(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037356
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】医薬
(51)【国際特許分類】
A61K 45/08 20060101AFI20240312BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240312BHJP
A61P 15/14 20060101ALI20240312BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240312BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240312BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240312BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240312BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240312BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K45/08
A61P35/00
A61P37/06
A61P15/14
A61P17/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K38/02
A61K9/08
A61K47/54
A61K47/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142159
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 領
(72)【発明者】
【氏名】平光 真樹
(72)【発明者】
【氏名】石塚 隆伸
(72)【発明者】
【氏名】清水 咲子
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 陽一郎
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC07
4C076CC17
4C076CC27
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4C076EE59
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA03
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4C084AA27
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4C084MA17
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4C084NA05
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4C084ZA811
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4C085BB11
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE05
4C085GG05
(57)【要約】
【課題】治療薬のリンパ節での滞留を向上できる医薬を提供する。
【解決手段】薬剤の表在リンパ節内滞留を向上するための医薬であって、前記医薬は、インドシアニングリーン誘導体が治療薬に結合してなる薬剤を含み、前記医薬は、前記表在リンパ節の上流側で皮内投与される、医薬。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤の表在リンパ節内滞留を向上するための医薬であって、
前記医薬は、インドシアニングリーン誘導体が治療薬に結合してなる薬剤を含み、
前記医薬は、前記表在リンパ節の上流側で皮内投与される、医薬。
【請求項2】
前記治療薬は、抗体、ペプチド剤、タンパク質製剤から選択される、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記医薬は、突出長が0.9mm以上1.4mm以下である針管を備える注射針を介して皮内投与される、請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
乳癌、皮膚癌または自己免疫疾患の治療のための、請求項1に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
厚生労働省の発表によると、がんは、日本において昭和56年より日本人の死因の第1位であり、近年では、年間30万人以上の国民が、がんで亡くなっている。また、生涯のうちにがんにかかる可能性は、男性の2人に1人、女性の3人に1人であると推測されている。がん(悪性腫瘍)は、良性腫瘍とは異なり急速に増殖する上に、リンパ節や他の臓器に転移して増殖しやすい。このため、外科手術により切除しても、切除しきれなかったがん細胞や、リンパ節や他の臓器に転移していたがん細胞が再び増殖を開始することがある。このため、一般的に、治療によりがんが消失してから5年経過後まで再発がない場合にようやく治癒と見なされる。このように、有効な治療法が確立していないがんや、転移・再発に対して有効な治療法が確立していないがんが未だ多く存在するのが実情である。
【0003】
がん治療には、主に外科手術および薬物療法(抗がん剤治療)がある。このうち、薬物療法(抗がん剤治療)において、治療薬を皮内投与することによりアクセスしたリンパ管構造を通して治療効果を向上できることが報告されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、治療薬が投与後比較的短時間でリンパ節から検出されなくなり、薬効を十分維持できない。
【0006】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、治療薬のリンパ節での滞留を向上できる医薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、治療薬にインドシアニングリーン誘導体を結合させた薬剤を目的とするリンパ節の上流側で皮内投与することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、上記目的は、(1)薬剤の表在リンパ節内滞留を向上するための医薬であって、前記医薬は、インドシアニングリーン誘導体が治療薬に結合してなる薬剤を含み、前記医薬は、前記表在リンパ節の上流側で皮内投与される、医薬によって達成できる。
(2)上記(1)の医薬において、上記治療薬は、抗体、ペプチド剤、タンパク質製剤から選択されることが好ましい。
(3)上記(1)または(2)の医薬は、突出長が0.9mm以上1.4mm以下である針管を備える注射針を介して皮内投与されることが好ましい。
(4)上記(1)~(3)のいずれかの医薬は、乳癌、皮膚癌または自己免疫疾患の治療のための医薬であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の医薬によれば、治療薬の表在リンパ節での滞留を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る投与デバイスの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る針ハブの分解図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る針ハブ及びシリンジの部分断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る針ハブの斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る針ハブの拡大断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る注射針の刃面の拡大平面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る注射針の刃面の拡大斜視図である。
【
図8】
図8(A)は
図6に示す矢印8A方向から見た注射針の刃面の側面図であり、
図8(B)は
図7に示す矢印8B方向から見た注射針の刃面の斜視側面図である。
【
図9】
図9(A)は
図6に示す矢印9A方向から見た注射針の刃面の側面図であり、
図9(B)は
図7に示す矢印9B方向から見た注射針の刃面の斜視側面図である。
【
図10】
図10は、投与デバイスの使用例を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、実施例1、比較例1、比較例2で皮内、皮下または静脈投与してから所定時間経過後のマウスのIVIS Imaging Systemで撮影されたカラー写真である。
【
図13】
図13は、実施例1、比較例1において皮内または皮下投与後の蛍光強度の経時変化を示すグラフである。
【
図14】
図14は、実施例1および比較例1、2において、投与してから7日後の摘出腋窩リンパ節のICG標識抗体量を示すグラフである。
【
図15】
図15は、参考例において、リンパ節1mgあたりのAnti-KLH mouse IgG1抗体含有量(ng/1mg Lymph Node)」の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、薬剤の表在リンパ節内滞留を向上するための医薬であって、前記医薬は、インドシアニングリーン誘導体が治療薬に結合してなる薬剤を含み、前記医薬は、前記表在リンパ節の上流側で皮内投与される、医薬を提供する。当該構成によると、他の投与経路(例えば、皮下投与や静脈投与)に比べて、長時間、薬剤(治療薬)を目的とする表在リンパ節内に滞留させることができる。このため、本発明の医薬によると、表在リンパ節内での薬効を長期間維持できる。
【0012】
本明細書において、インドシアニングリーン誘導体を、単に「ICG」とも称する。また、インドシアニングリーン誘導体が治療薬に結合してなる薬剤を、単に「薬剤」または「本発明に係る薬剤」とも称する。
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。各図面は説明の便宜上誇張されて表現されており、各図面における各構成要素の寸法比率が実際とは異なる場合がある。また、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明した場合では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
また、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%の条件で行う。
【0015】
[医薬]
本発明に係る医薬は、インドシアニングリーン誘導体(ICG)が治療薬に結合してなる薬剤(ICG標識薬)を必須に含む。また、本発明に係る医薬は、表在リンパ節の上流側で皮内投与される。当該構成により、薬剤(治療薬)を、他の投与経路(例えば、皮下投与や静脈投与)に比して、より長時間、目的とする表在リンパ節内に滞留させることが可能である(薬剤の表在リンパ節内での滞留を向上できる)。
【0016】
本発明に係る医薬は、インドシアニングリーン誘導体が治療薬に結合してなる薬剤のみから構成されていても、またはこれに加えて、他の成分を含んでもよい。ここで、他の成分としては、溶剤(例えば、滅菌水、中鎖脂肪酸トリグリセリド)、安定化剤、緩衝液(例えば、PBS、生理食塩水、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、クエン酸リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、トリス塩酸緩衝液、酢酸緩衝液、炭酸緩衝液、グリシン-NaOH緩衝液)、溶解補助剤(例えば、酢酸)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム)、pH調整剤(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの塩基、硫酸、塩酸、リン酸などの酸)、無痛化剤、還元剤、酸化防止剤、可溶化剤(例えば、ポリソルベート80)などがある。上記他の成分は、1種単独で使用されてもまたは2種以上を併用して使用されてもよい。また、医薬が他の成分を含む場合の、他の添加成分の含有量は、特に制限されず、公知技術と同様の量が適用される。本発明に係る医薬は皮内投与剤である。このため、本発明に係る医薬は、薬剤に加えて、緩衝液を含むことが好ましく、薬剤および緩衝液から構成されることがより好ましい。
