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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037318
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20240312BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B60H1/34 651C
B60H1/00 101E
B60H1/00 101K
B60H1/00 101X
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142075
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】三原 直人
(72)【発明者】
【氏名】平野 聖門
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA42
3L211DA56
3L211EA13
3L211EA26
3L211EA28
3L211EA56
3L211FA23
3L211FA52
3L211FA55
3L211FB05
3L211GA56
(57)【要約】
【課題】湿度センサがウインドシールドから離れた位置にあっても、ウインドシールドの曇りの発生を防止するための制御を確実に行うことができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】外気温度センサと、内気湿度センサと、空調ダクトと、空調コントローラとを備え、内気湿度センサはウインドシールドから離れた位置に配置されており、空調ダクトは外気導入口と、空調ユニットと、デフロスタ吹き出し口とを有し、空調コントローラはウインドシールドのガラス温度を演算する温度演算部と、ウインドシールドの曇りの発生の有無を判定する判定部と、デフロスタ吹き出し口への空気の供給及び停止を制御するデフロスタ制御部とを有し、判定部は、ガラス温度と車室内の湿度に基づいて判定を行う第一判定部と、ガラス温度と外気温度での飽和水蒸気量に基づいて判定を行う第二判定部とを含む、車両用空調装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室外の外気温度を検出する外気温度センサと、
車室内の湿度を検出する内気湿度センサと、
車室内に送る空気が流れる空調ダクトと、
前記空気の温度及び風量を制御する空調コントローラと、を備え、
前記内気湿度センサは、ウインドシールドから離れた位置に配置されており、
前記空調ダクトは、
車室外から空気を取り込む外気導入口と、
前記空調ダクトに取り込まれた空気の温度を調節する空調ユニットと、
前記空調ユニットを通過した空気を前記ウインドシールドの内面に向けて吹き出すデフロスタ吹き出し口と、を有し、
前記空調コントローラは、
前記ウインドシールドのガラス温度を演算する温度演算部と、
前記ウインドシールドの曇りの発生の有無を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記空調ダクトから前記デフロスタ吹き出し口への空気の供給及び停止を制御するデフロスタ制御部と、を有し、
前記判定部は、
前記外気導入口から空気を取り込んでいない、又は、前記デフロスタ吹き出し口への空気の供給を停止している場合に第一判定処理を行う第一判定部と、
前記外気導入口から空気を取り込み、かつ、前記デフロスタ吹き出し口への空気の供給を行っている場合に第二判定処理を行う第二判定部と、を含み、
前記第一判定処理は、前記ガラス温度と前記湿度に基づいて、前記曇りの発生の有無を判定し、
前記第二判定処理は、前記ガラス温度での飽和水蒸気量に対する前記外気温度での飽和水蒸気量に基づいて、前記曇りの発生の有無を判定する、
車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、車室内の温度を調節する車両用空調装置が搭載されている。車両用空調装置は、ウインドシールドの内面の曇りを防止するために、ウインドシールドの内面に向けて空気を吹き出すデフロスタ吹き出し口を有する。デフロスタ吹き出し口はインストルメントパネルに設けられている。例えば、車室外の温度が低く、車室内の温度が高くて湿度が高い場合、ウインドシールドの内面が曇ることがある。これは、外気によってウインドシールドが冷やされることで、ウインドシールドの内面に結露が発生するからである。車両用空調装置は、温めた空気をデフロスタ吹き出し口へ供給することで、ウインドシールドの内面の曇りを除去する。
【0003】
特許文献1には、ウインドシールドの曇りを未然に防止するために、湿度センサによって検出された車室内の湿度が所定値以上である場合に、目標エバポレータ後温度TEOを低くすることが記載されている。特許文献1に記載された車両用空調装置は、目標エバポレータ後温度TEOを低くすることにより、自動で除湿能力が高くなるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-267025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近では、ウインドシールドの曇りの発生の有無を判断して自動的にデフロスタ吹き出し口への空気の供給及び停止を行う車両用空調装置が開発されている。このような車両用空調装置は、外気温度、車室内の温度及び湿度などを検出する各種センサにより得られた情報に基づいて、ウインドシールドの曇りの発生の有無を判定する。
