(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037367
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】走行制御装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
E02F9/22 A
E02F9/22 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142172
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】由井 涼
(72)【発明者】
【氏名】田中 海
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩司
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AB05
2D003BA01
2D003BB02
2D003BB03
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】走行モータの加速度の制限を、左右の走行操作部の操作内容の差異に応じた適切な制限にする。
【解決手段】走行装置11bは、左走行装置11bLおよび右走行装置11bRを備える。左走行操作部31Lは、左走行装置11bLを操作する。右走行操作部31Rは、右走行装置11bRを操作する。走行モータ26は、走行装置11bを駆動する。コントローラ40は、左走行操作部31Lおよび右走行操作部31Rの操作内容に応じて走行モータ26を制御する。コントローラ40は、左走行操作部31Lの操作内容と右走行操作部31Rの操作内容との差異の判定を行い、走行モータ26の加速度の制限を上記の差異に応じて変える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左走行装置および右走行装置を有する走行装置と、
前記左走行装置を操作するための左走行操作部と、
前記右走行装置を操作するための右走行操作部と、
前記走行装置を駆動する走行モータと、
前記左走行操作部および前記右走行操作部の操作内容に応じて前記走行モータを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記左走行操作部の操作内容と前記右走行操作部の操作内容との差異に関する判定を行い、前記走行モータの加速度の制限を前記差異に応じて変える、
走行制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の走行制御装置であって、
前記左走行操作部と前記右走行操作部とが互いに同じ操作方向に操作され、かつ、前記左走行操作部の操作量と前記右走行操作部の操作量との差分である左右操作量差分が所定差分値未満である操作を、走行直進操作とし、
前記左走行操作部と前記右走行操作部との少なくとも一方が操作される操作であって前記走行直進操作でない操作を、ステアリング操作としたとき、
前記コントローラは、前記走行直進操作が行われるときの前記走行モータの加速度の制限よりも、前記ステアリング操作が行われるときの前記走行モータの加速度の制限を小さくする、
走行制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の走行制御装置であって、
前記ステアリング操作は、前記左走行操作部と前記右走行操作部とが互いに同じ操作方向に操作され、かつ、前記左右操作量差分が前記所定差分値以上である走行ステアリング操作を含み、
前記走行ステアリング操作が行われるとき、前記コントローラは、前記左右操作量差分が第1差分のときよりも、前記左右操作量差分が前記第1差分よりも大きい第2差分のときに、前記走行モータの加速度の制限を小さくする、
走行制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の走行制御装置であって、
前記走行ステアリング操作が行われるとき、前記コントローラは、前記左右操作量差分が大きくなるにしたがって、前記走行モータの加速度の制限を小さくする、
走行制御装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の走行制御装置であって、
動力源に回転駆動されることで前記走行モータに油を供給するポンプを備え、
前記走行モータは、前記ポンプから油を供給されることで回転駆動し、
前記コントローラは、前記左走行操作部および前記右走行操作部の操作内容に応じて前記ポンプの吐出流量を制御し、
前記コントローラは、単位時間当たりの前記ポンプの吐出流量の変化量であるポンプ吐出流量変化量の制限を前記差異に応じて変えることで、前記走行モータの加速度の制限を前記差異に応じて変える、
走行制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の走行制御装置であって、
前記ポンプの容量は、変更可能であり、
前記コントローラは、前記左走行操作部および前記右走行操作部の操作内容に応じて前記ポンプの容量を制御し、
前記コントローラは、前記ポンプの容量の単位時間当たりの変化量であるポンプ容量変化量の制限を変えることで、前記走行モータの加速度の制限を変える、
走行制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の走行制御装置であって、
前記コントローラは、前記ポンプの回転数に応じて、前記ポンプ容量変化量の制限の大きさを補正する、
走行制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の走行制御装置であって、
前記コントローラは、前記ポンプの回転数が第1回転数のときよりも、前記ポンプの回転数が前記第1回転数よりも大きい第2回転数のときに、前記ポンプ容量変化量の制限を大きくする、
走行制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の走行制御装置であって、
前記コントローラは、前記ポンプの回転数が大きくなるにしたがって、前記ポンプ容量変化量の制限を大きくする、
走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右の走行装置を制御する走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、従来の走行制御装置が記載されている。同文献に記載の発明では、走行操作部(同文献における走行操作レバー)が操作された場合に、操作に対する走行モータの応答性を、コントローラが一時的に遅らせる。これにより、走行操作部で誤操作が行われても、建設機械が微小距離しか移動しないようにすることが図られている(同文献の要約書および明細書の段落0013などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同文献に記載の発明は、左右の走行操作部(同文献では走行左操作レバー、走行右操作レバー)を備えている。走行モータの加速度を制限する(同文献では応答性を遅らせる)必要性は、左右の走行操作部の操作内容の差異によって変わる場合がある。しかし、同文献に記載の発明では、走行モータの加速度を制限する際に、左右の走行操作部の操作内容の差異は考慮されていない。そのため、走行モータの加速度の制限を、左右の走行操作部と右走行操作部との操作内容の差異に応じた制限にすることが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、走行モータの加速度の制限を、左右の走行操作部の操作内容の差異に応じた適切な制限にすることができる、走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
走行制御装置は、走行装置と、左走行操作部と、右走行操作部と、走行モータと、コントローラと、を備える。前記走行装置は、左走行装置および右走行装置を有する。前記左走行操作部は、前記左走行装置を操作するためのものである。前記右走行操作部は、前記右走行装置を操作するためのものである。前記走行モータは、前記走行装置を駆動する。前記コントローラは、前記左走行操作部および前記右走行操作部の操作内容に応じて前記走行モータを制御する。前記コントローラは、前記左走行操作部の操作内容と前記右走行操作部の操作内容との差異の判定を行い、前記走行モータの加速度の制限を前記差異に応じて変える。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、走行モータの加速度の制限を、左右の走行操作部の操作内容の差異に応じた適切な制限にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】走行制御装置1の作業機械10を横から見た図である。
【
図2】
図1に示す走行制御装置1の油圧回路20などを示す図である。
【
図3】
図2に示すポンプ21のポンプ容量変化量Δqが制限された場合の、ポンプ21の容量の時間的変化などを示すグラフである。
【
図4】
図2に示すポンプ21のポンプ容量変化量Δqが制限されない場合の、ポンプ21の容量の時間的変化などを示すグラフである。
【
図5】
図2に示す走行操作部31の左右操作量差分Dと、ポンプ21のポンプ容量変化量Δqの上限値Rと、の関係を示すグラフである。
【
図6】
図2に示すポンプ21のポンプ回転数Nと、ポンプ21のポンプ容量変化量Δqの補正後上限値Raと、の関係を示すグラフである。
【
図7】
図2に示すコントローラ40の作動を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1~
図7を参照して、走行制御装置1について説明する。
【0010】
