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特開2024-37332魚群探知装置、送波方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037332
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】魚群探知装置、送波方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/526 20060101AFI20240312BHJP
   G01S 15/96 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01S7/526 M
G01S15/96
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142109
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】高力 圭太
(72)【発明者】
【氏名】西久保 大輔
(72)【発明者】
【氏名】前田 正彦
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AB01
5J083AB03
5J083AC18
5J083AD01
5J083AD06
5J083AF16
5J083BA01
5J083BB12
5J083BE11
5J083BE19
5J083BE54
5J083EA09
5J083EA46
5J083EB05
(57)【要約】
【課題】2種類の周波数の送信波を送波する場合に、各周波数のエコー画像において他の周波数の干渉波に基づくノイズを抑制することが可能な魚群探知装置、送波方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】魚群探知装置100は、送受波器2から送信波を送波させる送信回路103と、送信波の受信信号に基づいて深度ごとのエコー強度を示すエコーデータを生成する受信回路104と、第1周波数の送信波の送波から受波までの受波期間に第1周波数とは異なる第2周波数の送信波の送波を行う第1送波サイクル、および、第2周波数の送信波の送波から受波までの受波期間に第1周波数の送信波の送波を行う第2送波サイクルが時間軸上で混在して並ぶように、送信回路103を制御する信号処理回路101と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受波器から送信波を送波させる送信回路と、
前記送信波の受信信号に基づいて深度ごとのエコー強度を示すエコーデータを生成する受信回路と、
第1周波数の前記送信波の送波から受波までの受波期間に前記第1周波数とは異なる第2周波数の前記送信波の送波を行う第1送波サイクル、および、前記第2周波数の前記送信波の送波から受波までの受波期間に前記第1周波数の前記送信波の送波を行う第2送波サイクルが時間軸上で混在して並ぶように、前記送信回路を制御する信号処理回路と、を備える、
ことを特徴とする魚群探知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の魚群探知装置において、
前記信号処理回路は、前記第1送波サイクルと前記第2送波サイクルとが交互に並ぶように、前記送信回路を制御する、
ことを特徴とする魚群探知装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の魚群探知装置において、
前記信号処理回路は、1つの前記送波サイクルの受波期間が終了した後、次の前記送波サイクルの送波が行われるよう、各々の前記送波サイクルにおける送波のタイミングを設定する、
ことを特徴とする魚群探知装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の魚群探知装置において、
前記信号処理回路は、
前記第1送波サイクルにおける前記第1周波数の前記送信波の送波と前記第2周波数の前記送信波の送波との間のインターバルを、直近の前記第1送波サイクル間で相違させ、
前記第2送波サイクルにおける前記第2周波数の前記送信波の送波と前記第1周波数の前記送信波の送波との間のインターバルを、直近の前記第2送波サイクル間で相違させる、
ことを特徴とする魚群探知装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の魚群探知装置において、
前記信号処理回路は、前記エコーデータのエコー強度を深度および時間を2軸とする座標領域にマッピングしたときに、深度が同じで時間的に隣り合う座標位置のエコー強度に基づいて、干渉波に基づくエコー強度を低減させる干渉ノイズ低減処理を、前記第1周波数および前記第2周波数についてそれぞれ実行する、
ことを特徴とする魚群探知装置。
【請求項6】
請求項5に記載の魚群探知装置において、
前記信号処理回路は、前記干渉ノイズ低減処理が適用された前記第1周波数および前記第2周波数の1画面分の前記エコー強度に基づいて、エコー画像を生成する、
ことを特徴とする魚群探知装置。
【請求項7】
第1周波数の送信波の送波から受波までの受波期間に前記第1周波数とは異なる第2周波数の送信波の送波を行う第1送波サイクル、および、前記第2周波数の送信波の送波から受波までの受波期間に前記第1周波数の送信波の送波を行う第2送波サイクルが時間軸上で混在して並ぶように、送受波器から水中に前記送信波を送波する、
ことを特徴とする送波方法。
【請求項8】
魚群探知装置のコンピュータに、
第1周波数の送信波の送波から受波までの受波期間に前記第1周波数とは異なる第2周波数の送信波の送波を行う第1送波サイクル、および、前記第2周波数の送信波の送波から受波までの受波期間に前記第1周波数の送信波の送波を行う第2送波サイクルが時間軸上で混在して並ぶように、送受波器から水中に前記送信波を送波する機能を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の魚群を探知する魚群探知装置、水中に送信波を送波するための送波方法、および水中に送信波を送波するための機能をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中の魚群を探知する魚群探知装置が知られている。この種の魚群探知装置では、送受波器から水中に超音波(送信波)が送波され、その反射波が送受波器で受波される。受波された反射波の強度に応じたエコーデータが生成され、生成されたエコーデータに基づいてエコー画像が表示される。エコー画像には、各水深の反射波の強度(エコー強度)が、対応する階調の色により表示される。ユーザは、エコー画像を参照することで、自船下方に存在する魚群を確認できる。