【0006】
この曇りの発生の有無を判定するには、ウインドシールドの内面の近傍の湿度を正確に測定する必要がある。この湿度の測定には、ウインドシールドの内面の近傍に湿度センサを配置することが最適である。例えば、ウインドシールドの内面に湿度センサを直接設置したり、ウインドシールドに取り付けられたインナーミラーに湿度センサを設置したりする。しかし、ウインドシールドの内面の近傍に湿度センサを新たに配置する場合、湿度センサを実装するための基板を用意したり、湿度センサが実装された基板にワイヤハーネスを配線したりする必要がある。湿度センサのためだけに基板を追加したり、ワイヤハーネスを配線したりするため、コスト高を招く。
【0007】
本発明の目的の一つは、湿度センサがウインドシールドから離れた位置にあっても、ウインドシールドの曇りの発生を防止するための制御を確実に行うことができる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る車両用空調装置は、
車室外の外気温度を検出する外気温度センサと、
車室内の湿度を検出する内気湿度センサと、
車室内に送る空気が流れる空調ダクトと、
前記空気の温度及び風量を制御する空調コントローラと、を備え、
前記内気湿度センサは、ウインドシールドから離れた位置に配置されており、
前記空調ダクトは、
車室外から空気を取り込む外気導入口と、
前記空調ダクトに取り込まれた空気の温度を調節する空調ユニットと、
前記空調ユニットを通過した空気を前記ウインドシールドの内面に向けて吹き出すデフロスタ吹き出し口と、を有し、
前記空調コントローラは、
前記ウインドシールドのガラス温度を演算する温度演算部と、
前記ウインドシールドの曇りの発生の有無を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記空調ダクトから前記デフロスタ吹き出し口への空気の供給及び停止を制御するデフロスタ制御部と、を有し、
前記判定部は、
前記外気導入口から空気を取り込んでいない、又は、前記デフロスタ吹き出し口への空気の供給を停止している場合に第一判定処理を行う第一判定部と、
前記外気導入口から空気を取り込み、かつ、前記デフロスタ吹き出し口への空気の供給を行っている場合に第二判定処理を行う第二判定部と、を含み、
前記第一判定処理は、前記ガラス温度と前記湿度に基づいて、前記曇りの発生の有無を判定し、
前記第二判定処理は、前記ガラス温度での飽和水蒸気量に対する前記外気温度での飽和水蒸気量に基づいて、前記曇りの発生の有無を判定する。
【発明の効果】
【0009】
上記の車両用空調装置は、外気導入口から空気を取り込み、かつ、デフロスタ吹き出し口への空気の供給を行っている場合とそれ以外の場合とで、ウインドシールドの曇りの発生の有無を判定する判定部の処理が異なる。上記の車両用空調装置では、前者の場合、第二判定部において、外気温度での飽和水蒸気量を用いて、曇りの発生の有無を判定する第二判定処理を行う。これにより、内気湿度センサがウインドシールドから離れた位置に配置されていたとしても、デフロスタ制御部によるウインドシールドの曇りの発生を防止するための制御を確実に行うことができる。上記の車両用空調装置によれば、内気湿度センサをウインドシールドから離れた位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る車両用空調装置の構成を示す概略図である。
図2図2は、車両に備えるウインドシールド及びインストルメントパネルの一例であり、ウインドシールド及びインストルメントパネルを車室内から見た概略図である。
図3図3は、実施形態に係る車両用空調装置において、判定部の処理フローを示す図である。
図4図4は、実施形態に係る車両用空調装置において、第一判定部の判定方法を説明する図である。
図5図5は、実施形態に係る車両用空調装置において、第一判定部の判定方法を説明する別の図である。
図6図6は、実施形態に係る車両用空調装置において、第二判定部の判定方法を説明する図である。
図7図7は、実施形態に係る車両用空調装置において、第二判定部の判定方法を説明する別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る車両用空調装置の具体例を、図面を参照して説明する。各図において、同一又は相当する部分には同じ符号を付している。
【0012】
〈車両用空調装置〉
図1及び図2を参照して、実施形態の車両用空調装置1を説明する。車両用空調装置1は、車室内の空調を行う。車両用空調装置1は、センサ類2と、空調ダクト3と、空調コントローラ6とを備える。車両用空調装置1は、空調ダクト3に取り込まれた空気の温度を調節して、温度を調節した空気を空調ダクト3から車室内に送る。図2は、ウインドシールド10及びインストルメントパネル11を車室内から見た正面図である。インストルメントパネル11は車室の前方に配置されている。ウインドシールド10はインストルメントパネル11の前端部に設けられている。インストルメントパネル11において、車室の後方に向く面を正面とする。
【0013】
実施形態の車両用空調装置1の特徴の一つは、空調コントローラ6が、ウインドシールド10の曇りの発生の有無を判定する判定部62を備える点にある。判定部62は、内気モード又は外気モードでかつデフロスタが動作していない場合と、外気モードでかつデフロスタが動作している場合とで異なる処理により曇りの有無を判定する。判定部62は、ガラス温度と車室内の湿度に基づいて判定を行う第一判定部621と、ガラス温度と外気温度での飽和水蒸気量に基づいて判定を行う第二判定部622とを含む。