走行制御装置1は、
図2に示す走行モータ26を制御し、走行装置11b(
図1参照)を制御する装置(走行制御システム)である。走行制御装置1は、作業機械10(
図1参照)と、走行操作部31と、操作量検出部33と、コントローラ40と、を備える。
【0011】
作業機械10は、
図1に示すように、作業を行う機械であり、例えば建設作業を行う建設機械であり、例えばショベルでもよく、クレーンでもよい。以下では、主に、作業機械10がショベルである場合について説明する。作業機械10は、運転室13a(後述)内の操作者(オペレータ、作業者)に操作されてもよく、作業機械10の外部の操作者に遠隔操作されてもよい。作業機械10は、下部走行体11と、上部旋回体13と、アタッチメント15と、
図2に示す動力源17と、回転数検出部19と、油圧回路20と、を備える。
【0012】
下部走行体11(
図1参照)は、走行面(地面など)を走行可能である。
図1に示すように、下部走行体11は、下部フレーム11aと、走行装置11bと、を備える。下部フレーム11aは、走行装置11bおよび上部旋回体13を支持する構造物である。
【0013】
走行装置11bは、作業機械10を走行させる装置である。走行装置11bは、左走行装置11bLと、右走行装置11bRと、を備える。左走行装置11bLは、下部フレーム11aの左右方向の一方側部分(例えば左側部分)に取り付けられる。例えば、左走行装置11bLは、クローラと、クローラを支持するクローラフレームと、を備える装置である(右走行装置11bRも同様)。左走行装置11bLは、前進側と後進側とに走行可能である(右走行装置11bRも同様)。左走行装置11bLの「前進側」は、左走行装置11bLの長手方向の一方である(右走行装置11bRも同様)。左走行装置11bLの「後進側」は、左走行装置11bLの前進側の逆側である(右走行装置11bRも同様)。右走行装置11bRは、下部フレーム11aの左右方向のうち左走行装置11bLが取り付けられる側とは反対側部分に取り付けられる。
【0014】
上部旋回体13は、下部走行体11(さらに詳しくは下部フレーム11a)に旋回(上下方向に延びる回転軸を中心に回転)可能に搭載される。上部旋回体13は、運転室13aを備える。運転室13aは、操作者が作業機械10を操作することが可能な部分(操作室)である。
【0015】
アタッチメント15は、作業を行う部分であり、例えば、ブーム15aと、アーム15bと、先端アタッチメント15cと、を備える。ブーム15aは、上部旋回体13に起伏可能(上下方向に回転可能)に取り付けられる。アーム15bは、ブーム15aに回転可能に取り付けられる。先端アタッチメント15cは、アタッチメント15の先端部に設けられ、アーム15bに回転可能に取り付けられる。先端アタッチメント15cは、例えば作業対象物をすくう作業や掘削などを行うバケットでもよく、作業対象物を挟む装置(グラップル、ニブラなど)でもよく、作業対象物の破砕などを行う装置(ブレーカなど)でもよい。
【0016】
動力源17は、ポンプ21(
図2参照)を駆動する。動力源17は、作業機械10に搭載され、上部旋回体13に搭載される。動力源17は、内燃機関(エンジン)でもよく、電動機でもよい。
図2に示す動力源17は、回転数(回転速度)(さらに詳しくは出力軸17aの回転数)を変更可能である。動力源17の回転数は、操作者の操作に応じて(任意に)変更されてもよく、コントローラ40に制御されてもよい。動力源17は、出力軸17aを備える。出力軸17aは、動力源17の駆動により回転する軸部材である。
【0017】
回転数検出部19は、ポンプ21の回転数(ポンプ回転数N)(回転速度)を検出する(詳細は後述)。
【0018】
油圧回路20は、走行モータ26を制御する回路である。油圧回路20は、作業機械10(
図1参照)に搭載され、上部旋回体13(
図1参照)に搭載される。油圧回路20は、ポンプ21と、ポンプ容量制御部23と、走行モータ26と、コントロールバルブ27と、を備える。
【0019】
ポンプ21は、動力源17に回転駆動されることで油を吐出する油圧ポンプである。ポンプ21は、動力源17に回転駆動されることで、タンクTから油を吸い込み、油を吐出する。ポンプ21は、1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。ポンプ21は(さらに詳しくはポンプ21の入力軸は)、動力源17の出力軸17aに接続される。ポンプ21は、出力軸17aに直結されてもよい。ポンプ回転数Nは、動力源17の回転数(例えばエンジン回転数)と等しくてもよい。ポンプ21は、変速機(減速機または増速機)を介して出力軸17aに接続されてもよい。変速機の変速比(減速比または増速比)が一定の場合、ポンプ回転数Nは、動力源17の回転数に比例してもよい。
【0020】
このポンプ21の容量は、変更可能である。ポンプ21の容量を「ポンプ容量q」(
図3および
図4参照、以下のポンプ容量qについても同様)とする。ポンプ容量qは、ポンプ21の入力軸が1回転したときにポンプ21が吐出する油の流量と等しい。具体的には例えば、ポンプ21の入力軸に対する斜板(図示なし)の傾転角が変更されることで、ポンプ容量q(傾転容量)が変更される。ここでは、ポンプ21が複数設けられる場合について説明する。ポンプ21は、第1ポンプ21Lと、第2ポンプ21Rと、を備える。第1ポンプ21Lは、左走行モータ26Lに油を供給する。第2ポンプ21Rは、右走行モータ26Rに油を供給する。なお、ポンプ21は、走行モータ26以外の油圧アクチュエータ(図示なし)に油を供給してもよい。
【0021】
ポンプ容量制御部23(レギュレータ)は、ポンプ容量qを制御する。ポンプ容量制御部23は、ポンプ容量制御部23に入力される指令(ポンプ容量指令)に応じて、ポンプ容量qを制御する。ポンプ容量指令は、例えば、コントローラ40が出力する電気信号であり、具体的には例えば、電流値(ポンプ容量指令電流(傾転角指令電流))などである。ポンプ容量制御部23は、電気信号のポンプ容量指令に基づいて(電気信号を変換することなく)ポンプ容量qを変えるように構成されてもよい。ポンプ容量制御部23は、ポンプ容量指令を電気信号からパイロット圧力(油圧)に変換し、パイロット圧力に基づいてポンプ容量qを変えるように構成されてもよい。この場合、ポンプ容量制御部23は、電磁比例弁を備えてもよく、電磁比例弁とは異なる弁を備えてもよい。
【0022】
このポンプ容量制御部23は、ポンプ21が複数(具体的には第1ポンプ21Lおよび第2ポンプ21R)設けられる場合は、各ポンプ21に対して設けられる。例えば、ポンプ容量制御部23は、第1ポンプ容量制御部23Lと、第2ポンプ容量制御部23Rと、を備える。第1ポンプ容量制御部23Lは、第1ポンプ21Lのポンプ容量qを制御する。第2ポンプ容量制御部23Rは、第2ポンプ21Rのポンプ容量qを制御する。
【0023】
走行モータ26は、走行装置11b(
図1参照)を駆動する。走行モータ26は、下部走行体11(
図1参照)を走行させ、作業機械10(
図1参照)を走行させる。走行モータ26は、油が通る流路(油路)を介してポンプ21に接続される。走行モータ26は、ポンプ21から吐出された油(作動油)が供給されることで作動(回転駆動)する油圧モータである。なお、走行モータ26は、電動モータでもよい。以下では、主に、走行モータ26が油圧モータである場合について説明する。走行モータ26は、左走行モータ26Lと、右走行モータ26Rと、を備える。
【0024】
左走行モータ26Lは、左走行装置11bL(
図1参照)に搭載され、左走行装置11bLを駆動する。左走行モータ26Lは、第1ポンプ21Lから供給された油により駆動する。
【0025】
右走行モータ26Rは、右走行装置11bR(
図1参照)に搭載され、右走行装置11bRを駆動する。右走行モータ26Rは、第2ポンプ21Rから供給された油により駆動する。
【0026】
コントロールバルブ27は、走行モータ26の作動を制御するバルブである。コントロールバルブ27は、ポンプ21と走行モータ26との間(油路における間)に設けられる。コントロールバルブ27は、油の流れる方向(油路)を切り換える方向切換弁であり、作動させる走行モータ26を切り換え、走行モータ26の作動の方向(回転方向)を切り換える。コントロールバルブ27は、走行モータ26に供給される油の流量を変え、走行モータ26の回転速度を変えてもよい。コントロールバルブ27は、左走行コントロールバルブ27Lと、右走行コントロールバルブ27Rと、を備える。左走行コントロールバルブ27Lは、左走行モータ26Lを制御する。右走行コントロールバルブ27Rは、右走行モータ26Rを制御する。
【0027】
走行操作部31は、操作者に操作される。走行操作部31は、走行装置11b(
図1参照)を操作するための部分であり、走行モータ26を操作するための部分である。走行操作部31は、運転室13a(
図1参照)内に設けられてもよく、遠隔操作を行う装置(遠隔操作部)に設けられてもよい。走行操作部31は、レバー(操作レバー)でもよく、ペダル(操作ペダル)でもよい。走行操作部31は、走行モータ26を操作するための指令(操作指令)を出力する。走行操作部31は、操作指令をコントロールバルブ27に出力し、コントロールバルブ27を制御(操作)することで、走行モータ26を操作する。走行操作部31が出力する操作指令は、パイロット圧力でもよい。この場合、走行操作部31は、油圧リモコン弁を備える油圧レバーでもよい。走行操作部31が出力する操作指令は、電気信号でもよい。この場合、走行操作部31は、電気ジョイスティックでもよい。走行操作部31は、左走行操作部31Lと、右走行操作部31Rと、を備える。
【0028】
左走行操作部31Lは、左走行装置11bL(
図1参照)を操作するための部分である。さらに詳しくは、左走行操作部31Lは、左走行コントロールバルブ27Lを操作し、左走行モータ26Lを操作することで、左走行装置11bL(
