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特開2024-37364ICカードおよびICカードの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037364
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ICカードおよびICカードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20240312BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G06K19/07 260
G06K19/077 144
G06K19/077 244
G06K19/077 272
G06K19/077 296
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142169
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】片岡 慎
(57)【要約】
【課題】ブースターアンテナにおける静電容量を精度よく確実に調整できる。
【解決手段】ブースターアンテナ12は、アンテナシート11の表面に二巻き以上で形成された導電性の主コイル13と、アンテナシート11の表裏面に形成され、開口部から少なくとも一部が露出する導電性の結合コイル14と、アンテナシート11の裏面面に形成され、主コイル13及び結合コイル14と直列又は並列に接続され電気的な閉ループを形成し、特定の周波数で閉ループ回路において自己共振を発生させる平板電極15と、を備え、平板電極15は、所定の静電容量となる位置で部分的に電気的に切り離されて設けられている。平板電極15のうちアンテナシート11を挟んでカード基材側の一方の第1平板電極151がアンテナシート11の板厚方向でカード基材側から見た平面視で他方の第2平板電極152を覆っているICカードを提供する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICモジュールが収容可能な開口部を有するカード基材をなす金属板と、前記金属板の裏面側に絶縁体を介して設けられたアンテナ基板と、を備えたICカードであって、
前記アンテナ基板は、絶縁性のアンテナシートと、前記アンテナシートに形成されるブースターアンテナと、を備え、
前記ブースターアンテナは、
前記アンテナシートの表裏面のいずれか一方に、又は表裏の両面に亘って二巻き以上で形成された導電性のアンテナコイルと、
前記アンテナシートの表裏面に形成され、前記開口部から少なくとも一部が露出する導電性の結合コイルと、
前記アンテナシートの裏面面に形成され、前記アンテナコイル及び前記結合コイルと直列又は並列に接続され電気的な閉ループを形成し、特定の周波数で閉ループ回路において自己共振を発生させる平板電極と、を備え、
前記平板電極は、所定の静電容量となる位置で部分的に電気的に切り離されて設けられ、
前記平板電極のうち前記アンテナシートを挟んで前記金属板側の一方の第1平板電極が前記アンテナシートの板厚方向で前記金属板側から見た平面視で他方の第2平板電極を覆っている、ICカード。
【請求項2】
前記第1平板電極及び前記第2平板電極は、切断可能な切断用配線によって電気的に接続された複数の可変容量電極部を有する、請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
前記第1平板電極及び前記第2平板電極の両方の前記切断用配線が切断されている、請求項2に記載のICカード。
【請求項4】
前記第2平板電極の前記切断用配線のみが切断されている、請求項2に記載のICカード。
【請求項5】
前記第1平板電極の第1切断用配線と前記第2平板電極の第2切断用配線とは、前記平面視して重ならない位置に配置されている、請求項2乃至4のいずれか1項に記載のICカード。
【請求項6】
前記平板電極のうち前記第2平板電極のみに切断可能な切断用配線によって電気的に接続された複数の可変容量電極部を有し、
前記第1平板電極は、前記平面視で前記第2平板電極の前記複数の可変容量電極部を覆っている、請求項1に記載のICカード。
【請求項7】
前記第1平板電極は、前記平面視で前記第2平板電極よりも全周において0.2mm~0.6mm外側に大きく形成されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のICカード。
【請求項8】
ICモジュールが収容可能な開口部を有するカード基材をなす金属板と、前記金属板の裏面側に絶縁体を介して設けられたアンテナ基板と、を備えたICカードの製造方法であって、
前記アンテナ基板は、絶縁性のアンテナシートと、前記アンテナシートに形成されるブースターアンテナと、を備え、
前記ブースターアンテナは、
前記アンテナシートの表裏面のいずれか一方に、又は表裏の両面に亘って二巻き以上で形成された導電性のアンテナコイルと、
前記アンテナシートの表裏面に形成され、前記開口部から少なくとも一部が露出する導電性の結合コイルと、
前記アンテナシートの裏面面に形成され、前記アンテナコイル及び前記結合コイルと直列又は並列に接続され電気的な閉ループを形成し、特定の周波数で閉ループ回路において自己共振を発生させる平板電極と、を備え、
前記平板電極のうち前記アンテナシートを挟んで前記金属板側の一方の第1平板電極を、前記アンテナシートの板厚方向で前記金属板側から見た平面視で他方の第2平板電極を覆って形成し、
前記平板電極を部分的に電気的に切り離すことにより、前記ブースターアンテナを所定の静電容量に調整する、ICカードの製造方法。
【請求項9】
前記第1平板電極及び前記第2平板電極は、切断可能な切断用配線によって電気的に接続された複数の可変容量電極部を有し、