【0014】
(センサ類)
センサ類2は、車両の環境条件を検出する各種センサである。センサ類2は、外気温度センサ21と内気湿度センサ22とを含む。外気温度センサ21は、車室外の外気温度を検出するセンサである。外気温度センサ21は、車室外に設けられている。外気温度センサ21は、例えば、バンパ(図示せず)の開口部に設けられている。
【0015】
内気湿度センサ22は車室内の湿度を検出するセンサである。内気湿度センサ22は、ウインドシールド10から離れた位置に配置されている。ウインドシールド10から離れた位置とは、ウインドシールド10の内面の近傍を除く位置である。具体的には、デフロスタ吹き出し口51から吹き出した空気の温度及び湿度の影響を直ちに受けない程度に離れた位置である。更に、内気湿度センサ22は、他の電気機器の基板に設けられていてもよい。この場合、この基板を、内気湿度センサ22を実装するための基板に利用できる。内気湿度センサ22は、例えば、図2に示すインストルメントパネル11内に設けられている。本実施形態では、内気湿度センサ22は、インストルメントパネル11に取り付けられた既存の電気機器の基板に設置されている。具体的には、センターディスプレイ12又は操作パネル13などの電気機器の基板に内気湿度センサ22が設置されている。操作パネル13は、例えば、ヒータコントロールパネルである。内気湿度センサ22は、インストルメントパネル11内に設けられていなくてもよく、車室内に配置された既存の電気機器の基板に設置されていてもよい。内気湿度センサ22が既存の電気機器の基板に設置されていることから、内気湿度センサ22を実装するための基板を別途用意したり、ワイヤハーネス(図示せず)のレイアウトを変更したりする必要がない。そのため、内気湿度センサ22を設置することによるコスト高を抑えることができる。内気湿度センサ22のためだけに基板を新たに設ける必要がないので、重量の増加及び生産性の低下を招き難い。
【0016】
内気湿度センサ22は、例えば公知の電子式湿度センサである。内気湿度センサ22が検出する湿度は、相対湿度でも絶対湿度でもよい。絶対湿度とは、空気1mあたりに含まれる水蒸気量を表す容積絶対湿度のことであり、単位はg/mである。本実施形態では、内気湿度センサ22は、相対湿度を検出するセンサである。絶対湿度は、飽和水蒸気量×相対湿度により求めることができる。
【0017】
本実施形態における内気湿度センサ22は、内気温度センサ23と一体になった温湿度センサである。内気温度センサ23は、車室内の温度、即ち内気温度を検出するセンサである。本実施形態では、内気湿度センサ22と内気温度センサ23とが一体になった温湿度センサがセンターディスプレイ12の基板に実装されているが、これに限定されるものではない。温湿度センサは、例えば、操作パネル13の基板に実装されていてもよい。本実施形態とは異なり、内気湿度センサ22と内気温度センサ23はそれぞれ独立したセンサであってもよい。内気温度センサ23は、内気湿度センサ22と同様に、例えばインストルメントパネル11内に設けられていればよい。内気温度センサ23は、例えば、インストルメントパネル11に取り付けられた電子機器の基板に設置されている。内気湿度センサ22と内気温度センサ23は、同じ基板に実装されていてもよいし、異なる基板に実装されていてもよい。
【0018】
センサ類2は、更に、日射センサ24、及びその他のセンサを含んでもよい。日射センサ24は、ウインドシールド10を透過した日射量を検出する。日射センサ24は、例えば、インストルメントパネル11の上面に設けられている。
【0019】
その他のセンサは、例えば、車速センサ(図示せず)及び乗員検知センサ(図示せず)である。車速センサは、車速を検出するセンサである。乗員検知センサは、シートに着座している乗員を検知するセンサである。乗員検知センサは、例えば、シートにかかる荷重を検出する荷重センサ、又はシートベルトの装着を検出するシートベルトセンサを利用できる。荷重センサの場合、シートにかかる荷重を検出することによって、シートに着座している乗員の有無を判定することができる。シートベルトセンサの場合、シートベルトの装着の有無を検出することによって、シートに着座している乗員の有無を判定することができる。
【0020】
(空調ダクト)
空調ダクト3は、車室内に送る空気が流れるダクトである。空調ダクト3は、導入口30、空調ユニット4、及び吹き出し口50を有する。導入口30は、空調ダクト3に空気を取り込む部分である。吹き出し口50は、空調ダクト3から車室内に空気を吹き出す部分である。空調ダクト3において、空気が流れてくる方向が上流であり、空気が流れていく方向が下流である。導入口30は、空調ダクト3の最も上流に設けられている。吹き出し口50は、空調ダクト3の最も下流に設けられている。空調ユニット4は空調ダクト3の中間部に設けられている。空調ダクト3の基本的な構成は、公知の空調ダクトの構成を利用できる。
【0021】
空調ダクト3はブロア35を備えている。ブロア35は、空調ユニット4の上流に配置されている。ブロア35が回転することで、導入口30から空調ダクト3に空気が吸い込まれると共に、吸い込まれた空気が空調ユニット4を通って吹き出し口50へ送られる。ブロア35の出力が調節されることで、吹き出し口50から吹き出す空気の風量が調節される。
【0022】
(導入口)
