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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037419
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
F04B39/00 106A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142283
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高山 裕基
(72)【発明者】
【氏名】安谷屋 拓
(72)【発明者】
【氏名】浜名 祥三
(72)【発明者】
【氏名】宮田 知明
【テーマコード(参考)】
3H003
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB05
3H003AC03
3H003CE02
3H003CF01
3H003CF06
(57)【要約】
【課題】クラスタブロックの内部に充填された樹脂中に空気が残留することを抑制する。
【解決手段】ステータは、引出線43と、引出線43に設けられる接続端子45と、接続端子45を収容するクラスタブロック46と、を備える。クラスタブロック46は、気密端子40が挿通される第1貫通孔47と、引出線43が挿通される第2貫通孔48と、樹脂Rが露出する第3貫通孔49と、を有するケース部材61と、接続端子45側への樹脂Rの流れを抑制する第1壁82と、第2貫通孔48の開口を塞ぐ第2壁81と、を有する蓋部材71と、を備える。第3貫通孔49は、第1壁82と第2壁81との間に向けて開口する。ケース部材61は、第3貫通孔49よりも開口面積が小さく、第1壁82と第2壁81との間に向けて開口する第4貫通孔50を有し、第1壁82と第2壁81との間には樹脂Rが充填されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮部と、
ステータと、ロータとを有し、前記圧縮部を駆動する電動モータと、
前記電動モータを駆動するインバータと、
前記圧縮部、前記電動モータ及び前記インバータを収容するハウジングと、
前記インバータと、前記電動モータとを、電気的に接続する気密端子と、を有し、
前記ステータは、
前記ステータに巻回されたコイルから引き出された引出線と、
前記引出線に設けられ、前記気密端子に電気的に接続される接続端子と、
前記接続端子を収容するクラスタブロックと、を備え、
前記クラスタブロックは、
前記接続端子に向けて前記気密端子が挿通される第1貫通孔と、前記引出線が挿通される第2貫通孔と、前記引出線を覆う樹脂が露出する第3貫通孔と、を有するケース部材と、
前記引出線を支持し、前記接続端子側への前記樹脂の流れを抑制する第1壁と、前記第2貫通孔の開口を塞ぐ第2壁と、を有する蓋部材と、を備え、
前記第3貫通孔は、前記第1壁と前記第2壁との間に向けて開口する電動圧縮機において、
前記ケース部材は、前記第3貫通孔よりも開口面積が小さく、前記第1壁と前記第2壁との間に向けて開口する第4貫通孔を有し、
前記第1壁と前記第2壁との間には前記樹脂が充填されていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記蓋部材は、前記第1壁と前記第2壁とを接続する延設部を有し、
前記第4貫通孔の開口は、前記延設部及び前記引出線の少なくとも一方を間に挟んで、前記第3貫通孔の開口とは反対側に設けられている請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記第1壁と前記第2壁とは、前記引出線を、前記第4貫通孔よりも前記第3貫通孔に近くなるように支持している請求項2に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記第4貫通孔には前記樹脂が充填されて露出している請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電動圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動する電動モータと、電動モータを駆動するインバータと、ハウジングと、インバータと電動モータとを、電気的に接続する気密端子と、を有する。電動モータは、ステータと、ロータとを有する。ハウジングは、圧縮部、電動モータ及びインバータを収容する。ステータは、ステータに巻回されたコイルから引き出された引出線と、引出線に設けられ、気密端子に電気的に接続される接続端子と、接続端子を収容するクラスタブロックと、を備える。クラスタブロックは、ケース部材と、蓋部材と、を備える。ケース部材は、接続端子に向けて気密端子が挿通される第1貫通孔と、引出線が挿通される第2貫通孔と、第3貫通孔と、を有する。蓋部材は、第1壁と、第2壁と、を有する。第3貫通孔は、第1壁と第2壁との間に向けて開口する。
【0003】
