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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037447
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】映像処理装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/268 20060101AFI20240312BHJP
   H04N 5/66 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H04N5/268
H04N5/66 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142325
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523301949
【氏名又は名称】ジャパン・イーエム・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆義
(72)【発明者】
【氏名】秋山 誠司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】池澤 治
(72)【発明者】
【氏名】佐野 恭三
(72)【発明者】
【氏名】藤原 広嗣
【テーマコード(参考)】
5C023
5C058
【Fターム(参考)】
5C023AA11
5C023AA21
5C023BA11
5C023BA15
5C023CA03
5C058AB06
5C058BA24
5C058BA35
(57)【要約】
【課題】映像の合成を担う装置の故障による影響を可及的に抑制可能な映像処理装置を開示する。
【解決手段】映像処理装置は、第1映像信号が入力される第1入力部と、第1映像信号とは異なる第2映像信号が入力される第2入力部と、映像信号を外部へ出力する映像出力部と、第1入力部と映像出力部との間に設けられる映像信号の経路であり、第1入力部から流れる第1映像信号に第2入力部から流れる第2映像信号を合成した合成映像信号を生成する合成処理部を経路の途中に有する合成処理経路と、第1入力部と映像出力部との間に設けられる映像信号の経路であり、合成処理部をバイパスするバイパス経路と、第1入力部と映像出力部とを繋ぐ映像信号の経路ルートを、合成処理経路とバイパス経路との間で切り替え可能な制御部と、を備え、制御部は、少なくとも合成処理部の故障を検知すると、経由ルートをバイパス経路へ切り替える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1映像信号が入力される第1入力部と、
前記第1映像信号とは異なる第2映像信号が入力される第2入力部と、
映像信号を外部へ出力する映像出力部と、
前記第1入力部と前記映像出力部との間に設けられる映像信号の経路であり、前記第1入力部から流れる前記第1映像信号に前記第2入力部から流れる前記第2映像信号を合成した合成映像信号を生成する合成処理部を経路の途中に有する合成処理経路と、
前記第1入力部と前記映像出力部との間に設けられる映像信号の経路であり、前記合成処理部をバイパスするバイパス経路と、
前記第1入力部と前記映像出力部とを繋ぐ映像信号の経路ルートを、前記合成処理経路と前記バイパス経路との間で切り替え可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、少なくとも前記合成処理部の故障を検知すると、前記経由ルートを前記バイパス経路へ切り替える、
映像処理装置。
【請求項2】
前記経路ルートを前記合成処理経路と前記バイパス経路との間で切り替え可能な切替スイッチを更に備え、
前記制御部は、前記切替スイッチへ送る制御信号により前記経由ルートの切り替えを行う、
請求項1に記載の映像処理装置。
【請求項3】
前記切替スイッチは、前記制御信号が無い場合は前記経由ルートを前記バイパス経路にする、
請求項2に記載の映像処理装置。
【請求項4】
前記制御部の作動状況を監視する監視部を更に備え、
前記監視部は、前記制御部の作動が確認されない場合に前記映像処理装置を再起動させる、
請求項1に記載の映像処理装置。
【請求項5】
前記制御部の異常を外部へ通知する通知部を更に備える、
