(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037321
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】菌根菌とそのパートナー細菌を活用した有機養液水耕栽培および有機養液土耕栽培、並びに有機養液水耕栽培下での菌根菌胞子およびパートナー細菌の生産
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240312BHJP
A01G 31/00 20180101ALI20240312BHJP
【FI】
A01G7/00 605A
A01G31/00 601A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142085
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】302018020
【氏名又は名称】石井 孝昭
(71)【出願人】
【識別番号】522019421
【氏名又は名称】松浦 孝裕
(71)【出願人】
【識別番号】520230488
【氏名又は名称】一般財団法人日本菌根菌財団
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝昭
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA12
2B314MA27
2B314MA55
2B314MA70
(57)【要約】 (修正有)
【課題】菌根菌とそのパートナー細菌とを活用した有機養液水耕栽培および有機養液土耕栽培に係る有機栽培方法を提供する。
【解決手段】化学合成農薬や化学肥料を大量に使用した、危険で健康を脅かす不安な現状の栽培技術から安心・安全で持続可能な有機栽培、あるいは化学合成農薬不使用で化学肥料を大幅に削減した作物生産技術が切望されている。パートナー細菌を施設内または圃場内で蔓延させ、化学合成農薬を使用せず、化学肥料不使用または大幅削減させ、安心・安全で良質な作物を持続的に生産可能となる。菌根菌とそのパートナー細菌を活用した有機養液水耕栽培下で作物生産を行い、菌根菌胞子およびパートナー細菌を生産するので、これらの生産もできる。このことは、施設栽培だけでなく、露地栽培においても施設内または圃場内に菌根菌やパートナー細菌のような有益微生物を蔓延させると、化学合成農薬や化学肥料を不使用にできることを物語っている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
菌根菌とそのパートナー細菌とを活用した有機養液水耕栽培および有機養液土耕栽培に係る有機栽培方法であって、
前記パートナー細菌を施設内または圃場内で蔓延させる、
ことを特徴とする有機栽培方法。
【請求項2】
菌根菌とそのパートナー細菌を活用した有機養液水耕栽培下で作物生産を行い、
前記菌根菌胞子および前記パートナー細菌を生産する、
ことを特徴とする有機栽培方法。
【請求項3】
Bacillus属におけるBacillus sp.(KTCIGME01)NBRC109633菌株、Bacillus属におけるBacillus thuringiensis(KTCIGME02)NBRC109634菌株、Paenibacillus属におけるPaenibacillus rhizosphaerae(KTCIGME03)NBRC109635菌株、およびPseudomonas属における、Pseudomonas sp.(KCIGC01)NBRC109613菌株の群より選択された少なくとも一種類以上のパートナー細菌と、
相同性が97%以上の微生物と、を含有する、有益微生物を用いる、
ことを特徴とする請求項1および2に記載の有機栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菌根菌とそのパートナー細菌を活用した有機養液水耕栽培および有機養液土耕栽培、並びに有機養液水耕栽培下での菌根菌胞子およびパートナー細菌の生産に関するものである。
【背景技術】
【0002】
欧米では有機農産物の生産を急速に増加させている。わが国でも「みどりの食料システム戦略」が立ち上げられ,有機農業を推進することが決定した。
【0003】
有機栽培を実現させるためには、菌根菌とそのパートナー細菌とはなくしては成り立たないことが筆者らの研究成果で明らかになっており(非特許文献1および非特許文献3参照)、さまざまな作物で菌根菌とそのパートナー細菌を活用した安心・安全で持続可能な作物栽培技術や環境緑化技術を確立していかなければならない。
【0004】
菌根菌の中でも、アーバスキュラー菌根菌(AMF)は最も古くて、4億6千万年前から植物と「持ちつ持たれつ」の関係、つまり「共生」を作り上げて、植物の光合成産物を得る見返りに、植物の養水分吸収を促進したり、植物の病害虫抵抗性や環境ストレス耐性を付与したりするなど、現在のほぼ全ての植物と共生し、植物の生育に多大な貢献をしている。この菌根菌を活用することによって、化学合成農薬や化学肥料の不使用が可能となり、安心・安全で持続可能な作物栽培や環境緑化を実現できることを石井は報告している(非特許文献3参照)。
