(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037363
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】光学部材および照明装置
(51)【国際特許分類】
G02B 3/00 20060101AFI20240312BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20240312BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20240312BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240312BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240312BHJP
【FI】
G02B3/00 Z
F21V5/00 320
F21V5/04 650
F21S2/00 330
G02B3/00 A
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142168
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】野村 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】澤 佳憲
(57)【要約】
【課題】輝度ムラを低減することが可能な光学部材および照明装置を提供する。
【解決手段】光を屈折させる屈折部(21)と、屈折部(21)の両側に配置された突出部(23)を有する反射部(22)とを備え、突出部(23)は、突出部(23)に入射する光の反射を調整する光反射調整部(24)を備える光学部材(20)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を屈折させる屈折部と、
前記屈折部の両側に配置された突出部を有する反射部と、を備え、
前記突出部は、前記突出部に入射する光の反射を調整する光反射調整部を備えることを特徴とする光学部材。
【請求項2】
請求項1に記載の光学部材であって、
前記光反射調整部は、前記反射部の傾斜が変化する傾斜変化部であることを特徴とする光学部材。
【請求項3】
請求項2に記載の光学部材であって、
前記傾斜変化部は、前記突出部の内壁よりも前記屈折部側にまで延伸されて爪状部を構成することを特徴とする光学部材。
【請求項4】
請求項3に記載の光学部材であって、
前記爪状部の内面は、前記光を全反射する角度で傾斜していることを特徴とする光学部材。
【請求項5】
請求項1に記載の光学部材であって、
前記屈折部および前記反射部は、一軸方向に延伸して形成されており、
前記光反射調整部は、前記一軸方向に沿った周期的な凹凸形状であることを特徴とする光学部材。
【請求項6】
請求項5に記載の光学部材であって、
前記凹凸形状は、前記一軸方向に沿って所定の円錐形状を複数配列し、前記円錐形状と前記反射面の交差する領域を含むことを特徴とする光学部材。
【請求項7】
請求項6に記載の光学部材であって、
前記円錐形状は、頂角が100度以上であることを特徴とする光学部材。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一つに記載された光学部材と、
前記屈折部および前記突出部の光入射側に配置された発光素子を有することを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来全反射を利用したレンズ、いわゆるTIRレンズを用いた光源装置が知られている。TIRレンズは中央部に配置された屈折部、および屈折部の周囲に配置された反射部を備えている。TIRレンズを用いた光源装置を開示した文献として、例えば特許文献1が知られている。
【0003】
特許文献1に開示された光学ユニット(光源装置)は複数の光源(発光素子)、複数の光源上に各々配置されたコリメートレンズの機能を有する複数の光学手段(TIRレンズ)、複数の光学手段の出射面側に配置された複数のレンズアレイを備え、複数の異なる配光パターンを形成している。特許文献1に開示された光学ユニットの用途は、主に車両用灯具である。
【0004】
上記のような光源装置は例えば車両等に搭載されるヘッドアップディスプレイ(以下、「HUD」という場合がある)の照明装置(バックライト)として用いられる場合もある。HUDに用いる光源装置においては、特に明るく、むらのない、すなわち、高輝度で均一な輝度分布であることが求められる。換言すれば、光束の利用効率が高く適切な配光であることが求められる。上記のTIRレンズは、発光素子からの出射光において出射軸とのなす角度(指向角)が大きく外側に広がる光も集光させることができるので、この目的に適合する光学手段として用いられる場合も多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来から用いられているTIRレンズは、屈折部に入射した光は正の光学的パワーで集光し、反射部に入射した光は傾斜した反射面での全反射を利用しているため、屈折部と反射部の境界において出射される光量を確保することが困難であった。