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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037459
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】座席ヒータ、座席、及び移動体
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/74 20060101AFI20240312BHJP
   B60N 2/56 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A47C7/74 B
B60N2/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142340
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】多田 昌広
(72)【発明者】
【氏名】本間 聡
(72)【発明者】
【氏名】松岡 雅尚
(72)【発明者】
【氏名】田中 有紀子
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JE02
3B087DE09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示は、座席ヒータの消費電力を削減する。
【解決手段】座席ヒータ20は、蓄熱性組成物30と、蓄熱性組成物30を収容する収容部45を含む収容体40と、通電時に蓄熱性組成物30を加熱する発熱部50と、を含んでいる。蓄熱性組成物は、蓄熱材、及び、前記蓄熱材をゲル化するゲル化剤を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱性組成物と、
前記蓄熱性組成物を収容する収容部を含む収容体と、
通電時に前記蓄熱性組成物を加熱する発熱部と、を備える、座席ヒータ。
【請求項2】
前記蓄熱性組成物は、蓄熱材、及び、前記蓄熱材をゲル化するゲル化剤を含む、請求項1に記載の座席ヒータ。
【請求項3】
前記収容体は、前記収容部を複数含む、請求項1に記載の座席ヒータ。
【請求項4】
前記発熱部の少なくとも一部分は、前記収容部に配置されている、請求項1に記載の座席ヒータ。
【請求項5】
前記収容体は、第1シート、及び、前記第1シートに重ね合わされた第2シートを含み、
前記収容部は、前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、
前記発熱部は、前記第1シートに取り付けられ、
前記第1シートの熱伝導率は、前記第2シートの熱伝導率よりも高い、請求項1に記載の座席ヒータ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の座席ヒータを備える、座席。
【請求項7】
座部と、
前記座部に接続された背面部と、
前記背面部に設けられた請求項2に記載の座席ヒータと、を備える、座席。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載の座席ヒータを備える座席であって、
前記座席ヒータの前記収容体は、第1シート、及び、前記第1シートに重ね合わされた第2シートを含み、
前記収容部は、前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、
前記第1シートの熱伝導率は、前記第2シートの熱伝導率よりも高く、
前記第1シートは、前記座席の着座者を支持する支持面と前記第2シートとの間に位置する、座席。
【請求項9】
前記発熱部は、前記座席の着座者を支持する支持面と前記収容体との間に位置する、請求項6に記載の座席。
【請求項10】
請求項6に記載の座席と、
前記座席ヒータの前記発熱部の通電を制御する制御部と、を備える、移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、座席ヒータ、座席、及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、移動体用の座席ヒータが知られている。座席ヒータにおいて、発熱部が通電することで発熱し、座席が温められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5653365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、座席ヒータの発熱部の通電を停止すると、座席ヒータの温度は急速に低下していく。座席を温め続けるためには、発熱部を長時間に亘って通電させる必要が生じる。長時間発熱部を通電させることで、座席ヒータの消費電力は、増大する。本開示は、座席ヒータの消費電力を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態は、次の<1>~<10>に関する。
