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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037319
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20240312BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240312BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20240312BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20240312BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240312BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20240312BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20240312BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240312BHJP
   H01B 3/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/013
C08L45/00
C08G59/40
C08K3/22
C08J5/24 CFC
B32B27/38
H05K1/03 610L
H05K1/03 610R
H05K1/03 630H
H01B3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142080
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】和布浦 徹
(72)【発明者】
【氏名】大東 範行
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4J002
4J036
5G303
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB09
4F072AB28
4F072AD27
4F072AE01
4F072AE02
4F072AE08
4F072AF02
4F072AF04
4F072AF06
4F072AF14
4F072AF15
4F072AF19
4F072AF23
4F072AF27
4F072AF29
4F072AG03
4F072AG19
4F072AH02
4F072AH25
4F072AJ22
4F072AK14
4F072AL11
4F072AL13
4F100AA21A
4F100AA34A
4F100AB01B
4F100AB17B
4F100AG00A
4F100AK17A
4F100AK41A
4F100AK46A
4F100AK49A
4F100AK53A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100DG00A
4F100GB41
4F100GB43
4F100JA02A
4F100JA05A
4F100JG04A
4F100JG05A
4F100JJ03A
4J002BG07X
4J002BK003
4J002CD01X
4J002CD02X
4J002CD04X
4J002CD05X
4J002CD06X
4J002CD07X
4J002CD08X
4J002CD11X
4J002CD12X
4J002CD13X
4J002CD14X
4J002CD18X
4J002CD19X
4J002CM00W
4J002DE076
4J002DE077
4J002DE087
4J002DE096
4J002DE097
4J002DE136
4J002DE137
4J002DE146
4J002DE147
4J002DE186
4J002DE187
4J002DE267
4J002DF017
4J002DG047
4J002DG057
4J002DJ007
4J002DJ017
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002DJ057
4J002DK007
4J002DL007
4J002EU028
4J002EV218
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD148
4J002FD14W
4J002GF00
4J002GQ00
4J036AA01
4J036AE05
4J036AE07
4J036CB20
4J036DC32
4J036EA06
4J036FA03
4J036FA05
4J036FB01
4J036JA05
4J036JA08
4J036JA10
4J036JA11
4J036KA01
4J036KA03
5G303AA05
5G303AB06
5G303AB07
5G303BA02
5G303BA12
5G303CA01
5G303CA09
5G303CB03
5G303CB06
5G303CB17
5G303CB32
5G303CB35
5G303CC02
(57)【要約】
【課題】高誘電率および低誘電正接に優れた硬化物等が得られる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂組成物は、(A)シアネート当量が200以上であるシアネート樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、およびチタン酸マグネシウムから選択される少なくとも1つの高誘電フィラーと、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シアネート当量が200以上であるシアネート樹脂と、
(B)エポキシ樹脂と、
(C)酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、およびチタン酸マグネシウムから選択される少なくとも1つの高誘電フィラーと、
を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
シアネート樹脂(A)は下記一般式(1)で表される樹脂(a1)および/またはそのプレポリマー(a2)を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Aは、下記一般式(1a)で表される2価の基、置換された炭素数1~5のアルキレン基、または置換されていてもよい2価の環状脂肪族基を示す。
置換された炭素数1~5の前記アルキレン基の置換基は、炭素数1~3のアルキル基またはアリール基である。
【化2】
(一般式(1a)中、XおよびXは同一でも異なっていてもよく、炭素数1~3のアルキル基で置換された炭素数1~5のアルキレン基を示し、*は結合手を示す。)
およびQは同一でも異なっていてもよく、水素原子または置換されていてもよいアリール基を示す。
Aが-C(CH-であり、QおよびQが水素原子である場合、Aが-CH(CH)-であり、QおよびQが水素原子である場合を除く。)
【請求項3】
樹脂(a1)は構造中に含まれるアリール基の数が3以上である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
シアネート樹脂(A)は、樹脂(a1)のオリゴマーを含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂(B)が、エポキシ当量が190以上のエポキシ樹脂を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物100質量%中に、高誘電フィラー(C)を10質量%以上95質量%以下の量で含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらにフィラー(D)(高誘電フィラー(C)を除く)を含み、
前記樹脂組成物100質量%中に、フィラー(D)を1質量%以上60質量%以下の量で含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
さらにマレイミド化合物(E)を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
さらにクマロン樹脂(F)を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
高周波デバイスにおける電子部品の形成用に用いられる、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1または2に記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化物からなる高誘電率材料。
【請求項13】
キャリア基材と、
前記キャリア基材上に設けられている、請求項1または2に記載の樹脂組成物からなる樹脂膜と、を備える、キャリア付樹脂膜。
【請求項14】
請求項1または2に記載の樹脂組成物を繊維基材に含浸させて形成されたプリプレグ。
【請求項15】
前記繊維基材が、ガラス繊維基材、ポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、およびフッ素樹脂繊維の中から選ばれる1種または2種以上を含む、請求項14に記載のプリプレグ。
【請求項16】
請求項1または2に記載の樹脂組成物を硬化してなる誘電体基板。
【請求項17】
請求項16に記載の誘電体基板からなるアンテナ基板。
【請求項18】
請求項14または15に記載のプリプレグと、
前記プリプレグの少なくとも一方の面に積層された金属層と、
を備える、金属張積層板。
【請求項19】
請求項14または15に記載のプリプレグの成形体と、前記成形体の両面または片面に設けられた配線パターンとを備える、プリント配線基板。
【請求項20】
請求項19に記載のプリント配線基板と、
