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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037383
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】熱交換装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20240312BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240312BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F25B49/02 520H
F25B1/00 399Y
F28D7/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142208
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】速水 あいか
(72)【発明者】
【氏名】西尾 翼
(72)【発明者】
【氏名】杉戸 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀一
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA42
3L103CC02
3L103CC17
3L103DD09
3L103DD22
3L103DD42
(57)【要約】
【課題】本開示によって解決しようとする課題は、冷却対象である水に対して複数の冷媒回路の冷却部が配置される熱交換装置において、各冷媒回路の状態値を正確に比較することができる熱交換装置を提供することである。
【解決手段】熱交換装置100では、第1熱交換器41において、水が第1冷媒と熱交換する第1領域41aと、水が第2冷媒と熱交換する第2領域41bとが部分的に重なるので、第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bのいずれかの冷媒が漏洩すると、第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bそれぞれにおける所定の物理量の測定値に顕著な差異が現れる。その結果、冷媒漏洩の検知の精度を向上させることができる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1冷媒が循環する第1冷媒回路(10a)と、
第2冷媒が循環する第2冷媒回路(10b)と、
熱媒体と前記第1冷媒との熱交換、および熱媒体と前記第2冷媒との熱交換を行わせる第1熱交換器(41)を有する熱媒体循環回路(50)と、
前記第1冷媒回路(10a)および前記第2冷媒回路(10b)それぞれにおける所定の物理量の測定値を比較し、その比較結果に基づいて前記第1冷媒または前記第2冷媒が漏洩しているか否かを判定する制御部(70)と、
を備え、
前記第1熱交換器(41)において、熱媒体が前記第1冷媒と熱交換する第1領域(41a)と、熱媒体が前記第2冷媒と熱交換する第2領域(41b)とが部分的に重なる、
熱交換装置。
【請求項2】
第3冷媒が循環する第3冷媒回路(10c)と、
第4冷媒が循環する第4冷媒回路(10d)と、
をさらに備え、
前記熱媒体循環回路(50)は、熱媒体と前記第3冷媒との熱交換、および熱媒体と前記第4冷媒との熱交換を行わせる第2熱交換器(42)をさらに有し、
前記第2熱交換器(42)において、熱媒体が前記第3冷媒と熱交換する第3領域(42a)と、熱媒体が前記第4冷媒と熱交換する第4領域(42b)とが部分的に重なり、
前記制御部(70)は、前記第3冷媒回路(10c)および前記第4冷媒回路(10d)それぞれにおける所定の物理量の測定値を比較し、その比較結果に基づいて前記第3冷媒または前記第4冷媒が漏洩しているか否かを判定する、
請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
前記第1熱交換器(41)を出た熱媒体は、前記第2熱交換器(42)に入る、
請求項2に記載の熱交換装置。
【請求項4】
前記第1熱交換器(41)の熱媒体出口における熱媒体の温度を検出する第1温度センサ(81)と、
外気の温度を検出する第2温度センサ(91)と、
をさらに備え、
前記制御部(70)は、前記第1冷媒または前記第2冷媒が漏洩しているか否かを判定する際、
前記第1温度センサ(81)の検出値(Tw)と前記第2温度センサ(91)の検出値(To)との関係が所定の第1条件を満たしているときは、前記比較結果を所定の第1閾値と比較する第1判定ロジックを用い、
前記第1温度センサ(81)の検出値(Tw)と前記第2温度センサ(91)の検出値(To)との関係が前記第1条件と異なる第2条件を満たしているときは、前記比較結果を前記第1閾値とは異なる第2閾値と比較する第2判定ロジックを用いる、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項5】
前記制御部(70)は、起動してから所定時間経過後に、前記第1冷媒または前記第2冷媒が漏洩しているか否かを判定する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項6】
前記第1熱交換器(41)は、
熱媒体が流通する複数の熱媒体通路(410)と
流入した熱媒体を複数の前記熱媒体通路(410)へ分岐させる分岐部(410a)と、
複数の前記熱媒体通路(410)を流れた熱媒体を集合させる集合部(410b)と、
を有し、
前記第1冷媒および前記第2冷媒は、前記熱媒体通路(410)を流れる熱媒体を冷却する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項7】
前記第1熱交換器(41)は、
前記第1冷媒が流れる第1冷媒通路(411)と、
前記第2冷媒が流れる第2冷媒通路(412)と、
をさらに有し、
前記熱媒体通路(410)は、前記第1冷媒通路(411)と前記第2冷媒通路(412)とによって挟まれている、
請求項6に記載の熱交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の冷媒系統を有する熱負荷処理システムとして、特許文献1(特開2020-51738号公報)に記載のシステムが公知である。当該システムでは、各冷媒系統内の冷媒の状態を比較することによって、冷媒が漏洩しているか否かを判定している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記システムでは、複数の冷媒回路の冷却部が冷却対象である水の流れに対して、上流側と下流側とに分かれて配置されているため、各冷媒回路の状態値を比較しても、水の温度条件が上流側と下流側とで異なるため、冷媒状態を正確に比較することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の熱交換装置は、第1冷媒が循環する第1冷媒回路と、第2冷媒が循環する第2冷媒回路と、熱媒体循環回路と、制御部とを備える。熱媒体循環回路は、熱媒体と第1冷媒との熱交換および熱媒体と第2冷媒との熱交換を行わせる第1熱交換器を有する。制御部は、第1冷媒回路および第2冷媒回路それぞれにおける所定の物理量の測定値を比較し、その比較結果に基づいて第1冷媒または第2冷媒が漏洩しているか否かを判定する。第1熱交換器において、熱媒体が第1冷媒と熱交換する第1領域と、熱媒体が第2冷媒と熱交換する第2領域とが部分的に重なる。
【0005】