【0006】
<1> 蓄熱性組成物と、
前記蓄熱性組成物を収容する収容部を含む収容体と、
通電時に前記蓄熱性組成物を加熱する発熱部と、を備える、座席ヒータ。
【0007】
<2> 前記蓄熱性組成物は、蓄熱材、及び、前記蓄熱材をゲル化するゲル化剤を含む、<1>の座席ヒータ。
【0008】
<3> 前記収容体は、前記収容部を複数含む、<1>又は<2>の座席ヒータ。
【0009】
<4> 前記発熱部の少なくとも一部分は、前記収容部に配置されている、<1>~<3>のいずれかの座席ヒータ。
【0010】
<5> 前記収容体は、第1シート、及び、前記第1シートに重ね合わされた第2シートを含み、
前記収容部は、前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、
前記発熱部は、前記第1シートに取り付けられ、
前記第1シートの熱伝導率は、前記第2シートの熱伝導率よりも高い、<1>~<4>のいずれかの座席ヒータ。
【0011】
<6> <1>~<5>のいずれかの座席ヒータを備える、座席。
【0012】
<7> 座部と、
前記座部に接続された背面部と、
前記背面部に設けられた<1>~<5>のいずれかの座席ヒータと、を備える、座席。
【0013】
<8> <1>~<4>のいずれかの座席ヒータを備える座席であって、
前記座席ヒータの前記収容体は、第1シート、及び、前記第1シートに重ね合わされた第2シートを含み、
前記収容部は、前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、
前記第1シートの熱伝導率は、前記第2シートの熱伝導率よりも高く、
前記第1シートは、前記座席の着座者を支持する支持面と前記第2シートとの間に位置する、座席。
【0014】
<9> 前記発熱部は、前記座席の着座者を支持する支持面と前記収容体との間に位置する、<6>~<8>のいずれかの座席。
【0015】
<10> <6>~<9>のいずれかの座席と、
前記座席ヒータの前記発熱部の通電を制御する制御部と、を備える、移動体。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、座席ヒータの消費電力を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施の形態を説明するための図であって、本開示による座席ヒータを含む座席を備える移動体の一例を部分的に示す側面図である。
図2図2は、図1の座席を示す斜視図である。
図3図3は、図2の座席のうち、座部に設けられた第1座席ヒータを示す斜視図である。
図4図4は、図3の第1座席ヒータを含む座部の正面視における断面図である。
図5図5は、図2の座席のうち、背面部の側面視における断面図である。
図6図6は、座席ヒータの一変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に示された具体例を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0019】
本明細書において、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば「平行」、「垂直」、「同一」等の用語については、厳密な意味に限定されることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
【0020】
図1は、移動体1の一例を部分的に示す側面図である。移動体1は、移動体1の利用者を収容して移動可能な構造体である。座席ヒータ20を含む座席10が適用される移動体1として、自動車、バイク、自転車、三輪車、電車、航空機、船舶、雪上車等が例示される。以下では、座席ヒータ20を自動車、とりわけ乗用車の座席に適用した事例を用いて、一実施の形態を説明する。
【0021】
なお、以下の説明において、移動体1、座席10、座席ヒータ20、収容体40、及び発熱部50に対して用いる「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、「下」、「前後方向」、「左右方向」、及び「上下方向」の用語は、特に説明がない場合、移動体1の座席に着席した者を基準とした「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、「下」、「前後方向」、「左右方向」、及び「上下方向」を意味する。