このようなTIRレンズを光学部材として用いると、屈折部と反射部の境界に輝度ムラが生じ、良好な画像表示が困難になるという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、輝度ムラを低減することが可能な光学部材および照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の光学部材は、光を屈折させる屈折部と、前記屈折部の両側に配置された突出部を有する反射部と、を備え、前記突出部は、前記突出部に入射する光の反射を調整する光反射調整部を備えることを特徴とする。
【0009】
このような本発明の光学部材では、光反射調整部で突出部に入射する光を調整し、屈折部と反射部の境界における光量を向上させ、輝度ムラを低減することが可能となる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記光反射調整部は、前記反射部の傾斜が変化する傾斜変化部である。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記傾斜変化部は、前記突出部の内壁よりも前記屈折部側にまで延伸されて爪状部を構成する。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記爪状部の内面は、前記光を全反射する角度で傾斜している。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記屈折部および前記反射部は、一軸方向に延伸して形成されており、前記光反射調整部は、前記一軸方向に沿った周期的な凹凸形状である。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記凹凸形状は、前記一軸方向に沿って所定の円錐形状を複数配列し、前記円錐形状と前記反射面の交差する領域を含む。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記円錐形状は、頂角が100度以上である。
【0016】
また上記課題を解決するために、本発明の照明装置は、上記何れか一つに記載の光学部材と、前記屈折部および前記突出部の光入射側に配置された発光素子を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、輝度ムラを低減することが可能な光学部材および照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る光学部材20および照明装置100の概要を説明する模式断面図であり、
図1(a)は本実施形態の照明装置100を示し、
図1(b)は仮想的なTIRレンズを示している。
【
図2】照明装置100における光の経路を模式的に説明する図であり、
図2(a)は第1実施形態の光学部材20および照明装置100での光の経路を示し、
図2(b)は仮想的なTIRレンズでの光の経路を示している。
【
図3】光学部材20を用いた光照射の照度分布を説明する模式図であり、
図3(a)は第1実施形態の光学部材20での照度分布を示し、
図3(b)は仮想的なTIRレンズでの照度分布を示している。
【
図4】第2実施形態に係る光学部材30および照明装置200の概要を説明する模式断面図であり、
図4(a)は幅方向の断面図を示し、
図4(b)は長手方向の断面図を示している。
【
図5】光学部材30の構造を示す模式斜視図である。
【
図6】光学部材30の凹凸形状34について説明する模式図である。
【
図7】凹凸形状34を形成する仮想的な円錐形状の頂角2θと照度分布の関係を示す表である。
【
図8】第3実施形態に係る光学部材40の構造を示す模式斜視図である。
【
図9】第3実施形態の変形例に係る光学部材40および照明装置200の概要を説明する模式断面図である。
【
図10】第4実施形態に係る光学部材40での対流による放熱性向上について説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る光学部材20および照明装置100の概要を説明する模式断面図であり、
図1(a)は本実施形態の照明装置100を示し、
図1(b)は仮想的なTIRレンズを示している。
図1(a)に示すように、照明装置100は、発光素子10と、光学部材20を有している。
【0020】
発光素子10は、配線が形成された搭載基板(図示省略)に搭載されて、駆動回路によって電流が供給されることで所定の色で発光する電子部品である。発光素子10は複数個が紙面に垂直な方向に沿って配置されている。発光素子10の具体的な構造は限定されないが、一次光を発光する発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)と、一次光の一部を二次光に波長変換する波長変換部材を組み合わせたLEDパッケージを用いることができる。また、発光ダイオードの材料も限定されず、公知の材料および構造を用いることができる。一例としては、青色光を発光するGaN系LEDを用いることができる。また、波長変換部材の材料も限定されず、一例としては青色光で励起されて黄色光を発光するYAG系蛍光体材料等を用いることができる。なお、本実施形態では発光素子10の配列数を1列としているが、2列以上であってもよい。また発光素子10はLEDに限らず半導体レーザー等であってもよい。