【0017】
薬剤を構成する治療薬は、特に制限されず、所望の効果に応じて適切に選択される。具体的には、抗がん剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗リウマチ薬、抗血栓薬、HMG-CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症薬、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GPIIbIIIa拮抗薬、レチノイド、フラボノイド、カロチノイド、脂質改善薬、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗血小板薬、血管平滑筋増殖抑制薬、抗炎症薬、生体由来材料、インターフェロン、およびNO産生促進物質等の薬剤(生理活性物質)などが挙げられる。これらのうち、抗がん剤、免疫抑制剤、抗体等の拮抗薬が好ましい。また、ICGとの結合容易性、表在リンパ節内での高滞留性などの観点から、治療薬は、抗体(抗体薬)、ペプチド剤、またはタンパク質製剤であることが好ましく、抗体(抗体薬)であることがより好ましい。
【0018】
ここで、抗がん剤としては、例えば、アルキル化薬(例えば、Dacarbazine、Nimustine、Temozolomide、Fotemustine、Bendamustine、Cyclophosphamide、Ifosfamide、Carmustine、ChlorambucilおよびProcarbazine等)、白金製剤(例えば、Cisplatin、Carboplatin、NedaplatinおよびOxaliplatin等)、代謝拮抗剤(例えば、葉酸代謝拮抗薬(例えば、Pemetrexed、LeucovorinおよびMethotrexate等)、ピリジン代謝阻害薬(例えば、TS-1(登録商標)、5-fluorouracil、UFT、Carmofur、Doxifluridine、FdUrd、CytarabineおよびCapecitabine等)、プリン代謝阻害薬(例えば、Fludarabine、CladribineおよびNelarabine等)、リボヌクレオチドリダクターゼ阻害薬、ヌクレオチドアナログ(例えば、Gemcitabine等))、トポイソメラーゼ阻害薬(例えば、Irinotecan、NogitecanおよびEtoposide等)、微小管重合阻害薬(例えば、Vinblastine、Vincristine、Vindesine、VinorelbineおよびEribulin等)、微小管脱重合阻害薬(例えば、DocetaxelおよびPaclitaxel等)、抗腫瘍性抗生物質(例えば、Bleomycin、Mitomycin C、Doxorubicin、Daunorubicin、Idarubicin、Etoposide、Mitoxantrone、Vinblastine、Vincristine、Peplomycin、Amrubicin、AclarubicinおよびEpirubicin等)、サイトカイン製剤(例えば、IFN-α2a、IFN-α2b、ペグIFN-α2b、天然型IFN-βおよびInterleukin-2等)、抗ホルモン薬(例えば、Tamoxifen、Fulvestrant、Goserelin、Leuprorelin、Anastrozole、LetrozoleおよびExemestane等)、分子標的薬、がん免疫治療薬およびその他の抗体医薬などが挙げられる。なお、当業者であれば、他の適切な抗がん剤を認識するであろう。
【0019】
ここで、分子標的薬としては、例えば、ALK阻害剤(例えば、Crizotinib、Ceritinib、Ensartinib、AlectinibおよびLorlatinib等)、BCR-ABL阻害剤(例えば、ImatinibおよびDasatinib等)、EGFR阻害剤(例えば、Erlotinib、EGF816、Afatinib、Osimertinib mesilate、GefitinibおよびRociletinib等)、B-RAF阻害剤(例えば、Sorafenib、Vemurafenib、TAK-580、Dabrafenib、Encorafenib、LXH254、EmurafenibおよびZanubrutinib等)、VEGFR阻害剤(例えば、Bevacizumab、Apatinib、Lenvatinib、AfliberceptおよびAxitinib等)、FGFR阻害剤(例えば、AZD4547、Vofatmab、RoblitinibおよびPemigatinib等)、c-MET阻害剤(例えば、Savolitinib、Merestinib、Capmatinib、CapmatinibおよびGlesatinib等)、AXL阻害剤(例えば、ONO-7475およびBemcentinib等)、MEK阻害剤(例えば、Cobimetinib、Binimetinib、SelumetinibおよびTrametinib等)、CDK阻害剤(例えば、Dinaciclib、Abemaciclib、PalbociclibおよびTrilaciclib等)、BTK阻害剤(例えば、IbrutinibおよびAcalabrutinib等)、PI3K-δ/γ阻害剤(例えば、Umbralisib、ParsaclisibおよびIPI-549等)、JAK-1/2阻害剤(例えば、ItacitinibおよびRuxolitinib等)、ERK阻害剤(例えば、SCH 900353等)、TGFbR1阻害剤(例えば、Galunisertib等)、Cancer cell stemness キナーゼ阻害剤(例えば、Amcasertib等)、FAK阻害剤(例えば、Defactinib等)、SYK/FLT3 dual阻害剤(例えば、Mivavotinib等)、ATR阻害剤(例えば、Ceralasertib等)、WEE1キナーゼ阻害剤(例えば、Adavosertib等)、マルチチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、Sunitinib、Pazopanib、Cabozantinib、Regorafenib、Nintedanib、SitravatinibおよびMidostaurin等)、mTOR阻害剤(例えば、Temsirolimus、Everolimus、VistusertibおよびIrinotecan等)、HDAC阻害剤(例えば、Vorinostat、Romidepsin、Entinostat、Chidamide、Mocetinostat、Citarinostat、PanobinostatおよびValproate等)、PARP阻害剤(例えば、Niraparib、Olaparib、Veliparib、RucaparibおよびBeigene-290等)、アロマターゼ阻害剤(例えば、ExemestaneおよびLetrozole等)、EZH2阻害剤(例えば、Tazemetostat等)、ガレクチン-3阻害剤(例えば、Belapectin等)、STAT3阻害剤(例えば、Napabucasin等)、DNMT阻害剤(例えば、Azacitidine等)、BCL-2阻害剤(例えば、NavitoclaxおよびVenetoclax等)、SMO阻害剤(例えば、Vismodegib等)、HSP90阻害剤(例えば、XL888等)、γ-チューブリン特異的阻害剤(例えば、Glaziovianin AおよびPlinabulin等)、HIF2α阻害剤(例えば、PT2385等)、グルタミナーゼ阻害剤(例えば、Telaglenastat等)、E3リガーゼ阻害剤(例えば、Avadomide等)、NRF2活性化剤(例えば、Omaveloxolone等)、アルギナーゼ阻害剤(例えば、CB-1158等)、細胞周期阻害剤(例えば、Trabectedin等)、Ephrin B4阻害剤(例えば、sEphB4-HAS等)、IAP拮抗剤(例えば、Birinapant等)、抗HER2抗体(例えば、Trastuzumab、Pertuzumab、Trastuzumab beta、Margetuximab、Trastuzumab deruxtecan、Disitamab、Disitamab vedotin、Trastuzumab emtansine、Gancotamab、Trastuzumab duocarmazine、Timigutuzumab、Zanidatamab、Zenocutuzumab、R48およびZW33等)、抗HER1抗体(例えば、Cetuximab、Cetuximab sarotalocan、Panitumumab、Necitumumab、Nimotuzumab、Depatuxizumab、Depatuxizumab mafodotin、Fu tuximab、Laprituximab、Laprituximab emtansine、Matuzumab、Modotuximab、Petosemtamab、Tomuzotuximab、Losatuxizumab、Losatuxizumab vedotin、Serclutamab、Serclutamab talirine、Imgatuzumab、FutuximabおよびZalutumumab等)、抗HER3抗体(例えば、Duligotuzumab、Elgemtumab、Istiratumab、Lumretuzumab、Zenocutuzumab、Patritumab、Patritumab deruxtecanおよびSeribantumab等)、抗CD40抗体(例えば、Bleselumab、Dacetuzumab、Iscalimab、Lucatumumab、Mitazalimab、Ravagalimab、Selicrelumab、Teneliximab、ABBV-428およびAPX005M等)、抗CD70抗体(例えば、Cusatuzumab、Vorsetuzumab、Vorsetuzumab mafodotinおよびARGX-110等)、抗VEGF抗体(例えば、Bevacizumab、Bevacizumab beta、Ranibizumab、Abicipar pegol、Aflibercept、Brolucizumab、Conbercept、Dilpacimab、Faricimab、Navicixizumab、VarisacumabおよびIMC-1C11等)、抗VEGFR1抗体(例えば、Icrucumab等)、抗VEGFR2抗体(例えば、Ramucirumab、Alacizumab、Alacizumab pegol、Olinvacimab、PegdinetanibおよびAMG596等)、抗CD20抗体(例えば、Rituximab、Blontuvetmab、Epitumomab、Ibritumomab tiuxetan、Ocaratuzumab、Ocrelizumab、Technetium (99mTc) nofetumomab merpentan、Tositumomab、Veltuzumab、Ofatumumab、Ublituximab、ObinutuzumabおよびNofetumomab等)、抗CD30抗体(例えば、Brentuximab VedotinおよびIratumumab等)、抗CD38抗体(例えば、Daratumumab、Isatuximab、Mezagitamab、AT13/5およびMOR202等)、抗TNFRSF10B抗体(例えば、Benufutamab、Conatumumab、Drozitumab、Lexatumumab、Tigatuzumab、Eftozanermin alfaおよびDS-8273a等)、抗TNFRSF10A抗体(例えば、Mapatumumab等)、抗MUC1抗体(例えば、Cantuzumab、Cantuzumab ravtansine、Clivatuzumab、Clivatuzumab tetraxetan、Yttrium (90Y) clivatuzumab tetraxetan、Epitumomab、Epitumomab cituxetan、Sontuzumab、Gatipotuzumab、Nacolomab、Nacolomab tafenatox、7F11C7、BrE-3、CMB-401、CTM01およびHMFG1等)、抗MUC5AC抗体(例えば、Ensituximab等)、抗MUC16抗体(例えば、Oregovomab、Abagovomab、IgovomabおよびSofituzumab vedotin等)、抗DLL4抗体(例えば、Demcizumab、Dilpacimab、NavicixizumabおよびEnoticumab等)、抗フコシルGM1抗体(例えば、BMS-986012等)、抗gpNMB抗体(例えば、Glembatumumab vedotin等)、抗Mesothelin抗体(例えば、Amatuximab、Anetumab ravtansine、Anetumab corixetan、RG7784およびBMS-986148等)、抗MMP9抗体(例えば、Andecaliximab等)、抗GD2抗体(例えば、Dinutuximab、Dinutuximab beta、Lorukafusp