【0003】
しかしながら、送受波器には、他の装置から送波された超音波等、不要な干渉波が受波されることが起こり得る。この場合、干渉波に基づくノイズがエコー画像に映り込んでしまう。
【0004】
このようなノイズは、通常、同じ深度で連続的に生じにくい。このため、エコー画像を時間軸方向に走査した場合に、エコー強度が所定の閾値以上に変化すれば、その走査位置のエコー強度は干渉波に基づくものであると推定できる。したがって、推定されたエコー強度を最低階調に低減することで、干渉波に基づくノイズをエコー画像から除去できる。このような手法が、たとえば、以下の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-225650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構成の魚群探知装置では、周波数が異なる2種類の送信波を微小時間だけずらして送波し、周波数ごとにエコーデータを取得する制御が行われ得る。たとえば、有鰾魚と無鰾魚とでは、各周波数に対する反射特性が異なるため、各周波数におけるエコー強度に差が生じ得る。このため、たとえばエコー強度に基づき物標の魚種を判別する場合には、当該物標から得られた各周波数のエコー強度の差により、当該物標の魚種をより精度良く判別できる。
【0007】
しかしながら、このように2種類の周波数の送信波が微小時間だけずらして送波される場合、一方の送信波の受波において、他方の送信波に基づく干渉波が受波されることが起こり得る。この場合、当該干渉波に基づくノイズをエコー画像から除去するために、上記手法が適用され得る。しかし、この手法が適用された場合も、複数の干渉波が同じ深度で時間的に隣り合っていると、これら干渉波に基づくノイズをエコー画像から除去することができない。
【0008】
かかる課題に鑑み、本発明は、2種類の周波数の送信波を送波する場合に、各周波数のエコー画像において他の周波数の干渉波に基づくノイズをより効果的に抑制することが可能な魚群探知装置、送波方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、魚群探知装置に関する。本態様に係る魚群探知装置は、送受波器から送信波を送波させる送信回路と、前記送信波の受信信号に基づいて深度ごとのエコー強度を示すエコーデータを生成する受信回路と、第1周波数の前記送信波の送波から受波までの受波期間に前記第1周波数とは異なる第2周波数の前記送信波の送波を行う第1送波サイクル、および、前記第2周波数の前記送信波の送波から受波までの受波期間に前記第1周波数の前記送信波の送波を行う第2送波サイクルが時間軸上で混在して並ぶように、前記送信回路を制御する信号処理回路と、を備える。
【0010】
本態様に係る魚群探知装置によれば、深度および時間を2軸とする座標領域において、各周波数の干渉波のエコー強度が時間的に隣り合うことを抑制できる。このため、上述の処理により、干渉波によるエコー強度を座標領域から円滑に除去できる。よって、各周波数のエコー画像に他の周波数の干渉波に基づくノイズが含まれることを抑制できる。
【0011】
本態様に係る魚群探知装置において、前記信号処理回路は、前記第1送波サイクルと前記第2送波サイクルとが交互に並ぶように、前記送信回路を制御する構成とされ得る。
【0012】
この構成によれば、上記座標領域において、1送波サイクルおきの時間間隔で干渉波のエコー強度が現れるため、当該座標領域において、干渉波によるエコー強度が時間的に隣り合いにくくなる。このため、上述の処理により、干渉波によるエコー強度を座標領域から円滑に除去できる。よって、干渉波に基づくノイズをエコー画像に含まれることを確実に抑制できる。
【0013】
本態様に係る魚群探知装置において、前記信号処理回路は、1つの前記送波サイクルの受波期間が終了した後、次の前記送波サイクルの送波が行われるよう、各々の前記送波サイクルにおける送波のタイミングを設定する。
【0014】
この構成によれば、1つの送波サイクルの受波期間において、次の送波サイクルの送波による干渉波が生じることがない。よって、干渉波に基づくノイズがエコー画像に含まれることをより確実に抑制できる。
【0015】
本態様に係る魚群探知装置において、前記信号処理回路は、前記第1送波サイクルにおける前記第1周波数の前記送信波の送波と前記第2周波数の前記送信波の送波との間のインターバルを、直近の前記第1送波サイクル間で相違させ、前記第2送波サイクルにおける前記第2周波数の前記送信波の送波と前記第1周波数の前記送信波の送波との間のインターバルを、直近の前記第2送波サイクル間で相違させるよう構成され得る。
【0016】
この構成によれば、上記座標領域において、干渉波のエコー強度が同じ深度範囲に重なりにくくなる。このため、上述の処理により、干渉波によるエコー強度を円滑に除去できる。よって、干渉波に基づくノイズがエコー画像に含まれることをより確実に抑制できる。
【0017】
本態様に係る魚群探知装置において、前記信号処理回路は、前記エコーデータのエコー強度を深度および時間を2軸とする座標領域にマッピングしたときに、深度が同じで時間的に隣り合う座標位置のエコー強度に基づいて、干渉波に基づくエコー強度を低減させる干渉ノイズ低減処理を、前記第1周波数および前記第2周波数についてそれぞれ実行するよう構成され得る。
【0018】
この構成によれば、上述の第1送波サイクルおよび第2送波サイクルによる送波制御と相俟って、上述の処理により、干渉波によるエコー強度を円滑に除去できる。よって、干渉エコーに基づくノイズがエコー画像に含まれることを抑制できる。
【0019】
本態様に係る魚群探知装置において、前記信号処理回路は、前記干渉ノイズ低減処理が適用された前記第1周波数および前記第2周波数の1画面分の前記エコー強度に基づいて、エコー画像を生成するよう構成され得る。
【0020】
この構成によれば、干渉エコーによるノイズが抑制されたエコー画像を魚群探知装置において生成することができる。
【0021】
本発明の第2の態様は、送波方法に関する。この態様に係る送波方法は、第1周波数の送信波の送波から受波までの受波期間に前記第1周波数とは異なる第2周波数の送信波の送波を行う第1送波サイクル、および、前記第2周波数の送信波の送波から受波までの受波期間に前記第1周波数の送信波の送波を行う第2送波サイクルが時間軸上で混在して並ぶように、送受波器から水中に前記送信波を送波する。
【0022】