前記切断用配線を選択的に切断するようにした、請求項8に記載のICカードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードおよびICカードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体メモリー等を内蔵するICカードとして、HF帯(13.56MHz)の信号を用いて通信するものであり、接触型及び非接触型の双方として機能する、いわゆる複合ICカード(デュアルICカード)が知られている。複合ICカードは、例えば、クレジットカードや、キャッシュカード、プリペイドカード、会員カード、ギフトカード、交通カード、パスポートおよび免許証などに使用されている。複合ICカードは、例えば、接触型外部機器と接触するための接触端子と、接触型及び非接触型の双方として機能するICチップと、を搭載し、コイルが形成されたICモジュールと、ICモジュールに形成されたコイルへ非接触で電気的に結合するための結合コイルと外部の端末と非接触通信するための通信用のアンテナコイル(主コイル)とを有するブースターアンテナを備えたアンテナシートと、を外装基材で挟持して構成される。外装基材としては、主にポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニルまたは酢酸ビニル共重合体等からなるシートが用いられる。
【0003】
近年の顧客要望の多種多様化により、外装基材の表面に金属を施したり、外装基材に金属板を用いたりして、独特の高級感を持つように視覚的・意匠的にメタリック感を演出することで、一般的なカードとの差別化を図るICカードのニーズが増加している。このように外装基材に金属を用いた非接触通信用のICカードは、外装基材である金属板にICモジュールを収容する貫通孔を設けることで、ICモジュールと結合コイルとを電気的に接続させる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0235122号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のようなICカードでは、ブースターアンテナに金属板が積層されるため、ブースターアンテナの配線パターンによって形成される可変容量部分と外層基材の金属板との間に生じる浮遊容量が大きくなる場合がある。このように浮遊容量が大きい場合には、可変容量の配線パターンをトリミングして可変容量部の面積を減少させても、ブースターアンテナの共振用キャパシタの静電容量を所望の容量に調整することが難しいという問題があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ブースターアンテナにおける静電容量を精度よく確実に調整できるICカードおよびICカードの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係るICカードの態様1は、ICモジュールが収容可能な開口部を有するカード基材をなす金属板と、前記金属板の裏面側に絶縁体を介して設けられたアンテナ基板と、を備えたICカードであって、前記アンテナ基板は、絶縁性のアンテナシートと、前記アンテナシートに形成されるブースターアンテナと、を備え、前記ブースターアンテナは、 前記アンテナシートの表裏面のいずれか一方に、又は表裏の両面に亘って二巻き以上で形成された導電性のアンテナコイルと、前記アンテナシートの表裏面に形成され、前記開口部から少なくとも一部が露出する導電性の結合コイルと、前記アンテナシートの裏面面に形成され、前記アンテナコイル及び前記結合コイルと直列又は並列に接続され電気的な閉ループを形成し、特定の周波数で閉ループ回路において自己共振を発生させる平板電極と、を備え、前記平板電極は、所定の静電容量となる位置で部分的に電気的に切り離されて設けられ、前記平板電極のうち前記アンテナシートを挟んで前記金属板側の一方の第1平板電極が前記アンテナシートの板厚方向で前記金属板側から見た平面視で他方の第2平板電極を覆っていることを特徴としている。
【0008】
(2)本発明の態様2は、態様1のICカードにおいて、前記第1平板電極及び前記第2平板電極は、切断可能な切断用配線によって電気的に接続された複数の可変容量電極部を有することを特徴としてもよい。
【0009】
(3)本発明の態様3は、態様2のICカードにおいて、前記第1平板電極及び前記第2平板電極の両方の前記切断用配線が切断されていることが好ましい。
【0010】
(4)本発明の態様3は、態様2のICカードにおいて、前記第2平板電極の前記切断用配線のみが切断されていることを特徴としてもよい。
【0011】
(5)本発明の態様5は、態様2から態様4のいずれか一つのICカードにおいて、前記第1平板電極の第1切断用配線と前記第2平板電極の第2切断用配線とは、前記平面視して重ならない位置に配置されていることを特徴としてもよい。
【0012】
(6)本発明の態様6は、態様1のICカードにおいて、前記平板電極のうち前記第2平板電極のみに切断可能な切断用配線によって電気的に接続された複数の可変容量電極部を有し、前記第1平板電極は、前記平面視で前記第2平板電極の前記複数の可変容量電極部を覆っていることを特徴としてもよい。
【0013】
(7)本発明の態様7は、態様1から態様4のいずれか一つのICカードにおいて、前記第1平板電極は、前記平面視で前記第2平板電極よりも全周において0.2mm~0.6mm外側に大きく形成されていることが好ましい。
【0014】