alfa、Naxitamab、14G2a、MORAb-028、Surek、TRBs07およびME361等)、抗MET抗体(例えば、Emibetuzumab、Onartuzumab、TelisotuzumabおよびTelisotuzumab vedotin等)、抗FOLR1抗体(例えば、Farletuzumab、MirvetuximabおよびMirvetuximab soravtansine等)、抗CD79b抗体(例えば、Iladatuzumab、Iladatuzumab vedotinおよびPolatuzumab vedotin等)、抗DLL3抗体(例えば、RovalpituzumabおよびRovalpituzumab Tesirine等)、抗CD51抗体(例えば、Abituzumab、EtaracizumabおよびIntetumumab等)、抗EPCAM抗体(例えばAdecatumumab、Catumaxomab、Edrecolomab、Oportuzumab monatox、Citatuzumab bogatoxおよびTucotuzumab celmoleukin等)、抗CEACAM5抗体(例えば、Altumomab、Arcitumomab、Cergutuzumab amunaleukin、Labetuzumab、Labetuzumab govitecan、90Y-cT84.66、AMG211、BW431/26、CE25/B7、COL-1およびT84.66 M5A等)、抗CEACAM6抗体(例えば、Tinurilimab等)、抗FGFR2抗体(例えば、Aprutumab、Aprutumab ixadotinおよびBemarituzumab等)、抗CD44抗体(例えば、bivatuzumab mertansine等)、抗PSMA抗体(例えば、Indium (111In) capromab pendetide、177Lu-J591およびES414等)、抗Endoglin抗体(例えば、Carotuximab等)、抗IGF1R抗体(例えば、Cixutumumab、Figitumumab、Ganitumab、Dalotuzumab、teprotumumabおよびRobatumumab等)、抗TNFSF11抗体(例えば、Denosumab等)、抗GUCY2C(例えば、Indusatumab vedotin等)、抗SLC39A6抗体(例えば、Ladiratuzumab vedotin等)、抗SLC34A2抗体(例えば、Lifastuzumab vedotin等)、抗NCAM1抗体(例えば、Lorvotuzumab mertansineおよびN901等)、抗ganglioside GD3抗体(例えば、EcromeximabおよびMitumomab等)、抗AMHR2抗体(例えば、Murlentamab等)、抗CD37抗体(例えば、Lilotomab、Lutetium (177lu) lilotomab satetraxetan、Naratuximab、Naratuximab emtansineおよびOtlertuzumab等)、抗IL1RAP抗体(例えば、Nidanilimab等)、抗PDGFR2抗体(例えば、OlaratumabおよびTovetumab等)、抗CD200抗体(例えば、Samalizumab等)、抗TAG-72抗体(例えば、Anatumomab mafenatox、Minretumomab、Indium (111In) satumomab pendetide、CC49、HCC49およびM4等)、抗SLITRK6抗体(例えば、Sirtratumab vedotin等)、抗DPEP3抗体(例えば、Tamrintamab pamozirine等)、抗CD19抗体(例えば、Axicabtagene ciloleucel、Coltuximab ravtansine、Denintuzumab mafodotin、Inebilizumab、Loncastuximab、Loncastuximab tesirine、Obexelimab、Tafasitamab、Taplitumomab paptox、Taplitumomab paptoxおよびhuAnti-B4等)、抗NOTCH2/3抗体(例えば、Tarextumab等)、抗tenascin C抗体(例えば、Tenatumomab等)、抗AXL抗体(例えば、Enapotamab、Enapotamab vedotinおよびTilvestamab等)、抗STEAP1抗体(例えば、Vandortuzumab vedotin等)、抗CTAA16抗体(例えば、technetium (99mTc) votumumab等)、CLDN18抗体(例えば、Zolbetuximab等)、抗GM3抗体(例えば、Racotumomab、FCGR1およびH22等)、抗PSCA抗体(例えば、MK-4721等)、抗FN extra domain B抗体(例えば、AS1409等)、抗HAVCR1抗体(例えば、CDX-014等)および抗TNFRSF4抗体(例えば、MEDI6383等)、抗HER1-MET二重特異性抗体(例えば、Amivantamab等)、抗EPCAM-CD3二重特異性抗体(例えば、SolitomabおよびCatumaxomab等)、抗Ang2-VEGF二重特異性抗体(例えば、Vanucizumab等)、抗HER2-CD3二重特異性抗体(例えば、Ertumaxomab等)、抗HER3-IGF1R二重特異性抗体(例えば、Istiratumab等)、抗PMSA-CD3二重特異性抗体(例えば、Pasotuxizumab等)、抗HER1-LGR5二重特異性抗体(例えば、Petosemtamab等)、抗SSTR2-CD3二重特異性抗体(例えば、Tidutamab等)、抗CD30-CD16A二重特異性抗体(例えば、AFM13等)、抗CEA-CD3二重特異性抗体(例えば、CibisatamabおよびRO6958688等)、抗CD3-CD19二重特異性抗体(例えば、DuvortuxizumabおよびBlinatumomab等)、IL3RA-CD3二重特異性抗体(例えば、FlotetuzumabおよびVibecotamab等)、抗GPRC5D-CD3二重特異性抗体(例えば、Talquetamab等)、抗CD20-CD3二重特異性抗体(例えば、Plamotamab、Odronextamab、Mosunetuzumab、Glofitamab、EpcoritamabおよびREGN1979等)、抗TNFRSF17-CD3二重特異性抗体(例えば、Teclistamab等)、抗CLEC12A-CD3二重特異性抗体(例えば、Tepoditamab等)、抗HER2-HER3二重特異性抗体(例えば、Zenocutuzumab等)、抗FAP抗体/IL-2融合蛋白質(例えば、RO6874281等)および抗CEA抗体/IL-2融合蛋白質(例えば、Cergutuzumab amunaleukin等)などが挙げられる。
【0020】
また、がん免疫治療薬としては、例えば、抗PD-1抗体(例えば、Nivolumab、Cemiplimab-rwlc、Pembrolizumab、Spartalizumab、Tislelizumab、Dostarlimab、Toripalimab、Camrelizumab、Genolimzumab、Sintilimab、Lodapolimab、Retifanlimab、Balstilimab、Serplulimab、Budigalimab、Prolgolimab、Sasanlimab、Cetrelimab、Zimberelimab、Geptanolimab、AMP-514、STI-A1110、ENUM 388D4、ENUM 244C8、GLS010、CS1003、BAT-1306、AK105、AK103、BI 754091、LZM009、CMAB819、Sym021、SSI-361、JY034、HX008、ISU106およびCX-188等)、抗PD-L1抗体(例えば、Atezolizumab、Avelumab、Durvalumab、Manelimab、Pacmilimab、Envafolimab、Cosibelimab、Sugemalimab、BMS-936559、STI-1014、HLX20、SHR-1316、MSB2311、BGB-A333、KL-A167、AK106、AK104、ZKAB001、FAZ053、CBT-502およびJS003等)、PD-1拮抗剤(例えば、AUNP-12、BMS-M1~BMS-M10の各化合物(WO2014/151634、WO2016/039749、WO2016/057624、WO2016/077518、WO2016/100285、WO2016/100608、WO2016/126646、WO2016/149351、WO2017/151830およびWO2017/176608参照)、BMS-1、BMS-2、BMS-3、BMS-8、BMS-37、BMS-200、BMS-202、BMS-230、BMS-242、BMS-1001およびBMS-1166(WO2015/034820、WO2015/160641、WO2017/066227およびOncotarget. 2017 Sep 22; 8(42): 72167-72181.参照)、Incyte-1~Incyte-6の各化合物(WO2017/070089、WO2017/087777、WO2017/106634、WO2017/112730、WO2017/192961およびWO2017/205464参照)、CAMC-1~CAMC-4(WO2017/202273、WO2017/202274、WO2017/202275およびWO2017/202276参照)、RG_1(WO2017/118762参照)およびDPPA-1(Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 11760-11764参照)等)、PD-L1/VISTA拮抗剤(例えば、CA-170)、PD-L1/TIM3拮抗剤(例えば、CA-327)、抗PD-L2抗体、PD-L1融合タンパク質、PD-L2融合タンパク質(例えば、AMP-224等)、抗CTLA-4抗体(例えば、Ipilimumab、Zalifrelimab、NurulimabおよびTremelimumab等)、抗LAG-3抗体(例えば、Relatlimab、Ieramilimab、Fianlimab、EncelimabおよびMavezelimab等)、抗TIM3抗体(例えば、MBG453およびCobolimab等)、抗KIR抗体(例えば、Lirilumab、IPH2101、LY3321367およびMK-4280等)、抗BTLA抗体、抗TIGIT抗体(例えば、Tiragolumab、Etigilimab、VibostolimabおよびBMS-986207等)、抗VISTA抗体(例えば、Onvatilimab等)、抗CD137抗体(例えば、UrelumabおよびUtomilumab等)、抗CSF-1R抗体・CSF-1R阻害剤(例えば、Cabiralizumab、Emactuzumab、LY3022855、Axatilimab、MCS-110、IMC-CS4、AMG820、Pexidartinib、BLZ945およびARRY-382等)、抗OX40抗体(例えば、MEDI6469、Ivuxolimab、MEDI0562、MEDI6383、Efizonerimod、GSK3174998、BMS-986178およびMOXR0916等)、抗HVEM抗体、抗CD27抗体(例えば、Varlilumab等)、抗GITR抗体・GITR融合蛋白質(例えば、Efaprinermin alfa、Efgivanermin alfa、MK-4166、INCAGN01876、GWN323およびTRX-518等)、抗CD28抗体、抗CCR4抗体(例えば、Mogamulizumab等)、抗B7-H3抗体(例えば、Enoblituzumab、Mirzotamab、Mirzotamab clezutoclaxおよびOmburtamab等)、抗ICOSアゴニスト抗体(例えば、VopratelimabおよびGSK3359609等)、抗CD4抗体(例えば、ZanolimumabおよびIT1208等)、抗DEC-205抗体/NY-ESO-1融合蛋白質(例えば、CDX-1401)、抗SLAMF7抗体(例えば、Azintuxizumab、Azintuxizumab vedotinおよびElotuzumab等)、抗CD73抗体(例えば、OleclumabおよびBMS-986179等)、PEG化IL-2(例えば、Bempegaldesleukin等)、IDO阻害剤(例えば、Epacadostat、IndoximodおよびLinrodostat等)、TLRアゴニスト(例えば、Motolimod、CMP-001、G100、Tilsotolimod、SD-101およびMEDI9197等)、アデノシンA2A受容体拮抗剤(例えば、Preladenant、AZD4635、TaminadenantおよびCiforadenant等)、抗NKG2A抗体(例えば、Monalizumab等)、抗CSF-1抗体(例えば、PD0360324等)、免疫増強剤(例えば、PV-10等)、IL-15スーパーアゴニスト(例えば、ALT-803等)、可溶性LAG3(例えば、Eftilagimod alpha等)、抗CD47抗体・CD47拮抗剤(例えば、ALX148等)およびIL-12拮抗剤(例えば、M9241等)などが挙げられる。なお、Nivolumabは、WO 2006/121168に記載された方法に準じて製造することができ、Pembrolizumabは、WO 2008/156712に記載された方法に準じて製造することができ、BMS-936559は、WO 2007/005874に記載された方法に準じて製造することができ、Ipilimumabは、WO 2001/014424に記載された方法に準じて製造することができる。