本発明の第3の態様は、魚群探知装置のコンピュータに所定の機能を実行させるプログラムに関する。この態様に係るプログラムは、第1周波数の送信波の送波から受波までの受波期間に前記第1周波数とは異なる第2周波数の送信波の送波を行う第1送波サイクル、および、前記第2周波数の送信波の送波から受波までの受波期間に前記第1周波数の送信波の送波を行う第2送波サイクルが時間軸上で混在して並ぶように、送受波器から水中に前記送信波を送波する機能を前記コンピュータに実行させる。
【0023】
第2および第3の態様によれば、上記第1の態様と同様の効果が奏され得る。
【発明の効果】
【0024】
以上のとおり、本発明によれば、2種類の周波数の送信波を送波する場合に、各周波数のエコー画像において他の周波数の干渉波に基づくノイズを抑制することが可能な魚群探知装置、送波方法およびプログラムを提供することができる。
【0025】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施形態に係る、魚群探知装置の使用形態を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る、魚群探知装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る、エコー画像の生成処理を示すフローチャートである。
図4図4は、比較例1に係る、第1周波数および第2周波数の送信波の送波方法を模式的に示す図である。
図5図5は、比較例1に係る、第1周波数の座標領域における、第2周波数の干渉エコー(エコー強度)の出現状態を模式的に示す図である。
図6図6は、比較例2に係る、第1周波数および第2周波数の送信波の送波方法を模式的に示す図である。
図7図7(a)は、比較例2に係る、第1周波数の座標領域における、第2周波数の干渉エコー(エコー強度)の出現状態を模式的に示す図である。図7(b)は、比較例2に係る、第1周波数の座標領域における、第2周波数の直接干渉波および多重反射干渉波の干渉エコー(エコー強度)の出現状態を模式的に示す図である。
図8図8は、実施形態に係る、第1周波数および第2周波数の送信波の送波方法を模式的に示す図である。
図9図9(a)は、実施形態に係る、第1周波数の座標領域における、第2周波数の直接干渉波および多重反射干渉波の干渉エコー(エコー強度)の出現状態を模式的に示す図である。図9(b)は、実施形態に係る、第2周波数の座標領域における、第1周波数の直接干渉波および多重反射干渉波の干渉エコー(エコー強度)の出現状態を模式的に示す図である。
図10図10(a)および図10(b)は、比較例2の送波方法を用いた場合に表示部に表示されたエコー画像の検証結果をそれぞれ示す図である。
図11図11(a)および図11(b)は、実施形態の送波方法を用いた場合に表示部に表示されたエコー画像の検証結果をそれぞれ示す図である。
図12図12は、変更例1に係る、第1周波数および第2周波数の送信波の送波方法を模式的に示す図である。
図13図13は、変更例2に係る、第1周波数および第2周波数の送信波の送波方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、実施形態に係る魚群探知装置の使用形態を示す図である。
【0029】
本実施形態では、船1の船底に送受波器2が設置され、送受波器2から水中に送信波3(超音波)が送波される。送信波3は、頂角が小さい円錐の形状で、鉛直下方向にパルス状に送波される。送信波3は、水底4や魚群5により反射され、反射波(エコー)が、送受波器2で受波される。1回の送信波3の送波に基づく反射波の受信信号により、深度方向に受信信号の信号強度(エコー強度)が分布するエコーデータが生成される。
【0030】
所定時間分のエコーデータが蓄積されることにより、深度方向における信号強度(エコー強度)の分布を示すエコー画像が生成される。エコー画像には、物標の強度分布が含まれる。生成された水中のエコー画像は、船1の操舵室等に設置されたモニター等の表示部に表示される。これにより、ユーザは、水中に存在する物標(水底4や魚群5など)を確認できる。
【0031】
図2は、魚群探知装置100の構成を示すブロック図である。
【0032】
魚群探知装置100は、図1に示した送受波器2の他、信号処理回路101と、メモリ102と、送信回路103と、受信回路104と、切替回路105と、入力部106と、表示部107と、を備える。
【0033】
信号処理回路101、メモリ102、送信回路103、受信回路104、切替回路105、入力部106、および表示部107は、船1の操舵室等に設置される。送受波器2を除く構成が、1つの筐体にユニット化されてもよく、あるいは、表示部107等の一部の構成要素が別体とされてもよい。切替回路105は、信号ケーブルによって、送受波器2に通信可能に接続される。
【0034】
送受波器2は、超音波の送波に用いられる送信器と、超音波の受波に用いられる受信器と、を備える。本実施形態では、送受波器2の送信器および受信器が、1つの超音波振動子21により構成されている。
【0035】
送信回路103は、信号処理回路101からの制御により、所定周波数の送信信号を、切替回路105を介して送受波器2の超音波振動子21に出力する。超音波振動子21は、送信信号に基づいて水中に超音波(送信波3)を送波する。また、超音波振動子21は、送波した超音波の反射波を受波し、反射波の強度に応じた大きさの受信信号を、切替回路105を介して受信回路104に出力する。切替回路105は、超音波振動子21に対する信号の送受を切り替える。
【0036】
受信回路104は、超音波振動子21からの受信信号に基づいて、深度ごとのエコー強度を示すエコーデータを生成する。具体的には、受信回路104は、超音波(送信波3)を送波したタイミングからの経過時間と、反射波の強度とを対応付けたデータをエコーデータとして生成し、生成したエコーデータを信号処理回路101に出力する。ここで、超音波を送信したタイミングからの経過時間は、深度に対応する。
【0037】
なお、反射波の強度は、深度が大きくなるほど減衰する。したがって、受信回路104は、深度の差異に拘わらずエコーデータを定量的に扱えるようにするために、経過時間に応じて減衰する反射波の強度を補正し、強度を補正したエコーデータを信号処理回路101に出力する。この補正処理は、受信回路104ではなく信号処理回路101で行われてもよい。
【0038】