(8)本発明に係るICカードの製造方法の態様8は、ICモジュールが収容可能な開口部を有するカード基材をなす金属板と、前記金属板の裏面側に絶縁体を介して設けられたアンテナ基板と、を備えたICカードの製造方法であって、前記アンテナ基板は、絶縁性のアンテナシートと、前記アンテナシートに形成されるブースターアンテナと、を備え、前記ブースターアンテナは、前記アンテナシートの表裏面のいずれか一方に、又は表裏の両面に亘って二巻き以上で形成された導電性のアンテナコイルと、前記アンテナシートの表裏面に形成され、前記開口部から少なくとも一部が露出する導電性の結合コイルと、前記アンテナシートの裏面面に形成され、前記アンテナコイル及び前記結合コイルと直列又は並列に接続され電気的な閉ループを形成し、特定の周波数で閉ループ回路において自己共振を発生させる平板電極と、を備え、前記平板電極のうち前記アンテナシートを挟んで前記金属板側の一方の第1平板電極を、前記アンテナシートの板厚方向で前記金属板側から見た平面視で他方の第2平板電極を覆って形成し、前記平板電極を部分的に電気的に切り離すことにより、前記ブースターアンテナを所定の静電容量に調整することを特徴としている。
【0015】
(9)本発明の態様9は、態様8の床材の補修方法において、前記第1平板電極及び前記第2平板電極は、切断可能な切断用配線によって電気的に接続された複数の可変容量電極部を有し、前記切断用配線を選択的に切断するようにしたことを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のICカードおよびICカードの製造方法によれば、ブースターアンテナにおける静電容量を精度よく確実に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態によるICカードを模式的に示す平面図である。
図2図1のICカードの構成を説明する斜視図である。
図3図2に示すICカードの分解斜視図である。
図4図3に示すICカードのアンテナ基板の分解斜視図である。
図5】ICカードのカード基材を模式的に示す平面図である。
図6】ICカードのアンテナ基板を模式的に示す平面図である。
図7】平板電極の可変容量電極部を一部を模式的に示す斜視図である。
図8】可変容量電極部の切断位置の一例を示す斜視図である。
図9図8に示すA-A線断面図である。
図10図8の切断位置で可変容量電極部を分離したICカードの等価回路を模式的に示す図である。
図11】第1調整方法で静電容量を調整したICカードの等価回路を模式的に示す図である。
図12】第2調整方法で静電容量を調整したICカードの等価回路を模式的に示す図である。
図13】第3調整方法で静電容量を調整したICカードの等価回路を模式的に示す図である。
図14】第2実施形態による可変容量電極部の一例を示す斜視図である。
図15図14の可変容量電極部を含むICカードの等価回路を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態によるICカードおよびICカードの製造方法について、図面を参照して説明する。また、以下で説明する実施形態や変形例において、相互に対応する構成については同一の符号を付し、重複部分については説明を省略する場合がある。さらに、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的または絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係るICカード1を模式的に示す平面図である。図2は、図1のICカード1の構成を説明する斜視図である。図3は、図2に示すICカード1の分解斜視図である。図4は、図3に示すICカード1のアンテナ基板10の分解斜視図である。
【0020】
以下のICカード1の説明において、ICカード1の長辺に沿う方向を長辺方向D1とし、水平面上で長辺方向D1に直交するICカード1の短辺に沿う方向を短辺方向D2とする。長辺方向D1及び短辺方向D2に沿う面は水平面とする(以下、単に水平面という)。また、長辺方向D1及び短辺方向D2と直交する鉛直方向を板厚方向Dtとする。
【0021】
長辺方向D1において、ICカード1の板厚方向Dtに沿う中心軸(不図示)から離れる一方側を左方LHとし、他方側を右方RHとする。また、短辺方向D2において、一方側を前方FRとし、他方側を後方RRとする。さらに、ICカード1の板厚方向Dtにおいて、上方側を上側UPとし、下方側を下側DWとする。なお、板厚方向Dtの上側UP側に備えられた面を表面とし、下側DWに備えられた面を裏面とする。
【0022】
図1及び図2に示すように、本実施形態によるICカード1は、例えばクレジットカード、デビットカード、キャッシュカード、アクセスコントロール用カード等の金属板をカード基材とするメタルカードに適用される。
【0023】
ICカード1は、外部機器との間で、接触型通信と非接触型通信とを可能としたデュアルICカードである。非接触型通信の通信領域は、本実施形態では、一般に市場において流通しているHF帯(13.56MHz)を用いる。ICカード1は、板状であり、板厚方向Dtの上側UPから見て、互いに対抗する長辺及び短辺を有する長方形形状に形成されている。ICカード1は、板厚方向Dtの厚みが、例えば、0.5~1.0mm程度に形成されている(ICカード1がクレジットカードである場合、ICカード1の厚みは0.76mm)。
【0024】
図3に示すように、ICカード1は、ICモジュール20が収容可能な開口部51を有するカード基材5(金属板)と、カード基材5の裏面側に絶縁層40(絶縁体)を介して設けられたアンテナ基板10(図4参照)と、を備えている。
【0025】
[ICモジュール20]
ICモジュール20は、図1及び図2に示すように、カード基材5の開口部51に嵌め込まれる。ICモジュール20は、モジュール基板と、不図示のICチップ、接続コイル、接触端子および樹脂封止部を備える。ICモジュール20の外形サイズは、例えば接触端子が、6端子で構成されている場合には、水平面において、約8mm×10.6mmの寸法で形成される。ICモジュール20は、本実施形態では、ICカード1の中心軸(不図示)よりも長辺方向D1において左方LHであって、短辺方向D2において前方FRへ配置される。ICモジュール20の板厚方向Dtの厚みは、カード基材5の板厚方向Dtの厚みよりも小さい。また、ICモジュール20は、開口部51の内周面に当接して電気的な短絡を生じないように、開口部51の内周面とICモジュール20との間に、わずかな隙間を介して配置される。