【0021】
その他の抗体医薬としては、例えば、抗IL-1β抗体(例えば、Canakinumab等)および抗CCR2抗体(例えば、Plozalizumab等)などが挙げられる。
【0022】
免疫抑制剤としては、例えば、スタチン;ラパマイシンまたはラパマイシン類似体などのmTOR阻害剤;TGF-βシグナル伝達剤;TGF-β受容体アゴニスト;トリコスタチンAなどのヒストンデアセチラーゼ阻害剤;コルチコステロイド;ロテノンなどの、ミトコンドリア機能の阻害剤;P38阻害剤;6Bio、デキサメタゾン、TCPA-1、IKK VIIなどのNF-κβ阻害剤;アデノシン受容体アゴニスト;ミソプロストールなどのプロスタグランジンE2アゴニスト(PGE2);ロリプラムなどのホスホジエステラーゼ4阻害剤(PDE4)などのホスホジエステラーゼ阻害剤;プロテアソーム阻害剤;キナーゼ阻害剤;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;糖質コルチコイド;レチノイド;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体阻害剤;サイトカイン受容体活性化剤;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;カルシニューリン阻害剤;ホスファターゼ阻害剤;TGX-221などのPI3KB阻害剤;3-メチルアデニンなどの自食作用阻害剤;アリール炭化水素受容体阻害剤;プロテアソーム阻害剤I(PSI);およびP2X受容体遮断薬などの酸化ATP;IDO、ビタミンD3、シクロスポリンAなどのシクロスポリン、アリール炭化水素受容体阻害剤、レスベラトロール、アザチオプリン(Aza)、6-メルカプトプリン(6-MP)、6-チオグアニン(6-TG)、FK506、サングリフェリンA、サルメテロール、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、アスピリンおよび他のCOX阻害剤、ニフルム酸、エストリオールおよびトリプトリド;小分子薬剤、天然産物、抗体(例えば、CD20、CD3、CD4に対する抗体)、生物製剤ベースの薬剤、炭水化物ベースの薬剤、ナノ粒子、リポソーム、RNAi、アンチセンス核酸、アプタマー、メトトレキサート、NSAID;フィンゴリモド;ナタリズマブ;アレムツズマブ;抗CD3;タクロリムス(FK506)などが挙げられる。なお、当業者であれば、他の適切な免疫抑制剤を認識するであろう。
【0023】
本開示の医薬によると、薬剤(治療薬)を長時間、目的とする表在リンパ節内に滞留することが可能である。このため、本開示の医薬は、癌、自己免疫疾患などの様々な用途に適用できる。例えば、乳癌は表在リンパ節の一である腋窩リンパ節に転移してから全身に広がることがある(リンパ行性転移)。乳房外パジェット病やメルケル細胞癌などの上皮系細胞由来の皮膚癌もまた、リンパ節に転移することがある。関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患に対してメトトレキサート等の免疫抑制薬による治療を行う場合、リンパ節腫脹が認められる。この場合、本開示の医薬を使用することにより、薬剤(治療薬)を表在リンパ節に長持間滞留させて、癌の転移を抑制・阻害したり、リンパ節腫脹を抑制・治療することが可能である。このため、本開示の医薬は、乳癌、皮膚癌または自己免疫疾患の治療を目的として好適に使用できる。
【0024】
治療薬の大きさは、特に制限されないが、低分子である場合には血中に移行しやすい。このため、表在リンパ節への滞留効率のさらなる向上の観点から、治療薬は、通常、15kDa以上、好ましくは100kDa以上の分子量を有する。なお、治療薬の大きさの上限は、特に制限されないが、通常、200kDa以下であり、好ましくは150kDa以下である。
【0025】
本発明に係る医薬は、インドシアニングリーン誘導体(ICG)が治療薬に結合してなる薬剤(ICG標識薬)を必須に含むが、ICGを治療薬に結合させる方法は、特に制限されず、公知の方法を同様にしてまたは適宜修飾して適用できる。例えば、治療薬が抗体、ペプチド剤、またはタンパク質製剤である場合には、インドシアニングリーン、インドシアニングリーン-N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(ICG-Sulfo-OSu)インドシアニングリーン-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(ICG-OSu)、ICG-Sulfo-EG8-OSu、ICG-Sulfo-EG4-OSu、ICG-PEG12-OSu、ICG-ATT(3-ICG-acyl-1,3-thiazolidine-2-thione)(いずれもAAT Bioquest, Inc.社製)などを用いて、治療薬のアミノ基を介してインドシアニングリーン誘導体を治療薬に結合(標識)することができる。なお、インドシアニングリーン、ICG-Sulfo-OSu、ICG-OSu、ICG-Sulfo-EG8-OSu、ICG-Sulfo-EG4-OSu、ICG-PEG12-OSu、ICG-ATTは下記構造を有する。
【0026】
【0027】
【0028】
または、製造社(例えば、株式会社同仁化学株式会社)の指示に従って、キットなどを用いて、インドシアニングリーン誘導体を治療薬に結合させることもできる。具体的には、治療薬に、インドシアニングリーン誘導体溶液を適量加えて撹拌する。ここで、治療薬とインドシアニングリーン誘導体と(ICG)の混合比は、特に制限されず、所望の視認性(例えば、輝度、蛍光強度)に応じて適切に選択される。治療薬とインドシアニングリーン誘導体と(ICG)の混合比は、例えば、治療薬1分子に対しICGが1~10分子結合する割合であり、好ましくは治療薬1分子に対しICGが1~5分子結合する割合であり、より好ましくは治療薬1分子に対しICGが1~3分子結合する割合である。
【0029】
医薬(薬剤、治療薬)の投与量は、治療上有効な量を考慮して決定されるが、被験体(投与対象)の病気や副作用の性質(例えば、悪心、嘔吐の程度、片頭痛の度合);被験体のサイズ、体重、表面積、年齢および性別;投与される他の薬剤;ならびに主治医の判断などによって異なる。様々な利用できる薬剤の異なる有効性を考慮すると、必要な投与量は広範に変化しうると予想される。これらの投与量レベルの変動は、当該分野において既知の最適に関する標準的な経験上の手順を用いて調節できる。また、上記投与量は、1日1回または複数回に分けてもよい。または、場合によっては、より低い頻度(例えば、週もしくは月単位)で投与されてよい。加えて、同一の被験体であっても、被験体の症状、重篤度、治療の性質などに応じて、投与量は変化しうる。
【0030】
本明細書において、「治療上有効な量」とは、いずれの医療にも適用可能な妥当な便益/リスク比で、何らかの所望の抑制効果を生じるのに有効な有効成分または医薬の量を意味する。例えば、本発明に係る医薬の投与量は、対象疾患、投与対象などにより差異はある。用量は対象となるものの体重等の条件によって容易に変動しうるため、当業者によって適宜選択されうる。また、最終的には、主治医が被験体の症状や重篤度などを考慮して、適切に選択する。また、本明細書において、「治療」とは、疾患の徴候または症状を軽減、緩和することを目的として、被験者(例えば、ヒト)に1つ以上の薬を投与することを含み得るプロトコルを実行することを指す。緩和は、疾患の徴候または症状が現れる前、ならびにそれらの出現後に起こり得る。したがって、「治療」は、疾患を「予防すること」を包含する。なお、「予防」は保護的および/または予防的手段を指し、ここでは標的の疾患、病理学的状態または障害を予防または抑制することを意図する。
【0031】
[被験体(患者)]
本発明に係る医薬が投与される被験体(患者)は、ヒトまたは非ヒト動物でありうる。非ヒト動物としては、マウス、ラット、ハムスター等の実験動物;イヌ、ネコ、ウサギ等のペット;ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ等の家畜類や家禽類が例示できるがこれらに限定されない。好ましくは、被験体は、ヒトである。
【0032】
[皮内投与]
本開示において、医薬は前記表在リンパ節の上流側で皮内投与される。本明細書において、「表在リンパ節の上流側」とは、薬剤が滞留する表在リンパ節から派生する毛細リンパ管側を意図する。すなわち、医薬は、薬剤が滞留する表在リンパ節から派生する毛細リンパ管が存在する皮内に投与される。投与部位は、リンパシンチグラフィによってリンパ管(毛細リンパ管、毛細リンパ管が集まって合流する集合リンパ管)やリンパ節の位置を確認し、当該位置に基づいて決定することができる。医薬を効率よく目的とする表在リンパ節に送達させるためには、滞留すべき表在リンパ節から適切に離間した部位から医薬を皮内投与することが好ましい。具体的には、表在リンパ節が腋窩リンパ節である場合には、医薬を上肢、胸部等の上半身から皮内投与する;表在リンパ節が鼠経リンパ節である場合には、下肢、腹部、臀部等の下半身から皮内投与する;および表在リンパ節が頸部リンパ節である場合には、頸部または頭部から皮内投与する。
【0033】
本開示において、医薬は、前記表在リンパ節の上流側から、例えば、注射針を介して投与される。ここで、注射針は、被験体に応じて適切に選択される。例えば、投与対象(被験体)がヒトである場合には、皮膚は、皮膚表面から50μm~200μm厚の「表皮層」、表皮層から続く0.5~3.5mm厚の「真皮層」、および真皮層より深部の「皮下組織層」で構成される。また、例えば、ヒト三角筋の表皮層及び真皮層からなる皮膚上層部の厚さは、一般的に約2mm程度である。このため、投与対象(被験体)がヒトである場合には、注射針は、突出長が0.9mm以上1.4mm以下である針管を備えることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、医薬は、突出長が0.9mm以上1.4mm以下である針管を備える注射針を介して皮内投与される。ここで、突出長が0.9mm未満であるまたは1.4mmを超えると、確実に皮内投与することが困難になる(皮内投与成功率が低下する)可能性がある。本発明による効果(特に皮内投与成功率のさらなる向上)などの観点から、本形態での注射針の突出長は、好ましくは1.0mm以上1.3mm以下である。または、投与対象(被験体)が齧歯動物(ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ハムスターなど)などの非ヒト小型動物である場合には、注射針は、突出長が0.1mm以上0.6mm以下である針管を備えることが好ましく、突出長が0.45mm以上0.50mm以下である針管を備えることがより好ましい。いずれの場合も、医薬を投与するのに適した針管の突出長を、投与する部位の真皮層の深さ方向の位置に応じて設定することが重要である。
【0034】
なお、ヒトの表皮層は薄く、かつヒトの表皮層の厚みは被験体(投与対象)の年齢差、男女差、個人差、病歴・治療歴等に依存する。そのため、従来の皮下投与に使用される注射針を備える薬剤投与デバイスを使用して皮内投与を試みる場合、真皮層内の表皮寄りの投与部位の深さを一義的に定めることができず、注射針の針先の位置を真皮層内に適切に位置決めすることが容易ではない。このため、皮内投与成功率をさらに向上できるなどの観点から、(投与対象がヒトの場合には、突出長を0.9mm以上1.4mm以下とした)特表2012-503995号公報(WO 2010/038879)や特開2010-172603号公報などに記載の組立体または装置が好ましく使用される。
【0035】
以下では、針管を備える注射針を有する投与デバイス10および針組立体100の好ましい形態を説明する。なお、本発明は、下記形態に限定されない。各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0036】
[投与デバイス]
図1は、投与デバイス10の全体構成を概略的に示す斜視図である。
【0037】
投与デバイス10は、
図10及び
図11に示すように、被験体の真皮層s2に医薬を投与(皮内投与)するために使用される。
【0038】
図10及び
図11には、医薬の投与対象となる被験体の表皮層s1、真皮層s2、皮下組織層s3を模式的な断面図で示している。本明細書では、表皮層s1及び真皮層s2を合わせて皮膚上層部s4とする。