信号処理回路101は、CPU等の演算処理回路や、FPGA等の集積回路により構成される。メモリ102は、ROM、RAM、ハードディスク等により構成される。メモリ102には、各種のプログラムが記憶されている。これらプログラムには、水中に送信波を送波するための機能や、エコーデータを処理して画像を生成する機能を信号処理回路101(コンピュータ)に実行させるプログラムが含まれている。また、メモリ102は、信号処理回路101の処理の際にワーク領域として用いられる。信号処理回路101は、メモリ102に記憶されたプログラムにより各部を制御する。水中に送信波を送波する処理は、追って、図8を参照して説明する。
【0039】
入力部106は、マウスやキーボード等の入力手段により構成され、ユーザからの入力を受け付ける。入力部106は、表示部107に一体化されたタッチパネルであってもよい。表示部107は、CRTモニターや液晶パネル等の表示器により構成され、信号処理回路101によって生成された画像を表示する。後述のように、表示部107には、エコーデータに基づいて生成されたエコー画像が表示される。
【0040】
信号処理回路101は、超音波(送信波3)の送波ごと(ピングごと)に、深度とエコー強度とを対応づけたエコーデータを取得する。信号処理回路101は、連続的に取得した1フレーム分(複数ピング分)のエコーデータに基づいて、エコー画像を生成し、表示部107に表示させる。エコー画像は、エコーダイアグラムと呼ばれることもある。エコー画像は、深度と時間とを2軸とする座標領域にエコー強度が分布する画像である。エコー画像では、画素ごとに、反射波の強度(エコー強度)に応じた階調で色付けまたは濃淡付けが施される。漁師等のユーザは、表示部107に表示されたエコー画像を参照することで、水中における魚群の位置および範囲を把握できる。
【0041】
本実施形態では、互いに周波数が異なる2種類の送信波が送受波器2から送波される。すなわち、信号処理回路101は、第1周波数の送信波および第1周波数とは異なる第2周波数の送信波を送信回路103に送波させる。第1周波数は、たとえば、200kHzであり、第2周波数は、たとえば、50kHzである。各周波数の反射波は、送受波器2で受波される。送受波器2からは、各周波数が重畳された受信信号が出力される。
【0042】
受信回路104は、第1および第2の周波数の受信信号をそれぞれ抽出するためのフィルタを備える。受信回路104は、切替回路105から入力される受信信号から第1周波数および第2周波数の信号成分を抽出して信号処理回路101に出力する。信号処理回路101は、抽出された各周波数の受信信号を処理して、周波数ごとにエコーデータを生成する。このように、2種類の周波数について受信信号をそれぞれ処理することにより、たとえば、上記のように、魚種判別等をより正確に行うことができ、あるいは、魚群が単一の魚種から構成されるか否かを判別できる。
【0043】
図3は、エコー画像の生成処理を示すフローチャートである。
【0044】
信号処理回路101は、図3の処理を周波数ごとに実行する。ここでは、便宜上、第1周波数に対する処理について説明する。
【0045】
信号処理回路101は、第1周波数の送信波が送受波器2から送波されるよう、送信回路103を制御する(S101)。当該送波に対する受波期間において、受信回路104は、第1周波数の受信信号を信号処理回路101に順次出力する。受波期間が終了すると(S102:YES)、信号処理回路101は、入力された受信信号からエコーデータを生成し、生成したエコーデータを、メモリ102上の1画面分のメモリ領域に記憶させて、1画面分のエコーデータを更新する(S103)。
【0046】
すなわち、メモリ102上には、深度および時間を2軸とする座標領域に対応するメモリ領域が設定されている。信号処理回路101は、今回の処理までにこのメモリ領域に記憶されていたエコーデータを時間の古い方向に1単位だけシフトさせ、今回取得したエコーデータを最新の時間位置に記憶させる。こうして、信号処理回路101は、1画面分のエコーデータを更新する。
【0047】
信号処理回路101は、更新した1画面分のエコーデータに対して、干渉ノイズ低減処理を行う(S104)。干渉ノイズ低減処理では、更新後の1画面分のエコーデータが各深度位置において時間軸方向に走査され、エコー強度が所定の閾値以上に変化する走査位置が検出される。さらに、検出された走査位置から深度方向に所定長さ以上同様のエコー強度が連続する範囲が検出される。こうして検出された範囲が、干渉波に対応する範囲であると推定され、この範囲のエコー強度が最小階調のエコー強度に低減される。これにより、干渉ノイズ低減処理が完了する。
【0048】
干渉ノイズ低減処理は、更新後の1画面分のエコーデータのうち、メモリ領域に新たに追加された1列分のエコーデータ(最新のエコーデータ)と、このエコーデータに対して1単位だけ古い1列分のエコーデータとを対象に行われてもよい。
【0049】
信号処理回路101は、干渉ノイズ低減処理を施した1画面分のエコーデータからエコー画像を生成する(S105)。第1周波数の送信波に基づくエコー画像が表示部107に表示されるモードがユーザにより選択されている場合、信号処理回路101は、ステップS105で生成したエコー画像を表示部107に新たに表示させる。これにより、表示部107に表示されるエコー画像が更新される。
【0050】
信号処理回路101は、エコー画像の表示動作が終了するまで(S106:NO)、ステップS101以降の処理を繰り返し実行する。これにより、エコー画像が随時更新されて表示部107に表示される。
【0051】
ところで、上記のように第1周波数および第2周波数の送信波が送波される場合、一方の送信波の受波において、他方の送信波に基づく干渉波が受波されることが起こり得る。たとえば、第1周波数(たとえば、高周波)の送信波の送波が先に行われた後、この送波に対する受波期間において、第2周波数(たとえば、低周波)の送信波の送波が行われると、第2周波数の送信波の干渉波(表層付近の水泡等で反射された直接波の高調波成分)が送受波器2によって受波される。この場合、この干渉波が第1周波数と同じ周波数帯域であると、受信回路104内の第1周波数用のフィルタではこの干渉波が除去されず、この干渉波に基づく信号が受信信号に重畳されてしまう。これにより、この干渉波に基づくエコー強度が第1周波数用の1画面分のエコーデータに含まれてしまう。
【0052】
同様に、第2周波数(たとえば、低周波)の送信波の送波が先に行われた後、この送波に対する受波期間において、第1周波数(たとえば、高周波)の送信波の送波が行われると、第1周波数の送信波の干渉波(直接波の1/n倍の周波数成分)が送受波器2によって受波される。この場合、この干渉波が第2周波数と同じ周波数帯域であると、受信回路104内の第2周波数用のフィルタではこの干渉波が除去されず、この干渉波に基づく信号が受信信号に重畳されてしまう。これにより、この干渉波に基づくエコー強度が第2周波数用の1画面分のエコーデータに含まれてしまう。