請求項1に記載の映像処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1映像信号の異常を検知すると、前記第1映像信号の映像を代替映像へ切り替え、又は、前記第1映像信号の映像を閉塞する、
請求項1から5の何れか一項に記載の映像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の映像処理技術が提案されている(特許文献1-3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-113392号公報
【特許文献2】特開2002-10138号公報
【特許文献3】特開2020-3587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多数の人が往来する箇所には、各種の情報を発信するための映像を映し出す表示装置が設置されることがある。例えば、道路や駅、空港といった交通に関わるエリアの表示装置では交通情報や報道番組等の情報が発信され、繁華街やスタジアムといった娯楽に関わるエリアの表示装置では宣伝広告や施設の案内等の情報が発信される。
【0005】
表示装置に映像を映し出す際の表示形態として、例えば、常時映し出す主映像に、緊急情報や気象情報といった特定時に映し出す副映像を合成する形態がある。このような合成を行うには、映像の合成を担う装置を用いることになる。しかし、多数の人が往来する箇所に設置される表示装置の場合、映像の合成を担う装置の故障で映像信号が途切れると、主映像と副映像の何れも映っていない画面が表示された表示装置を多数の人が見ることになる。
【0006】
そこで、本願は、映像の合成を担う装置の故障による影響を可及的に抑制可能な映像処理装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の1つの側面は、次のような映像処理装置によって例示される。映像処理装置は、第1映像信号が入力される第1入力部と、第1映像信号とは異なる第2映像信号が入力される第2入力部と、映像信号を外部へ出力する映像出力部と、第1入力部と映像出力部との間に設けられる映像信号の経路であり、第1入力部から流れる第1映像信号に第2入力部から流れる第2映像信号を合成した合成映像信号を生成する合成処理部を経路の途中に有する合成処理経路と、第1入力部と映像出力部との間に設けられる映像信号の経路であり、合成処理部をバイパスするバイパス経路と、第1入力部と映像出力部とを繋ぐ映像信号の経路ルートを、合成処理経路とバイパス経路との間で切り替え可能な制御部と、を備え、制御部は、少なくとも合成処理部の故障を検知すると、経由ルートをバイパス経路へ切り替える。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、映像の合成を担う装置の故障による影響を可及的に抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る映像処理装置のハードウェア構成を示した図である。
図2図2は、映像処理装置において実現される動作フローの一例を示した図である。
図3図3は、ディスプレイ装置に表示される映像の一例を示した図である。
図4図4は、比較例に係る映像処理装置のハードウェア構成を示した図である。
図5図5は、動作フローの第1変形例を示した図である。
図6図6は、動作フローの第2変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
以下、実施形態について説明する。下記に示す実施形態の構成は例示であり、開示の技術は実施形態の構成に限定されない。
【0011】
図1は、実施形態に係る映像処理装置のハードウェア構成を示した図である。映像処理装置10は、主映像に副映像を合成した合成映像を生成する装置であり、例えば、主映像再生装置1及び副映像再生装置2が入力側に接続され、ディスプレイ装置3が出力側に接続される。本実施形態では、説明の便宜上、映像処理装置10を副映像再生装置2と別体品として説明するが、例えば、映像処理装置10は副映像再生装置2と共に一つの筐体内に組み込まれた一体品であってもよいし、或いは、映像処理装置10は主映像再生装置1やディスプレイ装置3と共に一つの筐体内に組み込まれた一体品であってもよい。
【0012】