【0026】
モジュール基板は、ガラスエポキシやPETなどの材料を用いて水平面上に形成されたシート状の基板である。ICチップは、モジュール基板の裏面へ備えられる。ICチップは、接触型通信機能および非接触型通信機能を有する公知の構成のものを用いることができる。モジュール基板の裏面に取り付けられたICチップは、図示しない複数の端子を備えており、接続コイルや表面に取り付けられた接触端子の電極に対し、モジュール基板に形成された配線、ワイヤ、銅メッキ等によって形成されたスルーホールまたはビア等を介して電気的に接続される。
【0027】
[カード基材5]
図5は、ICカード1のカード基材5を模式的に示す平面図である。
カード基材5は、図2及び図3に示すように、ICカード1の表面1f側に配置される基材である。カード基材5の表面5fは、ICカード1の表面1fである。カード基材5の板厚方向Dtの厚みは、例えば、後述のICモジュール20の板厚方向Dtの厚みよりも大きい。カード基材5は、本実施形態では、金属によって形成され、材料としては、鉄、ステンレス、銅、ニッケル、錫、亜鉛鉄、アルミニウム、マグネシウム、クロム、コバルト、モリブデン、チタン及びこれらの合金などを利用することが出来るが、重量感を一層求める上では、比重が大きく、金などの貴金属に比べ安価で、人体に対する毒性も低いタングステンを用いることが望ましい。
【0028】
カード基材5の外形等の形状は、適宜カード規格に準じた外形等の形状を採用することができる。カード基材5は、二層以上の積層体として構成されていてもよい。また、カード基材5は、さらに磁気層、保護層等を設けてもよいし、感熱、熱転写またはインクジェット等の機能性の表面コートが施されていてもよい。カード基材5の表面5fは、透光性、着色透明性、または無色透明性を備えているのが好ましい。また、カード基材5には、細かい線状の凸部または凹部が形成されていてもよい。カード基材5は、開口部51を備えている。
【0029】
開口部51は、図3及び図5に示すように、カード基材5を板厚方向Dtに貫通する。開口部51は、例えばカード基材5をミリング加工することで形成される。開口部51を板厚方向Dtの上側UPであるカード基材5の表面5fから見た形状は、特に限定されないが、本実施形態では、図1に示すように後述のICモジュール20のモジュール基板21に合わせて略矩形状に形成されている。また、開口部51は、開口部51の内周面とICモジュール20との間に、わずかな隙間を備える。この隙間を備えることで、モジュール基板21が導電性の金属によって形成されたカード基材5に接触して電気的な短絡が生じ、ICカードが通信不良となってしまう虞を無くすことができる。
【0030】
[絶縁層40]
絶縁層40は、図2及び図3に示すように、カード基材5と、アンテナ基板10とを接着する。絶縁層40は、接着剤を塗布または接着用のシートを積層して形成された絶縁体である。絶縁層40は、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース等の材料より構成されている。絶縁層40として、接着機能を有する層のみに限定されることはなく、例えば、磁性体を含有する層等複数の絶縁体層の積層体であっても良い。
【0031】
ICカード1は、アンテナ基板10と、アンテナ基板10に積層されたカード基材5及び絶縁層40と、カード基材5の開口部51に嵌め込まれたICモジュール20とを、熱圧によるラミネートあるいは接着等により挟み込んで一体化させ、その後、カードの形状に打ち抜いて成形される。ICカード1は、さらに成形されたあとにエンボス加工等を施されていてもよい。
【0032】
[アンテナ基板10]
図6は、ICカード1のアンテナ基板10を模式的に示す平面図である。
アンテナ基板10は、本実施形態において、図3に示すように、カード基材5の裏面5g側に設けられる。アンテナ基板10の裏面10gは、ICカード1の裏面1gである。アンテナ基板10は、図4及び図6に示すように、絶縁性のアンテナシート11と、アンテナシート11に形成されるブースターアンテナ12と、を備える。
【0033】
アンテナシート11は、可撓性を有する絶縁性の基板である。アンテナシート11は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、PET-G(テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系、ABS、ポリアクリル酸エステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリイミド、ガラスエポキシ、フェノール樹脂等の材料を適宜選択することができる。
【0034】
[ブースターアンテナ12]
ブースターアンテナ12は、図4に示すように、アンテナシート11の表面11fと裏面11gとの両面に備えられたアンテナパターンである。ブースターアンテナ12は、主コイル13(アンテナコイル)と、結合コイル14と、平板電極15と、を備える。
【0035】
[結合コイル14]
結合コイル14は、導電性の第1結合コイル141と、導電性の第2結合コイル142と、を備える。
【0036】
第1結合コイル141は、アンテナシート11の表面11fに略円形を描くように二巻き以上形成され、螺旋状に備えられる。具体的に第1結合コイル141は、主コイル部141Aと、接続コイル部141Bと、有する。主コイル部141Aは、コイル中心がカード基材5の開口部51の中心に位置する(図2参照)。接続コイル部141Bは、その中心が主コイル部141Aの中心から半径方向外側にずれた位置となり、主コイル部141Aの一部から外側に膨出するように半円状に形成されている。