この熱交換装置では、第1熱交換器において、熱媒体が第1冷媒と熱交換する第1領域と、熱媒体が第2冷媒と熱交換する第2領域とが部分的に重なるので、第1冷媒回路および第2冷媒回路のいずれかの冷媒が漏洩すると、第1冷媒回路および第2冷媒回路それぞれにおける所定の物理量の測定値に顕著な差異が現れる。その結果、冷媒漏洩の検知の精度を向上させることができる。
【0006】
第2観点の熱交換装置は、第1観点の熱交換装置であって、第3冷媒が循環する第3冷媒回路と、第4冷媒が循環する第4冷媒回路とをさらに備えている。熱媒体循環回路は、熱媒体と第3冷媒との熱交換、および熱媒体と第4冷媒との熱交換を行わせる第2熱交換器をさらに有している。第2熱交換器において、熱媒体が第3冷媒と熱交換する第3領域と、熱媒体が第4冷媒と熱交換する第4領域とが部分的に重なる。制御部は、第3冷媒回路および第4冷媒回路それぞれにおける所定の物理量の測定値を比較し、その比較結果に基づいて第3冷媒または第4冷媒が漏洩しているか否かを判定する。
【0007】
この熱交換装置では、第2熱交換器において、熱媒体が第3冷媒と熱交換する第3領域と、熱媒体が第4冷媒と熱交換する第4領域とが部分的に重なるので、第3冷媒回路および第4冷媒回路のいずれかの冷媒が漏洩すると、第3冷媒回路および第4冷媒回路それぞれにおける所定の物理量の測定値に顕著な差異が現れる。その結果、冷媒漏洩の検知の精度を向上させることができる。
【0008】
第3観点の熱交換装置は、第2観点の熱交換装置であって、第1熱交換器を出た熱媒体は、第2熱交換器に入る。
【0009】
第4観点の熱交換装置は、第1観点から第3観点のいずれか1つの熱交換装置であって、第1熱交換器の熱媒体出口における熱媒体の温度を検出する第1温度センサと、外気の温度を検出する第2温度センサとをさらに備えている。制御部は、第1冷媒または第2冷媒が漏洩しているか否かを判定する際、第1温度センサの検出値と第2温度センサの検出値との関係が所定の第1条件を満たしているときは、比較結果を所定の第1閾値と比較する第1判定ロジックを用いる。さらに、制御部は、第1冷媒または第2冷媒が漏洩しているか否かを判定する際、第1温度センサの検出値と第2温度センサの検出値との関係が第1条件と異なる第2条件を満たしているときは、比較結果を第1閾値とは異なる第2閾値と比較する第2判定ロジックを用いる。
【0010】
この熱交換装置では、閾値の異なる2つの判定ロジックの選択を可能とすることによって、いわゆる定格運転時には厳しい閾値で判定し、定格運転とは異なる運転時には緩めの閾値で判定するという制御ができる。それゆえ、定格運転ではないときに厳しい閾値で判定し、正常であるにもかかわらず冷媒漏洩と判定してしまうことを防止することができる。また、第2判定ロジックの閾値は、第1判定ロジックに比べて緩めの閾値であるため、定格運転時、第1判定ロジックと第2判定ロジックとが併行して実行されてもよい。
【0011】
第5観点の熱交換装置は、第1観点から第3観点のいずれか1つの熱交換装置であって、制御部が、起動してから所定時間経過後に、第1冷媒または第2冷媒が漏洩しているか否かを判定する。
【0012】
この熱交換装置では、制御部が起動してから所定時間経過すれば、熱交換装置の熱媒体循環回路および各冷媒回路の運転も安定しているので、冷媒漏洩の誤判定を回避することができる。
【0013】
第6観点の熱交換装置は、第1観点から第3観点のいずれか1つの熱交換装置であって、第1熱交換器が、熱媒体が流通する複数の熱媒体通路と、流入した熱媒体を複数の熱媒体通路へ分岐させる分岐部と、複数の熱媒体通路を流れた熱媒体を集合させる集合部とを有している。第1冷媒および第2冷媒は、熱媒体通路を流れる熱媒体を冷却する。
【0014】
この熱交換装置では、分流した熱媒体ごとに第1冷媒および第2冷媒と熱交換するので、熱交換性がよい。
【0015】
第7観点の熱交換装置は、第6観点の熱交換装置であって、第1熱交換器が、第1冷媒が流れる第1冷媒通路と、第2冷媒が流れる第2冷媒通路とをさらに有している。熱媒体通路は、第1冷媒通路と第2冷媒通路とによって挟まれている。
【0016】
この熱交換装置では、熱媒体通路が、第1冷媒通路と第2冷媒通路とによって挟まれることによって、熱媒体が第1冷媒と熱交換する第1領域と、熱媒体が第2冷媒と熱交換する第2領域とが部分的に重なるので、第1冷媒回路および第2冷媒回路のいずれかの冷媒が漏洩すると、第1冷媒回路および第2冷媒回路それぞれにおける所定の物理量の測定値に顕著な差異が現れる。その結果、冷媒漏洩の検知の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】熱交換装置の概略構成図である。
図2図1の第1熱交換器の拡大図である。
図3図1の第2熱交換器の拡大図である。
図4】第1熱交換器における水および冷媒の流路を説明する説明図である。
図5】第2熱交換器における水および冷媒の流路を説明する説明図である。
図6】第1熱交換器の内部の水熱交換部、および利用側熱交換部の部分外観斜視図である。
図7】第1熱交換器の水熱交換部、および利用側熱交換部がX方向およびZ方向に極端にずれた状態を示す斜視図である。
図8】第2熱交換器の水熱交換部、および利用側熱交換部がX方向およびZ方向に極端にずれた状態を示す斜視図である。
図9】冷媒漏洩の判定ロジックを示すフローチャートである。
図10】本実施形態の冷媒回路における冷媒状態を示すモリエル線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)熱交換装置100
図1は、熱交換装置100の概略構成図である。本実施形態において、熱交換装置100は、対象空間の空気調和を行う空調装置である。
【0019】
熱交換装置100は、第1冷媒回路10a、第2冷媒回路10b、第3冷媒回路10c、第4冷媒回路10d、熱媒体循環回路50、および制御部70を備えている。
【0020】
第1冷媒回路10a、第2冷媒回路10b、第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dには、可燃性の冷媒が流れている。
【0021】
説明の便宜上、第1冷媒回路10a、第2冷媒回路10b、第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dそれぞれに流れる冷媒を、第1冷媒、第2冷媒、第3冷媒および第4冷媒と言う。
【0022】
熱媒体循環回路50は、第1熱交換器41と第2熱交換器42とを有している。第1熱交換器41は、熱媒体と第1冷媒との熱交換および熱媒体と第2冷媒との熱交換を行わせる。第2熱交換器42は、熱媒体と第3冷媒との熱交換および熱媒体と第4冷媒との熱交換を行わせる。本実施形態では、熱媒体は水である。
【0023】
図2は、図1の第1熱交換器41の拡大図である。図2において、第1熱交換器41の水熱交換部31を流れる水が、第1領域41aにおいて第1冷媒と熱交換し、第2領域41bにおいて第2冷媒と熱交換する。図2に示すように、第1領域41aと第2領域41bとは部分的に重なる。また、「部分的に重なる」の意味は、後述の「(4)第1熱交換器41および第2熱交換器42の内部構造」において説明する。
【0024】
図3は、図1の第2熱交換器42の拡大図である。図3において、第2熱交換器42の水熱交換部32を流れる水が、第3領域42aにおいて第3冷媒と熱交換し、第4領域42bにおいて第4冷媒と熱交換する。図3に示すように、第3領域42aと第4領域42bとは部分的に重なる。
【0025】
制御部70は、第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bそれぞれにおける所定の物理量の測定値を比較し、その比較結果に基づいて第1冷媒または第2冷媒が漏洩しているか否かを判定する。
【0026】