前記プリント配線基板の前記回路層上に搭載された、または前記プリント配線基板に内蔵された半導体素子と、を備える、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、硬化物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信が高速化され、さらに使用される通信機器に対して高性能化および小型化が求められている。さらに、近年、無線通信の容量が急激に増大してきており、それに伴う伝送信号の使用周波数の広帯域化、高周波化が急速に進行している。そのため、通信機器の使用周波数帯は、従来使用されてきたマイクロ波帯だけでは対応できず、ミリ波帯にまで拡大されつつある。そのような背景から通信機器に搭載されるアンテナヘの高性能化が強く求められている。
【0003】
通信機器は、通信機器内部に組み込まれたアンテナ材料(誘電体基板)の誘電率が高くなると、より一層の小型化が図れる。また、誘電体基板の誘電正接が小さくなると、低損失になり、高周波化に有利となる。従って、誘電率が高く、誘電正接が小さい誘電体基板を使用できれば、高周波化ひいては回路の短縮化および通信機器の小型化が図ることができる。
【0004】
特許文献1には、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材とを含む成形用樹脂組成物が開示されており、当該無機充填材は、所定量のチタン酸カルシウム粒子、所定量のチタン酸ストロンチウム粒子、さらにシリカ粒子またはアルミナ粒子を含むが記載されている。なお、当該文献には、この成形用樹脂組成物は、高周波デバイスにおける電子部品の封止に用いられると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6870778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の成形用樹脂組成物から得られた硬化物は、高誘電率および低誘電正接に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定のシアネート樹脂と、特定の高誘電フィラーを組み合わせて用いることにより、当該課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0008】
[1] (A)シアネート当量が200以上であるシアネート樹脂と、
(B)エポキシ樹脂と、
(C)酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、およびチタン酸マグネシウムから選択される少なくとも1つの高誘電フィラーと、
を含むことを特徴とする樹脂組成物。
[2] シアネート樹脂(A)は下記一般式(1)で表される樹脂(a1)および/またはそのプレポリマー(a2)を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Aは、下記一般式(1a)で表される2価の基、置換された炭素数1~5のアルキレン基、または置換されていてもよい2価の環状脂肪族基を示す。
置換された炭素数1~5の前記アルキレン基の置換基は、炭素数1~3のアルキル基またはアリール基である。
【化2】
(一般式(1a)中、XおよびXは同一でも異なっていてもよく、炭素数1~3のアルキル基で置換された炭素数1~5のアルキレン基を示し、*は結合手を示す。)
およびQは同一でも異なっていてもよく、水素原子または置換されていてもよいアリール基を示す。
Aが-C(CH-であり、QおよびQが水素原子である場合、Aが-CH(CH)-であり、QおよびQが水素原子である場合を除く。)
[3] 樹脂(a1)は構造中に含まれるアリール基の数が3以上である、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4] シアネート樹脂(A)は、樹脂(a1)のオリゴマーを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] エポキシ樹脂(B)が、エポキシ当量が190以上のエポキシ樹脂を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] 前記樹脂組成物100体積%中に、高誘電フィラー(C)を10質量%以上95質量%以下の量で含む、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] さらにフィラー(D)(高誘電フィラー(C)を除く)を含み、
前記樹脂組成物100質量%中に、フィラー(D)を1質量%以上60質量%以下の量で含む、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] さらにマレイミド化合物(E)を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] さらにクマロン樹脂(F)を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] 高周波デバイスにおける電子部品の形成用に用いられる、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
[12] [11]に記載の硬化物からなる高誘電率材料。
[13] キャリア基材と、
前記キャリア基材上に設けられている、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物からなる樹脂膜と、を備える、キャリア付樹脂膜。
[14] [1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を繊維基材に含浸させて形成されたプリプレグ。
[15] 前記繊維基材が、ガラス繊維基材、ポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、およびフッ素樹脂繊維の中から選ばれる1種または2種以上を含む、[14]に記載のプリプレグ。
[16] [1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を硬化してなる誘電体基板。
[17] [16]に記載の誘電体基板からなるアンテナ基板。
[18] [14]または[15]に記載のプリプレグと、
前記プリプレグの少なくとも一方の面に積層された金属層と、
を備える、金属張積層板。
[19] [14]または[15]に記載のプリプレグの成形体と、前記成形体の両面または片面に設けられた配線パターンとを備える、プリント配線基板。
[20] [19]に記載のプリント配線基板と、
前記プリント配線基板の前記回路層上に搭載された、または前記プリント配線基板に内蔵された半導体素子と、を備える、半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高誘電率および低誘電正接に優れた硬化物等が得られる樹脂組成物を提供することができる。言い換えれば、本発明の樹脂組成物は、高誘電率および低誘電正接のバランスに優れた硬化物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態におけるキャリア付樹脂膜の構成の一例を示す断面図である。
図2】本実施形態のマイクロストリップアンテナを示す上面斜視図である。
図3】本実施形態に係る半導体装置の製造プロセスの一例を示す工程断面図である。
図4】合成例1で得たシアネート樹脂A1の赤外吸収スペクトルチャートである。
図5】合成例1で得たシアネート樹脂A1のGPCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、例えば「1~10」は特に断りがなければ「1以上」から「10以下」を表す。
【0012】
本実施形態の樹脂組成物は、シアネート当量が200以上であるシアネート樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、高誘電フィラー(C)とを含む。高誘電フィラー(C)は、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、およびチタン酸マグネシウムから選択される少なくとも1つを含む。
本実施形態の樹脂組成物は、特に、シアネート樹脂(A)と高誘電フィラー(C)とを組み合わせて含むことにより、高誘電率および低誘電正接に優れた硬化物等を得ることができる。
【0013】
[シアネート樹脂(A)]
シアネート樹脂(A)は、シアネート当量(g/eq)が200以上、好ましくは205以上、より好ましくは210以上である。上限値は特に限定されないが500以下である。「シアネート当量(g/eq)」はH-NMRやGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、標準物質:ポリスチレン換算)で測定することができる。
これにより、本実施形態の樹脂組成物は低誘電率および低誘電正接に優れた硬化物等を得ることができる。
【0014】
シアネート樹脂(A)は、本発明の効果の観点から、下記一般式(1)で表される樹脂(a1)および/またはそのプレポリマー(a2)を含むことが好ましく、少なくとも一部にプレポリマー(a2)を含むことがより好ましい。
【0015】
【化3】
【0016】
一般式(1)中、Aは、下記一般式(1a)で表される2価の基、置換された炭素数1~5のアルキレン基、または置換されていてもよい2価の環状脂肪族基を示す。
【0017】
【化4】
【0018】
一般式(1a)中、XおよびXは同一でも異なっていてもよく、炭素数1~3のアルキル基で置換された炭素数1~5のアルキレン基、好ましくは炭素数1または2のアルキル基で置換された炭素数1~3のアルキレン基、より好ましくは炭素数1のアルキル基で置換された炭素数1のアルキレン基を示す。*は結合手を示す。
【0019】
一般式(1)のAにおいて、置換された炭素数1~5の前記アルキレン基としては、好ましくは置換された炭素数1~3のアルキレン基、より好ましくは置換された炭素数1のアルキレン基である。
【0020】
置換された炭素数1~5の前記アルキレン基の置換基は、炭素数1~3のアルキル基またはアリール基であり、好ましくは炭素数1のアルキル基またはアリール基である。前記アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0021】
