水素または炭素数1以上3以下の有機基である。
【0063】
上記クマロン系モノマーに由来する構造単位Bは、例えば、下記一般式(M2)で表されるものが挙げられる。
【0064】
【化9】
【0065】
一般式(M2)中、Rは、水素または炭素数1以上3以下の有機基である。Rは互いに同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
【0066】
上記スチレン系モノマーに由来する構造単位Cは、例えば、下記一般式(M3)で表されるものが挙げられる。
【0067】
【化10】
【0068】
一般式(M3)中、Rは、水素または炭素数1以上3以下の有機基である。Rは互いに同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
上記一般式(M1)~(M3)において、RからR、R及びRは、例えば、有機基の構造に水素及び炭素以外の原子を含んでもよい。
【0069】
水素及び炭素以外の原子としては、具体的には、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、フッ素原子、塩素原子などが挙げられる。水素及び炭素以外の原子としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を含むことができる。
【0070】
上記一般式(M1)~(M3)において、RからR、R及びRは、それぞれ独立して、例えば、水素又は炭素数1以上3の有機基であり、水素または炭素数1の有機基であることが好ましく、水素であることが更に好ましい。
【0071】
上記一般式(M1)~(M3)において、上記RからR、R及びRを構成する有機基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基などのアルキル基;アリル基、ビニル基などのアルケニル基;エチニル基などのアルキニル基;メチリデン基、エチリデン基などのアルキリデン基;シクロプロピル基などのシクロアルキル基;エポキシ基、オキセタニル基などのヘテロ環基などが挙げられる。
【0072】
上記インデン-クマロン樹脂は、この中でも、インデン、クマロンおよびスチレンの共重合体を含むことができる。これにより、低誘電特性を向上させることができる。
【0073】
また、上記インデン-クマロン樹脂は、分子内に、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応する反応性基を備えることができる。これにより、低誘電特性を向上させることができる。
上記反応性基としては、OH基、COOH基などが挙げられる。
また、上記インデン-クマロン樹脂は、内部または末端にフェノール性水酸基を有する芳香族構造を有していてもよい。
【0074】
上記インデン-クマロン樹脂の重量平均分子量Mwの上限値は、例えば、4000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1500以下であることが更に好ましく、1200以下であることが一層好ましい。これにより、インデン-クマロン樹脂とエポキシ樹脂との相溶性を高め、適切にインデン-クマロン樹脂を分散できる。一方、インデン-クマロン樹脂の重量平均分子量Mwの下限値は、例えば、400以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、550以上であることが更に好ましく、600以上であることが一層好ましい。これにより、樹脂組成物の中にインデン-クマロン樹脂が適切に分散できる。
【0075】
上記インデン-クマロン樹脂の含有量の下限値は、本実施形態の樹脂組成物全体を100質量%としたとき、例えば、1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。これにより、低誘電特性および低吸水特性を向上できる。一方、上記インデン-クマロン樹脂の含有量の上限値は、本実施形態の樹脂組成物全体を100質量%としたとき、例えば、15質量%以下、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。これにより、他の物性とのバランスを図ることができる。
【0076】
クマロン樹脂(E)の融点は、40℃~120℃であることが好ましく、分子量、重合度により融点を制御することができる。
【0077】
クマロン樹脂(E)は、本発明の効果の観点から、樹脂組成物100質量%中に、好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、より好ましくは1質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上10質量%以下の量で含むことができる。
【0078】
[硬化促進剤]