導入口30は、外気導入口31と内気導入口32とを含む。外気導入口31は車室外の空気を取り込む部分である。内気導入口32は車室内の空気を取り込む部分である。外気導入口31につながる流路と内気導入口32につながる流路との分岐部には、外気導入口31と内気導入口32とを開閉する切替ドア33が設けられている。切替ドア33が内気導入口32を閉じている状態では、外気導入口31が開いた状態になり、外気導入口31から空調ダクト3に空気が取り込まれる。切替ドア33が外気導入口31を閉じている状態では、内気導入口32が開いた状態になり、内気導入口32から空調ダクト3に空気が取り込まれる。
【0023】
(空調ユニット)
空調ユニット4は空調ダクト3に取り込まれた空気の温度を調節する。空調ユニット4は、エバポレータ41、ヒータコア42、及びエアミックスドア43を有する。エバポレータ41は、空調ダクト3に取り込まれた空気を冷却する部品である。エバポレータ41の構成は、公知のものと同じである。エバポレータ41には、冷媒が循環する。冷媒がエバポレータ41に循環することで、エバポレータ41を通過する空気が冷却される。エバポレータ41の下流には、エバポレータ温度センサ41sが設けられている。エバポレータ温度センサ41sは、エバポレータ41を通過した空気の温度を検出するセンサである。
【0024】
ヒータコア42は、エバポレータ41を通過した空気を加熱する部品である。ヒータコア42はエバポレータ41の下流に配置されている。ヒータコア42の構成は、公知のものと同じである。ヒータコア42には、エンジン(図示せず)を冷却する冷却水が循環する。エンジンの熱によって高温になった冷却水がヒータコア42に循環することで、ヒータコア42を通過する空気が加熱される。エンジンには、冷却水の温度を検出する水温センサ42sが設けられている。
【0025】
エアミックスドア43は、ヒータコア42を通過する空気とヒータコア42を迂回する空気との割合を調節する部材である。エアミックスドア43は、エバポレータ41とヒータコア42との間に配置されている。つまり、エアミックスドア43は、エバポレータ41の下流、かつ、ヒータコア42の上流に配置されている。エアミックスドア43の構成は、公知のものと同じである。エアミックスドア43の開度が調節されることで、吹き出し口50から吹き出す空気の温度が調節される。
【0026】
(吹き出し口)
吹き出し口50は、デフロスタ吹き出し口51とフェイス吹き出し口52とフット吹き出し口53とを含む。デフロスタ吹き出し口51は、ウインドシールド10の内面に向けて空気を吹き出す部分である。デフロスタ吹き出し口51につながる流路には、デフロスタ吹き出し口51を開閉するデフロスタドア51dが設けられている。フェイス吹き出し口52は、乗員の上半身に向けて空気を吹き出す部分である。フェイス吹き出し口52につながる流路には、フェイス吹き出し口52を開閉するフェイスドア52dが設けられている。フット吹き出し口53は、乗員の足下に向けて空気を吹き出す部分である。フット吹き出し口53につながる流路には、フット吹き出し口53を開閉するフットドア53dが設けられている。
【0027】
図2に示すように、デフロスタ吹き出し口51はインストルメントパネル11の上面に設けられている。フェイス吹き出し口52はインストルメントパネル11の正面の上部に設けられている。フット吹き出し口53はインストルメントパネル11の下部に設けられている。
【0028】
(空調コントローラ)
空調コントローラ6は、車室内に送る空気の温度及び風量を制御する装置である。空調コントローラ6は、車室内を空調するための制御の他、ウインドシールド10の曇りを防止するための制御なども行う。空調コントローラ6は、代表的には、コンピュータにより構成されている。コンピュータは、プロセッサ、メモリ、及びタイマなどを備える。メモリは、プロセッサに実行させるための制御プログラムや、各種データが格納されている。プロセッサは、メモリに格納された制御プログラムを読み出して実行する。
【0029】
空調コントローラ6は、例えば、吹き出し口50から吹き出す空気の温度及び風量の調節、導入口30の切り替え、及び吹き出し口50の切り替えを行う。温度の調節は、エアミックスドア43の開度を制御することによって行う。風量の調節は、ブロア35の出力を制御することによって行う。導入口30の切り替えは、切替ドア33の開閉を制御することで、外気導入口31と内気導入口32とを切り替える。吹き出し口50の切り替えは、デフロスタドア51d、フェイスドア52d及びフットドア53dの開閉を制御することで、デフロスタ吹き出し口51、フェイス吹き出し口52及びフット吹き出し口53のうちのいずれか1つに切り替える。
【0030】
空調コントローラ6は、操作パネル13に設けられたスイッチ類130から信号が入力される。スイッチ類130は、例えば、温度調節スイッチ13a、風量調節スイッチ13b、内外気切り替えスイッチ13c、吹き出しモードスイッチ13d、デフロスタスイッチ13e、オートスイッチ13f、及びON・OFFスイッチ13gを含む。温度調節スイッチ13aは、車室内の温度を設定するスイッチである。風量調節スイッチ13bは、吹き出し口50から吹き出す風量を設定するスイッチである。内外気切り替えスイッチ13cは、外気導入口31と内気導入口32とを切り替えることによって、外気モードと内気モードとを変更するスイッチである。外気モードは、外気導入口31から車室外の空気を取り込むモードである。内気モードは、内気導入口32から車室内の空気を取り込むモードである。
【0031】
