(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037442
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 9/06 20060101AFI20240312BHJP
B25J 18/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B25J9/06 B
B25J18/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142315
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉森 莞爾
(72)【発明者】
【氏名】田中 悠登
(72)【発明者】
【氏名】三原 信彦
(72)【発明者】
【氏名】松浦 英典
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707CU05
3C707CU08
3C707CY06
3C707CY29
(57)【要約】
【課題】剛性を確保しつつ軽量化を図ること。
【解決手段】ロボットは、基台と、旋回ベースと、ロアアームと、アッパーアームとを備える。基台は、設置面に固定される。旋回ベースは、基台の上面側に基端側が支持され、鉛直向きに沿う第1軸まわりに旋回する。ロアアームは、第1延伸部と、第2延伸部と、中空の連結部とを含む。第1延伸部は、第2軸と第3軸とを結ぶ向きに延伸する。第2延伸部は、第1延伸部と間隔をあけて対向するとともに第1延伸部と同じ向きに延伸する。中空の連結部は、第1延伸部と第2延伸部とを第2軸と第3軸との間で連結する。また、連結部は、連結部の延伸向きの方向視で、連結部の対向する内壁同士をつなぐ複数のリブが交差する補強部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に固定される基台と、
前記基台の上面側に基端側が支持され、鉛直向きに沿う第1軸まわりに旋回する旋回ベースと、
先端側および基端側ともに二股形状であり、前記旋回ベースの先端側を挟み込むように基端側が支持され、前記第1軸と垂直な第2軸まわりに旋回するロアアームと、
前記ロアアームの先端側に挟み込まれるように基端側が支持され、前記第2軸と平行な第3軸まわりに旋回するアッパーアームと
を備え、
前記ロアアームは、
前記第2軸と前記第3軸とを結ぶ向きに延伸する第1延伸部と、
前記第1延伸部と間隔をあけて対向するとともに前記第1延伸部と同じ向きに延伸する第2延伸部と
前記第1延伸部と前記第2延伸部とを前記第2軸と前記第3軸との間で連結する中空の連結部と
を含み、
前記連結部は、
該連結部の延伸向きの方向視で、該連結部の対向する内壁同士をつなぐ複数のリブが交差する補強部を有すること
を特徴とするロボット。
【請求項2】
前記第1延伸部は、
駆動部および動力伝達機構が連結されるとともに、前記第2延伸部の材質よりも縦弾性係数が大きい材質であること
を特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記連結部は、
前記第1延伸部と一体化された中空の第1連結部と、
前記第2延伸部と一体化された中空の第2連結部と
を備え、
前記第1連結部は、
前記第2連結部に連結され、
前記補強部は、
前記第1連結部に設けられること
を特徴とする請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
前記第1連結部は、
前記連結部の延伸向きに沿う長さが前記第2連結部よりも短いこと
を特徴とする請求項3に記載のロボット。
【請求項5】
前記補強部は、
前記第1延伸部が前記第2延伸部と対向する面よりも前記第2連結部に近い位置に設けられること
を特徴とする請求項3に記載のロボット。
【請求項6】
前記第2連結部は、
前記第2延伸部の延伸向きに交差する外壁の厚みが当該延伸向きに沿う外壁の厚みよりも小さいこと
を特徴とする請求項3に記載のロボット。
【請求項7】
前記第1延伸部は、
前記第1連結部以外の箇所に前記第2延伸部に対向する面とは反対側の面と連通する中空部を有すること
を特徴とする請求項3に記載のロボット。
【請求項8】
前記第2延伸部は、
前記第1延伸部に対向する面とは反対側の面の少なくとも一部を覆うカバーを備え、
前記カバーは、
当該反対側の面との間に空間を形成すること
を特徴とする請求項3に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の関節部をそれぞれ駆動して動作するロボットが知られている。かかるロボットの先端には、溶接や把持といった用途にあわせたエンドエフェクタが取り付けられ、ワークの加工や移動といった様々な作業が行われる。
