(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037409
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】配合計画支援方法
(51)【国際特許分類】
C21C 5/52 20060101AFI20240312BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240312BHJP
G05B 19/418 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C21C5/52
G06Q50/08
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142260
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】平野 弘二
(72)【発明者】
【氏名】立溝 信之
【テーマコード(参考)】
3C100
4K014
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100BB05
3C100BB13
3C100BB15
4K014CB01
4K014CE00
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】複数のスクラップ銘柄が任意の配合割合で配合された原料を溶融することで溶鋼を生成する炉操業において、生成される溶鋼中の成分含有量を推定し、複数のスクラップ銘柄の配合計画の立案を支援する。
【解決手段】複数のスクラップ銘柄が任意の配合割合で配合された原料を溶融することで溶鋼を生成する炉操業において、複数のスクラップ銘柄の配合割合を指定した配合計画の立案を支援する配合計画支援方法であって、過去の炉操業における、複数のスクラップ銘柄の配合割合である配合実績と溶鋼の成分含有量実績とが関連付けられた複数の実績データに基づいて、複数のスクラップ銘柄が任意の配合割合で配合された原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量を出力する推定モデルを生成し、推定モデルを用いて、複数のスクラップ銘柄の配合割合を指定した配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスクラップ銘柄が任意の配合割合で配合された原料を溶融することで溶鋼を生成する炉操業において、前記複数のスクラップ銘柄の配合割合を指定した配合計画の立案を支援する配合計画支援方法であって、
過去の炉操業における、前記複数のスクラップ銘柄の配合割合である配合実績と溶鋼の成分含有量実績とが関連付けられた複数の実績データに基づいて、前記複数のスクラップ銘柄が任意の配合割合で配合された原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量を出力する、推定モデルを生成する推定モデル生成ステップと、
前記推定モデルを用いて、前記複数のスクラップ銘柄の配合割合を指定した配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値を出力する、含有量推定ステップと、
を含む、配合計画支援方法。
【請求項2】
前記含有量推定ステップは、
過去の炉操業の中から、前記配合計画と類似する配合実績を含む実績データを抽出する類似実績データ抽出ステップと、
前記類似実績データ抽出ステップにて抽出した前記配合計画と類似する配合実績を含む実績データと、前記推定モデルとに基づいて、前記配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値を出力する類似実績反映ステップと、
を含む、請求項1に記載の配合計画支援方法。
【請求項3】
前記含有量推定ステップは、前記配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の確率分布に関する情報を出力する、請求項1または2に記載の配合計画支援方法。
【請求項4】
前記含有量推定ステップは、前記確率分布に関する情報と、予め設定された許容含有量範囲とに基づいて、前記配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値が前記許容含有量範囲から外れる確率を出力する、適合度算出ステップを含む、請求項3に記載の配合計画支援方法。
【請求項5】
前記配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値と前記配合計画に基づく原料の費用との関係を評価することで、前記配合計画を調整する、配合計画調整ステップを含む、請求項1または2に記載の配合計画支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスクラップ銘柄が任意の配合割合で配合された原料を溶融することで溶鋼を生成する炉操業において、複数のスクラップ銘柄の配合割合を指定した配合計画の立案を支援する配合計画支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼の製造は、高炉法と電炉法とに大別される。電炉法の製鋼工程においては、配合計画に基づき所定量ずつ混合した複数のスクラップ銘柄を原料として電気炉に投入し、溶解することで溶鋼を得る。スクラップ銘柄には、例えば、シュレッダー、ヘビー、新断、Cプレス、ダライ粉、銑鉄、構内発生屑、等がある。スクラップ銘柄は、「A社から納入されたシュレッダー」のように、入手元と関連付けて管理されることもある。
【0003】
溶鋼中の成分は、一般的には、チャージ毎にスクラップ溶解後に測定される。ここで、溶鋼中に銅等のトランプエレメントが混入すると、鋼板製造時に割れ等の不良品を発生させる要因となる。しかし、溶鋼中に含まれるトランプエレメントを測定するのがスクラップ溶解後のタイミングになることから、当該溶鋼中に鋼種毎に予め設定される規格値を超えるトランプエレメントが含まれていた場合には、当該チャージにて製造される鋼を屑化しなければならなくなる。このため、スクラップ銘柄の配合計画の立案時に、複数のスクラップ銘柄の配合割合を指定した場合において、当該配合計画に基づくチャージに、どの程度のトランプエレメントが含まれているかを推定する技術は重要である。
【0004】
例えば、特許文献1には、スクラップ在庫情報の管理システムが開示されている。特許文献1には、製品の品質検査を行い、製品中に含有されるトランプエレメントが所定値以上である場合に電気炉に供給されるスクラップ銘柄を変更するとともに、納入時に取得した荷姿情報に基づいて、トランプエレメント濃度を上昇させる原因となったスクラップの納入業者を特定する業務プロセスが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、スクラップの元素含有量測定方法が開示されている。特許文献2の手法では、スクラップに含有されていない元素をマーカー元素として用い、まず、該マーカー元素を金属溶湯に添加してその濃度を測定し、次いで、金属溶湯にスクラップを投入して溶解させ、その状態で金属溶湯中のマーカー元素と特定元素の濃度を測定する。そして、スクラップ溶解前後における金属溶湯中のマーカー元素の濃度変化からスクラップ溶解で増えた金属溶湯の重量を求め、該金属溶湯の重量変化とスクラップ溶解前後における特定元素の濃度変化とからスクラップ中の特定元素の含有量を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-255339号公報