【0021】
光学部材20は、発光素子10が照射した光が入射して、光を屈折および反射させて所定方向に照射するための部材である。
図1に示したように、光学部材20は、屈折部21と、反射部22を備え、反射部22にはさらに突出部23および傾斜変化部24が設けられている。また光学部材20は
図1に示した断面形状の各部が紙面に垂直な方向に延伸して形成されており、一軸TIR(内部全反射:Total Internal Reflection)レンズを構成している。
図1に示したように、光学部材20は、屈折部21、反射部22、突出部23および傾斜変化部24が同じ材料で一体に形成されている。
【0022】
屈折部21は、光学部材20の中央近傍に配置され、入射した光を屈折させて透過する部分である。屈折部21の発光素子10と対向する側には、曲面形状の屈折部入射面21aが設けられている。屈折部入射面21aの形状は限定されないが、発光素子10から拡大して入射した光を平行光に近づけるためには凸レンズ形状とすることが好ましい。
図1に示したように屈折部入射面21aは、周囲を反射部22で囲まれて反射部22中央に位置する凹部として形成されている。したがって、発光素子10から照射された光の一部は、屈折部21と空気との屈折率差によって屈折部入射面21aで屈折され、屈折部21を透過して光出射面から照射される。
【0023】
反射部22は、屈折部21の両脇に配置され、入射した光を反射して照射する部分である。反射部22のうち、屈折部21よりも発光素子10方向(図中下方向)に延伸された部分は突出部23となっている。反射部22の外側面は光出射面に対して所定角度で傾斜した反射面22aとなっている。
【0024】
突出部23は、反射部22のうち屈折部21よりも発光素子10方向に突出して高さhだけ伸びている部分であり、その先端の一部は傾斜変化部24となっている。傾斜変化部24は、突出部23の先端が内側に折れ曲がり、突出部23の内壁よりも屈折部21側にまで延伸されて爪状部を構成している。後述するように傾斜変化部24は、本発明の光反射調整部に相当している。光学部材20は、金型にシリコーンなどの樹脂材料をインジェクションモールド技術等で流し込み、材料硬化後に金型から抜き取ることで形成することができる。このとき、傾斜変化部24が突出部23から内側に折れ曲がっているが、傾斜変化部24の厚みが小さいため、傾斜変化部24が弾性変形して金型から抜き取り作業を行うことができる。
【0025】
突出部23および傾斜変化部24の外側面は、それぞれ反射面23a,24aとなっている。反射面23aは、反射面22aから連続して形成された面であり、光出射面に対して反射面22aと同じ角度で傾斜している。反射面24aは、光出射面に対して反射面22a,23aとは異なる角度で傾斜している。また、
図1中で上方の光出射面側から発光素子10を見た場合の平面視において、反射面24aの範囲内に突出部入射面23bが含まれている。
【0026】
突出部23および傾斜変化部24の内側面は、それぞれ突出部入射面23bおよび傾斜変化部入射面24bとなっている。突出部入射面23bは、屈折部21と反射部22の境界から発光素子10方向に延伸して形成された内壁面であり、発光素子10から照射された光の一部が反射部22および突出部23に入射する部分である。傾斜変化部入射面24bは、突出部入射面23bの先端から延伸して形成された内側面(内面)であり、発光素子10から照射された光の一部が傾斜変化部24に入射する部分である。
【0027】
図1(b)は、
図1(a)に示した光学部材20において、傾斜変化部24を設けずに突出部23の反射面23aと突出部入射面23bがそのまま延伸された場合を想定した仮想的なTIRレンズを示している。傾斜変化部24を設けない場合の突出部23の仮想的な高さをLとすると、
図1(a)に示した例における突出部23の高さhはL>hとなっている。また突出部23の高さhは、仮想的な高さLの半分以上であることが好ましく、2/3以上であることがより好ましい。高さhがこれらの範囲よりも小さい場合には、突出部入射面23bの面積が小さくなり、反射面22a,23aで反射される光量が低下し好ましくない。
【0028】
図2は、照明装置100における光の経路を模式的に説明する図であり、
図2(a)は本実施形態の光学部材20および照明装置100での光の経路を示し、
図2(b)は仮想的なTIRレンズでの光の経路を示している。反射面22a,23a,24aの傾斜角度は、反射部22と空気との屈折率差によって発光素子10からの光が臨界角度以上で到達し、全反射される角度とされている。
【0029】