一般式(1)のAにおいて、置換されていてもよい2価の環状脂肪族基の2価の環状脂肪族基としては、炭素原子数3~10の単環式又は多環式脂肪族環から誘導される2価の基であることが好ましい。炭素原子数3~10の単環式又は多環式脂肪族環としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロへプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、スピロビシクロペンタン、ビシクロ[2.1.0]ペンタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、トリシクロ[3.2.1.02,7]オクタン、スピロ[3,4]オクタン、ノルボルナン、ノルボルネン、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン(アダマンタン)等が挙げられ、好ましくはシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、より好ましくはシクロヘキサンである。
【0022】
置換されていてもよい2価の環状脂肪族基の置換基は、炭素数1~3のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1~2のアルキル基、より好ましくは炭素数1のアルキル基である。
【0023】
およびQは同一でも異なっていてもよく、水素原子または置換されていてもよいアリール基を示す。アリール基としては前述と同様の基を挙げることができ、好ましくはフェニル基である。置換されていてもよいアリール基の置換基としては、炭素数1~3のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1~2のアルキル基、より好ましくは炭素数1のアルキル基である。
【0024】
樹脂(a1)は構造中に含まれるアリール基の数が好ましくは3以上であり、より好ましくは4以上である。アリール基の数の上限値は好ましくは6以下、より好ましくは5以下である。
【0025】
なお、本実施形態のシアネート樹脂(A)は、一般式(1)のAが-C(CH-であり、かつQおよびQが水素原子である化合物、および一般式(1)のAが-CH(CH)-であり、かつQおよびQが水素原子である化合物を含まない。
【0026】
樹脂(a1)としては、具体的に、以下の式で表される化合物を挙げることができ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
【化5】
【0028】
シアネート樹脂(A)は、樹脂(a1)のオリゴマーを含むことができる。オリゴマーとしては三量体であるトリアジン骨格を有するものが挙げられる。
【0029】
シアネート樹脂(A)は、本発明の効果の観点から、樹脂組成物100質量%中に、好ましくは1質量%以上50質量%以下、より好ましくは2質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上30質量%以下の量で含むことができる。
【0030】
本実施形態の樹脂組成物は、シアネート当量が200以上のシアネート樹脂(A)とともに、シアネート当量が200未満であるシアネート樹脂(その他のシアネート樹脂)を用いることができる。本発明の効果の観点から、シアネート樹脂(A)とその他のシアネート樹脂とを併用することが好ましい。
シアネート樹脂(A)100質量%に対して、その他のシアネート樹脂を好ましくは5~50質量%、さらに好ましくは10~30質量%の量で組み合わせて用いることができる。
【0031】
(シアネート樹脂(A)の製造方法)
本実施形態のシアネート樹脂(A)に含まれる樹脂(a1)は、下記一般式(2)に示すビフェニル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとを反応させることにより得ることができる。
【0032】
【化6】
【0033】
一般式(2)中、A、Q、Qは一般式(1)と同義である。
【0034】
本実施形態の樹脂(a1)の合成条件、及び方法は、特に限定されないが、例えば、有機溶媒中に前記一般式(2)で示されるビフェニル型フェノール樹脂を溶解させ、低温でハロゲン化シアン化合物を滴下し、次に低温で3級アミンなどの塩基性化合物を滴下する。ハロゲン化シアンと3級アミンなどの塩基性化合物は、交互に滴下しても良く、同時でも良い。発熱反応による副反応が起こらないよう、低温で反応を進めることにより、高収率でシアネート樹脂(A)を得ることができる。低温とは、副反応がおこる温度以下をいう。好ましくは、0℃以下である。
【0035】
前記合成条件において、ビフェニル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとの仕込み比率は、ビフェニル型フェノール樹脂のフェノール性水酸基1に対してハロゲン化シアンを1.5~3が好ましい。
【0036】
前記ハロゲン化シアン化合物としては、特に限定されないが、例えば、塩化シアン、臭化シアンなどを用いることができる。
【0037】
前記3級アミンとしては、特に限定されないが、例えば、アルキルアミン、アリールアミン、シクロアルキルアミンのいずれでも良く、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、メチルジブチルアミンなどが挙げられる。
【0038】
合成に用いる前記有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ケトン系溶剤、芳香族系溶剤、エーテル系溶剤、ハロゲン化炭素水素系溶剤、アルコール系溶剤、非プロトン系溶剤、二トリル系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤などがあり、いずれも用いることができる。これらの1種類または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
一般式(2)で示されるビフェニル型フェノール樹脂とハロゲン化シアン化合物とを反応させた後の処理としては、析出した3級アミンなどの塩基性化合物の塩化水素塩をろ過または水洗によって除去する。さらにアミン類を除去するため、酸性水溶液を用いて分液洗浄を行うことができる。希塩酸を主に用いる。最後に脱水のため、無水硫酸ナトリウムなどを用いる。水洗の場合は、分液作業が可能な溶媒を選択する必要がある。
さらに、樹脂(a1)を温度80℃~200℃で、30分~5時間程度反応させることで少なくとも一部をプレポリマー化することができ、プレポリマー(a2)を含むシアネート樹脂(A)を得ることができる。
上記の反応温度や時間を調整することにより、シアネート樹脂(A)のシアネート当量を調整することができる。
【0040】
[エポキシ樹脂(B)]
エポキシ樹脂(B)としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4’-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4’-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4’-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリヒドロキシフェノニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂)等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、ヒドロキシナフタレンおよび/またはジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られる2官能ないし4官能のナフタレン型エポキシ樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、tert-ブチルカテコール型エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂;N,N,N’,N’-テトラグリシジルメタキシレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N-ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との共重合物;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
エポキシ樹脂(B)は、エポキシ当量が好ましくは190g/eq以上、より好ましくは200g/eq以上、さらに好ましくは210g/eq以上のエポキシ樹脂を含むことができる。これにより、最適な架橋密度によって、樹脂組成物の硬化物の誘電特性を改善することができる。エポキシ当量の上限値は、特に限定されないが、例えば、700g/eq以下としてもよく、600g/eq以下としてもよく、500g/eq以下としてもよい。これにより、樹脂組成物の硬化物の強度を向上させることができる。
【0042】
本実施形態において、エポキシ樹脂(B)は、誘電特性の観点から、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂およびナフトールアラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上を含むことができる。この中でも、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0043】
また、本実施形態のエポキシ樹脂(B)は、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、上記エポキシ樹脂の他に、エポキシ当量が190g/eq未満のエポキシ樹脂を含んでもよい。
【0044】
エポキシ樹脂(B)は、本発明の効果の観点から、樹脂組成物100質量%中に、好ましくは1質量%以上50質量%以下、より好ましくは2質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上20質量%以下の量で含むことができる。
【0045】
[高誘電フィラー(C)]
高誘電フィラー(C)は、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、およびチタン酸マグネシウムから選択される少なくとも1つを含む。
本発明の効果の観点から、高誘電フィラー(C)は、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸バリウムネオジム、チタン酸バリウム錫及びチタン酸鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、アルミナ、五酸化タンタル、および五酸化ニオブを含むことが好ましく、チタン酸カルシウムを含むことがより好ましい。
