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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037426
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】木目調塗装用器具
(51)【国際特許分類】
   B05C 17/12 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
B05C17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142290
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】598149312
【氏名又は名称】株式会社オンテックス
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】小笹 公也
(72)【発明者】
【氏名】小笹 竜太朗
【テーマコード(参考)】
4F042
【Fターム(参考)】
4F042AA17
4F042AA20
4F042AB00
4F042FA24
4F042FA28
4F042FA62
(57)【要約】      (修正有)
【課題】木目調の塗装を容易に行うことができる器具を提供する。
【解決手段】本発明に係る木目調塗装用器具は、両端に持手10を備えた棒状体1と、棒状体1に設けられて棒状体1の長手方向へスライドすることが可能な2本の刷毛2と、持手10を掴んだ手の親指で操作することにより刷毛2に上記スライドをさせることができる操作部3とを備え、棒状体1を略水平にし塗装の対象面へ刷毛2の毛先を当て、棒状体1の長手方向を左右方向として当該左右方向と交差する前後方向について前方又は後方へ棒状体1を移動させることにより、同時に2本の線を前記対象面へ描くことができ、全移動中、刷毛2をスライドさせて2本の刷毛2間の間隔を変えることにより、前記線について木目を模した曲線として容易に描くことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部の夫々を持手とする棒状体と、前記棒状体に設けられて前記両持手の間に並ぶ少なくとも2本の刷毛とを備え、
両刷毛の毛先同士は、前記棒状体の周方向についてほぼ同じ位置にて前記棒状体の径外方向を向き、
左手で前記持手の一方を掴み右手で前記持手の他の一方を掴んで塗料を含んだ両毛先を塗料の塗布対象面へ向けることで、前記棒状体を前記塗付対象面から離した状態にて両毛先を前記塗付対象面へ当接させることができ、
前記当接中、前記塗付対象面に沿って前記棒状体の長手方向と交差する方向へ前記棒状体を移動させることにより、前記塗布対象面へ同時に少なくとも2本の線を描くことができ、前記移動を繰り返すことにより、前記塗布対象面へ複数の線を効率良く並べて描いて行くことができるものであり、
前記刷毛の少なくとも一方については、前記棒状体の長手方向に沿ってスライドができるよう前記棒状体へ取り付けられており、
前記移動中に、前記持手を掴んだ一方の手の指で前記刷毛を直接又は間接的に操作し前記スライドをさせることで、同時に描く前記2本の線間の間隔を変化させることができる木目調塗装用器具。
【請求項2】
両刷毛は何れも、前記スライドができるよう前記棒状体へ取り付けられたものである請求項1記載の木目調塗装用器具。
【請求項3】
前記持手を掴んだ手の指で操作することにより前記刷毛に前記スライドをさせることができる操作部と、付勢部とを備え、
前記付勢部は、前記刷毛を直接又は間接的に付勢し、前記操作部による操作を受けていないとき、前記刷毛を前記棒状体に対し前記棒状体の長手方向の定位置に配置するものであり、
前記付勢部の付勢に抗して前記指で前記操作部を操作することにより、前記刷毛に前記スライドをさせることができる請求項1又は2記載の木目調塗装用器具。
【請求項4】
前記刷毛の毛束は扁平に束ねられ、前記毛先の最大幅の幅方向は前記棒状体の長手方向に沿ったものであり、
前記棒状体は、中空に形成されたパイプであり、
前記両持手間において前記棒状体の外周面には、中空の前記棒状体の内部へ通じるスリットが前記棒状体の長手方向に沿って設けられ、
前記棒状体の中空の内部へ収容されて前記棒状体の長手方向に沿って変位することができる摺動子を備え、前記刷毛は前記スリットを通じて前記摺動子へ直接あるいは間接的に接続され、
前記操作部は、前記刷毛に設けられた押圧用の部材であるか或いは前記棒状体の外部へ配置され前記刷毛とは別に前記摺動子へ接続された押圧用の部材であり、
前記付勢部は、バネ等の弾性体を備え前記摺動子を付勢することで前記操作部による操作を受けていないとき、前記刷毛を前記棒状体に対し前記棒状体の長手方向の定位置に配置するものである請求項3記載の木目調塗装用器具。
【請求項5】
前記棒状体の持手間の間隔は、20cm~60cmであり、
前記操作部は、前記持手を掴んだ手の親指で操作することができるレバーである請求項3記載の木目調塗装用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木目調塗装用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
インテリアへ木材の質感を求めるニーズは、高い。このため建物の内装において、旧来より内壁の化粧に木材を使用することが一般的であった。
しかし、木材の現物を使用する場合、例えば10mを超える一枚物の板材は、その大きさ故、建物に搬入したり、購入先へ納品したり、室内へ設置するのは、困難な場合が多々ある。
【0003】
また木材の現物を内装に利用することは、森林資源の減少に拍車を懸けるものであり、更に環境保護の観点からも好ましくない。特に、木材の使用は、持続可能な社会の実現が叫ばれる現在の社会傾向に反するものでもある。
【0004】
このため、木材を模したフィルムを表面へ張った資材で、木材の現物に代替することも広く行われている。例えば特許文献1に示されたものは、木目調の壁紙を内壁に貼ることでインテリアに木材の質感を付与しようとするものである。