図2(a)に示したように、発光素子10から照射された光は、一部が突出部入射面23bから突出部23に入射し、反射面22a,23aで全反射されて光出射面から外部に照射される。また、発光素子10から照射された光は、一部が傾斜変化部入射面24bから傾斜変化部24に入射し、反射面24aで全反射されて光出射面から外部に照射される。また、発光素子10から照射された光は、一部が屈折部21に入射して屈折され、光出射面から外部に照射される。また傾斜変化部入射面24bは、光出射面に対して所定角度で傾斜しており、表面に到達した光の一部が反射される。
【0030】
図2(b)に示したように、傾斜変化部24を設けない仮想的なTIRレンズにおいては、突出部入射面23bから斜めに突出部23に入射した光が反射面22a,23aで全反射される。このとき、発光素子10から略横方向に進行して反射面23aに到達した光は、反射面23aに対する入射角度が小さくなり、屈折部21と反射部22の境界である突出部入射面23bの近傍では全反射せずに透過してしまう。
【0031】
しかし、
図2(a)に示した本実施形態の光学部材20では、突出部23の先端に傾斜変化部24が設けられており、反射面24aの傾斜角度が反射面23aとは異なっており、光出射面に対する傾斜角度が大きくなっている。したがって、反射面24aに到達した光は、反射面24aに対する入射角度が大きくなり、発光素子10から略横方向に進行した光も良好に全反射することができる。また、傾斜変化部24の反射面24aは、上面視において突出部入射面23bと重なっており、反射面24aで反射された光は屈折部21と反射部22の境界近傍から外部に照射される。したがって、傾斜変化部24は突出部23に入射する光の反射を調整する機能を有しており、本発明における光反射調整部に相当している。
【0032】
図3は、光学部材20を用いた光照射の照度分布を説明する模式図であり、
図3(a)は本実施形態の光学部材20での照度分布を示し、
図3(b)は仮想的なTIRレンズでの照度分布を示している。図中の白色は照度が高い領域を示し、図中の黒色は照度が低い領域を示している。傾斜変化部24を設けない仮想的なTIRレンズでは、
図3(b)に示したように中央の屈折部21と両側の反射部22の境界領域に対する光量が不十分であり、照度分布(輝度分布)にムラが生じてしまう。それに対して本実施形態の光学部材20では、傾斜変化部24の反射面24aで反射された光は、屈折部21と反射部22の境界近傍に対して照射される。これにより
図3(a)に示したように、中央の屈折部21と両側の反射部22の境界領域に対する光量が増加し、照度分布(輝度分布)のムラを抑制することができる。
【0033】
本実施形態では、
図1に示した断面形状が紙面方向に垂直に延伸して形成された一軸TIRレンズの場合を示しているが、中心軸の周りに
図1に示した断面を回転させたTIRレンズであってもよい。
【0034】
上述したように、本実施形態の光学部材20および照明装置100では、光反射調整部に相当する傾斜変化部24で突出部23に入射する光を調整し、屈折部21と反射部22の境界における光量を向上させ、輝度ムラを低減することが可能となる。
【0035】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態では、傾斜変化部24(爪状部)の内面である傾斜変化部入射面24bの傾斜角度として、発光素子10からの光を全反射する角度としたが、傾斜変化部入射面24bの所定領域に入射した光を全反射する角度で傾斜させるとしてもよい。この場合には傾斜変化部入射面24bの所定領域から外部に照射される光量を増加させることができ、突出部入射面23bよりも屈折部21側の領域において、輝度ムラを抑制することができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図4から
図7を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図4は、本実施形態に係る光学部材30および照明装置200の概要を説明する模式断面図であり、
図4(a)は幅方向の断面図を示し、
図4(b)は長手方向の断面図を示している。
図5は、光学部材30の構造を示す模式斜視図である。
図4(a)(b)および
図5に示したように、照明装置200は、発光素子10と、光学部材30を有している。
【0037】
光学部材30は、屈折部31と、反射部32を備え、反射部32にはさらに突出部33が設けられている。また光学部材30は
図4(a)に示した断面形状の各部が、
図4(b)に示したように一軸方向に延伸して形成されており、一軸TIRレンズを構成している。反射部32および突出部33の外側面は、それぞれ反射面32a,33aとなっている。反射面32a,33aは、光出射面に対して所定の角度で傾斜している。突出部33の内側面は、突出部入射面33bとなっている。
【0038】
また、
図4(b)および
図5に示したように、突出部33の先端には、一軸方向に沿って周期的な切欠きが形成されており、周期的な凹凸形状34が構成されている。また、光出射面に対して垂直な方向(
図4中の上下方向)において、突出部33の先端と発光素子10の間には間隙d(d≧0)が設けられている。