【0046】
高誘電率ィラーの平均粒子径は、例えば、好ましくは0.1μm以上50μm以下、より好ましくは0.3μm以上20μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上10μm以下である。
【0047】
高誘電フィラーの形状は、粒状、不定形、フレーク状などであり、これらの形状の高誘電率フィラーを任意の比率で用いることができる。
【0048】
高誘電フィラーの含有量は、樹脂組成物100体積%中、好ましくは3体積%以上80体積%以下、より好ましくは6体積%以上65体積%以下、さらに好ましくは30体積%以上60体積%以下の範囲である。
【0049】
また、 高誘電フィラーの含有量は、樹脂組成物100質量%中、好ましくは10質量%以上95質量%以下、より好ましくは20質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上85質量%以下の範囲である。
【0050】
[フィラー(D)]
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、高誘電フィラー(C)以外のフィラー(D)を含むことができる。
フィラー(D)としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカ、溶融シリカ等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。
【0051】
これらの中でも、タルク、アルミナ、ガラス、シリカ、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましく、シリカが特に好ましい。フィラー(D)としては、これらの中の1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0052】
フィラー(D)の平均粒子径の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上としてもよく、0.05μm以上としてもよい。これにより、作業性を向上させることができる。また、フィラー(D)の平均粒子径の上限値は、特に限定されないが、例えば、5.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.0μm以下がさらに好ましい。これにより、樹脂組成物中におけるフィラー(D)を均一に分散することができる。
【0053】
フィラー(D)の平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA-500)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)を平均粒子径とすることができる。
【0054】
また、フィラー(D)は、特に限定されないが、平均粒子径が単分散の無機充填材を用いてもよいし、平均粒子径が多分散の無機充填材を用いてもよい。さらに平均粒子径が単分散および/または多分散の無機充填材を1種類または2種類以上で併用してもよい。
【0055】
フィラー(D)はシリカ粒子を含むことが好ましい。シリカ粒子は球状であってもよい。上記シリカ粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、5.0μm以下としてもよく、0.1μm以上4.0μm以下としてもよく、0.2μm以上2.0μm以下としてもよい。これにより、無機充填材(C)の充填性をさらに向上させることができる。
【0056】
フィラー(D)の含有量は、樹脂組成物100体積%中、好ましくは1体積%以上45体積%以下、より好ましくは5体積%以上40体積%以下、さらに好ましくは10体積%以上35体積%以下の範囲である。
【0057】
フィラー(D)は、本発明の効果の観点およびハンドリング性の観点から、樹脂組成物100質量%中に、好ましくは1質量%以上60質量%以下、より好ましくは10質量%以上55質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上50質量%以下の量で含むことができる。
【0058】
[マレイミド化合物(E)]
本実施形態の樹脂組成物は、さらに含むことができる。
マレイミド化合物(E)のマレイミド基は、5員環の平面構造を有し、マレイミド基の二重結合が分子間で相互作用しやすく極性が高いため、マレイミド基、ベンゼン環、その他の平面構造を有する化合物等と強い分子間相互作用を示し、分子運動を抑制することができる。そのため、本実施形態の樹脂組成物は、マレイミド化合物を含むことにより、得られる絶縁層の線膨張係数を下げ、ガラス転移温度を向上させることができ、さらに、耐熱性を向上させることができる。
【0059】
マレイミド化合物としては、分子内に少なくとも2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物が好ましい。
分子内に少なくとも2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物としては、例えば、4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、N,N'-エチレンジマレイミド、N,N'-ヘキサメチレンジマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド等の分子内に2つのマレイミド基を有する化合物、ポリフェニルメタンマレイミド等の分子内に3つ以上のマレイミド基を有する化合物等が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用することもできる。
【0060】
これらのマレイミド化合物の中でも、誘電特性の観点等から、4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミドが好ましい。
【0061】
マレイミド化合物(E)は、本発明の効果の観点から、樹脂組成物100質量%中に、好ましくは1質量%以上50質量%以下、より好ましくは2質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上15質量%以下の量で含むことができる。
【0062】
[クマロン樹脂(F)]
本実施形態の樹脂組成物は、さらにクマロン樹脂(F)を含むことができる。
クマロン樹脂(F)とは、その骨格構造にクマロン残基を含む平均重合度4~8の(共)重合体のことを示し、クマロン(1-ベンゾフラン)重合体の他、インデン(C)、スチレン(C)、α-メチルスチレン、メチルインデン及びビニル卜ルエンとの共重合体であってもよい。なかでも、クマロン-インデン共重合体、クマロン-インデン-スチレン共重合体であることが好ましい。
【0063】
インデン-クマロン樹脂は、インデ系モノマー由来の構造単位Aおよびクマロン系モノマー由来の構造単位Bを含むものである。上記インデン-クマロン樹脂は、他のモノマー由来の構造単位を有していてもよい。上記インデン-クマロン樹脂は、例えば、スチレン系モノマー由来の構造単位Cを有していてもよい。これらの構造単位の繰り返し構造を有することができる。
上記インデン系モノマーに由来する構造単位Aは、例えば、下記一般式(M1)で表されるものが挙げられる。
【0064】
【化7】
【0065】
一般式(M1)中、RからRは、それぞれ独立して水素または炭素数1以上3以下の有機基である。
【0066】
上記クマロン系モノマーに由来する構造単位Bは、例えば、下記一般式(M2)で表されるものが挙げられる。
【0067】
【化8】
【0068】
一般式(M2)中、Rは、水素または炭素数1以上3以下の有機基である。Rは互いに同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
【0069】
上記スチレン系モノマーに由来する構造単位Cは、例えば、下記一般式(M3)で表されるものが挙げられる。
【0070】
【化9】
【0071】
一般式(M3)中、Rは、水素または炭素数1以上3以下の有機基である。Rは互いに同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
上記一般式(M1)~(M3)において、RからR、R及びRは、例えば、有機基の構造に水素及び炭素以外の原子を含んでもよい。
【0072】
水素及び炭素以外の原子としては、具体的には、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、フッ素原子、塩素原子などが挙げられる。水素及び炭素以外の原子としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を含むことができる。
【0073】
上記一般式(M1)~(M3)において、RからR、R及びRは、それぞれ独立して、例えば、水素又は炭素数1以上3の有機基であり、水素または炭素数1の有機基であることが好ましく、水素であることが更に好ましい。
【0074】
上記一般式(M1)~(M3)において、上記RからR、R及びRを構成する有機基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基などのアルキル基;アリル基、ビニル基などのアルケニル基;エチニル基などのアルキニル基;メチリデン基、エチリデン基などのアルキリデン基;シクロプロピル基などのシクロアルキル基;エポキシ基、オキセタニル基などのヘテロ環基などが挙げられる。
【0075】
上記インデン-クマロン樹脂は、この中でも、インデン、クマロンおよびスチレンの共重合体を含むことができる。これにより、低誘電特性を向上させることができる。
【0076】
また、上記インデン-クマロン樹脂は、分子内に、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応する反応性基を備えることができる。これにより、低誘電特性を向上させることができる。
上記反応性基としては、OH基、COOH基などが挙げられる。
また、上記インデン-クマロン樹脂は、内部または末端にフェノール性水酸基を有する芳香族構造を有していてもよい。
【0077】