冷媒には、圧縮部等の電動圧縮機での摺動部位の潤滑を良好にするための潤滑油が含まれている。電気的な絶縁性の低い潤滑油は、接続端子とハウジングとを導通させる導体となり得るため、クラスタブロックの内部への冷媒の浸入を抑制することによって接続端子とハウジングとの間の絶縁を確保する必要がある。特許文献1に記載の電動圧縮機において、第1壁は、接続端子側への樹脂の流れを抑制している。第2壁は、第2貫通孔の開口を塞いでいる。これにより、第2貫通孔を介して生じるクラスタブロックの内部への冷媒の浸入の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6507270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第3貫通孔からクラスタブロックの内部に樹脂が充填される際、第1壁と第2壁との間に充填された樹脂中に空気が溜まるおそれがある。こうした空気が樹脂中に残ると、樹脂中の空気が残った箇所を介して冷媒がクラスタブロックの内部に浸入するおそれがあるため好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する電動圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮部と、ステータと、ロータとを有し、前記圧縮部を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するインバータと、前記圧縮部、前記電動モータ及び前記インバータを収容するハウジングと、前記インバータと、前記電動モータとを、電気的に接続する気密端子と、を有し、前記ステータは、前記ステータに巻回されたコイルから引き出された引出線と、前記引出線に設けられ、前記気密端子に電気的に接続される接続端子と、前記接続端子を収容するクラスタブロックと、を備え、前記クラスタブロックは、前記接続端子に向けて前記気密端子が挿通される第1貫通孔と、前記引出線が挿通される第2貫通孔と、前記引出線を覆う樹脂が露出する第3貫通孔と、を有するケース部材と、前記引出線を支持し、前記接続端子側への前記樹脂の流れを抑制する第1壁と、前記第2貫通孔の開口を塞ぐ第2壁と、を有する蓋部材と、を備え、前記第3貫通孔は、前記第1壁と前記第2壁との間に向けて開口する電動圧縮機において、前記ケース部材は、前記第3貫通孔よりも開口面積が小さく、前記第1壁と前記第2壁との間に向けて開口する第4貫通孔を有し、前記第1壁と前記第2壁との間には前記樹脂が充填されていることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、第3貫通孔からクラスタブロックの内部に樹脂が充填される際、第1壁と第2壁との間に充填された樹脂中に空気が溜まったとしても、そうした空気を第4貫通孔からクラスタブロックの外部に排出できる。したがって、クラスタブロックの内部に充填された樹脂中に空気が残留することを抑制できる。
【0008】
電動圧縮機において、前記蓋部材は、前記第1壁と前記第2壁とを接続する延設部を有し、前記第4貫通孔の開口は、前記延設部及び前記引出線の少なくとも一方を間に挟んで、前記第3貫通孔の開口とは反対側に設けられていてもよい。
【0009】
上記構成によれば、延設部と重なる箇所や引出線と重なる箇所は、第3貫通孔からクラスタブロックの内部に樹脂が充填される際に空気が残りやすいが、そうした空気を第4貫通孔からクラスタブロックの外部に排出できる。したがって、クラスタブロックの内部に充填された樹脂中に空気が残留することをさらに抑制できる。
【0010】
電動圧縮機において、前記第1壁と前記第2壁とは、前記引出線を、前記第4貫通孔よりも前記第3貫通孔に近くなるように支持していてもよい。
上記構成によれば、第3貫通孔よりも第4貫通孔に近い位置に引出線がある場合と比較して、引出線の位置が第3貫通孔に近くなる。そのため、第3貫通孔からクラスタブロックの内部に樹脂が充填される際、引出線の周りに樹脂が行き渡りやすくなる。したがって、引出線の周りに空気が残ることを抑制できるため、クラスタブロックの内部に充填された樹脂中に空気が残留することをさらに抑制できる。
【0011】
電動圧縮機において、前記第4貫通孔には前記樹脂が充填されて露出していてもよい。
上記構成によれば、第4貫通孔に樹脂が充填されて露出していることを作業者が目視することにより、クラスタブロックの内部に十分な量の樹脂が充填されたことを作業者が確認できる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、クラスタブロックの内部に充填された樹脂中に空気が残留することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態における電動圧縮機の断面図である。
図2】クラスタブロックの上面図である。
図3図5の3-3線における断面図である。
図4】クラスタブロック、接続端子、及び引出線の分解斜視図である。
図5】クラスタブロックの側面図である。
図6】クラスタブロックの斜視図である。
図7】クラスタブロックの一部を拡大して示す斜視図である。
図8】蓋部材の斜視図である。
図9】クラスタブロックの上面図である。
図10】クラスタブロックの内部への樹脂の充填を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、電動圧縮機を具体化した実施形態を図面にしたがって説明する。
<電動圧縮機の全体構成>
図1に示すように、電動圧縮機10は、ハウジング11を有している。ハウジング11は、吐出ハウジング12と、モータハウジング13と、インバータケース14と、を有している。吐出ハウジング12、モータハウジング13、及びインバータケース14は、金属製であり、例えば、アルミニウム製である。
【0015】