【0039】
周期的な凹凸形状34の形状についてさらに詳細に説明する。
図4(b)に示したように凹凸形状34は、一軸方向に沿って配置された複数の発光素子10の間に一つずつ切欠きが形成された構造を有している。
図4(b)では、凹凸形状34として曲線状に切欠きを形成した例を示しているが、切欠きおよび凹凸形状34の具体的な形状は限定されず、直線状に切り欠くとしても矩形状に切り欠くとしてもよい。また、
図4および
図5では、発光素子10の間に一つずつ切欠きが形成された例を示しているが、隣り合う発光素子10の間に複数の切欠きを形成するとしてもよい。
【0040】
図6は、光学部材30の凹凸形状34について説明する模式図である。
図6中には、凹凸形状34を設けない場合の突出部33の仮想的な形状を示している。発光素子10表面の中心を原点として、光の出射方向(図中上方向)を0度とし、0度軸方向となす角をθとする。したがって光学部材30の幅方向(図中横方向)は90度となる。
図6中で角度θ方向に示した実線矢印を0度軸周りに回転させると、実線矢印は発光素子10表面の中心を頂点とした仮想的な円錐形状を描く。この仮想的な円錐形状は、頂角が2θとなっている。
【0041】
凹凸形状34の切欠きは、凹凸形状34を設けない場合の仮想的な突出部33について、この仮想的な円錐形状と交わった面で切断した形状となっている。
図4(b)に示したように、発光素子10は一軸方向に沿って複数配列されているため、凹凸形状34は、一軸方向に沿って仮想的な円錐形状を複数配列し、円錐形状と反射面32a,33aの交差する線で仮想的なTIRレンズを切断した形状を成す。
【0042】
この仮想的な円錐形状は、発光素子10表面の中心を頂点としており、発光素子10から照射される光の拡がりを示すライトコーンと見做すことができる。このライトコーンを想定した仮想的な円錐形状によって、突出部33の先端に凹凸形状34を切り出すことで、頂角2θより大きな角度で発光素子10から照射された光は反射部32および突出部33に入射しない。一般的に発光素子10の配光分布は0度方向を最大とするラグランジュ分布となっているため、θが大きい横方向に照射される光量は比較的小さい。そのため、仮想的な円錐形状で切り出された凹凸形状34を設けても、光学部材30に入射しない光量の影響は小さいと考えられる。
【0043】
図7は、凹凸形状34を形成する仮想的な円錐形状の頂角2θと照度分布の関係を示す表である。表中における取込み角度は、0度軸方向からの傾斜角度θを示し、頂角が2θの仮想的な円錐形状で凹凸形状34を切り出した場合を示している。また、表中の照度分布は、光学部材30の光出射面における照度分布を示している。また、表中における相対光束利用率は、取込み角度が90度の場合を100%として、相対的な光束の利用率を示したものである。ここで、取込み角度が90度とは、頂角2θが180度になるため仮想的な円錐形状は存在せず、凹凸形状34を切り出さない場合である。
【0044】
図7に示したように、取込み角度が50度以上において相対光束利用率が80%を超えており、凹凸形状34を形成しても光学部材30からの照度分布の低下を抑制できることがわかる。特に、取込み角度が60度以上では相対光束利用率が90%を超え、65度以上では相対光束利用率が97.5%にまで達している。したがって仮想的な円錐形状は、頂角2θが100度以上(θが50度以上)であることが好ましく、より好ましくは120度以上、さらに好ましくは130度以上である。
【0045】
突出部33の先端は幅方向の厚みが薄く、他の部分よりも熱による変形が生じやすい。突出部33の先端が変形すると、突出部入射面33bからの光の入射や反射面33aでの反射において想定外の光の屈折や反射が生じて、照射光に輝度ムラが生じてしまう。しかし、本実施形態の光学部材30および照明装置200では、突出部33の先端に凹凸形状34が設けられているため、屈折部入射面31aと突出部入射面33bで囲まれた凹部空間が、凹凸形状34の切欠きを介して外部空間と連通している。よって、凹部空間内と外部空間との間で凹凸形状34の切欠きを介して空気の流れが生じやすくなる。これにより、発光素子10での光照射に伴って熱が生じても、凹凸形状34を介した空気の流れで放熱性が向上し、突出部33の温度上昇による変形を抑制することができる。
【0046】
図4および
図5に示した例では、突出部33の先端との間に間隙dを設けて仮想的な円錐形状の頂点を設定し、凹凸形状34を形成している。したがって、凹部空間と外部空間は凹凸形状34および間隙dを介して連通し、さらに空気の流れが生じやすく、放熱性がより向上する。
【0047】
上述したように本実施形態の光学部材30および照明装置200では、凹凸形状34を介して屈折部入射面31aと突出部入射面33bで囲まれた凹部空間からの放熱性を向上させることができ、突出部33の熱変形による輝度ムラを抑制することができる。また、突出部33に凹凸形状34を形成しても、頂角2θを100度以上とすることで発光素子10からの光を良好に照射することができる。
