(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037431
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】多層プリント配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142298
(22)【出願日】2022-09-07
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000228833
【氏名又は名称】日本シイエムケイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩原 正幸
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA06
5E316AA41
5E316AA51
5E316CC06
5E316DD22
5E316DD33
5E316EE31
5E316FF12
5E316HH11
(57)【要約】
【課題】3段以上のスタックされたビアのビア底部の破断を抑えた多層プリント配線板の提供。
【解決手段】コア基板と、当該コア基板の上下に積層された、内部にガラス繊維を有する絶縁樹脂層と導体層との任意の層数の積層体からなるビルドアップ層と、当該ビルドアップ層における上下方向の導体層間を接続する3段以上のスタックされたビアとを備えた多層プリント配線板であって、当該3段以上のスタックされたビアのうち、少なくとも、コア基板側から数えて1段目のビアと、真ん中のビア又はn-(n/2)(nは偶数の段数)段目のビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径又はそれ以上であることを特徴とする多層プリント配線板。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア基板と、当該コア基板の上下に積層された、内部にガラス繊維を有する絶縁樹脂層と導体層との任意の層数の積層体からなるビルドアップ層と、当該ビルドアップ層における上下方向の導体層間を接続する3段以上のスタックされたビアとを備えた多層プリント配線板であって、当該3段以上のスタックされたビアのうち、少なくとも、コア基板側から数えて1段目のビアと、真ん中のビア又はn-(n/2)(nは偶数の段数)段目のビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径又はそれ以上であることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項2】
前記コア基板側から数えて1段目のビアと、真ん中のビア又はn-(n/2)(nは偶数の段数)段目のビアの形状が、円筒形状又はつつみ形状であることを特徴とする請求項1に記載の多層プリント配線板。
【請求項3】
前記コア基板側から数えて1段目のビアと、真ん中のビア又はn-(n/2)(nは偶数の段数)段目のビアのビア底部の断面積が、ビア中間部の断面積より大きいことを特徴とする請求項2に記載のスタックされたビアを備えた多層プリント配線板。
【請求項4】
前記コア基板側から数えて1段目のビアと、真ん中のビア又はn-(n/2)(nは偶数の段数)段目のビアのビア底部の断面積が、ビア中間部の断面積より大きく、かつビアトップの断面積より大きいことを特徴とする請求項2に記載のスタックされたビアを備えた多層プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層化・高密度化された多層プリント配線板であって、3段以上のスタックされたビアを備えた多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
車載機器用途のプリント配線板に搭載される半導体パッケージ部品について、高速通信システムを利用する関係により、狭ピッチかつ多ピン化のプロセッサを搭載することが必要となる。それにより、車載向けの多層プリント配線板もさらなる高多層構造、高密度配線の要求が増えている。
【0003】
また、半導体パッケージ部品に合わせて、プリント配線板の回路設計仕様や構造が決められる。すなわち、高機能な狭ピッチかつ多ピン化の半導体パッケージ部品を複数個搭載するには、部品端子からの回路の引き回しのために、ビルドアップ層の多段化とともに、層間接続には複数段のスタックされたビアや、ビアランドの小径化、回路配線の微細化技術が必要不可欠となる。
特に、ビアの多段スタック構造については、ビアランドの小径化に伴い、ビア径を小径化しつつ、接続信頼性を確保しなければならない。
【0004】
ビアの多段スタック構造において、小径ビアを形成し易くするため、層間樹脂絶縁層としてガラスクロスを含まない絶縁層を使用することが知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、ガラスクロスを含まない絶縁層は、導体層や層間接続ビアが形成されていない部分の強度が弱く、導体層が配置されない絶縁層部分や当該絶縁層部分の近傍の導体層が剥離するといった問題が発生していた。
【0005】