モータハウジング13は、板状の端壁13aと、端壁13aの外周部から筒状に延びる周壁13bと、を有している。吐出ハウジング12は、筒状である。吐出ハウジング12は、モータハウジング13の周壁13bにおける端壁13aとは反対側の端部に連結されている。インバータケース14は、筒状である。インバータケース14は、モータハウジング13の端壁13aに連結されている。そして、モータハウジング13の端壁13aと、インバータケース14と、によって収容空間S1が区画されている。
【0016】
モータハウジング13の端壁13aの中央部には、円筒状のボス部13cが設けられている。ボス部13cの軸線は、モータハウジング13の周壁13bの軸線に一致している。また、モータハウジング13の端壁13aには、貫通孔13hが形成されている。貫通孔13hは、モータハウジング13の端壁13aを厚み方向に貫通している。貫通孔13hは、ボス部13cよりも周壁13b寄りに位置している。
【0017】
電動圧縮機10は、回転軸15と、圧縮部16と、電動モータ20と、インバータ17と、を有している。回転軸15、圧縮部16、及び電動モータ20は、モータハウジング13内に収容されている。インバータ17は、収容空間S1に収容されている。したがって、ハウジング11は、圧縮部16、電動モータ20及びインバータ17を収容する。回転軸15の回転軸線L1が延びる方向を軸線方向Xという。モータハウジング13の周壁13bの軸線は、軸線方向Xに延びている。なお、軸線方向Xに直交する方向であって、かつ互いに直交する方向を第1方向Y及び第2方向Zという。
【0018】
圧縮部16は、固定スクロール16aと、可動スクロール16bと、を備えている。固定スクロール16aは、モータハウジング13に固定されている。可動スクロール16bは、固定スクロール16aに対向配置されている。圧縮部16は、回転軸15が回転することによって駆動する。圧縮部16は、駆動することによって冷媒を圧縮する。固定スクロール16aと可動スクロール16bとの間には容積変更可能な圧縮室S2が区画されている。固定スクロール16aと吐出ハウジング12との間には、吐出室S3が区画されている。圧縮室S2の容積変更により圧縮された冷媒は、吐出室S3に吐出される。電動モータ20は、回転軸15を回転させることにより、圧縮部16を駆動する。
【0019】
圧縮部16及び電動モータ20は、軸線方向Xに並んで配置されている。電動モータ20は、圧縮部16よりもモータハウジング13の端壁13a側に配置されている。圧縮部16、電動モータ20、及びインバータ17は、軸線方向Xでこの順に並んで配置されている。
【0020】
電動圧縮機10は、軸支部材18を備えている。軸支部材18は、圧縮部16と電動モータ20との間に配置されている。したがって、軸支部材18は、電動モータ20と圧縮部16との間の隔壁となっている。軸支部材18の中央部には、挿通孔18hが形成されている。軸支部材18の挿通孔18hの軸線は、ボス部13cの軸線に一致している。軸支部材18の挿通孔18hには、回転軸15の第1端部が挿通されている。軸支部材18の挿通孔18hと回転軸15の一端部との間には、ラジアルベアリング19bが設けられている。回転軸15の第1端部は、ラジアルベアリング19bを介して軸支部材18に回転可能に支持されている。また、回転軸15の第2端部は、ボス部13cの内側に挿入されている。ボス部13cと回転軸15の第2端部との間には、ラジアルベアリング19aが設けられている。回転軸15の第2端部は、ラジアルベアリング19aを介してボス部13cに回転可能に支持されている。
【0021】
電動モータ20は、ステータ22と、ロータ21とを有している。ロータ21は、円筒状のロータコア21aを有している。ロータコア21aは、回転軸15に止着されている。ロータコア21aには、複数の図示しない永久磁石が埋設されている。
【0022】
ステータ22は、環状のステータコア23を有している。ロータ21は、ステータコア23の内側に配置されている。ステータコア23は、モータハウジング13の周壁13bの内周面に固定されている。したがって、ステータコア23は、ハウジング11の内周面に固定されている。ステータ22は、例えば、焼き嵌めによってステータコア23をモータハウジング13の周壁13bの内周面に嵌め込むことにより、ハウジング11に組み付けられている。
【0023】
ステータコア23は、第1端面23aと、第2端面23bと、を有している。第1端面23aは、ステータコア23の軸線の延びる方向における一方に位置する端面である。第2端面23bは、ステータコア23の軸線の延びる方向における他方に位置する端面である。ステータコア23は、第1端面23aがモータハウジング13の端壁13aと対向するように、モータハウジング13内に配置されている。したがって、第1端面23aは、第2端面23bよりもインバータ17寄りに位置している。第2端面23bは、第1端面23aよりも圧縮部16寄りに位置している。
【0024】
ステータコア23には、U相、V相、及びW相それぞれの複数のコイル28U,28V,28Wが巻回されている。すなわち、ステータ22には、コイル28U,28V,28Wが巻回されている。ステータコア23の第1端面23aからは、各相のコイル28U,28V,28Wの一部である第1コイルエンド28aが突出している。ステータコア23の第2端面23bからは、各相のコイル28U,28V,28Wの一部である第2コイルエンド28bが突出している。
【0025】
ステータ22は、コネクタ44を備えている。コネクタ44は、モータハウジング13内に収容されている。コネクタ44は、モータハウジング13内の第1コイルエンド28aが位置する領域であって、かつステータコア23の第1端面23aとモータハウジング13の端壁13aとの間の領域に設けられている。