【特許文献2】特開2007-322190号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】棟近雅彦 編著、奥原正夫 著、「JUSE-StatWorksによる回帰分析入門[第2版](StatWorksによる新品質管理入門シリーズ)」、日科技連出版社、2012年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1に記載の手法は、トランプエレメント濃度の上昇につながった特定のスクラップを同定することを目的としており、現在在庫として保有する各スクラップ銘柄のトランプエレメント濃度を推定する技術ではない。また、上記特許文献2に記載の手法は、あるスクラップ銘柄の中の1つの部材を溶解してトランプエレメントの濃度を測定する手法である。このため、大量の部材からなるスクラップ銘柄毎に、平均的なトランプエレメント濃度を推定するには多くの試験を実施する必要があり、製造コスト及び試験時間制約の観点から現実的な手法ではない。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、複数のスクラップ銘柄が任意の配合割合で配合された原料を溶融することで溶鋼を生成する炉操業において、生成される溶鋼中の成分含有量を推定し、複数のスクラップ銘柄の配合計画の立案を支援することが可能な、スクラップの配合計画支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、複数のスクラップ銘柄が任意の配合割合で配合された原料を溶融することで溶鋼を生成する炉操業において、前記複数のスクラップ銘柄の配合割合を指定した配合計画の立案を支援する配合計画支援方法であって、過去の炉操業における、前記複数のスクラップ銘柄の配合割合である配合実績と溶鋼の成分含有量実績とが関連付けられた複数の実績データに基づいて、前記複数のスクラップ銘柄が任意の配合割合で配合された原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量を出力する、推定モデルを生成する推定モデル生成ステップと、前記推定モデルを用いて、前記複数のスクラップ銘柄の配合割合を指定した配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値を出力する、含有量推定ステップと、
を含む、配合計画支援方法が提供される。
【0011】
また、前記含有量推定ステップは、過去の炉操業の中から、前記配合計画と類似する配合実績を含む実績データを抽出する類似実績データ抽出ステップと、前記類似実績データ抽出ステップにて抽出した前記配合計画と類似する配合実績を含む実績データと、前記推定モデルとに基づいて、前記配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値を出力する類似実績反映ステップと、を含んでもよい。
【0012】
前記含有量推定ステップは、前記配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の確率分布に関する情報を出力してもよい。
【0013】
また、前記含有量推定ステップは、前記確率分布に関する情報と、予め設定された許容含有量範囲とに基づいて、前記配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値が前記許容含有量範囲から外れる確率を出力する、適合度算出ステップを含んでもよい。
【0014】
さらに、配合計画支援方法は、前記配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値と前記配合計画に基づく原料の費用との関係を評価することで、前記配合計画を調整する、配合計画調整ステップを含んでもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、複数のスクラップ銘柄が任意の配合割合で配合された原料を溶融することで溶鋼を生成する炉操業において、生成される溶鋼中の成分含有量を推定し、複数のスクラップ銘柄の配合計画の立案を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスクラップの配合計画支援方法の概要を示す説明図である。
【
図2】同実施形態に係る配合計画支援装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図3】同実施形態に係る配合計画支援装置の別の構成例を示すブロック図である。
【
図4】同実施形態に係る配合計画支援方法における溶鋼中の成分濃度推定処理を示すフローチャートである。
【
図5】同実施形態に係る配合計画支援方法における推定モデルの処理を示すフローチャートである。
【
図6】同実施形態に係る配合計画支援方法における配合計画の支援処理を示すフローチャートである。
【
図8】スクラップの配合計画支援を実行する情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
[1.概要]
まず、
図1に基づいて、本発明の一実施形態に係るスクラップの配合計画支援方法の概要を説明する。
図1は、本実施形態に係るスクラップの配合計画支援方法の概要を示す説明図である。
【0019】
本実施形態に係るスクラップの配合計画支援方法は、複数のスクラップ銘柄が任意の配合割合で配合された原料を溶融することで溶鋼を生成する炉操業において、複数のスクラップ銘柄の配合割合を指定した配合計画の立案を支援するための手法である。本実施形態に係るスクラップの配合計画支援方法では、まず、過去の炉操業における、複数のスクラップ銘柄の配合割合である配合実績と溶鋼の成分含有量実績とが関連付けられた複数の実績データに基づいて、複数のスクラップ銘柄が任意の配合割合で配合された原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量を出力する、推定モデルを生成する。そして、生成した推定モデルを用いて、複数のスクラップ銘柄の配合割合を指定した配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値を出力する。
【0020】
なお、以下では、溶鋼を得るための原料が複数のスクラップ銘柄のみからなる場合を例に説明するが、原料には溶銑等のスクラップ以外のものが含まれていてもよい。その場合、溶銑等スクラップ以外の原料に含まれる所定の成分の含有量が未知の場合には、スクラップ銘柄の一つとして扱ってもよい。一方で、スクラップ以外の原料に含まれる所定の成分の含有量が既知の場合には、溶鋼の成分含有量実績から当該スクラップ以外の原料に含まれる所定の成分の含有量を差し引けば、複数のスクラップ銘柄のみを配合した場合と同様に扱うことができる。また、以下では、所定の成分として主にトランプエレメントを取り上げて説明するが、所定の成分としてはトランプエレメントに限られるものではなく、例えば硫黄(S)やリン(P)等他の元素であってもよい。
【0021】
過去の炉操業の操業実績として、
図1に示すように、複数のスクラップ銘柄の配合割合x_kmと、当該配合割合に基づき複数のスクラップ銘柄を配合した原料を溶融して生成された溶鋼の成分含有量実績y_knとが関連付けられ、複数の実績データが得られている。実績データは、1チャージ毎に取得される。
【0022】
スクラップ銘柄の配合割合x_kmにおいて、kはチャージNo.(k=1,2,…,s)、mはスクラップ銘柄に固有の番号(m=1,2,…,p)であり、スクラップ銘柄はxmで表される。例えば、配合割合x_11は、チャージNo.1におけるスクラップ銘柄x1の配合割合を表している。1チャージにて投入するスクラップ銘柄の配合割合x_kmの総和は1となる(すなわち、Σm(x_km)=1.0(k=1,2,…,s))。
【0023】
また、溶鋼の成分含有量実績y_knにおいて、kはチャージNo.(k=1,2,…,s)、nは各成分yに固有の番号(n=1,2,…,q)であり、成分はynで表される。例えば、成分含有量実績y_11は、チャージNo.1において生成された溶鋼における成分1の含有量を表している。
【0024】
このような複数の実績データを用いて、複数のスクラップ銘柄の配合割合を入力とし、当該スクラップ銘柄が任意の配合割合で配合された原料から生成される溶鋼に含まれる種々の成分の成分含有量を出力とする、推定モデルが生成される。推定モデルの種類や形式は特に限定されないが、例えばLong Short-Term Memory(LSTM)等の機械学習モデルまたは重回帰モデル等を用いればよい。
【0025】
そして、複数のスクラップ銘柄の配合割合を指定した配合計画を推定モデルに入力することにより、当該配合計画に基づき生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値が得られる。配合計画は、未来のあるチャージにおいてスクラップ銘柄xmを配合する配合割合X_m(m=1,2,…,p)を表している。推定モデルは、入力された配合計画(配合割合X_m)から、配合計画に対する溶鋼中の成分ynの含有量Y_n(n=1,2,…,q)を推定値として出力する。