上記インデン-クマロン樹脂の重量平均分子量Mwの上限値は、例えば、4000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1500以下であることが更に好ましく、1200以下であることが一層好ましい。これにより、インデン-クマロン樹脂とエポキシ樹脂との相溶性を高め、適切にインデン-クマロン樹脂を分散できる。一方、インデン-クマロン樹脂の重量平均分子量Mwの下限値は、例えば、400以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、550以上であることが更に好ましく、600以上であることが一層好ましい。これにより、樹脂組成物の中にインデン-クマロン樹脂が適切に分散できる。
【0078】
上記インデン-クマロン樹脂の含有量の下限値は、本実施形態の樹脂組成物全体を100質量%としたとき、例えば、1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。これにより、低誘電特性および低吸水特性を向上できる。一方、上記インデン-クマロン樹脂の含有量の上限値は、本実施形態の樹脂組成物全体を100質量%としたとき、例えば、15質量%以下、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。これにより、他の物性とのバランスを図ることができる。
【0079】
クマロン樹脂(F)の融点は、40℃~120℃であることが好ましく、分子量、重合度により融点を制御することができる。
【0080】
クマロン樹脂(F)は、本発明の効果の観点から、樹脂組成物100質量%中に、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.2質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上3質量%以下の量で含むことができる。
【0081】
[カップリング剤]
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、カップリング剤を含むことができる。
カップリング剤としては、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を用いることができる。
【0082】
これらを例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-[ビス(β-ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(β-アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミンの加水分解物等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
樹脂組成物中におけるカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物全体を100質量%としたとき、0.01質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2質量%以下であることがより好ましい。カップリング剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、樹脂組成物中における無機充填剤(C)の分散性を良好なものとすることができる。また、カップリング剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の流動性を良好なものとし、成形性の向上を図ることができる。
【0084】
[硬化触媒]
本実施形態の樹脂組成物は、硬化触媒を含んでもよい。
硬化触媒は、硬化促進剤などと呼ばれる場合もある。硬化触媒は、熱硬化性樹脂の硬化反応を早めるものである限り特に限定されず、公知の硬化触媒を用いることができる。
【0085】
具体的には、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール類(イミダゾール系硬化促進剤);1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン等が例示されるアミジンや3級アミン、アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物などを挙げることができ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0086】
これらの中でも、硬化性を向上させ、曲げ強度などの機械強度に優れた硬化物を得る観点からはリン原子含有化合物を含むことが好ましく、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するものを含むことがより好ましく、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が特に好ましい。
【0087】
一般式(1)で表される化合物(C)と潜伏性を有する硬化触媒とを組み合わせて用いることにより、成形性により優れるとともに、曲げ強度などの機械強度により優れた硬化物を得ることができる。
【0088】
有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0089】
硬化触媒を用いる場合、その含有量は、樹脂組成物100質量%中、好ましくは0.05~3質量%、より好ましくは0.08~2質量%である。このような数値範囲とすることにより、他の性能を過度に悪くすることなく、十分に硬化促進効果が得られる。
【0090】
[その他の成分]
本実施形態の樹脂組成物は、上記成分に加え、必要に応じて、フェノール樹脂等の硬化剤、UV吸収剤、レベリング剤、離型剤、着色剤、分散剤、低応力化剤等の種々の成分を含むことができる。
【0091】
<樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、上述の各成分を均一に混合することにより製造できる。製造方法としては、所定の含有量の原材料をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、ニーダ、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。得られた樹脂組成物は、必要に応じて、成形条件に合うような寸法および質量でタブレット化してもよい。
【0092】
本実施形態の樹脂組成物の利用形態としては、特に限定されないが、例えば、上記樹脂組成物からなる樹脂膜や基板、上記樹脂膜をキャリア基材上に設けたキャリア付樹脂膜、上記樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるプリプレグ等が挙げられる。
【0093】
[キャリア付き樹脂膜]
次いで、本実施形態のキャリア付樹脂膜について説明する。
図1は、本実施形態におけるキャリア付樹脂膜1の構成の一例を示す断面図である。
【0094】
本実施形態のキャリア付樹脂膜1は、図1に示すように、キャリア基材4と、キャリア基材4上に設けられている、上記樹脂組成物からなる樹脂膜2と、を備えることができる。これにより、樹脂膜2のハンドリング性を向上させることができる。
キャリア付樹脂膜1は、巻き取り可能なロール形状でも、矩形形状などの枚葉形状であってもよい。
【0095】
本実施形態において、キャリア基材4としては、例えば、高分子フィルムや金属箔などを用いることができる。当該高分子フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、シリコーンシート等の離型紙、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂シート等が挙げられる。当該金属箔としては、特に限定されないが、例えば、銅および\または銅系合金、アルミおよび\またはアルミ系合金、鉄および\または鉄系合金、銀および\または銀系合金、金および金系合金、亜鉛および亜鉛系合金、ニッケルおよびニッケル系合金、錫および錫系合金などが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートで構成されるシートが安価および剥離強度の調節が簡便なため最も好ましい。これにより、上記キャリア付樹脂膜1から、適度な強度で剥離することが容易となる。
【0096】
樹脂膜2の厚みの下限値は、特に限定されないが、例えば、1μm以上でもよく、3μm以上でもよく、5μm以上でもよい。これにより、樹脂膜2の機械強度を高めることができる。一方、樹脂膜2の厚みの上限値は、特に限定されないが、例えば、500μm以下としてもよく、300μm以下としてもよく、100μm以下としてもよい。これにより、高誘電材料の薄層化を図ることができる。
【0097】
キャリア基材4の厚みは、特に限定されないが、例えば、10~100μmとしてもよく、10~70μmとしてもよい。これにより、キャリア付樹脂膜1を製造する際の取り扱い性が良好であり好ましい。
【0098】
本実施形態のキャリア付樹脂膜1は、単層でも多層でもよく、1種または2種以上の樹脂膜2を含むことができる。当該樹脂シートが多層の場合、同種で構成されてもよく、異種で構成されてもよい。また、キャリア付樹脂膜1は、樹脂膜2上の最外層側に、保護膜を有していてもよい。
【0099】
本実施形態において、キャリア付樹脂膜1を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、ワニス状の樹脂組成物をキャリア基材4上に、各種コーター装置を用いて塗布することにより塗布膜を形成した後、当該塗布膜を適切に乾燥させることにより溶剤を除去する方法を用いることができる。
【0100】
(樹脂基板)
本実施形態の樹脂基板は、樹脂組成物の硬化物で構成された絶縁層を備えることができる。このような樹脂基板は、ガラス繊維を含まない構成とすることができ、プリント配線基板やアンテナ基板に利用することができる。
【0101】
(プリプレグ)
本実施形態のプリプレグは、上記樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるものである。例えば、プリプレグは、樹脂組成物を繊維基材に含浸させ、その後、半硬化させて得られるシート状の材料として利用できる。このような構造のシート状材料は、誘電特性、高温多湿下での機械的、電気的接続信頼性等の各種特性に優れ、プリント配線基板の絶縁層の製造に適している。