本実施形態の樹脂組成物は硬化促進剤を含むことができる。
硬化促進剤としては、本発明の効果を奏する範囲で封止用樹脂組成物に一般に使用されるものを用いることができる。
【0079】
硬化促進剤としては、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等のアミジンまたは3級アミン、アミジンまたはアミンの4級塩、などの窒素原子含有化合物を挙げることができる。
【0080】
これらの中でも、成形性と硬化性のバランスを向上させる観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等を含むことがより好ましい。
【0081】
硬化促進剤を用いる場合、その量は、樹脂組成物100質量%中に、好ましくは0.01質量%以上2.0質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上1.0質量%以下とすることができる。
【0082】
[その他の成分]
樹脂組成物は、上記成分の他に、例えば、フェノール樹脂等の硬化剤;エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤;カーボンブラック等の着色剤;天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸もしくはその金属塩類、パラフィン、酸化ポリエチレン等の離型剤;ポリブタジエン化合物、アクリロニトリルブタジエン共重合化合物、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力剤;ハイドロタルサイト等のイオン捕捉剤;水酸化アルミニウム等の難燃剤;酸化防止剤等の各種添加剤を含むことができる。
【0083】
<ワニス>
本実施形態の樹脂組成物は、溶剤に溶かし、ワニスとすることができる。
上記溶剤としては、たとえばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、およびN-メチルピロリドン等の有機溶剤が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
本実施形態の樹脂組成物がワニス状である場合において、当該樹脂組成物の固形分含有量は、たとえば30質量%以上80質量%以下としてもよく、より好ましくは40質量%以上70質量%以下としてもよい。これにより、作業性や成膜性に非常に優れることができる。
【0085】
ワニス状の当該樹脂組成物は、上述の各成分を、たとえば、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いて溶剤中に溶解、混合、撹拌することにより調製することができる。
【0086】
本実施形態の樹脂組成物は、熱硬化性であり硬化物を得ることができ、当該硬化物は誘電率および誘電正接が低く誘電特性に優れることから低誘電率材料を提供することができる。低誘電率材料としては、半導体素子の多層配線構造を構成する層間絶縁膜、回路基板を構成するビルドアップ層もしくはコア層等の半導体用途を挙げることができる。
【0087】
<樹脂膜>
次いで、本実施形態の樹脂膜について説明する。
本実施形態の樹脂膜は、ワニス状である上記樹脂組成物をフィルム化することにより得ることができる。例えば、本実施形態の樹脂膜は、ワニス状の樹脂組成物を塗布して得られた塗布膜に対して、溶剤を除去することにより得ることができる。このような樹脂膜においては、溶剤含有率が樹脂膜全体に対して5質量%以下とすることができる。本実施形態において、たとえば100℃~150℃、1分~5分の条件で溶剤を除去する工程を実施してもよい。これにより、熱硬化性樹脂を含む樹脂膜の硬化が進行することを抑制しつつ、十分に溶剤を除去することが可能となる。
本実施形態の樹脂膜は、樹脂膜単独で構成されてもよく、繊維基材を内部に含むように構成されてもよい。
【0088】
<プリプレグ>
本実施形態のプリプレグは、本実施形態の樹脂組成物中に繊維基材を含むように構成される。プリプレグは、上記樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるものである。本実施形態の樹脂組成物は、基材への含浸性に優れておりボイドの発生が抑制されていることから、プリプレグや当該プリプレグを用いた後述の金属張積層板、プリント配線基板、および半導体パッケージの成形性や生産性に優れる。
【0089】
例えば、プリプレグは、樹脂組成物を繊維基材に含浸させ、その後、半硬化させて得られるシート状の材料として利用できる。このような構造のシート状材料は、誘電特性、高温多湿下での機械的、電気的接続信頼性等の各種特性に優れ、プリント配線基板の絶縁層の製造に適している。
【0090】