【0022】
各図面における方向、及び、図面間における方向関係を明確化するため、図1図6において、前後方向は、「X」と記載した矢印によって示されている。前後方向における「後」あるいは「後方」とは、この矢印の延びる方向に沿って矢印の先端に向かう向きを意味する。前後方向における「前」あるいは「前方」とは、後方と逆の向きを意味する。左右方向は、「Y」と記載した矢印によって示されている。左右方向における「右」あるいは「右方」とは、この矢印の延びる方向に沿って矢印の先端に向かう向きを意味する。左右方向における「左」あるいは「左方」とは、右方と逆の向きを意味する。上下方向は、「Z」と記載した矢印によって示されている。上下方向における「上」あるいは「上方」とは、この矢印の延びる方向に沿って矢印の先端に向かう向きを意味する。上下方向における「下」あるいは「下方」とは、上方と逆の向きを意味する。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面の奥に向かう矢印は、例えば図1に示すように、円の中に×を設けた記号により示されている。
【0023】
図1に示すように、移動体1は、移動体1の利用者が着席する座席10を含む。座席10は、着座者Pを支持する支持面10Aを含んでいる。座席10は、指示面10Aを温める座席ヒータ20を含んでいる。図2に示すように、座席ヒータ20は、蓄熱性組成物30と、蓄熱性組成物30を収容する収容部45を含む収容体40と、通電時に蓄熱性組成物30を加熱する発熱部50と、を含んでいる。本実施の形態による座席ヒータには、消費電力を削減するための工夫がなされている。
【0024】
図1に示す例において、移動体1は、電源装置60を含んでいる。電源装置60は、移動体1内に収容されている。電源装置60は、座席ヒータ20の発熱部50に電気的に接続されている。電源装置60は、座席10を温めるための電力を座席ヒータ20に供給する。電源装置60は、例えばバッテリーでもよい。
【0025】
図1に示す例において、移動体1は、座席ヒータ20の発熱部50の通電を制御する制御部70を含んでいる。制御部70は、座席ヒータ20に電気的に接続されている。制御部70は、電源装置60に電気的に接続されている。制御部70は、移動体1に設けられたスイッチ80にも電気的に接続されている。スイッチ80は、座席ヒータ20の動作及び動作停止のための電気信号を、制御部70に伝送できる。制御部70は、スイッチ80からの電気信号に基づき、座席ヒータ20の発熱部50の通電を制御できる。
【0026】
制御部70は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサを含んでもよい。制御部70は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリを更に含んでもよい。制御部70は、メモリに記録されたプログラムを実行することにより、発熱部50の通電及び通電停止を制御してもよい。
【0027】
図1に示す例において、座席10は、座部11と、座部11に接続された背面部12と、を含んでいる。座部11に接続された背面部12は、上方において後方に傾くよう、上下方向Zに対して傾斜している。座席10は、座部11及び背面部12に形成された支持面10Aにおいて、着座者Pを支持する。座部11において、支持面10Aは、前後方向及び左右方向に広がっている。背面部12において、支持面10Aは、左右方向及び上下方向に広がっている。着座者Pが座席10に着席するとき、座部11には、着座者Pの臀部及び大腿部が対面する。着座者Pが座席10に着席するとき、背面部12には、着座者Pの腰部及び背部が対面する。
【0028】
図1に示す例において、座部11は、座部フレーム111と、座部フレーム111上に設置された座部パッド112と、座部フレーム111の一部分及び座部パッド112を覆う座部カバー113と、を含んでいる。背面部12は、背面部フレーム121と、背面部フレーム121に前方から設置された背面部パッド122と、背面部フレーム121の一部分及び背面部パッド122を覆う背面部カバー123と、を含んでいる。
【0029】
座部フレーム111は、移動体1の内部に固定されている。背面部フレーム121は、座部フレーム111に接続されている。座部フレーム111及び背面部フレーム121は、アルミニウム等の金属から製造されてもよい。
【0030】