【0053】
また、干渉波の強度が受信回路104に飽和が生じるほどの大きさであると、受信信号が様々な周波数成分を持つこととなる。この場合も、これらの周波数成分のうち第1周波数または第2周波数と同じ周波数成分はフィルタでは除去されず、この周波数成分に基づくエコー強度が第1周波数または第2周波数用の1画面分のエコーデータに含まれてしまう。
【0054】
この場合、干渉波に基づくエコーが同じ深度で時間的に隣り合わなければ、図3のステップS104における干渉ノイズ低減処理により、干渉波に基づくエコー強度が1画面分のエコーデータから除去され得る。しかし、干渉波に基づくエコー強度が同じ深度で時間的に隣り合うと、図3のステップS104における干渉ノイズ低減処理では、これら干渉波に基づくエコー強度を除去することはできない。
【0055】
図4は、比較例1に係る、第1周波数および第2周波数の送信波の送波方法を模式的に示す図である。
【0056】
図4において、第1周波数の送信波の送波タイミングは、ハッチングが付された疑似長方形で示され、第2周波数の送信波の送波タイミングは、白抜きの疑似長方形で示されている。図4では、第1周波数の送信波の送波および第2周波数の送信波の送波が、それぞれ4回ずつ行われている。図4に示す期間の前後においても、同様の送波サイクルが繰り返される。
【0057】
比較例1では、第1周波数(たとえば、高周波)の送信波の送波が先に行われた後、この送波に対する受波期間T1において、第2周波数(たとえば、低周波)の送信波の送波が行われる。第2周波数の送信波の受波期間T2においては、第1周波数の送信波の送波は行われない。このような第1周波数および第2周波数の送信波の送波サイクルが、繰り返し行われる。第1周波数の送信波の送波と第2周波数の送信波の送波との間のインターバルΔTは、送波サイクル間で不変(何れのサイクルも同じ)である。
【0058】
この送波方法では、受波期間T1に第2周波数の送信波が送波されるため、上記のとおり、第2周波数の送信波に基づく干渉波のエコー(干渉エコーE2)が、受波期間T1において受波される。このとき、インターバルΔTは一定であるため、干渉エコーが受波されるタイミングは、送波サイクル間で同じとなりやすい。
【0059】
図5は、比較例1の送信方法が適用された場合の、第1周波数の座標領域における、第2周波数の干渉エコー(エコー強度)の出現状態を模式的に示す図である。
【0060】
図5には、深度および時間を2軸とする座標領域にエコーデータをマッピングした状態が示されている。図5において、1つの破線は、1送波サイクルにおける第1周波数の1列分のエコーデータを示している。E2(k)は、k番目の送波サイクルにおいて、第1周波数の1列分のエコーデータに第2周波数の干渉エコーE2のエコー強度が重畳された深度範囲を示している。
【0061】
上記のように、図4の送波サイクルでは、インターバルΔTが送波サイクル間で同じであるため、図5に示すように、干渉エコーE2のエコー強度は、同じ深度の範囲に現れやすい。このため、干渉エコーE2のエコー強度は、同じ深度範囲で時間的に隣り合いやすい。他方、図3のステップS104における干渉ノイズ低減処理は、上記のように、1画面分のエコーデータを各深度位置において時間軸方向に走査し、エコー強度が所定の閾値以上に変化する走査位置を干渉エコーが存在する位置と推定するものである。このため、図5のように、干渉エコーE2のエコー強度が同じ深度範囲で隣り合う場合、これらの干渉エコーE2のエコー強度を干渉ノイズ低減処理によりエコーデータから除去することはできない。
【0062】
図6は、比較例2に係る、第1周波数および第2周波数の送信波の送波方法を模式的に示す図である。
【0063】
比較例2では、第1周波数の送信波の送波と第2周波数の送信波の送波との間のインターバルΔTが、直近の送波サイクル間で相違するよう設定されている。図6の例では、連続する4つの送波サイクルに、互いに異なるインターバルΔTa、ΔTb、ΔTc、ΔTdがそれぞれ設定されている。5つ目以降の送波サイクルには、図6の4つのインターバルΔTa、ΔTb、ΔTc、ΔTdがサイクリックに適用されてよく、あるいは、さらに異なるインターバルが適用されてもよい。
【0064】
図7(a)は、比較例2の送信方法が適用された場合の、第1周波数の座標領域における、第2周波数の干渉エコー(エコー強度)の出現状態を模式的に示す図である。
【0065】
図5と同様、図7(a)には、深度および時間を2軸とする座標領域にエコーデータをマッピングした状態が示されている。便宜上、図7(a)では、各列のエコーデータを示す破線が省略されている。また、図7(a)において、E2a、E2b、E2c、E2dは、それぞれ、連続する4つの送波サイクルにおいてインターバルΔTa、ΔTb、ΔTc、ΔTdで送波された第2周波数の送信波の干渉エコーを示している。
【0066】
比較例2では、図6のように、連続する4つの送波サイクルに、互いに異なるインターバルΔTa、ΔTb、ΔTc、ΔTdがそれぞれ設定されるため、図7(a)に示すように、干渉エコーE2のエコー強度は、互いに異なる深度の範囲に生じやすい。このため、これらエコー強度は、図7(a)に示すように、時間軸方向に隣り合うことが起こりにくい。
【0067】
しかしながら、第2周波数の干渉波は、表層付近の水泡等で反射されて送受波器2に受波される干渉波(以下、「直接干渉波」という)の他、水底と船との間、あるいは水底と水面との間で多重反射した後、送受波器2に受波される干渉波(以下、「多重反射干渉波」という)がある。このため、第1周波数の座標領域には、さらに、第2周波数の多重反射干渉波のエコー強度が現れ得る。
【0068】
図7(b)は、比較例2の送信方法が適用された場合の、第1周波数の座標領域における、第2周波数の直接干渉波および多重反射干渉波の干渉エコー(エコー強度)の出現状態を模式的に示す図である。
【0069】
図7(b)では、図7(a)の直接干渉波の干渉エコーE2a~E2とともに、図6の1~3番目の第2周波数の送波による多重反射干渉波の干渉エコーE2a’~E2c’が示されている。
【0070】