【0037】
図2に示すように、結合コイル14は、カード基材5の開口部51から少なくとも一部が露出している。ここでは、主コイル部141Aの一部が開口部51から露出している。第1結合コイル141は、内周側の中央部に、端子部(図示省略)を備える。端子部は、第1結合コイル141の線幅(太さ)よりも幅を広くして、略円状に形成されている。また、図4に示すように、第1結合コイル141は、第1接続配線161を介して平板電極15(第1平板電極151)へ電気的に接続される。
【0038】
第2結合コイル142は、アンテナシート11の裏面11gに略円形を描くように二巻き以上形成され、螺旋状に備えられる。第2結合コイル142は、上側UPから見て、第1結合コイル141と同形状で重なるように形成されている。すなわち、具体的に第2結合コイル142は、主コイル部142Aと、接続コイル部141Bと、有する。主コイル部142Aは、コイル中心がカード基材5の開口部51の中心に位置する(図2参照)。接続コイル部142Bは、その中心が主コイル部142Aの中心から半径方向外側にずれた位置となり、主コイル部142Aの一部から外側に膨出するように半円状に形成されている。
【0039】
第2結合コイル142は、内周側の中央部に、端子部(図示省略)を備える。端子部は、第2結合コイル142の線幅(太さ)よりも幅を広くして、略円状に形成されている。第2結合コイル142は、第2接続配線162を介して平板電極15(第2平板電極152)へ電気的に接続される。
【0040】
[主コイル13]
主コイル13は、図4及び図6に示すように、導電性を有し、アンテナシート11の表面11fに備えられる。主コイル13は、配線等によってアンテナシート11の表面11fの第1平板電極151と、裏面11gの第2平板電極152とに電気的に接続されて、リーダライタなどの非接触型外部機器との非接触型通信を行う。主コイル13は、図6に示すように、アンテナシート11の周縁11kに沿って矩形状に形成され、アンテナシート11の周縁11kに沿って一巻き、または二巻きに形成されている。ただし、主コイル13は、非接触型外部機器との非接触型通信が可能であればよく、巻き数、形状及び線幅等については限定されない。
【0041】
主コイル13の線幅は、結合コイル14の線幅よりも広い。結合コイル14および主コイル13の線幅は適宜設定することができ、設定により設定通信周波数における両者の虚部インピーダンスを同等とするのが好ましい。ただし、主コイル13の線幅は、結合コイル14の線幅と略同じであってもよいし、結合コイル14の線幅よりも細くてもよい。
【0042】
図3及び図4に示すように、カード基材5の開口部51と、第1結合コイル141と、アンテナシート11と、第2結合コイル142とは、板厚方向Dtに沿って上側UPから下側DWに向かってこの順に配置される。
【0043】
主コイル13および結合コイル14の製造方法に特に制限はなく、様々な方法で形成することができる。製造方法として、金属板や金属箔のレーザー切断や打ち抜き、金属箔や金属層のエッチング、金属線の配置などを例示できる。打ち抜きは、特に主コイル13を幅広に形成する際に好適である。絶縁被覆された金属線を使って結合コイル14を形成すると、立体交差部位に別途絶縁体を配置する必要がなく、簡便に形成できる。主コイル13と結合コイル14とを異なる材料で形成する場合、両者の接続方法としては、はんだ付け、溶接、圧接などを採用できる。主コイル13および結合コイル14の幅(太さ)、間隔、巻数は、ブースターアンテナ12の特性や配置による制限などに応じて適宜設定できる。
【0044】
また、アンテナシート11の表面11fに備えられた第1結合コイル141の内周側と、裏面11gに備えられた第2結合コイル142の内周側とには、第1結合コイル141と第2結合コイル142を導通させる導通部(図示省略)が設けられている。
【0045】
[平板電極15]
平板電極15は、図4及び図6に示すように、例えばチップコンデンサ等(平板コンデンサも含む)である。平板電極15は、主コイル13と共振回路を構成し共振周波数を調整する。すなわち、平板電極15は、主コイル13及び結合コイル14と直列又は並列に接続され電気的な閉ループを形成し、特定の周波数で閉ループ回路において自己共振を発生させる。平板電極15は、所定の静電容量となる位置で部分的に電気的に切り離し可能に形成されている。平板電極15は、製造時において、所定位置で部分的に電気的に切り離すことにより所定の静電容量に調整される。平板電極15は、アンテナシート11の表面11fに備えられる第1平板電極151と、アンテナシート11の裏面11gに備えられる第2平板電極152と、を備える。
【0046】
平板電極15の静電容量は、第1平板電極151と第2平板電極152との重なる面積によって静電容量を変更することができる。平板電極15は、第1平板電極151と第2平板電極152との双方の電極の線幅、長さ、双方の相対的な配置等を変えることによって静電容量を調整することができる。本実施形態の平板電極15における重なる面積を変更する方法としては、一定の長さ、線幅、双方の相対的な配置関係にある電極を形成した後に、電極を除去して長さや線幅を、短くしたり、狭くしたりすることで、平板電極15の静電容量を変更できる。平板電極15は、一般的なグラビア印刷によりレジストが塗工された銅箔やアルミニウム箔に対してエッチングを行うことで形成することができる。
【0047】