【0026】
配合計画の立案にあたり、例えば上記特許文献2に記載のように、在庫として存在するスクラップ部材を大量に溶融して、各スクラップ銘柄中に含まれるトランプエレメント等の含有量を推定するのは現実的でない。そこで、本実施形態では、過去の複数チャージにおける各スクラップ銘柄の配合割合実績及び溶解後の成分含有量実績をもとに、複数のスクラップ銘柄が任意の配合割合で配合された原料から生成される溶鋼の成分含有量を推定する推定モデルを生成する。生成した推定モデルを用いることで、大量のスクラップ部材の溶解等を新たに実施することなく、配合計画に基づき生成される溶鋼中の成分含有量を推定することができる。その結果、生成される溶鋼中にトランプエレメントがどのくらい含まれるかを予測することができ、トランプエレメントの含有量が規格値を超えるようなスクラップ銘柄の配合を回避する等、作業者によるスクラップ銘柄の配合計画の立案を支援することができる。
【0027】
なお、本発明において、複数のスクラップ銘柄の配合割合x_kmは、1チャージで投入する総スクラップ重量に対する各スクラップ銘柄の重量比として表してもよく、1チャージで投入する各スクラップ銘柄の重量そのもので表してもよい。複数のスクラップ銘柄の配合割合x_kmを、1チャージで投入する総スクラップ重量に対する各スクラップ銘柄の重量比で表す場合、溶鋼の成分含有量実績y_knは成分濃度(質量%)で表される。また、複数のスクラップ銘柄の配合割合x_kmを、1チャージで投入する各スクラップ銘柄の重量そのもので表す場合、溶鋼の成分含有量実績y_knは成分重量(kgまたはton)で表される。後者のように溶鋼の成分含有量実績y_knを成分重量で表した場合、生成される溶鋼重量で各成分重量を割れば、成分濃度に変換することができる。
【0028】
また、推定モデルに入力する配合計画(配合割合X_m)、及び、推定モデルから出力される成分含有量Y_nは、推定モデルの生成時に用いた実績データ(配合割合実績x_km及び溶鋼の成分含有量実績y_kn)の同一単位とする。
【0029】
以下、本実施形態に係るスクラップのクラップの配合計画支援方法について、詳細に説明する。
【0030】
[2.配合計画支援装置]
まず、
図2及び
図3に基づいて、本実施形態に係るスクラップの配合計画支援方法を実行する配合計画支援装置100の一構成例を説明する。
図2は、本実施形態に係る配合計画支援装置100の一構成例を示すブロック図である。
図3は、本実施形態に係る配合計画支援装置100の別の構成例を示すブロック図である。
【0031】
本実施形態に係る配合計画支援装置100は、
図2に示すように、実績データ取得部110と、推定モデル生成部120と、含有量推定部140と、を備える。また、配合計画支援装置100は、配合計画調整部180を備えていてもよい。また、配合計画支援装置100は、記憶部170、入力部130、出力部150を、それぞれ、配合計画支援装置100の内部に備えるようにしたり、配合計画支援装置100に接続された外部装置(別体)とするようにして備えてもよい。
【0032】
実績データ取得部110は、過去の炉操業における実績データを取得する。実績データ取得部110は、過去の炉操業における実績データを記憶した後述する記憶部170や、実績データ取得部110に接続された外部装置等から、複数のスクラップ銘柄の配合割合x_kmと、当該配合割合に基づき複数のスクラップ銘柄を配合した原料を溶融して生成された溶鋼の成分含有量実績y_knとを関連付けた実績データを複数取得する。実績データ取得部110は、推定モデルの生成に必要な数の実績データを取得すればよく、例えば直近100~1000程度の実績データを取得すればよい。実績データ取得部110は、取得した実績データを推定モデル生成部120へ出力する。実績データ取得部110は、取得した実績データが記憶部170に記憶されていない場合には、新たに記憶部170に記録するようにしてもよい。
【0033】
推定モデル生成部120は、複数の実績データに基づいて、入力される複数のスクラップ銘柄の配合割合から、当該配合割合に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量を出力する、推定モデルを生成する。推定モデル生成部120は、推定モデルとして、例えばLong Short-Term Memory(LSTM)等の機械学習モデルまたは重回帰モデル等を生成する。推定モデル生成部120は、銘柄別成分濃度推定部121と銘柄別成分濃度取得部123とを備えていてもよい。推定モデル生成部120による推定モデルの生成処理の詳細については後述する。推定モデル生成部120は、生成した推定モデルを含有量推定部140へ出力する。
【0034】
入力部130は、入力される情報を受け付けるインタフェースである。入力部130は、例えば、作業者が情報を入力するための機器であって、例えばキーボード、マウス、タッチパネル等の入力機器である。例えば、作業者が入力部130を用いて、未来のあるチャージにおける複数のスクラップ銘柄の配合割合を指定すると、指定された複数のスクラップ銘柄の配合割合は、配合計画として、配合計画支援装置100に入力される。
【0035】
含有量推定部140は、推定モデルを用いて、複数のスクラップ銘柄の配合割合を指定した配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量を出力する。含有量推定部140は、入力部130から入力された配合計画を、推定モデル生成部120により生成された推定モデルに入力し、推定モデルから当該配合計画に基づき生成される溶鋼に含まれる成分の含有量を得る。含有量推定部140は、推定モデルから得た成分の含有量を推定値として、出力部150へ出力する。
【0036】
また、含有量推定部140は、別の態様として、
図3に示すように、類似実績データ抽出部141と、類似実績反映部143とを備えるようにしてもよい。
【0037】
類似実績データ抽出部141は、過去の炉操業の中から、配合計画と類似する配合割合を持った配合実績を含む実績データを抽出する。類似実績データ抽出部141は、実績データ取得部110が取得した実績データを記憶している記憶部170等を参照し、入力部130から入力された配合計画と類似する配合割合を持った配合実績を含む実績データを抽出する。類似実績データ抽出部141は、配合計画と配合実績との類似性を、スクラップ銘柄の配合割合の類似度、及び、実績データの時間的距離等に基づいて判断する。類似実績データ抽出部141による類似実績データの抽出処理の詳細については後述する。類似実績データ抽出部141は、記憶部170から抽出した一又は複数の実績データを、類似実績反映部143へ出力する。
【0038】
類似実績反映部143は、類似実績データ抽出部141にて抽出した配合計画と類似する配合実績を含む実績データを、推定モデルに入力することで、配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値を出力する。すなわち、類似実績反映部143では、過去の実績データを無作為に用いるのではなく、配合計画と類似する配合実績データを選別して推定モデルに入力するようにしている。
【0039】
このように、含有量推定部140が、類似実績データ抽出部141と類似実績反映部143とを備える理由は次の通りである。推定モデル生成部120で生成した推定モデルは、過去のあらゆる実績データ、すなわち、過去の時間的制約のない範囲の実績データに基づいて生成されたものである。しかしながら、実際の炉操業では、炉の操業条件を変えていないとしても、時間の経過の中で、実績データの値に緩やかな変動(実績データのトレンド)が生じることになる。そのため、推定モデルを用いて溶鋼に含まれる所定の成分の含有量をより高精度に推定しようとする場合には、過去の時間的制約のないあらゆる実績データを用いるよりは、現在の炉操業と状況が近い、例えば直近の実績データを用いるといったように、実績データのトレンドを強く反映させた方がよい場合があり得る。そのため、類似実績反映部143は、現在の炉操業に近い操業の実績データを、類似実績データ抽出部141から取得し、そうした実績データを推定モデルに入力することで、配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定に、操業の直近のトレンドを反映することができる。