また、制御部70は、第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dそれぞれにおける所定の物理量の測定値を比較し、その比較結果に基づいて第3冷媒または第4冷媒が漏洩しているか否かを判定する。
【0027】
(2)詳細構成
(2-1)第1~第4冷媒回路(10a~10d)
第1冷媒回路10aは、圧縮機11a、四路切換弁13a、熱源側熱交換器15a、第1膨張弁17a、レシーバ19a、第2膨張弁21aおよび利用側熱交換部23aが環状に接続されている冷媒回路である。
【0028】
第2、第3および第4冷媒回路(10b、10c、10d)は、第1冷媒回路10aと同じ構成を採用しているので、第1冷媒回路10aの説明で代用する。
【0029】
(2-1-1)圧縮機11a
圧縮機11aは、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する。本実施形態では、圧縮機11aは、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素が圧縮機モータ(図示省略)によって回転駆動される密閉式構造を有している。圧縮機モータは、インバータにより運転周波数の制御が可能であるので、圧縮機11aは容量制御が可能である。但し、圧縮機11aは、容量が一定の圧縮機であってもよい。
【0030】
(2-1-2)四路切換弁13a
四路切換弁13aは、第1冷媒回路10aにおける冷媒の循環方向を、正サイクル方向および逆サイクル方向のいずれかに切り換えることができる。
【0031】
四路切換弁13aが冷媒の循環方向を正サイクル方向に切り換えたとき、圧縮機11aから吐出された冷媒は、四路切換弁13a、熱源側熱交換器15a、第1膨張弁17a、レシーバ19a、第2膨張弁21aおよび利用側熱交換部23aを経て、再び四路切換弁13aに到り、圧縮機11aに吸入される。
【0032】
また、四路切換弁13aが冷媒の循環方向を逆サイクル方向に切り換えたとき、圧縮機11aから吐出された冷媒は、四路切換弁13a、利用側熱交換部23a、第2膨張弁21a、レシーバ19a、第1膨張弁17aおよび熱源側熱交換器15aを経て、再び四路切換弁13aに到り、圧縮機11aに吸入される。
【0033】
(2-1-3)熱源側熱交換器15a
熱源側熱交換器15aは、冷媒の凝縮器(又は放熱器)又は蒸発器として機能する。熱源側熱交換器15aは、正サイクル運転(四路切換弁13aが正サイクル方向へ切り換えた状態にある運転)時には、冷媒の凝縮器として機能する。
【0034】
また、熱源側熱交換器15aは、逆サイクル運転(四路切換弁13aが逆サイクル方向へ切り換えた状態ある運転)時には、冷媒の蒸発器として機能する。
【0035】
熱源側熱交換器15aは、複数の伝熱管と伝熱フィンとを含む(図示省略)。熱源側熱交換器15aは、伝熱管内の冷媒と、伝熱管または伝熱フィンの周囲を通過する空気との間で熱交換を行わせる。
【0036】
それゆえ、熱源側熱交換器15aを通過する空気流を生成するため、ファン27aが熱源側熱交換器15aと対向する位置に配置されている。ファン27aは、熱源側熱交換器15aを流れる冷媒の冷却源または加熱源としての空気流を熱源側熱交換器15aに供給する。ファン27aは、駆動源であるファンモータ(図示省略)を含み、状況に応じて発停および回転数が適宜制御される。
【0037】
(2-1-4)第1膨張弁17a
第1膨張弁17aは、開度制御が可能な電子膨張弁であり、開度に応じて流入する冷媒を減圧し、または流量調節する。第1膨張弁17aは、開状態と閉状態とを切換可能である。第1膨張弁17aは、熱源側熱交換器15aとレシーバ19aとの間に配置されている。
【0038】
(2-1-5)レシーバ19a
レシーバ19aは、高圧レシーバである。レシーバ19aには、熱源側熱交換器15aで凝縮した高圧の冷媒が一時的に溜まる。レシーバ19aの出口には、温度センサ18aが設置されている。
【0039】
(2-1-6)第2膨張弁21a
第2膨張弁21aは、開度制御が可能な電子膨張弁であり、開度に応じて流入する冷媒を減圧し、または流量調節する。第2膨張弁21aは、開状態と閉状態とを切換可能である。第2膨張弁21aは、利用側熱交換部23aとレシーバ19aとの間に配置されている。
【0040】
(2-1-7)利用側熱交換部23a
利用側熱交換部23a、23bは、熱媒体循環回路50の第1熱交換器41に組み込まれている。また、利用側熱交換部23c、23dは、熱媒体循環回路50の第2熱交換器42に組み込まれている。利用側熱交換部23a~23dの詳細構成は、熱媒体循環回路50の第1熱交換器41および第2熱交換器42を説明する際に、併せて説明する。
【0041】
(2-1-8)ガスインジェクション回路25a
第1~第4冷媒回路(10a~10d)は、それぞれガスインジェクション回路25を有している。説明の便宜上、第1~第4冷媒回路(10a~10d)に設けられているガスインジェクション回路25の符号の末尾にa~dを付してガスインジェクション回路25a~25dとする。
【0042】
また、ガスインジェクション回路25aの説明をもって、ガスインジェクション回路25b~25dの説明を行ったものとする。
【0043】
ガスインジェクション回路25aは、レシーバ19から第2膨張弁21aに向かう液冷媒の一部を分岐させ、中間圧まで減圧して、圧縮機11aの圧縮室の中間圧領域まで導く回路である。
【0044】
ガスインジェクション回路25aは、第3膨張弁251aと過冷却熱交換器253aとを有している。第3膨張弁251aは、開度制御が可能な電子膨張弁であり、開度に応じて流入する冷媒を減圧し、または流量調節する。第3膨張弁251aは、第2膨張弁21aに向かう冷媒から分岐してきた冷媒を中間圧まで減圧する。
【0045】
過冷却熱交換器253aは、第3膨張弁251aで減圧された冷媒と、第2膨張弁21aに向かう冷媒とを熱交換させることによって、第2膨張弁21aに向かう冷媒を過冷却する。
【0046】
(2-2)熱媒体循環回路50
熱媒体循環回路50は、第1熱交換器41、第2熱交換器42、第3熱交換器60およびポンプ65が環状に接続されている回路である。
【0047】
(2-2-1)第1熱交換器41
第1熱交換器41は、熱媒体である水と冷媒とを熱交換させることで、水の冷却および加熱の少なくとも一方を行う。
【0048】
第1熱交換器41には、第1冷媒回路10aの利用側熱交換部23aおよび第2冷媒回路10bの利用側熱交換部23bが組み込まれている。
【0049】
図4は、第1熱交換器41における水および冷媒の流路を説明する説明図である。図4において、第1熱交換器41は、水が流通する複数の水通路410と、第1熱交換器41に流入した水を複数の水通路410へ分岐させる分岐部410aと、複数の水通路410を流れた水を集合させる集合部410bとを有している。
【0050】
また、第1熱交換器41に組み込まれた利用側熱交換部23aは、第1冷媒が流通する複数の第1冷媒通路411と、利用側熱交換部23aに流入した第1冷媒を複数の第1冷媒通路411へ分岐させる分岐部411aと、複数の第1冷媒通路411を流れた第1冷媒を集合させる集合部411bとを有している。
【0051】
さらに、第1熱交換器41に組み込まれた利用側熱交換部23bは、第2冷媒が流通する複数の第2冷媒通路412と、利用側熱交換部23bに流入した第2冷媒を複数の第2冷媒通路412へ分岐させる分岐部412aと、複数の第2冷媒通路412を流れた第2冷媒を集合させる集合部412bとを有している。
【0052】
水通路410は、第1冷媒通路411と第2冷媒通路412とによって挟まれており、第1冷媒および第2冷媒は、水通路410を流れる水を冷却または加熱することができる。