図1参照)を操作するための部分である。具体的には例えば、操作者から見て前方に左走行操作部31Lが操作されると、左走行装置11bLが前進側に走行する。操作者から見て後方に左走行操作部31Lが操作されると、左走行装置11bLが後進側に走行する。なお、左走行装置11bLの前進側への走行は、操作者から見て前方への走行とは限らず、左走行装置11bLの後進側への走行は、操作者から見て後方への走行とは限らない(詳細は後述)。
【0029】
右走行操作部31Rは、右走行装置11bR(
図1参照)を操作するための部分である。さらに詳しくは、右走行操作部31Rは、右走行コントロールバルブ27Rを操作し、右走行モータ26Rを操作することで、右走行装置11bR(
図1参照)を操作するための部分である。右走行操作部31Rの操作の具体例については、左走行操作部31Lの操作の具体例と同様である。
【0030】
操作量検出部33は、走行操作部31の操作量を検出する。以下では、走行操作部31の操作量を単に「操作量」ともいう。操作量検出部33は、走行操作部31の操作角度(例えばレバーやペダルの角度)を検出してもよい。例えば、操作量に応じたパイロット圧力(油圧リモコン弁の2次圧)を走行操作部31が出力する場合、操作量検出部33は、このパイロット圧力を検出してもよい。例えば、操作量に応じた電気信号を走行操作部31が出力する場合、操作量検出部33は、この電気信号を検出してもよい。この場合、操作量検出部33は、コントローラ40でもよい。操作量検出部33は、左右の走行操作部31の、前進および後進の操作量を検出する。具体的には例えば、操作量検出部33は、左走行操作部31Lの操作量を検出する左走行操作量検出部33Lと、右走行操作部31Rの操作量を検出する右走行操作量検出部33Rと、を備える。左走行操作量検出部33Lは、左前進操作量検出部33Lfと、左後進操作量検出部33Lrと、を備える。左前進操作量検出部33Lfは、左走行装置11bLを前進側に走行させる操作の操作量を検出する。左後進操作量検出部33Lrは、左走行装置11bLを後進側に走行させる操作の操作量を検出する。なお、左前進操作量検出部33Lfと左後進操作量検出部33Lrとは、別々の装置(センサ)でも、一つの装置でもよい。同様に、右走行操作量検出部33Rは、右前進操作量検出部33Rfと、右後進操作量検出部33Rrと、を備える。
【0031】
コントローラ40は、信号の入出力、演算(処理)、情報の記憶などを行うコンピュータである。例えば、コントローラ40の機能は、コントローラ40の記憶部(図示なし)に記憶されたプログラムが演算部(図示なし)で実行されることにより実現される。コントローラ40は、様々な制御を行う。例えば、コントローラ40は、走行操作部31の操作内容に応じて走行モータ26を制御する(詳細は後述)。例えば、走行モータ26が油圧モータの場合、コントローラ40は、ポンプ21の容量を制御する。コントローラ40の全体または一部は、作業機械10(
図1参照)に搭載されてもよく、作業機械10の外部に配置されてもよい。コントローラ40は、操作内容取得部41と、ポンプ回転数取得部43と、ポンプ容量演算部45と、ポンプ容量指令部47と、を備える。
【0032】
操作内容取得部41は、走行操作部31の操作内容を取得する。例えば、操作内容取得部41が取得する「操作内容」は、走行操作部31の操作の有無の情報を含み、左走行操作部31Lの操作の有無、および右走行操作部31Rの操作の有無の情報を含む。この「操作内容」は、操作された走行操作部31の操作の方向(前進側、後進側)、および操作量の情報を含む。例えば、操作内容取得部41は、操作量検出部33から検出結果(例えば電気信号)を取得する。
【0033】
ポンプ回転数取得部43は、ポンプ回転数Nを取得する。ポンプ回転数取得部43は、動力源17の回転数を取得することで、ポンプ回転数Nを取得してもよい。この場合、例えば、ポンプ回転数取得部43は、動力源17の回転数の検出値を回転数検出部19から取得してもよく、コントローラ40から動力源17への回転数の指令を取得してもよい。動力源17の回転数とポンプ回転数Nとが互いに異なる場合は、ポンプ回転数取得部43は、動力源17の回転数に基づいてポンプ回転数Nを算出してもよい。なお、ポンプ回転数取得部43は、ポンプ21の入力軸のポンプ回転数Nの検出値を取得してもよい。通常、第1ポンプ21Lのポンプ回転数Nと、第2ポンプ21Rのポンプ回転数Nとは、同一である。第1ポンプ21Lと第2ポンプ21Rとでポンプ回転数Nが相違する場合は、ポンプ回転数取得部43は、第1ポンプ21Lおよび第2ポンプ21Rのそれぞれのポンプ回転数Nを取得してもよい。
【0034】
ポンプ容量演算部45は、コントローラ40からポンプ容量制御部23に指令するポンプ容量qを演算する。例えば、ポンプ容量演算部45は、第1ポンプ21Lおよび第2ポンプ21Rのそれぞれのポンプ容量qを演算する。ポンプ容量演算部45は、操作内容取得部41が取得した走行操作部31の操作内容に基づいて、ポンプ容量qを演算(算出、決定)する(詳細は後述)。
【0035】
ポンプ容量指令部47は、ポンプ容量qを指令する。さらに詳しくは、ポンプ容量指令部47は、ポンプ容量演算部45が算出したポンプ容量qの指令(ポンプ容量指令)を、ポンプ容量制御部23に出力する。例えば、ポンプ容量指令部47は、第1ポンプ容量制御部23Lおよび第2ポンプ容量制御部23Rのそれぞれにポンプ容量qの指令を出力する。ポンプ容量指令部47が出力するポンプ容量指令は、例えば電気信号(例えば電流値)などである。
【0036】
(走行操作)
上記のように、走行操作部31は、操作者に操作される。走行操作部31で行われる、走行装置11b(
図1参照)の操作を、走行操作という。走行操作には、走行直進操作と、ステアリング操作と、がある。
【0037】
走行直進操作は、下部走行体11(
図1参照)を直進(前進または後進)させる操作である。走行直進操作は、左走行操作部31Lと右走行操作部31Rとが互いに同じ操作方向(両方前進、または両方後進)に操作され、かつ、左右操作量差分Dが所定差分値Dth0(例えば略ゼロ)(
図5参照)未満の操作である。左右操作量差分D(
図5参照、以下の左右操作量差分Dについても同様)は、左走行操作部31Lの操作量と右走行操作部31Rの操作量との差分である。左右操作量差分Dは、左走行操作部31Lの操作量と右走行操作部31Rの操作量との差の大きさ(絶対値)である。
【0038】
ステアリング操作は、走行面(地面など)に対する下部走行体11(
図1参照)の向きを変える(方向転換させる)操作である。ステアリング操作は、左走行操作部31Lと右走行操作部31Rとの少なくとも一方が操作される操作であって、上記「走行直進操作」でない操作である。ステアリング操作には、走行ステアリング操作と、ターン操作と、がある。
【0039】
走行ステアリング操作は、下部走行体11(
図1参照)を前進または後進させながら、下部走行体11を方向転換させる操作である。走行ステアリング操作は、左走行操作部31Lと右走行操作部31Rとが互いに同じ操作方向に操作され、かつ、左右操作量差分Dが所定差分値Dth0(
図5参照)以上の操作である。
【0040】
ターン操作は、下部走行体11(
図1参照)を、その場旋回させる操作である。ターン操作には、ピボットターン操作と、スピンターン操作と、がある。ピボットターン操作は、下部走行体11をピボットターンさせる操作である。ピボットターン操作は、左走行操作部31Lおよび右走行操作部31Rのうち一方のみが操作される操作である。スピンターン操作は、下部走行体11をスピンターンさせる操作である。スピンターン操作は、左走行操作部31Lと右走行操作部31Rとが互いに逆の操作方向に操作される操作である。スピンターン操作では、左走行操作部31Lと右走行操作部31Rとで、操作方向が互いに逆、かつ、操作量が同じでもよい。また、スピンターン操作では、左走行操作部31Lと右走行操作部31Rとで、操作方向が互いに逆、かつ、操作量が相違してもよい。
【0041】
(作動)
走行制御装置1は、以下のように作動するように構成される。以下では、主に、コントローラ40のポンプ容量演算部45の作動について説明する。
【0042】
コントローラ40の作動の概要は、次の通りである。コントローラ40は、左走行操作部31Lの操作内容と右走行操作部31Rの操作内容との差異の判定を行う(
図7のステップS20、S30を参照)。コントローラ40は、判定した差異に応じて、走行モータ26の加速度の制限を変える(
図7のステップS22、S32、S42を参照)。具体的には例えば、コントローラ40は、ポンプ容量変化量Δq(後述)の制限を変えることで、走行モータ26の加速度の制限を変える。
【0043】
(操作内容に応じた目標ポンプ容量qrの算出)
コントローラ40は、走行操作部31の操作内容(操作量など)に応じて、走行モータ26を制御する。具体的には、コントローラ40は、走行操作部31の操作内容に応じて、ポンプ容量qの目標値を算出する。ポンプ容量qの目標値を「目標ポンプ容量qr」という(
図3および
図4参照、以下の目標ポンプ容量qrについても同様)。コントローラ40は、第1ポンプ21Lおよび第2ポンプ21Rのそれぞれの目標ポンプ容量qrを算出する。具体的には例えば、コントローラ40には、走行操作部31の操作内容と、目標ポンプ容量qrに関する情報と、の関係(マップ)が予め設定される。上記「目標ポンプ容量qrに関する情報」は、目標ポンプ容量qrでもよく、目標ポンプ容量qrに関連する情報でもよい。上記「目標ポンプ容量qrに関する情報」は、ポンプ容量指令(コントローラ40からポンプ容量制御部23に出力する指令)の目標値でもよく、具体的には例えば、目標とする電流値でもよい。また、例えば、コントローラ40は、走行操作部31の操作内容に応じた目標ポンプ容量qrの算出を、数式などに基づいて行ってもよい。なお、ポンプ21が、走行モータ26だけでなく、走行モータ26以外の油圧アクチュエータにも油を供給する場合がある。この場合は、コントローラ40は、走行モータ26の操作内容、および、走行モータ26以外の油圧アクチュエータの操作内容に基づいて、目標ポンプ容量qrを決定してもよい。