第1平板電極151は、第1結合コイル141に第1接続配線161を介して直列または並列に接続されるとともに、主コイル13に直列または並列に接続される。第2平板電極152は、第2結合コイル142に直列または並列に接続されている。第1平板電極151は、板厚方向Dtでカード基材5側から見た平面視で第2平板電極152を覆った状態で形成されている。すなわち、第1平板電極151は、平面視で第2平板電極152よりも全周において0.2mm~0.6mm外側に大きく形成されている。この数値は、配線パターンの製造位置ズレ公差分に相当する。第1平板電極151及び第2平板電極152は、それぞれ固定容量電極部153と、可変容量電極部154と、を備えている。
【0048】
固定容量電極部153は、接続配線161、162を介して結合コイル14に電気的に接続されている。固定容量電極部153は、後述する可変容量電極部154に設けられるような切断用配線155(図7参照)が形成されず、電気的な切り離しができない構成である。固定容量電極部153は、第1平板電極151に設けられる第1固定容量電極部153Aと、第2平板電極152に設けられ第1固定容量電極部153Aに板厚方向Dtに重なる第2固定容量電極部153Bと、を有する。第1固定容量電極部153Aと第2固定容量電極部153Bとの間には、静電容量(図10に示す符号E1)が生じる。
【0049】
図7は、平板電極15の可変容量電極部154を一部を模式的に示す斜視図である。図8は、可変容量電極部154の切断位置の一例を示す斜視図である。図9は、図8に示すA-A線断面図である。図10は、ICカード1の等価回路を模式的に示す図である。
【0050】
図6に示すように、可変容量電極部154は、第3接続配線163を介して固定容量電極部153に電気的に接続されている。可変容量電極部154は、図7及び図8に示すように、長辺方向D1を分断するように複数に分割されている。すなわち、複数の可変容量電極部154は、それぞれ間隔をあけて長辺方向D1に沿って配列されている。図9に示すように、分割された第1平板電極151の第1可変容量電極部154Aは、板厚方向Dtでカード基材5側から見た平面視で、分割された第2平板電極152の第2可変容量電極部154Bを覆っている。すなわち、第1可変容量電極部154Aは、平面視で第2可変容量電極部154Bよりも全周において0.2mm~0.6mm外側に大きく形成されている。
【0051】
複数の可変容量電極部154は、切断可能な切断用配線155によって電気的に接続されている。切断用配線155は、可変容量電極部154の領域外となる位置で円孔状に湾曲した形状に形成されている。第1平板電極151の第1切断用配線155Aと第2平板電極152の第2切断用配線155Bとは、平面視して重ならない位置に配置されている。すなわち、第2切断用配線155Bの内周部155bの内径は、第1切断用配線155Aの外周部155aの外径より大きくなるように設定されている。
【0052】
図9及び図10に示すように、ブースターアンテナ12では、切断用配線155によって電気的に切り離されていない可変容量電極部154において、第1可変容量電極部154Aと第2可変容量電極部154Bとの平板電極間に静電容量E2が生じる。また、第1可変容量電極部154Aと金属板からなるカード基材5との間には、浮遊容量E3が生じる。また、固定容量電極部153は、切り離されることはないので、第1固定容量電極部153Aと第2固定容量電極部153Bとの間には静電容量E1が生じ、さらに第1固定容量電極部153Aとカード基材5との間にも浮遊容量E4が生じている。
【0053】
このようにICカード1は、製造時において、複数の可変容量電極部154を電気的に接続した切断用配線155を選択的に切断することで、ブースターアンテナ12を所望の静電容量に調整される。
【0054】
[調整方法]
ブースターアンテナ12の静電容量の調整方法の一例について、図11図13を用いて説明する。図11は、第1調整方法K1で静電容量を調整したICカード1Aの等価回路を模式的に示す図である。図12は、第2調整方法K2で静電容量を調整したICカード1Bの等価回路を模式的に示す図である。図13は、第3調整方法K3で静電容量を調整したICカード1Cの等価回路を模式的に示す図である。
【0055】
図11に示すように、第1調整方法K1で調整されたICカード1Aは、第2平板電極152の複数の第2可変容量電極部154Bを接続する第2切断用配線155Bのみを第1切断位置P1で切断することにより静電容量が調整されている。
【0056】
この場合のICカード1Aでは、切断によって電気的に切り離された第2可変容量電極部154Bと、この第2可変容量電極部154Bに対向する第1可変容量電極部154Aとの間に静電容量E2が生じないので、第1切断位置P1で切り離された部分の静電容量E2が減少される。なお、第1可変容量電極部154Aは切り離されていないので、第1可変容量電極部154Aとカード基材5との間に生じる浮遊容量E3は有効となる。つまり、第1調整方法K1では、第1切断位置P1の第2切断用配線155Bで切り離された第2可変容量電極部154Bがもつ静電容量E2のみを減少できる調整となる。すなわち、この第1調整方法K1では、カード基材5と第1平板電極151の面積は常に一定となるため、カード基材5と第1平板電極151との間で生じる浮遊容量E3、E4は常に一定となり、第1平板電極151と第2平板電極152との間の静電容量E2のみを減らすことが可能となるため、より精度よく静電容量を調整できる。
【0057】
図12に示すように、第2調整方法K2で調整されたICカード1Bは、第1平板電極151の複数の第1可変容量電極部154Aを接続する第1切断用配線155Aのみを第2切断位置P2で切断することにより静電容量が調整されている。
【0058】
この場合のICカード1Bでは、第2切断位置P2で電気的に切り離された第1可変容量電極部154Aと、この第1可変容量電極部154Aに対向する第2可変容量電極部154Bとの間の静電容量E21と、第2切断位置P2で切り離された第1可変容量電極部154Aとカード基材5との間の浮遊容量E31と、が直列に接続された直列容量E5が有効となる。つまり、第2調整方法K2では、上述した第1調整方法K1のように単に静電容量E2を減少させる調整ではなく、直列容量E5を想定した調整となる。