【0040】
こうして得られた、配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値は、出力部150へ出力される。
【0041】
以上の説明においては、含有量推定部140から出力される、配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値は、それぞれの成分に対して、ある1つの値を持つことを前提としてきたが、推定値は本来、推定誤差に対応するばらつきを伴うものである。そこで、含有量推定部140は、配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の確率分布に関する情報(以下、「確率分布情報」ともいう。)を求め、出力するようにしてもよい。確率分布情報は、例えば、成分含有量の確率分布(確率密度)、成分含有量に対する95%信頼区間等である。含有量推定部140は、確率分布情報を、後述する配合計画調整部180に出力してもよい。
【0042】
なお、この確率分布情報は、推定モデル生成部120で生成された推定モデルから得られた、溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値の計算結果に対して、一定の確率の幅を持たせるように付与してもよい。または、推定モデル生成部120で推定モデルを生成する際に、種々の形式のモデルを生成し、それらのモデルの演算結果が生成される推定モデルの結果に含まれるように、生成される推定モデルの係数等に幅を許容する等することで、推定モデル自体に許容幅を持たせてもよい。この場合、結果として、推定モデルを用いた溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値の計算結果が、一定の確率の幅を持つようになる。
【0043】
より具体的な例としては、推定モデルとして重回帰モデルを用いる場合であれば、推定モデルは、推定モデルを生成した際に用いた複数の実績データに基づく回帰によって得られるものである。例えば、回帰に最小二乗法を用いれば、推定モデルから算出される成分含有量の推定値は、一本の回帰直線として得られることになる。しかしながら、データにはばらつきがあるため、複数の実績データの全てがその一本の回帰直線上に存在することはなく、複数の実績データは当該回帰直線の周りに散在する。
【0044】
これを踏まえると、回帰直線のフィッティングの仕方は、最小二乗法によって得られる唯一の傾きに定まると捉えるのではなく、複数の実績データから過度に逸脱しない範囲で、様々な傾きを取り得ると考えるのが自然である。すなわち、回帰直線の傾きは、最小二乗法による一つの値に決まると捉えるのではなく、複数の実績データのばらつきに対応した幅を持つ(確率分布を持つ)を考えるのが自然である。実際、重回帰により得られる偏回帰係数の推定値は正規分布に従うことが知られている。各スクラップ銘柄に対するある成分の含有量を表す偏回帰係数が確率分布を持つため、結果として、それら複数のスクラップ銘柄を配合することで生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値も確率分布を持つことになる。この成分含有量の推定値の確率分布の算出方法については後述する。
【0045】
また、含有量推定部140は、確率分布に関する情報と、予め設定された許容含有量範囲とに基づいて、上記所定の成分の含有量の推定値が上記許容含有量範囲から外れる確率を出力するようにしてもよい。上述のように、成分含有量の推定値に確率を持たせることができるので、当該確率に基づいて、着目する成分の含有量が好ましいとされる範囲から外れる確率についても、当然に知ることができる。実際の炉操業では、着目する成分の成分含有量の具体的な値を知りたい場合もあるが、一方で、対応する配合計画のままで炉操業を進めてよいか否かの方を知りたい場合もある。このため、成分含有量が所定の範囲から外れる確率を知ることができれば、対応する配合計画のままで炉操業を進めてよいか否かの判断ができるため、好適である。
【0046】
出力部150は、配合計画支援装置100から情報を出力するインタフェースである。出力部150は、配合計画支援装置100から出力された情報を作業者に提示するための機器であって、例えばディスプレイ、プリンター等の出力機器である。例えば、出力部150は、配合計画に基づき生成される溶鋼に含まれる成分の含有量が含有量推定部140から入力されると、推定モデルにより推定された溶鋼中の成分の含有量を出力する。また、出力部150は、例えばスクラップ銘柄の最適な配合計画が配合計画調整部180から入力されると、当該最適な配合計画を出力する。
【0047】
記憶部170は、実績データ取得部110が取得した実績データを記憶する記憶部である。記憶部170は、実績データ取得部110が取得した実績データすべてを記憶してもよく、直近の所定期間における実績データを記憶してもよい。また、記憶部170は、配合計画支援装置100で用いられるプログラムやデータ等を記憶することができ、各スクラップ銘柄の費用(単価)を記憶することもできる。
【0048】
配合計画調整部180は、配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値と配合計画に基づく原料の費用との関係を評価することで、配合計画を調整する。すなわち、配合計画調整部180は、含有量推定部140により求めた成分含有量の推定値や適宜確率分布情報に基づいて、最適な配合計画を求める。配合計画調整部180は、例えば、配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値に基づく関数と、配合計画に基づく原料(すなわち、配合されたスクラップ銘柄)の費用に基づく関数とから、評価関数を作成する。
【0049】
一般に、配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値は、より品質が高いスクラップ銘柄を選べば、より好ましい含有量の値が得られる場合が多い。一方で、より品質が高いスクラップ銘柄を選ぶことは、スクラップ銘柄を購入する費用の増加につながる。そのため、配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の推定値に基づく関数と、配合計画に基づく原料(すなわち、配合されたスクラップ銘柄)の費用に基づく関数とは、互いに相反し、片方の関数がもう一方の関数を制約するものとして機能することで、評価関数全体を発散させず、一定の値に落ち着かせることになる。
【0050】
そのため、作成した評価関数を用い、評価関数がより良い値となる配合計画を、最適な配合計画(最適配合計画)であると評価する。そして、この最適配合計画を、今後の炉操業に用いる配合計画として適用することで、炉操業を調整することができる。なお、含有量推定部140及び配合計画調整部180による配合計画の支援処理の詳細については後述する。配合計画調整部180は、求めた最適配合計画を、出力部150へ出力する。
【0051】
以上、本実施形態に係る配合計画支援装置100の一構成例について説明した。なお、本発明において、配合計画支援装置100は、少なくとも、実績データ取得部110と、推定モデル生成部120と、含有量推定部140と、を備えていればよい。また、
図2及び
図3に示した配合計画支援装置100は、1つの装置に、実績データ取得部110、推定モデル生成部120、入力部130、含有量推定部140、出力部150、記憶部170、及び、配合計画調整部180を備えているが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、推定モデル生成部120とその他の機能部とを別の装置にて構築する等、配合計画支援装置100の各機能部を、複数の装置に設けるようにして、構築するようにしてもよい。
【0052】
[3.配合計画支援方法]
次に、本実施形態に係る配合計画支援方法について説明する。以下の説明では、一例として、複数のスクラップ銘柄の配合割合x_kmを1チャージで投入する総スクラップ重量に対する各スクラップ銘柄の重量比で表し、溶鋼の成分含有量実績y_knを成分濃度(質量%)で表すものとする。
【0053】
[3-1.配合計画に基づき生成される溶鋼中の成分含有量の推定]
まず、
図2~