【0044】
(ポンプ容量変化量Δqの制限)
例えば、コントローラ40は、ポンプ容量変化量Δqを制限することで、走行モータ26の加速度を制限する。ポンプ容量変化量Δqは、ポンプ容量qの単位時間当たりの変化量(ポンプ容量qの増加ゲイン)である(
図3および
図4に示すポンプ容量qのグラフの傾きを参照)。上記「単位時間」は、様々に設定可能であり、例えば、コントローラ40の1制御周期でもよく、1秒でもよく、1分でもよい。
【0045】
さらに詳しくは、コントローラ40は、ポンプ容量変化量Δqを制限する場合、目標ポンプ容量qrを決定した後、実際のポンプ容量qを、徐々に目標ポンプ容量qrに近づける(
図3参照)。コントローラ40は、ポンプ容量変化量Δqを制限することで、単位時間当たりのポンプ吐出流量Qの変化量(ポンプ吐出流量変化量ΔQ)を制限し、走行モータ26の加速度を制限し、走行モータ26の回転速度の急変を抑制する。
【0046】
具体的には、コントローラ40は、ポンプ容量変化量Δqの大きさ(絶対値)の上限値R(走行モータ26の加速度の大きさに関する上限値の一例)を設定することで、ポンプ容量変化量Δqを制限する。さらに詳しくは、ポンプ容量変化量Δqが制限されないと仮定したときに、ポンプ容量変化量Δqが上限値Rを超えるような操作(急操作)が、走行操作部31に対して行われたとする。この急操作が行われたとき、ポンプ容量変化量Δqが制限される場合には、コントローラ40は、ポンプ容量変化量Δqが上限値R以下となるようにポンプ容量変化量Δqを制限する。さらに具体的には、ポンプ容量qが電流値により制御される場合は、コントローラ40は、単位時間当たりの電流値の変化量の大きさ(絶対値)の上限値Rを設定することで、ポンプ容量変化量Δqを制限する。
【0047】
図3に、ポンプ容量変化量Δqが制限される場合の、ポンプ容量qなどの時間的変化を表すグラフを示す。このグラフの縦軸は、走行操作部31の操作量、ポンプ容量q、およびポンプ容量指令(例えば電流)を示す。グラフの横軸は、時間を示す。
図3における上部に示すグラフは、左走行操作部31Lおよび第1ポンプ21Lに関するグラフである。
図3における下部に示すグラフは、右走行操作部31Rおよび第2ポンプ21Rに関するグラフである。
図3に示すグラフは、走行操作部31で走行直進操作が行われた場合のグラフである。このグラフでは、左走行操作部31Lと右走行操作部31Rとで操作量が同じである。ポンプ容量変化量Δqが制限されることは、ポンプ容量qと時間との関係を示すグラフの傾きが制限されることを意味する。
【0048】
図3に示す例では、左走行操作部31Lの操作量は、時刻t0から時刻t1まで増加し、時刻t1以後は一定である。一方、第1ポンプ21Lのポンプ容量指令(例えば電流)は、時刻t0から時刻t2(時刻t1よりも後)まで増加し、時刻t2に左走行操作部31Lの操作量に応じた指令(目標ポンプ容量qrに対応する指令)になる。その結果、第1ポンプ21Lのポンプ容量qは、時刻t0から時刻t2まで増加し、時刻t2に左走行操作部31Lの操作量に応じた容量(目標ポンプ容量qr)になる。ここで、仮に、ポンプ容量変化量Δqが制限されないとすると、時刻t0から時刻t1までの第1ポンプ21Lのポンプ容量変化量Δqの大きさは、コントローラ40に設定された上限値Rよりも大きい。一方、この例では、ポンプ容量変化量Δqが制限される。よって、コントローラ40は、ポンプ容量変化量Δqの大きさが上限値R以下となるように(例えば上限値Rとなるように)、第1ポンプ21Lのポンプ容量指令を制限する。コントローラ40は、ポンプ容量変化量Δqを制限しない場合に比べ、ポンプ容量変化量Δqを制限する場合に、ポンプ容量変化量Δqおよびポンプ容量指令を低減させる。このため、第1ポンプ21Lのポンプ容量指令は、左走行操作部31Lの操作量の増加が終わる時刻t1では左走行操作部31Lの操作量に応じた容量(目標ポンプ容量qr)への増加が完了しない。そして、第1ポンプ21Lのポンプ容量指令は、時刻t1よりも後も増加を続け、時刻t2に左走行操作部31Lの操作量に応じた指令(目標ポンプ容量qrに対応する指令)になる。なお、時刻t2以後は、第1ポンプ21Lのポンプ容量指令は、目標ポンプ容量qrに対応する指令値で一定になる。また、第1ポンプ21Lのポンプ容量qは、目標ポンプ容量qrで一定になる。
図3に示す例では、右走行操作部31Rの操作量、第2ポンプ21Rのポンプ容量指令、および第2ポンプ21Rのポンプ容量qは、左走行操作部31Lおよび第1ポンプ21Lと同様に変化する。
【0049】
コントローラ40が走行モータ26の加速度を制限しない(具体的にはポンプ容量変化量Δqを制限しない)場合があってもよい。この場合、コントローラ40は、目標ポンプ容量qrを決定し、直ちに、実際のポンプ容量qを目標ポンプ容量qrにする(
図4参照)。
【0050】
図4に、ポンプ容量変化量Δqが制限されない場合の、ポンプ容量qなどの時間的変化を表すグラフを示す。このグラフの縦軸および横軸は、
図3と同様である。
図4における上部に示すグラフは、左走行操作部31Lおよび第1ポンプ21Lに関するグラフである。
図4における下部に示すグラフは、右走行操作部31Rおよび第2ポンプ21Rに関するグラフである。
図4に示すグラフは、走行操作部31で走行ステアリング操作が行われた場合のグラフである。このブラフでは、左走行操作部31Lの操作量に比べ、右走行操作部31Rの操作量が小さい。
【0051】
図4に示す例では、左走行操作部31Lの操作量は、時刻t0から時刻t1まで増加し、時刻t1以後は一定である(
図3に示す例と同様)。一方、第1ポンプ21Lのポンプ容量指令(例えば電流)は、時刻t0から時刻t1まで増加し、時刻t1(時刻t2(
図3参照)よりも前)に、左走行操作部31Lの操作量に応じた指令(目標ポンプ容量qrに対応する指令)になる。その結果、第1ポンプ21Lのポンプ容量qは、時刻t0から時刻t1まで増加し、時刻t1に左走行操作部31Lの操作量に応じた容量(目標ポンプ容量qr)になる。なお、時刻t1以後は、第1ポンプ21Lのポンプ容量指令は、目標ポンプ容量qrに対応する指令値で一定になり、第1ポンプ21Lのポンプ容量qは、目標ポンプ容量qrで一定になる。
図4に示す例では、右走行操作部31Rの操作量、第2ポンプ21Rのポンプ容量指令、および第2ポンプ21Rのポンプ容量qは、左走行操作部31Lおよび第1ポンプ21Lと略同様に変化する。右走行操作部31Rの操作量は、左走行操作部31Lの操作量よりも小さい。そのため、第2ポンプ21Rのポンプ容量指令は、第1ポンプ21Lのポンプ容量指令よりも小さい。その結果、第2ポンプ21Rのポンプ容量qは、第1ポンプ21Lのポンプ容量qよりも小さい。
【0052】
なお、コントローラ40は、走行モータ26の加速度を、走行モータ26が加速するときにのみ制限してもよく、走行モータ26が加速および減速するときに制限してもよく、走行モータ26が減速するときにのみ制限してもよい。具体的には、コントローラ40は、ポンプ容量変化量Δqを、ポンプ容量qが増加するときにのみ制限してもよく、ポンプ容量qが増加するときおよび減少するときに制限してもよく、ポンプ容量qが減少するときにのみ制限してもよい。
【0053】
(ポンプ容量変化量Δqの制限の変更)
図2に示すコントローラ40は、左走行操作部31Lの操作内容と右走行操作部31Rの操作内容との差異に応じて、走行モータ26の加速度の制限を変える。具体的には、コントローラ40は、左走行操作部31Lの操作内容と右走行操作部31Rの操作内容との差異に応じて、ポンプ容量変化量Δqの制限を変える。上記「左走行操作部31Lの操作内容と右走行操作部31Rの操作内容との差異」は、操作方向(前進側、後進側)の差異を含んでもよく、操作量の差異を含んでもよい。なお、「左走行操作部31Lの操作内容と右走行操作部31Rの操作内容との差異」には、操作の対象となる走行装置11b(
図1参照)の差異(すなわち左走行装置11bL(
図1参照)と右走行装置11bR(
図1参照)との差異)は、含まれない。上記「走行モータ26の加速度の制限を変える」は、走行モータ26の加速度の制限の有無を変えることを含んでもよく、走行モータ26の加速度の制限の度合いを変えることを含んでもよい。具体的には、上記「ポンプ容量変化量Δqの制限を変える」は、ポンプ容量変化量Δqの制限の有無を変えることを含んでもよく、ポンプ容量変化量Δqの制限の度合い(具体的には上限値Rの値)を変えることを含んでもよい。
【0054】
(直進走行操作とステアリング操作とでの制限の変更)
コントローラ40は、走行直進操作が行われるときの走行モータ26の加速度の制限よりも、ステアリング操作が行われるときの走行モータ26の加速度の制限を小さくすることが好ましい。具体的には、コントローラ40は、走行直進操作が行われるときのポンプ容量変化量Δqの制限よりも、ステアリング操作が行われるときのポンプ容量変化量Δqの制限を小さくすることが好ましい。この「制限を小さくする」は、制限の度合いを小さくする(緩くする)ことであり、制限を無くすことを含む。上記のように、コントローラ40は、ポンプ容量変化量Δqの大きさ(絶対値)の上限値Rを設定してもよい。この場合、コントローラ40は、走行直進操作が行われるときの上限値Rよりも、ステアリング操作が行われるときの上限値Rを大きくすることが好ましい。なお、ここでは、走行直進操作が行われるときと、走行ステアリング操作が行われるときとを比較した。この比較では、走行直進操作が行われるときと、走行ステアリング操作が行われるときとで、走行操作以外の条件(例えばポンプ回転数N、走行モータ26以外の油圧アクチュエータの操作量など)は同じであるとする。以下の各比較でも同様に、比較する内容以外の条件は同じであるとする。