【0026】
<気密端子>
図1及び図2に示すように、電動圧縮機10は、気密端子40を有している。気密端子40は、ハウジング11内に収容されている。気密端子40は、各相のコイル28U,28V,28Wに対応する3つの導電部材41を有している。各導電部材41は、直線状に延びる円柱状の金属端子である。各導電部材41の軸線は、軸線方向Xに延びている。各導電部材41の第1端は、収容空間S1内においてインバータ17と電気的に接続されている。これにより、気密端子40はインバータ17と電気的に接続されている。各導電部材41の第2端は、貫通孔13hを介して収容空間S1からモータハウジング13内に突出している。
【0027】
図1に示すように、気密端子40は、支持プレート42を有している。支持プレート42は、3つの導電部材41を互いに絶縁した状態で支持している。支持プレート42は、収容空間S1内において、端壁13aの外面における貫通孔13hの周囲に固定されている。
【0028】
<引出線>
図1及び図2に示すように、コネクタ44は、引出線43を備えている。言い換えると、ステータ22は、引出線43を備えている。引出線43は、ステータ22に巻回されたコイル28U,28V,28Wから引き出されている。引出線43は、各相のコイル28U,28V,28Wの第1コイルエンド28aから引き出されている。引出線43は、各相に対応して1つずつ電動モータ20から引き出されている。したがって、電動モータ20からは引出線43が3つ引き出されている。各相の引出線43の一部は、円筒状の絶縁性のチューブ部材30によって覆われている。各相の引出線43のその他の部分は、チューブ部材30から露出している。
【0029】
<接続端子>
図1に示すように、コネクタ44は、接続端子45を備えている。言い換えると、ステータ22は、接続端子45を備えている。接続端子45は引出線43に設けられている。各相の引出線43に接続端子45が1つずつ設けられている。したがって、ステータ22は、接続端子45を3つ有する。なお、図1では、1つの接続端子45のみを図示している。3つの接続端子45は、各相のコイル28U,28V,28Wに対応する。
【0030】
接続端子45は気密端子40に電気的に接続されている。これにより、気密端子40は、インバータ17と、電動モータ20とを電気的に接続している。インバータ17からの電力は、各導電部材41、各接続端子45、及び各引出線43を介して電動モータ20に供給される。これにより、電動モータ20が駆動する。したがって、インバータ17は、電動モータ20を駆動する。電動モータ20の駆動に伴って圧縮部16が駆動することにより、圧縮部16が冷媒を圧縮する。
【0031】
図3に示すように、各接続端子45は、各接続端子45の第1方向Yの一端に位置する第1接続部45aと、各接続端子45の第1方向Yの他端に位置する第2接続部45bと、を有する。第1接続部45aは筒状である。第1接続部45aの内部に導電部材41が挿入されることにより、接続端子45と気密端子40とは互いに電気的に接続されている。第2接続部45bは、第1接続部45aから第1方向Yに延びている。第2接続部45bには引出線43の端部が接続されている。これにより、接続端子45は、気密端子40と引出線43とを電気的に接続している。
【0032】
<クラスタブロック>
コネクタ44は、クラスタブロック46を備えている。言い換えると、ステータ22は、クラスタブロック46を備えている。クラスタブロック46は、接続端子45を収容する。3つの接続端子45はクラスタブロック46の内部に固定されている。
【0033】
クラスタブロック46は、ケース部材61と、蓋部材71と、を備えている。ケース部材61及び蓋部材71は、絶縁性の部材である。
<ケース部材>
ケース部材61は、第1ケース部62と、第2ケース部63と、を有する。第1ケース部62は、第1方向Yに延びる筒状である。第2ケース部63は、第1ケース部62の第1方向Yの両端部の開口のうち、片方の端部を塞いでいる。ケース部材61は、第1貫通孔47と、第2貫通孔48と、第3貫通孔49と、を有する。
【0034】
図4に示すように、第1ケース部62は、一対の第1ケース壁62aと、一対の第2ケース壁62bと、を有する。一対の第1ケース壁62a及び一対の第2ケース壁62bは平板状である。一対の第1ケース壁62aの長手と、一対の第2ケース壁62bの長手と、は第1方向Yに延びている。一対の第2ケース壁62bは、一対の第1ケース壁62aの間で立設するとともに、一対の第1ケース壁62aの第2方向Zの端部同士を繋いでいる。
【0035】
図2及び図3に示すように、第1貫通孔47は、第1ケース部62に3つ形成されている。3つの第1貫通孔47は、第1ケース部62における第1方向Yに片寄った位置にある。3つの第1貫通孔47は、一対の第1ケース壁62aのうちの1つを貫通している。
【0036】
ケース部材61は、3つの第1筒部62cを有している。各第1筒部62cは、第1貫通孔47が形成された第1ケース壁62aの外面から延びる円筒状である。第1筒部62cは、第1貫通孔47の周りを囲んでいる。各第1筒部62cの内部は、3つの第1貫通孔47と連通している。
【0037】
図3に示すように、第1貫通孔47には、接続端子45に向けて気密端子40が挿通されている。詳細には、気密端子40における導電部材41の端部が、第1筒部62cの内部を介して第1貫通孔47に挿通される。第1貫通孔47に挿通された導電部材41の端部は、クラスタブロック46内にて、第1接続部45aの内部に挿入されている。第1筒部62cの内部において、導電部材41の軸線は第1筒部62cの軸線と平行となっている。