【0059】
図13に示すように、第3調整方法K3で調整されたICカード1Cは、第1平板電極151の複数の第1可変容量電極部154Aを接続する第1切断用配線155Aと、第2平板電極152の複数の第2可変容量電極部154Bを接続するとともに、切断する第1切断用配線155Aに対して板厚方向Dtに対向する位置の第2切断用配線155Bと、の両方を第3切断位置P3で切断することにより静電容量が調整されている。
【0060】
この場合のICカード1Cでは、第3切断位置P3で電気的に切り離された第1可変容量電極部154Aと、この第1可変容量電極部154Aに対向して第3切断位置P3で電気的に切り離された第2可変容量電極部154Bとの間に静電容量E2が生じないので、切り離された部分の静電容量E2が減少される。また、第3切断位置P3で切り離された第1可変容量電極部154Aとカード基材5との間の浮遊容量E3も生じない。つまり、第3調整方法K3では、第3切断位置P3で切り離された可変容量電極部154A、154Bの全てが無効化される調整となる。
【0061】
次に、上述したICカード1およびICカード1の製造方法の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態のICカード1は、図1図6に示すように、ICモジュール20が収容可能な開口部51を有する金属板からなるカード基材5と、カード基材5の裏面側に絶縁層40を介して設けられたアンテナ基板10と、を備える。アンテナ基板10は、絶縁性のアンテナシート11と、アンテナシート11に形成されるブースターアンテナ12と、を備えている。ブースターアンテナ12は、アンテナシート11の表裏面のいずれか一方に二巻き以上で形成された導電性の主コイル13と、アンテナシート11の表裏面に形成され、開口部51から少なくとも一部が露出する導電性の結合コイル14と、アンテナシート11の裏面面に形成され、主コイル13及び結合コイル14と直列又は並列に接続され電気的な閉ループを形成し、特定の周波数で閉ループ回路において自己共振を発生させる平板電極15と、を備えている。そして、平板電極15は、所定の静電容量となる位置で部分的に電気的に切り離されて設けられている。平板電極15のうちアンテナシート11を挟んでカード基材5側の一方の第1平板電極151がアンテナシート11の板厚方向Dtでカード基材5側から見た平面視で他方の第2平板電極152を覆っている。
【0062】
また、本実施形態によるICカード1の製造方法では、先ず、平板電極15のうちアンテナシート11を挟んでカード基材5側の一方の第1平板電極151を、アンテナシート11の板厚方向Dtでカード基材5側から見た平面視で他方の第2平板電極152を覆って形成する。次に、平板電極15を部分的に電気的に切り離すことにより、ブースターアンテナ12を所定の静電容量に調整する。
【0063】
本実施形態では、ICカード1の製造時において、第1平板電極151及び第2平板電極152の適宜な位置で切断して切り離すことで、平板電極15と金属板からなるカード基材5との間に発生する浮遊容量、および/または平板電極15間(第1平板電極151と第2平板電極152との間)の静電容量を適宜切り離すことでブースターアンテナ12の静電容量を調整できる。
しかも、本実施形態では、平板電極15のうちアンテナシート11を挟んでカード基材5側の第1平板電極151が板厚方向Dtでカード基材5側から見た平面視で他方の第2平板電極152を覆っているので、第2平板電極152と金属板からなるカード基材5との間で生じる大きな浮遊容量が無くなることから、ブースターアンテナ12の静電容量の大きさをより精度よく、かつ確実に予測、計算、調整することが可能となる。つまり、従来のように第2平板電極152が第1平板電極151より大きく、第1平板電極151によって覆われていないブースターアンテナの場合のように第2平板電極152とカード基材5との間に生じる浮遊容量が大きくなり、ブースターアンテナ12の静電容量の予測や計算が困難になることを抑制できる。
【0064】
また、本実施形態では、第1平板電極151及び第2平板電極152は、切断可能な切断用配線155によって電気的に接続された複数の可変容量電極部154を有する。これにより、ブースターアンテナ12の静電容量のうち、複数の可変容量電極部154を適宜切り離すことで、その可変容量電極部154の静電容量を確実にアンテナ回路(閉ループ回路)から切り離すことが可能となる。
【0065】
また、本実施形態では、第1平板電極151及び第2平板電極152の両方の切断用配線155が切断されている。この構成によれば、ブースターアンテナ12の静電容量のうち、切り離された第1可変容量電極部154Aと第2可変容量電極部154Bのそれぞれにおいて、金属板からなるカード基材5との間で生じ得る浮遊容量を無効化できる。そのため、ブースターアンテナ12の静電容量の予測や計算がし易くなり、精度よく静電幼鳥を調整できる。
【0066】
また、本実施形態では、第2平板電極152の第2切断用配線155Bのみが切断されている場合には、切断によって電気的に切り離された第2可変容量電極部154Bと、この第2可変容量電極部154Bに対向する第1可変容量電極部154Aとの間に静電容量E2が生じないので、切り離された部分の静電容量E2が減少される。そして、第1可変容量電極部154Aは切り離されていないので、第1可変容量電極部154Aとカード基材5との間に生じる浮遊容量E3は有効となる。つまり、第2切断用配線155Bで切り離された第2可変容量電極部154Bがもつ静電容量E2のみを減少できる調整となる。すなわち、本実施形態では、カード基材5と第1平板電極151の面積は常に一定となるため、カード基材5と第1平板電極151との間で生じる浮遊容量E3、E4は常に一定となり、第1平板電極151と第2平板電極152との間の静電容量E2のみを減らすことが可能となるため、より精度よく静電容量を調整できる。