【0055】
走行直進操作とステアリング操作とで走行モータ26の加速度の制限を変えることが好ましい理由は、例えば次の通りである。
【0056】
(走行直進操作時のポンプ容量変化量Δqの制限)
走行直進操作時には、走行操作部31の操作に対する走行装置11b(
図1参照)の応答が穏やかであることが好ましい。例えば、作業機械10(
図1参照)が緩発進することが好ましい。その理由は、例えば次の通りである。
【0057】
[問題例A1:誤操作の問題]走行直進操作時には、誤操作の問題が生じる場合がある。
図1に示す下部走行体11に対する上部旋回体13の旋回角度によっては、下部走行体11が操作者の意図に反する向きに走行する場合がある。具体的には例えば、上部旋回体13における前側と、下部走行体11における前側とが、同じまたは略同じ向きとなる場合がある。この場合に、操作者が、下部走行体11を前進側に走行させるために、操作者から見て前方に走行操作部31を操作する。すると、下部走行体11は、上部旋回体13における前側(斜め前を含む)に走行する。一方、上部旋回体13における前側と、下部走行体11における前側と、が逆または略逆向きとなる場合がある。この場合に、操作者が、上部旋回体13における前側に下部走行体11を走行させる意図で、操作者から見て前方に走行操作部31を操作する。すると、下部走行体11は、上部旋回体13における後側(斜め後ろを含む)に走行してしまう。そのため、操作者の操作が誤操作になってしまう(誤操作の問題が生じる)。同様に、下部走行体11の前側に対して上部旋回体13の前側が右または左を向いている場合も、誤操作の問題が生じる場合がある。
【0058】
[問題例A2:ショックの問題]走行直進操作時には、作業機械10にショックが発生する場合がある。さらに詳しくは、操作者が走行操作部31を急操作すると、走行モータ26(
図2参照)の回転速度が急変し、走行装置11bの速度が急変する(急加速、または急減速する)。すると、作業機械10に、ショック(揺れ、衝撃)が生じる。例えば、作業機械10が停止状態から急加速した場合は、起動ショックが生じる。操作者が運転室13a内で操作している場合は、作業機械10のショックが操作者の腕に伝わる場合がある。すると、操作者が意図せず走行操作部31を操作してしまう(例えばレバーハンチングが発生する)場合がある。
【0059】
上記の問題例A1および問題例A2を抑制するために、コントローラ40は、走行直進操作時に、走行モータ26の加速度を制限し、走行操作部31の操作に対する走行装置11bの応答を穏やかにすることが好ましい。具体的には、コントローラ40は、ポンプ容量変化量Δqを制限する。よって、操作者が走行操作部31を誤操作しても、下部走行体11の(作業機械10の)走行距離を抑制することができる。また、走行装置11bの速度の急変による、作業機械10のショックを抑制することができ、例えばレバーハンチングを抑制することができる。
【0060】
(ステアリング操作時のポンプ容量変化量Δqの制限)
ステアリング操作時には、走行操作部31の操作に対する、走行装置11bの応答性が良いことが求められる。
【0061】
ステアリング操作時に、走行直進操作時と同様の走行モータ26の加速度の制限が行われると、ステアリング操作の操作性が悪くなる問題が生じる。具体的には例えば、ポンプ容量変化量Δqが制限されると、走行操作部31の操作量の変化に対して、ポンプ21(
図2参照)の吐出流量の変化が穏やかになる(ポンプ吐出流量変化量ΔQが制限される)。すると、ポンプ21から走行モータ26に供給される油の流量の変化が穏やかになり、走行モータ26の速度変化が穏やかになる(すなわち加速度が制限される)。そのため、走行操作部31でのステアリング操作に対して、走行装置11bの速度変化の応答性(操作性)が悪くなる。その結果、走行操作部31でのステアリング操作に対して、下部走行体11の方向転換の応答性が悪くなる。特に、作業機械10が狭小地を走行する場合には、下部走行体11が応答良く方向転換することが重要である。下部走行体11が応答良く方向転換できなければ、走行装置11bが、走行すべき範囲(道、あゆみ板など)から外れるおそれがある。この場合、例えば、作業機械10が、あゆみ板から滑落するおそれもある。
【0062】
そこで、コントローラ40は、ステアリング操作時には、直進走行操作時に比べ、走行モータ26の加速度の制限を小さくすることが好ましい。これにより、ステアリング操作の操作性が向上する。
【0063】
(走行ステアリング操作時のポンプ容量変化量Δqの制限)
以下では、走行操作部31で走行ステアリング操作が行われる場合について説明する。ここでは、主に、コントローラ40が、ポンプ容量変化量Δqの大きさの上限値Rを設定することで、ポンプ容量変化量Δqを制限し、走行モータ26の加速度を制限する場合について説明する。例えば、コントローラ40は、下記の[条件B1]、[条件B2]のように上限値Rを設定する。
【0064】
[条件B1]コントローラ40は、左右操作量差分Dが第1差分D1のときよりも、左右操作量差分Dが第1差分D1よりも大きい第2差分D2のときに、走行モータ26の加速度の制限を小さくすることが好ましい(
図5参照)。具体的には、コントローラ40は、左右操作量差分Dが第1差分D1のときの上限値Rを第1上限値R1に設定する(
図5参照)。このとき、コントローラ40は、左右操作量差分Dが第2差分D2のときの上限値Rを、第1上限値R1よりも大きい第2上限値R2に設定することが好ましい(
図5参照)。この場合、走行ステアリング操作において左右操作量差分Dが小さい操作(走行直進操作に近い操作)の場合に、上記の誤操作の問題、および、作業機械10にショックが発生する問題を抑制することができる。また、走行ステアリング操作において左右操作量差分Dが大きい操作の場合に、走行操作部31の操作に対する走行装置11bの応答性を向上することができる。
【0065】
[条件B2]コントローラ40は、走行ステアリング操作が行われるとき、左右操作量差分Dが大きくなるにしたがって、走行モータ26の加速度の制限を小さくする(具体的には上限値Rを大きい値に設定する)ことが好ましい(
図5参照)。
【0066】
[条件B2a]例えば、コントローラ40は、走行ステアリング操作が行われるとき、左右操作量差分Dが大きくなるにしたがって、上限値Rを段階的に大きくしてもよい(図示なし)。[条件B2b]例えば、コントローラ40は、左右操作量差分Dが大きくなるにしたがって、上限値Rを連続的に大きくしてもよい。左右操作量差分Dと上限値Rとの関係を表すグラフであって、この[条件B2b]を満たすグラフは、曲線状でもよく、折れ線状でもよく、直線状でもよく、これらを組み合わせた形状などでもよい。[条件B2b1]例えば、コントローラ40は、左右操作量差分Dに対して上限値Rが比例するように、上限値Rを設定してもよい(
図5参照)。
【0067】
図5に示すグラフは、左右操作量差分Dと、上限値Rと、の関係の一例を示すグラフ(マップM5)である。左右操作量差分Dが所定差分値Dth0未満のとき、走行操作部31(
図1参照)で走行直進操作が行われている。このとき、上限値Rは、最小値(最小上限値Rmin)に設定され、ポンプ容量変化量Δqの制限が最も厳しく、走行モータ26の加速度の制限が最も厳しい。左右操作量差分Dが所定差分値Dth0以上、かつ、最大差分値Dmax以下のときには、走行操作部31で走行ステアリング操作が行われている。このとき、左右操作量差分Dが大きくなるにしたがって、上限値Rが大きく設定され、ポンプ容量変化量Δqの制限が小さく(緩く)設定され、走行モータ26の加速度の制限が小さく設定される。この例では、左右操作量差分Dが所定差分値Dth0以上、かつ、最大差分値Dmax以下のとき、左右操作量差分Dに対して上限値Rは比例する。左右操作量差分Dが最大差分値Dmaxよりも大きいとき、例えば、走行操作部31で走行ステアリング操作が行われていてもよく、ピボットターン操作が行われていてもよい。左右操作量差分Dが最大差分値Dmaxよりも大きいとき、上限値Rは最大値(最大上限値Rmax)に設定され、ポンプ容量変化量Δqの制限が最も小さく設定され、走行モータ26の加速度の制限が最も小さく設定される。上記「ポンプ容量変化量Δqの制限が最も小さく設定され」ることは、ポンプ容量変化量Δqがある大きさで制限されることでもよく、ポンプ容量変化量Δqの制限が無いことでもよい。
【0068】
(上記[条件B1]を満たす他の例)
図5に示す例では、左右操作量差分Dが大きくなるにしたがって上限値Rが大きくなった。一方、ある左右操作量差分Dの大きさを境として、上限値Rの値が段階的に切り替わってもよい(図示なし)。[条件B1a]具体的には例えば、左右操作量差分Dに関する閾値Dth1が、コントローラ40に予め(上限値Rの設定前に)設定されてもよい。コントローラ40は、左右操作量差分Dが閾値Dth1未満(例えば第1差分D1)の場合に、上限値Rを第1上限値R1とし、左右操作量差分Dが閾値Dth1以上(例えば第2差分D2)の場合に、上限値Rを第2上限値R2としてもよい。また、閾値Dth1は、複数(複数段階)設定されてもよい。
【0069】
(ポンプ回転数Nに応じた、ポンプ容量変化量Δqの制限の補正)
図2に示すコントローラ40は、決定したポンプ容量変化量Δqの制限を、補正してもよい。例えば、コントローラ40は、ポンプ回転数Nに応じて、ポンプ容量変化量Δqの制限を補正することが好ましい。
【0070】
(ポンプ回転数Nを考慮しない場合について)