本実施形態において、樹脂組成物を繊維基材に含浸させる方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物を溶剤に溶かして樹脂ワニスを調製し、繊維基材を上記樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより上記樹脂ワニスを繊維基材に塗布する方法、スプレーにより上記樹脂ワニスを繊維基材に吹き付ける方法、樹脂組成物からなる上記樹脂膜で繊維基材の両面をラミネートする方法等が挙げられる。
【0091】
上記繊維基材としては、とくに限定されないが、ガラス織布、ガラス不織布等のガラス繊維基材;ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維等のポリアミド系樹脂繊維;ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維;ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維のいずれかを主成分とする織布または不織布で構成される合成繊維基材;クラフト紙、コットンリンター紙、あるいはリンターとクラフトパルプの混抄紙等を主成分とする紙基材;等が挙げられる。これらのうち、いずれかを使用することができる。これらの中でもガラス繊維基材が好ましい。これにより、低吸水性で、高強度、低熱膨張性の樹脂基板を得ることができる。
【0092】
繊維基材の厚みは、とくに限定されないが、好ましくは5μm以上150μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは12μm以上90μm以下である。このような厚みを有する繊維基材を用いることにより、プリプレグ製造時のハンドリング性がさらに向上できる。
【0093】
繊維基材の厚みが上記上限値以下であると、繊維基材中の樹脂組成物の含浸性が向上し、ストランドボイドや絶縁信頼性の低下の発生を抑制することができる。また炭酸ガス、UV、エキシマ等のレーザーによるスルーホールの形成を容易にすることができる。また、繊維基材の厚みが上記下限値以上であると、繊維基材やプリプレグの強度を向上させることができる。その結果、ハンドリング性が向上できたり、プリプレグの作製が容易となったり、樹脂基板の反りを抑制できたりする。
【0094】
上記ガラス繊維基材として、例えば、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Tガラス、NEガラス、UTガラス、Lガラス、HPガラスおよび石英ガラスから選ばれる一種または二種以上のガラスにより形成されたガラス繊維基材が好適に用いられ、NEガラス繊維基材が好ましい。
【0095】
本実施形態において、プリプレグは、例えば、プリント配線基板におけるビルドアップ層中の絶縁層やコア層中の絶縁層を形成するために用いることができる。プリプレグをプリント配線基板におけるコア層中の絶縁層を形成するために用いる場合は、例えば、2枚以上のプリプレグを重ね、得られた積層体を加熱硬化することによりコア層用の絶縁層とすることもできる。
【0096】
<金属張積層板>
本実施形態の積層板は、上記プリプレグの硬化物の少なくとも一方の面に金属層が配置された金属張積層板である。
また、プリプレグを用いた金属張積層板製造方法は、例えば以下の通りである。
【0097】
プリプレグまたはプリプレグを2枚以上重ね合わせた積層体の外側の上下両面または片面に金属箔を重ね、ラミネーター装置やベクレル装置を用いて高真空条件下でこれらを接合する、あるいはそのままプリプレグの外側の上下両面または片面に金属箔を重ねる。また、プリプレグを2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。次いで、プリプレグと金属箔とを重ねた積層体を加熱加圧成形することで金属張積層板を得ることができる。ここで、加熱加圧成形時に、冷却終了時まで加圧を継続することが好ましい。
【0098】
上記金属箔を構成する金属としては、例えば、銅、銅系合金、アルミ、アルミ系合金、銀、銀系合金、金、金系合金、亜鉛、亜鉛系合金、ニッケル、ニッケル系合金、錫、錫系合金、鉄、鉄系合金、コバール(商標名)、42アロイ、インバー、スーパーインバー等のFe-Ni系の合金、W、Mo等が挙げられる。これらの中でも、金属箔105を構成する金属としては、導電性に優れ、エッチングによる回路形成が容易であり、また安価であることから銅または銅合金が好ましい。すなわち、金属箔105としては、銅箔が好ましい。
また、金属箔としては、キャリア付金属箔等も使用することができる。
金属箔の厚みは、好ましくは0.5μm以上20μm以下であり、より好ましくは1.5μm以上18μm以下である。
【0099】
<プリント配線基板>
本実施形態のプリント配線基板は、上記の樹脂膜の硬化物(樹脂組成物の硬化物)で構成された絶縁層を備えるものである。