【0003】
また、板状の主構造部と、主構造部よりも板厚が薄い板状の補助構造部とが間隔をあけて対向するアームを有するロボットが提案されている。ここで、主構造部と補助構造部とは、両者を結ぶように延伸する連結部によって連結されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したアームには、剛性を確保しつつ軽量化を図る観点からは、改善の余地がある。
【0006】
実施形態の一態様は、剛性を確保しつつ軽量化を図ることができるアームを有するロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係るロボットは、基台と、旋回ベースと、ロアアームと、アッパーアームとを備える。基台は、設置面に固定される。旋回ベースは、前記基台の上面側に基端側が支持され、鉛直向きに沿う第1軸まわりに旋回する。ロアアームは、先端側および基端側ともに二股形状であり、前記旋回ベースの先端側を挟み込むように基端側が支持され、前記第1軸と垂直な第2軸まわりに旋回する。アッパーアームは、前記ロアアームの先端側に挟み込まれるように基端側が支持され、前記第2軸と平行な第3軸まわりに旋回する。前記ロアアームは、第1延伸部と、第2延伸部と、中空の連結部とを含む。第1延伸部は、前記第2軸と前記第3軸とを結ぶ向きに延伸する。第2延伸部は、前記第1延伸部と間隔をあけて対向するとともに前記第1延伸部と同じ向きに延伸する。中空の連結部は、前記第1延伸部と前記第2延伸部とを前記第2軸と前記第3軸との間で連結する。前記連結部は、該連結部の延伸向きの方向視で、該連結部の対向する内壁同士をつなぐ複数のリブが交差する補強部を有する。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様によれば、剛性を確保しつつ軽量化を図ることができるアームを有するロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るロボットの側面図である。
【
図7】
図7は、ロボットシステムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するロボットの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
また、以下に示す実施形態では、「垂直」、「直交」あるいは「鉛直」といった表現を用いるが、厳密にこれらの状態を満たすことを要しない。すなわち、上記した各表現は、製造精度、設置精度、処理精度、検出精度などのずれを許容するものとする。
【0012】
まず、実施形態に係るロボット10について
図1を用いて説明する。
図1は、実施形態に係るロボット10の側面図である。
図1では、説明をわかりやすくするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含んだ3次元の直交座標系を示している。かかる直交座標系は、以下の説明で用いる他の図面においても示す場合がある。なお、「直交」とは、お互いに「垂直」で、かつ、「交差」することを指す。
【0013】
図1に示すように、ロボット10は、基台10bと、第1アーム11と、第2アーム12と、第3アーム13と、第4アーム14と、第5アーム15と、第6アーム16とを備える。なお、以下では、第1アーム11を旋回ベース11と、第2アーム12をロアアーム12と、第3アーム13をアッパーアーム13と、それぞれ記載することとする。
【0014】
ここで、
図1では、ロアアーム12を鉛直向きに旋回させるとともに、アッパーアーム13を水平向きに旋回させた姿勢をとったロボット10を示している。また、以下では、
図1に示したロボット10の姿勢において、Y軸正方向をロボット10の背面と、Y軸負方向をロボット10の正面と、それぞれ呼ぶこととする。
【0015】
基台10bは、設置面ISに固定される。旋回ベース11は、基台10bの上面側に基端側が支持され、鉛直向きに沿う第1軸A1まわりに旋回する。ここで、「旋回(pivot)」とは、隣り合うアームのなす角度を変化させる動作を指す。また、「回転(revolution)」とは、隣り合うアームのなす角度を変化させずに相対的にねじれるように回転させる動作を指す。なお、「旋回」とは、回転軸まわりにアームを振り回す動作を指し、「回転」とは、アームの延伸向きに沿う回転軸まわりにアームを回す動作を指すともいえる。また、本実施形態では、上記したように「旋回」および「回転」を使い分けることとしたが、ロボットのアームの形状、関節軸の位置や向きによっては「旋回」とも「回転」ともいえる形態があるため、ロボットの回転関節の動作を総じて「回転」と呼ぶこととしてもよい。