【0039】
図1に示すように、投与デバイス10は、注射針110が保持された針ハブ120を備える針組立体100と、針組立体100と接続可能なシリンジ200と、を備える。
【0040】
図3に示すように、シリンジ200の内部には、医薬(薬液)を収容可能な液室240が設けられている。シリンジ200の液室240には、液室240から注射針110の針管111の内腔111aに医薬を送液する押子300が挿入されている。
【0041】
本実施形態では、注射針110の延在方向及びシリンジ200の延在方向を「軸方向」とも称する。注射針110の針先112側を「先端側」とし、先端側の反対の端部側を「基端側」とする。
【0042】
被験体や術者等(以下、「使用者」とも称する)は、注射針110の針先112を真皮層s2内に配置した状態で押子300をシリンジ200の先端側へ向けて移動させることにより、針先112に形成された先端開口部112aを介して医薬を被験体に皮内投与することができる(
図11を参照)。このように注射針110の針先112を目的とする投与部位に配置して医薬を注入するという簡単な操作で、確実に皮内投与することができる。また、針先112はガイド部123内にあり、操作中、使用者には見えない構造となっている。このため、注射に対して恐怖心を抱いている被験体であっても、少ない抵抗でまたは抵抗なく自宅で投与操作を行うことが可能である。
【0043】
投与デバイス10は、例えば、皮内投与に際して液室240内に医薬(薬液)を充填し、充填した医薬を投与するごとに廃棄するディスポーザル型のデバイスとして構成することができる。なお、投与デバイス10は、皮内投与に先立って液室240内に医薬が予め充填されたプレフィルド型のデバイスとして構成することも可能である。また、液室240に収容される医薬(皮内投与される医薬)は、具体的には、上記[医薬]で説明したとおりである。
【0044】
図1に示すように、シリンジ200は、針ハブ120を接続可能なロック機構205(
図3を参照)が先端側に配置された第1筒部210と、第1筒部210の基端側に配置された第2筒部220と、を備える。
【0045】
第1筒部210及び第2筒部220は、略円筒形状の外形を有する。第1筒部210の基端側に配置された第2筒部220は、第1筒部210よりも大きな外径を有する。
【0046】
使用者は、投与デバイス10を使用した皮内投与を実施する際、シリンジ200の基端側に位置する第2筒部220を把持することができる。第2筒部220は第1筒部210よりも大径であるため、使用者は第2筒部220を把持し易く、また把持した際のグリップ力も高められる。そのため、使用者が投与デバイス10を使用して皮内投与を実施する際、投与デバイス10の先端側へ突出した注射針110の針先112を表皮層s1に対してしっかりと刺入させることが可能になる。
【0047】
図3に示すロック機構205は、例えば、内面にネジ溝が設けられた部材で構成することができる。本実施形態では、針ハブ120の第2部材127の基端部には、ロック機構205のネジ溝に螺合可能な接続部128を設けている。使用者は、ロック機構205の内側に針ハブ120の基端部を挿入した状態で、針ハブ120を回転させて螺合させることにより、シリンジ200に対して針ハブ120を着脱可能に接続することができる。
【0048】
例えば、ロック機構205に設けられるネジ溝は雌ネジで構成することができ、針ハブ120に設けられる接続部128は雄ネジで構成することができる。ただし、ロック機構205側のネジ溝を雄ネジで構成し、接続部128側のネジ溝を雌ネジで構成してもよい。また、針ハブ120とシリンジ200を接続するための具体的な機構について特に制限はなく、例えば、針ハブ120の基端部の内側にシリンジ200の先端部を挿入して両者を嵌合させるような機構を採用することも可能である。また、針ハブ120は、接着剤等を使用してシリンジ200に対して分離できないように固定されていてもよい。
【0049】
図3に示すように、シリンジ200の液室240は、針ハブ120とシリンジ200を接続した状態において、注射針110の内腔111a(
図6を参照)に連通される。後述するように、注射針110は、接着剤126により針ハブ120の内部に固定されている。
【0050】
[針組立体]
図1、
図2、
図3に示すように、針組立体100は、注射針110と、注射針110が保持された針ハブ120と、を有する。
【0051】
【0052】
針ハブ120は、
図3に示すように、針ハブ120の先端側に配置される第1部材121と、第1部材121の基端側に配置される第2部材127と、を有する。
【0053】
注射針110は、第1部材121の内部に充填された接着剤126により、第1部材121に対して固定されている。第1部材121の基端部と第2部材127の先端部の間には弾性部材125が配置されている。注射針110は、注射針110の基端部115が液室240の先端に位置合わせされた状態で、針ハブ120の内部に配置されている。
【0054】
図3、
図4、
図5に示すように、針ハブ120の第1部材121は、注射針110の針管111の針先112から基端側に向かう一定の範囲を露出させることにより、針管111の突出長L1を調整する調整部122と、調整部122及び針管111において調整部122から露出した部分の周囲を囲むとともに、調整部122及び針管111との間に空間122aを空けて配置されたガイド部123と、を有する。
【0055】
調整部122は、針ハブ120の面方向の略中心位置に設けられている。調整部122は、注射針110の針先112側の一部を露出させる中空状の部分で構成されている。注射針110は、
図5に示すように、針先112側の一部が調整部122から先端側に向けて所定の長さL1で露出した状態で前述した接着剤126により針ハブ120に対して固定されている。したがって、針ハブ120は、投与デバイス10を使用した皮内投与を実施する際に注射針110の針先112が被験体の表皮層s1に押し付けられるのに伴って注射針110が基端側へ移動して突出長L1が変化することを防止できる。
【0056】
ガイド部123は、調整部122と同心円状に配置されている。そのため、
図4に示すように、調整部122の周囲には、調整部122を中心にした円状の空間122aが形成されている。
【0057】
図3、
図4に示すように、ガイド部123のさらに外周側の位置には、平面状に延びるフランジ部124が配置されている。フランジ部124は、ガイド部123と同様に、調整部122と同心円状に配置されている。フランジ部124は、ガイド部123の基端付近から外周方向へ延びている。
【0058】
注射針110の基端部115付近に配置された弾性部材125は、シリンジ200の液室240と針ハブ120の接続部における液密性を高める。これにより、液室240から注射針110の内腔111aへ医薬を送液した際に、注射針110の基端部付近で医薬が漏洩することを防止できる。
【0059】
投与デバイス10は、
図2に示すキャップ部材130を備えていてもよい。キャップ部材130は、針ハブ120の第1部材121に接続可能に構成される。キャップ部材130は、針ハブ120に接続された状態において、針ハブ120の先端側から注射針110の針先112を覆うように配置される。使用者は、針ハブ120にキャップ部材130を取り付けることにより、注射針110の針先112が誤穿刺されることを防止できる。
【0060】
図5に示す針ハブ120の各部は、例えば、下記の寸法例で形成することができる。ただし、下記に示す寸法例に限定されることはない。
【0061】
調整部122の外周縁からガイド部123の内周縁までの距離T1(空間122aの水平方向の幅に相当)は、例えば、4.9mm以上5.3mm以下に形成することができる。
【0062】
ガイド部123の外周縁からフランジ部124の外周縁までの距離T2は、例えば、2.9mm以上3.1mm以下に形成することができる。
【0063】
注射針110の突出方向における調整部122とガイド部123との間の寸法差Hgは、例えば、0.2mm以上0.4mm以下に形成することができる。
【0064】
針ハブ120及びシリンジ200の各部は、例えば、公知の樹脂材料や公知の金属材料で構成することができる。一例として、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂や、ステンレス、アルミ等の金属を用いることができる。
【0065】
図10、
図11には、注射針110で使用者に対して皮内投与を実施する際の模式的な断面図を示している。
【0066】
図10に示すように、注射針110を表皮層s1に対して垂直穿刺する際、調整部122が表皮層s1に接触し、表皮層s1を注射針110の周囲に押し広げる。この際、表皮層s1は、調整部122とガイド部123の間に設けられた空間122a内で平坦をなすように押し広げられる。使用者は、フランジ部124が表皮層s1に接触するまで調整部122を押し付けることにより、調整部122及び針管111が表皮層s1を押圧する力を所定値以上に確保することができる。使用者は、調整部122及びフランジ部124を表皮層s1に押し付けた状態で、所定の突出長L1を保つように配置された注射針110を表皮層s1側から刺入することにより、被験体の表皮層s1の状態のばらつきに依存することなく、注射針110の針先112を適切に真皮層s2内に案内することができる。
【0067】
なお、本実施形態に係る投与デバイス10及び注射針110を使用した皮内投与方法の具体的な手順は、後述する実施例を通じてより詳細に説明する。
【0068】
図6~
図9には、本実施形態に係る注射針110の先端側(刃面113側)の一部を拡大して示している。
【0069】
図6は注射針110の先端開口部112aを正面に見た平面図であり、
図7は注射針110の斜視図である。
図8(A)は、
図6に示す矢印8A方向から注射針の側面図(左側面図)、
図8(B)は、
図7に示す矢印8B方向から見た注射針110の斜視側面図である。
図9(A)は、
図6に示す矢印9A方向から注射針の側面図(右側面図)、
図9(B)は、
図7に示す矢印9B方向から見た注射針110の斜視側面図である。
【0070】
図6に示すように、本実施形態に係る注射針110は、針先112に刃面113が形成された針管111を備える。
【0071】
図6~
図9に示す直線O1は、注射針110(針管111)の延在方向に沿う中心軸線を示す。
【0072】
針管111の内部には、皮内投与される医薬が流通可能な内腔111aが形成されている。針先112の最先端には内腔111aに連通する先端開口部112aが形成されている。
【0073】
前述した投与デバイス10において、注射針110は、注射針110の基端側の一定の範囲が針ハブ120の内部(第1部材121及び第2部材127の内部)に収容された状態で配置される。注射針110の先端側の一部は、針ハブ120の調整部122よりも先端側に突出するように配置される。
【0074】
注射針110の刃面113が形成された部分よりも針管111の基端側の部分であって、調整部122から露出した部分は、針胴部114を構成する。
【0075】
注射針110は、例えば、「ランセット針」や「セミランセット針」で構成することができる。ただし、注射針110の具体的な形状や構造については特に制限はない。例えば、注射針110は、ストレート針だけでなく、少なくとも一部がテーパ状となっているテーパ針で構成されていても、または、針管111の径方向の断面形状が三角形等の多角形で構成されていてもよい。
【0076】
注射針110は、例えば、金属を構成材料とする金属針で構成することができる。注射針110を構成する金属としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金その他の金属を用いることができる。
【0077】
図6、
図7に示すように、刃面113は、針管111の基端側に位置する第1刃面113aと、第1刃面113aよりも針先112側(先端側)に位置する境目116で稜線をなす第2刃面113b及び第3刃面113cと、を有する。
【0078】
第2刃面113bと第3刃面113cは、
図6に示す平面図において、境目116を基準にして左右対称に形成されている。そのため、後述する第2刃面角θ2と第3刃面角θ3は略同一であり、第2刃面113bの刃面長L22と第3刃面113cの刃面長L23も略同一である。なお、第2刃面113bと第3刃面113cは互いに異なる形状(例えば、第2刃面角θ2と第3刃面角θ3及び/又は第2刃面113bの刃面長L22と第3刃面113cの刃面長L23が異なる形状)で形成されていてもよい。
【0079】
図8(A)及び
図9(A)に示す第1刃面角θ1は、針管111の中心軸線O1と第1刃面113aとが成す角度である。
図8(A)及び
図8(B)に示す直線H1は、第1刃面113aに沿う仮想直線である。つまり、第1刃面角θ1は、中心軸線O1と直線H1が成す角度である。
【0080】
図9(B)に示す第2刃面角θ2は、針管111の中心軸線O1と第2刃面113bとが成す角度である。