【0100】
本実施形態において、樹脂膜の硬化物は、例えば、通常のプリント配線基板のビルドアップ層、コア層を有しないプリント配線基板におけるビルドアップ層、PLPに用いられるコアレス基板のビルドアップ層、MIS基板のビルドアップ層等に用いることができる。このようなビルドアップ層を構成する絶縁層は、複数の半導体パッケージを一括して作成するために利用させる大面積のプリント配線基板において、当該プリント配線基板を構成するビルドアップ層にも好適に用いることができる。
【0101】
また、本実施形態において、絶縁膜形成用の樹脂組成物からなる樹脂膜において、ガラス繊維を含浸する構成とすることができる。このような樹脂膜をビルドアップ層に用いた半導体パッケージにおいても、樹脂膜の硬化物の線膨張係数を低くすることができるので、パッケージ反りを十分に抑制することができる。
【0102】
<半導体パッケージ>
図1は、本実施形態の半導体パッケージ200の製造工程の一例を示す工程断面図である。
【0103】
本実施形態の半導体装置(半導体パッケージ200)は、プリント配線基板と、プリント配線基板の回路層上に搭載された、またはプリント配線基板に内蔵された半導体素子240と、を備えることができる。
以下、本実施形態の半導体パッケージ200の製造工程の概要について説明する。
【0104】
まず、図1(a)に示すように、絶縁層102、ビアホール104および金属層108を備えるコア層100を準備する。絶縁層102にはビアホール104が形成されている。ビアホール104には、金属層(ビア)が埋設されている。当該金属層は、無電解金属めっき膜106で覆われていてもよい。絶縁層102の表面に形成された金属層108(所定の回路パターンを有する回路層)は、ビアホール104に形成されたビアと電気的に接続する。図1(a)には、金属層108は、コア層100の一面上に形成されているが、両面に形成されていてもよい。
【0105】
続いて、コア層100の一面上に金属層108を埋め込むように、上記樹脂組成物からなる樹脂膜20を形成する。例えば、キャリア付樹脂膜10からカバーフィルム50を剥離し、その樹脂膜20(絶縁膜)をコア層100の回路形成面上に配置してもよい。この樹脂膜20の表面にはキャリア基材30が設けられている。キャリア基材30は、この時点で樹脂膜20から分離してもよいが、マスクとして使用してもよい。
なお、樹脂膜20は、絶縁膜単層でもよく、絶縁膜およびプライマー層の複数層で構成されてもよい。
【0106】
続いて、上記樹脂膜20に、キャリア基材30を介して、不図示の開口部を形成する。開口部は、金属層108を露出させるように形成することができる。開口部の形成方法としては、特に限定されず、例えば、レーザー加工法、露光現像法またはブラスト工法、などの方法を用いることができる。
【0107】
本実施形態において、このような開口部を形成した後、樹脂膜20を熱硬化させてもよい。その後、キャリア基材30を剥離する。
【0108】
また、必要に応じて、デスミア処理を行うことができる。デスミア処理では、開口部の内部に生じたスミアを除去するとともに、上記樹脂膜20の表面を粗化できる。
【0109】
上記デスミア処理の方法は特に限定されないが、たとえば、以下のように行うことができる。まず、樹脂膜20を積層したコア層100を、有機溶剤を含む膨潤液に浸漬し、次いでアルカリ性過マンガン酸塩水溶液に浸漬し、中和して粗化処理することができる。有機溶剤としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルやエチレングリコール等を用いる事ができる。このような膨潤液として、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリングディップ セキュリガント P」が挙げられる。過マンガン酸塩としては、たとえば過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等を用いることができる。膨潤液や過マンガン酸塩水溶液の液温としては、例えば、50℃以上でもよく、100℃以下でもよい。また、膨潤液や過マンガン酸塩水溶液への浸漬時間は、例えば、1分間以上でもよく、30分間以下でもよい。
デスミア処理する工程では、上記の湿式のデスミア処理のみを行うことができるが、デスミア処理に加えてプラズマ照射を行っても良い。
【0110】
続いて、樹脂膜20、あるいは樹脂膜20上に形成されたプライマー層(不図示)上に、無電解金属めっき膜202を形成する。無電解めっき法の例を説明する。例えば、下地層の表面上に触媒核を付与する。この触媒核としては、特に限定されないが、例えば、貴金属イオンやパラジウムコロイドを用いることができる。引き続き、この触媒核を核として、無電解めっき処理により、無電解金属めっき膜202を形成する。無電解めっきには、例えば、硫酸銅、ホルマリン、錯化剤、水酸化ナトリウム等を含むものを用いることができる。なお、無電解めっき後に、100~250℃の加熱処理を施し、めっき被膜を安定化させることができる。