座部パッド112は、着座者Pの臀部及び大腿部からの荷重を吸収する。座部カバー113は、座部パッド112を覆う。座部カバー113は、座部11における支持面10Aを形成している。背面部パッド122は、着座者Pの腰部及び背部からの荷重を吸収する。背面部カバー123は、背面部パッド122を覆う。背面部パッド123は、背面部12における支持面10Aを形成している。座部パット112及び背面部パッド122は、ウレタンフォーム等の発泡性樹脂から製造されてもよい。座席カバー113及び背面部カバー123は、布材、皮革、合成皮革等から製造されてもよい。
【0031】
図2に示す例において、座席10は、複数の座席ヒータ20を含んでいる。座席10は、座部11に設けられた第1座席ヒータ20Aと、背面部12に設けられた第2座席ヒータ20Bと、を含んでいる。第1座席ヒータ20Aは、座部11に形成された支持面10Aを温める。第2座席ヒータ20Bは、背面部12に形成された支持面10Aを温める。第1座席ヒータ20Aは、図4に示すように、上下方向において座席パッド112と座席カバー113との間に位置している。第2座席ヒータ20Bは、図5に示すように、前後方向において座席パッド122と座席カバー123との間に位置している。第1座席ヒータ20A及び第2座席ヒータ20Bの各々は、蓄熱性組成物30と、蓄熱性組成物30を収容する収容部45を含む収容体40と、通電時に蓄熱性組成物30を加熱する発熱部50と、を含んでいる。座席ヒータ20は、図3図5に示すように、蓄熱性組成物30を収容する収容部45において膨らんでいる。
【0032】
蓄熱性組成物30は、蓄熱材31を含む組成物である。蓄熱材31は、蓄熱性組成物30内に分散している。蓄熱材31は、通電時の発熱部50からの熱を蓄えることができる材料である。蓄熱材31として、発熱部50の発熱停止後であっても継続的に座席10を温めることができる種々の材料を使用できる。蓄熱材31は、固体でもよいし、液体でもよい。蓄熱材31に使用される材料は、1000J/(kg・K)以上4200J/(kg・K)以下の比熱容量を有してもよく、1500J/(kg・K)以上3500J/(kg・K)以下の比熱容量を有してもよい。蓄熱材31に使用される材料の比熱容量は、JIS K 7123に準拠した示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、DSC60A)を用いて測定される。
【0033】
蓄熱材31は、発熱部50の発熱によって固相から液相へ相変化し、発熱部50の発熱停止によって液相から固相へ相変化する潜熱蓄熱材を含んでもよい。潜熱蓄熱材が相変化する相変化温度は、30℃以上65℃以下でもよいし、40℃以上55℃以下でもよい。潜熱蓄熱材として、天然パラフィン、パラフィンワックス、合成パラフィン等のパラフィンを含む有機系材料を使用してもよい。なお、パラフィンとは、C2n+2(nは自然数)によって表される鎖式飽和炭化水素の総称を意味する。潜熱蓄熱材として、一種類のパラフィンを単独で使用してもよく、複数の種類のパラフィンを組み合わせて使用してもよい。また、潜熱蓄熱材として、無機系材料を使用してもよい。潜熱蓄熱材として使用される無機系材料は、酢酸ナトリウム3水和物、チオ硫酸ナトリウム5水和物、硫酸ナトリウム10水和物、塩化カルシウム6水和物、リン酸水素二ナトリウム12水和物、炭酸ナトリウム10水和物等を含んでもよい。
【0034】
蓄熱性組成物30は、蓄熱材31をゲル化するゲル化剤32を含んでもよい。図示された例において、ゲル化剤32は、蓄熱性組成物30内に分散している。蓄熱材31は、収容部45内でゲル化している。ゲル化剤32によって蓄熱材31がゲル化することで、蓄熱性組成物30の流動性が抑制される。ゲル化剤32は、蓄熱性組成物30に含まれる蓄熱材の種類に応じて、種々の材料の中から適宜選択され得る。ゲル化剤32は、澱粉、寒天、及びゼラチン等の天然多糖類を含んでもよい。
【0035】
本明細書において、蓄熱材が「ゲル化している」とは、40℃~60℃環境下にて測定された蓄熱材の粘度が2MPa・s~10MPa・sであることを意味する。粘度は、レオメーター(アントンパール社製、MCR301)によって測定される。
【0036】
本明細書において、「ゲル化剤」は、呼称の違いのみに基づいて、同様の機能を有する異なる部材と区別されない。「ゲル化剤」は、例えば「増粘剤」と呼称されてもよい。
【0037】
図3及び図4に示す例において、収容体40は、蓄熱性組成物30を収容する袋状の部材である。収容体40は、外縁40Xとして、互いに対向する第1縁40a及び第2縁40bと、互いに対向する第3縁40c及び第4縁40dと、を有している。第3縁40c及び第4縁40dは、それぞれ、第1縁40aと第2縁40bとを接続している。
【0038】