【0048】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図8を用いて説明する。第2実施形態と重複する内容は説明を省略する。本実施形態では、仮想的な円錐形状の頂点位置を変えた点が第2実施形態と異なっている。
図8は、本実施形態に係る光学部材40の構造を示す模式斜視図である。
図8に示したように、光学部材40は、屈折部41と、反射部42を備え、反射部42にはさらに突出部43が設けられている。また、突出部43の先端には凹凸形状44が形成されている。反射部42および突出部43の外側面は、それぞれ反射面42a,43aとなっている。突出部43の内側面は、突出部入射面43bとなっている。
【0049】
本実施形態では、凹凸形状44を設けない仮想的な突出部43の先端よりも屈折部41に近い位置に、仮想的な円錐形状の頂点を設定している。また凹凸形状44は、頂角2θの仮想的な円錐形状と仮想的な突出部43が交わった面で切断した形状となっている。
図8に示すように光学部材40では、反射面43aと突出部入射面43bの交差する鋭角が突出部43の先端には存在せず、一軸方向に沿って凹凸形状44で切り出された面が連続している。反射面43aと突出部入射面43bの交差する鋭角な部分は、樹脂の厚みが小さく熱変形しやすいが、凹凸形状44が連続していることで当該鋭角な部分での熱変形を抑制することができる。
【0050】
本実施形態においても、凹凸形状44を介して屈折部入射面41aと突出部入射面43bで囲まれた凹部空間からの放熱性を向上させることができ、突出部43の熱変形による輝度ムラを抑制することができる。また、突出部43に凹凸形状44を形成しても、頂角2θを100度以上とすることで発光素子10からの光を良好に照射することができる。また、仮想的な円錐形状の頂点を屈折部41に近い位置とすることで、光学部材40の薄型化と軽量化を図ることもできる。
【0051】
(第3実施形態の変形例)
図9は、第3実施形態の変形例に係る光学部材40および照明装置200の概要を説明する模式断面図である。発光素子10表面から斜めに伸びる破線は、仮想的な円錐形状を示している。仮想的な円錐形状で突出部33から凹凸形状34を切り出すため、本変形例では屈折部41および屈折部入射面41aの幅を広くしつつ、発光素子10と突出部43の先端との間隙dを設け、屈折部入射面41aと突出部入射面43bで囲まれた凹部空間を浅くしている。
【0052】
本変形例では、屈折部41および屈折部入射面41aの幅を広くすることで、光学部材40のさらなる薄型化と軽量化を図ることができ、凹凸形状44のサイズを小さくすることができる。これにより、複雑で精密な成形性が要求される凹凸形状44において、成形不良が発生する可能性を抑制できる。特に、間隙dを所定値以上とした場合には凹凸形状44を設ける必要がなくなる。また、突出部入射面43bの高さを小さくし、屈折部41の幅を大きくすることで、凹凸形状44を介した放熱性を向上させて、熱変形による輝度ムラを抑制することができる。
【0053】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について
図10を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図10は、第4実施形態に係る光学部材40での対流による放熱性向上について説明する模式図である。図中上下方向は重力方向を示し、図中横方向は水平方向を示している。また、屈折部入射面41aと突出部入射面43bで囲まれた凹部空間45が形成され、発光素子10と突出部43の先端の間には間隙dが設けられている。
【0054】
図10(a)に示した例では、発光素子10と光学部材40は横向きに配置されており、図中右方向に光が照射される。発光素子10の光照射によって光学部材40の温度が上昇した場合には、対流が生じて間隙dの下方から上方に向かって空気が流れる。このとき、凹部空間45内に存在する空気も対流の影響を受け、間隙dを介して外部に流出して放熱が行われる。
【0055】
図10(b)に示した例では、発光素子10と光学部材40は斜め下向きに配置されており、図中右下方向に光が照射される。この場合にも、発光素子10の光照射によって光学部材40の温度が上昇すると、対流が生じて間隙dの下方から上方に向かって空気が流れる。このとき、凹部空間45内に存在する空気も対流の影響を大きく受け、間隙dを介して外部に流出して良好に放熱が行われる。
【0056】
本実施形態の光学部材40および照明装置200でも、間隙dを介して凹部空間45からの放熱性を向上させることができ、突出部43の熱変形による輝度ムラを抑制することができる。
【0057】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
100,200…照明装置
10…発光素子
20,30,40…光学部材
21,31,41…屈折部
22,32,42…反射部
23,33,43…突出部
24…傾斜変化部
34,44…凹凸形状
45…凹部空間
21a,31a,41a…屈折部入射面
22a,23a,24a,32a,42a,43a…反射面
23b,33b,43b…突出部入射面
24b…傾斜変化部入射面