比較例2の送波サイクルのように、連続する4つの送波サイクルに、互いに異なるインターバルΔTa、ΔTb、ΔTc、ΔTdがそれぞれ設定されると、図7(a)に示すように、直接干渉波の干渉エコーE2a~E2dが時間的に隣り合うことが抑制される。しかしながら、この場合、図7(b)に示すように、多重反射干渉波の干渉エコーE2a’~E2c’が時間的に隣り合うことがあり、また、直接干渉波の干渉エコーE2a~E2dと多重反射干渉波の干渉エコーE2a’~E2c’とが時間的に隣り合う場合もある。このため、比較例2のようにサイクル間でインターバルを相違させても、第2周波数の干渉エコー(直接干渉波、多重反射干渉波)のエコー強度を干渉ノイズ低減処理によりエコーデータから確実に除去することはできない。
【0071】
このような問題を解消するため、本実施形態では、直接干渉波および多重反射干渉波による干渉エコーのエコー強度を、各周波数のエコーデータからより確実に除去することが可能な送波方法が用いられる。
【0072】
図8は、実施形態に係る、送信回路103に対する信号処理回路101の制御により行われる、第1周波数および第2周波数の送信波の送波方法を模式的に示す図である。
【0073】
実施形態の送波方法では、第1周波数の送信波の送波から受波までの受波期間T1に第2周波数の送信波の送波を行う第1送波サイクルC1、および、第2周波数の送信波の送波から受波までの受波期間T2に第1周波数の送信波の送波を行う第2送波サイクルC2が時間軸上で混在して並ぶように、各周波数の送信波の送波が行われる。
【0074】
図8の例では、第1送波サイクルC1と第2送波サイクルC2とが交互に並ぶように、各周波数の送信波の送波が行われる。図8の送波サイクル以降も、第1送波サイクルC1と第2送波サイクルC2とが交互に並ぶように、各周波数の送信波の送波が行われる。
【0075】
また、1つの送波サイクルの受波期間が終了した後、次の送波サイクルの送波が行われる。より詳細には、第1送波サイクルC1の受波期間T2が終了した後、第2送波サイクルC2の送波が行われ、第2送波サイクルC2の受波期間T1が終了した後、第1送波サイクルC1の送波が行われる。
【0076】
第1送波サイクルC1における第1周波数の送信波の送波と第2周波数の送信波の送波との間のインターバルΔTa1、ΔTb1を、直近の第1送波サイクルC1間で相違させる。また、第2送波サイクルC2における第2周波数の送信波の送波と第1周波数の送信波の送波との間のインターバルΔTa2、ΔTb2を、直近の第2送波サイクルC2間で相違させる。
【0077】
図8の送波方法では、第1送波サイクルC1では、第1周波数の受波期間T1に第2周波数の送波が行われるため、第1周波数のエコーデータには第2周波数の干渉エコーのエコー強度が重畳されるが、第2周波数のエコーデータには第1周波数の干渉エコーのエコー強度は重畳されない。また、第2送波サイクルC2では、第2周波数の受波期間T2に第1周波数の送波が行われるため、第2周波数のエコーデータには第1周波数の干渉エコーのエコー強度が重畳されるが、第1周波数のエコーデータには第2周波数の干渉エコーのエコー強度は重畳されない。
【0078】
図9(a)は、実施形態に係る送信方法が適用された場合の、第1周波数の座標領域における、第2周波数の直接干渉波および多重反射干渉波の干渉エコー(エコー強度)の出現状態を模式的に示す図である。図9(b)は、実施形態に係る送信方法が適用された場合の、第2周波数の座標領域における、第1周波数の直接干渉波および多重反射干渉波の干渉エコー(エコー強度)の出現状態を模式的に示す図である。
【0079】
図5と同様、図9(a)、(b)には、深度および時間を2軸とする座標領域に第1周波数および第2周波数のエコーデータをそれぞれマッピングした状態が示されている。便宜上、図9(a)、(b)では、各列のエコーデータを示す破線が省略されている。
【0080】
図9(a)において、E2a1、E2b1は、図8の1番目および3番目の第1送波サイクルC1における第2周波数の直接干渉波のエコー強度が第1周波数のエコーデータに重畳される深度範囲を示し、E2a1’、E2b1’は、図8の1番目および3番目の第1送波サイクルC1における第2周波数の多重反射干渉波のエコー強度が第1周波数のエコーデータに重畳される深度範囲を示している。
【0081】
図9(b)において、E2a2、E2b2は、図8の2番目および4番目の第2送波サイクルC2における第1周波数の直接干渉波のエコー強度が第2周波数のエコーデータに重畳される深度範囲を示し、E2a2’、E2b2’は、図8の2番目および4番目の第2送波サイクルC2における第1周波数の多重反射干渉波のエコー強度が第2周波数のエコーデータに重畳される深度範囲を示している。
【0082】
図8の送波方法では、隣り合う2つの第1送波サイクルC1の間に第2送波サイクルC2が存在するため、1送波サイクルおきに、第1周波数の受波期間T1に第2周波数の干渉波が生じる。このため、図9(a)に示すように、第1周波数の座標領域には、1サイクルおきの時間間隔G0で、第2周波数の直接干渉波の干渉エコーE2a1、E2b1および多重反射干渉波の干渉エコーE2a1’、E2b1’が現れる。したがって、図8の送波方法では、図7(b)の比較例2の送波方法に比べ、時間間隔G0において干渉エコーが抜け分だけ、干渉エコーの密度が減少し、干渉エコーのエコー強度が時間的に隣り合うことが起こりにくくなる。これにより、図8の送波方法では、図3の干渉ノイズ低減処理により、第2周波数の干渉エコーのエコー強度が、第1周波数のエコーデータから除去されやすくなる。
【0083】
図9(b)に示すように、第2周波数のエコーデータにおいても、1送波サイクルおきの時間間隔G0で、第1周波数の直接干渉波の干渉エコーE2a2、E2b2および多重反射干渉波の干渉エコーE2a2’、E2b2’が現れる。このため、第2周波数の座標領域における第1周波数の干渉エコーの密度は、図9(a)に示した第1周波数の場合と同様となる。したがって、図8の送波方法では、図3の干渉ノイズ低減処理により、第1周波数の干渉エコーのエコー強度が、第2周波数のエコーデータから除去されやすい。
【0084】
なお、図8に示した第1送波サイクルC1のインターバルは、連続する所定数の第1サイクルにおいて互いに相違すればよく、以降の第1サイクルでは、同様のインターバルがサイクリックに繰り返されればよい。同様に、第2送波サイクルC2のインターバルは、連続する所定数の第2サイクルにおいて互いに相違すればよく、以降の第2サイクルでは、同様のインターバルがサイクリックに繰り返されればよい。上記所定数および各インターバルの長さは、各々の周波数の座標領域において、直接干渉波および多重反射干渉波によるエコー強度が時間的に隣り合うことを適切に抑制し得る数および長さに設定されればよい。
【0085】
<検証>
発明者らは、上記比較例2の送波方法および上記実施形態の送波方法を用いた場合の干渉エコーの生じ方を、実験により確認した。