図2及び図3に示すように、第1座席ヒータ20Aの第1縁40a及び第2縁40bは、前後方向における縁部に位置している。第1座席ヒータ20Aの第3縁40c及び第4縁40dは、左右方向における縁部に位置している。第1座席ヒータ20Aの第1縁40a及び第2縁40bは、それぞれ、左右方向に延びている。第1座席ヒータ20Aの第3縁40c及び第4縁40dは、それぞれ、前後方向に延びている。
【0039】
図2に示すように、第2座席ヒータ20Bの第1縁40a及び第2縁40bは、上下方向における縁部に位置している。第2座席ヒータ20Bの第3縁40c及び第4縁40dは、左右方向における縁部に位置している。第2座席ヒータ20Bの第1縁40a及び第2縁40bは、それぞれ、左右方向に延びている。第2座席ヒータ20Bの第3縁40c及び第4縁40dは、それぞれ、上下方向に延びている。
【0040】
収容体40は、第1シート41と、第1シート41に重ね合わされた第2シート42と、を含んでいる。第1シート41及び第2シート42は、それぞれ、単層のシートでもよい。第1シート41及び第2シート42は、それぞれ、熱可塑性樹脂を含んでもよい。熱可塑性樹脂として、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレン等が例示される。第1シート41及び第2シート42は、それぞれ、銅、アルミニウム等の金属を含んでもよい。第1シート41及び第2シート42は、それぞれ、金属製のシートでもよい。第1シート41の厚さは、特に限定されない。第1シート41の厚さは、25μm以上2mm以下でもよい。第2シート42の厚さは、特に限定されない。第2シート42の厚さは、25μm以上2mm以下でもよい。
【0041】
第1シート41及び第2シート42は、それぞれ、互いに対向する第1面41a,42a及び第2面41b,42bを有している。図4及び図5に示すように、第1面41a,42aは、収容体40の外表面を形成している。一方、第1シート41及び第2シート42は、第2面41b,42bにおいて互いに対面している。図示された例において、第1シート41及び第2シート42は、互いに重ねられた方向からの観察において、互いに同一の形状を有している。この結果、収容体40の外縁40Xは、第1シート41の外縁及び第2シート42の外縁の両外縁と一致している。
【0042】
第1シート41及び第2シート42は、互いの同一の材料から製造されてもよい。第1シート41及び第2シート42は、互いに異なる材料から製造されてもよい。図3図5に示す例において、第1シート41の材料は、第2シート42の材料と異なっている。この結果、第1シート41の熱伝導率は、第2シート42の熱伝導率よりも高くなっている。第1シート41及び第2シート42の熱伝導率は、JIS R 2616に準拠した迅速熱伝導率計(京都電子工業株式会社製、QTM-500)を用いて、各シートの第1面から測定される。
【0043】
図4に示すように、第1座席ヒータ20Aにおいて、第1シート41は、座部11の座席カバー113によって形成される座席10の支持面10Aと、第2シート42と、の間に位置している。座部11において、着座者Pの臀部及び大腿部は、座席ヒータ20の第1シート41に対面する。また、図5に示すように、第2座席ヒータ20Bにおいて、第1シート41は、背面部12の座席カバー123によって形成される座席10の支持面10Aと第2シート42との間に位置している。背面部12において、着座者Pの背部及び腰部は、座席ヒータ20の第1シート41に対面する。
【0044】
収容体40には、第1シート41と第2シート42とが互いにシールされたシール部44が形成されている。図2に示すように、収容体40は、シール部44によって囲まれた部分に、蓄熱性組成物30が収容される収容部45を形成している。図示された例において、シール部44は、収容体40の外縁40Xに形成された第1シール部44aを含んでいる。第1シート41及び第2シート42は、例えば熱溶着によって互いにシールされてもよい。
【0045】
シール部44は、収容体40の外縁40X以外の部分に形成された第2シール部44bを含んでもよい。図2及び図5に示すように、第2座席ヒータ20Bの収容体40は、上下方向における第1縁40aと第2縁40bとの間に、左右方向に延びる第2シール部44bを形成している。第2シール部44bは、収容体40の第3縁40cと第4縁40dとを接続している。この結果、第2座席ヒータ20Bの収容体40には、上下方向に配列された二つの収容部45が形成されている。
【0046】
図3図5に示す例において、第1シート41には、発熱部50が取り付けられている。発熱部50は、第1シート41の第1面41aに取り付けられている。図4及び図5に示すように、発熱部50は、第1シート41と座席10の支持面10Aとの間に位置している。発熱部50は、第1面41a上において、蛇行している。発熱部50は、収容体40の第4縁40dから、座席ヒータ20の外部に引き出されている。図1に示すように、座席ヒータ20の外部に引き出された発熱部50は、電源装置60及び制御部70に電気的に接続されている。発熱部50は、通電すなわち電流が流れたときに、発熱する。発熱部50は、通電を停止したときに発熱を停止する。