【0053】
本実施形態では、第1熱交換器41に流入する水の温度に応じて第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bの蒸発温度が制御される。
【0054】
(2-2-2)第2熱交換器42
第2熱交換器42は、熱媒体である水と冷媒とを熱交換させることで、水の冷却および加熱の少なくとも一方を行う。第2熱交換器42には、第1熱交換器41から流出した水が流入する。
【0055】
第2熱交換器42には、第3冷媒回路10cの利用側熱交換部23cおよび第4冷媒回路10dの利用側熱交換部23dが組み込まれている。
【0056】
図5は、第2熱交換器42における水および冷媒の流路を説明する説明図である。図5において、第2熱交換器42は、水が流通する複数の水通路410と、第2熱交換器42に流入した水を複数の水通路410へ分岐させる分岐部410aと、複数の水通路410を流れた水を集合させる集合部410bとを有している。
【0057】
また、第2熱交換器42に組み込まれた利用側熱交換部23cは、第3冷媒が流通する複数の第3冷媒通路413と、利用側熱交換部23cに流入した第3冷媒を複数の第3冷媒通路413へ分岐させる分岐部413aと、複数の第3冷媒通路413を流れた第3冷媒を集合させる集合部413bとを有している。
【0058】
さらに、第2熱交換器42に組み込まれた利用側熱交換部23dは、第4冷媒が流通する複数の第4冷媒通路414と、利用側熱交換部23dに流入した第4冷媒を複数の第4冷媒通路414へ分岐させる分岐部414aと、複数の第4冷媒通路414を流れた第4冷媒を集合させる集合部414bとを有している。
【0059】
水通路410は、第3冷媒通路413と第4冷媒通路414とによって挟まれており、第3冷媒および第4冷媒は、水通路410を流れる水を冷却または加熱することができる。
【0060】
本実施形態では、第2熱交換器42に流入する水の温度に応じて第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dの蒸発温度が制御される。
【0061】
(2-2-3)第3熱交換器60
第3熱交換器60は、第1熱交換器41および第2熱交換器42で冷却または加熱された水を利用する熱交換器である。本実施形態において、第3熱交換器60は、第1熱交換器41および第2熱交換器42で冷却または加熱された水と空気とを熱交換させて空調を行う。
【0062】
図1では、第3熱交換器60を1つだけ図示しているが、これに限定されるものではなく、第1熱交換器41および第2熱交換器42で冷却または加熱された水を分岐させて複数の第3熱交換器60へ送られてもよい。
【0063】
また、複数の第3熱交換器60が含まれる場合、複数の第3熱交換器60の種類は全て同一であってもよいし、複数の第3熱交換器60に複数の種類の熱交換器が含まれてもよい。
【0064】
(2-2-4)ポンプ65
ポンプ65は、熱媒体循環回路50内の水を、第1熱交換器41、第2熱交換器42、第3熱交換器60およびポンプ65の順で環状させる。ポンプ65は、駆動源であるモータを含む。モータはインバータ制御することによって回転数が調整されるので、吐出流量が可変である。なお、熱媒体循環回路50において直列又は並列に接続された複数台のポンプ65を有してもよい。また、ポンプ65は、定量ポンプであってもよい。
【0065】
(2-2-5)温度センサ81a、81b
熱媒体循環回路50では、第1熱交換器41および第2熱交換器42それぞれの水出口側配管に温度センサ81a、81bが配置されている。温度センサ81aは、第1熱交換器41の水出口における水の温度を検出する。温度センサ81bは、第2熱交換器42の水出口における水の温度を検出する。
【0066】
(2-2-6)温度センサ91
温度センサ91は、熱交換装置100が据え付けられている場所の雰囲気温度を検出する。
【0067】
(2-2-7)高圧圧力センサ96a
第1~第4冷媒回路(10a~10d)は、それぞれ高圧圧力センサ96を有している。説明の便宜上、第1~第4冷媒回路(10a~10d)に設けられている高圧圧力センサ96の符号の末尾にa~dを付して高圧圧力センサ96a~96dとする。
【0068】
また、高圧圧力センサ96aの説明をもって、高圧圧力センサ96b~96dの説明を行ったものとする。
【0069】
高圧圧力センサ96aは、圧縮機11aと四路切換弁13aとを接続する配管に設けられている。高圧圧力センサ96aは、圧縮機11aからの冷媒の吐出圧力を検出し、その検出値は高圧圧力として制御部70aへ入力される。
【0070】
(2-3)制御部70
制御部70は、第1制御部70a、第2制御部70b、第3制御部70c、第4制御部70dを統括して制御する。第1制御部70aは、第1冷媒回路10aに含まれる電気機器の動作・状態を制御する。第2制御部70bは、第2冷媒回路10bに含まれる電気機器の動作・状態を制御する。第3制御部70cは、第3冷媒回路10cに含まれる電気機器の動作・状態を制御する。第4制御部70dは、第4冷媒回路10dに含まれる電気機器の動作・状態を制御する。さらに、制御部70は、熱媒体循環回路50に含まれる電気機器の動作・状態を制御する。
【0071】
第1制御部70a、第2制御部70b、第3制御部70cおよび第4制御部70dのいずれか1つが制御部70を兼ねても良い。本実施形態では、第1制御部70aが制御部70を兼ねている。
【0072】
第1制御部70a、第2制御部70b、第3制御部70cおよび第4制御部70dそれぞれが、マイクロプロセッサ、およびマイクロプロセッサが実行するプログラムが記憶されたメモリチップを有している。
【0073】
制御部70には、第1制御部70a、第2制御部70b、第3制御部70cおよび第4制御部70dを介して、圧縮機11a~11dの回転数、第1膨張弁17a~17dの弁開度、温度センサ18a~18dの検出値、第2膨張弁21a~21dの弁開度が入力される。
【0074】
さらに、制御部70には、温度センサ81a、81bの検出値および温度センサ91の検出値が入力される。
【0075】
(3)運転時における冷媒および水の流れ
以下、第1~第4冷媒回路(10a~10d)における冷媒の流れ、および熱媒体循環回路50における水の流れについて説明する。冷媒の流れについては、第1冷媒回路10aにおける冷媒の流れを説明することによって、第2~第4冷媒回路(10b~10d)における冷媒の流れの説明を代用する。
【0076】
本実実施形態では、第1冷媒、第2冷媒、第3冷媒および第4冷媒として、同一の冷媒を使用するので、以下、「冷媒」という文言を使用する。
【0077】
(3-1)正サイクル運転時の冷媒および熱媒体の流れ
正サイクル運転時には、四路切換弁13aが冷媒の循環方向を正サイクル方向に切り換える。正サイクル運転が開始されると、冷媒が圧縮機11aに吸入されて圧縮された後に高圧のガス冷媒となって吐出される。圧縮機11aから吐出されたガス冷媒は、熱源側熱交換器15aに流入する。
【0078】
熱源側熱交換器15aに流入したガス冷媒は、熱源側熱交換器15aにおいて、ファン27aによって送られる空気流と熱交換を行い凝縮(または放熱)する。
【0079】
熱源側熱交換器15aを出た冷媒は、第1膨張弁17aに流入する。本実施形態では、正サイクル運転時、第1膨張弁17aの弁開度は全開であるので、第1膨張弁17aに流入した冷媒は減圧されることなく第1膨張弁17aを通過し、レシーバ19aに流入する。レシーバ19aに溜まった冷媒のうちの液冷媒のみが第2膨張弁21aに導かれ、減圧される。
【0080】
第2膨張弁21aに向かう冷媒の一部は分岐してガスインジェクション回路25aへ流れる。ガスインジェクション回路25aにおける冷媒の流れは、「(2-1-8)ガスインジェクション回路25a」の節において説明済みであるので、ここでは記載を省略する。