吹き出しモードスイッチ13dは、吹き出し口50を切り替えることによって、吹き出しモードを変更するスイッチである。吹き出しモードは、例えば、フェイスモード、フットモード、バイレベルモード、フット/デフロスタモード、及びデフロスタモードの中から選択からされる。フェイスモードは、フェイス吹き出し口52から空気を吹き出すモードである。フットモードは、フット吹き出し口53から空気を吹き出すモードである。バイレベルモードは、フェイス吹き出し口52及びフット吹き出し口53の両方から空気を吹き出すモードである。フット/デフロスタモードは、フット吹き出し口53及びデフロスタ吹き出し口51の両方から空気を吹き出すモードである。デフロスタモードは、デフロスタ吹き出し口51から空気を吹き出すモードである。デフロスタスイッチ13eは、吹き出しモードをデフロスタモードに設定するスイッチである。
【0032】
オートスイッチ13fは、オートエアコンのON・OFFの切り替えるスイッチである。オートエアコンがONのとき、車室内の温度が設定温度となるように、吹き出し口50から吹き出す空気の温度及び風量の調節、導入口30の切り替え、及び吹き出し口50の切り替えを自動的に行う。ON・OFFスイッチ13gは、車両用空調装置1のON・OFFを切り替えるスイッチである。
【0033】
空調コントローラ6は、センサ類2から信号を受け取る。具体的には、外気温度センサ21からは外気温度に対応する信号が送られる。内気湿度センサ22からは車室内の湿度に対応する信号が送られる。内気温度センサ23からは内気温度に対応する信号が送られる。日射センサ24からはウインドシールド10を透過した日射量に対応する信号が送られる。更に、空調コントローラ6は、エバポレータ温度センサ41s及び水温センサ42sから各信号を受け取る。エバポレータ温度センサ41sからはエバポレータ41を通過した空気の温度に対応する信号が送られる。水温センサ42sからはヒータコア42に循環する冷却水の温度に対応する信号が送られる。本実施形態では、空調コントローラ6は、その他に、車速センサ(図示せず)及び乗員検知センサ(図示せず)から各信号を受け取る。車速センサからは車速に対応する信号が送られる。乗員検知センサからはシートに着座している乗員の有無に対応する信号が送られる。
【0034】
空調コントローラ6は、温度演算部61、判定部62、及びデフロスタ制御部63を有する。
【0035】
(温度演算部)
温度演算部61は、ウインドシールド10のガラス温度を演算する。ガラス温度は、外気温度とウインドシールド10の内面近傍の温度に基づいて求める。ガラス温度の演算は、公知の演算方法を用いることができる。ウインドシールド10の内面近傍の温度は、デフロスタ吹き出し口51から吹き出す空気の温度の影響を受ける。デフロスタ吹き出し口51から空気が吹き出していない場合、即ち、吹き出しモードがフェイスモード、フットモード及びバイレベルモードのいずれかである場合、ウインドシールド10の内面近傍の温度は、車室内の温度、即ち内気温度と相関がある。この場合、ウインドシールド10の内面近傍の温度は、内気温度とみなすことができる。また、デフロスタ吹き出し口51から空気が吹き出している場合であっても、内気導入口32から空気を取り込んでいる場合、即ち、内気モードで、かつ、吹き出しモードがフット/デフロスタモード又はデフロスタモードである場合は、ウインドシールド10の内面近傍の温度と内気温度との間にある程度相関がある。この場合、ウインドシールド10の内面近傍の温度は、必要に応じて内気温度を補正して求めればよい。内気温度の補正は、公知の演算式を用いて行えばよい。
【0036】
一方、外気導入口31から空気を取り込んでいる場合であって、デフロスタ吹き出し口51から空気が吹き出している場合、即ち、外気モードで、かつ、吹き出しモードがフット/デフロスタモード又はデフロスタモードである場合、デフロスタ吹き出し口51から吹き出す空気の温度は、外気温度に応じて変動する。そのため、ウインドシールド10の内面近傍の温度と内気温度とは相関が殆どない。この場合、ウインドシールド10の内面近傍の温度は、デフロスタ吹き出し口51から吹き出す空気の温度とみなすことができる。デフロスタ吹き出し口51から吹き出す空気の温度は、例えば、エバポレータ41を通過した空気の温度、ヒータコア42に循環する冷却水の温度、及びエアミックスドア43の開度から算出することができる。その他、デフロスタ吹き出し口51から吹き出す空気の温度は、デフロスタ吹き出し口51に温度センサを取り付けて、この温度センサにより検出してもよい。
【0037】
本実施形態では、外気温度とウインドシールド10の内面近傍の温度に対応したガラス温度の関係をテーブル化したデータがメモリに保存されている。温度演算部61は、外気温度とウインドシールド10の内面近傍の温度に応じて、このテーブル化したデータからガラス温度を求める。外気温度は外気温度センサ21から取得する。ガラス温度は、例えば、ウインドシールド10を透過する日射量、及び車速に応じて補正してもよい。日射量が大きいほど、日射によってウインドシールド10が温められるので、ガラス温度が上昇し易い。車速が大きいほど、外気によってウインドシールド10が冷やされるので、ガラス温度が低下し易い。日射量は、日射センサ24から取得することができる。車速は、車速センサから取得することができる。
【0038】
(判定部)