しかし、特許文献1へ示された木目模様のフィルムの製造については手間が掛かる上、補修も容易ではない。
【0005】
本発明者は、刷毛にて壁紙に塗料を塗付することにより当該壁紙へ木目を描いて木目調の壁紙を形成して当該壁紙を内装面へ貼ることで、上記の一枚物の板材の搬入、納品、室内への設置を容易にすることを検討した。
上記検討中、単に従来の刷毛を用いた塗料の壁紙への塗付では、木目の形成が効率よく行えず、また作業者の習熟度等によって形成される木目調の図柄の出来栄えにばらつきが生じることが分かった。
【0006】
一方、特許文献1の上記問題を解決することを目的として特許文献2では、塗料の塗布により被塗布部材の表面へ木目模様を形成する方法が提案されている。
特許文献2に示されたものは、被塗布部材の表面に木目模様の基調となる色の第1の塗料を塗布し、この第1の塗料が塗布された上記被塗布部材の表面に、上記第1の塗料とは異なる色であり、且つこの第1の塗料よりも100倍以上2000倍以下に溶剤で希釈された第2の塗料を、毛先が散らけて粗密ができた刷毛で塗布して、上記第1の塗料が塗布された上記被塗布部材の表面に木目模様を形成する塗布方法である。
【0007】
上記の特許文献2に開示されたものは、2種の塗料を用いることで木目模様を形成することを提案するものであり、刷毛を使用して上記各塗料を塗布することにて木目模様を被塗装部材である金属板表面へ形成するものである。
特許文献2の上記被塗装部材を壁紙として塗料の塗布にて木目模様を形成し、建物に搬入したり、購入先へ納品したり、室内へ設置するのを、容易にすることも考えられるが、特許文献2へ示されたものも、従来通りの刷毛の使用にて塗料を塗布するに止まり、刷毛を使用して効率よく簡便に木目模様を施すことを可能とするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4428602号公報
【特許文献2】特許第4264491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の発明者は鋭意研究の末、簡便に効率よく壁紙に塗料を塗布して木目模様を形成することができる塗付具(木目調塗装用器具)の提供を図る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、端部の夫々を持手とする棒状体と、前記棒状体に設けられて前記両持手の間に並ぶ少なくとも2本の刷毛とを備え、両刷毛の毛先同士は、前記棒状体の周方向についてほぼ同じ位置にて前記棒状体の径外方向を向き、左手で前記持手の一方を掴み右手で前記持手の他の一方を掴んで塗料を含んだ両毛先を塗料の塗布対象面へ向けることで、前記棒状体を前記塗付対象面から離した状態にて両毛先を前記塗付対象面へ当接させることができ、前記当接中、前記塗付対象面に沿って前記棒状体の長手方向と交差する方向へ前記棒状体を移動させることにより、前記塗布対象面へ同時に少なくとも2本の線を描くことができ、前記移動を繰り返すことにより、前記塗布対象面へ複数の線を効率良く並べて描いて行くことができるものであり、前記刷毛の少なくとも一方については、前記棒状体の長手方向に沿ってスライドができるよう前記棒状体へ取り付けられており、前記移動中に、前記持手を掴んだ一方の手の指で前記刷毛を直接又は間接的に操作し前記スライドをさせることで、同時に描く前記2本の線間の間隔を変化させることができる木目調塗装用器具を提供する。
また本発明では、両刷毛は何れも、前記スライドができるよう前記棒状体へ取り付けられた木目調塗装用器具を提供できた。
更に本発明は、前記持手を掴んだ手の指で操作することにより前記刷毛に前記スライドをさせることができる操作部と、付勢部とを備え、前記付勢部は、前記刷毛を直接又は間接的に付勢し、前記操作部による操作を受けていないとき、前記刷毛を前記棒状体に対し前記棒状体の長手方向の定位置に配置するものであり、前記付勢部の付勢に抗して前記指で前記操作部を操作することにより、前記刷毛に前記スライドをさせることができる木目調塗装用器具を提供できた。
また更に本発明では、前記刷毛の毛束は扁平に束ねられ、前記毛先の最大幅の幅方向は前記棒状体の長手方向に沿ったものであり、前記棒状体は、中空に形成されたパイプであり、前記両持手間において前記棒状体の外周面には、中空の前記棒状体の内部へ通じるスリットが前記棒状体の長手方向に沿って設けられ、前記棒状体の中空の内部へ収容されて前記棒状体の長手方向に沿って変位することができる摺動子を備え、前記刷毛は前記スリットを通じて前記摺動子へ直接あるいは間接的に接続され、前記操作部は、前記刷毛に設けられた押圧用の部材であるか或いは前記棒状体の外部へ配置され前記刷毛とは別に前記摺動子へ接続された押圧用の部材であり、前記付勢部は、バネ等の弾性体を備え前記摺動子を付勢することで前記操作部による操作を受けていないとき、前記刷毛を前記棒状体に対し前記棒状体の長手方向の定位置に配置する木目調塗装用器具を提供できた。
更にまた本発明では、前記棒状体の持手間の間隔は、20cm~60cmであり、前記操作部は、前記持手を掴んだ手の親指で操作することができるレバーである木目調塗装用器具を提供できた。
【発明の効果】
【0011】
本発明の木目調塗装用器具では、棒状体の移動により、塗料を含んだ少なくとも2本の刷毛にて塗布対象面へ同時に少なくとも2本の線を描くことができ、上記棒状体の移動を繰り返すことにより、塗布対象面へ複数の線を効率良く並べて描くことができ、上記移動中少なくとも一方の刷毛を棒状体の長手方向についてスライドさせることで、上記2本の線間の間隔を変化させて、木目調の曲線として描くことができる。
従って、塗布対象面へ配した壁紙へ木目を模した図柄を容易に且つ効率良く描くことができ、従来の上記搬入や納品、室内への設置の困難性を解消できた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る木目調塗装用器具の略正面図、(B)は(A)の木目調塗装用器具の略底面図、(C)は(A)の木目調塗装用器具の略縦断面図、(D)は(A)のX-X断面図。
図2図1へ示す木目調塗装用器具の分解斜視図。