図9(B)に示す直線H2は、第2刃面113bに沿う仮想直線である。つまり、第2刃面角θ2は、中心軸線O1と直線H2が成す角度である。
【0081】
図8(B)に示す第3刃面角θ3は、針管111の中心軸線O1と第3刃面113cとが成す角度である。
図8(B)に示す直線H3は、第3刃面113cに沿う仮想直線である。つまり、第3刃面角θ3は、中心軸線O1と直線H3が成す角度である。
【0082】
図8(A)及び
図9(A)に示す稜線角α1は、中心軸線O1と境目116に形成された稜線とが成す角度である。
図8(A)及び
図8(B)に示す直線B1は、稜線に沿う仮想直線である。つまり、稜線角α1は、中心軸線O1と直線B1が成す角度である。
【0083】
第1刃面角θ1及び稜線角α1は、例えば、鋭角に形成することができる。また、第1刃面角θ1は、稜線角α1に比べて、鋭角の度合いが大きくなるように形成することができる。なお、「鋭角の度合いが大きい」とは、鋭角の範囲において、角度がより小さいことを意味する。
【0084】
第2刃面角θ2及び第3刃面角θ3は、例えば、鋭角に形成することができる。また、第1刃面角θ1は、第2刃面角θ2及び第3刃面角θ3の各々と比べて、鋭角の度合いが大きくなるように形成することができる。
【0085】
注射針110は、上記のように各刃面角θ1、θ2、θ3及び稜線角α1の関係が規定されることにより、比較的短い刃面長L2で形成される場合においても、針先112の表皮層s1に対する刺入性が向上したものとなる。
【0086】
次に、
図6~
図9を参照して、本実施形態に係る注射針110の各部の好適な寸法例について説明する。
【0087】
図6に示す針管111の外径D1は、0.1mm以上0.2mm以下で形成することができる。また、針管111の外径D1は、被験体の皮内投与をより確実かつ簡単に実施可能とする観点より、0.130mm以上0.1845mm以下であることがより好ましい。
【0088】
図6に示す針管111の内径Φ1は、0.07mm以上0.1mm以下で形成することができる。
【0089】
図6に示す針管111の突出長L1は、0.9mm以上1.4mm以下である。
【0090】
図6に示す針管111の突出長L1は、医薬を皮内投与するのに適する長さであり、投与対象に応じて適切に選択される。例えば、投与対象(被験体)がヒトである場合には、針管111の突出長L1は0.9mm以上1.4mm以下であることが好ましい。被験体の皮内投与をより確実かつ簡単に実施可能とする観点より、針管111の突出長L1は、より好ましくは1.0mm以上1.3mm以下である。また、例えば、投与対象(被験体)が齧歯動物(ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ハムスターなど)などの非ヒト小型動物である場合には、針管111の突出長L1は0.1mm以上0.6mm以下であることが好ましく、被験体の皮内投与をより確実かつ簡単に実施可能とする観点より、針管111の突出長L1は、0.45mm以上0.5mm以下である針管を備えることがより好ましい。
【0091】
図6に示す針管111の延在方向(中心軸線O1と平行な方向)に沿う刃面113の長さ(刃面長)L2は、0.3mm未満で形成することができる。また、刃面113の長さL2は、被験体の表皮層s1の貫通性を高める観点より、0.15mm以上0.2mm以下であることがより好ましい。
【0092】
なお、刃面長L2は、第1刃面113aの刃面長L21と第2刃面113bの刃面長L22の合計値、もしくは第1刃面113aの刃面長L21と第3刃面113cの刃面長L23の合計値である。
【0093】
図6に示す針胴長L3は、0.05mm以上0.5mm以下で形成することができる。針胴長L3は、被験体の皮内投与をより確実かつ簡単に実施可能とする観点より、0.3mm以上0.35mm以下であることがより好ましい。
【0094】
図6に示す針管111の肉厚t1は、0.01mm以上0.06mm以下で形成することができる。針管111の肉厚t1は、針管111の外径D1及び針管111の内径Φ1との兼ね合いで注射針110による医薬の注入圧を適切な値とする観点より、0.0215mm以上0.0505mm以下であることがより好ましい。
【0095】
図6に示す刃面113の全長L2に対して第2刃面113bの刃面長L22及び第3刃面113cの刃面長L23が占める割合(L2/L22及びL2/L23)は40%以上60%以下に形成することができる。上記割合は、被験体の表皮層s1の刺入性を高める観点より、47%以上56%以下であることがより好ましい。
【0096】
なお、刃面長L2を0.15mm以上0.2mm以下で形成する場合において、上記割合を47%以上56%以下とする場合、第2刃面113bの刃面長L22及び第3刃面113cの刃面長L23は、例えば、0.05mm以上0.09mm以下で形成することができる。この場合、第1刃面113aの刃面長L21は、例えば、0.09mm以上0.17mm以下で形成することができる。
【0097】
図8(A)及び
図9(A)に示す第1刃面角θ1は、10°以上65°以下に形成することができる。第1刃面角θ1は、針先112の表皮層s1に対する刺入性を高める観点より、23°以上40°以下であることがより好ましい。
【0098】
図8(B)及び
図9(B)に示す第2刃面角θ2及び第3刃面角θ3は、20°以上85°以下に形成することができる。第2刃面角θ2及び第3刃面角θ3は、針先112の表皮層s1に対する刺入性を高める観点より、21°以上45°以下であることがより好ましい。
【0099】
図8(A)及び
図9(A)に示す稜線角α1は、15°以上70°以下に形成することができる。稜線角α1は、針先112の表皮層s1に対する刺入性を高める観点より、28°以上44°以下であることがより好ましい。
【0100】
[治療方法、薬剤輸送システム]
上述したように、開示の医薬は、乳癌、皮膚癌、自己免疫疾患の治療を目的として特に好適に使用できる。すなわち、本発明は、インドシアニングリーン誘導体が治療薬に結合してなる薬剤を含む医薬を被験体の表在リンパ節の上流側で皮内投与することを有する、乳癌の治療方法を提供する。本発明は、インドシアニングリーン誘導体が治療薬に結合してなる薬剤を含む医薬を被験体の表在リンパ節の上流側で皮内投与することを有する、皮膚癌の治療方法を提供する。本発明は、インドシアニングリーン誘導体が治療薬に結合してなる薬剤を含む医薬を被験体の表在リンパ節の上流側で皮内投与することを有する、自己免疫疾患の治療方法を提供する。
【0101】
前述したように、本実施形態に係る注射針110及び投与デバイス10は、被験体への皮内投与に好適な構成を有する。
【0102】
したがって、本実施形態では、突出長が0.9mm以上1.4mm以下である針管を備える注射針と、前記注射針を保持する針ハブと、を備える針組立体であって、前記針ハブは、前記針管の針先から基端側に向かう一定の範囲を露出させることにより、前記針管の突出長を調整する調整部と、前記調整部及び前記針管において前記調整部から露出した部分の周囲を囲むとともに、前記調整部及び前記針管との間に空間を空けて配置されたガイド部と、を有する針組立体、または前記針組立体と、前記針ハブに接続されたシリンジと、を備える投与デバイスであって、前記シリンジは、前記針ハブの基端側に配置される第1筒部と、前記第1筒部の基端側に配置され、前記第1筒部よりも大きな外径を備える第2筒部と、を有する、投与デバイスを用いて、被験体の表在リンパ節の上流側の投与部位に注射針が保持された針ハブのガイド部を押し付けた後、前記注射針を介して、インドシアニングリーン誘導体が治療薬に結合してなる薬剤を含む医薬を前記投与部位に垂直穿刺により皮内投与することを有する、被験体(特にヒト)への皮内投与方法が提供される。
【0103】
また、本実施形態では、突出長が0.9mm以上1.4mm以下である針管を備える注射針と、前記注射針を保持する針ハブと、を備える針組立体であって、前記針ハブは、前記針管の針先から基端側に向かう一定の範囲を露出させることにより、前記針管の突出長を調整する調整部と、前記調整部及び前記針管において前記調整部から露出した部分の周囲を囲むとともに、前記調整部及び前記針管との間に空間を空けて配置されたガイド部と、を有する針組立体、または前記針組立体と、前記針ハブに接続されたシリンジと、を備える投与デバイスであって、前記シリンジは、前記針ハブの基端側に配置される第1筒部と、前記第1筒部の基端側に配置され、前記第1筒部よりも大きな外径を備える第2筒部と、を有する、投与デバイスを用いて、被験体の表在リンパ節の上流側の投与部位に注射針が保持された針ハブのガイド部を押し付けた後、前記注射針を介して、インドシアニングリーン誘導体が治療薬に結合してなる薬剤を含む医薬を前記投与部位に垂直穿刺により皮内投与することを有する、乳癌、皮膚癌、または自己免疫疾患の治療方法が提供される。
【0104】
また、本実施形態では、突出長が0.9mm以上1.4mm以下である針管を備える注射針と、前記注射針を保持する針ハブと、を備える針組立体であって、前記針ハブは、前記針管の針先から基端側に向かう一定の範囲を露出させることにより、前記針管の突出長を調整する調整部と、前記調整部及び前記針管において前記調整部から露出した部分の周囲を囲むとともに、前記調整部及び前記針管との間に空間を空けて配置されたガイド部と、を有する針組立体、または前記針組立体と、前記針ハブに接続されたシリンジと、を備える投与デバイスであって、前記シリンジは、前記針ハブの基端側に配置される第1筒部と、前記第1筒部の基端側に配置され、前記第1筒部よりも大きな外径を備える第2筒部と、を有する、投与デバイスを用いて、被験体の表在リンパ節の上流側の投与部位に注射針が保持された針ハブのガイド部を押し付けた後、前記注射針を介して、インドシアニングリーン誘導体が治療薬に結合してなる薬剤を含む医薬を前記投与部位に垂直穿刺により皮内投与することを有する、薬剤のリンパ節での滞留の向上方法が提供される。
【0105】
また、本実施形態では、医薬の被験体(特にヒト)の表在リンパ節内滞留を向上するための薬剤輸送システムであって、前記薬剤輸送システムは、突出長が0.9mm以上1.4mm以下である針管を備える注射針と、前記注射針を保持する針ハブと、を備える針組立体であって、前記針ハブは、前記針管の針先から基端側に向かう一定の範囲を露出させることにより、前記針管の突出長を調整する調整部と、前記調整部及び前記針管において前記調整部から露出した部分の周囲を囲むとともに、前記調整部及び前記針管との間に空間を空けて配置されたガイド部と、を有する針組立体、または前記針組立体と、前記針ハブに接続されたシリンジと、を備える投与デバイスであって、前記シリンジは、前記針ハブの基端側に配置される第1筒部と、前記第1筒部の基端側に配置され、前記第1筒部よりも大きな外径を備える第2筒部と、を有する、投与デバイスを有し;前記医薬はインドシアニングリーン誘導体が治療薬に結合してなる薬剤を含み;被験体の表在リンパ節の上流側の投与部位に注射針が保持された針ハブのガイド部を押し付けた後、前記注射針を介して、前記医薬を前記投与部位に垂直穿刺により皮内投与する、薬剤輸送システムが提供される。
【0106】
本発明の一実施形態では、投与部位は、厚さが3.0mm未満(好ましくは、2.0mm未満)の真皮層s2を有する表在リンパ節の上流側の皮膚上層部s4である。また、本実施形態において、投与部位の厚さは、超音波画像診断装置によって測定される。
【0107】
また、皮内投与に使用される注射針110の突出長L1は、被験体の皮膚上層部s4の厚さに対する当該注射針110の突出長L1の割合が、0.9未満であることが好ましく、0.8未満であることがより好ましく、0.7以下であることが特に好ましい。これにより、針管111をより確実に皮膚上層部s4に配置でき、皮内投与成功率をさらに向上できる。
【0108】
上記に代えて、または上記に加えて、皮内注射を実施する際、注射針110の刃面113全体が被験体の皮膚上層部s4に埋まることが好ましい。これにより、針管111から医薬が漏れることを抑制できる。
【0109】
具体的には、刃面長L2は、被験体の皮膚上層部s4の厚さよりも小さく、かつ、被験体の皮膚上層部s4の厚さに対する注射針110の刃面長L2の割合が、0.60未満であることが好ましく、0.56未満であることがより好ましく、0.50未満であることがさらに好ましく、0.35未満であることが特に好ましい。これにより、医薬全量をより確実に皮膚上層部s4に注入でき、皮内投与成功率をさらに向上できる。
【0110】
皮内投与方法では、まず被験体の投与部位を確認する。なお、被験体の投与部位の下側(注射針110の刺入方向と反対側に位置する表皮層側)に、垂直穿刺を安定化させるための支持部材(以下、単に「支持部材」とも称する)を配置してもよい。この際、支持部材は、シリコーン樹脂などから形成されることが好ましい。このような支持部材は適度な硬度を有するため、投与部位を安定して固定できる。
【0111】