図4に基づいて、本実施形態に係る配合計画支援方法における溶鋼中の成分濃度推定処理を説明する。成分濃度推定処理では、配合計画に基づき生成される溶鋼中の成分含有量を推定する。なお、
図4は、本実施形態に係る配合計画支援方法における溶鋼中の成分濃度推定処理を示すフローチャートである。
【0054】
溶鋼中の成分濃度推定処理では、まず、
図4に示すように、実績データ取得部110により、過去の炉操業における実績データを取得する(S100)。実績データ取得部110は、複数のスクラップ銘柄の配合割合x_kmと、当該配合割合に基づき複数のスクラップ銘柄を配合し溶融して生成された溶鋼の成分含有量実績y_knとを関連付けた実績データを複数取得する。実績データ取得部110は、取得した実績データを推定モデル生成部120へ出力する。
【0055】
次いで、推定モデル生成部120は、複数の実績データに基づいて、入力される複数のスクラップ銘柄の配合割合から、当該配合割合に基づき生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量を出力する、推定モデルを生成する(S110)。推定モデル生成部120は、推定モデルとして、例えばLong Short-Term Memory(LSTM)等の機械学習モデルまたは重回帰モデル等を生成する。
【0056】
例えば、推定モデルとして重回帰モデルを生成する場合、推定モデル生成部120は、
図2及び
図3に示すように、銘柄別成分濃度推定部121と、銘柄別成分濃度取得部123とにより、重回帰モデルを生成する。
【0057】
銘柄別成分濃度推定部121は、ステップS100にて取得した実績データを下記式(1)に入力し、フィッティングすることで、偏回帰係数bijを求める。ここで、xiは実績データに含まれるスクラップ銘柄の配合割合実績(i=1,2,…,p)、yjは実績データに含まれる成分含有量実績(j=1,2,…,q)、偏回帰係数bijはスクラップ銘柄iに含まれる成分jの濃度である。また、pは重回帰モデルのフィッティングに供する実績データのチャージ数、qは実績データに含まれるスクラップの銘柄の数である。pの大きさは例えば100~1000程度とすることができる。
【0058】
【0059】
銘柄別成分濃度推定部121により、実績データの上記式(1)への実績データのフィッティングが完了すると、偏回帰係数bijが決定する。
【0060】
銘柄別成分濃度取得部123は、決定した偏回帰係数bijを取得し、下記式(2)で表される重回帰モデルを得る。ここで、Xiは配合計画に基づくスクラップ銘柄の配合割合(i=1,2,…,p)、Yjは成分含有量の推定値(j=1,2,…,q)である。
【0061】
なお、上記式(1)において、偏回帰係数bijは各スクラップ銘柄に含まれる成分の濃度に相当するため、上記フィッティングにおいては、全てのi,jに対しbij≧0との制約(非負制約)を課すことが望ましい。また、xiを実績データに含まれるスクラップ銘柄の配合割合ではなく、実績データに含まれるスクラップ銘柄の配合重量として定義する場合であっても、同様に非負制約を課すことが望ましい。
【0062】
また上述のように、偏回帰係数bijは、最小二乗法でのフィッティングとして求まるある一つの値として取得するのではなく、フィッティングのバラツキに対応し、確率の幅を持たせた形(確率分布、確率密度)で取得してもよい。
【0063】
【0064】
上記式(2)にスクラップ銘柄の配合計画Xiを入力すれば、当該配合計画Xiに基づき生成される溶鋼中の成分含有量の推定値Yjが求まる。偏回帰係数bijの値が決定し、適当な実績データの値(xi、yj)を入力することで、溶鋼中の成分含有量の推定値Yjを求めることができるようになった上記式(2)を、推定モデルと称するものとする。推定モデル生成部120は、生成した推定モデル(例えば、上記式(2))を含有量推定部140へ出力する。
【0065】
そして、含有量推定部140は、ステップS110にて生成された推定モデルを用いて、複数のスクラップ銘柄の配合割合を指定した配合計画から、当該配合計画に基づく原料から生成される溶鋼中の成分含有量の推定値Yjを求める(S120)。例えば、推定モデルが上記式(2)の重回帰モデルで表されるとき、含有量推定部140は、入力部130から入力された配合計画Xiを上記式(2)に入力し、その出力として当該配合計画Xiに基づく原料から生成される溶鋼中の成分含有量の推定値Yjを得る。
【0066】
その後、含有量推定部140は、推定モデルから得た成分含有量の推定値Yjを、出力部150へ出力する(S130)。含有量推定部140は、溶鋼中に含まれるすべての成分について成分含有量の推定値を出力してもよく、トランプエレメント等の特定の成分についてのみ成分含有量の推定値を出力してもよい。
【0067】
以上、本実施形態に係る配合計画支援方法における溶鋼中の成分濃度推定処理について説明した。かかる処理では、過去の実績データに基づき、複数のスクラップ銘柄の配合割合で配合された原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量を出力する、推定モデルを生成し、推定モデルを用いて、配合計画に基づき生成される溶鋼中の成分含有量の推定値を得る。これにより、作業者は、大量のスクラップ部材の溶解等を実施することなく、未来のあるチャージにおける配合計画に基づき生成される溶鋼中の成分含有量を推定することができる。その結果、生成される溶鋼中にトランプエレメントがどのくらい含まれるかを予測することができ、トランプエレメントの含有量が規格値を超えるようなスクラップ銘柄の配合を回避する等、作業者によるスクラップ銘柄の配合計画の立案を支援することができる。
【0068】
[3-2.推定モデルの精度向上]
図4に示した推定モデルの精度を高めるため、推定モデルと、配合計画と類似する配合実績を含む実績データとを用いて、配合計画に基づき生成される溶鋼中の成分含有量の推定値を求めてもよい。以下、
図5に基づいて、推定モデルの精度を向上させる処理について説明する。なお、
図5は、本実施形態に係る配合計画支援方法における推定モデルの処理を示すフローチャートである。
【0069】
まず、
図5に示すように、実績データ取得部110により、過去の炉操業における実績データを取得する(S200)。実績データ取得部110は、取得した実績データを、推定モデル生成部120へ出力するとともに、記憶部170に記録する。次いで、推定モデル生成部120は、ステップS200にて取得された複数の実績データに基づいて、入力される複数のスクラップ銘柄の配合割合で配合された原料から生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量を出力する、推定モデルを生成する(S210)。ステップS210の処理は、
図4のステップS110と同様に行えばよい。
【0070】
また、類似実績データ抽出部141は、過去の炉操業の中から、配合計画と類似する配合実績を含む実績データを抽出する(S220)。類似実績データ抽出部141は、実績データ取得部110が取得した実績データを記憶している記憶部170等を参照し、入力部130から入力された配合計画と類似する配合実績を含む実績データを抽出する。
【0071】
類似実績データ抽出部141は、配合計画と配合実績との類似性を、スクラップ銘柄の配合割合の類似度、及び、実績データの時間的距離に基づき判断する。
【0072】
スクラップ銘柄の配合割合の類似度は、例えば、配合計画{Xi}と配合割合実績{xi}とのベクトルの距離(差)の大きさにより表してもよい。ベクトルの距離(差)が小さい程、スクラップ銘柄の配合割合の類似度は高いといえる。実績データの時間的距離は、例えば、スクラップ銘柄の配合が行われた時刻から現時点までの時間により表してもよく、チャージNo.であるkにより表してもよい。なお、チャージNo.は、直近のチャージから、k=1,2,…と番号が付与されるものとする。時間的距離が小さい程、時間的に類似度が高いといえる。
【0073】
類似度は、例えば、下記式(3)で測ることができる。式(3)の第一項はベクトルの距離(差)の大きさを表しており、第二項が時間的距離を表している。類似度の高いチャージは、式(3)が小さくなる条件を探索することで抽出することができる。
【0074】
【0075】