【0102】
樹脂組成物を繊維基材に含浸させる方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物を溶剤に溶かして樹脂ワニスを調製し、繊維基材を上記樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより上記樹脂ワニスを繊維基材に塗布する方法、スプレーにより上記樹脂ワニスを繊維基材に吹き付ける方法、樹脂組成物からなる上記樹脂膜で繊維基材の両面をラミネートする方法等が挙げられる。
【0103】
本実施形態において、プリプレグは、例えば、プリント配線基板におけるビルドアップ層中の絶縁層やコア層中の絶縁層を形成するために用いることができる。プリプレグをプリント配線基板におけるコア層中の絶縁層を形成するために用いる場合は、例えば、2枚以上のプリプレグを重ね、得られた積層体を加熱硬化することによりコア層用の絶縁層とすることもできる。
【0104】
上記繊維基材としては、とくに限定されないが、ガラス織布、ガラス不織布等のガラス繊維基材;ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維等のポリアミド系樹脂繊維;ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維;ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維のいずれかを主成分とする織布または不織布で構成される合成繊維基材;クラフト紙、コットンリンター紙、あるいはリンターとクラフトパルプの混抄紙等を主成分とする紙基材;等が挙げられる。これらのうち、いずれかを使用することができる。これらの中でもガラス繊維基材が好ましい。これにより、低吸水性で、高強度、低熱膨張性の樹脂基板を得ることができる。
【0105】
繊維基材の厚みは、とくに限定されないが、好ましくは5μm以上150μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは12μm以上90μm以下である。このような厚みを有する繊維基材を用いることにより、プリプレグ製造時のハンドリング性がさらに向上できる。
【0106】
繊維基材の厚みが上記上限値以下であると、繊維基材中の樹脂組成物の含浸性が向上し、ストランドボイドや絶縁信頼性の低下の発生を抑制することができる。また炭酸ガス、UV、エキシマ等のレーザーによるスルーホールの形成を容易にすることができる。また、繊維基材の厚みが上記下限値以上であると、繊維基材やプリプレグの強度を向上させることができる。その結果、ハンドリング性が向上できたり、プリプレグの作製が容易となったり、樹脂基板の反りを抑制できたりする。
【0107】
上記ガラス繊維基材として、例えば、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Tガラス、NEガラス、UTガラス、Lガラス、HPガラスおよび石英ガラスから選ばれる一種または二種以上のガラスにより形成されたガラス繊維基材が好適に用いられ、NEガラス繊維基材が好ましい。
【0108】
<用途>
本実施形態の樹脂組成物から得られる硬化物や、当該硬化物を含む前記キャリア付樹脂膜または前記プリプレグ等は、高周波帯において高誘電率および低誘電正接に優れることから、高誘電率材料として用いることができ、高周波化ひいては回路の短縮化および通信機器等の高周波デバイスにおける小型化を図ることができる。
【0109】
このような樹脂組成物は、例えば、マイクロストリップアンテナ、誘電体導波路、および多層アンテナからなる群から選ばれる高周波デバイスの一部を形成する、高誘電率材料として用いることができる。さらに、金属張積層板、プリント配線基板、および半導体パッケージの一部を形成するために用いることができる。
【0110】
本実施形態の高周波デバイスは、樹脂組成物から得られる硬化物を備える。
以下、高周波デバイスの一例を説明する。
【0111】
<マイクロストリップアンテナ>
図2に示すように、マイクロストリップアンテナ10は、上述の樹脂組成物を硬化してなる誘電体基板(アンテナ基板)12と、誘電体基板12の一方の面に設けられた放射導体板(放射素子)14と、誘電体基板12の他方の面に設けられた地導体板16と、を備える。
【0112】
放射導体板の形状は矩形または円形が挙げられる。本実施形態においては、矩形の放射導体板14を用いた例によって説明する。
【0113】
放射導体板14は、金属材料、金属材料の合金、金属ペーストの硬化物、および導電性高分子のいずれかを含む。金属材料は、銅、銀、パラジウム、金、白金、アルミニウム、クロム、ニッケル、カドミウム鉛、セレン、マンガン、錫、バナジウム、リチウム、コバルト、およびチタン等を含む。合金は、複数の金属材料を含む。金属ペースト剤は、金属材料の粉末を有機溶剤、およびバインダとともに混練したものを含む。バインダは、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂を含む。導電性ポリマーは、ポリチオフェン系ポリマー、ポリアセチレン系ポリマー、ポリアニリン系ポリマー、ポリピロール系ポリマー等を含む。
【0114】
本実施形態のマイクロストリップアンテナ10は、図2に示すように、長さL、幅Wの放射導体板14を有しており、Lが1/2波長の整数倍に一致する周波数で共振する。本実施形態のように、高誘電率である誘電体基板12を用いる場合、誘電体基板12の厚さhと放射導体板14の幅Wは波長に対して十分小さくなるように設計される。
【0115】
地導体板16は、銅や銀、金などの導電性の高い金属で構成される薄い板である。その厚さは、アンテナ装置の中心動作周波数に対して十分薄く、中心動作周波数の50分の1波長から1000分の1波長程度であればよい。
【0116】
マイクロストリップアンテナの給電方法としては,背面同軸給電および共平面給電のような直接給電方式や、スロット結合給電および近接結合給電のような電磁結合給電方式が挙げられる。
【0117】
背面同軸給電は、地導体板16と誘電体基板12を貫く同軸線路やコネクタを用いてアンテナ背面から放射導体板14に給電することができる。
共平面給電は、放射導体板14と同一面上に配置されたマイクロストリップ線路(不図示)で放射導体板14に給電することができる。
【0118】
スロット結合給電においては,地導体板16を挟み込む形でさらに別の誘電体基板(不図示)を設け、放射導体板14とマイクロストリップ線路とを別々の誘電体基板に形成する。地導体板16に空けられたスロットを介して,放射導体板14とマイクロストリップ線路とを電磁結合させることによって放射導体板14が励振される。
【0119】
近接結合給電においては、誘電体基板12が積層構造を有し、放射導体板14が形成された誘電体基板と,マイクロストリップ線路のストリップ導体および地導体板16が配置された誘電体基板とが積層されている.マイクロストリップ線路のストリップ導体を放射導体板14の下部に延長し、放射導体板14とマイクロストリップ線路を電磁結合させることにより、放射導体板14が励振される。
【0120】
<誘電体導波路>
本実施形態において、誘電体導波路は、本実施形態の樹脂組成物を硬化してなる誘電体と、当該誘電体の表面を覆う導体膜と、を備える。誘電体導波路は、電磁波を誘電体(誘電体媒質)中に閉じこめて伝送させるものである。
前記導体膜は、銅等の金属や、酸化物高温超伝導体等から構成することができる。
【0121】
<多層アンテナ>
本実施形態において、多層アンテナは、本実施形態の樹脂組成物を硬化してなる誘電体基板(アンテナ基板)を備える。
具体的には、多層アンテナは、コンデンサ、インダクタなどの多数の素子からなる回路を、誘電体基板に印刷して積層するモジュール化したものである。
【0122】
<金属張積層板>
本実施形態の積層板は、上記プリプレグの硬化物の少なくとも一方の面に金属層が配置された金属張積層板である。
また、プリプレグを用いた金属張積層板製造方法は、例えば以下の通りである。
【0123】
プリプレグまたはプリプレグを2枚以上重ね合わせた積層体の外側の上下両面または片面に金属箔を重ね、ラミネーター装置やベクレル装置を用いて高真空条件下でこれらを接合する、あるいはそのままプリプレグの外側の上下両面または片面に金属箔を重ねる。また、プリプレグを2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。次いで、プリプレグと金属箔とを重ねた積層体を加熱加圧成形することで金属張積層板を得ることができる。ここで、加熱加圧成形時に、冷却終了時まで加圧を継続することが好ましい。
【0124】
上記金属箔を構成する金属としては、例えば、銅、銅系合金、アルミ、アルミ系合金、銀、銀系合金、金、金系合金、亜鉛、亜鉛系合金、ニッケル、ニッケル系合金、錫、錫系合金、鉄、鉄系合金、コバール(商標名)、42アロイ、インバー、スーパーインバー等のFe-Ni系の合金、W、Mo等が挙げられる。これらの中でも、金属箔105を構成する金属としては、導電性に優れ、エッチングによる回路形成が容易であり、また安価であることから銅または銅合金が好ましい。すなわち、金属箔105としては、銅箔が好ましい。
また、金属箔としては、キャリア付金属箔等も使用することができる。
金属箔の厚みは、好ましくは0.5μm以上20μm以下であり、より好ましくは1.5μm以上18μm以下である。
【0125】
<プリント配線基板>
本実施形態のプリント配線基板は、上記の樹脂膜の硬化物(樹脂組成物の硬化物)で構成された絶縁層を備えるものである。
【0126】
本実施形態において、樹脂膜の硬化物は、例えば、通常のプリント配線基板のビルドアップ層、コア層を有しないプリント配線基板におけるビルドアップ層、PLPに用いられるコアレス基板のビルドアップ層、MIS基板のビルドアップ層等に用いることができる。このようなビルドアップ層を構成する絶縁層は、複数の半導体パッケージを一括して作成するために利用させる大面積のプリント配線基板において、当該プリント配線基板を構成するビルドアップ層にも好適に用いることができる。
【0127】