【0038】
各第1筒部62cの内部には、筒状のシーリング部材41aが挿入されている。シーリング部材41aの外周面は、第1筒部62cの内周面に接している。シーリング部材41aの内周面は、第1筒部62cの内部にて導電部材41の外周面に接している。したがって、導電部材41及びシーリング部材41aによって第1筒部62cの内部は塞がれるため、第1筒部62c及び第1貫通孔47を介したクラスタブロック46の内部と外部との連通が遮断されている。第1貫通孔47を介したクラスタブロック46の内部への冷媒の浸入を抑制できる。
【0039】
第2貫通孔48は、第1ケース部62のうちで、第1方向Yにおける第2ケース部63とは反対側に形成されている。第2貫通孔48には、引出線43が挿通されている。各相の引出線43のうち、チューブ部材30によって覆われている部分が、第2貫通孔48を介してクラスタブロック46の内部と外部との間で延びている。
【0040】
図5に示すように、第2貫通孔48は、一対の第1ケース壁62aと一対の第2ケース壁62bとで区画形成されている。第2貫通孔48は、第1方向Yから見て略矩形状をなす。
【0041】
第1ケース部62は、3つの凸部66を有している。3つの凸部66は、一対の第1ケース壁62aのうち、一方の第1ケース壁62aの内面から他方の第1ケース壁62aに向かって突出している。3つの凸部66は、第2方向Zに互いに離れている。各凸部66は、第2貫通孔48の内部に位置する。
【0042】
各凸部66の突出端には、溝64が形成されている。溝64は、第1方向Yから見て円弧状をなすとともに、湾曲面によって形成されている。溝64は、チューブ部材30の外周面に沿う形状である。溝64は、第1方向Yに延びるように凸部66に形成されている。
【0043】
図3及び図4に示すように、第3貫通孔49は、第1ケース部62に形成されている。第3貫通孔49は、第1ケース部62において、第1方向Yでの第1貫通孔47とは反対側に片寄った位置にある。第3貫通孔49は、一対の第1ケース壁62aのうち、第1貫通孔47が形成されない第1ケース壁62aを貫通している。
【0044】
ケース部材61は、第2筒部62dを有している。第2筒部62dは、第1ケース部62の外面から延びる筒状である。第2筒部62dは、第3貫通孔49の周りを囲んでいる。第2筒部62dの内部は、第3貫通孔49と連通している。
【0045】
図4及び図6に示すように、第2筒部62d及び第3貫通孔49を介して、クラスタブロック46の外部から内部に樹脂Rが充填されている。したがって、第3貫通孔49は樹脂Rを充填するためのものである。クラスタブロック46の内部において、樹脂Rは引出線43を覆っている。第3貫通孔49は、引出線43を覆う樹脂Rが露出する。樹脂Rは例えば接着剤である。クラスタブロック46の内部と、第3貫通孔49の内部と、第2筒部62dの内部と、が樹脂Rで満たされている。
【0046】
図4及び図7に示すように、一対の第2ケース壁62bの各々には、係合孔65が形成されている。係合孔65は、第2ケース壁62bを貫通する貫通孔である。係合孔65は、第2ケース壁62bの第1方向Yの両端部のうち、第2貫通孔48を区画する端部に位置する。
【0047】
<蓋部材>
図8に示すように、蓋部材71は、3つの載置部72を有する。各載置部72は、軸線方向Xから見て、第1方向Yに長手が延びる略矩形状である。各載置部72は、第1載置部73及び第2載置部74を有している。第1載置部73と第2載置部74とは、第1方向Yにおいて隣り合っている。第1載置部73には挿通孔75が形成されている。第1載置部73の挿通孔75は、第1載置部73を軸線方向Xに貫通する貫通孔である。
【0048】
図3に示すように、各載置部72には、1つの接続端子45と、その接続端子45に接続される引出線43と、が載置されている。接続端子45及び引出線43が載置部72に載置された状態で、蓋部材71は第2貫通孔48からケース部材61の内部に挿入されている。そのため、第2貫通孔48は、接続端子45及び引出線43を載置した状態の3つの載置部72が挿通可能な大きさに設定されている。各載置部72は、ケース部材61の内部に位置している。
【0049】
各載置部72の第1載置部73には、接続端子45が載置されている。各載置部72の第2載置部74には、チューブ部材30で覆われた引出線43が載置されている。各載置部72の挿通孔75は、ケース部材61の第1貫通孔47と、接続端子45の内部と、に軸線方向Xにおいて対向している。第1貫通孔47に挿入された導電部材41は、各載置部72の挿通孔75を介して接続端子45の内部に挿通されている。
【0050】
図8に示すように、蓋部材71は一対の壁80を有している。一対の壁80の一方を第1壁82といい、他方を第2壁81という。すなわち、蓋部材71は、第1壁82と、第2壁81と、を有する。第1壁82と第2壁81とは第1方向Yにおいて互いに対向している。第1壁82及び第2壁81の各々は、第1方向Yに厚みのある板状である。第1壁82は、第1壁82の外縁に沿って延びる外周面82aを有する。第2壁81は、第2壁81の外縁に沿って延びる外周面81aを有する。
【0051】
図5に示すように、第2壁81は、第1壁82と共に第2貫通孔48から第1ケース部62の内部に挿入されている。したがって、一対の壁80は、第2貫通孔48から挿入されている。
【0052】