ポンプ容量変化量Δqの制限(例えば上限値R)が、ポンプ回転数Nに応じて補正されることが好ましい理由の例は、次の通りである。上記のように、左走行操作部31Lの操作内容と右走行操作部31Rの操作内容との差異に基づいてポンプ容量変化量Δqの制限が変えられることで、走行モータ26の加速度の制限が変えられる。ここで、走行モータ26の加速度は、走行モータ26に供給される油の流量の変化量によって変わる。走行モータ26に供給される油の流量の変化量は、ポンプ吐出流量変化量ΔQによって変わる。ポンプ吐出流量変化量ΔQは、ポンプ容量変化量Δqとポンプ回転数Nとの積に比例する。したがって、ポンプ回転数Nの大小によって、走行モータ26の加速度の大きさが変わる。
【0071】
ポンプ回転数Nの大小によって、走行モータ26の加速度が変わることを、具体的数値を用いて説明する。例えば、ポンプ21のポンプ容量qの最小値が10cm3/revであり、0.1sec当たりのポンプ容量変化量Δqが10ccに設定され、ポンプ容量qが最小値から増やされる場合について検討する。ポンプ回転数Nが1000min-1の場合は、ポンプ吐出流量Qは、ポンプ容量qの増加開始時には10L/min(最小流量)であり、ポンプ容量qの増加開始から0.5sec後には60L/minに変化する。一方、ポンプ回転数Nが2000min-1の場合は、ポンプ吐出流量Qは、ポンプ容量qの増加開始時には20L/min(最小流量)であり、ポンプ容量qの増加開始から0.5sec後には120L/minに変化する。このように、ポンプ容量変化量Δqが同じ(この例では0.1sec当たり10cc)でも、ポンプ回転数Nが増えると、ポンプ吐出流量変化量ΔQも増える。なお、ポンプ容量qの増加開始から0.5sec後のポンプ容量qは、ポンプ容量qの最大値(例えば200cm3/rev)以下であるとする。
【0072】
ポンプ回転数Nの大小によって、走行モータ26の加速度が変わることを原因として、次の問題が生じる場合がある。
【0073】
[問題例C1:ポンプ吐出流量Qの急変による問題]ポンプ容量変化量Δqが同じでも、ポンプ回転数Nが大きいほど、ポンプ吐出流量変化量ΔQが大きくなるので、ポンプ吐出流量Qが急変しやすい。ポンプ吐出流量Qが急変すると、走行モータ26に供給される油の流量(投入流量)が急変し、走行モータ26の速度が急変し、走行装置11b(
図1参照)の速度が急変し、作業機械10(
図1参照)にショック(上記の問題例A2を参照)が生じやすい。
【0074】
[問題例C2:ポンプ吐出流量Qの変化が遅い問題]ポンプ容量変化量Δqが同じでも、ポンプ回転数Nが小さいほど、ポンプ吐出流量変化量ΔQが小さくなる。[問題例C2a]そのため、走行操作部31の操作量の変化に対して、走行モータ26に供給される油の流量(投入流量)の変化が遅くなり、走行モータ26の速度変化の応答性が悪くなり、走行装置11b(
図1参照)の速度変化の応答性が悪くなる。そのため、ポンプ回転数Nが小さいほど、走行操作部31の操作性が悪くなるおそれがある。[問題例C2b]また、作業機械10(
図1参照)の降坂時などには、走行モータ26が、作業機械10に作用する重力の影響を受ける場合がある。具体的には、この重力の影響により、走行操作部31の操作量に応じて走行モータ26に供給される油の流量に対応する走行モータ26の回転速度よりも大きい回転速度で、走行モータ26が回転させられる場合がある。この場合、走行モータ26の回転に必要な油の流量に対して、走行モータ26に供給される油の流量が不足する場合がある。すると、走行モータ26、および走行モータ26に油を供給する油路で油圧が低下し、キャビテーションが発生する場合がある。この場合、油圧回路20において油機の損傷が生じる場合や、走行モータ26が異常な挙動をする(例えば回転速度が不安定になる)場合などがある。
【0075】
ポンプ吐出流量Qの急変による問題(上記の問題例C1)を抑制するために、ポンプ容量変化量Δqの制限を大きく(厳しく)しすぎると、ポンプ吐出流量Qの変化が遅い問題(上記の問題例C2)が生じる場合がある。一方、ポンプ吐出流量Qの変化が遅い問題(上記の問題例C2)を抑制するために、ポンプ容量変化量Δqの制限を小さく(緩く)しすぎると、ポンプ吐出流量Qの急変による問題(上記の問題例C1)が生じる場合がある。
【0076】
(ポンプ回転数Nに応じたポンプ容量変化量Δqの制限の詳細)
これらの問題を抑制するために、コントローラ40は、ポンプ回転数Nに応じて、ポンプ容量変化量Δqの制限の大きさを補正することが好ましい(
図6参照)。例えば、コントローラ40は、ポンプ回転数Nに応じて、上限値Rを補正する。コントローラ40が補正した上限値Rを、補正後上限値Raとする。例えば、コントローラ40は、下記の[条件E1]、[条件E2]、[条件E3]のように補正後上限値Raを設定する(上限値Rを補正する)。なお、下記の各条件は、補正される上限値R(走行操作部31の操作内容に基づいて決定された上限値R)が、ある一定値の場合の条件である。補正される上限値Rが変わった場合には、下記の各条件が成り立つ必要はない。また、下記の各条件は、ポンプ回転数Nが所定範囲内(所定範囲の例は後述)のときの条件であり、ポンプ回転数Nが所定範囲外のときに満たされる必要はない。
【0077】
[条件E1]コントローラ40は、ポンプ回転数Nが第1回転数N1のときよりも、ポンプ回転数Nが第1回転数N1よりも大きい第2回転数N2のときに、ポンプ容量変化量Δqの制限を大きくすることが好ましい。具体的には、コントローラ40は、ポンプ回転数Nが第1回転数N1のときに、補正後上限値Raを低回転数上限値Ra1に設定する(上限値Rを低回転数上限値Ra1に補正する)(
図6参照)。このとき、コントローラ40は、ポンプ回転数Nが第2回転数N2のときに、補正後上限値Raを、低回転数上限値Ra1よりも小さい高回転数上限値Ra2に設定することが好ましい(
図6参照)。走行制御装置1は、このように補正後上限値Raを設定することにより、ポンプ回転数Nに関わらず、ポンプ吐出流量Qの急変による問題(上記の問題例C1)を抑制できるともに、ポンプ吐出流量Qの変化が遅い問題(上記の問題例C2)を抑制できる。
【0078】
[条件E2]コントローラ40は、ポンプ回転数Nが大きくなるにしたがって、ポンプ容量変化量Δqの制限を大きくすることが好ましい。具体的には、コントローラ40は、ポンプ回転数Nが大きくなるにしたがって補正後上限値Raが小さくなるように、補正後上限値Raを設定することが好ましい(
図6参照)。
【0079】
[条件E2a]例えば、コントローラ40は、ポンプ回転数Nが大きくなるにしたがって、補正後上限値Raを段階的に小さくしてもよい(図示なし)。[条件E2b]例えば、コントローラ40は、ポンプ回転数Nが大きくなるにしたがって、補正後上限値Raを連続的に小さくしてもよい。ポンプ回転数Nと補正後上限値Raとの関係を表すグラフであって、この[条件E2b]を満たすグラフは、曲線状でもよく、折れ線状でもよく、直線状でもよく、これらを組み合わせた形状などでもよい。[条件E2b1]例えば、コントローラ40は、ポンプ回転数Nに対して補正後上限値Raが比例するように、補正後上限値Raを設定することが好ましい(例えば下記の式1を参照)。
【0080】
[条件E3]コントローラ40は、所定範囲内の任意のポンプ回転数Nのときに(ポンプ回転数Nに関わらず)、ポンプ吐出流量変化量ΔQが一定になるように、補正後上限値Raを設定することが好ましい。ポンプ回転数Nの「所定範囲内」は、例えば作業機械10(
図1参照)の運転時に使用されるポンプ回転数Nの範囲(例えば使用領域)である。
【0081】
図6に示すグラフは、ポンプ回転数Nと、補正後上限値Raと、の関係を示すグラフ(マップM6)である。このグラフにおける補正後上限値Raは、補正後上限値Raで制限されたポンプ容量変化量Δqの大きさ(絶対値)でもある。このグラフは、上記[条件E1]、[条件E2]、[条件E2b1]、および[条件E3]を満たす場合のグラフである。
【0082】
(上記[条件E1]を満たす他の例)
図6に示す例では、ポンプ回転数Nが大きくなるにしたがって補正後上限値Raが小さくなった。一方、あるポンプ回転数Nの大きさを境として、補正後上限値Raの値が段階的に切り替わってもよい(図示なし)。[条件E1a]具体的には例えば、ポンプ回転数Nに関する閾値Nth1が、コントローラ40に予め(補正後上限値Raの設定前に)設定されてもよい。コントローラ40は、ポンプ回転数Nが閾値Nth1以上(例えば第2回転数N2)の場合に、補正後上限値Raを高回転数上限値Ra2としてもよい。そして、コントローラ40は、ポンプ回転数Nが閾値Nth1未満(例えば第1回転数N1)の場合に、補正後上限値Raを低回転数上限値Ra1としてもよい。また、閾値Nth1は、複数(複数段階)設定されてもよい。
【0083】
(補正後上限値Raの算出)
具体的には例えば、コントローラ40(
図2参照)は、次のように補正後上限値Raを算出する。コントローラ40は、基準となるポンプ回転数N(基準回転数Ns)での、補正後上限値Ra(基準上限値Rs)を決定する。例えば、基準回転数Nsは、ポンプ21(
図2参照)のポンプ回転数Nの使用領域の最大値(最大回転数)でもよく、最大値でなくてもよい。基準回転数Nsは、例えば動力源17(
図2参照)の回転数が「ハイアイドル」のときのポンプ回転数Nでもよい。例えば、操作内容と基準上限値Rsとの関係(マップ)が、コントローラ40に予め設定されてもよい。コントローラ40は、何らかの条件(数式など)に応じて基準上限値Rsを算出してもよい。また、コントローラ40は、基準回転数Nsと、現在のポンプ回転数N(使用回転数Nc)と、の比(回転数比)(例えばNs/Nc)を算出する。そして、コントローラ40は、基準上限値Rsと回転数比(Ns/Nc)とに基づいて、使用回転数Ncでの補正後上限値Raを算出する。この算出により、コントローラ40は、基準回転数Nsでの基準上限値Rs(補正前の上限値R)を、現在の使用回転数Ncでの補正後上限値Raに補正する。