【0016】
ロアアーム12は、先端側および基端側ともに二股形状であり、旋回ベース11の先端側を挟み込むように基端側が支持され、第1軸A1と垂直な第2軸A2まわりに旋回する。アッパーアーム13は、ロアアーム12の先端側に挟み込まれるように基端側が支持され、第2軸A2と平行な第3軸A3まわりに旋回する。
【0017】
第4アーム14は、アッパーアーム13の先端側に基端側が支持され、第3軸A3と垂直な第4軸A4まわりに回転する。第5アーム15は、第4アーム14の先端側に基端側が支持され、第4軸A4と直交する第5軸A5まわりに旋回する。第6アーム16は、第5アーム15の先端側に基端側が支持され、第5軸A5と直交する第6軸A6まわりに回転する。なお、第6アーム16の先端側には、各種エンドエフェクタを着脱することができる。
【0018】
ここで、
図1に示した拡大
図S1を用いてロアアーム12の構成についてさらに詳細に説明する。なお、拡大
図S1は、
図1に示したY軸正方向から
図1に示した姿勢のロアアーム12をみた図に相当する。
【0019】
拡大
図S1に示すように、ロアアーム12は、第1延伸部100と、第2延伸部200と、連結部300とを含む。第1延伸部100は、第2軸A2と第3軸A3とを結ぶ向き、すなわち、Z軸に沿う向きに延伸する。また、第2延伸部200は、第1延伸部100と間隔をあけて対向するとともに第1延伸部100と同じ向き、すなわち、Z軸に沿う向きに延伸する。つまり、第2延伸部200は、第2軸A2および第3軸A3の軸線方向に間隔をあけて対向する。
【0020】
連結部300は、中空構造であり、第1延伸部100と第2延伸部200とを第2軸A2と第3軸A3との間で連結する。ここで、中空の連結部300は、連結部300の延伸向き、すなわち、X軸に沿う向きの方向視で、中空の連結部300の対向する内壁同士をつなぐ複数のリブが交差する補強部312を有する(
図1に示したロボット10の側面図参照)。なお、補強部312の詳細な構成については、
図3および
図4を用いて後述することとする。
【0021】
このように、ロアアーム12は、第1延伸部100と第2延伸部200とを連結する連結部300が中空である。また、連結部300は、X軸に沿う向きの方向視で、連結部300における中空部分における対向する内壁同士をつなぐ補強部312を有する。
【0022】
具体的には、補強部312は、X軸に沿う向きの方向視で、中空の連結部300における対向する内壁同士をつなぐリブを複数含んでおり、かかる複数のリブはお互いに一体化しつつ交差している。
【0023】
このように、連結部300を中空としつつ、連結部300に補強部312を設けることで、ロアアーム12全体としての剛性を確保しつつ軽量化を図ることができる。また、かかるロアアーム12を用いることとすれば、ロボット10全体としても剛性を確保しつつ軽量化を図ることができる。
【0024】
次に、
図1に示したロボット10の構成について
図2を用いてさらに詳細に説明する。
図2は、ロボット10の背面図である。
図2に示すように、ロアアーム12は、先端側および基端側がそれぞれ二股形状であり、基端側が旋回ベース11の先端側を挟み込む形状を有しており、先端側についてはアッパーアーム13の基端側を挟み込む形状を有している。
【0025】
ここで、旋回ベース11の先端側には、駆動部Mが内蔵される。なお、かかる駆動部Mは、第2軸A2を駆動するため、符号に軸番号を付して駆動部M2のように記載することとする。なお、他の軸についての駆動部Mについても同様の記載を行うこととする。
【0026】
また、ロアアーム12における第1延伸部100の基端側には、駆動部M2の駆動力を伝達する減速機などの動力伝達機構Tが接続される。なお、かかる動力伝達機構Tは、第2軸A2を駆動する駆動力を伝達するため、符号に軸番号を付して動力伝達機構T2のように記載することとする。なお、他の軸についての動力伝達機構Tについても同様の記載を行うこととする。
【0027】
また、アッパーアーム13の基端側には、駆動部M3が内蔵される。そして、ロアアーム12における第1延伸部100の先端側には、駆動部M3の駆動力を伝達する動力伝達機構T3が接続される。
【0028】
このように、第1延伸部100には、駆動部Mおよび動力伝達機構Tが連結される。一方で、第2延伸部200には、駆動部Mおよび動力伝達機構Tは連結されない。そこで、本実施形態に係るロボット10では、ロアアーム12における第1延伸部100の材質を、第2延伸部200の材質よりも縦弾性係数(ヤング率)が大きい材質とすることとした。
【0029】