判定部62は、ウインドシールド10の曇りの発生の有無を判定する。ここでいう曇りの発生の有無を判定するとは、曇りが発生する条件、又は曇りが発生する可能性が高い条件に合致しているか否かを判定することを意味し、曇りが発生している場合、又は曇りの発生を予測する場合のいずれかを判定対象に含む。判定部62は、第一判定部621と第二判定部622とを含む。第一判定部621は、外気導入口31から空気を取り込んでいない、又は、デフロスタ吹き出し口51への空気の供給を停止している場合に第一判定処理を行う。第二判定部622は、外気導入口31から空気を取り込み、かつ、デフロスタ吹き出し口51への空気の供給を行っている場合に第二判定処理を行う。第一判定処理は、ガラス温度と、内気湿度センサ22により検出された湿度に基づいて、曇りの発生の有無を判定する。第二判定処理は、ガラス温度での飽和水蒸気量に対する外気温度での飽和水蒸気量に基づいて、曇りの発生の有無を判定する。
【0039】
ウインドシールド10の曇りの発生の有無は、ガラス温度とウインドシールド10の内面近傍の湿度に基づいて判定することができる。ウインドシールド10の内面近傍の空気1mあたりに含まれる水蒸気量、即ち絶対湿度が、ガラス温度での飽和水蒸気量以上であれば、ウインドシールド10の内面に曇りが発生する。つまり、ガラス温度が露点温度以下になると、ウインドシールド10に曇りが発生する。
【0040】
判定部62において、ウインドシールド10の曇りの発生の有無を判定する処理が、空調コントローラ6の設定状態によって異なる。具体的には、外気導入口31から空気を取り込んでいない、又は、デフロスタ吹き出し口51への空気の供給を停止している第一設定状態では、第一判定部621において第一判定処理を行う。第一設定状態以外の場合、つまり、外気導入口31から空気を取り込み、かつ、デフロスタ吹き出し口51への空気の供給を行っている第二設定状態では、第二判定部622において第二判定処理を行う。第一設定状態とは、具体的には、内気モードである状態、又は、吹き出しモードがフェイスモード、フットモード及びバイレベルモードのいずれかである状態に該当する場合である。つまり、外気モードであっても、フェイスモード、フットモード及びバイレベルモードのいずれかである場合は第一設定状態である。また、フット/デフロスタモード又はデフロスタモードであっても、内気モードである場合は第一設定状態である。第二設定状態とは、外気モードで、かつ、吹き出しモードがフット/デフロスタモード又はデフロスタモードに設定されている状態である。
【0041】
ウインドシールド10の曇りの発生の有無を判定する処理が第一設定状態と第二設定状態とで異なる理由は次のとおりである。第一設定状態の場合、ウインドシールド10の内面近傍の湿度は、車室内の湿度と相関がある。この場合、ウインドシールド10の内面近傍の湿度は、内気湿度センサ22により検出された湿度とみなすことができる。第一設定状態の場合は、第一判定部621において、内気湿度センサ22により検出された湿度を用いて、曇りの発生の有無を判定する第一判定処理を行う。第一判定処理の詳細は後述する。一方、第二設定状態の場合、ウインドシールド10の内面近傍の湿度は、デフロスタ吹き出し口51から吹き出す空気の湿度の影響を受ける。デフロスタ吹き出し口51から吹き出す空気の湿度は、外気導入口31から空調ダクト3に取り込まれた車室外の空気の湿度の影響を受ける。そのため、ウインドシールド10の内面近傍の湿度と内気湿度センサ22により検出された湿度とは相関が殆どない。第二設定状態の場合は、内気湿度センサ22により検出された湿度を用いて、曇りの発生の有無を判定することが困難である。第二判定部622における第二判定処理は、外気温度での飽和水蒸気量を用いて、曇りの発生の有無を判定する。第二判定処理の詳細は後述する。
【0042】
図3を参照して、判定部62の処理フローを詳しく説明する。判定部62は、ステップS11において、空調コントローラ6から設定状態を取得して、第二設定状態か否かを判断する。ステップS11でNoの場合、即ち第一設定状態である場合は、ステップS21に進み、第一判定部621で第一判定処理を行う。ステップS11でYesの場合、即ち第二設定状態である場合は、ステップS22に進み、第二判定部622で第二判定処理を行う。
【0043】
〈第一判定部・第一判定処理〉
第一判定部621における第一判定処理は次のようにして行われる。第一判定処理は、ガラス温度と、ウインドシールド10の内面近傍の湿度を取得する。ガラス温度は温度演算部61から取得する。ウインドシールド10の内面近傍の湿度は、内気湿度センサ22により検出された湿度から車室内の絶対湿度を取得する。内気湿度センサ22が検出する湿度が相対湿度である場合、絶対湿度は、内気温度での飽和水蒸気量と相対湿度から求めることができる。内気温度は内気温度センサ23から取得する。第一判定処理は、ガラス温度と車室内の絶対湿度に基づいて、曇りの発生の有無を判定する。具体的には、ガラス温度での飽和水蒸気量と車室内の絶対湿度とを比較する。ガラス温度での飽和水蒸気量に対して車室内の絶対湿度が所定値以上である場合、曇りの発生が有りと判定する。ガラス温度での飽和水蒸気量に対して車室内の絶対湿度が所定値未満である場合、曇りの発生が無しと判定する。図3に示すように、ステップS21でYesの場合、即ち第一判定処理の判定結果が曇りの発生有りの場合は、ステップS31に進み、後述するデフロスタ制御部63により、デフロスタ吹き出し口51への空気の供給を行う。ステップS21でNoの場合、即ち第一判定処理の判定結果が曇りの発生無しの場合は、ステップS32に進み、デフロスタ吹き出し口51への空気の供給を停止する。ステップS31又はステップS32の後、ステップS11に戻り、ステップS11以降の処理を繰り返す。
【0044】