【0081】
第2膨張弁21aで減圧された冷媒は、第1熱交換器41に組み込まれた利用側熱交換部23aに流入する。利用側熱交換部23aに流入した冷媒は、図4に示すように、分岐部411aを経て複数の第1冷媒通路411へ流れ、その後、集合部411bで集合し、利用側熱交換部23aから流出する。利用側熱交換部23aから流出した冷媒は、四路切換弁13aに到達し、再び圧縮機11aに吸入される。
【0082】
また、第2冷媒回路10bを循環する冷媒も、第2膨張弁21bで減圧され、第1熱交換器41に組み込まれた利用側熱交換部23bに流入する。利用側熱交換部23bに流入した冷媒は、図4に示すように、分岐部412aを経て複数の第2冷媒通路412へ流れ、その後、集合部412bで集合し、利用側熱交換部23bから流出する。利用側熱交換部23bから流出した冷媒は、四路切換弁13bに到達し、再び圧縮機11bに吸入される。
【0083】
そして、第1熱交換器41に流入した水は、分岐部410aを経て複数の水通路410へ流れ、集合部410bで集合して第1熱交換器41から流出する。
【0084】
第1冷媒通路411を流れる冷媒および第2冷媒通路412を流れる冷媒は、水通路410を流れる水の熱量を吸収して蒸発するので、水通路410を流れる水が冷却される。
【0085】
第1熱交換器41を流出した水は、第2熱交換器42へ流入する。第2熱交換器42では、第3冷媒回路10cの第2膨張弁21cで減圧された冷媒が、第2熱交換器42に組み込まれた利用側熱交換部23cに流入する。利用側熱交換部23cに流入した冷媒は、図5に示すように、分岐部413aを経て複数の第3冷媒通路413へ流れ、その後、集合部413bで集合し、利用側熱交換部23cから流出する。利用側熱交換部23cから流出した冷媒は、四路切換弁13cに到達し、再び圧縮機11cに吸入される。
【0086】
また、第4冷媒回路10dを循環する冷媒も、第2膨張弁21dで減圧され、第2熱交換器42に組み込まれた利用側熱交換部23dに流入する。利用側熱交換部23dに流入した冷媒は、図5に示すように、分岐部414aを経て複数の第4冷媒通路414へ流れ、その後、集合部414bで集合し、利用側熱交換部23dから流出する。利用側熱交換部23dから流出した冷媒は、四路切換弁13dに到達し、再び圧縮機11dに吸入される。
【0087】
そして、第2熱交換器42に流入した水は、分岐部410aを経て複数の水通路410へ流れ、集合部410bで集合して第2熱交換器42から流出する。
【0088】
第3冷媒通路413を流れる冷媒および第4冷媒通路414を流れる冷媒は、水通路410を流れる水の熱量を吸収して蒸発するので、水通路410を流れる水が冷却される。
【0089】
第2熱交換器42から流出した水は、第3熱交換器60に送られる。第3熱交換器60に送られた水は、所定の被冷却対象(例えば、居住空間の空気)と熱交換を行うことで加熱され、第3熱交換器60から流出する。第3熱交換器60から流出した水は、第1熱交換器41に再び流入する。
【0090】
(3-2)逆サイクル運転時の冷媒および熱媒体の流れ
逆サイクル運転時には、四路切換弁13aが冷媒の循環方向を逆サイクル方向に切り換える。逆サイクル運転が開始されると、冷媒が圧縮機11aに吸入されて圧縮された後に高圧のガス冷媒となって吐出される。圧縮機11aから吐出されたガス冷媒は、第1熱交換器41に組み込まれた利用側熱交換部23aに流入する。
【0091】
利用側熱交換部23aに流入した冷媒は、図4に示すように、分岐部411aを経て複数の第1冷媒通路411へ流れ、その後、集合部411bで集合し、利用側熱交換部23aから流出する。
【0092】
また、第2冷媒回路10bを循環する冷媒も、第1熱交換器41に組み込まれた利用側熱交換部23bに流入する。利用側熱交換部23bに流入した冷媒は、図4に示すように、分岐部412aを経て複数の第2冷媒通路412へ流れ、その後、集合部412bで集合し、利用側熱交換部23bから流出する。
【0093】
そして、第1熱交換器41に流入した水は、分岐部410aを経て複数の水通路410へ流れ、集合部410bで集合して第1熱交換器41から流出する。
【0094】
第1冷媒通路411を流れる冷媒および第2冷媒通路412を流れる冷媒は、水通路410を流れる水に放熱して凝縮するので、水通路410を流れる水が加熱される。
【0095】
第1熱交換器41を流出した水は、第2熱交換器42へ流入する。第2熱交換器42では、第3冷媒回路10cを循環する冷媒が、第2熱交換器42に組み込まれた利用側熱交換部23cに流入する。利用側熱交換部23cに流入した冷媒は、図5に示すように、分岐部413aを経て複数の第3冷媒通路413へ流れ、その後、集合部413bで集合し、利用側熱交換部23cから流出する。
【0096】
また、第4冷媒回路10dを循環する冷媒も、第2熱交換器42に組み込まれた利用側熱交換部23dに流入する。利用側熱交換部23dに流入した冷媒は、図5に示すように、分岐部414aを経て複数の第4冷媒通路414へ流れ、その後、集合部414bで集合し、利用側熱交換部23dから流出する。
【0097】
そして、第2熱交換器42に流入した水は、分岐部410aを経て複数の水通路410へ流れ、集合部410bで集合して第2熱交換器42から流出する。
【0098】
第3冷媒通路413を流れる冷媒および第4冷媒通路414を流れる冷媒は、水通路410を流れる水に放熱して凝縮するので、第2熱交換器42の水通路410を流れる水が加熱される。
【0099】
第2熱交換器42から流出した水は、第3熱交換器60に送られる。第3熱交換器60に送られた水は、所定の被冷却対象(例えば、居住空間の空気)と熱交換を行うことで冷却され、第3熱交換器60から流出する。第3熱交換器60から流出した水は、第1熱交換器41に再び流入する。
【0100】
利用側熱交換部23a、23b、23c、23dを出た冷媒は、第2膨張弁21a、21b、21c、21dに流入する。本実施形態では、逆サイクル運転時、第2膨張弁21a、21b、21c、21dの弁開度は全開であるので、第2膨張弁21a、21b、21c、21dに流入した冷媒は減圧されることなく第2膨張弁21a、21b、21c、21dを通過し、レシーバ19a、19b、19c、19dに流入する。レシーバ19a、19b、19c、19dに溜まった冷媒のうちの液冷媒のみが第1膨張弁17a、17b、17c、17dに導かれ、減圧される。
【0101】
第1膨張弁17a、17b、17c、17dで減圧された冷媒は、熱源側熱交換器15a、15b、15c、15dに流入する。熱源側熱交換器15a、15b、15c、15dに流入したガス冷媒は、熱源側熱交換器15a、15b、15c、15dにおいて、ファン27a、27b、27c、27dによって送られる空気流と熱交換を行い蒸発する。熱源側熱交換器15a、15b、15c、15dから流出した冷媒は、四路切換弁13a、13b、13c、13dに到達し、再び圧縮機11aに吸入される。
【0102】
(4)第1熱交換器41および第2熱交換器42の内部構造
図6は、第1熱交換器41の内部の水熱交換部31、利用側熱交換部23aおよび利用側熱交換部23bの部分外観斜視図である。図6において、水熱交換部31、利用側熱交換部23aおよび利用側熱交換部23bは、故意に間隔を広げて描かれている。
【0103】
実際には、第1熱交換器41では、水通路410を含む水熱交換部31、第1冷媒通路411を含む利用側熱交換部23a、および第2冷媒通路412を含む利用側熱交換部23bが図6のY方向に重ねられている。
【0104】