また、本実施形態において、絶縁膜形成用の樹脂組成物からなる樹脂膜において、ガラス繊維を含浸する構成とすることができる。このような樹脂膜をビルドアップ層に用いた半導体パッケージにおいても、樹脂膜の硬化物の線膨張係数を低くすることができるので、パッケージ反りを十分に抑制することができる。
【0128】
<半導体パッケージ>
図3は、本実施形態の半導体パッケージ200の製造工程の一例を示す工程断面図である。
【0129】
本実施形態の半導体装置(半導体パッケージ200)は、プリント配線基板と、プリント配線基板の回路層上に搭載された、またはプリント配線基板に内蔵された半導体素子240と、を備えることができる。
以下、本実施形態の半導体パッケージ200の製造工程の概要について説明する。
【0130】
まず、図3(a)に示すように、絶縁層102、ビアホール104および金属層108を備えるコア層100を準備する。絶縁層102にはビアホール104が形成されている。ビアホール104には、金属層(ビア)が埋設されている。当該金属層は、無電解金属めっき膜106で覆われていてもよい。絶縁層102の表面に形成された金属層108(所定の回路パターンを有する回路層)は、ビアホール104に形成されたビアと電気的に接続する。図3(a)には、金属層108は、コア層100の一面上に形成されているが、両面に形成されていてもよい。
【0131】
続いて、コア層100の一面上に金属層108を埋め込むように、上記樹脂組成物からなる樹脂膜20を形成する。例えば、キャリア付樹脂膜10からカバーフィルム50を剥離し、その樹脂膜20(絶縁膜)をコア層100の回路形成面上に配置してもよい。この樹脂膜20の表面にはキャリア基材30が設けられている。キャリア基材30は、この時点で樹脂膜20から分離してもよいが、マスクとして使用してもよい。
なお、樹脂膜20は、絶縁膜単層でもよく、絶縁膜およびプライマー層の複数層で構成されてもよい。
【0132】
続いて、上記樹脂膜20に、キャリア基材30を介して、不図示の開口部を形成する。開口部は、金属層108を露出させるように形成することができる。開口部の形成方法としては、特に限定されず、例えば、レーザー加工法、露光現像法またはブラスト工法、などの方法を用いることができる。
【0133】
本実施形態において、このような開口部を形成した後、樹脂膜20を熱硬化させてもよい。その後、キャリア基材30を剥離する。
【0134】
また、必要に応じて、デスミア処理を行うことができる。デスミア処理では、開口部の内部に生じたスミアを除去するとともに、上記樹脂膜20の表面を粗化できる。
【0135】
上記デスミア処理の方法は特に限定されないが、たとえば、以下のように行うことができる。まず、樹脂膜20を積層したコア層100を、有機溶剤を含む膨潤液に浸漬し、次いでアルカリ性過マンガン酸塩水溶液に浸漬し、中和して粗化処理することができる。有機溶剤としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルやエチレングリコール等を用いる事ができる。このような膨潤液として、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリングディップ セキュリガント P」が挙げられる。過マンガン酸塩としては、たとえば過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等を用いることができる。膨潤液や過マンガン酸塩水溶液の液温としては、例えば、50℃以上でもよく、100℃以下でもよい。また、膨潤液や過マンガン酸塩水溶液への浸漬時間は、例えば、1分間以上でもよく、30分間以下でもよい。
デスミア処理する工程では、上記の湿式のデスミア処理のみを行うことができるが、デスミア処理に加えてプラズマ照射を行っても良い。
【0136】
続いて、樹脂膜20、あるいは樹脂膜20上に形成されたプライマー層(不図示)上に、無電解金属めっき膜202を形成する。無電解めっき法の例を説明する。例えば、下地層の表面上に触媒核を付与する。この触媒核としては、特に限定されないが、例えば、貴金属イオンやパラジウムコロイドを用いることができる。引き続き、この触媒核を核として、無電解めっき処理により、無電解金属めっき膜202を形成する。無電解めっきには、例えば、硫酸銅、ホルマリン、錯化剤、水酸化ナトリウム等を含むものを用いることができる。なお、無電解めっき後に、100~250℃の加熱処理を施し、めっき被膜を安定化させることができる。
【0137】
続いて、図3(b)に示すように、無電解金属めっき膜202上に所定の開口パターン(開口部206)を有するレジスト204を形成してもよい。この開口パターンは、例えば回路パターンに相当する。レジスト204としては、特に限定されず、公知の材料を用いることができるが、液状およびドライフィルムを用いることができる。微細配線形成の場合には、レジスト204としては、感光性ドライフィルム等を用いることができる。感光性ドライフィルムを用いた一例を説明する。例えば、無電解金属めっき膜202上に感光性ドライフィルムを積層し、非回路形成領域を露光して光硬化させ、未露光部を現像液で溶解、除去する。硬化した感光性ドライフィルムを残存させることにより、レジスト204を形成する。
【0138】
続いて、図3(c)に示すように、少なくともレジスト204の開口パターン内部かつ無電解金属めっき膜202上に、電気めっき処理により、電解金属めっき層208を形成する。電気めっきとしては、特に限定されないが、通常のプリント配線基板で用いられる公知の方法を使用することができ、例えば、硫酸銅等のめっき液中に浸漬させた状態で、めっき液に電流を流す等の方法を使用することができる。電解金属めっき層208は単層でもよく多層構造を有していてもよい。電解金属めっき層208の材料としては、特に限定されないが、例えば、銅、銅合金、42合金、ニッケル、鉄、クロム、タングステン、金、半田のいずれか1種以上を用いることができる。
【0139】
続いて、図3(d)に示すように、アルカリ性剥離液や硫酸または市販のレジスト剥離液等を用いて、レジスト204を除去する。
【0140】
続いて、図3(e)に示すように、電解金属めっき層208が形成されている領域以外領域(開口部210)における無電解金属めっき膜202を除去する。すなわち、電解金属めっき層208をマスクとして、下層の無電解金属めっき膜202を選択的に除去する。例えば、ソフトエッチング(フラッシュエッチング)等を用いることにより、無電解金属めっき膜202を除去することができる。ここで、ソフトエッチング処理は、例えば、硫酸および過酸化水素を含むエッチング液を用いたエッチングにより行うことができる。これにより、所定のパターンを有する金属層220を形成することができる。このように、セミアディティブプロセス(SAP)によって、本実施形態の樹脂膜の硬化物からなる絶縁層上に、無電解金属めっき膜202および電解金属めっき層208で構成される金属層220を形成することができる。
【0141】
さらに、コア層100および上記ビルドアップ層で構成されるプリント配線基板上に、必要に応じてビルドアップ層を積層して、セミアディティブプロセスにより層間接続および回路形成する工程を繰り返すことにより、多層にすることができる。
以上により、本実施形態のプリント配線基板が得られる。
【0142】
続いて、図3(f)に示すように、得られたプリント配線基板上に、必要に応じてビルドアップ層を積層して、セミアディティブプロセスにより層間接続および回路形成する工程を繰り返す。そして、必要に応じて、ソルダーレジスト層230をプリント配線基板の両面又は片面に積層する。
【0143】
ソルダーレジスト層230の形成方法は、特に限定されないが、例えば、ドライフィルムタイプのソルダーレジストをラミネートし、露光、および現像により形成する方法、または液状レジストを印刷したものを露光、および現像することにより形成する方法によりなされる。
【0144】
続いて、リフロー処理を行なうことによって、半導体素子240を配線パターンの一部である接続端子上に、半田バンプ250を介して固着させる。その後、半導体素子240、および半田バンプ250等を封止材層260で覆うように封止する。
以上により、図3(f)に示す、半導体パッケージ200が得られる。
【0145】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例0146】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0147】
(合成例1)シアネート樹脂A1の合成
ビスフェノールM 20gとメチルイソブチルケトン(以下MIBK)を80g仕込み、室温で攪拌溶解した。溶解後、-10℃まで冷却を行った。-10℃にて臭化シアン(以下BrCN)21.7g(純度95%、0.195mol)を投入し、内温が-15℃になったら、トリメチルアミン(以下TEA)20g(0.198mol)を1時間かけて滴下した。滴下後、さらに30分熟成し、さらに約2時間熟成させ反応を完結させた。
得られた溶液に、純水100mlを加えて分液し、さらに5%塩化水素水溶液(HCl)1100mlを加えて分液した。さらに、10%食塩水110gで2回洗浄分液し、純水100mlにて2回洗浄した。
有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水後、水分の真空除去し、24gの樹脂を得た。このようにして得られたビスフェノールM型シアネート樹脂は、赤外吸収スペクトル測定(島津製作所製IR Prestige-21、ATR法)により分析した。赤外吸収スペクトルチャートを図4に示す。図4からフェノール性水酸基の吸収帯である3300cm-1が消失し、シアネート基(-OCN基)の吸収帯である2237cm-1、2271cm-1を有することが確認された。次いで、温度170℃で、2時間加熱することでプレポリマー化させ、ビスフェノールM型シアネートの少なくとも一部がプレポリマー化されたシアネート樹脂A1を得た。
また、前記合成例で得たビスフェノールM型シアネートのプレポリマーを含むシアネート樹脂A1は、GPC(ゲルパーメーションクロマトグラフィー、東ソー株式会社製HLC-8120GPC、標準物質:ポリスチレン換算)を用いて分析を行った。図5にGPCチャートを示す。GPCチャートにより、分子量分布を確認した。さらに、シアネート樹脂A1のH-NMR測定を行った。
これらのことからシアネート樹脂A1(「以下の式で表されるビスフェノールM型シアネート」のプレポリマーを含む樹脂、シアネート当量:355g/eq)が得られていた。