ここで、hは、現在のチャージNo.であり、p、qは重み係数である。なお、式(3)の定義の仕方は種々のものがあり得る。例えば{Xi}と{xi}とのベクトルの距離(差)の大きさの取り方として、式(3)の第一項に示したL1ノルムでなく、L2ノルムを用いてもよい。また、各スクラップ銘柄毎に含まれるトランプエレメント等、取り除きたい成分量の大小を考慮し、スクラップ銘柄毎に重みを付けるようにしてもよい。
【0076】
類似実績データ抽出部141は、例えば、スクラップ銘柄の配合割合の類似度と実績データの時間的距離との積算値が最小である実績データを、配合計画と類似する類似実績データ{xei,yej}として抽出する。そして、類似実績反映部143は、上記式(2)求めた係数bijを用い(すなわち、推定モデルを用い)、更に、類似実績データ(xei,yej)を用いて、推定モデルを下記式(4)のよう変形して用いることで、溶鋼中の成分含有量の予測値{Yj}を算出する(S230)。
【0077】
【0078】
上記式(2)のような単純な重回帰モデルでは、精度の良い偏回帰係数bijを求めるために、多数のチャージ数を遡る必要がある。結果として、重回帰モデルの生成に用いた実績データの時間スパン内に生じうる各スクラップ銘柄内の成分変動は無視され、時間方向に平均化された偏回帰係数が求まる傾向にある。特に、過去の実績データの中に似通った配合割合実績{xki}が複数存在する場合には、多重共線性により、より多くのチャージ数を遡る必要がある。
【0079】
そこで、実績データの時間スパン内でも特に最近の成分の傾向を踏まえた成分含有量を予測するため、配合計画{Xi}に近い配合割合実績{xei}の実績データを探索する。そして、配合計画{Xi}とこれに近い配合割合実績{xei}との差に対してのみ、回帰係数bijを掛け合わせる成分含有量計算を行い、その結果を類似実績データの成分含有量実績{yej}に加算することで、配合計画に近い配合割合実績(類似実績データ)を、推定モデルに反映させるようにする。なお、実績データの時間的距離をも考慮するのは、なるべく最近の成分の傾向を踏まえたうえで、成分含有量を予測するためである。
【0080】
なお、ステップS220にて抽出する類似実績データの数は、1つでもあってもよく、複数であってもよい。実績データには現在とは異なる炉操業上のトレンドも含まれていることから、推定モデルにより多くの類似実績データを反映させて推定を行うことで、1つの類似実績データを抽出して推定モデルで推定を行う場合に比べて、推定モデルの精度向上が期待される。
【0081】
複数の類似実績データを反映した推定モデルで推定を行う場合には、類似実績データ抽出部141は、まず、スクラップ銘柄の配合割合の類似度と実績データの時間的距離との積算値が小さいものから順に、N個(N>1)の実績データ{xei_N,yej_N}を抽出する。そして、ステップS230において、類似実績反映部143は、類似実績データ{xei_N,yej_N}それぞれについて、上記式(4)を用いて溶鋼中の成分含有量の予測値Yjを算出した後、N個の溶鋼中の成分含有量の予測値{Yj}の加重平均をとり、最終的な成分含有量の予測値{Yj}とする。なお、スクラップ銘柄の配合割合の類似度と実績データの時間的距離との積算値が最も小さいものから順に大きな重みを付けて加重平均をとってもよく、N個の類似実績データに対して均等に重み付けして加重平均をとってもよい。なお、類似実績データを抽出する数Nは、実績データの総数に応じて適宜設定すればよい。
【0082】
このように、類似実績データ抽出部141は、記憶部170から抽出した1または複数の実績データを類似実績反映部143へ出力し、類似実績反映部143は、類似実績データを反映した推定モデルを用いて、最終的な成分含有量の予測値{Yj}を出力する。
【0083】
その後、類似実績反映部143は、推定モデルから得た成分含有量の推定値Y
jを、出力部150へ出力する(S240)。ステップS240は、
図4のステップS130と同様に行えばよい。
【0084】
以上、本実施形態に係る配合計画支援方法における推定モデルの精度を向上させる処理について説明した。かかる処理では、過去の炉操業の中から、配合計画と類似する配合実績を含む実績データ(類似実績データ)を抽出する。そして、抽出した類似実績データを反映した推定モデルを用いて、配合計画に基づき生成される溶鋼中の所定の成分の含有量の推定値を出力する。これにより、推定モデルによる溶鋼中の成分含有量の推定値の推定精度を高めることができる。
【0085】
[3-3.配合計画の支援処理]
本実施形態に係る配合計画支援装置100は、上述のように推定モデルを用いて配合計画に基づき生成される溶鋼中の成分含有量の推定値を求めることができるが、さらに、好適な配合計画を立案するための支援情報を提供したり、好適な配合計画を提示したりしてもよい。以下、
図6及び
図7に基づいて、配合計画の支援処理について説明する。なお、
図6は、本実施形態に係る配合計画支援方法における配合計画の支援処理を示すフローチャートである。
図7は、確率分布情報の一例を示す説明図である。
【0086】
まず、
図6に示すように、実績データ取得部110により、過去の炉操業における実績データを取得する(S300)。実績データ取得部110は、取得した実績データを、推定モデル生成部120へ出力する。次いで、推定モデル生成部120は、ステップS300にて取得された複数の実績データに基づいて、入力される複数のスクラップ銘柄の配合割合から、当該配合割合で配合された原料に基づき生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量を出力する、推定モデルを生成する(S310)。ステップS300~S310の処理は、
図4のステップS100~S110と同様に行えばよい。
【0087】
そして、配合計画調整部180は、推定モデルを用いて算出した、配合計画に基づく原料から生成される溶鋼に含まれる成分の含有量の推定値を入力とする関数と、配合計画に基づく原料の費用(すなわち、配合計画に基づき配合されたスクラップ銘柄の費用)を入力とする関数とから、評価関数を生成する(S320)。
【0088】
例えば評価関数Evは、推定モデルEsと、関数fと関数gと、重み係数α、βを用いて、下記の式(5)のように示すことができる。例えば、関数fとしては、ステップS310にて生成された推定モデルを用いて、当該配合計画候補に基づき生成される溶鋼中の成分含有量の推定値Yj(=Es(xi、yi))からその好ましさを評価する関数を用いることができる。また、例えば、関数gとしては、配合計画に含まれる各スクラップ銘柄の単価と配合割合とを掛け合わせ、それらを積算する関数(配合割合の1次式)を用いることができる。
【0089】
【0090】
評価関数の形式は、式(5)に示すような形式に限定されるものではないが、一般に、成分の含有量の推定値の好ましさ(すなわち、式(5)右辺第1項)は、高品位のスクラップ銘柄を選択すればより好ましい値となる一方で、原料の費用(すなわち、式(5)右辺第2項)は、高品位のスクラップ銘柄を選択すれば高額となって好ましからざる値となる。このため、評価関数の形式は、それらが互いに相反し、それらがバランスしていることを評価できる関数となっていることが好ましい。
【0091】
そして、配合計画調整部180は、当該評価関数を用いて配合計画を評価することで、配合計画を調整する(S330)。この調整は、様々な配合計画候補に相当する実績データを評価関数に入力して評価関数の出力値を確認することで、出力値が所定の条件を満たす配合計画が、好ましい配合計画であると判断することで行われる。
【0092】
なお、評価関数の出力値の確認は、配合計画に対応する評価関数の出力値が、様々に考えられる配合計画候補の中で、最大値(又は最小値)を取るといったことで判断することができる。また、評価関数の出力値の確認は、配合計画に対応する評価関数の出力値が、予め設定された範囲に入るか否かによって判断したり、予め設定された範囲に入るもので順位付けすることによって判断したりしてもよい。
【0093】
すなわち、配合計画に相当する実績データを多数用意し、それらを総当たり的に評価関数に入力して評価関数を評価するのは、演算負荷が大きくなることから好ましくない場合が多い。一方で、最適な配合計画ではなくとも、ある程度の好ましさを持った配合計画が分かりさえすれば、炉操業上は十分であることも多い。したがって、総当たり的に評価関数を評価するのではなく、予め設定された範囲に評価関数の値が入るのであれば、それを以て妥当な配合計画が見つかったと判断し、その時点で演算を打ち切ることも考えられる。そこで、成分含有量の推定値が所望の範囲に入り、かつ、スクラップ銘柄の原料コスト等のその他の因子も望ましい範囲に入る配合計画{Xi}を探索し、評価関数の出力値が予め設定された所定の範囲に入るか否かにより、配合計画が調整されたか否かを判断するようにしてもよい。