【0005】
一方、パートナー細菌は、菌根菌の胞子内またはその周辺に生息する細菌であり、Bacillus sp.(KTCIGME01:NBRC109633、2013年5月8日受入)、Bacillus thuringiensis(KTCIGME02:NBRC109634、2013年5月8日受入)、Paenibacillus rhizosphaerae(KTCIGME03:NBRC109635、2013年5月8日受入)およびPseudomonas sp.(KCIGC01:NBRC109613、2013年4月12日受入)が同定されている(非特許文献1参照)。これらのパートナー細菌(相同性が97%以上のもの)は、1)菌根菌の生長を促進する、2)抗菌作用や殺虫作用を有す、3)窒素固定能やリン溶解能を持つ、4)有機物の腐熟促進効果を持つ、5)トイレ、畜舎などの消臭効果および蠅、蚊などの忌避効果があるので、公衆衛生に役立つ、などの効果を持つことが明らかになっている(非特許文献3参照)。
【0006】
これらの微生物に加えて、これらの微生物を増殖させるバヒアグラスのようなパートナー植物を用いることで、筆者は、世界に先駆けて、安心・安全で持続可能な有機水耕栽培技術を確立した(非特許文献2および特許文献1参照)。
【0007】
同時に、安心・安全で持続可能な有機養液水耕栽培であれば、栽培期間中AMFやパートナー細菌が増殖するのではないかと考えられるが、特許文献1では調査されていない。
【0008】
現在、AMFを使用した菌根菌接種源は、わが国などの先進国では販売されている。そのAMF胞子の製造方法は、1)植物根(非特許文献4参照)、2)毛状根という人為的に遺伝子変異を起こした根を用いる方法(非特許文献5、p.29-31参照)であり、AMF胞子の生産が容易で、安価に生産できるが、時間や手間がかかり、植物根の生長に左右されるので、胞子の生産性が不安定であるという問題がある。また、2)は遺伝子組み換え植物の根でのAMF胞子であるので、遺伝子汚染したAMF胞子による自然環境の破壊が深刻な問題となる(非特許文献5、p.29-31参照)。
【0009】
一方、石井・堀井は、菌根菌を人工の培地で単独で菌糸を増殖させ、胞子形成まで培養し、その胞子や菌糸が感染性を持つという菌根菌の純粋培養を、世界で初めて成功した(特許文献2、3、および非特許文献5、p.8-19参照)。この技術の成功は、学術的に極めて重要なことであり、菌根共生メカニズムの解明に大いに役立つことが考えらえる。また、石井・堀井はこの技術によるAMFの大量生産技術にも成功している(非特許文献5、p.8-19参照)。
【0010】
しかし、純粋培養技術による大量AMF胞子生産は、前述の植物根を用いたAMF胞子生産よりも、作業的にも煩雑で高度な技術を必要とするので、純粋培養で生産されたAMF胞子は非常に高価になる。そこで、純粋培養技術によるAMFの大量生産の事業化は控えられているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2015/041336号
【特許文献2】特許第4979551号公報
【特許文献3】特許第6030908号公報
【特許文献4】特許第6470811号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】石井孝昭、2012年、アーバスキュラー菌根菌およびその菌に関連する微生物とパートナー植物を活用した土壌管理に関する研究、IFOリサーチコミュニケーション、第26巻、p.87-100
【非特許文献2】石井孝昭、社納 葵、堀井幸江、2014年、アーバスキュラー菌根菌とそのパートナー細菌、並びにパートナー植物を用いた化学液肥および有機液肥の水耕栽培が数種類の園芸作物の生育に及ぼす影響、園芸学研究 第13巻(別1)p.169
【非特許文献3】石井孝昭、2014年、菌根菌の働きと使い方、農村文化協会出版、p.15-19、96
【非特許文献4】堀井幸江外、2007年、バヒアグラスを用いたアーバスキュラー菌根菌の簡便な胞子生産技術の開発、農業生産技術管理学会誌 第14巻(1)p.25―30
【非特許文献5】菌根菌ジャーナル、2020年、一般財団法人 日本菌根菌財団発行、第2巻 第1号、p.8-19(アーバスキュラー菌根菌の純粋培養技術の確立)、p.29-31(遺伝子変異が起きているアーバスキュラー菌根菌,Rhizophagus irregularisがわが国の自然環境を破壊する)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前述の世界初の有機水耕栽培技術(非特許文献2および特許文献1参照)では、パートナー植物不使用における栽培作物の生育や果実などの品質や、パートナー細菌のミスト装置などによる施設内全面噴霧、あるいはパートナー細菌入り有機養液の植物への葉面散布の効果についての調査が行われていない。