【化10】
【0148】
[シアネート樹脂(シアネート樹脂(A)以外)]
・シアネート樹脂1:ノボラック型シアネート樹脂、ロンザ社製、製品名PT-30S(シアネート当量:132g/eq)
【0149】
[エポキシ樹脂(B)]
・エポキシ樹脂1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3500、日本化薬社製)
・エポキシ樹脂2:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-H、日本化薬社製)
【0150】
[高誘電フィラー(C)]
・高誘電フィラー1:チタン酸カルシウム(富士チタン工業社製、商品名「チタン酸カルシウム CT」、平均粒径2μm)
・高誘電フィラー2:チタン酸マグネシウム(共立マテリアル社製、商品名「MT-2」、平均粒径1.5μm)
・高誘電フィラー3:シロキサン処理酸化チタン(堺化学社製)
【0151】
[フィラー(D)]
・無機充填材1:シリカ粒子(アドマテックス社製、SC4050、平均粒径1.1μm)
【0152】
[マレイミド化合物(E)]
・マレイミド化合物1:ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物(日本化薬社製、MIR-3000-70T)
【0153】
[クマロン樹脂(F)]
・クマロン樹脂1:末端にフェノール基を含むインデン・クマロン・スチレン共重合体(日塗化学社製、V-120S、重量平均分子量:950、水酸基価:30mgKOH/g)
【0154】
[カップリング剤]
・カップリング剤1:N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM573)
【0155】
[硬化促進剤]
・硬化促進剤1:下記式で表される硬化促進剤(テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート)
【化11】
【0156】
<実施例1~7および比較例1~2>
(高誘電樹脂組成物の調製)
表1に示す固形分割合で各成分を溶解または分散させ、メチルエチルケトンで不揮発分70質量%となるように調整し、高速撹拌装置を用い撹拌して、ワニス状の高誘電樹脂組成物(樹脂ワニスP)を調製した。
なお、表1における各成分の配合割合を示す数値は、高誘電樹脂組成物の固形分全体に対する各成分の配合割合(質量%)を示している。
次いで、後述の各評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0157】
各実施例および各比較例において、得られた樹脂ワニスP(樹脂組成物)を用い、次のようにして、キャリア付き樹脂膜、プリプレグ、プリント配線基板、半導体パッケージを作成した。
【0158】
(キャリア付き樹脂膜:樹脂シートの作製)
厚み38μmのPETフィルムの片面に、コンマコーター装置を用いて乾燥後の樹脂層の厚みの総和が30μmとなるように、得られた樹脂ワニスPを塗工し、これを160℃の乾燥装置で3分間乾燥して、PETフィルム上に、樹脂膜が積層された樹脂シート(キャリア付き樹脂膜)を得た。
【0159】
(プリプレグ)
得られた樹脂ワニスを、ガラス織布(クロスタイプ♯1078、Eガラス、坪量47.5g/m2)に塗布装置で含浸させ、150℃の熱風乾燥装置で4分間乾燥して、厚さ80μmのプリプレグを得た。
【0160】
(積層板)
プリプレグの両面に極薄銅箔(三井金属鉱業社製、マイクロシンFL、1.5μm)を重ね合わせ、圧力3MPa、温度225℃で2時間加熱加圧成形することにより、金属箔付き積層板を得た。得られた金属箔付き積層板のコア層(樹脂基板からなる部分)の厚みは、0.080mmであった。
【0161】
(プリント配線板の作製)
前項で得られた金属箔付き樹脂基板の表面の極薄銅箔層に約1μmの粗化処理を施した後、炭酸ガスレーザーで、層間接続用のφ80μmのスルーホールを形成した。次いで、60℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に10分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレート コンパクト CP)に20分間浸漬後、中和してスルーホール内のデスミア処理を行った。次に、無電解銅メッキを厚さ0.5μmで行い、電解銅メッキ用レジスト層を厚さ18μm形成し、パターン銅メッキし、温度150℃時間30分加熱してポストキュアした。次いでメッキレジストを剥離し全面をフラッシュエッチングして、L/S=15/15μmのパターンを形成した残銅60%の内層コア回路基板を得た。
次いで、実施例で得られたプリプレグを前記内層コア回路基板の両面に配置し極薄銅箔(三井金属鉱業社製、マイクロシンFL、1.5μm)を重ね合わせ、圧力3MPa、温度225℃で2時間加熱加圧成形することにより、金属箔付き多層積層板を得た。
次に、得られた多層積層板に炭酸レーザーによりブラインドビアを形成した。ビア内部を60℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に10分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレート コンパクト CP:過マンガン酸ナトリウム濃度60g/l、NaOH濃度45g/l)に20分浸漬後、中和してビア内部のデスミア処理を行った。 これを脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅めっき皮膜を約0.5μm形成し、レジストを形成し、無電解銅めっき皮膜を給電層としてパターン電気めっき銅20μm形成させ、回路加工を施した。つぎに、熱風乾燥装置にて200℃で60分間アニール処理を行った後、フラッシュエッチングで給電層を除去した。次いで、ソルダーレジスト層を形成し、半導体素子搭載パッドなどが露出するように開口部を形成した。最後に、ソルダーレジスト層から露出した回路層上へ、無電解ニッケルめっき層3μmと、さらにその上へ、無電解金めっき層0.1μmとからなるめっき層を形成し、得られた基板を50mm×50mmサイズに切断し、プリント配線板を得た。
【0162】
(半導体パッケージの作製)
半導体パッケージは、得られたプリント配線基板上に半田バンプを有する半導体素子(TEGチップ、サイズ10mm×10mm、厚み0.1mm)を、フリップチップボンダー装置により、加熱圧着により搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP-4152S)を充填し、その後、液状封止樹脂を硬化させることで半導体パッケージを得た。尚、液状封止樹脂は、温度150℃、120分の条件で硬化させた。上記半導体素子の半田バンプは、Sn/Pb組成の共晶で形成されたものを用いた。最後に14mm×14mmのサイズにルーターで個片化し、半導体パッケージを得た。
【0163】
上記樹脂ワニスP(樹脂組成物)を用いて得られた、キャリア付き樹脂膜、プリント配線基板、および半導体パッケージについて、以下の評価項目に基づいて評価を行い、表2に示す判定基準に従い評価を行った。結果を表1に示した。
【0164】
(1)誘電率Dk、誘電正接Df
得られたキャリア付き樹脂膜の厚み30μmの樹脂膜を4枚重ね、銅箔を用いてホットプレスを用いて225℃、1kgf/mmのプレス条件で、2時間加熱加圧し、樹脂膜を硬化させた。次いで、得られた硬化物の銅箔をエッチングにより除去し、サンプルとして硬化物を製造した。
得られた硬化物について、10GHzでの誘電率、誘電正接を空洞共振器法で測定した。
【0165】
(2)ピール強度
ピール強度測定は、JISC6481に準拠して行った。尚、サンプルは得られた金属箔付き積層板を電気めっき銅30μmとしたものを用いた
【0166】
(3)ガラス転移温度
動的粘弾性装置を用いて、JISC-6481(DMA法)に準拠しておこなった。なお、サンプルは金属箔付き積層板をエッチングして銅を除去したものを用いた。
【0167】
(4)熱膨張係数
熱膨張係数は、TMA(熱機械的分析)装置(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて、4mm×20mmの試験片を作製し、温度範囲30~300℃、10℃/分、荷重5gの条件で2サイクル目の50~100℃における線膨張係数(CTE)を測定した。なお、サンプルは金属箔付き積層板をエッチングして銅を除去したものを用いた
【0168】
(5)レーザー加工性
上記のプリント配線板のビアホール底部の周囲を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し、得られた画像からビアホール底部の壁面からの最大スミア長を測定した。最大スミア長からスミア除去性について基準に従って評価した。また、メッキ染み込み長さを観察した。
【0169】
(6)成形性
成形性は、上記のプリント配線板の外層銅箔を全面エッチング後に内層パターンへの埋め込み性を目視、および断面観察を実施し基準に従って評価した。
【0170】
(7)吸湿半田耐熱
50mm×50mm角のサンプルの片面の半分以外の、金属箔付き積層板の全銅箔をエッチング除去し、プレシッヤークッカー試験機(エスペック社製)で121℃、2気圧で所定時間処理後、260℃の半田槽に60秒間フロートさせて、外観変化の異常の有無を目視にて観察し基準に従って評価した。
【0171】
(8)絶縁性
スルーホール絶縁信頼性は、上記のプリント配線板のスルーホール壁間を0.1mmで、印加電圧5.5V、温度130℃湿度85%の条件で、連続測定し、基準に従って評価した。なお、絶縁抵抗値が106Ω未満となる時点で終了とした。
【0172】
【表1】
【0173】
【表2】
【符号の説明】
【0174】
1 キャリア付樹脂膜
2 樹脂膜
4 キャリア基材
10 マイクロストリップアンテナ
12 誘電体基板
14 放射導体板
16 地導体板
20 樹脂膜
30 キャリア基材
50 カバーフィルム
100 コア層
102 絶縁層
104 ビアホール
106 無電解金属めっき膜
108 金属層
200 半導体パッケージ
202 無電解金属めっき膜
204 レジスト
206 開口部
208 電解金属めっき層
210 開口部
220 金属層
230 ソルダーレジスト層
240 半導体素子
250 半田バンプ
260 封止材層
図1
図2
図3
図4
図5