映像処理装置10で入出力される映像信号としては、HDMI(High Definition Multimedia Interface:登録商標)に代表されるような映像と音声をデジタル信号で取り扱うものが好適であるが、例えば、アナログ信号で取り扱うものであってもよい。なお、以下においては、画像と音声の両方を含む信号を「映像信号」と呼ぶ場合の他、音声を含まない画像のみの信号を「映像信号」と呼び、映像を含まない音声のみの信号を「音声信号」と呼ぶ場合もある。
【0013】
映像処理装置10の入力側に接続される主映像再生装置1としては、映像信号を出力する各種の装置が挙げられる。例えば、ディスプレイ装置3が道路や駅、空港といった交通に関わるエリアに設置される場合には、主映像再生装置1としては、道路状況や鉄道の運行状況、航空機の発着状況といった交通に関わる映像の信号を出力する情報機器やネットワーク機器、受信機等が該当する。また、例えば、ディスプレイ装置3が繁華街やスタジアムといった娯楽に関わるエリアに設置される場合には、主映像再生装置1としては、各種の宣伝広告、施設の案内情報、競技の中継映像、報道番組等の映像の信号を出力する情報機器やネットワーク機器、受信機等が該当する。
【0014】
映像処理装置10の入力側に接続される副映像再生装置2としては、副映像用の映像信号を出力する各種の装置が挙げられる。主映像に副次的に合成する副映像としては、一時的に配信されるような情報、例えば、緊急情報や気象情報といった特定時のみ必要とされる情報を映し出した映像が挙げられる。
【0015】
映像処理装置10は、図1に示されるように、映像を合成する処理を司る合成処理部11、音声を処理する音声処理部12、各種の制御を司る制御部13を備える。また、映像処理装置10は、主映像の信号が入力される主映像信号入力端子14、副映像の信号が入力される副映像信号入力端子15、映像信号をディスプレイ装置3へ出力する映像信号出力端子16を備える。主映像信号入力端子14は、主映像再生装置1に繋がるケーブルC1を着脱可能な端子である。また、副映像信号入力端子15は、副映像再生装置2に繋がるケーブルC2を着脱可能な端子である。また、映像信号出力端子16は、ディスプレイ装置3に繋がるケーブルC3を着脱可能な端子である。映像処理装置10が副映像再生装
置2と共に一つの筐体内に組み込まれた一体品である場合、副映像信号入力端子15は、ケーブルC2を着脱可能な端子としての形態を呈しておらず、副映像再生装置2を構成する回路基板に繋がる接点等の形態を呈することになる。これと同様に、映像処理装置10が主映像再生装置1と共に一つの筐体内に組み込まれた一体品である場合は主映像信号入力端子14が単なる接点としての形態を呈し、映像処理装置10がディスプレイ装置3と共に一つの筐体内に組み込まれた一体品である場合は映像信号出力端子16が単なる接点としての形態を呈することになる。
【0016】
合成処理部11は、主映像と副映像を合成した合成映像を生成する。合成映像としては、例えば、画面を主映像の領域と副映像の領域とに分割した形態、あるいは、オーバーレイによる重畳描画の形態が挙げられる。合成処理部11は、適宜の形態の合成映像を生成する。
【0017】
映像処理装置10には、主映像信号入力端子14から映像信号出力端子16へ映像信号を流すための信号線L1と、主映像信号入力端子14から映像信号出力端子16へ音声信号を流すための信号線L2とが備わっている。そして、合成処理部11は、信号線L1の途中に設けられている。また、音声処理部12は、信号線L2の途中に設けられている。よって、映像処理装置10では、主映像信号入力端子14に入力された主映像再生装置1の映像信号を合成処理部11経由で映像信号出力端子16から出力可能であり、主映像信号入力端子14に入力された主映像再生装置1の音声信号を音声処理部12経由で映像信号出力端子16から出力可能である。
【0018】
また、映像処理装置10には、副映像信号入力端子15から合成処理部11へ映像信号を流すための信号線L3と、副映像信号入力端子15から音声処理部12へ音声信号を流すための信号線L4とが備わっている。よって、映像処理装置10では、副映像信号入力端子15に入力された副映像再生装置2の映像信号を合成処理部11で処理可能であり、副映像信号入力端子15に入力された副映像再生装置2の音声信号を音声処理部12で処理可能である。
【0019】