【0086】
図10(a)、(b)は、比較例2の送波方法を用いた場合に表示部107に表示されたエコー画像を示す図である。図10(a)は、第1周波数(高周波)の送信波に基づくエコー画像を示し、図10(b)は、第2周波数(低周波)の送信波に基づくエコー画像を示している。
【0087】
図10(b)に示すように、比較例2の送波方法では、第2周波数のエコー画像に第1周波数の干渉波に基づくノイズが映り込まなかった。これは、図6に示したように、第2周波数の受波期間T2では第1周波数の送信波が送波されないため、第2周波数のエコーデータには、第1周波数の干渉波(直接干渉波、多重反射干渉波)のエコー強度が重畳されないためである。
【0088】
これに対し、図10(a)に示すように、比較例2の送波方法では、第1周波数のエコー画像に第2周波数の干渉波に基づくノイズがかなり映り込んだ。これは、図6に示したように、第1周波数の全ての受波期間T1において第2周波数の送信波が送波されるため、受波期間T1ごとに、第2周波数の干渉波(直接干渉波、多重反射干渉波)のエコー強度が第1周波数のエコーデータに重畳されるためである。すなわち、この場合は、図7(b)を参照して説明したように、これら干渉波のエコー強度は干渉ノイズ低減処理(図3のステップS104)により除去されにくい。このため、図10(a)のように、第1周波数のエコー画像に第2周波数の干渉波に基づくノイズがかなり映り込んでしまう。
【0089】
図11(a)、(b)は、実施形態の送波方法を用いた場合に表示部107に表示されたエコー画像を示す図である。図10(a)は、第1周波数(高周波)の送信波に基づくエコー画像を示し、図10(b)は、第2周波数(低周波)の送信波に基づくエコー画像を示している。
【0090】
図11(b)に示すように、実施形態の送波方法では、第2周波数のエコー画像に第1周波数の干渉波に基づくノイズが殆ど映り込まなかった。また、図11(a)に示すように、第1周波数のエコー画像では、図11(b)の第2周波数のエコー画像に比べてわずかに第2周波数の干渉波に基づくノイズが映り込んだものの、図10(a)に示す比較例2の場合に比べて、第2周波数の干渉波に基づくノイズが顕著に抑制された。これは、図9(a)、(b)を参照して説明したように、第1周波数および第2周波数のそれぞれの座標領域において、これら干渉波のエコー強度の密度が低下したため、これら干渉波のエコー強度を干渉ノイズ低減処理(図3のステップS104)により、ほぼ除去できたためである。
【0091】
このように、実施形態の送波方法によれば、一方の周波数のエコーデータに対する他方の周波数の干渉波の影響をより確実に抑制できることが確認できた。これにより、各周波数のエコー画像において他の周波数の干渉波に基づくノイズを確実に抑制できることを確認できた。
【0092】
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
【0093】
図8に示したように、信号処理回路101は、第1周波数の送信波の送波から受波までの受波期間T1に第1周波数とは異なる第2周波数の送信波の送波を行う第1送波サイクルC1、および、第2周波数の送信波の送波から受波までの受波期間T2に第1周波数の送信波の送波を行う第2送波サイクルC2が時間軸上で混在して並ぶように、送信回路103を制御する。これにより、深度および時間を2軸とする座標領域において、各周波数の干渉波のエコー強度が時間的に隣り合うことを抑制できる。このため、干渉ノイズ低減処理(S104)により、これら干渉波のエコー強度を円滑に除去できる。よって、各周波数のエコー画像において他の周波数の干渉波に基づくノイズを抑制することができる。
【0094】
図8に示したように、信号処理回路101は、第1送波サイクルC1と第2送波サイクルC2とが交互に並ぶように、送信回路103を制御する。これにより、各周波数の座標領域において、1送波サイクルおきの時間間隔で干渉波のエコー強度が現れるため、当該座標領域において、干渉波によるエコー強度が時間的に隣り合いにくくなる。このため、干渉ノイズ低減処理(S104)により、干渉波によるエコー強度を円滑に除去できる。よって、図11(a)、(b)に示したように、干渉波に基づくノイズをエコー画像から確実に除去することができる。
【0095】
図8に示したように、信号処理回路101は、1つの送波サイクルの受波期間が終了した後、次の送波サイクルの送波が行われるよう、各々の送波サイクルにおける送波のタイミングを設定する。これにより、1つの送波サイクルの受波期間において、次の送波サイクルの送波による干渉波が生じることがない。よって、エコー画像に対する干渉波の影響をより確実に抑制できる。
【0096】
図8に示したように、信号処理回路101は、第1送波サイクルC1における第1周波数の送信波の送波と第2周波数の前記送信波の送波との間のインターバルΔTa1、ΔTa2を、直近の第1送波サイクルC1間で相違させ、第2送波サイクルC2における第2周波数の送信波の送波と第1周波数の送信波の送波との間のインターバルΔTa2、ΔTb2を、直近の第2送波サイクルC2間で相違させる。これにより、図9(a)、(b)に示したように、各周波数の座標領域において、干渉波のエコー強度が同じ深度範囲に重なりにくくなる。このため、干渉ノイズ低減処理(S104)により、干渉波によるエコー強度を円滑に除去できる。よって、干渉波に基づくノイズをエコー画像からより確実に除去することができる。
【0097】
図3に示したように、信号処理回路101は、エコーデータのエコー強度を深度および時間を2軸とする座標領域にマッピングしたときに、深度が同じで時間的に隣り合う座標位置のエコー強度に基づいて、干渉波に基づくエコー強度を低減させる干渉ノイズ低減処理(S103)を、第1周波数および第2周波数についてそれぞれ実行する。これにより、図9(a)、(b)のように、1サイクルおきの時間間隔G0で直接干渉波および多重反射干渉波の干渉エコーが生じた場合に、これら干渉エコーを、干渉ノイズ低減処理により円滑に除去できる。よって、図11(a)、(b)に示したように、干渉エコーによるノイズが抑制されたエコー画像を生成できる。
【0098】
図3に示したように、信号処理回路101は、干渉ノイズ低減処理(S104)が適用された第1周波数および第2周波数の1画面分のエコー強度に基づいて、エコー画像を生成する(S105)。これにより、図11(a)、(b)に示したように、干渉エコーによるノイズが除去されたエコー画像を生成できる。
【0099】