第一判定処理における曇りの発生の有無を判定する方法の具体例について、図4及び図5を参照して説明する。図4及び図5は、空気の温度と空気に含まれる水蒸気量との関係を示している。図4及び図5の横軸は温度であり、縦軸は空気1mあたりに含まれる水蒸気量である。横軸の温度は、ガラス温度又は内気温度を表す。図4及び図5中、実線の曲線は、各温度における飽和水蒸気量を示す飽和ラインである。破線の曲線は、曇りの発生の有無を判定する基準を示す判定ラインである。判定ラインは、各温度における飽和水蒸気量以下であれば、適宜設定することができる。判定ラインは、飽和ラインと同じであってもよいし、飽和ラインよりも低くてもよい。本実施形態では、判定ラインが飽和ラインよりも低く設定されている。図4及び図5に示す判定ラインは、飽和ラインの75%の値に設定されている。乗員の数が多いほど、車室内の湿度が変動し易いことから、判定ラインは、乗員の数に応じて適宜変更してもよい。乗員の数は、乗員検知センサから取得することができる。
【0045】
第一判定処理では、車室内の絶対湿度がガラス温度での判定ライン以上であれば、曇りの発生が有りと判定する。車室内の絶対湿度がガラス温度での判定ライン未満であれば、曇りの発生が無しと判定する。図4及び図5中、ハッチングが施された棒グラフは車室内の絶対湿度を示している。白抜きの棒グラフはガラス温度での飽和水蒸気量を示している。図4の例では、車室内の温度が30℃、車室内の絶対湿度が8.0g/m、ガラス温度が15℃である。ガラス温度が15℃での飽和水蒸気量は12.8g/mであり、15℃での判定ラインは9.6g/mである。この場合、車室内の絶対湿度が判定ライン未満であるので、曇りの発生が無しと判定する。図5は、図4に示す状態から車室内の湿度が上昇し、かつ、ガラス温度が低下した状態を示している。この車室内の湿度が上昇した原因は、例えば、乗員の数の増加によるものである。このガラス温度が低下した原因は、例えば、外気温度の低下によるものである。図5の例では、車室内の温度が30℃、車室内の絶対湿度が9.0g/m、ガラス温度が10℃である。ガラス温度が10℃での飽和水蒸気量は9.3g/mであり、10℃での判定ラインは約7.0g/mである。この場合、車室内の絶対湿度が判定ライン以上であるので、曇りの発生が有りと判定する。
【0046】
〈第二判定部・第二判定処理〉
第二判定部622における第二判定処理は次のようにして行われる。第二判定処理は、ガラス温度と、外気温度での飽和水蒸気量を取得する。外気温度での飽和水蒸気量は、外気温度センサ21により検出された外気温度から求める。外気温度での飽和水蒸気量は、その温度における相対湿度が100%のときの絶対湿度を意味する。第一判定処理は、ガラス温度での飽和水蒸気量に対する外気温度での飽和水蒸気量に基づいて、曇りの発生の有無を判定する。具体的には、ガラス温度での飽和水蒸気量と外気温度での飽和水蒸気量とを比較する。ガラス温度での飽和水蒸気量に対して外気温度での飽和水蒸気量が所定値以上である場合、曇りの発生が有りと判定する。ガラス温度での飽和水蒸気量に対して外気温度での飽和水蒸気量が所定値未満である場合、曇りの発生が無しと判定する。図3に示すように、ステップS22でYesの場合、即ち第二判定処理の判定結果が曇りの発生有りの場合は、ステップS31に進み、後述するデフロスタ制御部63により、デフロスタ吹き出し口51への空気の供給を行う。ステップS22でNoの場合、即ち第二判定処理の判定結果が曇りの発生無しの場合は、ステップS32に進み、デフロスタ吹き出し口51への空気の供給を停止する。ステップS31又はステップS32の後、ステップS11に戻り、ステップS11以降の処理を繰り返す。
【0047】
ここで、第二判定処理において、外気温度での飽和水蒸気量を用いて曇りの発生の有無を判定する理由は以下のとおりである。第二設定状態の場合、デフロスタ吹き出し口51から吹き出す空気に含まれる水蒸気量は、外気導入口31から空調ダクト3に取り込まれた車室外の空気に含まれる水蒸気量を下回ることがあっても、上回ることはない。車室外の空気の相対湿度が100%であるとき、デフロスタ吹き出し口51から吹き出す空気に含まれる水蒸気量が最大になる。つまり、デフロスタ吹き出し口51から吹き出す空気の絶対湿度は、外気温度での飽和水蒸気量以下である。第二判定処理では、車室外の空気の相対湿度が100%であると仮定して、デフロスタ吹き出し口51から吹き出す空気の実際の湿度によらず、デフロスタ吹き出し口51から吹き出す空気の絶対湿度を外気温度での飽和水蒸気量とみなす。第二判定処理では、ガラス温度での飽和水蒸気量と外気温度での飽和水蒸気量とを比較することで、曇りの発生を確実に判定することができる。
【0048】
第二判定処理における曇りの発生の有無を判定する方法の具体例について、図6及び図7を参照して説明する。図6及び図7は、図4及び図5と同じように、空気の温度と空気に含まれる水蒸気量との関係を示している。横軸の温度は、ガラス温度又は外気温度を表す。図6及び図7中、実線の曲線は、各温度における飽和水蒸気量を示す飽和ラインである。破線の曲線は、曇りの発生の有無を判定する基準を示す判定ラインである。飽和ライン及び判定ラインは、図4及び図5と同じである。
【0049】