【0084】
具体的には例えば、コントローラ40(
図2参照)は、次の式により補正後上限値Raの大きさαを算出する。
α=基準上限値Rs×(基準回転数Ns/使用回転数Nc)・・・(式1)
この場合、任意のポンプ回転数Nで、ポンプ吐出流量変化量ΔQが一定になる。
【0085】
なお、コントローラ40(
図2参照)は、基準回転数Nsと、使用回転数Ncと、の差分(回転数差分)(例えば、Ns-Nc、またはNc-Ns)を算出してもよい。そして、コントローラ40は、基準上限値Rsと回転数差分とに基づいて、補正後上限値Raを算出してもよい。
【0086】
(フローチャート)
図7に示すフローチャートを参照して、
図2に示すコントローラ40によるポンプ容量qの算出の具体例を説明する。以下では、フローチャートのステップS10~S50については、
図7を参照して説明する。
【0087】
ステップS10では、
図2に示すコントローラ40は、走行操作部31で走行操作が行われているか(走行操作が有るか)否かを判定する。左走行操作部31Lおよび右走行操作部31Rの少なくともいずれかで、走行モータ26を作動させる操作量の操作が行われている場合、コントローラ40は、走行操作部31で走行操作が行われていると判定する。この場合(ステップS10でYESの場合)、コントローラ40は、処理のフローをステップS20に進ませる。左走行操作部31Lおよび右走行操作部31Rのそれぞれで、走行モータ26を作動させる操作量の操作が行われていない場合、コントローラ40は、走行操作部31で走行操作が行われていない(走行操作が無い)と判定する。この場合(ステップS10でNOの場合)、コントローラ40は、今回の一連の処理を終了し(「リターン」に進み)、次回の一連の処理を開始する。
【0088】
ステップS20では、コントローラ40は、左走行操作部31Lおよび右走行操作部31Rの両方で走行操作が行われているか否かを判定する。左走行操作部31Lおよび右走行操作部31Rの両方で走行操作が行われている場合(ステップS20でYESの場合)、フローはステップS30に進む。左走行操作部31Lおよび右走行操作部31Rのうち一方のみで走行操作が行われている場合(ステップS20でNOの場合)、具体的にはピボットターン操作がされている場合、フローはステップS21に進む。
【0089】
ステップS21では、コントローラ40は、走行操作部31の操作量に応じた目標ポンプ容量qrを演算する。さらに詳しくは、コントローラ40は、左走行装置11bLおよび右走行装置11bRのうち操作されている方の走行装置11bの走行モータ26に油を供給するポンプ21の目標ポンプ容量qrを演算する。次に、フローはステップS22に進む。
【0090】
ステップS22では、コントローラ40は、ポンプ容量変化量Δqを算出する。さらに詳しくは、コントローラ40は、左走行装置11bLおよび右走行装置11bRのうち操作されている方の走行装置11bの走行モータ26に油を供給するポンプ21のポンプ容量変化量Δqを算出する。ターン操作(ここではピボットターン操作)が行われる場合、ポンプ容量変化量Δqの制限が行われなくてもよい。この場合、例えば、コントローラ40は、実際のポンプ容量qが、直ちに目標ポンプ容量qrになるように、ポンプ容量変化量Δqを算出してもよい。また、例えば、コントローラ40は、ポンプ容量変化量Δqを最大上限値Rmax(
図5参照)に設定してもよい。フローは、ステップS22の次に、ステップS50に進んでもよく、今回の一連の処理を終了してもよい(「リターン」に進んでもよい)。
【0091】
ステップS30では、コントローラ40は、左走行操作部31Lおよび右走行操作部31Rの操作の方向(前進側、後進側)が互いに同じか否かを判定する。左走行操作部31Lおよび右走行操作部31Rの操作の方向が互いに同じである場合(ステップS30でYESの場合)、具体的には走行ステアリング操作または走行直進操作が行われている場合、コントローラ40は、処理のフローをステップS41に進ませる。左走行操作部31Lおよび右走行操作部31Rの操作の方向が互いに逆である場合(ステップS30でNOの場合)、具体的にはスピンターン操作が行われている場合、コントローラ40は、処理のフローをステップS31に進ませる。
【0092】
ステップS31では、コントローラ40は、ステップS21と略同様の処理を行う。ステップS31では、コントローラ40は、第1ポンプ21Lおよび第2ポンプ21Rのそれぞれの目標ポンプ容量qrを演算する。次に、フローは、ステップS32に進む。
【0093】
ステップS32では、コントローラ40は、ステップS22と略同様の処理を行う。ステップS32では、コントローラ40は、第1ポンプ21Lおよび第2ポンプ21Rのそれぞれのポンプ容量変化量Δqを算出する。次に、フローは、ステップS50または「リターン」に進む。
【0094】
ステップS41では、コントローラ40は、ステップS31と同様の処理を行う。次に、フローはステップS42に進む。
【0095】
ステップS42では、コントローラ40は、左右操作量差分Dに応じて制限したポンプ容量変化量Δqを算出する。具体的には例えば、コントローラ40は、左右操作量差分Dに応じた上限値Rを算出する。
図5に示すように、コントローラ40は、左右操作量差分Dが大きいほど上限値Rを大きくする(ポンプ容量変化量Δqの制限を小さくする)。コントローラ40は、左右操作量差分Dが小さいほど上限値Rを小さくする(ポンプ容量変化量Δqの制限を大きくする)。そして、例えば、コントローラ40は、ポンプ容量変化量Δqの大きさを上限値R(または上限値R以下)に設定する。次に、フローは、ステップS50または「リターン」に進む。
【0096】
ステップS50では、コントローラ40は、ポンプ21の回転数(ポンプ回転数N)に応じてポンプ容量変化量Δqを補正する。具体的には例えば、
図6に示すように、コントローラ40は、ポンプ回転数Nが大きいほど、補正後上限値Raを小さくする(ポンプ容量変化量Δqの制限を大きくする)。コントローラ40は、ポンプ回転数Nが小さいほど、補正後上限値Raを大きくする(ポンプ容量変化量Δqの制限を小さくする)。
【0097】
コントローラ40は、ステップS10からステップS50の処理を、所定の制御処理周期ごとに繰り返す。
【0098】
(第1の発明の効果)
図2に示す走行制御装置1による効果は、次の通りである。走行制御装置1は、走行装置11b(
図1参照)と、左走行操作部31Lと、右走行操作部31Rと、走行モータ26と、コントローラ40と、を備える。
図1に示す走行装置11bは、左走行装置11bLおよび右走行装置11bRを有する。
図2に示す左走行操作部31Lは、左走行装置11bL(
図1参照)を操作するためのものである。右走行操作部31Rは、右走行装置11bR(
図1参照)を操作するためのものである。走行モータ26は、走行装置11b(
図1参照)を駆動する。コントローラ40は、左走行操作部31Lおよび右走行操作部31Rの操作内容に応じて走行モータ26を制御する。
【0099】
[構成1]コントローラ40は、左走行操作部31Lの操作内容と右走行操作部31Rの操作内容との差異の判定を行い、走行モータ26の加速度の制限を上記の差異に応じて変える。
【0100】
上記[構成1]により、次の効果が得られる。走行モータ26の加速度を制限する必要性は、左右の走行操作部31の操作内容の差異によって変わる。そこで、走行制御装置1は、上記[構成1]を備える。よって、走行モータ26の加速度の制限が、左右の走行操作部31の操作内容の差異に応じて変えられる。よって、走行制御装置1は、走行モータ26の加速度の制限を、左右の走行操作部31の操作内容の差異に応じた適切な制限にすることができる。その結果、走行制御装置1は、走行装置11b(
図1参照)の加速度の制限を、左右の走行操作部31の操作内容の差異に応じた適切な制限にすることができる。
【0101】
(第2の発明の効果)
左走行操作部31Lと右走行操作部31Rとが互いに同じ操作方向に操作され、かつ、左走行操作部31Lの操作量と右走行操作部31Rの操作量との差分である左右操作量差分Dが所定差分値Dth0(
図5参照)以下である操作を、走行直進操作とする。左走行操作部31Lと右走行操作部31Rとの少なくとも一方が操作される操作であって、走行直進操作でない操作を、ステアリング操作とする。
【0102】
[構成2]コントローラ40は、走行直進操作が行われるときの走行モータ26の加速度の制限よりも、ステアリング操作が行われるときの走行モータ26の加速度の制限を小さくする。
【0103】
上記[構成2]では、ステアリング操作時には、走行直進操作時に比べ、走行モータ26の加速度の制限が小さい(すなわち制限が緩い)。よって、走行操作部31でのステアリング操作に対する、走行モータ26の速度変化の応答性を確保することができる。その結果、走行制御装置1は、操作者にステアリング操作を容易に行わせることができる。
【0104】
上記[構成2]では、走行直進操作時には、ステアリング操作時に比べ、走行モータ26の加速度の制限が大きい(すなわち制限が厳しい)。よって、走行操作部31で走行直進操作が行われたときに、走行モータ26の回転速度の急変が抑制される。その結果、走行操作部31で誤操作がされた場合でも走行装置11b(
図1参照)の走行距離を抑制することができる。また、走行モータ26の回転速度の急変が抑制されるので、作業機械10(
図1参照)のショック(揺れ、衝撃)を抑制することができる。操作者が作業機械10に搭乗している場合は、作業機械10のショックによって操作者が走行操作部31を誤操作すること(例えばレバーハンチング)を抑制することができる。
【0105】
(第3の発明の効果)