【0047】
図3に示す例において、発熱部50は、通電時にジュール熱を発生する抵抗体を含んでいる。発熱部50に含まれる抵抗体として、アルミニウム、銅等の金属製の導電線を使用してもよい。発熱部50は、上述した抵抗体に限られず、ペルチェ効果によるペルチェ熱を発生するペルチェ素子を含んでもよい。
【0048】
図4に示すように、第1シート41に取り付けられた発熱部50は、収容体40のシール部44(第1シール部44a)上、及び、収容部45上に取り付けられている。発熱部50は、例えば絶縁性を有する接着剤を介して第1シート41に貼り付けられてもよい。発熱部50は、例えば印刷によって第1シート41上に形成されてもよい。
【0049】
図示された座席ヒータ20を使用する際の作用について説明する。
【0050】
着座者Pは、移動体1の座席ヒータ20が設けられた座席10に着席する。座席ヒータ20を動作させるとき、着座者Pは、移動体1に設けられたスイッチ80を操作する。スイッチ80の操作によって、座席ヒータ20を動作させるための電気信号が、制御部70に伝送される。制御部70は、発熱部50と電源装置60とを電気的に接続する。
【0051】
発熱部50と電源装置60とが電気的に接続されることで、発熱部50が通電する。通電した発熱部50は、発熱する。発熱部50が発熱すると、発熱部50と蓄熱性組成物30及び収容体40との間に温度差が生じる。発熱部50からの熱は、蓄熱性組成物30及び収容体40へ移動する。言い換えると、蓄熱性組成物30及び収容体40は、発熱した発熱部50によって温められる。
【0052】
図1図5に示す例において、発熱部50からの熱は、第1シート41の外表面を形成する第1面41aから収容体40へ伝わる。第1シート41に伝わった熱は、収容部45において、第2面41bから蓄熱性組成物30へ伝わる。第1シート41へ伝わった熱は、シール部44a,44bにおいて、第1シート41の第2面41bから第2シール部42の第2面42bへ伝わる。第2シート42へ伝わった熱は、収容部45において、第1面42aから蓄熱性組成物30へ伝わる。このようにして、発熱部50からの熱は、座席ヒータ20全体へ伝わっていく。座席ヒータ20の温度は、座席10の支持面10Aを形成する座部カバー113及び背面部カバー123よりも上昇していく。
【0053】
座席ヒータ20と座部カバー113及び背面部カバー123との間に温度差が生じることで、座席ヒータ20の熱は、座席ヒータ20から座部カバー113及び背面部カバー123へ伝わる。すなわち、発熱部50の通電によって座部カバー113及び背面部カバー123の温度も上昇する。この結果、発熱部50の通電によって、座席10は、着座者Pの支持面10Aにおいて温められる。着座者Pは、座部11において、座部11に接触する臀部及び大腿部から温められる。着座者Pは、背面部12において、背面部12に接触する背部及び腰部から温められる。
【0054】
本実施の形態による座席10の一具体例において、座席ヒータ20の発熱部50は、座席10の支持面10Aと座席ヒータ20の収容体40との間に位置している。この具体例によれば、発熱部50は、第1座席ヒータ20Aにおいて、通電時に蓄熱性組成物30を温めつつ、発熱部50と座部カバー113とが重なる位置から座部カバー113を直接温めることができる。また、発熱部50は、第2座席ヒータ20Bにおいて、通電時に蓄熱性組成物30を温めつつ、発熱部50と背面部カバー123とが重なる位置から背面部カバー123を直接温めることができる。これにより、座席ヒータ20は、発熱部50によって座席10の支持面10Aを迅速に温めることができる。
【0055】
熱部50の通電時に発熱部50から蓄熱性組成物30に伝わった熱は、蓄熱性組成物30に含まれる蓄熱材31に蓄えられる。例えば、蓄熱性組成物30が潜熱蓄熱材を含む場合、蓄熱材31は、発熱部50からの熱によって固相から液相へ相転移(融解)するとき、発熱部50からの熱を潜熱(融解熱)として蓄える。
【0056】
発熱部50の発熱を停止するとき、着座者Pは、移動体1に設けられたスイッチ80を操作する。スイッチ80の操作によって、座席ヒータ20の動作を停止するための電気信号が、制御部70に伝送される。制御部70は、発熱部50と電源装置60との電気的な接続を解除する。発熱部50と電源装置60との電気的な接続が解除されることで、発熱部50の通電が停止する。発熱部50の通電が停止されることで、発熱部50の発熱が停止される。