第1熱交換器41の理想的な状態として、水熱交換部31、利用側熱交換部23aおよび利用側熱交換部23bが図6のX方向およびZ方向のいずれにもずれることなくY方向に重ねられていることが望ましい。但し、加工上および/または組立上のバラツキにより、図6のX方向および/またはZ方向にずれることもある。
【0105】
第2熱交換器42は、第1熱交換器41と同じ構造であり、水熱交換部31に替えて水熱交換部32を配置し、利用側熱交換部23aに替えて利用側熱交換部23cを配置し、利用側熱交換部23bに替えて利用側熱交換部23dを配置すればよい。
【0106】
図7は、第1熱交換器41の水熱交換部31、利用側熱交換部23aおよび利用側熱交換部23bがX方向およびZ方向に極端にずれた状態を示す斜視図である。図7も、水熱交換部31、利用側熱交換部23aおよび利用側熱交換部23bが、故意に間隔を広げて描かれている。図7において、水熱交換部31の水が第1冷媒と熱交換する第1領域41aと、水が第2冷媒と熱交換する第2領域41bとが部分的に重なっている。
【0107】
ここで、第1領域41aと第2領域41bとが部分的に重なるとは、水熱交換部31に対して第1領域41aおよび第2領域41bを最短距離で投影したときの、第1領域41aおよび第2領域41bそれぞれの投影面が部分的に重なるという意味である。また、「部分的に重なる」には、第1領域41aおよび第2領域41bそれぞれの当該投影面全てが重なることも含む。
【0108】
同様に、図8は、第2熱交換器42の水熱交換部32、利用側熱交換部23cおよび利用側熱交換部23dがX方向およびZ方向に極端にずれた状態を示す斜視図である。図8も、水熱交換部32、利用側熱交換部23cおよび利用側熱交換部23dが、故意に間隔を広げて描かれている。図8において、水熱交換部32の水が第3冷媒と熱交換する第3領域42aと、水が第4冷媒と熱交換する第4領域42bとが部分的に重なっている。
【0109】
ここで、第3領域42aと第4領域42bとが部分的に重なるとは、水熱交換部32に対して第3領域42aおよび第4領域42bを最短距離で投影したときの、第3領域42aおよび第4領域42bそれぞれの投影面が部分的に重なるという意味である。また、「部分的に重なる」には、第3領域42aおよび第4領域42bそれぞれの当該投影面全てが重なることも含む。
【0110】
(5)冷媒漏洩の判定
本実施形態では、第1熱交換器41において、利用側熱交換部23aと利用側熱交換部23bとは熱交換の相手として水熱交換部31の一部または全部を共有しているので、第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bのいずれかの冷媒が漏洩すると、第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bそれぞれにおける所定の物理量の測定値に顕著な差異が現れる。
【0111】
同様に、第2熱交換器42において、利用側熱交換部23cと利用側熱交換部23dとは熱交換の相手として水熱交換部32の一部または全部を共有しているので、第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dのいずれかの冷媒が漏洩すると、第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dそれぞれにおける所定の物理量の測定値に顕著な差異が現れる。
【0112】
ここで、所定の物理量とは、本実施形態では、レシーバ19a~19dの温度、および冷却運転における第2膨張弁21a~21dの開度または加熱運転における第1膨張弁17a~17dの開度である。
【0113】
以下、図面を参照しながら、冷媒漏洩の判定ロジックについて説明する。図9は、冷媒漏洩の判定ロジックを示すフローチャートである。
【0114】
(ステップS1)
図9において、制御部70は、凝縮圧力相当飽和温度Tgとレシーバ19a~19dの温度Tfとの差が、第1閾値As以上であるか否かを判定する。凝縮圧力相当飽和温度Tgは、高圧圧力センサ96a~96dの検出値から算出される。
【0115】
レシーバ19a~19dでは、熱源側熱交換器15a~15dで凝縮した高圧の液冷媒が一時的に溜められる。
【0116】
一方、レシーバ19a~19dそれぞれの冷媒出口に、冷媒温度を直接または間接的に検出する温度センサ18a~18dが設けられている。レシーバ19a~19dの温度Tfは、温度センサ18a~18dの検出温度である。図1では、レシーバ19a~19dの正サイクル方向の冷媒出口側にのみ温度センサ18a~18dが描かれているが、逆サイクル方向の冷媒出口側にも、図示しない温度センサが設けられている。
【0117】
第1~第4冷媒回路(10a~10d)それぞれにおいて、冷媒が漏洩することなく冷凍サイクル運転が行われている場合には、Tg-Tfは所定の範囲内である。
【0118】
図10は、本実施形態の冷媒回路における冷媒状態を示すモリエル線図である。図10において、冷媒が漏洩していない場合、温度Tfは飽和液線上のP1の位置にある。しかしながら、冷媒が漏洩して冷媒回路内を循環する冷媒量が減少すると、レシーバ19a~19dに溜まる冷媒が気液二相状態となる(ガス化する)。
【0119】
冷媒がガス化することによって冷媒の流通抵抗が増加するので、圧力損失により温度TfはP1の位置よりも右下方のP2の位置に移動する。P2位置における温度TfはP1位置における温度Tfよりも小さいので、冷媒が漏洩した場合、Tg-Tfは増加する。
【0120】
したがって、Tg-Tfが第1閾値As以上であれば、冷媒が漏洩している可能性がある。
【0121】
制御部70は、第1~第4冷媒回路(10a~10d)のうちいずれかの冷媒回路において、Tg-Tf≧Asと判断したときは、ステップS2へ進む。
【0122】
(ステップS2)
次に、制御部70は、ステップS2において、冷却運転における第2膨張弁21a~21dの開度V2または加熱運転における第1膨張弁17a~17dの開度V1が、第2閾値Bs以上であるか否かを判定する。
【0123】
第1~第4冷媒回路(10a~10d)それぞれにおいて、冷媒が漏洩することなく冷凍サイクル運転が行われている場合には、冷却運転における第2膨張弁21a~21dの開度V2または加熱運転における第1膨張弁17a~17dの開度V1は、所定の範囲内である。
【0124】
しかしながら、冷媒が漏洩して冷媒回路内を循環する冷媒量が減少すると、冷却運転における第2膨張弁21a~21dまたは加熱運転における第1膨張弁17a~17dは、開度を拡げる方向に動作する。したがって、冷却運転における第2膨張弁21a~21dの開度V2または加熱運転における第1膨張弁17a~17dの開度V1が第2閾値Bs以上であれば、冷媒が漏洩している可能性がある。制御部70は、第1~第4冷媒回路(10a~10d)のうちいずれかの冷媒回路において、冷却運転においてV2≧Bsと判断したとき、または加熱運転においてV1≧Bsと判断したときは、ステップS3AまたはS3Bへ進む。
【0125】
(ステップS3A)
ここでは、前提条件として、ステップS1において第1冷媒回路10aがTg-Tf≧Asの状態であり、ステップS2において第1冷媒回路10aがV2≧Vsの状態であったと想定する。
【0126】
また、第1冷媒回路10aにおけるTg-Tfを「Tg1-Tf1」、第2冷媒回路10bにおけるTg-Tfを「Tg2-Tf2」とする。
【0127】