一方、民生機器のモバイル機器等の高機能製品に用いられる多層プリント配線板については、従前より、狭ピッチかつ多ピン化の半導体パッケージ部品が複数個搭載されている。当該多層プリント配線板では、薄い絶縁層(厚み40μm以下)かつ薄い導体層(厚み25μm以下)を用いることで、微細な回路配線と小径ビアの多段化構造による高密度化が実現されている。当該薄い絶縁層を構成するガラスクロスにおいては、小径フィラメントを使用した材料(ガラスクロス厚み21μm以下:IPC規格では♯1027以下)が使用される。
【0006】
しかし、車載や産業機器向けの多層プリント配線板では、アクチェータやモータ類の制御向けに、パワー半導体の搭載も必要となる。そのため、高電流かつ高電圧の仕様に合わせて、ビルドアップ層の絶縁層厚は60μm以上、ガラスクロス厚は25μm以上、導体厚は35μm以上の設計が必要である。
以下、
図11を用いて、斯かる設計の多層プリント配線板において、3段以上のスタックされたビアを形成した例を説明する。
【0007】
図11において、500は多層プリント配線板で、充填物3が充填されためっきスルーホール2と、当該充填物3を被覆する蓋めっき4とを有するコア基板1と、当該コア基板1の上下に積層された絶縁樹脂層と導体層との任意の層数の積層体からなるビルドアップ層5と、当該めっきスルーホール2の直上に形成された、当該ビルドアップ層における上下方向の導体層間を接続する3段以上のスタックされたビア8とを備えている。当該スタックビア8は、レーザ加工条件や銅めっきの付き回り等を考慮して、ビアのボトム(B)径がビアのトップ(T)径に比べて小さいテーパ形状に形成され、ビア底部と蓋めっき4との接触面積、及びビア底部と当該ビアの下部導体層との接触面積は、いずれもビアの上部と当該ビアの上部導体層との接触面積より小さくなっている。
【0008】
しかし、ビアの形状がテーパ形状であると、過酷な環境にて使用されることを想定した加速試験(信頼性試験)、例えば、冷熱衝撃試験(高温125℃⇔低温-65℃、1000サイクル)を実施した際に、コア基板の蓋めっきと接続するビア底部や、その一段上のビア底部からクラックが進展し、ビア底部が破断する問題があった。これは、ビルドアップ層の絶縁層厚みが厚くなる(60μm以上、特に70~80μm以上)ことによって、Z軸方向の線膨張が大きくなり、冷熱衝撃試験においては高温125℃⇔低温-65℃の温度差による材料の収縮の影響で、より小径のビア底部に応力が集中した際に耐え切れなくなることが原因と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、スタックビア8への応力の掛かり方について検討したところ、コア基板側から数えて1段目のビア底部及びスタック数の真ん中のビア底部に大きな応力が掛かることが分かった。例えば、3段スタックされたビアの場合、コア基板側から数えて1段目と2段目のビア底部に応力が掛かることが確認された。同様に5段スタックされたビアの場合、コア基板側から数えて1段目と、スタック数の真ん中である3段目のビア底部に応力が掛かることが確認された。
より具体的に説明すると、3段以上のスタックされたビアを備えた多層プリント配線板では、コア基板との接続部分である1段目のビア底部に大きな応力が掛かることは言うまでもないが、スタックされたビアの真ん中に位置する段数のビアにも1段目のビア底部に近い応力が掛かる。
そのため、3段以上のスタックされたビアの出来栄えによっては、冷熱衝撃試験等の加速試験を実施した際に、例えば、3段スタックされたビアではコア基板側から数えて1段目のビア底部ではなく、真ん中の2段目のビア底部に亀裂が発生することもあった。同様に5段スタックされたビアでは、真ん中の3段目のビア底部に亀裂が発生することもあった。
FEM熱応力解析シミュレーションによる構造解析にても同様な結果が得られている。
【0011】
特に、当該ビア構造での接続は、接続部を含めた断面積が一番小さくなる部位、すなわちビア底部での破断が最も早く発生することが確認される。当該ビア底部は、受けランド側のめっき銅とビアめっき銅との金属結合にて強固に接続されているが、接合界面には無電解銅めっきや、プリント配線板の製造プロセス上必要となるパラジウム触媒等のめっき銅とは異種金属の吸着物や析出物層が介在することも接続強度を低下させる要因の1つとなる。
【0012】
本発明は、上記の如き従来の問題に鑑みてなされたものであり、3段以上のスタックされたビアのビア底部の破断を抑えた多層プリント配線板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記の課題を解決すべく種々研究を重ねた結果、ビアに掛かる応力を分散させビア底部に応力を集中させない構造として、ビア底部の断面積を拡大した構造体にすることによって接続信頼性が向上することが分かった。