【0111】
続いて、図1(b)に示すように、無電解金属めっき膜202上に所定の開口パターン(開口部206)を有するレジスト204を形成してもよい。この開口パターンは、例えば回路パターンに相当する。レジスト204としては、特に限定されず、公知の材料を用いることができるが、液状およびドライフィルムを用いることができる。微細配線形成の場合には、レジスト204としては、感光性ドライフィルム等を用いることができる。感光性ドライフィルムを用いた一例を説明する。例えば、無電解金属めっき膜202上に感光性ドライフィルムを積層し、非回路形成領域を露光して光硬化させ、未露光部を現像液で溶解、除去する。硬化した感光性ドライフィルムを残存させることにより、レジスト204を形成する。
【0112】
続いて、図1(c)に示すように、少なくともレジスト204の開口パターン内部かつ無電解金属めっき膜202上に、電気めっき処理により、電解金属めっき層208を形成する。電気めっきとしては、特に限定されないが、通常のプリント配線基板で用いられる公知の方法を使用することができ、例えば、硫酸銅等のめっき液中に浸漬させた状態で、めっき液に電流を流す等の方法を使用することができる。電解金属めっき層208は単層でもよく多層構造を有していてもよい。電解金属めっき層208の材料としては、特に限定されないが、例えば、銅、銅合金、42合金、ニッケル、鉄、クロム、タングステン、金、半田のいずれか1種以上を用いることができる。
【0113】
続いて、図1(d)に示すように、アルカリ性剥離液や硫酸または市販のレジスト剥離液等を用いて、レジスト204を除去する。
【0114】
続いて、図1(e)に示すように、電解金属めっき層208が形成されている領域以外領域(開口部210)における無電解金属めっき膜202を除去する。すなわち、電解金属めっき層208をマスクとして、下層の無電解金属めっき膜202を選択的に除去する。例えば、ソフトエッチング(フラッシュエッチング)等を用いることにより、無電解金属めっき膜202を除去することができる。ここで、ソフトエッチング処理は、例えば、硫酸および過酸化水素を含むエッチング液を用いたエッチングにより行うことができる。これにより、所定のパターンを有する金属層220を形成することができる。このように、セミアディティブプロセス(SAP)によって、本実施形態の樹脂膜の硬化物からなる絶縁層上に、無電解金属めっき膜202および電解金属めっき層208で構成される金属層220を形成することができる。
【0115】
さらに、コア層100および上記ビルドアップ層で構成されるプリント配線基板上に、必要に応じてビルドアップ層を積層して、セミアディティブプロセスにより層間接続および回路形成する工程を繰り返すことにより、多層にすることができる。
以上により、本実施形態のプリント配線基板が得られる。
【0116】
続いて、図1(f)に示すように、得られたプリント配線基板上に、必要に応じてビルドアップ層を積層して、セミアディティブプロセスにより層間接続および回路形成する工程を繰り返す。そして、必要に応じて、ソルダーレジスト層230をプリント配線基板の両面又は片面に積層する。
【0117】
ソルダーレジスト層230の形成方法は、特に限定されないが、例えば、ドライフィルムタイプのソルダーレジストをラミネートし、露光、および現像により形成する方法、または液状レジストを印刷したものを露光、および現像することにより形成する方法によりなされる。
【0118】
続いて、リフロー処理を行なうことによって、半導体素子240を配線パターンの一部である接続端子上に、半田バンプ250を介して固着させる。その後、半導体素子240、および半田バンプ250等を封止材層260で覆うように封止する。
以上により、図1(f)に示す、半導体パッケージ200が得られる。
【0119】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例0120】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0121】
(合成例1)シアネート樹脂A1の合成
ビスフェノールM 20gとメチルイソブチルケトン(以下MIBK)を80g仕込み、室温で攪拌溶解した。溶解後、-10℃まで冷却を行った。-10℃にて臭化シアン(以下BrCN)21.7g(純度95%、0.195mol)を投入し、内温が-15℃になったら、トリメチルアミン(以下TEA)20g(0.198mol)を1時間かけて滴下した。滴下後、さらに30分熟成し、さらに約2時間熟成させ反応を完結させた。