なお、ステップS105で生成された各周波数のエコー画像は、必ずしも、両方が表示部107に表示されなくてもよい。たとえば、第1周波数のエコー画像のみが表示部107に表示され、第2周波数のエコー画像は、魚群について、第1周波数のエコー強度と第2周波数のエコー強度との差分を算出するために用いられてもよい。また、何れの周波数のエコー画像を表示部107に表示させるかを、ユーザが適宜切り替え可能であってもよい。
【0100】
<変更例1>
上記実施形態では、図8に示したように、第1送波サイクルC1における第1周波数の送信波の送波と第2周波数の送信波の送波との間のインターバルΔTa1、ΔTb1が、直近の第1送波サイクルC1間で相違し、第2送波サイクルC2における第2周波数の送信波の送波と第1周波数の送信波の送波との間のインターバルΔTa2、ΔTb2が、直近の第2送波サイクルC2間で相違した。これに対し、変更例1では、図12に示すように、これらのインターバルΔTが同一となっている。
【0101】
変更例1の送波方法においても、第1送波サイクルC1と第2送波サイクルC2とが交互に並ぶため、上記実施形態と同様、各周波数の座標領域には、1サイクルおきの時間間隔G0で直接干渉波および多重反射干渉波のエコー強度が重畳される。したがって、これら座標領域において、干渉波のエコー強度が時間的に隣り合うことが抑制されるため、干渉ノイズ低減処理により、干渉波のエコー強度が除去されやすくなる。よって、干渉エコーによるノイズが抑制されたエコー画像を生成できる。
【0102】
なお、上記実施形態のように、インターバルを相違させた方が、各周波数の座標領域において、干渉波のエコー強度が時間的に隣り合うことがさらに抑制され得る。よって、干渉エコーによるノイズをエコー画像からより確実に除去するためには、上記実施形態のように、直近の第1送波サイクルC1間でインターバルを相違させ、且つ、直近の第2送波サイクルC2間でインターバルを相違させることが好ましいと言える。これにより、干渉エコーによるノイズがより抑制されたエコー画像を生成できる。
【0103】
<変更例2>
上記実施形態では、図8に示したように、第1送波サイクルC1と第2送波サイクルC2とが交互に並ぶように、送信回路103が制御されたが、第1送波サイクルC1と第2送波サイクルC2とが時間軸上で混在して並ぶ限りにおいて、他の方法で第1送波サイクルC1と第2送波サイクルC2とが並んでもよい。
【0104】
たとえば、図13に示すように、第1送波サイクルC1、第2送波サイクルC2、第2送波サイクルC2および第1送波サイクルC1の順で各送波サイクルが並べられ、以降、この順番による配列がサイクリックに繰り返されてもよい。
【0105】
図13の送波方法では、第1周波数の受波期間T1に生じる第2周波数の干渉エコーE2の時間間隔は、3つの送波サイクルに対応する時間間隔となる場合と、1つの送波サイクルに対応する時間間隔となる場合とがある。同様に、第2周波数の受波期間T2に生じる第1周波数の干渉エコーE1の時間間隔は、3つの送波サイクルに対応する時間間隔となる場合と、1つの送波サイクルに対応する時間間隔となる場合とがある。
【0106】
このため、1つの送波サイクルに対応する時間間隔で生じた干渉エコーのエコー強度は、上記実施形態の送波方法の場合よりも時間的に隣り合いやすくなるものの、3つの送波サイクルに対応する時間間隔で生じた干渉エコーのエコー強度は、上記実施形態の送波方法の場合よりもさらに時間的に隣り合いにくくなる。よって、少なくとも、3つの送波サイクルに対応する時間間隔で生じた干渉エコーのエコー強度は、上記実施形態の送波方法の場合よりも、干渉ノイズ低減処理で除去されやすくなる。
【0107】
第1送波サイクルC1および第2送波サイクルC2の配列は、第1周波数および第2周波数のエコー画像から他の周波数の干渉波によるノイズを効果的に除去できる配列に設定されればよい。これにより、各周波数のエコー画像の品質を高めることができる。
【0108】
<その他の変更例>
本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく、また、本発明の実施形態も、上記の他に種々の変更が可能である。
【0109】
たとえば、上記実施形態では、第1周波数が高周波(200kHz)、第2周波数が低周波(50kHz)であったが、第1周波数が低周波で、第2周波数が高周波であってもよい。また、第1周波数および第2周波数は、200kHzおよび50kHzでなくてもよく、他の周波数であってもよい。なお、第1周波数、第2周波数に加えて、さらに異なる第3周波数を含むような例えば3種類以上の周波数の送信波を送波する場合にも、効果があることは言うまでもない。
【0110】
また、上記実施形態では、船1に搭載される魚群探知装置100に本発明を適用した例が示されたが、本発明の適用対象はこれに限られるものではない。たとえば、定置網に設置された魚群探知装置に本発明が適用されてもよい。この場合、図8図12および図13に示した送波方法は、魚群探知装置において行われる。魚群探知装置は、第1周波数および第2周波数について得られたエコーデータを陸上のサーバに送信し、陸上のサーバは、受信したエコーデータから生成したエコー画像をユーザの端末に送信する。
【0111】
この場合、図3のステップS104の干渉ノイズ低減処理は、サーバ側で行われてよい。この場合、魚群探知装置は、第1周波数および第2周波数について得られたエコーデータをそのままサーバに送信し、サーバは、受信したエコーデータにより1画面分のエコーデータを随時更新して、干渉ノイズ低減処理を適用し、適用後の1画面分のエコーデータからエコー画像を生成する。
【0112】
あるいは、上記実施形態と同様、干渉ノイズ低減処理が魚群探知装置側で行われてもよい。この場合、魚群探知装置は、干渉ノイズ低減処理を適用した後の1画面分のエコーデータを、随時、サーバに送信する。
【0113】
また、干渉ノイズ低減処理は、上記実施形態に示した処理でなくてもよく、本実施形態の送波方法により得られる1画面分のエコーデータから干渉波によるエコー強度を抑制できる限りにおいて、他の方法による干渉ノイズ低減処理が適用されてもよい。
【0114】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜種々の変更可能である。
【符号の説明】
【0115】
100 魚群探知装置
101 信号処理回路(コンピュータ)
103 送信回路
104 受信回路
C1 第1送波サイクル
C2 第2送波サイクル
T1、T2 受波期間
ΔTa1、ΔTa2、ΔTb1、ΔTb2 インターバル
図1
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