たとえば、第1延伸部100は、球状黒鉛鋳鉄などの鋳鉄を用いた鋳鉄製とすることができる。また、第2延伸部200は、アルミ合金を用いたアルミダイカスト製とすることができる。なお、第1延伸部100の縦弾性係数が、第2延伸部200の縦弾性係数よりも大きければ、各延伸部の材質の組み合わせをその他の材質(材料)の任意の組み合わせとすることとしてもよい。
【0030】
このように、ロアアーム12における第1延伸部100の材質を、第2延伸部200の材質よりも縦弾性係数が大きい材質とすることで、駆動部Mおよび動力伝達機構Tが連結される第1延伸部100の剛性を確保することができる。また、第1延伸部100をロアアーム12の剛性を主に担う部位とする一方、第2延伸部200を剛性よりも軽量であることに重点を置いた、剛性を補助的に担う部位とすることで、ロアアーム12全体としての軽量化を図ることができる。
【0031】
また、
図2に示したように、連結部300は、第1延伸部100と一体化された中空の第1連結部310と、第2延伸部200と一体化された中空の第2連結部320とを備える。つまり、第1連結部310は第1延伸部100と同じ材質で一体成形され、第2連結部320は第2延伸部200と同じ材質で一体成形される。
【0032】
つまり、連結部300は、第1延伸部100と一体化された中空の第1連結部310と、第2延伸部200と一体化された中空の第2連結部320との総称である。そして、第1連結部310および第2連結部320は、中空部分同士が連通するように連結される。なお、
図1に示した補強部312は、第1連結部310に設けられる。補強部312の詳細については、
図3および
図4を用いて後述することとする。
【0033】
以下では、第1延伸部100および第1連結部310をまとめて第1延伸部100と呼び、第2延伸部200および第2連結部320をまとめて第2延伸部200と呼ぶ場合がある。
【0034】
このように、補強部312を第1延伸部100と一体化された第1連結部310に設けることで、ロアアーム12の剛性を主に担う部位である第1延伸部100における、たとえば、X方向の曲げ(1次振動モード)や、Y方向の曲げ(2次振動モード)などの振動モードに対する固有振動数を高めることができる。また、第1延伸部100の剛性を確保することができ、ひいてはロアアーム12全体としての剛性を確保することができる。
【0035】
ここで、第1延伸部100から突出する第1連結部310の突出量を「L1」とし、第2延伸部200から突出する第2連結部320の突出量を「L2」とすると、両者の大小関係は「L2>L1」である。
【0036】
つまり、第1連結部310の延伸向きに沿う長さ(X軸に沿う長さ)は、第2連結部320の延伸向きに沿う長さ(X軸に沿う長さ)よりも短い。このようにすることで、連結部300を延伸向きに等分する場合よりも、第1延伸部100の体積を減らすことができる。すなわち、第2連結部320よりも縦弾性係数が大きいことから比重が大きくなる場合が多い第1延伸部100の体積を減らすことができる。したがって、ロアアーム12全体としての軽量化を図ることができる。
【0037】
次に、
図2に示した第1延伸部100について
図3および
図4を用いてさらに詳細に説明する。
図3は、第1延伸部100の側面図であり、
図4は、第1延伸部100の正面図である。なお、
図3は、
図2と同じ方向視における図(Y軸正方向からみた図)に相当し、
図4は、第1連結部310が突出した面側からみた図、すなわち、
図2に示した第2延伸部200側からみた図(X軸正方向からみた図)に相当する。
【0038】
図3に示すように、第1延伸部100は、
図2に示した第2延伸部200に対向する面(以下、「内面」と記載する場合がある)とは反対側の面(以下、「外面」と記載する場合がある)と、先端側および基端側でそれぞれ連通する中空部120を備える。
【0039】
このように、第1延伸部100に中空部120を設けることで、第1延伸部100の軽量化を図ることができる。なお、各中空部120は、中空の第1連結部310側から第1延伸部100の延伸向きに沿って各端部へ向けて延伸するとともに、第1延伸部100の外面とそれぞれ連通する。なお、
図3には2つの中空部120を示しているが、中空部120の個数を1つとしたり、3つ以上としたりすることとしてもよい。なお、第1延伸部100における先端側および基端側にはX軸方向に沿う向きに貫通する貫通孔101が設けられている。貫通孔101は、
図2に示した動力伝達機構T(T2およびT3)の取り付けに用いられる。
【0040】
ここで、第1延伸部100は、先端側および基端側の外面をそれぞれ覆うカバー150を備える。各カバー150は、貫通孔101および各中空部120への連通口をそれぞれ覆うことになる。カバー150で上記した連通口を覆うことによって、第1延伸部100内部への粉塵や水などの侵入を防いだり、アームの表面をなだらかな形状としたりすることができる。
【0041】