【0057】
ところで、従来の座席ヒータにおいて、金属製の配線等によって形成される発熱部の温度は、通電を停止してから急速に低下する。このため、座席ヒータの温度は、発熱部が通電を停止すると、急速に低下していく。座席ヒータは、発熱部が通電を停止してから短時間のうちに、座席を温められなくなる。座席を温め続けるためには、一度通電を停止した発熱部に再度通電する、或いは、発熱部を通電し続ける必要が生じる。昨今、環境負荷を低減する観点から座席ヒータの省電力化が求められているところ、従来の座席ヒータにおいては、長時間に亘って発熱部に電流が流れることによって消費電力が増大する問題が生じ得る。
【0058】
これに対して本実施の形態において、座席ヒータ20は、蓄熱性組成物30と、蓄熱性組成物30を収容する収容部45を含む収容体40と、通電時に蓄熱性組成物30を加熱する発熱部50と、を含んでいる。この具体例によれば、発熱部50が通電を停止したときには、蓄熱材に蓄えられた熱が放出されることで、座席ヒータ20の温度低下が抑制される。すなわち、座席ヒータ20は、発熱部50が通電を停止しても、蓄熱性組成物30によって座席10を温め続けることができる。例えば、蓄熱性組成物30が潜熱蓄熱材を含む場合、液相から固相への相変化温度まで温度の低下した蓄熱材31は、蓄えた潜熱(融解熱)を放出して液相から固相へと相変化する。蓄熱性組成物30は、固相の蓄熱材と液相の蓄熱材とが混在する状態において、相変化温度よりも低い温度への温度低下を抑制できる。これにより、座席ヒータ20は、発熱部50が発熱を停止した後も長時間に亘って座席10及び座席10の着座者Pを温めることができる。したがって、この具体例によれば、座席ヒータ20の消費電力を削減しつつ、着座者Pを効率的に温めることができる。
【0059】
図示された座席ヒータ20の一具体例において、蓄熱性組成物30は、蓄熱材31、及び、蓄熱材31をゲル化するゲル化剤32を含んでいる。この具体例によれば、十分な粘度を有する蓄熱性組成物30において、温度変化を促す対流が抑制される。対流が抑制されることで、温められた蓄熱性組成物30の温度低下を遅らせることができる。これにより、蓄熱性組成物30は、発熱部50の通電停止後も着座者Pを長時間に亘って温めることができる。また、十分な粘度を有する蓄熱性組成物30によって、座席ヒータ20は、クッション性を向上できる。座部パッド112と座部カバー113との間に設置された第1座席ヒータ20A、及び背面部パッド122と背面部カバー123との間に設置された第2座席ヒータ20Bのクッション性が向上することで、座席10の座り心地を改善できる。
【0060】
図示された座席10の一具体例において、第1座席ヒータ20Aの蓄熱性組成物30、及び第2座席ヒータ20Bの蓄熱性組成物30は、それぞれ、上述したゲル化剤32を含んでいる。この具体例によれば、座席ヒータ20は、十分な粘度を有する蓄熱性組成物30によって、着座者Pに密着できる。図示された例において、座席10の座部11に設けられた第1座席ヒータ20Aは、十分な粘度を有する蓄熱性組成物30によって、着用者Pの臀部及び大腿部に密着できる。また、座席10の背面部12に設けられた第2座席ヒータ20Bは、十分な粘度を有する蓄熱性組成物30によって、着座者Pの腰部及び背部に密着できる。これにより、第1座席ヒータ20Aは、着用者Pの臀部及び大腿部を効果的に温めることができる。また、第2座席ヒータ20Bは、着用者Pの背部及び腰部を効果的に温めることができる。したがって、この具体例によれば、着座者Pを効果的に温めることができる。
【0061】
図示された座席ヒータ20の一具体例のうち、第2座席ヒータ20Bの収容体40は、収容部45を複数含んでいる。この具体例によれば、収容部45内における蓄熱性組成物30の移動が制限される。図示された例において、上下方向Zにおける上方に位置する第1収容部45Aに収容された蓄熱性組成物30は、上下方向Zにおける下方に位置する第2収容部45Bへの移動を制限される。第2収容部45Bに収容された蓄熱性組成物30は、第1収容部45Aへの移動を制限される。これにより、収容体40は、蓄熱性組成物30の偏りを抑制できる。したがって、この具体例によれば、座席ヒータ20は、安定して支持面10Aを温めることができる。
【0062】
図示された座席ヒータ20の一具体例において、第2座席ヒータ20Bの収容部45は、左右方向に延びる第2シール部44bによって上下方向に分割されている。言い換えると、第2座席ヒータ20Bにおいて、二つの収容部45が、上下方向に隣り合っている。この具体例によれば、収容部45に収容された蓄熱性組成物30が、重力によって上方から下方へ移動することを抑制できる。