第2壁81の外周面81aは、一対の第1ケース壁62aの内面と一対の第2ケース壁62bの内面とに沿って延びているとともに、これら内面に接している。第2壁81は、第2貫通孔48に嵌合されている。したがって、第2壁81は、第2貫通孔48の開口を塞いでいる。第2貫通孔48を介したクラスタブロック46の内部と外部との連通が遮断されている。第2壁81が第2貫通孔48に嵌合された状態で、第2壁81の第1方向Yにおける一端面は、第1ケース部62における第2貫通孔48を囲む第1方向Yの端面と面一となっている。第2壁81の第1方向Yにおける他端面は、第1ケース部62の内部に位置している。
【0053】
図5及び図8に示すように、第2壁81は3つの第1溝83を有している。各第1溝83は、第2壁81の軸線方向Xの端部に位置する。各第1溝83は、第2壁81の外周面81aから軸線方向Xに凹んで形成されている。3つの第1溝83は、第2方向Zに互いに離れている。各第1溝83は、第2壁81の厚み方向に第2壁81を貫通している。第1溝83は、第1方向Yから見て円弧状をなすとともに、湾曲面によって形成されている。第1溝83は、チューブ部材30の外周面に沿う形状である。第1溝83は、第1方向Yに延びるように第2壁81に形成されている。
【0054】
図5に示すように、蓋部材71の第1溝83は、ケース部材61の溝64と共に引出線挿通孔90を区画形成している。引出線挿通孔90は、第1方向Yからみて円形をなす。引出線挿通孔90には、チューブ部材30によって覆われた引出線43が挿通されている。引出線挿通孔90の径は、チューブ部材30の外径よりも小さい。そのため、引出線挿通孔90を構成する溝64と第1溝83とによって、チューブ部材30は外側から押圧される。チューブ部材30の外周面は溝64と第1溝83に接している。したがって、蓋部材71は、引出線43を支持している。引出線挿通孔90にて、チューブ部材30に覆われた引出線43は、ケース部材61と蓋部材71とで支持されている。
【0055】
図8に示すように、第1壁82は、各載置部72の第1方向Yにおける端部に位置している。すなわち、蓋部材71は3つの第1壁82を有している。各第1壁82は、第2溝84を有している。第2溝84は、各第1壁82の軸線方向Xの端部に位置する。第2溝84は、第1壁82の外周面82aから軸線方向Xに凹んで形成されている。第2溝84は、各第1壁82の厚み方向に第1壁82を貫通している。第2溝84は、第1方向Yから見て円弧状をなすとともに、湾曲面によって形成されている。第2溝84は、チューブ部材30の外周面に沿う形状である。第2溝84は、第1方向Yに延びるように第1壁82に形成されている。
【0056】
各第2溝84は第1溝83と第1方向Yにおいて対向している。チューブ部材30に覆われた引出線43は、第1溝83と第2溝84とに載置されている。これにより、第2溝84は、チューブ部材30に覆われた引出線43を第1溝83と共に支持している。したがって、第1壁82と第2壁81とは、引出線43を支持している。
【0057】
図3に示すように、蓋部材71が第2貫通孔48からケース部材61の内部に挿入されると、第1壁82の外周面82aと第2壁81の外周面81aとが第1ケース部62の内面に接する。チューブ部材30に覆われた引出線43のうち、第1溝83と溝64との間に位置する部分は、第2壁81によって第1ケース部62に押し付けられる。チューブ部材30に覆われた引出線43のうち、第2溝84と第1ケース部62の内面との間に位置する部分は、第1壁82によって第1ケース部62に押し付けられる。これにより、ケース部材61の内部のうち、第1方向Yにおける第1壁82と第2壁81との間に充填空間91が区画形成される。
【0058】
第1壁82及び第2壁81は、第1方向Yにおける第2貫通孔48と接続端子45との間に位置する。第3貫通孔49は、第1壁82と第2壁81との間に向けて開口する。そのため、充填空間91は、第3貫通孔49に連通する。第3貫通孔49から充填された樹脂Rは、充填空間91に充填される。第1壁82は、接続端子45側への樹脂Rの流れを抑制する。一対の壁80は、第2貫通孔48と接続端子45との間で、第3貫通孔49から充填された樹脂Rを塞き止める。第1壁82と第2壁81との間には樹脂Rが充填されている。クラスタブロック46の内部のうち、第1方向Yにおける第2貫通孔48と接続端子45との間が樹脂Rによって封止される。第2貫通孔48からクラスタブロック46の内部の接続端子45に向けて冷媒が浸入することを抑制できる。
【0059】
図4及び図7に示すように、第2壁81には、係合凸部85が形成されている。係合凸部85は、第2壁81の第2方向Zの両端部に位置するとともに、第2壁81の外周面81aから突出している。蓋部材71が第2貫通孔48からケース部材61の内部に挿入されると、係合凸部85が第1ケース部62の2つの係合孔65の各々に挿入されることにより、係合凸部85は係合孔65に係合される。これにより、蓋部材71は、ケース部材61に固定されている。
【0060】
図8に示すように、蓋部材71は、第1壁82と第2壁81とを接続する延設部86を有している。延設部86は第1壁82と第2壁81との間で第1方向Yに延びている。本実施形態の延設部86は、第2方向Zの一端に位置する1つの第1壁82と、第2方向Zの他端に位置する1つの第1壁82と、の各々から延びている。そのため、蓋部材71は延設部86を2つ有する。2つの延設部86は第2方向Zに互いに離れている。各延設部86は、軸線方向Xに直交するように延びる平板状である。
【0061】
<第4貫通孔>