【0094】
評価関数の出力値が予め設定された所定の範囲に入るか否かで調整されたか否かを判断する一例として、成分範囲の上限が設定されている場合に、所望の成分範囲に対するマージンは、例えば下記式(6)のように定義できる。
【0095】
【0096】
ここで、Vは成分範囲に上限が設定された成分の集合、Ujはその上限、cjは、重み係数である。
【0097】
また、別の例として、所望の成分範囲に対するマージンと、各スクラップ銘柄の費用の両方を組み込んだ評価関数を設計しておき、成分のマージンと費用の両者のバランスを追及するようにしてもよい。
【0098】
上述のように、配合計画に基づき配合されたスクラップ銘柄の費用g(xi、yi)は、各スクラップ銘柄の配合割合の1次式となる。また、配合計画に基づき生成される溶鋼中の成分含有量の推定値Yjも配合割合の1次式となる。このように、スクラップ銘柄の費用g(xi、yi)や含有量の推定値Yjに関する制約と、最大化(又は最小化)したい目的関数とが、全て1次式で表せる場合には、最適な配合計画を公知の線形計画問題の枠組みで求めることができる。この場合には、制約及び目的関数を定義すれば最適な配合計画を直接的に得ることができるため、総当たり的に評価関数を評価したり、望ましい範囲に入る配合計画を探索することで評価関数を評価したりすることなく、少ない演算負荷で最適な配合計画を得ることが可能となり、好適である。
【0099】
そして、配合計画調整部180で調整された配合計画は、好適な配合計画であるとして、出力部150に出力される。
【0100】
以上の説明において、配合計画や配合計画候補に対する溶鋼中の成分含有量Y
jは、1つの値を取るものとして推定を行ってきたが、含有量推定部140において、成分含有量の推定値Y
jとともに、配合計画に基づき生成される溶鋼に含まれる所定の成分の含有量の確率分布に関する情報(確率分布情報)を出力部150へ出力させ、その情報を活用することも可能である。確率分布情報は、例えば、
図7に示すような成分含有量の推定値Y
jの確率分布であってもよく、成分含有量の推定値Y
jに対する95%信頼区間等である。
【0101】
推定モデルとして重回帰モデルを用いる場合、含有量推定部140は、成分含有量の推定値Yjの確率分布としてt分布を求めてもよい。予測モデルによる予測期待値をYj^(ハット)とすると、下記式(7)は、自由度s-p-1のt分布(スチューデントのt分布)に従う。なお、sは推定モデル生成に用いた実績データ数、pはスクラップ銘柄の数である。また、D0はマハラノビスの汎距離、Veは分散分析における残差分散である(非特許文献1参照)。s→無限大としたとき、t分布は正規分布と一致する。
【0102】
【0103】
含有量推定部140から確率分布情報が入力されると、配合計画調整部180は、確率分布情報に基づいて成分含有量の推定値Yjが許容含有量範囲から外れる確率を求めることができ、この確率情報を適合性判定に活用することができる。
【0104】
具体的には、配合計画調整部180は、まず、確率分布情報及び予め設定された許容含有量範囲に基づいて、成分含有量の推定値Y
jが許容含有量範囲から外れる確率を求める。ステップS330で得られた好適な配合計画を推定モデルに入力して得られる成分含有量の推定値Y
jは期待値であり、さらに成分含有量の推定値Y
jの確率分布が得られれば、成分の推定値Y
jが許容含有量範囲から外れる確率を求めることができる。例えば、確率分布情報として
図7に示す成分含有量の推定値Y
jの確率分布が得られているとする。このとき、配合計画に基づくチャージにおいて許容される成分含有量の上限値がcで与えられるとき、成分含有量の推定値Y
jが許容含有量範囲から外れる確率は、
図7の斜線部の面積で表される。
【0105】
トレードオフの関係にある成分含有量の推定値Yiが許容含有量範囲から外れる確率と費用との2因子に重み付けをして足し合わせた、式(5)に対応する評価関数を最大化(又は最小化)することで、最適な配合計画を探索してもよい。
【0106】
なお、成分含有量の推定値Yjが許容含有量範囲から外れる確率の代わりに、成分含有量の推定値Yjが許容含有量範囲に入る確率(合格率)として評価関数に組み入れる場合には、最大化すべき合格率と最小化すべきスクラップ銘柄の費用とは異なる符号を持つように、評価関数を定式化するとよい。
【0107】
以上の説明では、品質(成分含有量)とトレードオフの関係にある因子としてスクラップ銘柄の費用のみを取り上げたが、スクラップ原料コストの他に、スクラップ銘柄の在庫量等の他の因子を加えてもよい。例えばスクラップ銘柄の在庫量を目的関数の因子に加える場合、現時点の在庫量の少ないスクラップ銘柄(もしくは希少な銘柄)を配合するとペナルティが与えられるように目的関数を設定することが考えられる。
【0108】
以上、本実施形態に係る配合計画支援方法における配合計画の支援処理について説明した。
【0109】
以上の説明では、推定を行う都度、複数の実績データを式(1)にフィッティングさせる重回帰処理を行うことで、推定モデルを生成した。すなわち、重回帰処理では、新たな配合計画に対して、毎回、それより過去のある一定数の複数チャージの実績を抽出して、新たな推定モデルを作成(すなわち、偏回帰係数の推定)する処理を行っていた。つまり、直前までの推定で用いた推定モデルは再利用していなかった。
【0110】
一方、推定モデルを生成する方法は上述の例に限定されず、直前の推定で用いた推定モデルを活用するようにしてもよい。
【0111】
例えば、ベイズ推定の枠組みを用いて、次のように逐次的にモデルを生成することができる。銘柄別成分濃度推定部121において、直前のチャージの成分を推定するために生成された推定モデルの銘柄別成分濃度の確率分布を事前分布として記憶部170に記憶しておく。当該チャージを溶解後、成分測定された実績について、上記事前分布に対する尤度を計算し、上記事前分布に掛け合わせることで、事後分布を得る。この事後分布は、次のチャージの成分を推定するためのモデルの、銘柄別成分濃度の確率分布として用いることができる。これは同時に、その次のチャージの成分を推定するための推定モデルの、銘柄別成分濃度の事前分布として用いられることになるので、記憶部170に記憶する。以上の過程をチャージ毎に繰り返すと、各チャージの成分測定実績が出る毎に、銘柄別成分濃度の確率分布を逐次的に更新していくことができる。
【0112】
なお、上述の、事前分布に尤度を掛け合わせ、事後分布を計算する方法として、例えば、公知のマルコフ連鎖モンテカルロ法を用いることができる。また、上記更新サイクルの1サイクル目は、過去のモデルの銘柄別成分濃度の確率分布を参照できないが、そこでは適当な事前分布を初期値として用いればよい。この初期値としては、非負の一様分布であってもよいし、過去の知見に基づいて各スクラップ銘柄の濃度分布を設定してもよい。
【0113】
以上のように過去のチャージの成分を推定するために生成されたモデルをも用いれば、各銘柄別成分濃度の時系列変化をより的確に考慮できるため、精度の高いモデルを得ることができる。
【0114】
なお、上述のベイズ推定においては、次のチャージの成分を推定するためのモデルの、銘柄別成分濃度の確率分布の事前分布として、直前のチャージの成分を推定するために生成されたモデルの銘柄別成分濃度の確率分布を用いた。この事前分布には、投入されるスクラップに関する銘柄以外の事前知識をも活用できる。例えばスクラップの荷姿など外観情報は、トランプエレメントの含有量など品質と相関があることが知られている。スクラップの入荷時に別途スクラップの外観をカメラで撮影しておけば、その画像情報から予測される成分濃度範囲(確率分布)を事前知識として活用することができる。具体的な活用方法としては、直前のチャージの成分を推定するために生成されたモデルの銘柄別成分濃度の確率分布と、上記画像情報から予測される成分濃度の確率分布を掛け合わせることで得られる確率分布を、次のチャージの成分を推定するためのモデルの、銘柄別成分濃度の確率分布の事前分布として用いることができる。
【0115】
[4.ハードウェア構成]