ステアリング操作は、走行ステアリング操作を含む。走行ステアリング操作は、左走行操作部31Lと右走行操作部31Rとが互いに同じ操作方向に操作され、かつ、左右操作量差分Dが所定差分値Dth0(
図5参照)よりも大きい操作である。
【0106】
[構成3]走行ステアリング操作が行われるとき、コントローラ40は、左右操作量差分Dが第1差分D1のときよりも、左右操作量差分Dが第2差分D2のときに、走行モータ26の加速度の制限を小さくする(
図5参照)。第2差分D2は、第1差分D1よりも大きい。
【0107】
上記[構成3]により、次の効果が得られる。走行ステアリング操作時には、左右操作量差分Dが小さいほど、走行直進操作に近いステアリング操作が行われていると言える。そして、左右操作量差分Dが小さいほど、走行モータ26の加速度を制限する必要性が高くなる。一方、走行ステアリング操作時には、左右操作量差分Dが大きいほど、走行操作部31の操作に対する走行モータ26の速度変化の応答性を上げる必要性が高くなる。そこで、走行制御装置1は、上記[構成3]を備える。よって、走行制御装置1は、走行モータ26の加速度の制限の必要性に応じた、より適切な、走行モータ26の加速度の制限を行える。
【0108】
(第4の発明の効果)
[構成4]走行ステアリング操作が行われるとき、コントローラ40は、左右操作量差分Dが大きくなるにしたがって、走行モータ26の加速度の制限を小さくする(
図5参照)。
【0109】
上記[構成4]により、次の効果が得られる。上記のように、左右操作量差分Dに応じて、走行モータ26の加速度の制限の必要性が変わる。そこで、走行制御装置1は、上記[構成4]を備える。よって、走行制御装置1は、走行モータ26の加速度の制限の必要性に応じた、より適切な、走行モータ26の加速度の制限を行える。
【0110】
(第5の発明の効果)
[構成5-1]走行制御装置1は、ポンプ21を備える。ポンプ21は、動力源17に回転駆動されることで走行モータ26に油を供給する。走行モータ26は、ポンプ21から油を供給されることで回転駆動する。コントローラ40は、左走行操作部31Lおよび右走行操作部31Rの操作内容に応じてポンプ21の吐出流量(ポンプ吐出流量Q)を制御する。
【0111】
[構成5-2]コントローラ40は、ポンプ吐出流量変化量ΔQの制限を差異(左走行操作部31Lの操作内容と右走行操作部31Rの操作内容との差異)に応じて変えることで、走行モータ26の加速度の制限を上記差異に応じて変える。ポンプ吐出流量変化量ΔQは、単位時間当たりのポンプ21の吐出流量の変化量である。
【0112】
上記[構成5-1]では、ポンプ21が走行モータ26に油を供給することで、走行モータ26が回転駆動する。そのため、ポンプ吐出流量Qが変わると、走行モータ26に供給される油の流量が変わり、走行モータ26の回転速度が変わる。この構成では、ポンプ吐出流量変化量ΔQが変わると、走行モータ26の加速度が変わる。そこで、上記[構成5-2]では、コントローラ40は、ポンプ吐出流量変化量ΔQの制限を変えることで、走行モータ26の加速度の制限を変える。よって、ポンプ吐出流量変化量ΔQの制限を変えることで、確実に、走行モータ26の加速度の制限を変えること(上記[構成1]参照)ができる。
【0113】
(第6の発明の効果)
ポンプ21の容量は、変更可能である。コントローラ40は、左走行操作部31Lおよび右走行操作部31Rの操作内容に応じてポンプ21の容量を制御する。
【0114】
[構成6]コントローラ40は、ポンプ21の容量(ポンプ容量q)の単位時間当たりの変化量であるポンプ容量変化量Δqの制限を変えることで、走行モータ26の加速度の制限を変える。
【0115】
上記[構成6]により、次の効果が得られる。ポンプ容量qが変わると、ポンプ吐出流量Qが変わり、走行モータ26に供給される油の流量が変わり、走行モータ26の回転速度が変わる。この構成では、ポンプ容量変化量Δqが変わると、走行モータ26の加速度が変わる。そこで、上記[構成6]では、コントローラ40は、ポンプ容量変化量Δqの制限を変えることで、走行モータ26の加速度の制限を変える。よって、ポンプ容量変化量Δqの制限を変えることで、確実に、走行モータ26の加速度の制限を変えること(上記[構成1]参照)ができる。
【0116】
(第7の発明の効果)
[構成7]コントローラ40は、ポンプ回転数Nに応じて、ポンプ容量変化量Δqの制限の大きさを補正する(
図6参照)。
【0117】
上記[構成7]により、次の効果が得られる。走行モータ26の回転速度は、ポンプ21の吐出流量(ポンプ吐出流量Q)によって変わる。ポンプ吐出流量Qは、ポンプ21の容量(ポンプ容量q)とポンプ回転数Nとの積に比例する。そのため、ポンプ回転数Nが変わると、適切なポンプ容量変化量Δqの制限の大きさが変わる場合がある。そこで、上記[構成7]では、ポンプ回転数Nを考慮して、ポンプ容量変化量Δqの制限の大きさが補正される(
図6参照)。よって、例えば、ポンプ回転数Nが考慮されずに、ポンプ容量変化量Δqの制限の大きさが設定される場合に比べ、走行制御装置1は、ポンプ容量変化量Δqの制限の大きさを、ポンプ回転数Nに応じた適切な大きさに設定することができる。
【0118】
(第8の発明の効果)
[構成8]コントローラ40は、ポンプ回転数Nが第1回転数N1のときよりも、ポンプ回転数Nが第1回転数N1よりも大きい第2回転数N2のときに、ポンプ容量変化量Δqの制限を大きくする(
図6参照)。
【0119】
上記[構成8]により、次の効果が得られる。ポンプ容量変化量Δqが同じであれば、ポンプ回転数Nが大きいほど、ポンプ吐出流量変化量ΔQが大きくなり、ポンプ吐出流量Qが急変しやすく、走行モータ26の回転速度が急変しやすい。そこで、上記[構成8]では、第1回転数N1よりも大きい第2回転数N2のときに、ポンプ容量変化量Δqの制限が大きくされる(
図6参照)。よって、走行制御装置1は、ポンプ回転数Nが大きい第2回転数N2のときの、ポンプ容量変化量Δqを小さくでき、ポンプ吐出流量Qの急変を抑制できる。よって、走行制御装置1は、走行モータ26の回転速度の急変を抑制でき、走行装置11b(
図1参照)の速度の急変を抑制できる。その結果、誤操作時の走行装置11bの移動距離の抑制、作業機械10(
図1参照)でのショックの発生の抑制の効果が得られる(詳細は上記「(第2の発明の効果)」を参照)。
【0120】
また、ポンプ容量変化量Δqが同じであれば、ポンプ回転数Nが小さいほど、ポンプ吐出流量変化量ΔQが小さくなり、走行操作部31の操作内容の変化に対してポンプ吐出流量Qの変化が遅くなりやすい。そこで、上記[構成8]では、ポンプ回転数Nが第2回転数N2よりも小さい第1回転数N1のときに、ポンプ容量変化量Δqの制限が小さくされる(制限が小さい側に補正される)(
図6参照)。よって、走行制御装置1は、ポンプ回転数Nが小さい第1回転数N1のときに、走行操作部31の操作内容の変化に対してポンプ吐出流量Qの変化が遅すぎることを抑制できる。よって、走行制御装置1は、走行操作部31の操作に対する走行モータ26の回転速度の変化の応答性を確保でき、走行操作部31の操作に対する走行装置11bの速度変化の応答性を確保できる。その結果、走行制御装置1は、走行操作部31の操作に対する、下部走行体11(走行装置11bを含む下部走行体11)の方向転換の応答性を確保できる。
【0121】
(第9の発明の効果)
[構成9]コントローラ40は、ポンプ回転数Nが大きくなるにしたがって、ポンプ容量変化量Δqの制限を大きく(厳しく)する(
図6参照)。
【0122】
上記[構成9]により、上記[構成8]による効果を、より確実に得ることができる。
【0123】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、上記実施形態の構成要素(変形例を含む)の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、上記実施形態の変形例どうしが様々に組み合わされてもよい。例えば、構成要素どうしの固定や連結などは、直接的でも間接的でもよい。例えば、
図2に示す各構成要素の接続は変更されてもよい。例えば、構成要素の包含関係は様々に変更されてもよい。例えば、ある上位の構成要素に含まれる下位の構成要素として説明したものが、この上位の構成要素に含まれなくてもよく、他の構成要素に含まれてもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したもの(例えばコントローラ40)が、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。例えば、各種パラメータ(設定値、閾値、範囲など)は、コントローラ40に予め設定されてもよく、作業者の手動操作により直接的に設定されてもよい。各種パラメータは、作業者の手動操作により設定された情報に基づいてコントローラ40に算出されてもよく、センサに検出された情報に基づいてコントローラ40に算出されてもよい。例えば、各種パラメータは、変えられなくてもよく、手動操作により変えられてもよく、何らかの条件に応じてコントローラ40が自動的に変えてもよい。例えば、
図7に示すフローチャートのステップの順序が変更されてもよく、ステップの一部が行われなくてもよい。例えば、各構成要素は、各特徴(作用機能、配置、形状、作動など)の一部のみを有してもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 走行制御装置
11b 走行装置
11bL 左走行装置
11bR 右走行装置
17 動力源
21 ポンプ
26 走行モータ
31L 左走行操作部
31R 右走行操作部
40 コントローラ
D 左右操作量差分(差異の一例)
D1 第1差分
D2 第2差分
Dth0 所定差分値
N ポンプ回転数(ポンプ21の回転数)
N1 第1回転数
N2 第2回転数
Δq ポンプ容量変化量