図3図1(A)の木目調塗装用器具の使用状態を示す略正面図、(B)は図1(C)及び図2の木目調塗装用器具の変更例を示す略縦断面図、(C)は(B)の木目調塗装用器具の変更例を示す略縦断面図、(D)は(C)の木目調塗装用器具の使用状態を示す略正面図。
図4図1乃至図3の木目調塗装用器具を塗装作業者が使用している状態を示す略斜視図。
図5】(A)は図1へ示す木目調塗装用器具の使用により線を描く工程を平面視した説明図、(B)は(A)の状態から一方の(図中左側の)操作部の操作により上記線を湾曲させた例を示す説明図、(C)は(A)の状態から左右両方の操作部の操作により上記線を湾曲させた例を示す説明図、(D)は上記操作部を操作せずに上記線を湾曲させた例を示す説明図、(E)は上記操作部を操作せずに(D)の状態から(D)と左右反対に向け線を湾曲させた例を示す説明図。
図6】(A)は図1図4の木目調塗装用器具使用後の塗装被対象面の平面図、(B)は(A)の塗装対象面の壁紙へ節目を描いて仕上げた状態を示す平面図、(C)は木目調塗装用器具による塗料の塗布の軌跡(木目の筋となる線)の他の例を示す仕上げ後の壁紙の平面図。
図7】(A)は図1(A)の木目調塗装用器具の他の変更例を示す略縦断面図、(B)は(A)の木目調塗装用器具の使用状態を示す略正面図、(C)は(A)及び(B)の木目調塗装用器具の変更例を示す略縦断面図。
図8】(A)は本発明の他の実施の形態に係る木目調塗装用器具の使用状態を示す略正面図、(B)は(A)の木目調塗装用器具の略縦断面図、(C)は(A)及び(B)の木目調塗装用器具の操作部を最大限作動させた状態を示す略正面図、(D)は(C)の木目調塗装用器具の略縦断面図。
図9図8へ示す木目調塗装用器具の分解斜視図。
図10】(A)は本発明の更に他の実施の形態に係る木目調塗装用器具の略縦断面図、(B)は本発明のまた更に他の実施の形態に係る木目調塗装用器具の略縦断面図、(C)は(B)の木目調塗装用器具の変更例を示す略縦断面図、(D)は更にまた他の実施の形態に係る木目調塗装用器具の略縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
(概要)
この木目調塗装用器具は、壁紙など塗料の塗布対象面に対し、同時に2本の刷毛で線を描くことができるものである。
即ち、この木目調塗装用器具は、棒状体1と、棒状体1へ設けられた2本の刷毛2と、刷毛2の夫々を操作する2つの操作部3と、操作部3による操作をガイドする摺動子4と、弾性体5と備える(図1図3(A)、図4)。
各部の構成について順に説明する。
【0014】
(棒状体1)
棒状体1は、中空のパイプである。棒状体1は、プラスチック製、木製或いは金属製とすることができ何れの素材で棒状体1を形成することに限定するものではないが、この例では、耐久性と軽量という点でアルミニウム製のパイプを採用した。
また棒状体1は、筒を半割にした半筒11,12を合わせて、連結具13で一体に固定し管(パイプ)とした(図2)。連結具13には、ネジやピン、ボルト・ナットといった周知のものを採用して実施すればよい。この例では、連結具13はボルトとナットにて構成されている。連結具13は、棒状体1において操作部3の後述する操作の邪魔にならない位置に設けられる。
【0015】
上記半筒11,12の長手方向のほぼ中央において、連結具13のボルトが半筒11,12を上下に突き通されている。図2へ示す例では、連結具13は棒状体1の上記中央の左右2箇所へ設けられているが、上記中央の2箇所に限定するものではなく、操作部3の邪魔にならない範囲で棒状体1の左右端部付近にも設けるなど3箇所以上設けるものとしても良いし、後述する筒状の持手10を連結具として利用することにより、上記ボルト・ナットの取付箇所を上記中央の1箇所としたり或いは上記ボルト・ナットといった連結具13を設けずに実施してもよい。
【0016】
棒状体1の両端部の夫々には、持手10が設けられる。作業者mは手hで持手10を掴んで木目調塗装用器具を保持することができる(図3(A)及び図4)。
持手10は筒状の部材であり(図1及び図2)、棒状体1の両端部の外周面へ嵌められる。持手10は、掴んだ際に滑りにくい、ゴムやウレタンなどの摩擦抵抗の大きな素材にて形成するのが好ましい。持手10を上記ゴムやウレタンなどの弾力性の大きな素材にて形成し、棒状体1の両端部へ強制嵌合すればよい。
【0017】
持手10は、上記のように棒状体1と別体に形成された部材を棒状体1へ取り付けるものに限定するのではなく、棒状体1の両端部の外周面自体を持手10としてもよい。但し、持手10表面は摩擦抵抗の比較的大きなものとして滑り難くしておくのが適当であり、摩擦抵抗の大きな上記ゴムやウレタンなどの素材で形成された部材を設けるのが好ましい。
また、上記ゴムやウレタンなどのり弾力性の大きな素材にて持手10を形成し、棒状体1へ強制嵌合するものとすることによって、前述の通り連結具13と同様に、半筒11,12同士の結合をより確実にすることができる。
以下必要に応じ左手hで掴まれる持手10を左持手10と呼び、右手hで掴まれる持手10を右持手10と呼ぶ(図3(A))。
【0018】
棒状体1の側面即ち水平にした(横方向を長手方向とした)棒状体1の下面には、操作部3の作動を案内するガイド孔14が設けられている(図1(B)~(D)、図2)。ガイド孔14は、棒状体1の長手方向に伸びるスリットである(以下必要に応じてスリット14と呼ぶ。)。この例では、半筒11,12のうち、一方11を上半筒11とし他の一方12を下半筒12として、上半筒11の下方に下半筒12が配されている。
【0019】
上記スリット14は、下半筒12に設けられて下半筒12の長手方向に伸びる貫通孔であり、水平にした下半筒12を上下に貫通する。
上記連結具13のボルトは、棒状体1の手方向について上記スリット14と異なる位置にて水平にした上半筒11と下半筒12とに突き通され、上下に伸びる。上記連結具13のボルトの先端へ連結具13のナットがねじ込まれて上半筒11と下半筒12は一体とされる。
【0020】
この木目調塗装器具において、棒状体1の外径を1cm~3cmとし、両持手10間の間隔tを20cm~60cmとし、持手10の軸方向の長さを5cm~20cmとし、持手10の外径を4cmを超えないものとするのが好ましい。但し上記数値範囲を逸脱するものであっても、適切に木目調の塗装が可能であれば、当該逸脱する寸法を排除するものではない。