また、映像処理装置10には、合成処理部11をバイパスするための信号線L5が信号線L1の経路の途中に設けられている。信号線L5の一端は信号線L1において主映像信号入力端子14と合成処理部11との間に設けられた切替スイッチ17に繋がっており、信号線L5の他端は信号線L1において合成処理部11と映像信号出力端子16との間に設けられた切替スイッチ18に繋がっている。よって、主映像信号入力端子14と映像信号出力端子16とを信号線L1が繋ぐ映像信号の経路は、切替スイッチ17及び切替スイッチ18の切り替え動作により、合成処理部11を経由する経路(本願でいう「合成処理経路」の一例である)と合成処理部11を経由しない経路(本願でいう「バイパス経路」の一例である)との間で切り替え可能である。
【0020】
また、映像処理装置10には、音声処理部12をバイパスするための信号線L6が信号線L2の経路の途中に設けられている。信号線L6の一端は信号線L2において主映像信号入力端子14と音声処理部12との間に設けられた切替スイッチ17に繋がっており、信号線L6の他端は信号線L2において音声処理部12と映像信号出力端子16との間に設けられた切替スイッチ18に繋がっている。よって、主映像信号入力端子14と映像信号出力端子16とを信号線L2が繋ぐ音声信号の経路は、切替スイッチ17及び切替スイッチ18の切り替え動作により、音声処理部12を経由する経路(本願でいう「合成処理経路」の一例である)と音声処理部12を経由しない経路(本願でいう「バイパス経路」の一例である)との間で切り替え可能である。
【0021】
そして、制御部13は、例えば、合成処理部11が正常な場合等においては合成処理部
11で生成した合成映像の信号を映像信号出力端子16から出力させるために合成処理経路を選択し、合成処理部11が異常な場合等においては主映像の信号を映像信号出力端子16から出力させるためにバイパス経路を選択する。また、映像処理装置10には異常検知や監視センター4への通知等を司るためのタイマー19及び通信部20が備わっているため、合成処理部11が異常な場合等においては監視センター4へ異常が通知される。
【0022】
切替スイッチ17と切替スイッチ18は、制御部13の制御信号を受けて切り替え動作を行うが、制御部13の制御信号が無い場合はバイパス経路側へ切り替わるスイッチである。よって、例えば、映像処理装置10が停止している状態においては、主映像信号入力端子14に入力された映像信号はバイパス経路を通って映像信号出力端子16からそのまま出力される。切替スイッチ17と切替スイッチ18は、例えば、信号線の切り替えを電子的に行う半導体によって構成される。
【0023】
以下、映像処理装置10において実現される動作の詳細について説明する。図2は、映像処理装置10において実現される動作フローの一例を示した図である。映像処理装置10では、制御部13や切替スイッチ17、切替スイッチ18等の各部が各々の動作を行うことにより、下記に示すような動作フローが実現される。
【0024】
すなわち、切替スイッチ17と切替スイッチ18は制御部13の制御信号が無い場合にバイパス経路側へ切り替わるスイッチであるため、映像処理装置10を起動するとバイパス経路が選択された状態となっている。よって、映像処理装置10を起動すると、主映像再生装置1の映像がディスプレイ装置3へそのまま表示されるバイパス表示となる(S101)。
【0025】
映像処理装置10の起動後は、映像の合成を開始するか否かの判定を制御部13が行う(S102)。制御部13は、例えば、映像処理装置10の筐体等に設けられた操作スイッチに対する操作で合成表示が要求されたり、副映像信号入力端子15に副映像再生装置2の映像信号が入力されたことを検知したり、或いは、副映像再生装置2がディスプレイ装置3への表示を要求する制御信号を発信したことを検知したような場合、本ステップS102において肯定判定を行う。
【0026】
制御部13は、ステップS102の処理で肯定判定を行った場合、切替スイッチ17と切替スイッチ18に制御信号を送り、バイパス経路から合成処理経路への切り替えを行う。これにより、主映像信号入力端子14に入力された主映像再生装置1の映像信号と副映像信号入力端子15に入力された映像信号が合成処理部11において合成され、合成映像の信号が映像信号出力端子16からディスプレイ装置3へ向けて出力される。そして、ディスプレイ装置3において合成映像が表示される(S103)。
【0027】