そしてさらに検討した結果、ビルドアップ層の層間樹脂絶縁層として内部にガラス繊維を有する絶縁樹脂層を使用すると共に、3段以上のスタックされたビアのうち所定の位置のビアのビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上に形成すれば、極めて良い結果が得られることを見い出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は、コア基板と、当該コア基板の上下に積層された、内部にガラス繊維を有する絶縁樹脂層と導体層との任意の層数の積層体からなるビルドアップ層と、当該ビルドアップ層における上下方向の導体層間を接続する3段以上のスタックされたビアとを備えた多層プリント配線板であって、当該3段以上のスタックされたビアのうち、少なくとも、コア基板側から数えて1段目のビアと、真ん中のビア又はn-(n/2)(nは偶数の段数)段目のビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径又はそれ以上であることを特徴とする多層プリント配線板により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の多層プリント配線板によれば、ビルドアップ層の層間樹脂絶縁層として内部にガラス繊維を有する絶縁樹脂層が用いられているので、強い剛性が確保され、絶縁樹脂層や導体層の剥離がない。また、3段以上のスタックされたビアのうち所定の位置のビアのビアボトム径とビアトップ径とが略同一径であるか、或いはビアボトム径の方が大きいので、例えば、冷熱衝撃試験(高温125℃⇔低温-65℃、1000サイクル)を実施した際にビアに掛かる応力、及びビア底部の金属結合部に掛かる応力の偏りを緩和することができ、ビア底部の破断を抑え、接続信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明多層プリント配線板の第1の実施の形態を示す概略断面説明図。
【
図2】本発明多層プリント配線板の第2の実施の形態を示す概略断面説明図。
【
図3】
図2の多層プリント配線板におけるスタックされたビアの形状を説明するための要部拡大断面図。
【
図4】
図2の多層プリント配線板におけるスタックされたビアの変形例を説明するための要部拡大断面図。
【
図5】本発明多層プリント配線板の第3の実施の形態を示す概略断面説明図。
【
図6】本発明多層プリント配線板の第4の実施の形態を示す概略断面説明図。
【
図7】本発明多層プリント配線板のスタックされたビアの形状とビルドアップ層(絶縁樹脂層)の関係を説明するための要部拡大断面図。
【
図8】
図7のビルドアップ層(絶縁樹脂層)の変形例を説明するための要部拡大断面図。
【
図9】
図7のビルドアップ層(絶縁樹脂層)の変形例を説明するための要部拡大断面図。
【
図10】ビアボトム径がビアトップ径と略同一径以上であるスタックされたビアの位置を説明するための説明図。
【
図11】従来技術の多層プリント配線板の形態を示す概略断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0018】
まず、
図1を用いて本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1において、100は多層プリント配線板で、コア基板1と、当該コア基板1の上下に積層された絶縁樹脂層と導体層との任意の層数の積層体からなるビルドアップ層5と、当該ビルドアップ層5における上下方向の導体層間を接続する3段以上のスタックされたビア6とから構成されている。
図1に示したように、当該コア基板1は、両面基板で、充填物3が充填されためっきスルーホール2と、当該充填物3を被覆する蓋めっき4とを備えている。
この第1の実施の形態では、ビルドアップ層5の絶縁樹脂層として、内部にガラス繊維を有する絶縁樹脂層が用いられている。
例えば、当該内部にガラス繊維を有する絶縁樹脂層を形成する絶縁材料のTg(TMA)は150℃未満、線膨張係数(TMA)のα1は、23から40ppm/℃であり、α2は、140から180ppm/℃の範囲である。また、ガラス繊維は、IPC規格#1080、厚さ0.055mm、質量47g/m2である。Tg(TMA)は、133℃から150℃未満のものが適宜使用される。
【0019】
また、当該3段以上のスタックされたビア6は、めっきスルーホール2の直上に形成され、いずれのビアも円筒形状を呈し、ビアのボトム(B)径とビアのトップ(T)径とが略同一径である。これによって、ビルドアップ層の絶縁層厚みが厚い(60μm以上)場合でも、例えば、冷熱衝撃試験(高温125℃⇔低温-65℃、1000サイクル)を実施した際にビアに掛かる応力、及びビア底部の金属結合部に掛かる応力の偏りが緩和されるので、ビア底部の破断を抑えることが可能となる。
【0020】
この第1の実施の形態では、コア基板1として両面基板を使用して説明したが、コア基板は、両面基板以外にも、4層基板、6層基板、8層基板、10層基板、12層基板、又はそれ以上の層数基板が使用できることは言うまでもない。
特に、車載通信機向けモジュール等、反りの抑制や高信頼性仕様を維持したまま高密度化するために使用される多層プリント配線板では、総板厚を1.2mm以上とする場合は、コア基板の層数を増やして、多層プリント配線板の総板厚を増やすことがある。
【0021】
続いて、
図2及び
図3を用いて本発明の第2の実施の形態を説明する。
図2において、200は多層プリント配線板で、3段以上のスタックされたビアとして「つつみ形状」のビア7が形成されている以外は第1の実施の形態と同様に構成されている。当該ビア7は、ビアボトム(B)径とビアトップ(T)径とが略同一径である。
図3に示したように、当該ビア7は、ビア底部の断面積(ビア底部と蓋めっき4又は当該ビアの下部導体層との接触面積)9は、ビアトップの断面積(ビアのトップと当該ビアの上部導体層との接触面積)11と同じ面積で、ビア中間部の断面積10より大きくなっている。これによって、コア基板側から数えて1段目のビア底部の破断を抑制することが可能となる。同様に、1段目と近い応力が掛かるスタックされたビアの真ん中に位置する段数のビア底部の破断を抑制することが可能となる。