第二判定処理では、外気温度での飽和水蒸気量がガラス温度での判定ライン以上であれば、曇りの発生が有りと判定する。外気温度での飽和水蒸気量がガラス温度での判定ライン未満であれば、曇りの発生が無しと判定する。図6及び図7中、ハッチングが施された棒グラフは外気温度での飽和水蒸気量を示している。白抜きの棒グラフはガラス温度での飽和水蒸気量を示している。図6の例では、外気温度が7.5℃、外気温度での飽和水蒸気量が8.0g/m、ガラス温度が10℃である。ガラス温度が10℃での飽和水蒸気量は9.3g/mであり、10℃での判定ラインは約7.0g/mである。この場合、外気温度での飽和水蒸気量が判定ライン以上であるので、曇りの発生が有りと判定する。図7は、図6に示す状態からガラス温度が上昇した状態を示している。このガラス温度が上昇した原因は、例えば、デフロスタ吹き出し口51から吹き出す空気の温度によるものである。図7の例では、外気温度が7.5℃、ガラス温度が15℃である。ガラス温度が15℃での飽和水蒸気量は12.8g/mであり、15℃での判定ラインは9.6g/mである。この場合、外気温度での飽和水蒸気量が判定ライン未満であるので、曇りの発生が無しと判定する。
【0050】
(デフロスタ制御部)
デフロスタ制御部63は、判定部62の判定結果に基づいて、空調ダクト3からデフロスタ吹き出し口51への空気の供給及び停止を制御する。上述した第一設定状態において、第一判定部621における第一判定処理が曇りの発生が有りと判定した場合、デフロスタ制御部63は、デフロスタ吹き出し口51への空気の供給を開始する(図3に示すステップS31)。具体的には、吹き出しモードがフット/デフロスタモード又はデフロスタモードに変更される。本実施形態では、デフロスタ制御部63は、吹き出しモードの変更と同時に、外気モードに変更する。第一判定処理が曇りの発生が無しと判定した場合、デフロスタ制御部63は、デフロスタ吹き出し口51への空気の供給を停止した状態を維持する(図3に示すステップS32)。具体的には、吹き出しモードがフェイスモード、フットモード及びバイレベルモードのいずれかに維持される。
【0051】
上述した第二設定状態において、第二判定部622における第二判定処理が曇りの発生が有りと判定した場合、デフロスタ制御部63は、デフロスタ吹き出し口51への空気の供給を継続する(図3に示すステップS31)。例えば、吹き出しモードがフット/デフロスタモード又はデフロスタモードに維持される。第一判定処理が曇りの発生が無しと判定した場合、デフロスタ制御部63は、デフロスタ吹き出し口51への空気の供給を停止する(図3に示すステップS32)。例えば、吹き出しモードがフェイスモード、フットモード及びバイレベルモードのいずれかに変更される。
【0052】
デフロスタ制御部63の制御の具体例を説明する。例えば、吹き出しモードがフットモードに設定されている状態において、第一判定処理の判定結果が曇りの発生が無しとなる環境条件では、フットモードを維持する。第一判定処理の判定結果が曇りの発生が有りとなる環境条件では、デフロスタ吹き出し口51への空気の供給を開始して、フット/デフロスタモードに移行する。フット/デフロスタモードに移行する際に、内気モードから外気モードに切り替えてもよい。吹き出しモードがフット/デフロスタモードに移行した状態において、第二判定処理の判定結果が曇りの発生が有りとなる環境条件では、フット/デフロスタモードを維持する。第二判定処理の判定結果が曇りの発生が無しとなる環境条件では、デフロスタ吹き出し口51への空気の供給を停止して、フットモードに移行する。フットモードに移行する際に、外気モードから内気モードに切り替えてもよい。
【0053】
本発明は、これらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。上述した本実施形態において、デフロスタ制御部63がデフロスタ吹き出し口51への空気の供給を開始する際に、内気モードから外気モードに切り替える他に、次の(A)から(C)のいずれかの操作を実行してもよい。(A)エバポレータ41の温度を下げる。(B)半内気モードに変更する。(C)エアミックスドア43の開度を変更して、デフロスタ吹き出し口51から吹き出す空気の温度を上げる。半内気モードとは、外気導入口31と内気導入口32のそれぞれを半開き状態にして、外気導入口31と内気導入口32の双方から空気を取り込むモードである。上記(A)から(C)のいずれかの操作により、空調ダクト3に取り込まれた空気の湿度を下げることが可能である。半内気モードにおいて、空調ダクト3に取り込まれる空気の大半が外気であり、ウインドシールド10の内面近傍の湿度が内気湿度センサ22により検出された湿度と殆ど相関しない場合は、第二設定状態とみなして、第二判定処理を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 車両用空調装置
2 センサ類
21 外気温度センサ、22 内気湿度センサ
23 内気温度センサ、24 日射センサ
3 空調ダクト
30 導入口
31 外気導入口、32 内気導入口
35 ブロア
4 空調ユニット
41 エバポレータ、41s エバポレータ温度センサ
42 ヒータコア、42s 水温センサ
43 エアミックスドア
50 吹き出し口
51 デフロスタ吹き出し口、51d デフロスタドア
52 フェイス吹き出し口、52d フェイスドア
53 フット吹き出し口、53d フットドア
6 空調コントローラ
61 温度演算部
62 判定部
621 第一判定部、622 第二判定部
63 デフロスタ制御部
10 ウインドシールド
11 インストルメントパネル
12 センターディスプレイ
13 操作パネル
13a 温度調節スイッチ
13b 風量調節スイッチ
13c 内外気切り替えスイッチ
13d 吹き出しモードスイッチ
13e デフロスタスイッチ
13f オートスイッチ
13g ON・OFFスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7