また、被験体の皮膚上層部s4の任意の部位を平坦になるように伸ばして、投与部位としてもよい。この際、針ハブ120が備えるガイド部123を投与部位に押し付けた後、この投与部位からガイド部123を所定の距離だけ離間させてもよい(表皮層s1から持ち上げる方向に移動させる)。これにより、医薬(薬液)の注入圧が下がり、良好に皮内投与を行うことができる。この場合のガイド部123の離間距離は、医薬の注入圧を十分下げる程度であることが好ましい。具体的には、投与時の注入圧力が5~20Nとなるような距離であることが好ましく、投与時の注入圧力が10~15Nとなるような距離であることがより好ましい。なお、上記「注入圧力」は、被験体に投与した際の手の感覚をもとにして、同程度の力でデジタルフォースゲージを押したときの圧力を測定し、この圧力を注入圧力とするによって、測定される。
【0112】
上記皮内投与方法および注射針の穿刺抵抗により、医薬を確実にかつ正確に被験体の皮内(皮膚上層部s4)に送達することができる。
【0113】
従来、被験体の真皮層s2内への医薬の投与方法としては、マントー法がよく知られている。マントー法は、真皮層s2を有する皮膚上層部s4に対して斜め方向に注射針110を穿刺する方法である。ここで、皮膚は、前述したように、表皮層s1及び真皮層s2からなる皮膚上層部s4、ならびに皮下組織層s3から構成される。ヒト三角筋の皮膚上層部の厚さは、一般的に約2mmと薄い。このため、皮膚上層部s4への皮内投与方法は難しく、手技や使用する注射針径によっては皮下組織層s3中や皮膚表面に医薬が漏れる可能性がある。また、皮内投与が成功するか否かは注射を行う術者の技量によりばらつきが生じうる。これに対して、本実施形態に係る皮内投与方法(特に本開示の投与デバイスを用いた皮内投与方法)によれば、医薬を所定量確実に皮内投与することができる。また、垂直穿刺によるため、手技が容易であり、また、術者によるばらつきを抑えることができる。さらに、医薬の漏れを抑制できる。ゆえに、本実施形態の皮内投与方法によれば、所定量の医薬を確実にかつ正確に被験体の皮内に送達することができる上、所定量の医薬(薬剤、治療薬)を確実により正確にかつ長期間目的とする表在リンパ節内に滞留することができる。このため、従来より少ない量の医薬(治療薬)であっても、投与医薬による効果を発揮することが期待できる。また、皮下組織に比べて皮内組織では神経が少ないため、投与時の痛みを軽減・緩和できる。
【実施例0114】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
【0115】
[実験1:投与経路による効果の確認]
本実験では、各材料を下記のようにして準備した。
【0116】
(使用動物)
マウス(系統:BALB/cAjcl、メス、週齢:6週齢、日本クレア(株)より購入)に対し、7日間の検疫・馴化期間を設け、全個体健康状態に異常がなく体重減少を認めないことを確認して、試験に供した。マウスには、12時間照明、温度20~26℃、湿度30~70%の飼育環境で、餌及び水を自由摂取させた。実験はテルモ株式会社における動物実験に関する指針に従って実施した。
【0117】
(被験物質の調製)
製造社の指示にしたがって、Anti-KLH(Anti-Keyhole Limpet Hemocyanin) mouse IgG1抗体[Purified Mouse Monoclonal IgG, Clone#11711](R&D Systems製、Cat.No.MAB002、Lot.No.IX2417011)(分子量=150kDa)(IgG Isotype Control)に、蛍光色素としてICG-Sulfo-OSu(株式会社同仁化学株式会社製、Cat.No.I254)を、ICG-Sulfo-OSu:抗体(IgG Isotype Control)=30:1のモル比で標識し、抗体1分子に対しICGが2分子結合したICG標識抗体を含むPBS溶液(抗体濃度=0.497mg/mL)を作製した(Lot.No.2D-022, 緩衝液:PBS、pH=7.4)。
【0118】
上記で得られたICG標識抗体を含むPBS溶液を、PBS(ThermoFisher Scientific製、Cat.No.10010-023, Lot.No.2081860、pH 7.4)で0.280mg/mLの濃度に希釈し、皮内および皮下投与用抗体溶液を調製した(皮内/皮下投与用ICG標識抗体溶液)。
【0119】
また、上記で得られたICG標識抗体を含むPBS溶液を、PBS(ThermoFisher Scientific製、Cat.No.10010-023, Lot.No.2081860、pH 7.4)で0.014mg/mLの濃度に希釈し、静脈投与用抗体溶液を調製した(静脈投与用ICG標識抗体溶液)。
【0120】
(投与デバイス)
皮内投与用として、注射針(針管の外径:0.30mm(31G)、針長さ:20mm、刃面角:18°、針先形状:ランセット)に、シリンジ(容量:50μL)を装着したものを準備した(皮内投与デバイス)。
【0121】
皮下投与用として、注射針(テルモ株式会社製、コード番号:NN-2719S)(針管の外径:0.40mm(27G)、針長さ:19mm、針先形状:ショートベベル、刃面角:18°)に、シリンジ(容量:50μL)を装着したものを準備した(皮下投与デバイス)。
【0122】
静脈投与用として、注射針(テルモ株式会社製、コード番号:NN-2719S)(針管の外径:0.40mm(27G)、針長さ:19mm、針先形状:ショートベベル、刃面角:18°)に、シリンジ(容量:1mL)を装着したものを準備した(静脈投与デバイス)。
【0123】
(使用機器・器具)
IVIS Imaging System:Perkin Elmer製、型番:Lumina Series III(以下では、単に「IVIS」と記載する)
IVISソフトウェア:Perkin Elmer製、型番:Living Image(登録商標) Software 4.7.3。
【0124】
実施例1:皮内投与
各マウス(3匹)を、麻酔器(株式会社夏目製作所製、型番:KN-1071)を用いて、イソフルラン(イソフルラン吸入麻酔液「ファイザー」、製造:マイラン製薬株式会社、販売:ファイザー株式会社)で麻酔した(導入麻酔:2.0~3.0%、維持麻酔:2.0~3.0%、キャリアガス:空気)。麻酔下で、皮内投与デバイスを用いて、マントー法により、皮内/皮下投与用ICG標識抗体溶液10μL(ICG標識抗体 2.8μg)を上記マウスの前肢皮内に投与した(マウスへの投与用量:2.8μg/head)。投与後、各マウスの皮内投与部位を目視により確認した。その結果、すべてのマウスで、注射液(薬液)の漏れがなく、膨隆が形成されていたため、「皮内投与成功」と判断した。
【0125】
次に、IVISを用いて、各マウスの腋窩リンパ節の蛍光を観察・撮影した(0日)。撮影後に、マウスを覚醒させた。さらに、投与してから1日、2日および7日後に、各マウスをIVIS Imaging Systemを用いて腋窩リンパ節の蛍光を観察・撮影した。この際、撮影は、「Excitation Filter; 760nm, Emission Filter; 845nm, Exposure Time; Auto, Binning; Medium, F/Stop; 2」条件下で行った。結果を
図12に示す。
図12中、赤色が観察される領域はICG標識抗体が存在することを示す。
図12から、皮内投与により、少なくとも7日間は腋窩リンパ節にICG標識抗体が滞留することが確認される。また、撮影後、腋窩リンパ節での蛍光強度(Phtons/sec)をIVISソフトウェアを用いて解析した。結果を
図13に示す。
【0126】
また、投与してから7日目の最終撮影後、マウスから腋窩リンパ節を採材し、96well plateに1wellあたり1組織を配置した。その後、IVISを用いて、リンパ節組織中の残留ICG標識抗体量(Total lymph node flux)(単位:photons/sec)を測定した。この際、測定は、「Excitation Filter; 760nm, Emission Filter; 845nm, Exposure Time; Auto, Binning; Medium, F/Stop; 2」の条件下で実施した。
【0127】
IVISにて測定後、蛍光強度(Phtons/sec)をIVISソフトウェアを用いて測定した。結果を
図14に示す(
図14中のI.D.)。なお、腋窩リンパ節を示す結果において、皮内投与群(I.D.群;
図14中のI.D.)に対して、皮下投与群(S.C.群:
図14中のS.C.)および静脈投与群(I.V.群:
図14中のI.V.)でリンパ節移行に有意な差が認められるか検証することを目的とし、I.D.群を対象にDunnett's multiple comparisons test(v.s. *;P<0.05, **;P<0.01)で有意差検定を実施した。
【0128】
比較例1:皮下投与
各マウス(4匹)を、麻酔器(株式会社夏目製作所製、型番:KN-1071)を用いて、イソフルラン(イソフルラン吸入麻酔液「ファイザー」、製造:マイラン製薬株式会社、販売:ファイザー株式会社)で麻酔した(導入麻酔:2.0~3.0%、維持麻酔:2.0~3.0%、キャリアガス:空気)。麻酔下で、皮下投与デバイスを用いて、皮内/皮下投与用ICG標識抗体溶液10μL(ICG標識抗体 2.8μg)を上記マウスの前肢皮下に投与した(マウスへの投与用量:2.8μg/head)。この際、投与部位をつまんだ状態で、体軸に沿って注射針を挿入し、針先が容易に動き、皮下に挿入されていることを確認した後、注射針を介して、皮内/皮下投与用ICG標識抗体溶液を上肢皮下に投与した。投与後は静かに針を抜き、投与液が漏出しないことを確認した。
【0129】
次に、IVISを用いて、各マウスの腋窩リンパ節の蛍光を観察・撮影した(0日)。撮影後に、マウスを覚醒させた。さらに、投与してから1日、2日および7日後に、各マウスをIVIS Imaging Systemを用いて腋窩リンパ節の蛍光を観察・撮影した。結果を
図12に示す。
図12から、投与後2日目くらいまでは赤い領域(即ち、ICG標識抗体の存在)が確認されたが、それ以降は赤い領域が著しく小さくなっていき、7日目には蛍光はほとんど確認されなかった。また、撮影後、腋窩リンパ節での蛍光強度(Phtons/sec)をIVISソフトウェアを用いて解析した。結果を
図13に示す。
図13からも、皮内投与の際には、皮下投与に比して、抗体をより長期間滞留できることがわかる。
【0130】
また、投与してから7日目の最終撮影後、実施例1と同様にして、マウス腋窩リンパ節組織中の残留ICG標識抗体量(Total lymph node flux)(単位:photons/sec)を測定・解析した。結果を
図14に示す(
図14中のS.C.)。
【0131】
比較例2:静脈投与
各マウス(3匹)を、覚醒下でマウス保定器に入れた。各マウスの尾静脈下に、静脈投与デバイスを用いて、静脈投与用ICG標識抗体溶液200μL(ICG標識抗体 2.8μg)を投与した(マウスへの投与用量:2.8μg/head)。
【0132】
投与直後(0日)、ならびに投与してから1日、2日、および7日後に、各マウスをIVIS Imaging Systemを用いて腋窩リンパ節の蛍光を観察・撮影した。結果を
図12に示す。その結果、投与直後から赤い領域(即ち、ICG標識抗体の存在)は腹部(肝臓)でのみ観察され、腋窩リンパ節では確認されなかった。また、7日後には赤い領域(即ち、ICG標識抗体の存在)を観察できなかった。これは、ICG標識抗体が肝臓で代謝されたことによると考えられる。
【0133】
また、投与してから7日目の最終撮影後、実施例1と同様にして、マウス腋窩リンパ節組織中の残留ICG標識抗体量(Total lymph node flux)(単位:photons/sec)を測も定・解析した。結果を
図14に示す(
図14中のI.V.)。
【0134】
図14の結果から、皮内投与群(I.D.群;
図14中のI.D.)では、皮下投与群(S.C.群:
図14中のS.C.)および静脈投与群(I.V.群:
図14中のI.V.)に比して、ICG標識抗体が有意に腋窩リンパ節に移行・滞留していることがわかる。なお、上記効果はマントー法による皮内投与によるものであるが、皮内投与であれば他の方法によっても同様の効果が認められると考えられる。また、上記効果はマウスでの効果であるが、ヒトへの皮内投与の場合も同様の効果が認められると考えられる。さらに、上記効果は、ICG標識されたAnti-KLH mouse IgG1抗体で確認したが、他のICG標識された薬剤でも同様の効果が観察されると考えられる。
【0135】
[実験2:ICG標識による効果の確認]
本実験では、各材料を下記のようにして準備した。
【0136】
(使用動物)
ラット(系統:Crl:CD(SD)、雌雄:メス、週齢:6週齢、ジャクソン・ラボラトリー・ジャパン株式会社(旧日本チャールス・リバー株式会社)より購入)に対し、7日間の検疫・馴化期間を設け、全個体健康状態に異常がなく体重減少を認めないことを確認して、試験に供した。ラットには、12時間照明、温度20~26℃、湿度30~70%の飼育環境で、餌及び水を自由摂取させた。実験はテルモ株式会社における動物実験に関する指針に従って実施した。