【0022】
この第2の実施の形態では、ビア底部の断面積(ビア底部と蓋めっき4又は当該ビアの下部導体層との接触面積)9と、ビアトップの断面積(ビアのトップと当該ビアの上部導体層との接触面積)11は同じ面積であるが、
図4に示すように、ビアボトム径がビアトップ径より大きい径となるようにビアを形成し、ビア底部の断面積(ビア底部と蓋めっき4又は当該ビアの下部導体層との接触面積)9を、ビアトップの断面積(ビアのトップと当該ビアの上部導体層との接触面積)11より大きくしてもよい。尚、この時の、ビア中間部の断面積10とビアトップの断面積11の大きさは、ビア中間部の断面積10よりビアトップの断面積11が大きい構成となる。
【0023】
続いて、
図5を用いて本発明の第3の実施の形態を説明する。
図5において、300は多層プリント配線板で、3段以上のスタックされたビアとして、ビア径の違う2種類の「円筒形状」のビア6aと6bが形成されている以外は第1の実施の形態と同様に構成されている。ここで、
図5においては、コア基板の片面のビルドアップ層のみ表示して、もう一方の面は省略して図示している。
当該ビア6a、bは、それぞれビアボトム径とビアトップ径とが略同一径であるが、コア基板側から数えて1段目と2段目のビア6aのビアボトム径とビアトップ径は、3段目のビア6bのビアボトム径とビアトップ径より大きくなっている。
【0024】
続いて、
図6を用いて本発明の第4の実施の形態を説明する。
図6において、400は多層プリント配線板で、3段以上のスタックされたビアとして、「つつみ形状」のビア7と、「円筒形状」のビア6の2種類のビアが形成されている以外は第1の実施の形態と同様に構成されている。ここで、
図6においても、コア基板の片面のビルドアップ層のみ表示して、もう一方の面は省略して図示している。
コア基板側から数えて1段目と2段目のビア7において、ビアボトム径はビアトップ径より大きくなっている。また、コア基板側から数えて3段目のビア6は、ビアボトム径とビアトップ径とが略同一径である。
この第4の実施の形態では、コア基板側から数えて1段目と2段目のビア7のビアボトム径は、3段目のビア6のビアボトム径より大きくなっている。
【0025】
第3及び第4の実施の形態では、ビア径の違う2種類の「円筒形状」のビアを形成した例と、「つつみ形状」のビアと「円筒形状」のビアの2種類のビアを形成した例を用いて説明してきたが、ビアの組み合わせはこれに限らず、ビア径の違う3種類の「円筒形状」のビア、ビア径の違う2種類の「円筒形状」のビアと「つつみ形状」のビア等任意に選択することができる。
【0026】
ここで、本発明の3段以上のスタックされたビアの形状とビルドアップ層5(絶縁樹脂層)との関係を
図7から
図9を用いて説明する。
図7に示したように、本発明の3段以上のスタックされたビアとして「つつみ形状」のビア7が形成される場合、ビルドアップ層5の絶縁樹脂層としてANSIグレードFR-4の基材を用いることで当該形状のビアを好適に形成することができる。
【0027】
また、「つつみ形状」のビアを好適に形成するためには一般的な絶縁材料を用いて、レーザやデスミアの加工条件を工夫することで成り立つが、その他にも材料特性や材料構成を工夫することでも形成することが可能となる。
例えば、
図8に示したように、ビルドアップ層5に使用されるプリプレグのガラスクロスと樹脂の比率を変更し(樹脂比率78%以上)て、ガラスクロスの薄いビルドアップ層5aにしてもよい。意図的にガラスクロスを中心に寄せガラスクロスの薄いビルドアップ層5aにすることで、通常のプリプレグより、伝送損失が改善され特性インピーダンスが安定するためより好ましい。
【0028】
また、
図9に示したように、低損失絶縁材料5c(テフロン系)を絶縁樹脂5dで挟み込んだ複合構造の絶縁材料を使用してもよい。当該材料を使用することで、つつみ形状のビアの形成性を向上させることが可能となる。また、伝送損失が改善され特性インピーダンスが安定するためより好ましい。なお、この場合、デスミアプロセスでの樹脂エッチングレートが低損失材料の1.3倍以上の絶縁樹脂を用いる必要があり、上記絶縁材料のガラスクロスの含有量は少ない方が好ましい。
【0029】
続いて、
図10を用いてスタックされたビアの数に応じたビアの形状について説明する。
図1、2、5及び6では、スタックされたビアの全てのビアについて、ビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上に形成した例を示しているが、本発明においては、少なくとも、コア基板側から数えて1段目のビアと、真ん中のビア又はn-(n/2)(nは偶数の段数)段目のビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径かそれ以上であればよい。なお、コア基板側から数えて1段目のビアと、真ん中のビア又はn-(n/2)(nは偶数の段数)段目のビア以外のビアの形状は特に限定されず、
図10に示すテーパ形状等任意に選択することができる。
具体的には、