【0014】
また、植物工場のような施設では、強制的に無菌あるいはほぼ無菌下にして農薬不使用の作物栽培を行っているので、施設費や維持管理費が膨大であるため、国からの補助金がなければ、経営が成り立たないという植物工場運営の大きな問題となっている。
【0015】
一方、AMF胞子の生産において、前述の通り、植物根を用いた胞子生産が非常に安価で接種源を作製でき、高度な技術を必要としないという利点があるが、土壌粒子や小さなごみが残り、きれいな胞子を得るのはかなりの手間がかかるという問題がある。また、有機養液水耕栽培におけるパートナー細菌の増殖については調査されていない。
【0016】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、菌根菌を作物に共生させて、パートナー細菌を施設内などで蔓延させて、病害虫の侵入や発生を防ぎ、作物栽培を行う「植蔵」という新しい施設栽培技術を開発するとともに、この有機養液水耕栽培下で新しいAMF胞子生産方法やパートナー細菌の増殖方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明に係る有機栽培方法は、菌根菌とそのパートナー細菌とを活用した有機養液水耕栽培および有機養液土耕栽培に係る有機栽培方法であって、前記パートナー細菌を施設内または圃場内で蔓延させる、ことを特徴としている。また、菌根菌とそのパートナー細菌を活用した有機養液水耕栽培下で作物生産を行い、前記菌根菌胞子および前記パートナー細菌を生産する。Bacillus属におけるBacillus sp.(KTCIGME01)NBRC109633菌株、Bacillus属におけるBacillus thuringiensis(KTCIGME02)NBRC109634菌株、Paenibacillus属におけるPaenibacillus rhizosphaerae(KTCIGME03)NBRC109635菌株、およびPseudomonas属におけるPseudomonas sp.(KCIGC01)NBRC109613菌株の群より選択された少なくとも一種類以上の前記パートナー細菌と、相同性が97%以上の微生物とを含有する有益微生物を用いる。
【0018】
これら以外のパートナー細菌としては、Bacillus属、Paenibacillus属およびPseudomonas属の有益細菌でもかまわない。
【0019】
そして、施設(ハウス)内や露地において、菌根菌を共生させた作物を用い、有機養液には上述のパートナー細菌で発酵させたもの(特許文献4参照)を用いるとともに、パートナー細菌、あるいはパートナー細菌入り有機養液を定期的に噴霧し、施設内や露地でパートナー細菌にて蔓延させて、作物の生育増進や品質向上、並びに病害虫防除を図る有機栽培方法である。
【0020】
同時に、安心・安全で持続可能な有機養液水耕栽培であれば、栽培期間中菌根菌やパートナー細菌が増殖するので、イチゴ、レタス、トマトなどの有機養液水耕栽培下で新しい菌根菌胞子生産およびパートナー細菌の増殖を図る方法でもある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、化学合成農薬不使用で、化学肥料不使用あるいは大幅削減を図れる有機養液水耕栽培および有機養液土耕栽培が可能となる。
【0022】
また、例えば菌根菌を共生させた作物を用いて、パートナー細菌、あるいはこれらの細菌で発酵させた有機養液を用いた有機養液水耕栽培下で作物生産を行うとともに、新しい菌根菌胞子を大量生産でき、パートナー細菌の増殖も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】パートナー細菌で発酵させた有機液肥とAMF(Glomus clarumを使用)を用いたイチゴの有機養液土耕栽培において、パートナー細菌入り有機液肥をミスト散布中の写真である。
【
図2】パートナー細菌で発酵させた有機液肥とAMF(Glomus clarumを使用)を用いたイチゴの有機養液土耕栽培において、ミツバチが活発に受粉活動を行っている写真である。
【
図3】パートナー細菌で発酵させた有機液肥とAMF(Glomus clarumを使用)を用いたイチゴの有機養液水耕栽培において、AMFを接種した約4か月生苗の生育状態であり、パートナー細菌の葉面散布で病害虫による被害が全くみられないことを示す写真である。
【
図4】パートナー細菌で発酵させた有機液肥とAMF(Glomus clarumを使用)を用いたイチゴの有機養液水耕栽培において、AMFを接種した2年生苗の生育状態であり、パートナー細菌の葉面散布で病害虫による被害が全くみられないことを示す写真である。
【
図5】パートナー細菌で発酵させた有機液肥とAMF(Glomus clarumを使用)を用いた有機養液水耕栽培イチゴの果実肥大を示す表である。
【
図6】パートナー細菌で発酵させた有機液肥とAMF(Glomus clarumを使用)を用いた有機養液水耕栽培イチゴの果実品質を示す表である。
【