【0063】
図示された座席ヒータ20の一具体例において、収容体40を形成する第1シート41及び第2シート42のうち、発熱部50が取り付けられた第1シート41の熱伝導率は、第2シート42の熱伝導率よりも高くなっている。この具体例によれば、発熱部50からの熱は、第1シート41に沿って迅速に広がる。これにより、発熱部50は、第1シート41の第1面41aによって形成される、収容体40の一方の外表面を迅速に温めることができる。
【0064】
図示された座席10の一具体例において、比較的高い熱伝導率を有する第1シート41は、座席10の支持面10Aと第2シート42との間に位置している。この具体例によれば、発熱部50及び蓄熱性組成物30のいずれか一方によって迅速に温められた第1シート41を介して、座席10を迅速に温めることができる。
【0065】
図示された座席10の一具体例において、発熱部50は、第1シート41と座席10の支持面10Aとの間に位置し、第1シート41は、収容部45において発熱部50と蓄熱性組成物30との間に位置している。この具体例によれば、発熱部50は、発熱時において座部カバー113及び背面カバー123を直接温めながら、比較的高い熱伝導率を有する第1シート41を介して、蓄熱性組成物30を容易に加熱できる。これにより、発熱部50は、発熱時において効率的に座席10の支持面10A及び蓄熱性組成物30を温めることができる。
【0066】
以上に説明してきた一実施の形態において、座席ヒータ20は、蓄熱性組成物30と、蓄熱性組成物30を収容する収容部45を含む収容体40と、通電時に蓄熱性組成物30を加熱する発熱部50と、を含んでいる。この具体例によれば、発熱部50から蓄熱性組成物30に伝わった熱は、蓄熱性組成物30に含まれる蓄熱材に蓄えられる。座席ヒータ20は、蓄熱性組成物30の蓄熱材に蓄えられた熱によって、発熱部50の通電が停止されても温度低下を抑制できる。これにより、座席ヒータ20は、発熱部50が通電を停止した後も長時間に亘って座席10を温めることができる。したがって、座席ヒータ20の消費電力を削減しつつ、着座者Pを効率的に温めることができる。
【0067】
具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述の具体例は、一実施の形態を限定しない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施でき、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
【0068】
上述した座席ヒータ20の一具体例において、発熱部50は、収容体40の外表面を形成する第1シート41の第1面41aに取り付けられていた。これに限られず、発熱部50は、図6に示すように、少なくとも一部分において、蓄熱性組成物30が収容された収容部45に配置されてもよい。この具体例において、発熱部50は、絶縁性を有するフィルム状の封止材80によって覆われている。封止材80によって覆われることで、発熱部50は、蓄熱性組成物30から絶縁されている。この具体例によれば、収容部45に収容された蓄熱性組成物30は、発熱部50によって直接加熱され得る。これにより、発熱部50は、発熱時において蓄熱性組成物30を迅速に加熱できる。
【0069】
上述した座席ヒータ20の一具体例において、発熱部50は、収容体40の外表面を形成する第1シート41の第1面41aに取り付けられていた。これに限られず、発熱部50は、第1シート41の第2面41bに取り付けられてもよい。この具体例において、発熱部50は、上述した封止材80によって第2面41bとは反対の面から覆われてもよい。すなわち、発熱部50は、第1シート41の第2面41bと封止材80との間に位置してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1:移動体、10:座席、10A:支持面、11:座部、12:背面部、13:検出部、20:座席ヒータ、20A:第1座席ヒータ、20B:第2座席ヒータ、30:蓄熱性組成物、31:蓄熱材、32:ゲル化剤、40:収容体、40a:第1縁、40b:第2縁、40c:第3縁、40d:第4縁、40X:外縁、41:第1シート、41a:第1面、41b:第2面、42:第2シート、42a:第1面、42b:第2面、44:シール部、44a:第1シール部、44b:第2シール部、45:収容部、45A:第1収容部、45B:第2収容部、50:発熱部、60:電源装置、70:制御部、80:封止材、111:座部フレーム、112:座部パッド、113:座部カバー、121:背面部フレーム、122:背面部パッド、123:背面部カバー、P:着座者
図1
図2
図3
図4
図5
図6