図3は、ディスプレイ装置3に表示される映像の一例を示した図である。映像処理装置10で合成処理経路が選択されている間は、図3に示すように、主映像再生装置1の主映像と副映像再生装置2の副映像とを組み合わせた合成映像がディスプレイ装置3に表示される。また、映像処理装置10でバイパス経路が選択されている間は、図3に示すように、主映像再生装置1の主映像のみがディスプレイ装置3に表示される。
【0028】
再び図2の動作フローに沿って説明を行う。ディスプレイ装置3で合成映像が表示されている状態において、制御部13は、合成解除が指示されたか否かの判定を行う(S104)。制御部13は、例えば、映像処理装置10の筐体等に設けられた操作スイッチに対する操作で合成解除が要求され、或いは、副映像再生装置2がディスプレイ装置3への表示を要求する制御信号の発信を停止したことを検知すると、本ステップS104において肯定判定を行う。制御部13は、本ステップS104において肯定判定を行った場合、切
替スイッチ17と切替スイッチ18に送る制御信号を遮断する。これにより、合成処理経路からバイパス経路への切り替えが行われ、ステップS101におけるバイパス表示の状態になる。
【0029】
また、制御部13は、ディスプレイ装置3で合成映像が表示されている状態において、装置に異常があるか否かの判定を行う(S105)。制御部13は、例えば、合成処理部11へのレジスタアクセスで応答が無い、規定外のレジスタ設定値が確認された等々のアクセス不良を検知したり、合成処理部11から故障を知らせる信号を受けたり、或いは、切替スイッチ17や切替スイッチ18等々の異常を検知した場合、本ステップS105において肯定判定を行う。制御部13は、本ステップS105において肯定判定を行った場合、切替スイッチ17と切替スイッチ18に送る制御信号を遮断する。これにより、合成処理経路からバイパス経路への切り替えが行われ、ステップS101におけるバイパス表示の状態になる。また、制御部13は、装置の異常を通信部20経由で監視センター4へ通知する(S108)。
【0030】
また、制御部13は、ディスプレイ装置3で合成映像が表示されている状態において、映像に異常があるか否かの判定を行う(S106)。制御部13は、例えば、合成映像の画像信号が不安定な状態であることを検知したり、副映像再生装置2から副映像信号入力端子15へ入力される副映像の信号が不安定な状態であることを検知したりした場合、本ステップS106において肯定判定を行う。合成映像の画像信号が不安定な状態とは、例えば、合成後の解像度等のビデオ情報がディスプレイ装置3のディスプレイサイズと不一致であったり、或いは、音声サンプリング周波数が異常な値であったりする場合が挙げられる。制御部13は、本ステップS106において肯定判定を行った場合、切替スイッチ17と切替スイッチ18に送る制御信号を遮断する。これにより、合成処理経路からバイパス経路への切り替えが行われ、ステップS101におけるバイパス表示の状態になる。また、制御部13は、映像の異常を通信部20経由で監視センター4へ通知する(S108)。
【0031】
映像処理装置10では、装置が起動されると上記一連の動作フローが実現される。映像処理装置10であれば、映像処理装置10が故障した場合に、主映像再生装置1が繋がる主映像信号入力端子14とディスプレイ装置3が繋がる映像信号出力端子16とを繋ぐ信号線L1,L2が、合成処理部11や音声処理部12を通る合成処理経路から、合成処理部11や音声処理部12をバイパスするバイパス経路へ切り替わる。よって、本実施形態の映像処理装置10であれば、ディスプレイ装置3に主映像と副映像の何れも映っていない画面が表示された状態になる可能性が極めて低い。このため、本実施形態の映像処理装置10であれば、自身の故障による影響を可及的に抑制することが可能になる。
【0032】
近年、デジタル通信の発達、および、ディスプレイやプロジェクタなどの映像表示機器の発達により、多様な映像広告を動画表示するなど、デジタルサイネージが多く活用されている。また、映像広告だけでなく、空港の出発便案内や病院の受付番号表示など利用者に不可欠な情報の提供手段で用いられている。これらは、一般的に、画像を表示するディスプレイ装置と、多様な映像広告を保持し、ディスプレイに出力する映像出力装置で構成されている。簡素な例ではDVDプレーヤーとディスプレイの組み合わせがある。構成としては、これらの装置が一体となっているもの、或いは、別体で構成され、ディスプレイと映像出力装置とを映像用ケーブルで接続したものがある。多様な映像広告は、装置が持つ記憶ストレージに保持、あるいは、ネットワーク回線からデータ配信される仕組みがとられている。