更に、棒状体1の長手方向を左右方向として説明すると、スリット14は、左右2つの持手10の夫々に隣接する左右の2箇所へ設けられている。スリット14の(棒状体1の長手方向についての)長さは後述する摺動子4の摺動範囲をカバーできるものであればよい。
【0021】
(刷毛2)
刷毛2の夫々は、棒状の胴部20と胴部20の先端(下端)へ設けられた毛束21とを備える。刷毛2は毛束21の少なくとも毛先22へ塗料を含ませて塗料の塗布対象面へ塗料を塗付するものである。刷毛2には、市販のものを採用することができる。
刷毛2の夫々は、持手10の間にて、棒状体1へ設けられる。一方の刷毛2は一方の持手10寄りに設けられ、他の一方の刷毛2は他の一方の持手10寄りに配置される。必要に応じて、左持手10寄りの刷毛10を左刷毛10と、右持手10寄りの刷毛10を右刷毛10と呼ぶ。
塗料を塗布する塗布対象面を水平として、刷毛2は、夫々棒状体1の長手方向と交差する方向へ互いの間に間隔を開けて伸びるものであり上記の通り両手で持手10の夫々を掴み、棒状体1を略水平にすることで、両刷毛2の毛先22を下方へ向けることができる。
【0022】
この例では、刷毛2は、操作部3を介して棒状体1へ取り付けられている。刷毛2の先端即ち毛束21の毛先を下方へ向け、水平にした棒状体1の下面側に設けられた操作部3へ刷毛2の胴部20の後端(上端)が固定される。この固定の構造については、後に詳述する。
この例では、各刷毛2の毛束21は扁平に束ねられており、上記固定において、毛束21の束先(毛先22)の最大幅(最大径r)の幅方向(径方向)は、棒状体1の長手方向(左右方向)に沿うように操作部3へ取り付けられる。
【0023】
(操作部3)
一対の操作部3は、水平にした棒状体1について左右の持手10の間に配される。
一方の操作部3は左持手10寄りに配置され、他の一方の操作部3は右持手10寄りに配置される。説明の便宜上、左持手10寄りに配置された操作部3を左操作部3aと呼び、右持手10寄りに配置された操作部3を右操作部3bと呼ぶ(図3(A))。尚、持手10の夫々を左右何れの手で掴むかは固定的なものではなく、左手で掴めば上記左持手10であり、右手で掴めば上記右持手10である。従って、操作部3についても、必要に応じ持手10を掴む手により、左手で操作する操作部3を上記左操作部3aと、右手で操作する操作部3を上記右操作部3bと呼ぶ。
【0024】
左操作部3aと右操作部3bの夫々は、持手10を掴んだ手hの親指fを掛けることができるレバーである。左操作部3aの右面(右操作部3bとの対向面)に左手hの親指fが、右操作部3bの左面(左操作部3aとの対向面)に右手の親指が掛けられる。この例では、後に詳述する弾性体5の付勢に抗し親指fの腹で操作部3を引くことで、刷毛2をスライドさせて両刷毛2間の間隔を広げることができる。
この例では、左操作部3aと右操作部3bの夫々は、略直方体状に形成されたプラスチックの成形品であり、水平にした棒状体1の下面へ沿って長手を横にして配置される。略直方体状の左操作部3aと右操作部3b夫々の上面は、棒状体1の下面に合わせて凹曲面とするのが好ましい。
【0025】
操作部3即ち左操作部3aと右操作部3bの夫々は、棒状体1の上記各スリット14の真下に配される(図1(B)~(D)、図2)。即ち、左持手10に隣接するスリット(左スリット)14の真下に左操作部3aが配され、右持手10に隣接するスリット(右スリット)14の真下に右操作部3aが配される。
左スリット14は、左持手10付近から、棒状体1の長手方向の中央付近へ伸びる。右スリット14は、右持手10付近から、棒状体1の長手方向の中央付近へ伸びる。
左スリット14は左持手10を掴む左手hの少なくとも棒状体1の長手方向に沿って伸ばした親指fの(平均的な)長さと同じか当該親指fよりも長いものとする。右スリット14は右持手10を掴む右手hの少なくとも棒状体1の長手方向に沿って伸ばした親指fの(平均的な)長さと同じか当該親指fよりも長いものとする。
【0026】
(摺動子4)
棒状体1の上記内部空間には、摺動子4が2つ収容されている。
摺動子4については、上記内部空間内で棒状体1の長手方向に沿ってスライドすることができる。
摺動子4の一方(左摺動子4)は上記左スリット14の真上に配され、摺動子4の他の一方(右摺動子4)は右スリット14の真上に配される。
各摺動子4は、略円柱状に形成されたものであり、この例ではプラスチックの成形品である。
【0027】
棒状体1内の左摺動子4と棒状体1の外周面へ配置される左操作部3aは、左スリット14に挿通される連結部材7(左連結部材7)にて連結され、左操作部3aを左手hの親指fで操作することによって、左側の刷毛2を棒状体1に沿って移動させると共に、左摺動子4を棒状体1内を棒状体1の長手方向に沿ってスライドさせることで、左摺動子4が棒状体1に沿った左刷毛2の上記移動を案内する。従って、左スリット14は少なくとも左連結部材7のスライド(可動)範囲をカバーする長さを備えるものとする。
【0028】
棒状体1内の右摺動子4と棒状体1の外周面へ配置される右操作部3bも、右スリット14に挿通される連結部材7(右連結部材7)にて連結され、右操作部3bを右手hの親指fで操作することによって、右側の刷毛2を棒状体1に沿って移動させると共に、右摺動子4を棒状体1内を棒状体1の長手方向に沿ってスライドさせることで、右摺動子4が棒状体1に沿った右刷毛2の上記移動を案内する。従って、右スリット14は少なくとも右連結部材7のスライド(可動)範囲をカバーする長さを備えるものとする。
【0029】
木目調塗装用器具の組み立て時において、上下の半筒11,12同士を合わせて棒状体1とする前に、摺動子4の夫々を下半筒12においてスリット14の上に載せ、摺動子4と操作部3とへ上記連結部材7を突き通せばよい。この例では、連結部材7は、ネジであり、当該ネジの頭部を摺動子4の上面に配置して当該ネジの先端側を摺動子4と操作部3へ突き通し、当該ネジの先端側に設けられた雄螺子を刷毛2の胴部20の上端へねじ込むことによって、摺動子4と操作部3とを連結すると共に、刷毛2も摺動子4及び操作部3と一体とする。