得られた溶液に、純粋100mlを加えて分液し、さらに5%塩化水素水溶液(HCl)1100mlを加えて分液した。さらに、10%食塩水110gで2回洗浄分液し、純粋100mlにて2回洗浄した。
有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水後、水分の真空除去し、24gの樹脂を得た。このようにして得られたビフェニル型シアン酸エステルは、赤外吸収スペクトル測定(島津製作所製IR Prestige-21、ATR法)により分析した。赤外吸収スペクトルチャートを図4に示す。図4からフェノール性水酸基の吸収帯である3300cm-1が消失し、シアネート基(-OCN基)の吸収帯である2237cm-1、2271cm-1を有することが確認された。次いで、温度170℃で、2時間加熱することでプレポリマー化させ、ビスフェノールM型シアネートの少なくとも一部がプレポリマー化されたシアネート樹脂A1を得た。
また、前記合成例で得たビスフェノールM型シアネートのプレポリマーを含むシアネート樹脂A1は、GPC(ゲルパーメーションクロマトグラフィー、東ソー株式会社製HLC-8120GPC、標準物質:ポリスチレン換算)を用いて分析を行った。図5にGPCチャートを示す。GPCチャートにより、分子量分布を確認した。さらに、シアネート樹脂A1のH-NMR測定を行った。
これらのことからシアネート樹脂A1(「以下の式で表されるビスフェノールM型シアネート」のプレポリマーを含む樹脂、シアネート当量:355g/eq)が得られていた。
【化11】
【0122】
(合成例2)シアネート樹脂A2の合成
ビスフェノールMをビスフェノールBPに変えた以外は、合成例1と同様に合成した。
測定結果からシアネート樹脂A2(「以下の式で表されるビスフェノールBP型シアネート」のプレポリマーを含む樹脂、シアネート当量:360g/eq)が得られていた。
【化12】
【0123】
(合成例3)シアネート樹脂A3の合成
ビスフェノールMをビスフェノールPに変えた以外は、合成例1と同様に合成した。
測定結果からシアネート樹脂A3(「以下の式で表されるビスフェノールP型シアネート」のプレポリマーを含む樹脂、シアネート当量:355g/eq)が得られていた。
【化13】
【0124】
(合成例4)シアネート樹脂A4の合成
ビスフェノールMをビスフェノールAPに変えた以外は、合成例1と同様に合成した。
測定結果からシアネート樹脂A4(「以下の式で表されるビスフェノールAP型シアネート」のプレポリマーを含む樹脂、シアネート当量:310g/eq)が得られていた。
【化14】
【0125】
(合成例5)シアネート樹脂A5の合成
ビスフェノールMをビスフェノールZに変えた以外は、合成例1と同様に合成した。
測定結果からシアネート樹脂A5(「以下の式で表されるビスフェノールZ型シアネート」のプレポリマーを含む樹脂、シアネート当量:290g/eq)が得られていた。
【化15】
【0126】
(合成例6)シアネート樹脂A6の合成
ビスフェノールMをビスフェノールTMCに変えた以外は、合成例1と同様に合成した。
測定結果からシアネート樹脂A6(「以下の式で表されるビスフェノールTMC型シアネート」のプレポリマーを含む樹脂、シアネート当量:325g/eq)が得られていた。
【化16】
【0127】
以下に、前記合成例1~6で得られたシアネート樹脂を用いた樹脂組成物を実施例により説明する。本発明はこれに限定されるものではない。
実施例においては以下の成分を用いた。
[シアネート樹脂(A)]
・シアネート樹脂A1:合成例1で合成されたビスフェノールM型シアネートのプレポリマーを含む樹脂(シアネート当量:355g/eq)
・シアネート樹脂A2:合成例2で合成されたビスフェノールBP型シアネートのプレポリマーを含む樹脂(シアネート当量:360g/eq)
・シアネート樹脂A3:合成例3で合成されたビスフェノールP型シアネートのプレポリマーを含む樹脂(シアネート当量:355g/eq)
・シアネート樹脂A4:合成例4で合成されたビスフェノールAP型シアネートのプレポリマーを含む樹脂(シアネート当量:310g/eq)
・シアネート樹脂A5:合成例5で合成されたビスフェノールZ型シアネートのプレポリマーを含む樹脂(シアネート当量:290g/eq)
・シアネート樹脂A6:合成例6で合成されたビスフェノールTMC型シアネートのプレポリマーを含む樹脂(シアネート当量:325g/eq)
【0128】
[シアネート樹脂(シアネート樹脂(A)以外)]
・シアネート樹脂1:ノボラック型シアネート樹脂、ロンザ社製、製品名PT-30(シアネート当量:132g/eq)
・シアネート樹脂2:ビスフェノールA型シアネート樹脂、ロンザ社製、製品名BA-230S、:固形分75重量%、メチルエチルケトン25重量%(シアネート当量:230g/eq)
【0129】
[エポキシ樹脂(B)]