【0033】
このように、さまざまなデジタルサイネージは、その役目上、人の目に留まるものであることから、複数の情報を合成して同時に表示する仕組みが近年は利用され始めている。
このような仕組みでは、メインとなる映像である主映像に、付加的な映像である副映像を装置で合成し、ディスプレイに表示することになる。このような映像の合成を行う場合、例えば、次のような装置を用いることも考えられる。
【0034】
図4は、比較例に係る映像処理装置のハードウェア構成を示した図である。映像処理装置110には、映像処理装置10と同様、合成処理部111や音声処理部112、制御部113が備わっている。合成処理部111は、主映像信号入力端子114と映像信号出力端子116とを繋ぐ信号線L101の途中に設けられている。また、音声処理部112は、主映像信号入力端子114と映像信号出力端子116とを繋ぐ信号線L102の途中に設けられている。そして、合成処理部111には副映像信号入力端子115に繋がる信号線L103を通じて副映像再生装置2の映像信号が入力され、音声処理部112には副映像信号入力端子115に繋がる信号線L104を通じて副映像再生装置2の音声信号が入力されるようになっている。そして、合成処理部111は、主映像信号入力端子114に入力される主映像再生装置1の主映像の信号に、副映像信号入力端子115に入力される副映像再生装置2の副映像の信号を合成する。
【0035】
この映像処理装置110には、主映像再生装置1が接続される主映像信号入力端子114とディスプレイ装置3が接続される映像信号出力端子116との間を繋ぐ信号線L101,L102の途中に、合成処理部111や音声処理部112をバイパスするバイパス経路が設けられていない。よって、映像信号の合成をこのような映像処理装置110で行うと、映像処理装置110が故障した場合に主映像と副映像のどちらの映像もディスプレイ装置3に表示できなくなり、例えば、主映像における映像広告の表示と言った本来のデジタルサイネージの目的が達成できない恐れがある。ビルの壁面といった多数の人への訴求効果を担うデジタルサイネージにおいて、本来の目的である主映像が非表示となることによる広告収入への影響は致命的である。また、例えば、駅や空港における運航状況の表示といった目的においても、これらの表示が装置の故障によって非表示となり、運行状況が確認できなくなることは多くの利用者に混乱を与える恐れがある。
【0036】
したがって、映像信号の合成を担う装置の故障によるこのような影響は可及的に抑制されることが望まれる。この点、上記実施形態の映像処理装置10であれば、映像処理装置10自身が故障しても主映像再生装置1の映像信号がディスプレイ装置3へ送られるので、映像処理装置10の故障によりディスプレイ装置3に主映像が表示されない事態を招く可能性が極めて低い。
【0037】
<第1変形例>
なお、上記実施形態に係る映像処理装置10は、次のように変形してもよい。図5は、動作フローの第1変形例を示した図である。映像処理装置10は、映像に異常があった場合に、例えば、以下のような動作を行ってもよい。本変形例は、上述した動作フローのステップS106における動作内容を詳細化したものとして捉えることができる。よって、以下、ステップS106の詳細という位置づけで説明を行う。
【0038】
制御部13は、ステップS105において否定判定を行った場合、合成映像に異常があるか否かの判定を行う(S106-1)。合成映像の異常とは、前述したように、例えば、合成後の解像度等のビデオ情報がディスプレイ装置3のディスプレイサイズと不一致であったりする場合が挙げられる。制御部13は、本ステップS106-1において肯定判定を行った場合、切替スイッチ17と切替スイッチ18に送る制御信号を遮断する。これにより、合成処理経路からバイパス経路への切り替えが行われ、ステップS101におけるバイパス表示の状態になる。また、制御部13は、ステップS108の処理を実行する。
【0039】
制御部13は、ステップS106-1において否定判定を行った場合、副映像に異常があるか否かの判定を行う(S106-2)。副映像の異常とは、前述したように、例えば、副映像再生装置2から副映像信号入力端子15へ入力される副映像の信号が不安定な状態が挙げられる。制御部13は、本ステップS106-2において肯定判定を行った場合、切替スイッチ17と切替スイッチ18に送る制御信号を遮断する。これにより、合成処理経路からバイパス経路への切り替えが行われ、ステップS101におけるバイパス表示の状態になる。また、制御部13は、ステップS108の処理を実行する。