【0030】
但し、刷毛2は、摺動子4及び操作部3とは別の周知の固定手段にて、操作部3へ固定されるものであってもよい(図示しない)。例えば、連結部材7である上記ネジの先端は操作部3内へ止まるものとし、操作部3の下面へ穴を設けて、刷毛2の胴部20の上端を当該穴へ強制嵌合するものとしてもよいし、刷毛2の胴部20を接着剤や他のネジで操作部3へ固定するようにしても良い。
【0031】
上記の通り刷毛2の操作部3への固定を連結部材7とは別の固定手段を利用する場合、摺動子4と操作部3の連結においても、連結部材7を上記ネジに限定するものではない。例えば連結部材7として摺動子4の下面へ突出する凸部を設け、操作部3の上面へ凹部を設けて上記凸部先端を当該凹部へ強制嵌合するものとしたり、接着剤にて上記凹部へ凸部を固定するものとしてもよい(図示しない)。また。摺動子4の下面が上記凹部を備え、操作部3の上面が上記凸部を備えるものとしてもよい。更には摺動子4の下面と操作部3の上面の双方が上記凹部を備え、摺動子4及び操作部3と別体の棒状部材を両凹部へ強制嵌合や接着剤にて固定するものとしてもよい。
【0032】
刷毛2に市販されている既製品を採用する場合、上記連結部材7に刷毛2を直接連結させるのではなく、上記連結部材7へは下方向けて開口するプラスチック製のキャップ(図示しない。)を連結させ、当該キャップへ刷毛2の後端部即ち上記胴部20の上端部へ当該キャップを強制嵌合することにより、刷毛2の操作部3への固定を行うものとしてもよく、この場合、上記キャップから引き抜いて別の刷毛2を上記キャップへ嵌めることで、刷毛2を交換することができる。
また上記の通り、刷毛2と別体に形成された操作部3へ刷毛3を連結部材7にて直接又は上記キャップを介し間接的に固定してもよいが、刷毛3を既成品とせずに、操作部3は刷毛2の胴部20に形成されたもの即ち当該胴部20が操作部3として賦形された部分を備えるものとしても良い。
【0033】
(弾性体5)
弾性体5は、弾力性を備え、付勢部として常時摺動子4を付勢する。この例では、摺動子4の個数に合わせて弾性体5は2つ設けられている。
操作部3が力を受けてないとき即ち作業者mが操作部3を操作していないとき、弾性体5の摺動子4への上記付勢により、操作部3は棒状体1に対し定位置に配置される。作業者mが操作部3を操作していないとき、操作部3と一体の刷毛2は棒状体1に対し定位置に配置されるのである。
上記定位置は、持手10を掴んだ手hの親指fが届く範囲とする。具体的には、握手10と当該握手10寄りに配置される操作部3の操作面即ち親指fで押圧する面との間の間隔vは、7cmを超えないものとするのが好ましい。但し、上記間隔vが7cmを超えるものであっても、操作部3を円滑に操作できる限り上記間隔vでの実施を排除するものではない。
この例では、弾性体5は押しバネであり、当該バネの付勢に抗し親指fの腹で持手10側へ押すことによって当該バネを圧縮しつつ刷毛2を移動させ、両刷毛間2の間隔を広げることができる。
【0034】
棒状体1の内部空間にあって、棒状体1の長手方向について摺動子4の位置するスリット14よりも棒状体1の端部側へ押さえ部材6が設けられている。詳しくは、パイプである棒状体1の内周面には、棒状体1の長手方向について、左摺動子4よりも左側(左持手10側)へ押さえ部材6(左押さえ部材6)が設けられ、右摺動子4よりも右側(右持手10側)へも押さえ部材6(右押さえ部材6)が設けられている。左右の押さえ部材6は、何れも棒状体1の内周面から棒状体1の径内側へ向けて突出する小片であり、固定具15にて棒状体1へ固定されている。固定具15は、ボルト・ナットやネジなどの周知のもの採用することができる。この例では、固定具15はボルト・ナットである。尚、棒状体1を鉄にて形成し、固定具15を溶接にて棒状体1へ設けるものとしてもよい。
厳密には、上記付勢部は、この例では弾性体5と上記押さえ部材6とにて構成されている。
【0035】
上記摺動子4と押さえ部材6の間、詳しくは、左摺動子4と左押さえ部材6の間へ一方の弾性体5(左弾性体5)が設けられ、右摺動子4と右押さえ部材6の間へ他の一方の弾性体5(右弾性体5)が設けられる。各押さえ部材6にて各弾性体5の摺動子4と反対側の端部(の位置)が固定される。
この例では、押さえ部材6は、固定具15によって上半筒11へ固定されている。但し、押さえ部材6は下半筒12に固定してもよい。
【0036】
(使用例)
塗装の作業者mは、左手hで一方の持手10を持ち右手hで他の一方の持手10を持ち棒状体1を水平することによって、両刷毛2の毛先22のみを塗料の塗布対象面へ当接させ当該塗付対象面に沿って棒状体1を棒状体1の長手方向と交差する方向へ移動させる(図3(A)及び図4)。
毛先22に予め液体の塗料を含ませて、上記移動により塗付対象面へ木目の筋に見立てた線dを同時に2本引くことができる(図5(A))。図中白抜き矢印は、上記移動の方向(移動中の棒状体1の向き)を示す。
【0037】
上記移動中、親指fで操作部3を操作することにより(図3(A))、同時に描く2本の線d間の間隔w1を漸次変化させることができる(図5(B)(C)の間隔w2,w3)。
図1図3(A)へ示す木目調塗装用器具では、親指fの腹で操作部3を、当該親指fのある手h側へ引くことで刷毛2を当該手hが掴んでいる持手10側へ(棒状体1の長手方向に沿って)スライドさせることができ、当該スライドによって両刷毛2間の間隔を徐々に広げることができる。当該間隔を広げた後、指の力を抜いて操作部3を徐々に元の位置に戻すことにより、当該間隔を狭めることができる。
【0038】
同時に描く2本の線d間の間隔w1~w5は、両刷毛2(の毛先22)間の間隔でもあるので、以下必要に応じて間隔w1~w5を両刷毛2(の毛先22)間の間隔として説明する。
両刷毛2(の毛先22)間の間隔(w1からw2やw3へ)の漸次変更に伴い、当該刷毛2の毛先22は、線dをカーブさせて描くことができる。例えば一方の操作部3を操作して一方の刷毛2(毛先22)をスライドさせつつ、他の一方の操作部3を操作せずに上記移動を行うことによって両刷毛2(毛先22)の向きを変えずに、同時に描く2本の線dのうち一方を曲線とし他方の一方を直線的に描くことができる(図5(B))。また両方の操作部3を操作することによって、同時に描く2本の線dの夫々を例えば双曲線に懸垂曲線に近似する、曲線描くことができる(図5(C))。