【0067】
また、本実施形態では、第1平板電極151の第1切断用配線155Aと第2平板電極152の第2切断用配線155Bとは、平面視して重ならない位置に配置されている。この構成によれば、例えばパンチ等による打ち抜きによって切断用配線155を切断する際に、第1切断用配線155Aと第2切断用配線155Bとがずれた位置であるので、第1切断用配線155Aと第2切断用配線155Bとを同時に切断されることを抑制できる。そのため、切断用配線155A、155B同士が接触して可変容量電極部154が短絡することを防止することができる。
【0068】
また、本実施形態では、第1平板電極151が平面視で第2平板電極152よりも全周において0.2mm~0.6mm外側に大きく形成されている。すなわち、配線パターンの製造位置ズレ公差分に相当する0.2mm~0.6mmであるので、第1平板電極151と第2平板電極152との平面方向の相対的な製造誤差が生じた場合でも、板厚方向Dtで第1平板電極151によって第2平板電極152を覆った状態に形成することができる。
【0069】
また、本実施形態では、第1平板電極151及び第2平板電極152が切断可能な切断用配線155によって電気的に接続された複数の可変容量電極部154を有し、切断用配線155を選択的に切断できるので、可変容量電極部154の切り離し方を選択することで調整可能な静電容量の幅を広げることが可能となり、共振周波数の調整をより適切に行うことができる。
【0070】
このように、本実施形態では、ブースターアンテナ12における静電容量を精度よく確実に調整できる。
【0071】
(第2実施形態)
図14は、第2実施形態による可変容量電極部154の一例を示す斜視図である。図15は、図14の可変容量電極部154を含むICカード1Dの等価回路を模式的に示す図である。
図14及び図15に示すように、第2実施形態によるICカード1Dは、第1平板電極151が切断用配線によって複数に分割されていない一体に形成された第1可変容量電極部154Cを備えている。第2平板電極152は、上述した第1実施形態と同様に、切断可能な第2切断用配線155Bによって電気的に接続された複数の第2可変容量電極部154Bを有している。そして、複数の第2可変容量電極部154Bのすべてが、1つの第1可変容量電極部154Cによって板厚方向Dtから見て覆われている。
【0072】
第2実施形態では、カード基材5と第1平板電極151の面積は常に一定となるため、カード基材5と第1平板電極151との間で生じる浮遊容量E3、E4は常に一定となり、第1平板電極151と第2平板電極152との間の静電容量E2のみを減らすことが可能となるため、より精度よく静電容量を調整できる。
【0073】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
【0074】
例えば、本実施形態では、第1平板電極151及び第2平板電極152が切断可能な切断用配線155によって電気的に接続された複数の可変容量電極部154を有する構成としているが、可変容量電極部154が切断用配線155によって接続されて複数に分割された構成であることに限定されることはなく、分割されずに一体で設けられる構成であってもよい。要は、製造時に、可変容量電極部の一部を切り離し可能に設けられていればよく、切断用配線155を省略することも可能である。
【0075】
また、本実施形態では、主コイル13(アンテナコイル)がアンテナシート11の表面11fに形成された構成としているが、表面11fであることに限定されることはない。例えば、アンテナシート11の表裏面のうち裏面にアンテナコイルが形成されていてもよいし、表裏面の両面に亘って二巻き以上でアンテナコイルが形成された構成のものを採用することも可能である。
【0076】
また、本実施形態では、第1平板電極151の第1切断用配線155Aと第2平板電極152の第2切断用配線155Bとが平面視して重ならない位置に配置されているが、これに限定されることはなく、平面視して互いに重なっていてもよい。
【0077】
また、本実施形態では、第1平板電極151が平面視で第2平板電極152よりも全周において0.2mm~0.6mm外側に大きく形成された構成としているが、第1平板電極151が第2平板電極152を覆っていればよいのであって、0.2mm~0.6mmとする寸法に制限されることはない。
【0078】
また、上述した実施形態では、ICカードの例として、接触型及び非接触型の双方として機能する、いわゆる複合ICカードの例を説明したが、特に限定されず、接触型のみ機能するICカードや、非接触型のみ機能するICカードにおいても適用可能である。
【0079】
いずれの上記形態においても、本発明に係るICカードによれば、アンテナの設計を最適化して通信性能を向上させるICカードを提供することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 ICカード
1f 表面
1g 裏面
5 カード基材(金属板)
51 開口部
10 アンテナ基板
10f 表面
10g 裏面
11 アンテナシート
12 ブースターアンテナ
13 主コイル(アンテナコイル)
14 結合コイル
141 第1結合コイル
142 第2結合コイル
15 平板電極
151 第1平板電極
152 第2平板電極
153 固定容量電極部
154 可変容量電極部
154A、154C 第1可変容量電極部
154B 第2可変容量電極部
155 切断用配線
155A 第1切断用配線
155B 第2切断用配線
20 ICモジュール
40 絶縁層(絶縁体)
D1 長辺方向
D2 短辺方向
Dt 板厚方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15