図8に基づいて、本実施形態に係る配合計画支援装置100のハードウェア構成について説明する。
図8は、本実施形態に係る配合計画支援を実行する情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0116】
情報処理装置900は、プロセッサ(
図8ではCPU901)と、ROM903と、RAM905とを含む。また、情報処理装置900は、バス907と、入力I/F909と、出力I/F911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを含む。
【0117】
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能する。CPU901は、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体925に記録された各種プログラムに従って、情報処理装置900内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムあるいは演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラム、あるいは、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
【0118】
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バス、PCI Express(登録商標)などの外部バスに接続されている。
【0119】
入力I/F909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバー等の、ユーザが操作する操作手段である入力装置921からの入力を受け付けるインタフェースである。入力I/F909は、例えば、ユーザが入力装置921を用いて入力した情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路等として構成されている。入力装置921は、例えば、赤外線あるいはその他の電波を利用したリモートコントロール装置、あるいは、情報処理装置900の操作に対応したPDA等の外部機器927であってもよい。情報処理装置900のユーザは、入力装置921を操作し、情報処理装置900に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0120】
出力I/F911は、入力された情報を、ユーザに対して視覚的または聴覚的に通知可能な出力装置923へ出力するインタフェースである。出力装置923は、例えば、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプ等の表示装置であってもよい。あるいは、出力装置923は、スピーカ及びヘッドホン等の音声出力装置や、プリンター、移動通信端末、ファクシミリ等であってもよい。出力I/F911は、出力装置923に対して、例えば、情報処理装置900により実行された各種処理にて得られた処理結果を出力するよう指示する。具体的には、出力I/F911は、表示装置に対して情報処理装置900による処理結果を、テキストまたはイメージで表示するよう指示する。また、出力I/F911は、音声出力装置に対し、再生指示を受けた音声データ等のオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力するよう指示する。
【0121】
ストレージ装置913は、情報処理装置900の記憶部の1つであり、データ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶デバイス、SSD(Solid State Drive)等の半導体記憶デバイス、光記憶デバイスまたは光磁気記憶デバイス等により構成される。ストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラム、プログラムの実行により生成された各種データ、及び、外部から取得した各種データ等を格納する。
【0122】
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、情報処理装置900に内蔵あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されているリムーバブル記録媒体925に記録されている情報を読み出し、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されているリムーバブル記録媒体925に情報を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体925は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクまたは半導体メモリ等である。具体的には、リムーバブル記録媒体925は、CDメディア、DVDメディア、Blu-ray(登録商標)メディア、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体925は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
【0123】
接続ポート917は、機器を情報処理装置900に直接接続するためのポートである。接続ポート917は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、eSATA(external Serial Advanced Technology Attachment)、SAS(Serial Attached SCSI(Small Computer System Interface))ポート等である。情報処理装置900は、接続ポート917に接続された外部機器927から、直接各種データを取得したり外部機器927に各種データを提供したりすることができる。例えば接続ポート917を介して、アラーム情報を通知するための回転灯等のアラーム通知装置を接続してもよい。また、外部機器927として、NAS(Network Attached Storage)を接続し、記憶装置として用いてもよい。
【0124】
通信装置919は、例えば、通信網929に接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。通信装置919は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。例えば、通信装置919を介して、情報処理装置900を操作するためのコンピュータを接続することもできる。また、通信装置919に接続される通信網929は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成されている。例えば、通信網929は、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等である。
【0125】
以上、情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示した。上述の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されてもよく、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されてもよい。情報処理装置900のハードウェア構成は、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて適宜変更可能である。
【0126】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0127】
100 配合計画支援装置
110 実績データ取得部
120 推定モデル生成部
121 銘柄別成分濃度推定部
123 銘柄別成分濃度取得部
130 入力部
140 含有量推定部
141 類似実績データ抽出部
143 類似実績反映部
150 出力部
170 記憶部
180 配合計画調整部
900 情報処理装置
907 バス
913 ストレージ装置
915 ドライブ
917 接続ポート
919 通信装置
921 入力装置
923 出力装置
925 リムーバブル記録媒体
927 外部機器
929 通信網