【0040】
制御部13は、ステップS106-2において否定判定を行った場合、主映像に異常があるか否かの判定を行う(S106-3)。主映像の異常とは、例えば、主映像再生装置1から主映像信号入力端子14へ入力される主映像の信号が不安定な状態が挙げられる。制御部13は、本ステップS106-3において否定判定を行った場合、ステップS103以降の処理を再び実行する。一方、制御部13は、本ステップS106-3において肯定判定を行った場合、更に以下の処理を実行する。
【0041】
すなわち、制御部13は、ステップS106-3において肯定判定を行った場合、主映像と副映像の合成が不可能であるか否かの判定を行う(S106-4)。制御部13は、主映像に多少の異常が認められるものの、例えば、視聴に耐えられる僅かなノイズが発生している等の軽微な異常である場合には、本ステップS106-4において否定判定を行い、ステップS103以降の処理を再び実行する。このような判定処理は、例えば、映像信号のエラー率や解像度といった定量的な値が所定の閾値を上回っているか否か等に基づいて行うことができる。
【0042】
制御部13は、ステップS106-4において肯定判定を行った場合、代替映像があるか否かの判定を行う(S106-5)。代替映像とは、主映像が不調な場合に備えて予め用意される映像であり、例えば、主映像が表示できない旨の情報を記載した静止画像、審美性の高い自然風景や建築物等の各種コンテンツ画像等が挙げられる。代替映像は、制御部13のメモリに予め蓄積された映像データの映像であってもよいし、或いは、通信部20等を通じて監視センター4やクラウドから提供される映像データの映像であってもよい。
【0043】
制御部13は、ステップS106-5において肯定判定を行った場合、合成処理部11に主映像信号入力端子14から入力されている主映像再生装置1の映像を代替映像へ切り替える(S106-6)。代替映像への切り替えは、例えば、合成処理部11に設けた切替手段によって行われてもよいし、或いは、信号線L1に設けた切替手段によって行われてもよい。そして、制御部13は、ステップS103以降の処理を再び実行する。これにより、ディスプレイ装置3には代替映像と副映像とを合成した合成映像が表示される。
【0044】
一方、制御部13は、ステップS106-5において否定判定を行った場合、合成処理部11に主映像信号入力端子14から入力されている主映像再生装置1の映像を閉塞(遮断)する(S106-7)。そして、制御部13は、ステップS103以降の処理を再び実行する。これにより、ディスプレイ装置3には主映像の領域が非表示となった副映像のみの画面が合成映像として表示される。
【0045】
<第2変形例>
また、映像処理装置10は、装置の異常を以下のようにして検知するようにしてもよい。
【0046】
本変形例では、例えば、制御部13に異常が生じた場合であっても、合成処理経路からバイパス経路への切り替えを可能にする。すなわち、本変形例では、タイマー19に内蔵
されているタイマーのカウント値が規定条件を満たした場合にタイマー19が映像処理装置10のリセットを行う。本変形例では、制御部13が、例えば、タイマー19のタイマーのカウント値を初期化する更新処理を定期的に行う。よって、制御部13が正常に動作し続けている場合は、タイマーのカウント値が規定条件を満たさない。しかし、例えば、制御部13を実現するCPU(Central Processing Unit)においてコンピュータプログ
ラムの実行が停止され、タイマーのカウント値を初期化する更新処理が行われなくなると、やがてカウント値が規定条件の値に達する。カウント値が規定条件の値に達した場合にタイマー19が映像処理装置10のリセットを行うと、切替スイッチ17と切替スイッチ18が初期状態に戻り、主映像信号入力端子14と映像信号出力端子16とを繋ぐ信号線L1、L2の経路ルートがバイパス経路になる。よって、主映像再生装置1の主映像がディスプレイ装置3に表示される状態となる。
【0047】
以下、本変形例において実現される動作フローの詳細を説明する。図6は、動作フローの第2変形例を示した図である。本変形例は、上述した動作フローとは別のフローとして捉えることができる。
【0048】