制御部70は、{(Tg1-Tf1)-(Tg2-Tf2)}が、第3閾値Cs以上であるか否かを判定する。利用側熱交換部23aと利用側熱交換部23bとは熱交換の相手として水熱交換部31の一部または全部を共有しているので、第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bの冷媒が漏洩していなければ、{(Tg1-Tf1)-(Tg2-Tf2)}は、所定の範囲内にある。しかしながら、第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bのいずれかの冷媒が漏洩すると、第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bそれぞれにおけるTg-Tfに顕著な差異が現れるので、{(Tg1-Tf1)-(Tg2-Tf2)}が、第3閾値Cs以上となる。
【0128】
制御部70は、{(Tg1-Tf1)-(Tg2-Tf2)}≧Csと判断したときは、ステップS4Aへ進む。
【0129】
(ステップS3B)
ここでは、前提条件として、ステップS1において第3冷媒回路10cがTg-Tf≧Asの状態であり、ステップS2において第3冷媒回路10cがV2≧Vsの状態であったと想定する。
【0130】
また、第3冷媒回路10cにおけるTg-Tfを「Tg3-Tf3」、第4冷媒回路10dにおけるTg-Tfを「Tg4-Tf4」とする。
【0131】
制御部70は、{(Tg3-Tf3)-(Tg4-Tf4)}が、第3閾値Cs以上であるか否かを判定する。利用側熱交換部23cと利用側熱交換部23dとは熱交換の相手として水熱交換部32の一部または全部を共有しているので、第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dの冷媒が漏洩していなければ、{(Tg3-Tf3)-(Tg4-Tf4)}は、所定の範囲内にある。しかしながら、第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dのいずれかの冷媒が漏洩すると、第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dそれぞれにおけるTg-Tfに顕著な差異が現れるので、{(Tg3-Tf3)-(Tg4-Tf4)}が、第3閾値Cs以上となる。
【0132】
制御部70は、{(Tg3-Tf3)-(Tg4-Tf4)}≧Csと判断したときは、ステップS4Bへ進む。
【0133】
(ステップS4A)
ここでは、ステップS3Aと同様に、前提条件として、ステップS1において第1冷媒回路10aがTg-Tf≧Asの状態であり、ステップS2において第1冷媒回路10aがV2≧Vsの状態であったと想定する。
【0134】
また、第1冷媒回路10aにおけるV2を「V2a」、第2冷媒回路10bにおけるV2を「V2b」とする。
【0135】
制御部70は、V2a-V2bが、第4閾値Ds以上であるか否かを判定する。利用側熱交換部23aと利用側熱交換部23bとは熱交換の相手として水熱交換部31の一部または全部を共有しているので、第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bの冷媒が漏洩していなければ、V2a-V2bは、所定の範囲内にある。しかしながら、第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bのいずれかの冷媒が漏洩すると、第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bそれぞれにおける第2膨張弁21a、21bの開度V2に顕著な差異が現れるので、V2a-V2bが、第4閾値Ds以上となる。
【0136】
制御部70は、V2a-V2b≧Dsと判断したときは、ステップS5へ進む。
【0137】
(ステップS4B)
ここでは、ステップS3Bと同様に、前提条件として、ステップS1において第3冷媒回路10cがTg-Tf≧Asの状態であり、ステップS2において第3冷媒回路10cがV2≧Vsの状態であったと想定する。
【0138】
また、第3冷媒回路10cにおけるV2を「V2c」、第4冷媒回路10dにおけるV2を「V2d」とする。
【0139】
制御部70は、V2c-V2dが、第4閾値Ds以上であるか否かを判定する。利用側熱交換部23cと利用側熱交換部23dとは熱交換の相手として水熱交換部32の一部または全部を共有しているので、第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dの冷媒が漏洩していなければ、V2c-V2dは、所定の範囲内にある。しかしながら、第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dのいずれかの冷媒が漏洩すると、第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dそれぞれにおける第2膨張弁21c、21dの開度V2に顕著な差異が現れるので、V2c-V2dが、第4閾値Ds以上となる。
【0140】
制御部70は、V2c-V2d≧Dsと判断したときは、ステップS5へ進む。
【0141】
(ステップS5)
制御部70は、ステップS5において、冷媒漏洩があると判定する。
【0142】
(ステップS6)
一方、制御部70は、以下の場合、ステップS6において、冷媒漏洩が無いと判定する。
・ステップS1において、第1~第4冷媒回路(10a~10d)の全ての冷媒回路において、Tg-Tf<Asと判断した場合、
・ステップS2において、第1~第4冷媒回路(10a~10d)の全ての冷媒回路において、冷却運転においてV2<Bsと判断した場合、または加熱運転においてV1<Bsと判断した場合、
・ステップS3Aにおいて、{(Tg1-Tf1)-(Tg2-Tf2)}<Csと判断した場合、
・ステップS3Bにおいて、{(Tg3-Tf3)-(Tg4-Tf4)}<Csと判断した場合、
・ステップS4Aにおいて、冷却運転においてV2a-V2b<Dsと判断した場合、または加熱運転においてV1a-V1b<Dsと判断した場合、
・ステップS4Bにおいて、冷却運転においてV2c-V2d<Dsと判断した場合、または加熱運転においてV1c-V1d<Dsと判断した場合、
である。
【0143】
以上のように、本実施形態では、水熱交換部31を共有する第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bのいずれかに冷媒漏洩があった場合、または水熱交換部32を共有する第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dのいずれかに冷媒漏洩があった場合、冷媒漏洩センサを用いることなく、冷媒漏洩を検出することができる。
【0144】
(6)特徴
(6-1)
熱交換装置100では、第1熱交換器41において、水が第1冷媒と熱交換する第1領域41aと、水が第2冷媒と熱交換する第2領域41bとが部分的に重なるので、第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bのいずれかの冷媒が漏洩すると、第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bそれぞれにおける所定の物理量の測定値に顕著な差異が現れる。その結果、冷媒漏洩の検知の精度を向上させることができる。
【0145】
(6-2)
熱交換装置100では、第2熱交換器42において、水が第3冷媒と熱交換する第3領域42aと、水が第4冷媒と熱交換する第4領域42bとが部分的に重なるので、第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dのいずれかの冷媒が漏洩すると、第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dそれぞれにおける所定の物理量の測定値に顕著な差異が現れる。その結果、冷媒漏洩の検知の精度を向上させることができる。
【0146】