図7】パートナー細菌で発酵させた有機液肥とAMF(Glomus clarumを使用)を用いた有機養液水耕栽培レタス(定植約3週間後)およびトマト(定植約2か月後、着果がみられる)の生育状態を示す写真である。
【
図8】パートナー細菌で発酵させた有機液肥とAMF(Glomus clarumを使用)を用いた有機養液水耕栽培期間中、根の周辺に形成されたAMF新胞子(S)を示す写真である。
【
図9】パートナー細菌で発酵させた有機液肥とAMF(Glomus clarumを使用)を用いた有機養液水耕栽培養液から採取されたAMF新胞子(矢印)を示す写真である。
【
図10】パートナー細菌で発酵させた有機液肥とAMF(Glomus clarumを使用)を用いた有機養液水耕栽培期間中、養液内に生産された新しいAMF胞子数を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0025】
(1)パートナー細菌で発酵させた有機液肥とアーバスキュラー菌根菌(AMF:Glomus clarumを使用)を用いたイチゴの有機養液土耕栽培
AMF接種イチゴを定植する前、ハウス内をパートナー細菌(PB)溶液で全面噴霧し、ハウス内の病害虫を駆除した。その後、栽培期間中はパートナー細菌で発酵させた有機液肥(0.3mS/cm)をおよそ1週間間隔でミスト散布した(
図1)。なお、培土はパートナー細菌入り牛糞堆肥(菌根くん)が約5%を加えたものを使用した。この有機養液土耕栽培において、ミツバチには全く悪影響がみられず、活発に受粉活動を行っていた(
図2)。その結果、病害虫による被害が全くみられず、果実の品質が極めて良好であった。特に、試食者の全てが非常に美味しいイチゴであると語っていた。
【0026】
(2)パートナー細菌で発酵させた有機液肥とAMF(Glomus clarumを使用)を用いたイチゴの有機養液水耕栽培
AMFを接種したイチゴ苗を水耕栽培装置に定植した後、定期的にパートナー細菌入りの有機液肥(0.3mS/cm)を葉面散布した。なお、水槽内の養液EC濃度は、0.6mS/cmとした。その結果、病害虫の発生が全くみられず、旺盛に生育した(
図3および
図4)。特に、2年生苗でも生育が良好であった(
図4)。一般には、1年で苗の更新が行われるが、菌根菌とそのパートナー細菌を用いる場合には苗の1年更新でなくても良いことが明らかとなった。この水耕栽培法でのイチゴ果実の重量や糖酸度を測定したところ、慣行栽培とほとんど変わらないか、やや優る傾向がみられた(
図5および
図6)。しかし、食味については大きな差異がみられ、慣行栽培のイチゴでは「えぐ味」が感じられたが、有機養液水耕栽培イチゴでは「えぐ味」が全くなく、非常に美味しかった。「えぐ味」は、果実内の硝酸態窒素やカリの濃度が高いときに発生するので、現在、慣行の養液水耕栽培で推奨されている養液EC濃度が高いこと(1.5~2.0mS/cm)と関連があるものと考えられる。ちなみに、硝酸態窒素は癌、カリは腎臓病を誘発することが知られている。
【0027】
(3)パートナー細菌で発酵させた有機液肥とAMF(Glomus clarumを使用)を用いたレタスおよびトマトの有機養液水耕栽培
前述のイチゴの場合と同様に、有機養液EC濃度0.6mS/cmで、定期的にパートナー細菌入り有機液肥(0.3mS/cm)を葉面散布したところ、樹勢が旺盛で、病害虫の発生も全くみられなかった(
図7)。
【0028】
(4)パートナー細菌で発酵させた有機液肥とAMF(Glomus clarumを使用)を用いた有機養液水耕栽培期間中に生産されたAMF新胞子
有機養液水耕栽培期間中に根の周辺に数多くの新しいAMF胞子が形成されることが明らかとなった(
図8)。また、有機養液廃棄中に50μmメッシュのふるいを用いて、ふるいに残った新胞子を調査したところ、きれいな新胞子が数多く観察されたが、ごみは極めて少なかった(
図9)。さらに、水耕栽培用水槽内から採取された胞子数は、イチゴ、レタス、トマトともに多く、AMF新胞子が多数生息していた(
図10)。ちなみに、パートナー細菌数も、栽培期間の長さにもよるが、10
6~10
10個も増加していた。これらの結果は、化学合成農薬や化学肥料を使用している慣行養液水耕栽培や慣行養液土耕栽培では廃液の処分に多額の費用がかかっているが、本発明では、人畜や環境に悪影響を及ぼしている危険な化学合成農薬や化学肥料を用いない、有機養液水耕栽培技術および有機養液土耕栽培技術であるので、廃液中にはAMF新胞子やパートナー細菌が数多く生産されていた。それゆえ、この廃液の有効利用が望まれる。その有効利用の一つとして、栽培期間中、作物の根などから溶出されると思われる微量のいや地物質などの生長阻害物質をゼオライトなどに吸着(除去)させて、廃液を農地で再利用できることを示唆しているだけでなく、菌根菌やパートナー細菌の生産にも活用できることを明らかにしている。このように、菌根菌とそのパートナ細菌を活用した有機養液水耕栽培および有機養液土耕栽培は、これからの安心・安全で持続可能な作物生産のあり方を提起する画期的な栽培技術であると言える。