映像処理装置10の作動中、タイマー19ではタイマーのカウント値が参照される(S201)。そして、タイマー19は、カウント値が規定条件を満たしているか否かの判定を行う(S202)。上述したように、本変形例においては、制御部13がタイマー19のタイマーのカウント値を初期化する更新処理を定期的に行っている。よって、制御部13が正常に作動しており、更新処理が定期的に実行されていれば、タイマー19は、ステップS202の処理で否定判定を行うことになる。一方、制御部13に異常が発生しており、更新処理が行われていない場合、タイマー19は、ステップS202の処理で肯定判定を行うことになる。
【0049】
タイマー19は、ステップS202で肯定判定を行った場合、映像処理装置10のリセットを行う(S203)。タイマー19が映像処理装置10のリセットを行うと、切替スイッチ17と切替スイッチ18が初期状態に戻り、主映像信号入力端子14と映像信号出力端子16とを繋ぐ信号線L1、L2の経由ルートがバイパス経路へ切り替わる(S204)。これにより、主映像再生装置1では直ちに主映像のみがディスプレイ装置3に表示される状態へ切り替わる。
【0050】
映像処理装置10のリセットにより映像処理装置10が正常に再起動すると(ステップS205)、前述したステップS102の処理等により、主映像信号入力端子14と映像信号出力端子16とを繋ぐ信号線L1、L2の経由ルートがバイパス経路から合成処理経路へ切り替わる(ステップS206)。
【0051】
また、映像処理装置10のリセットによっても映像処理装置10が正常に再起動しない場合(ステップS205)、通信部20を通じて監視センター4へ映像処理装置10の異常が通知される(ステップS207)。この場合、切替スイッチ17と切替スイッチ18に対する制御部13からの制御信号は入力されないため、切替スイッチ17と切替スイッチ18は初期状態を保った状態である。すなわち、主映像信号入力端子14と映像信号出力端子16とを繋ぐ信号線L1、L2の経由ルートがバイパス経路となっている。
【0052】
本変形例によれば、制御部13に異常が発生した場合に、経由ルートが合成処理経路からバイパス経路へ切り替わる。よって、本変形例であれば、映像処理装置10の故障によりディスプレイ装置3に主映像が表示されない事態を招く可能性を可及的に抑制することが可能である。また、本変形例によれば、例えば、制御部13を実現するコンピュータプログラムの更新処理を行っている場合においても、主映像がディスプレイ装置3に表示されるようにすることができる。
【0053】
<その他の変形例>
なお、上記実施形態や変形例は、本願で開示する発明の要旨を変更しない範囲で適宜変形可能である。上記実施形態の映像処理装置10は、例えば、タイマー19や通信部20を省略してもよいし、3系統以上の映像信号の入力を受け付けるものであって良いし、その他の多種多様な変形を行ってもよい。また、上記実施形態の映像処理装置10は、信号線L1のみ経由ルートをバイパス経路とし、信号線L2については合成処理経路とすることで、ディスプレイ装置3が主映像再生装置1の映像と副映像再生装置2の音声を出力するようにしてもよい。また、上記実施形態の映像処理装置10は、信号線L2のみ経由ルートをバイパス経路とし、信号線L1については合成処理経路とすることで、ディスプレイ装置3が主映像再生装置1の音声と副映像再生装置2の映像を出力するようにしてもよい。また、上記実施形態の映像処理装置10は、監視センター4からネットワークN経由で遠隔操作を受け付けるようにしてもよい。遠隔操作としては、例えば、バイパス経路と合成処理経路との間で経由ルートを切り替える操作や、映像処理装置10を再起動する操作、映像処理装置10の状態に関する情報を要求する操作等が挙げられる。
【符号の説明】
【0054】
1・・主映像再生装置
2・・副映像再生装置
3・・ディスプレイ装置
4・・監視センター
N・・ネットワーク
C1~C3・・ケーブル
L1~L6,L101~L104・・信号線
10,110・・映像処理装置
11,111・・合成処理部
12,112・・音声処理部
13,113・・制御部
14,114・・主映像信号入力端子
15,115・・副映像信号入力端子
16,116・・映像信号出力端子
17・・切替スイッチ
18・・切替スイッチ
19・・タイマー
20・・通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6