図3及び図9に示すように、ケース部材61は、第4貫通孔50を有する。本実施形態においては、ケース部材61は第4貫通孔50を複数有する。各第4貫通孔50は、第1ケース部62に形成されている。各第4貫通孔50は、第1ケース部62のうち、第1方向Yでの第1貫通孔47とは反対側に片寄った位置にある。
【0062】
第4貫通孔50は、第3貫通孔49よりも開口面積が小さい。各第4貫通孔50は、一対の第1ケース壁62aのうち、第1貫通孔47が形成される第1ケース壁62aを貫通している。第4貫通孔50が形成される第1ケース壁62aは、第3貫通孔49が形成される第1ケース壁62aとは異なる。すなわち、第4貫通孔50は、ケース部材61のうち、軸線方向Xにおいて第3貫通孔49とは反対側に設けられている。第4貫通孔50は、第3貫通孔49と軸線方向Xにおいて対向している。本実施形態では、ケース部材61が有する全ての第4貫通孔50が、第3貫通孔49と軸線方向Xにおいて対向している。
【0063】
図3に示すように、第4貫通孔50の開口は、延設部86及び引出線43の少なくとも一方を間に挟んで、第3貫通孔49の開口とは反対側に設けられている。図3に示す第4貫通孔50の開口は、第3貫通孔49の開口との間に、延設部86及び引出線43の両方を挟んでいる。
【0064】
第4貫通孔50は、引出線43から軸線方向Xに離れて位置している。第3貫通孔49のケース部材61内への開口付近で引出線43は延びている。そのため、第4貫通孔50は、第3貫通孔49よりも引出線43から軸線方向Xに離れている。言い換えると、第1壁82と第2壁81とは、引出線43を、第4貫通孔50よりも第3貫通孔49に近くなるように支持している。
【0065】
第4貫通孔50は、第1壁82と第2壁81との間に向けて開口する。充填空間91は、第4貫通孔50に連通する。第3貫通孔49から充填空間91に充填された樹脂Rは、第4貫通孔50の内部にまで至っている。これにより、各第4貫通孔50には樹脂Rが充填されて露出している。第4貫通孔50に充填された樹脂Rの一部は、クラスタブロック46の外部にて盛り上がるように第4貫通孔50から露出する。こうして第4貫通孔50から露出する樹脂Rを露出部R1という。露出部R1は、クラスタブロック46の外部から視認可能である。なお、露出部R1は、複数の第4貫通孔50のうち、一部の第4貫通孔50から露出してもよいし、全ての第4貫通孔50から露出してもよい。
【0066】
<樹脂の充填方法>
クラスタブロック46の内部への樹脂Rの充填に際しては、接続端子45とチューブ部材30に覆われた引出線43とが載置部72に載置された状態で、蓋部材71が第2貫通孔48からケース部材61の内部に挿入される。これにより、クラスタブロック46の内部のうち、第3貫通孔49及び第4貫通孔50に連通した位置に、一対の壁80の間の充填空間91が形成される。
【0067】
図10に示すように、ノズル92によって樹脂Rの充填が行われる。樹脂Rが充填される際、第3貫通孔49が重力方向の上方に向くように、ケース部材61の姿勢は保持される。第2筒部62dの内部にノズル92の先端が挿入された状態で、ノズル92から第3貫通孔49を介して充填空間91への樹脂Rの充填が行われる。樹脂Rの充填は、ノズル92の位置を変更しながら、第3貫通孔49の複数箇所を介して行ってもよい。
【0068】
図3及び図10に示すように、第3貫通孔49から充填された樹脂Rは、自重により充填空間91に広がる。樹脂Rは、第3貫通孔49に近接するチューブ部材30の周りを流れる。これにより、チューブ部材30に覆われた引出線43は、樹脂Rを介してクラスタブロック46に固定される。チューブ部材30同士の間を介して、樹脂Rはチューブ部材30よりも重力方向の下方に流れる。
【0069】
充填空間91から第2貫通孔48へ向かう樹脂Rの流れは、第2壁81によって塞き止められる。充填空間91から接続端子45へ向かう樹脂Rの流れは、第1壁82によって塞き止められる。したがって、一対の壁80は、第2貫通孔48と接続端子45との間で、第3貫通孔49から充填された樹脂Rを塞き止める。樹脂Rは、充填空間91に広がりつつ、延設部86の周りを流れる。延設部86同士の間を介して、樹脂Rは、充填空間91のうち、延設部86よりも重力方向の下方に位置する部分に流れる。
【0070】
充填空間91への樹脂Rの充填の際には、樹脂Rが流れにくい箇所に空気が溜まることがある。第4貫通孔50は充填空間91に連通しているため、充填空間91に溜まった空気は第4貫通孔50を介してクラスタブロック46の外部に排出可能である。すなわち、第4貫通孔50は、第1壁82と第2壁81との間に溜まった空気を抜くものである。
【0071】
とくに、空気は、樹脂Rが充填される第3貫通孔49から離れた位置にて溜まりやすい。第4貫通孔50は、第3貫通孔49が形成される第1ケース壁62aに対して軸線方向Xに対向する第1ケース壁62aに形成されている。第4貫通孔50は、充填空間91のうちで空気が溜まりやすい箇所である第3貫通孔49から離れた箇所において、クラスタブロック46の内部に開口する。そのため、第1壁82と第2壁81との間に溜まった空気は、第4貫通孔50を介してクラスタブロック46の外部に抜けやすい。
【0072】
樹脂Rは、充填空間91から第4貫通孔50の内部に流れる。第4貫通孔50の内部に充填された樹脂Rの一部は、露出部R1として第4貫通孔50からクラスタブロック46の外部に露出する。クラスタブロック46の内部への樹脂Rの充填が完了すると、充填された樹脂Rが熱硬化される。
【0073】
[作用及び効果]
上記実施形態によれば以下の作用及び効果を得ることができる。