また、カバー150の材質については、第1延伸部100と同じ材質としてもよいが、樹脂などの軽量部材とすることもできる。軽量部材のカバー150を用いることで、第1延伸部100全体としての軽量化を図ることができる。
【0042】
なお、カバー150で覆われる第1延伸部100の表面に、たとえば、第1延伸部100の延伸向きに延伸する凸状あるいは凹状の形状を設けることでリブを形成することとしてもよい。また、リブの延伸向きは、第1延伸部100の延伸向きとは異なる向きとしてもよいし、複数の向きを組み合わせることとしてもよい。
【0043】
このように、第1延伸部100の具体的な形状に応じて剛性を保ちたい向きや部位にリブを形成しつつ、その他の部分の厚みを薄くすることで、第1延伸部100の剛性を保ちつつ、軽量化を図ることができる。また、表面の凹凸をカバー150によって覆うことで、第1延伸部100の外形をなだらかな形状とすることができる。
【0044】
また、
図3に示したように、中空の第1連結部310は、中空を取り囲むように第1延伸部100の内面から突出する外壁311を備える。また、第1連結部310の中空部分における底面110は、第1連結部310を除いた第1延伸部100の内面よりも外面寄りにある。
【0045】
このようにすることで、第1延伸部100を薄肉化することができ、第1延伸部100の軽量化を図ることが可能となる。なお、底面110の位置を、第1延伸部100における内面の位置とあわせることとしたり、第1延伸部100の内面から突出した位置としたりすることとしてもよい。
【0046】
また、
図3に示したように、第1連結部310は、外壁311の内壁から突出して外壁311の内壁同士をつなぐ補強部312を備える。ここで、補強部312は、第1延伸部100の内面よりも、
図2に示した第2連結部320に近い位置に設けられる。
【0047】
このように、補強部312を、第1延伸部100の延伸向き(Z軸に沿う向き)に延伸する延伸部分から、正面側(X軸正方向側)へシフトした位置に設けることで、第1延伸部100におけるX方向の曲げ(1次振動モード)の振動モードに対する固有振動数を高めることができる。
【0048】
ここで、補強部312の構成について
図4を用いてさらに詳細に説明する。
図4に示すように、第1延伸部100を
図2に示した第2延伸部200側からみると、第1連結部310の形状は、中空の矩形状である。そして、矩形状に連なる外壁311の内壁からは、矩形の対角線をそれぞれ結ぶリブが突出しており、各リブはお互いに交差する部分が一体化されている。なお、他のアームとの干渉を抑制する観点から、矩形状に連なる外壁311における角部の少なくとも1つをR形状としてもよい。
【0049】
なお、
図4に示したように、リブの間からは、
図3に示した底面110をみることができる。つまり、補強部312は、底面110寄りの中空部分と外部とを連通させる空洞を各リブの間に有している。このように、補強部312を、お互いに交差するリブ形状とし、リブとリブとの間を空洞とすることで、かかる空洞を介して鋳造時に用いる砂型等の排出を行うことが可能となる。したがって、第1連結部310および第1延伸部100を一体的に鋳造しやすい形状となっている。なお、貫通孔101からは、
図2に示した動力伝達機構T(T2およびT3)の取り付け前の状態では、
図3に示したカバー150の内面をみることができる。
【0050】
なお、
図4に示した方向視において、上記した空洞を有することを条件として、補強部312の形状を
図4に示した形状とは異なる形状としてもよい。たとえば、中空で矩形の第1連結部310における対向する内壁の中点同士を結ぶリブを、対角線同士を結ぶリブと組み合わせることとしてもよく、対角線同士を結ぶリブの代わりに用いることとしてもよい。なお、上記したリブの配置や個数は、一例であり、各リブの配置や個数を限定するものではない。
【0051】
また、第1連結部310の延伸向きについて、複数の補強部312を、お互いに間隔をあけて設けることとしてもよい。また、複数の補強部312を設ける場合に、各補強部312の形状をそれぞれ異なる形状とすることとしてもよい。
【0052】
なお、
図4では、第1連結部310におけるY軸に沿う向きの幅が、第1延伸部100の延伸部分における幅と同一である場合を示したが、第1連結部310の幅を、第1延伸部100の幅よりも小さくすることとしてもよい。また、
図4に破線で示したように、第1延伸部100の外面側には、貫通孔101を取り囲むように、カバー150を取り付けるためのリブが、第1延伸部100の外形に沿ってカバー150へ向かって突出するように形成される。ここで、