・エポキシ樹脂1:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(「NC-3000-H」日本化薬社製、エポキシ当量290g/eq)
【0130】
[無機充填材(C)]
・無機充填材1:シリカ粒子(アドマテックス社製、SC4050、平均粒径1.1μm)
【0131】
[マレイミド化合物(D)]
・マレイミド化合物1:
発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の合成例1の記載に従い合成したマレイミド化合物のメチルエチルケトン溶液(不揮発成分70質量%)を作製した。得られたマレイミド化合物は以下の構造を有する。
マレイミド化合物のFD-MSスペクトルは、M=560、718及び876のピークを有し、これらのピークはそれぞれ、n1が0、1及び2の場合に相当した。また、マレイミド化合物をGPCによって分析して、インダン骨格部分の繰り返し単位数n1の値を数平均分子量に基づいて求めると、n1=1.47であり、分子量分布(Mw/Mn)=1.81である。さらに、マレイミド化合物の全量100面積%中、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の含有割合は、26.5面積%であった。
【0132】
【化17】
【0133】
[クマロン樹脂(E)]
・クマロン樹脂1:末端にフェノール基を含むインデン・クマロン・スチレン共重合体(日塗化学社製、V-120S、重量平均分子量:950、水酸基価:30mgKOH/g)
【0134】
[硬化促進剤]
・硬化促進剤1:下記式で表される硬化促進剤(テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート)
【化18】
【0135】
[実施例1]
(1)樹脂ワニスの調製
表1に記載の量で、シアネート樹脂A1、エポキシ樹脂1、マレイミド化合物1、クマロン樹脂1、および硬化促進剤1をメチルエチルケトンに常温で溶解し、無機充填材1を添加し高速攪拌機を用いて10分攪拌して、70質量%濃度の樹脂ワニスを得た。
【0136】
(2)プリプレグの製造
前記樹脂ワニスをNEガラス織布(厚さ44μm、坪量44g/m、日東紡績製、#1078)に含浸し、170℃の加熱炉で2分間乾燥して、プリプレグ中のワニス固形分が約70重量%のプリプレグを得た。
【0137】
(3)樹脂シートの製造
前記樹脂ワニスをPET(ポリエチレンテレフタレート、帝人デュポンフィルム製ピューレックスフィルム36um)上に塗工し、150℃の乾燥機で2分間乾燥して、厚み30μmの樹脂シートを得た。
【0138】
(4)両面金属箔付き積層板の製造
上述のプリプレグの両面に18μmの銅箔(古河電気工業社性、FV-WS)を重ねて、圧力4MPa、温度220℃で2時間加熱加圧成形することによって、厚さ80umの両面金属箔付き積層板を得た。
【0139】
(5)多層プリント配線板の作製
前記で得られた両面金属箔付き積層板に、0.1mmのドリルビットを用いてスルーホール加工を行った後、メッキによりスルーホールを充填した。さらに、両面をエッチングにより回路形成し、内層回路基板として用いた。前記内層回路基板の表裏に、前記で得られた樹脂シートを内層回路上に真空積層装置を用いて積層し、温度170℃、時間60分間加熱硬化し積層体を得た。
【0140】
その後、前記で得られた積層体に、炭酸レーザー装置を用いてφ60μmの開孔部(ブラインド・ビアホール)を形成し、70℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレートコンパクトCP)に15分浸漬後、中和して粗化処理を行った。次に脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅メッキ皮膜を約0.5μmの給電層を形成した。次にこの給電層表面に、厚さ25μmの紫外線感光性ドライフィルム(旭化成社製AQ-2558)をホットロールラミネーターにより貼り合わせ、最小線幅/線間が20/20μmのパターンが描画されたクロム蒸着マスク(トウワプロセス社製)を使用して、位置を合わせ、露光装置(ウシオ電機社製UX-1100SM-AJN01)にて露光、炭酸ソーダ水溶液にて現像し、めっきレジストを形成した。
【0141】
次に、給電層を電極として電解銅めっき(奥野製薬社製81-HL)を3A/dm2、30分間行って、厚さ約25μmの銅配線を形成した。ここで2段階剥離機を用いて、前記めっきレジストを剥離した。各薬液は、1段階目のアルカリ水溶液層にはモノエタノールアミン溶液(三菱ガス化学社製R-100)、2段階目の酸化性樹脂エッチング剤には過マンガン酸カリウムと水酸化ナトリウムを主成分とする水溶液(日本マクダーミッド社製マキュダイザー9275、9276)、中和には酸性アミン水溶液(日本マクダーミッド社製マキュダイザー9279)をそれぞれ用いた。