図10に示したように、スタックされたビア数が奇数段の場合、少なくとも、コア基板側から数えて1段目のビアと真ん中のビアのビアボトム径がビアトップ径と略同一径かそれ以上である。
例えば、3段スタックされたビアの場合、コア基板側から数えて1段目及び2段目のビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径かそれ以上である。5段スタックされたビアの場合は、コア基板側から数えて1段目及び3段目のビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径かそれ以上である。7段スタックされたビアの場合は、コア基板側から数えて1段目と4段目のビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径かそれ以上である。
さらに、5段スタックされたビアは、コア基板側から数えて2段目のビアのビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上にすると接続信頼性が向上するためより好ましい。
7段スタックされたビアは、コア基板側から数えて2段目と3段目のビアのビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上にすると接続信頼性が向上するためより好ましい。すなわち、5段以上スタックされたビアの場合は、コア基板側から数えて1段目のビアから真ん中のビアまでのビアのビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上にすることが接続信頼性が向上するため好ましい。
任意にはなるが、7段スタックされたビアは、コア基板側から数えて5段目のビアのビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上にすると、熱衝撃試験が3000サイクル要求された場合に効果がある。
【0030】
他方、スタックされたビア数が偶数段の場合、少なくとも、コア基板側から数えて1段目のビアと、真ん中のビア又はn-(n/2)(nは偶数の段数)段目のビアのビアボトム径がビアトップ径と略同一径かそれ以上である。スタックされたビア数が偶数段の場合、真ん中にあたるビアは2段分が該当する。本発明においては、真ん中に位置する2つのビアのうち、どちらか一方のビア、或いは両方のビアのビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上にすればよい。より好ましくは、コア基板に近い方のビア、すなわちn-(n/2)(nは偶数の段数)段目のビアのビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上にする。
例えば、4段スタックされたビアの場合、コア基板側から数えて1段目及び2段目(4-(4/2)段目)のビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径かそれ以上である。6段スタックされたビアの場合、コア基板側から数えて1段目及び3段目(6-(6/2)段目)のビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径かそれ以上である。8段スタックされたビアの場合、コア基板側から数えて1段目及び4段目(8-(8/2)段目)のビアのビアボトム径が、ビアトップ径と略同一径かそれ以上である。
さらに、6段スタックされたビアは、コア基板側から数えて2段目のビアのビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上にすると接続信頼性が向上するためより好ましい。8段スタックされたビアは、コア基板側から数えて2段目と3段目のビアのビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上にすると接続信頼性が向上するためより好ましい。すなわち、6段以上スタックされたビアの場合は、コア基板側から数えて1段目のビアからn-(n/2)(nは偶数の段数)段目のビアまでのビアのビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上にすることが接続信頼性が向上するため好ましい。
任意にはなるが、6段スタックされたビアでは、コア基板側から数えて4段目、8段スタックされたビアでは、コア基板側から数えて5段目と6段目のビアのビアボトム径をビアトップ径と略同一径かそれ以上にすると、熱衝撃試験が3000サイクル要求された場合に効果がある。
本発明を説明するに当たって、8段スタックされたビアまでについて説明したが、ビアのスタック数はこれに限らず任意に選択することができる。
【符号の説明】
【0031】
1:コア基板
2:めっきスルーホール
3:充填物
4:蓋めっき
5:ビルドアップ層
5a:ビルドアップ層(ガラスクロスが薄く樹脂比率が78%以上)
5b:ビルドアップ層(低損失絶縁材料を絶縁樹脂で挟み込んだ複合構造)
5c:低損失絶縁材料
5d:絶縁樹脂
6、6a、6b:3段以上のスタックされた円筒形状のビア
7:3段以上のスタックされたつつみ形状のビア
8:3段以上のスタックされたテーパ形状のビア
9:ビア底部の断面積
10:ビア中間部の断面積
11:ビアトップの断面積
B:ビアボトム
T:ビアトップ
100、200,300、400、500:多層プリント配線板