【0039】
図5(B)の例では、上記移動中、片方の操作部3の操作にて一方の刷毛2を棒状体1の長手方向に沿って(図5(B)の黒矢印の方向へ)スライドさせて、両刷毛2間の間隔w2を当初の当該間隔w1に対し漸次広げて当該一方の刷毛2にて描く線dをカーブさせている。
また図5(C)の例では、上記移動中、両操作部3の操作にて両刷毛2を棒状体1の長手方向に沿って(図5(C)の黒矢印の方向へ)互いに遠ざかるようにスライドさせて、両刷毛2間の間隔w3を当初の当該間隔w1に対し漸次広げて両刷毛2にて描く両線dをカーブさせている。
【0040】
図5(B)(C)の何れの場合も、描線後、操作部3を徐々に元の位置(押圧しないときの定位置)に向け後退させて刷毛2同士を近づくようにスライドさせることで、両刷毛2間の間隔w3を当初の当該間隔w1に対し漸次狭めるように、両刷毛2にて描く両線dをカーブさせることができる。上記の両刷毛2同士を近づけ遠ざける操作により、板目調や杢目調の木目を容易に描くことができる。
更に一方の操作部3を徐々に押圧操作すると共に他の一方の操作部3を徐々に押圧解除操作することにより、両刷毛2間の間隔をほぼ一定とて線d間の間隔を変えずに2本の曲線を描くことができる。
【0041】
図6(A)へ示す通り、一対の線をd1,d2,d3,d4,d5,d6の順で描くことができる。即ち、1回目の上記移動にて2本の線d1を描いた後、上記の移動の開始位置付近に棒状体1を戻しつつ当該開始位置に対し移動方向と交差する方向へずれた位置にて、再び棒状体1の移動を開始し、先に描いた2本の線d1と並ぶように更に2本の線d2を追加する(図4)。当該追加を繰り返して、更に線d3~d6を順に描き足すことによって、木目調の図柄を壁紙kへ塗装する(図6(A))。尚図4及び図6に示した線の数や形状、配置、描く順序は、単なる例示であり、図4及び図6へ示すものに対し適宜線の数を増減し、形状や配置や描く順序を変えて実施することができる。
【0042】
例えば、図4及び図6(A)で示すように先に描いた線のうちの1本を挟むように次の2本の線を順次描いて行くのではなく、両操作部3の操作にて、帯状(長方形)の壁紙kの長手方向と直交する方向を幅方向として当該幅方向の中央から壁紙kの両長辺側へ向け(内から外へ)、或いは逆に上記両長辺側から当該幅方向の中央に向け(外から内へ)順に線を描いて行くことも、両刷毛2間のスライド幅(摺動範囲)が壁紙の上記幅方向の幅をカバー出るものとしておけば可能である。勿論、上記スライド幅が上記幅方向の幅よりも小さいものである場合であっても、上記幅方向の中央付近のみ上記の通り内から外へ或いは外から内へ順に描き、残された外側の領域については、図4図6(A)へ示す順に線を描いて行くものとしても良いのである。
【0043】
上記にて筋状の木目(線)を描くと共に、(例えば上記線の無い領域d0へ)木目の節daを(この木目調塗装器具を用いず)通常の刷毛にて描き木目調の塗装を完了すればよい(図6(B))。
【0044】
この例では、上記塗付対象面の少なくとも一部を壁紙kとする。壁紙kの表面が上記塗付対象面全体と考えてもよいが、例えば壁紙kを塗付対象面とすると線dの壁紙kからはみ出す区間を考慮すると、厳密には同時に2本の線dを塗付対象面(壁紙k)へ引いたとは言えない場合もあるからである(図6(A)の破線が線dのはみ出した区間を示している)。
通常は壁紙kよりも広い養生シートの表面を塗付対象面として、当該養生シートの上へ、木目模様を施す壁紙kを広げ本発明に係る木目調塗装用器具にて線dを描けばよい。
【0045】
尚、両刷毛2の間隔を変えず(刷毛2をスライドさせず)に塗装対象面に対し棒状体1の移動の向きを変化させることでも、曲線を描くことはできる(図5(D)(E))。しかし、棒状体1の移動の向きの変化のみで自然な曲線を描くとすれば、同時に描く2本の曲線間の間隔w1の自然な変更は難しく、例えば棒状体1の長手方向に棒状体1を移動させて一方の刷毛2を他方の刷毛2が既に描いた線に近づけることで上記2本の線d間の間隔を狭めようとしても、両線dを木目を模した滑らかなカーブとするのは困難である(図示しない)。結局移動の向きの変更で2本の線dを上記の滑らかな曲線として描けば、両線d間の間隔w4,w5は、移動の向きの変更前の間隔w1と大きく変わらないものとなる。
【0046】
上記の通り、操作部3による操作を伴わない方法で木目を模した自然な曲線を描くのは至難の業であり、操作部3の操作によって両刷毛2の間隔を変えることで、同時に描く2本の線を木目調の上記自然な曲線とするほうが遥かに容易である。
即ち、操作部3を設けて刷毛2のスライドにて両刷毛2間の間隔を変更できるものとしておくのは、壁紙に木目を描く上で極めて効果的である。
一方、2本の線を同時に描ける点で、操作部3によらず或いは操作部3を設けずに、上記移動の向きの変更のみでカーブさせるものを排除するものではない。
操作部3の操作と上記棒状体1の移動の向きの変化を併用することによってより幅の広い木目の表現が行え、また刷毛2の毛先22の最大幅rを最大限生かして塗装を効率的に行える。
【0047】
(変更例)
図1図3(A)へ示す例では、弾性体5は圧縮した際に反発力を発揮する押しバネとしたが、弾性体5は引き伸ばした際に反発力を発揮する引きバネとしてもよい(図3(B))。図3(B)へ示す例では、弾性体5を引きバネとするため、棒状体1の長手方向について、各摺動子4に対する押さえ部材6の位置は図1図3の例と左右逆になり、従って摺動子4と押さえ部材6の間に介される上記弾性体5の位置も図1図3の例と左右逆になる。但し、図3(B)の操作部3の操作は、図1図3(A)へ示す例と同様親指fの腹で棒状体1の端部へ向けて操作部3を押圧することで刷毛2の間の間隔を広げることができる。
【0048】
図1図3(A)(B)の木目調塗装器具において、平均的な長さの親指fで操作部3動かせる範囲を考慮すると持手10寄りに配された両刷毛2間の間隔を0或いは0に近い状態まで刷毛2同士を近接させるのは難しいと思われるが、図6(A)(B)へ示す手順で同図に示す柾目調の木目を描くのは1つの木目調塗装器具にて円滑に行える。