(1)ケース部材61は、第1壁82と第2壁81との間に向けて開口する第4貫通孔50を有する。第1壁82と第2壁81との間には樹脂Rが充填されている。そのため、第3貫通孔49からクラスタブロック46の内部に樹脂Rが充填される際、第1壁82と第2壁81との間に充填された樹脂R中に空気が溜まったとしても、そうした空気を第4貫通孔50からクラスタブロック46の外部に排出できる。したがって、クラスタブロック46の内部に充填された樹脂R中に空気が残留することを抑制できる。
【0074】
(2)蓋部材71は、第1壁82と第2壁81とを接続する延設部86を有する。第4貫通孔50の開口は、延設部86及び引出線43の少なくとも一方を間に挟んで、第3貫通孔49の開口とは反対側に設けられている。延設部86と重なる箇所や引出線43と重なる箇所は、第3貫通孔49からクラスタブロック46の内部に樹脂Rが充填される際に空気が残りやすいが、そうした空気を第4貫通孔50からクラスタブロック46の外部に排出できる。したがって、クラスタブロック46の内部に充填された樹脂R中に空気が残留することをさらに抑制できる。
【0075】
(3)第1壁82と第2壁81とは、引出線43を、第4貫通孔50よりも第3貫通孔49に近くなるように支持している。第3貫通孔49よりも第4貫通孔50に近い位置に引出線43がある場合と比較して、引出線43の位置が第3貫通孔49に近くなる。そのため、第3貫通孔49からクラスタブロック46の内部に樹脂Rが充填される際、引出線43の周りに樹脂Rが行き渡りやすくなる。したがって、引出線43の周りに空気が残ることを抑制できるため、クラスタブロック46の内部に充填された樹脂R中に空気が残留することをさらに抑制できる。
【0076】
(4)第4貫通孔50には樹脂Rが充填されて露出している。そのため、第4貫通孔50に樹脂Rが充填されていることを作業者が目視することにより、クラスタブロック46の内部に十分な量の樹脂Rが充填されたことを作業者が確認できる。
【0077】
(5)ケース部材61は、第3貫通孔49と連通する第2筒部62dを有する。そのため、第3貫通孔49から樹脂Rが充填される際、第3貫通孔49からクラスタブロック46の外部へと樹脂Rが溢れても、この樹脂Rを第2筒部62dによって塞き止めることができる。したがって、クラスタブロック46の内部への樹脂Rの充填の作業効率を向上させることができる。
【0078】
(6)ケース部材61には係合孔65が形成されている。蓋部材71は係合凸部85を有する。蓋部材71が第2貫通孔48からケース部材61の内部に挿入されるとき、係合凸部85が係合孔65の各々に挿入されることにより、係合凸部85は係合孔65に係合される。これにより、蓋部材71はケース部材61に固定されるため、ケース部材61から蓋部材71が抜けることを抑制できる。
【0079】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0080】
○ 接続端子45及び引出線43の数は、コイル28U,28V,28Wの相数に応じて適宜変更してよい。接続端子45及び引出線43の数の変更に応じて、蓋部材71における載置部72の数を変更してもよい。
【0081】
○ 係合孔65及び係合凸部85の形状及び数は適宜変更可能である。ケース部材61から係合孔65を省略してもよい。蓋部材71から係合凸部85を省略してもよい。
○ ケース部材61から第2筒部62dを省略してもよい。
【0082】
○ ケース部材61から第1筒部62cを省略してもよい。この場合は、例えば、導電部材41と共にシーリング部材41aを第1貫通孔47に挿入することにより、第1貫通孔47を塞いでもよい。
【0083】
○ 第4貫通孔50には樹脂Rが充填されていなくてもよい。
○ 第1壁82と第2壁81とは、引出線43を、第3貫通孔49よりも第4貫通孔50に近くなるように支持してもよい。第1壁82と第2壁81とは、引出線43に対する距離が第3貫通孔49と第4貫通孔50とで同じ距離となるように、引出線43を支持してもよい。
【0084】
○ 延設部86及び引出線43の両方ともが、第3貫通孔49の開口と第4貫通孔50の開口との間に挟まれていなくてもよい。
○ 蓋部材71に形成される延設部86の形状および数は適宜変更可能である。蓋部材71から延設部86を省略してもよい。
【0085】
○ 第1貫通孔47と第3貫通孔49とは同じ第1ケース壁62aに形成されていてもよい。
○ 第4貫通孔50は、ケース部材61のうち、軸線方向Xにおいて第3貫通孔49と対向する位置からずれた位置に形成されてもよい。要するに、第4貫通孔50は、ケース部材61のうち、第1壁82と第2壁81との間に向けて開口できる位置に形成されていればよい。この場合の第4貫通孔50によっても、第1壁82と第2壁81との間に溜まった空気を抜くことができる。
【0086】
○ 圧縮部16は、固定スクロール16aと可動スクロール16bとで構成されるタイプに限らず、例えば、ピストンタイプやベーンタイプなどに変更してもよい。
【符号の説明】
【0087】
R…樹脂、10…電動圧縮機、11…ハウジング、16…圧縮部、17…インバータ、20…電動モータ、21…ロータ、22…ステータ、28U,28V,28W…コイル、40…気密端子、43…引出線、45…接続端子、46…クラスタブロック、47…第1貫通孔、48…第2貫通孔、49…第3貫通孔、50…第4貫通孔、61…ケース部材、71…蓋部材、81…第2壁、82…第1壁、86…延設部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10