(6-3)
熱交換装置100では、第1熱交換器41を出た水は第2熱交換器42に入る。
【0147】
(6-4)
熱交換装置100では、第1熱交換器41において、水通路410が、第1冷媒通路411と第2冷媒通路412とによって挟まれることによって、水が第1冷媒と熱交換する第1領域41aと、水が第2冷媒と熱交換する第2領域41bとが部分的に重なる。それゆえ、第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bのいずれかの冷媒が漏洩すると、第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bそれぞれにおける所定の物理量の測定値に顕著な差異が現れる。その結果、冷媒漏洩の検知の精度を向上させることができる。
【0148】
(6-5)
第2熱交換器42においても同様であり、水通路410が、第3冷媒通路413と第4冷媒通路414とによって挟まれることによって、水が第3冷媒と熱交換する第3領域42aと、水が第4冷媒と熱交換する第4領域42bとが部分的に重なるので、第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dのいずれかの冷媒が漏洩すると、第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dそれぞれにおける所定の物理量の測定値に顕著な差異が現れる。その結果、冷媒漏洩の検知の精度を向上させることができる。
【0149】
(6-6)
制御部70は、起動してから所定時間経過後に、第1冷媒または第2冷媒が漏洩しているか否かを判定する。制御部70が起動してから所定時間経過すれば、熱交換装置100の熱媒体循環回路50および各冷媒回路の運転も安定しているので、冷媒漏洩の誤判定を回避することができる。本実施形態では、上記所定時間が約40分に設定されている。
【0150】
(7)変形例
(7-1)
上記実施形態では、第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bの両方に冷媒漏洩が発生した場合、或いは第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dの両方に冷媒漏洩が発生した場合については想定されていない。
【0151】
なぜなら、熱交換装置100の運転時、第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bの両方に冷媒漏洩が発生した場合、第1熱交換器41の水出口温度が正常運転時の温度に比べて極端に上昇するので、第1冷媒回路10aおよび第2冷媒回路10bの両方に冷媒漏洩が発生したことが容易に判明するからである。
【0152】
第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dの両方に冷媒漏洩が発生した場合も同様に、第2熱交換器42の水出口温度が正常運転時の温度に比べて極端に上昇するので、第3冷媒回路10cおよび第4冷媒回路10dの両方に冷媒漏洩が発生したことが容易に判明するからである。
【0153】
(7-2)
いわゆる定格運転時には、図9における第1閾値As、第2閾値Bs、第3閾値Csおよび第4閾値Dsを厳しい値で判定するが、定格運転ではないときに厳しい閾値で判定すると、正常であるにもかかわらず冷媒漏洩と判定してしまう可能性がある。
【0154】
そのような事態を回避するために、定格運転とは異なる運転時には緩めの閾値で判定することが望ましい。
【0155】
それゆえ、温度センサ81aの検出値Twと温度センサ91の検出値Toとの関係が、所定の第1条件(例えば、5℃≦Tw≦9℃、且つ、32℃≦To≦38℃)を満たしているときは、第1閾値As、第2閾値Bs、第3閾値Csおよび第4閾値Dsを厳しい値とする第1判定ロジックを用いる。
【0156】
一方、上記第1条件以外である第2条件を満たしているときは、第1閾値As、第2閾値Bs、第3閾値Csおよび第4閾値Dsを定格運転時よりも緩めの閾値とする第2判定ロジックを用いることによって、「定格運転ではないときに厳しい閾値で判定し、正常であるにもかかわらず冷媒漏洩と判定してしまう」ことを防止する。
【0157】
また、別の変形例として、検出値To(外気温度)を第2判定ロジックの第2条件から外してもよい。したがって、第2判定ロジックは外気温度に関係なく全ての外気温度エリア(例えば、-15℃≦To≦43℃)を対象に判定してもよい。
【0158】
或いは、検出値Tw(水出口温度)を第2判定ロジックの第2条件から外してもよい。したがって、第2判定ロジックは水出口温度に関係なく全ての水出口温度エリア(例えば、4℃≦Tw≦30℃)を対象に判定してもよい。
【0159】
或いは、検出値To(外気温度)および検出値Tw(水出口温度)を第2判定ロジックの第2条件から外してもよい。したがって、第2判定ロジックは、外気温度および水出口温度に関係なく、全てエリア(例えば、4℃≦Tw≦30℃、且つ、-15℃≦To≦43℃)を対象に判定してもよい。
【0160】
(7-3)
第2判定ロジックの閾値は、第1判定ロジックに比べて緩めの閾値であるため、定格運転時、第1判定ロジックと第2判定ロジックとが併行して実行されてもよい。
【0161】
(8)その他
本実施形態では、第1~第4冷媒回路(10a~10d)に封入される冷媒は、可燃性の冷媒である。ここでは、可燃性の冷媒には、米国のASHRAE34 Designation and safety classification of refrigerantの規格又はISO817 Refrigerants- Designation and safety classificationの規格でClass3(強燃性)、Class2(弱燃性)、Subclass2L(微燃性)に該当する冷媒を含む。
【0162】
また、第1冷媒回路10aに封入される第1冷媒および第2冷媒回路10bに封入される第2冷媒を同種の冷媒とし、第3冷媒回路10cに封入される第3冷媒および第4冷媒回路10dに封入される第4冷媒を同種の冷媒としてもよい。
【0163】
さらに、第1~第4冷媒が同種の冷媒であってもよい。本実施形態では、第1~第4冷媒としてR32が使用される。
【0164】
但し、封入される冷媒については、例えばCO冷媒や、アンモニア等の毒性のある冷媒であってもよい。また、各冷媒回路に封入されている冷媒は、必ずしも同一でなくともよい。
【0165】
本実施形態では、熱媒体循環回路50に封入される熱媒体は水であるが、これに限定されるものではなく、例えば、塩化ナトリウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、エチレングリコール水溶液や、プロピレングリコール水溶液などのブラインが使用されてもよい。
【0166】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0167】
10a 第1冷媒回路
10b 第2冷媒回路
10c 第3冷媒回路
10d 第4冷媒回路
41 第1熱交換器
41a 第1領域
41b 第2領域
42 第2熱交換器
42a 第3領域
42b 第4領域
50 熱媒体循環回路
60 第3熱交換器
70 制御部
70a 第1制御部
70b 第2制御部
70c 第3制御部
70d 第4制御部
81a 第1温度センサ
91 第2温度センサ
100 熱交換装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0168】
【特許文献1】特開2020-51738号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10