一方、前述の内から外へ一対の線を描く場合例えば図6(C)に示す板目調や杢目調の木目を描く場合も、壁紙k表面を逐次部分的にマスキング(塗料が付かないように他のシートで被うこと)により、図6(A)(B)と同様の手順で木目を描くことも可能である(図示しない)。
【0049】
但し、図6(C)に示す板目調や杢目調の木目を描く場合において、両刷毛2の間の間隔を0或いは0に近い状態まで刷毛2同士を近接させることができれば、図6(C)に示す手順(d1,d2,d3,d4,d5,d6の順)で同図の一対の線d1,d2の夫々を描くことができ、直感的に木目を描くことが容易となる。
上記図6(C)に例示する木目を描くのに適した変更例を図3(C)(D)へ示す。
【0050】
図3(C)(D)へ示す例では、図3(B)の押さえ部材6や弾性体5、操作部3を棒状体1の長手方向の中央部へ寄せて配置し、操作部3を操作していないとき両刷毛2を隙間がほぼ無い状態に近接させると共に、操作部3へ指掛部31を設ける。
指掛部31は、環状に形成され部材であり親指を通すことができる。指掛部31は、支持棒32にて操作部3へ支持されている。支持棒32の夫々は、操作部3の夫々から左右の持手10へ向け棒状体1の長手方向に沿って伸び、先端に上記指掛部31が設けられている。指掛部31及び支持棒32は、操作部3の一部を構成する。指掛部31は、支持棒31を介して操作部3(操作部本体)へ設けられることにより、刷毛2の夫々を接近した状態に配置しつつも、持手10を掴んだ手hの親指fにて持ち手側へ引くことができる位置に配される。
【0051】
以下必要に応じて、左操作部3aへ設けられた支持棒32と指掛部31を、夫々左支持棒32、左指掛部31と呼び、右操作部3bへ設けられた支持棒32と指掛部31を、夫々右支持棒32、右指掛部31と呼ぶ。
左右の弾性体5の付勢に抗し、左指掛部31を左へ引き又は右指掛部31を右へ引き、或いは左右両指掛け部31を同時に左右へ引くことにて、刷毛2間の間隔を広げることができる。刷毛2間の間隔を広げた後、引く力を徐々に緩めて指掛部31を元の位置戻して行くことによって、刷毛2の間隔を狭めることができる。図3(C)(D)へ示す上記操作にて、図6(C)の線d1,d2のように、壁紙kの幅方向の中央にて前後の端部が交差する(前後の端部が繋がった)一対の線を容易に描くことができる。
【0052】
但し、図3(C)(D)へ示す木目調塗装器具においても、左手hの親指fで引く左指掛部31の可動幅と、右手hの親指で引く右指掛部31の可動幅の夫々を拡張するものではなく、刷毛2のスライド幅自体大きく変更するものではない。そこで上記線d1,d2の外側に位置する線d3~を一つの木目調塗装器具で簡単に引くために、図10(B)(C)へ示すように、操作部3の夫々の下面へ少なくとも2つの取付部33,34を設けておく。取付部33,34には夫々刷毛21の胴部20の後端部(上端部)を固定することができる。この例では、取付部33,34は夫々上方へ凹む窪みであり、当該窪みへ刷毛2の胴部20を強制嵌合し、刷毛2を抜き差し自在に操作部3へ固定することができる。
【0053】
詳しくは、左操作部3aの下面は左右に間隔を開けて内取付部33と外取付部34の2つの取付部を設け、右操作部3aの下面にも左右に間隔を開けて内取付部33と外取付部34の2つの取付部を設けておく。内取付部33の夫々は左右方向(棒状体1の長手方向)について棒状体1の中央寄りに位置し、外取付部34の夫々は内取付部33よりも左右方向外側即ち持手10寄りに位置する。内取付部33の夫々へ刷毛2を固定することによって、図3(C)(D)へ示す木目調塗装用器具と同様に刷毛2同士を近接させて図3(C)(D)の例と同様に扱うことができ、更に上記の図6(C)へ示す順で線d3以降の線を引く場合、外取付部34の夫々へ刷毛2を差し直して操作部3を操作しつつ棒状体1を移動させることで描線が容易に行える。
【0054】
図3(C)(D)や図10(B)(C)へ示す例では、上記の両刷毛2同士を近づけ・遠ざける操作により、特に板目調や杢目調の木目(図6(C))を容易に描くことができ、また両刷毛2間の間隔をほぼ一定として棒状体1を移動させることにより、柾目調の木目(図4及び図6(A)(B))を容易に描くことができる。
尚、図10(B)(C)へ示す木目調塗装用器具において、外取付部34の夫々と内取付部33の夫々に刷毛2を取り付けることにより、最大数4本の刷毛2を目調塗装用器具へ装着でき、4本の線dを同時に描くことができる。両外取付部34と両内取付部33のうち、一方の取付部の夫々に刷毛2を2本装着し、他の一方の取付部の夫々へ刷毛2を1本装着することによって同時に3本の線dを描くこともできる。図10(B)(C)へ示す木目調塗装用器具において、両操作部3へ、図示した外取付部34と内取付部33以外にも(例えば外取付部34と内取付部33の間にも)刷毛2の取付部を設けることによって更に多数(5本以上)の線dを同時に引くことができる。
【0055】
図7(A)(B)へ示す通り、弾性体5を棒状体1の端部へ向けて付勢する引きバネとし操作部3を当該付勢に抗し親指fの背(爪側)で押圧して刷毛2間の間隔を狭めるように刷毛2をスライドさせるものとしても実施可能である。また親指fの背側で押圧して刷毛2同士を近づけるものにおいて、弾性体5を上記引きバネとする他、図7(C)へ示すように弾性体5を棒状体1の端部へ向け付勢する押しバネとして構成してもよい。
【0056】
操作部3へ刷毛20を直接設ける上記例に限定するものではなく、刷毛20は操作部3を介さずに摺動子4へ連結するものとしてもよい。例えば、操作部3を刷毛2とは別に棒状体1の(上筒の)上面側へ設けるものとしても実施できる(図8(A)~(D)及び、図9)。図8及び図9へ示す木目調塗装用器具では、上筒11の上面にもスリット14と同様のスリット16(上スリット16)を設けて当該スリットの上へ操作部3を配置する。連結部材7を、上方から下方へ向け、操作部3、上スリット16、摺動子4、スリット14へ順に通し、連結部材7先端を刷毛2の胴部20の上端へねじ込むことで、操作部3と摺動子4と刷毛2とを一体にする。