【0142】
そして、給電層を過硫酸アンモニウム水溶液(メルテックス(株)製AD-485)に浸漬処理することで、エッチング除去し、配線間の絶縁を確保した。次に絶縁層を温度200℃時間60分で最終硬化させ、最後に回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ社製PSR4000/AUS308)を形成し多層プリント配線板を得た。
【0143】
(6)半導体装置の作製
前記で多層プリント配線板の絶縁層に炭酸レーザー装置を用いて開口部を設け、電解銅めっきにより絶縁層表面に外層回路形成を行い、外層回路と内層回路との導通を図った。なお、外層回路は、半導体素子を実装するための接続用電極部を設けた。
その後、最外層にソルダーレジスト(太陽インキ社製、PSR4000/AUS308)を形成し、露光・現像により半導体素子が実装できるよう接続用電極部を露出させ、ニッケル金メッキ処理を施し、50mm×50mmの大きさに切断し、多層プリント配線板を得た。
その後、半導体素子(TEGチップ、サイズ15mm×15mm、厚み0.8mm)は、半田バンプはSn/Pb組成の共晶で形成され、回路保護膜はポジ型感光性樹脂(住友ベークライト社製CRC-8300)で形成されたものを使用した。半導体装置の組み立ては、まず、半田バンプにフラックス材を転写法により均一に塗布し、次にフリップチップボンダー装置を用い、上記多層プリント配線板上に加熱圧着により搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP-4152S)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで半導体装置を得た。尚、液状封止樹脂は、温度150℃、120分の条件で硬化させた。
【0144】
実施例2~6、比較例1~2は、表1に記載の配合表に従い樹脂ワニスを調製した以外は、実施例1と同様にプリプレグ、樹脂シート、両面金属箔付き積層板、多層プリント配線板、及び半導体装置を作製した。
【0145】
[誘電率Dk、誘電正接Df]
得られた金属箔付き積層板の最外層にある極薄銅箔を除去した樹脂板について10GHzの空洞共振器を用いて誘電率、誘電正接測定した。
【0146】
[ピール強度]
得られた金属箔付き積層板を用い、極薄銅箔とプリプレグとを剥離する際のピール強度を測定した。測定はJIS C-6481に準拠して行った。尚、電気銅メッキにより20μm厚みの導体層を用いた。
【0147】
[含浸性]
得られたプリプレグを温度180℃で2時間無加圧加熱して硬化させたのち、その断面を観察し、含浸性について以下の評価基準に従い評価した。
(評価基準)
◎:ガラス織布のガラスフィラメント内にボイドがなし
○:ガラス織布のガラスフィラメント内の一部にボイドがみられ、当該ボイドサイズが5μm以下
△:ラス織布のガラスフィラメント内の一部にボイドがみられ、当該ボイドサイズが5μmより大きい
×:ガラスフィラメント内全体にボイドが発生
【0148】
[成形性(埋め込み性)]
回路高さ12μm、残銅率60%の回路付き基板を用い、両面にプリプレグを配置して銅箔(三井金属鉱業社製、マイクロシンFL、1.5μm)を重ね合わせ、圧力3MPa、温度225℃で2時間加熱加圧成形することにより、銅箔付き積層板を得た。銅箔を除去して複数の回路ユニット部について、表面を目視により全体観察および回路際は断面からボイドの程度を観察した。埋め込み性について、以下の評価基準に従い評価した。なお、ボイドが少ないほど、埋め込み性が高いことを意図する。
(評価基準)
◎:100%埋め込み
○:埋込性が70%よりおおきく100%未満
△:埋込性が50%以上70%未満
×:埋込性が50%未満
【0149】
[耐熱性]
耐熱性は、260℃マルチリフローで評価した。
得られた金属箔付き積層板を、IPC/JEDECのJ-STD-20に準拠リフロー260℃リフロー炉に繰り返し通し、銅箔膨れの有無を目視で観察し、以下の評価基準に従いを評価した。
(評価基準)
◎:リフロー繰り返し数が20回以上でも膨れなし。
○:リフロー繰り返し数が10回以上、20回未満で膨れあり。
△:リフロー繰り返し数が5回以上、10回未満で膨れあり。
×:リフロー繰り返し数が5回未満で膨れあり。
【0150】
【表1】
【符号の説明】
【0151】
20 樹脂膜
30 キャリア基材
50 カバーフィルム
100 コア層
102 絶縁層
104 ビアホール
106 無電解金属めっき膜
108 金属層
200 半導体パッケージ
202 無電解金属めっき膜
204 レジスト
206 開口部
208 電解金属めっき層
210 開口部
220 金属層
230 ソルダーレジスト層
240 半導体素子
250 半田バンプ
260 封止材層
図1
図2
図3