図3に示した側面図では、貫通孔101と、中空部120とが直接的には連通していない(カバー150内の空間を介して間接的に連通している)場合を示したが、貫通孔101と、中空部120とが第1延伸部100の延伸向きについて直接的に連通するようにしてもよい。
【0053】
次に、
図2に示した第2延伸部200について
図5および
図6を用いてさらに詳細に説明する。
図5は、第2延伸部200の側面図であり、
図6は、第2延伸部200の正面図である。なお、
図5は、
図2と同じ方向視における図(Y軸正方向からみた図)に相当し、
図6は、第2連結部320が突出した面、すなわち、
図2に示した第1延伸部100側からみた図(X軸負方向からみた図)に対応する。
【0054】
図5に示すように、第2延伸部200は、
図2に示した第1延伸部100に対向する面(以下、「内面」と記載する場合がある)とは反対側の面(以下、「外面」と記載する場合がある)を覆うカバー250を備える。なお、
図5では、第2延伸部200の外面すべてを覆うカバー250を示したが、カバー250が外面の少なくとも一部を覆うようにしてもよく、外面を覆うカバー250を複数設けることとしてもよい。
【0055】
ここで、カバー250は、第2延伸部200の外面との間に空間を形成する形状を有している。したがって、かかる空間にケーブルやホースといった線条体を配索することができる。つまり、第2延伸部200の内部にケーブルなどの線条体を配索することができる。
【0056】
また、カバー250の材質については、第2延伸部200と同じ材質としてもよいが、樹脂などの軽量部材とすることもできる。軽量部材のカバー250を用いることで、第2延伸部200全体としての軽量化を図ることができる。
【0057】
また、
図5に示したように、中空の第2連結部320は、中空を取り囲むように第2延伸部200の内面から突出する外壁321を備える。なお、第2連結部320の中空部分は、X軸に沿う向きに貫通しており、第2延伸部200の外面側についてはカバー250で覆われている。
【0058】
ここで、第2延伸部200における延伸部分におけるカバー250で覆われた空間と、第2連結部320の中空部分とは連通している。また、第2延伸部200における先端側および基端側にはX軸方向に沿う向きに貫通する貫通孔201が設けられている。したがって、かかる貫通孔201経由することで、
図2に示した旋回ベース11とアッパーアーム13とを経由するケーブル等の線条体を、第2延伸部200内の空間に配索することができる。
【0059】
次に、第2連結部320の形状について説明する。
図6に示すように、第2延伸部200を
図2に示した第1延伸部100側からみると、第2連結部320の形状は、中空の矩形状である。つまり、第2延伸部200は、矩形状に連なる外壁321を備える。なお、第2延伸部200の中空部分および貫通孔201からは、
図5に示したカバー250の内面をみることができる。なお、
図6に破線で示したように、第2延伸部200の外面側には、第2延伸部200の外周に沿ってカバー250へ向かって突出するように、カバー250を取り付けるためのリブが形成される。
【0060】
ここで、
図6に示すように、外壁321の厚みは、第2延伸部200の延伸向き(Z軸に沿う向き)の辺と、かかる延伸向きと交差する辺とで異なる。具体的には、延伸向きと交差する辺の厚みを「T2」とし、延伸向きに沿う辺の厚みを「T1」とすると、両者の大小関係は「T2<T1」である。
【0061】
このように、ロアアーム12全体としての固有振動モードに対する固有振動数の低下に影響を与えにくい部位の外壁321の厚みを、影響を与えやすい部位の外壁321の厚みよりも薄くしている。したがって、かかる固有振動モードに対する固有振動数の低下を抑制しつつ、第2延伸部200の軽量化を図ることができる。
【0062】
なお、
図6では、第2連結部320におけるY軸に沿う向きの幅が、第2延伸部200の延伸部分における幅と同一である場合を示したが、第2連結部320の幅を、第2延伸部200の幅よりも小さくすることとしてもよい。
【0063】
次に、ロボットシステム1の構成について
図7を用いて説明する。
図7は、ロボットシステム1の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、ロボットシステム1は、ロボット10と、コントローラ500とを備える。なお、ロボット10は、コントローラ500に接続されている。
【0064】
まず、ロボット10については
図1等を用いて既に説明したので、ここでの説明を省略する。コントローラ500は、制御部510と、記憶部520とを備える。制御部510は、動作制御部511を備える。記憶部520は、教示情報521を記憶する。
【0065】
ここで、コントローラ500は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0066】
コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部510の動作制御部511として機能する。なお、動作制御部511をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0067】
また、記憶部520は、たとえば、RAMやHDDに対応する。RAMやHDDは、教示情報521を記憶することができる。なお、コントローラ500は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して上記したプログラムや各種情報を取得することとしてもよい。さらに、コントローラ500を複数台の相互に通信可能な装置として構成してもよく、上位または下位の装置と通信可能な階層式の装置として構成してもよい。
【0068】
制御部510は、ロボット10の動作制御を行う。なお、コントローラ500が複数台で構成される場合には、制御部510は、コントローラ500間の同期をとる処理を併せて行う。動作制御部511は、教示情報521に基づいてロボット10を動作させる。動作制御部511は、ロボット10の動力源であるアクチュエータ(図示せず)におけるエンコーダ値を用いつつフィードバック制御を行うなどしてロボット10の動作精度を向上させる。
【0069】
教示情報521は、ロボット10へ動作を教示するティーチング段階で作成され、ロボット10の動作経路を規定する「ジョブ」を含んだ情報である。なお、
図7には、1台のロボット10と、1台のコントローラ500とを示したが、ロボット10を複数台としたり、コントローラ500を複数台としたりすることとしてもよい。
【0070】
上述してきたように、実施形態の一態様に係るロボット10は、基台10bと、旋回ベース11と、ロアアーム12と、アッパーアーム13とを備える。基台10bは、設置面ISに固定される。旋回ベース11は、基台10bの上面側に基端側が支持され、鉛直向きに沿う第1軸A1まわりに旋回する。ロアアーム12は、先端側および基端側ともに二股形状であり、旋回ベース11の先端側を挟み込むように基端側が支持され、第1軸A1と垂直な第2軸A2まわりに旋回する。アッパーアーム13は、ロアアーム12の先端側に挟み込まれるように基端側が支持され、第2軸A2と平行な第3軸A3まわりに旋回する。
【0071】
ロアアーム12は、第1延伸部100と、第2延伸部200と、中空の連結部300とを含む。第1延伸部100は、第2軸A2と第3軸A3とを結ぶ向きに延伸する。第2延伸部200は、第1延伸部100と間隔をあけて対向するとともに第1延伸部100と同じ向きに延伸する。中空の連結部300は、第1延伸部100と第2延伸部200とを第2軸A2と第3軸A3との間で連結する。連結部300は、連結部300の延伸向きの方向視で、連結部300の対向する内壁同士をつなぐ複数のリブが交差する補強部312を有する。
【0072】
このように、ロボット10のロアアーム12は、第1延伸部100と第2延伸部200とを連結する連結部300が中空であり、連結部300の対向する内壁同士をつなぐ複数のリブが交差する補強部312を有するので、ロアアーム12の剛性を確保しつつ軽量化を図ることができる。したがって、かかるロアアーム12を備えるロボット10の剛性を確保しつつ軽量化を図ることができる。
【0073】
なお、上述した実施形態では、いわゆる6軸のロボット10を示したが、ロボットの軸数は、5軸以下でもよく、7軸以上であってもよい。また、上述した実施形態では、ロボット10の第2アームであるロアアーム12が、第1延伸部100、第2延伸部200および中空の連結部300を備える構成を示したが、その他のアームにかかる構成を適用することとしてもよい。
【0074】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施例に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 ロボットシステム
10 ロボット
10b 基台
11 旋回ベース(第1アーム)
12 ロアアーム(第2アーム)
13 アッパーアーム(第3アーム)
14 第4アーム
15 第5アーム
16 第6アーム
100 第1延伸部
101 貫通孔
110 底面
120 中空部
150 カバー
200 第2延伸部
201 貫通孔
250 カバー
300 連結部
310 第1連結部
311 外壁
312 補強部
320 第2連結部
321 外壁
500 コントローラ
510 制御部
511 動作制御部
520 記憶部
521 教示情報
A1 第1軸
A2 第2軸
A3 第3軸
A4 第4軸
A5 第5軸
A6 第6軸
M 駆動部
T 動力伝達機構