【0057】
この例では、図7(C)に示す操作部3の位置へ当該操作部3に代えて摺動子4の安定した摺動を補助する安定部材8(スタビライザー)を設けている。安定部材8は操作部3と同様プラスチック製の部材(板状体)を採用することができる。安定部材8は指で押圧する必要はないので、操作部3のように指で押圧することができる上下の厚みは不要であり、この例では安定部材8の上下の厚みを操作部63の厚みよりも小さくしてコンパクトに形成している。
但し、安定部材8も、操作部3と同様の上下の厚みを備えるものとし、副操作部として、親指の操作を受けて刷毛2をスライドさせることができるものとしてもよい。また摺動子4を安定して摺動させることができれば、安定部材8を設けずに実施してもよい。
【0058】
図8及び図9へ示す例において特に、両押さえ部材6を棒状体1の長手方向の中央に寄せ、左右のスリット14及び上スリット16を棒状体1の上記長手方向について両持手10側から棒状体1の上記中央に至るまで伸びるものとし、刷毛2のスライド幅を大きく確保することができる。詳しくは、図8(A)(B)へ示す通り、持手10を掴み親指fで操作部3を押圧して刷毛2同士を近づけることができる点図7へ示す例と同様であるが、持手10を掴んだ手hを持手10から棒状体1の中央側へずらして更に押圧して行くことができ、刷毛2同士を更に近接させることができる。
図示は省略するが、図8及び図9へ示す押しバネである弾性体5に代えて、棒状体1の長手方向について摺動子4より持手10側へ引きバネである弾性体5を配置することで、両刷毛2をより接近させることができる。ま引きバネである弾性体5を上記の通り摺動子4より持手10側へ配置する例において、左右のスリット14同士も更に左右の上スリット16同士も繋がったものとすれば刷毛2同士を接近させるのにより効果的である。
【0059】
また図8図9へ示す例において、バネである弾性体5を1本とし押さえ部材6を設けずに、当該1本の弾性体5の両端で、左右の摺動子4を押圧するようにしてもよい(図示しない)。
図8及び図9へ示す例において、操作部3と摺動子4とを連結体8を介して結合することで、操作部3を摺動子4よりも持手側へ配置するものとしても実施できる(図10(A))。連結体8は、この例ではL字に屈曲する棒状の部材である。
図3(C)(D)及び図10(B)(C)へ示す例において、図10(D)の棒状体1と同様、操作部3本体を設けずに、左右の支持棒32を夫々直接刷毛2の胴部20へ固定するものとしてもよい。
【0060】
また図10(D)へ示す例では、操作部3とする指示棒32と指掛部31は一方の刷毛に設けるものとし、当該刷毛2と一体の摺動子4は上スリット16から上方へ突出するペグ41をワイヤ掛け部として設け、棒状体1の上部(上半筒)において他の一方の摺動子4と当該摺動子4側の持手10との間に貫通孔17を設け、当該貫通孔17付近において棒状体1(上半筒)の外周面と内周面の夫々へ回動自在にコロ(ガイドローラ42,43)を設け、更に上記他の摺動子4の一端へ第2ペグ44を第2ワイヤ掛け部として設け、ペグ41へワイヤ45の一端を固定し、ワイヤ45をガイドローラ42と貫通孔17を通じてガイドローラ43とに掛けて、ワイヤ45の他の一端を第2ペグ44へ固定することにより、一方の刷毛2にのみ設けられた指掛部31の操作で、両刷毛3をスライドさせることができる。図10(B)(C)へ示す例においても、図10(D)と同様の構造を採用することで一方の操作部3にのみ指掛け部31を設けて、両操作部3を操作するものとしてもよい。
【0061】
尚、一方の刷毛2のみ棒状体1の長手方向へスライド可能とし、他の一方の刷毛2は棒状体1へ固定されスライド不能としてもよく(図示しない)、この場合一方の刷毛2のスライドで両刷毛2間の間隔を変更するものとなるが、図5(D)(E)の手法を織り交ぜて自然な曲線を描くこともできる。
刷毛2の毛束21は、上記以外にほぼ真円に束ねらたものであってもよいし、扁平に束ねられている場合も毛先22の最大幅の幅方向を棒状体1の長手方向と平行するように設けなくてもよい。但し、刷毛2の毛束21を扁平に束ねられることが一般的な市販品では、毛先22の最大幅を生かすことによって最も太い線dを描くことができ、棒状体1の長手方向と最大幅の幅方向を平行するようにすれば一度に塗装対象面へ広く塗料を塗付することができる。
【0062】
弾性体5には伸縮性を有するゴム紐などを採用してもよい。また、摺動子4を押圧する付勢部として、上記バネやゴムなどの弾性体5に代えて、ダンパーなどに利用される油圧や空気圧といった流体圧を利用する周知の手段を採用するものとしてもよい。
図示した各例において、中空体(パイプ)である棒状体1の内部へ摺動子4や摺動子4を押圧する弾性体5(付勢手段)を設けるものとしたが、この他、棒状体1の外周へ螺旋状の弾性体5(コイルバネ)を配置し即ち螺旋状の当該バネの中心へ棒状体1を通し、摺動子4を棒状体1を通す環状体(輪又は短筒)とし、当該摺動子4へ操作部3と刷毛2とを設けるものとして実施してもよい(図示しない)。
【0063】
(総括)
本発明の木目調塗装用器具は、棒状体1の長手方向を左右方向として当該左右方向と交差する前後方向について前方又は後方へ棒状体1を移動させることにより、同時に2本の線を前記対象面へ描くことができ、前記移動中、刷毛2をスライドさせて2本の刷毛2間の間隔を変えることにより、前記線について木目模した曲線として容易に描くことができる。
【符号の説明】
【0064】
1 棒状体
2 刷毛
3 操作部
3a 左操作部
3b 右操作部
4 摺動子
5 弾性体
6 押さえ部材
7 連結部材
8 スタビライザー
9 仲介部
10 持手
11 (棒状体1の)上半筒
12 (棒状体1の)下半筒
13 連結具
14 ガイド孔(スリット)
15 副ガイド孔(副スリット)
20 (刷毛2の)胴部
21 (刷毛2の)毛束
d (木目調塗装器具によって描かれた)線
k (塗料の塗布対象である)壁紙
m 作業者
h (作業者mの)手
f (作業者mの)親指
t 左右の持手10間の間隔
v 操作部3の操作面と持手10との間の間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10