【0137】
(試薬)
本実験に使用した試薬に関する情報は、下記表1の通りである。
【0138】
【0139】
(投与デバイス)
皮内投与用として、注射針(針管の外径:0.30mm(31G)、針長さ:20mm、刃面角:18°、針先形状:ランセット)に、シリンジ(容量:50μL)を装着したものを準備した(皮内投与デバイス)。
【0140】
皮下投与用として、注射針(テルモ株式会社製注射針、コード番号:NN-2719S)(針管の外径:0.40mm(27G)、針長さ:19mm、針先形状:ショートベベル、刃面角:18°)に、シリンジ(容量:100μL)を装着したものを準備した(皮下投与デバイス)。
【0141】
(使用機器・器具)
本実験に使用した機器に関する情報は、以下の通りである:
・天秤:ザルトリウス社製、型番:CP224S
・凍結破砕チューブ:安井器械株式会社製、型番:ST-0320PCF
・金属ビーズ(メタルコーン):安井器械株式会社製、型番:MC-0316(S)
・ホモジナイザー:安井器械株式会社製、型番:ST-0320PCF
・遠心機(Plate用):株式会社久保田製作所製、型番:KUBOTA-5220
・遠心機(Tube用):株式会社久保田製作所製、型番:KUBOTA-3780
・プレートシェイカー:株式会社日伸理化製、型番:N-704
・インキュベーター:三洋電機バイオメディカ株式会社製、型番:MCO-20AIC
・プレートリーダー: Molecular Devices社製、型番:VERSA max microplate reader
・プレートリーダー解析ソフト:Molecular Devices社製、型番:SoftMax Pro 7.0.3
・薬用保冷庫:PHCホールディングス株式会社(旧パナソニックヘルスケア株式会社)製、型番:MPR-414FS-PJ
・ディープフリーザー:PHCホールディングス株式会社(旧パナソニックヘルスケア株式会社)製、型番:MDF-C8V1-PJ。
【0142】
(被験物質の調製)
Anti-KLH(Anti-Keyhole Limpet Hemocyanin) mouse IgG1抗体[Purified Mouse Monoclonal IgG, Clone#11711](R&D Systems製、Cat.No.MAB002、Lot.No.IX2417011)(分子量=150kDa)(IgG Isotype Control)15μgをPBS(ThermoFisher Scientific製、Cat.No.10010-023, Lot.No.2081860、pH 7.4)10μLで希釈して、皮内投与用抗体溶液を調製した(皮内投与用未標識抗体溶液)。
【0143】
Anti-KLH(Anti-Keyhole Limpet Hemocyanin) mouse IgG1抗体[Purified Mouse Monoclonal IgG, Clone#11711](R&D Systems製、Cat.No.MAB002、Lot.No.IX2417011)(分子量=150kDa)(IgG Isotype Control)15μgをPBS(ThermoFisher Scientific製、Cat.No.10010-023, Lot.No.2081860、pH 7.4)100μLで希釈して、皮下投与用抗体溶液を調製した(皮下投与用未標識抗体溶液)。
【0144】
参考例
各ラット(9匹)を、麻酔器(株式会社夏目製作所製、型番:KN-1071)を用いて、イソフルラン(イソフルラン吸入麻酔液「ファイザー」、製造:マイラン製薬株式会社、販売:ファイザー株式会社)で麻酔した(導入麻酔:2.0~3.0%、維持麻酔:2.0~3.0%、キャリアガス:空気)。麻酔下で、皮内投与デバイスを用いて、皮内投与用未標識抗体溶液(Anti-KLH mouse IgG1 15μg in PBS 10μL)10μLをラットの前肢皮内に投与した(ラットへの投与用量:15μg/head)。投与後、各ラットの皮内投与部位を目視により確認した後、覚醒させた。その結果、すべてのマウスで、注射液(薬液)の漏れがなく、膨隆が形成されていたため、「皮内投与成功」と判断した。
【0145】
各ラット(9匹)を、麻酔器(株式会社夏目製作所製、型番:KN-1071)を用いて、イソフルラン(イソフルラン吸入麻酔液「ファイザー」、製造:マイラン製薬株式会社、販売:ファイザー株式会社)で麻酔した(導入麻酔:2.0~3.0%、維持麻酔:2.0~3.0%、キャリアガス:空気)。麻酔下で、皮下投与デバイスを用いて、皮下投与用未標識抗体溶液(Anti-KLH mouse IgG1 15μg in PBS 100μL)100μLをラットの前腕皮下に投与した(ラットへの投与用量:15μg/head)。投与後、覚醒させた。
【0146】
下記表2に各投与群の構成を要約する。
【0147】
【0148】
各投与してから上記表2に示される時間経過後、ラットを放血により安楽死処置した。各ラットに対し、投与を施した前肢の腋下に位置する腋窩リンパ節の採材を行った。同様の手法で無処置ラット(4匹)の腋窩リンパ節の採材を行い、ブランク用Sampleとした。採材した腋窩リンパ節の重量を測定した後、凍結破砕用チューブに入れ-80℃にて凍結保存した。
【0149】
(腋窩リンパ節ホモジネートの調製)
-80℃にて凍結保存した腋窩リンパ節に、凍結破砕用の金属ビーズ(メタルコーン)を入れ、液体窒素に漬けた。ホモジナイザーにて、2,500rpm、室温(25℃)、10secで凍結破砕を行った。破砕後、希釈倍率が40倍になるようにRIPA Bufferを添加し、再度2,500rpm、室温(25℃)、10secで破砕した。
【0150】
破砕したサンプルを超音波破砕機で3分間超音波処置し、メタルコーンを回収後、2mLチューブにホモジネート液を移し、遠心機(KUBOTA-3780)で12,000rpm、4℃、5minの条件で遠心を行った。
【0151】
遠心後、脂肪層を除く上清を1.5mLチューブに回収し、ELISAの測定当日まで-80℃にて凍結保存した(リンパ節ホモジネート)。
【0152】
(抗体濃度測定(ELISA))
上記にて調製したリンパ節ホモジネートにつき、抗体濃度を以下の手法で測定した。
【0153】
1.試薬準備・調整
<Antigen(KLH Stock)>
Hemocyanin from Megathura crenulata [keyhole limpet](以下、KLHとする)20mg/vialに対して、蒸留水2mLを添加し、10mg/mL濃度に調整し、100μLずつ分注し、-20℃以下で保存した。
【0154】
<Standard>
IgG Isotype Control(Purified Mouse Monoclonal IgG, Clone11711) 0.5mg/vialに対して、蒸留水1mLを添加し、0.5mg/mL濃度に調整し、4℃で保存した。
【0155】
<Coating Buffer>
Carbonate-Bicarbonate Buffer Capsule 1カプセルに対して、蒸留水100mLを添加し、0.05 M Carbonate-Bicarbonate Buffer(pH 9.4)を調製した(この際、カプセルの内容物のみ使用し、カプセルは溶解させない)。
【0156】
<Wash Buffer>
PierceTM 20X PBS TweenTM20 Buffer を蒸留水で20倍希釈し、常温で保存した。
【0157】
<Blocking Buffer>
Blocking Oneを使用する当日に蒸留水で5倍希釈した。
【0158】
2.ELISA
凍結保存した10mg/mLのKLH stockを融解させ、遠心機(KUBOTA-3780)で15000rpm、4℃、5分遠心し、20μg/mLの濃度に調整した(KLH溶液)。調製したKLH溶液を、Nunc-ImmunoTM Plate Iに各well 50μLずつ添加し、遠心機(KUBOTA-5220)で1000rpm、室温(25℃)、5分で遠心した。遠心後、4℃で一晩で静置して、各wellをKLH溶液でコートした(KLHコートPlate)。
【0159】
KLHコートPlate内のKLH溶液を除去し、各wellにWash Buffer 200μLずつ添加後、除去した。この操作を計4回繰り返し、Plateを洗浄した。その後、調製済みのBlocking Bufferを各wellに200μLずつ添加し、プレートシェイカーで緩やかに混合させ、37℃で1時間インキュベートした。
【0160】
Blocking反応中に、リンパ節ホモジネートは8000倍希釈になるようにCan Get Signal(登録商標) Solution 1(東洋紡株式会社製)で調製した。また、Standardを0.006859~15ng/mLの範囲の濃度となるようにCan Get Signal(登録商標) Solution 1(東洋紡株式会社製)で調製し、これらをStandardサンプルとして用いた。
【0161】
Blocking反応終了後に、Blocking bufferを除去し、各wellにWash Buffer 200μLずつ添加後、除去した。この操作を計4回繰り返し、Plateを洗浄した。その後、Blank(StandardのBlankはCan Get Signal(登録商標) Solution 1とし、ホモジネートのBlankは無処置ラットのリンパ節ホモジネートとした)、調製したStandard、調製した希釈Sampleをいずれも「duplicate」で各wellに50μLずつ添加し、プレートシェイカーで緩やかに混合させ、37℃で1時間インキュベートした。
【0162】
Sampleの反応中に、Secondary antibody(Goat anti-Mouse IgG1 HRP Conjugated(MinX hu & rt))を50ng/mLの濃度になるようにCan Get Signal(登録商標) Solution 2(東洋紡株式会社製)で調製した。
【0163】
Sampleの反応終了後に、Sampleを除去し、各wellにWash Buffer 200μLずつ添加後、除去した。この操作を計4回繰り返し、Plateを洗浄した。その後、調製したSecondary antibodyを各wellに50 μLずつ添加し、プレートシェイカーで緩やかに混合させ、37℃で1時間インキュベートした。
【0164】
Secondary antibodyの反応終了後に、Secondary antibodyを除去し、各wellにWash Buffer 200μLずつ添加後、除去した。この操作を計5回繰り返し、Plateを洗浄した。洗浄後、すぐにTMB Peroxidase SubstrateとTMB Peroxidase Substrate Solution Bを1:1の比で混合し、調製したTMB溶液を、各wellに50μLずつ添加し、プレートシェイカーで緩やかに混合後、室温(25℃)で10~20分反応させた。青色の染色反応を確認し、適切なタイミングで1mol/L 硫酸(2N)を各wellに50μLずつ添加し、プレートシェイカーで緩やかに混合させた。
【0165】
硫酸による反応停止後すぐに、プレートリーダー(VERSA max microplate reader)にて450nmおよび540nmの波長で測定し、「450nmのOD値」から「540nmのOD値」を差し引いた値を「補正後の測定値」とし、さらにBlankで補正を行った値で算出した(再補正後の測定値)。Standard Curve fitは「4-Parameter Logistic」とした。
【0166】
測定した結果(再補正後の測定値)から、各々の条件のStandard Curveの使用可能範囲を判定し、下限と上限を決定した。尚、SoftMax Pro 7.0.3を用いて濃度を算出した。
【0167】
前述のStandard Curveから算出した濃度とリンパ節重量、Total. volume(RIPA Buffer+リンパ節量)の添加量から以下の計算式で「リンパ節1mgあたりのAnti-KLH mouse IgG1抗体含有量」を算出した。
【0168】
【0169】
リンパ節1mgあたりのAnti-KLH mouse IgG1抗体含有量(ng/1mg Lymph Node)の経時変化を
図15に示す。
図15の結果から、ICGで標識していない抗体では、皮内投与、皮下投与共に投与後7時間以内に大きく抗体量が減少し、24時間後にはほとんど検出されなくなってしまうことがわかる。これに対して、実施例1で示したように、ICGで標識(結合)させた抗体であれば、リンパ節への滞留を有意に延長できる。
【0170】
以上、本発明を実施形態及び実施例に基づいて説明したが、本発明は、本明細書内において説明された内容に限定されず、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜改変を加えることが可能である。